JP2010006207A - 車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】広い制御範囲に亘って、車体の姿勢制御の応答性及び精度を高めることができ、かつ、エネルギ消費量を抑制することができ、車体の姿勢が安定に保たれ、安全に、かつ、快適に走行することができるようにする。
【解決手段】車体と、該車体に回転可能に取り付けられた駆動輪と、前後方向に移動可能に前記車体に取り付けられた能動重量部と、該能動重量部を移動させる複数のアクチュエータと、走行指令を入力する操作装置と、該操作装置から入力された走行指令に応じ、前記駆動輪に付与する駆動トルク及び前記能動重量部の位置を制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、制御パラメータの区分に応じて前記複数のアクチュエータを使い分ける。
【選択図】図1
【解決手段】車体と、該車体に回転可能に取り付けられた駆動輪と、前後方向に移動可能に前記車体に取り付けられた能動重量部と、該能動重量部を移動させる複数のアクチュエータと、走行指令を入力する操作装置と、該操作装置から入力された走行指令に応じ、前記駆動輪に付与する駆動トルク及び前記能動重量部の位置を制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、制御パラメータの区分に応じて前記複数のアクチュエータを使い分ける。
【選択図】図1
Description
本発明は、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関するものである。
従来、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関する技術が提案されている。例えば、同軸上に配設された2つの駆動輪を有し、乗員の重心移動による車体の姿勢変化を感知して駆動する車両、球体状の単一の駆動輪に取り付けられた車体の姿勢を制御しながら移動する車両等の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この場合、センサで車体のバランスや動作の状態を検出しながら、重量物をスライドさせて車両のバランスを保つようになっている。
特開2004−345030号公報
しかしながら、前記従来の車両においては、単一のモータが重量物をスライドさせるための駆動力を発生するので、姿勢制御の応答性が悪く、精度が低く、かつ、エネルギ消費量が多大となってしまう。仮に、高出力のモータを使用すると、重量物を迅速にスライドさせることができ、姿勢制御の応答性を改善することができるが、一般に、高出力のモータでは微小回転角の制御性が低いので、重量物の位置決め精度が低くなり、姿勢制御の精度が低くなってしまう。また、高出力のモータは常時大きな電力を消費するので、エネルギ消費量が多くなってしまう。また、仮に、低出力のモータを使用すると、小さな電力しか消費しないのでエネルギ消費を改善することができ、また、微小回転角の制御性が高いので、重量物の位置決め精度が高くなる。しかし、重量物を迅速にスライドさせることができないので、姿勢制御の応答性が悪くなってしまう。
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、車体に対して移動可能に取り付けられた能動重量部の位置を制御するアクチュエータを複数配設し、制御パラメータの区分に応じて複数のアクチュエータを使い分けることによって、広い制御範囲に亘(わた)って、車体の姿勢制御の応答性及び精度を高めることができ、かつ、エネルギ消費量を抑制することができ、車体の姿勢が安定に保たれ、安全に、かつ、快適に走行することができる車両を提供することを目的とする。
そのために、本発明の車両においては、車体と、該車体に回転可能に取り付けられた駆動輪と、前後方向に移動可能に前記車体に取り付けられた能動重量部と、該能動重量部を移動させる複数のアクチュエータと、走行指令を入力する操作装置と、該操作装置から入力された走行指令に応じ、前記駆動輪に付与する駆動トルク及び前記能動重量部の位置を制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、制御パラメータの区分に応じて前記複数のアクチュエータを使い分ける。
本発明の他の車両においては、さらに、前記制御パラメータは、前記能動重量部を変位させるための推力を指令する能動重量部推力指令、前記能動重量部の変位量を指令する能動重量部変位指令、又は、前記操作装置から入力された走行指令である。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記制御パラメータは、絶対値の大きさ又は周波数に基づいて複数の区分に区分けされる。
請求項1の構成によれば、複数のアクチュエータを各アクチュエータの特性に合わせて使い分けることができるので、広い制御範囲に亘って、車体の姿勢制御の応答性及び精度を高めることができる。また、エネルギ消費量を抑制することもできる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態における車両の構成を示す概略図であり乗員が搭乗した状態を示す図、図2は本発明の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。
図1において、10は、本実施の形態における車両であり、車体の本体部11、駆動輪12、支持部13及び乗員15が搭乗する搭乗部14を有し、前記車両10は、車体を前後に傾斜させることができるようになっている。そして、倒立振り子の姿勢制御と同様に車体の姿勢を制御する。図1に示される例においては、車両10は右方向に前進し、左方向に後退することができる。
前記駆動輪12は、車体の一部である支持部13に対して回転可能に支持され、駆動アクチュエータとしてのタイヤ用モータ51によって駆動される。なお、駆動輪12の軸は図1に示す平面に垂直な方向に存在し、駆動輪12はその軸を中心に回転する。また、前記駆動輪12は、単数であっても複数であってもよいが、複数である場合、同軸上に並列に配設される。本実施の形態においては、駆動輪12が2つであるものとして説明する。この場合、各駆動輪12は個別のタイヤ用モータ51によって独立して駆動される。なお、駆動アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、内燃機関等を使用することもできるが、ここでは、電気モータであるタイヤ用モータ51を使用するものとして説明する。
また、車体の一部である本体部11は、支持部13によって下方から支持され、駆動輪12の上方に位置する。そして、本体部11には、能動重量部として機能する搭乗部14が、車両10の前後方向へ本体部11と相対的に移動可能となるように、換言すると、車体回転円の接線方向に相対的に移動可能となるように、取り付けられている。
ここで、能動重量部は、ある程度の質量を有し、本体部11に対して前後に移動させることによって、車両10の重心位置46を能動的に補正するものである。そして、能動重量部は、必ずしも搭乗部14である必要はなく、例えば、バッテリ等の重量のある周辺機器を本体部11に対して移動可能に取り付けた装置であってもよいし、ウェイト、錘(おもり)、バランサ等の専用の重量部材を本体部11に対して移動可能に取り付けた装置であってもよい。また、搭乗部14、重量のある周辺機器、専用の重量部材等を併用するものであってもよい。
また、本実施の形態においては、説明の都合上、乗員15が搭乗した状態の搭乗部14が能動重量部として機能する例について説明するが、搭乗部14には必ずしも乗員15が搭乗している必要はなく、例えば、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、搭乗部14に乗員15が搭乗していなくてもよいし、乗員15に代えて、貨物が積載されていてもよい。
前記搭乗部14は、乗用車、バス等の自動車に使用されるシートと同様のものであり、座面部14a、背もたれ部14b及びヘッドレスト14cを備え、移動機構を介して本体部11に取り付けられている。
前記移動機構は、本体部11の上面に取り付けられた第1ガイド部41と、該第1ガイド部41の上に移動可能に取り付けられた第1移動部42とを含む第1移動機構、及び、前記第1移動部42の上面に取り付けられた第2ガイド部43と、該第2ガイド部43の上に移動可能に取り付けられた第2移動部44とを含む第2移動機構を有する。
ここで、前記第1移動機構は、リニアガイド装置等の低抵抗の直線移動機構、及び、多段アクチュエータである能動重量部用アクチュエータの第1段アクチュエータとしての第1制御用モータ52aを備え、該第1制御用モータ52aによって第1移動部42を駆動し、第1ガイド部41に沿って前後方向にスライドさせるようになっている。なお、能動重量部用アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、リニアモータ等を使用することもできるが、ここでは、出力が高い回転式の電気モータと該電気モータの回転を往復動に変換するボールねじ機構とを含むユニットを第1制御用モータ52aとして使用するものとして説明する。
前記リニアガイド装置は、例えば、第1ガイド部41に取り付けられている案内レールと、第1移動部42に取り付けられ、案内レールに沿ってスライドするキャリッジと、案内レールとキャリッジとの間に介在するボール、コロ等の転動体とを備える。そして、案内レールには、その左右側面部に2本の軌道溝が長手方向に沿って直線状に形成されている。また、キャリッジの断面はコ字状に形成され、その対向する2つの側面部内側には、2本の軌道溝が、案内レールの軌道溝と各々対向するように形成されている。転動体は、軌道溝の間に組み込まれており、案内レールとキャリッジとの相対的直線運動に伴って軌道溝内を転動するようになっている。なお、キャリッジには、軌道溝の両端をつなぐ戻し通路が形成されており、転動体は軌道溝及び戻し通路を循環するようになっている。
さらに、リニアガイド装置は、該リニアガイド装置の動きを締結するブレーキ又はクラッチを備える。車両10が停車しているときのように搭乗部14の動作が不要であるときには、ブレーキによって案内レールにキャリッジを固定することで、第1ガイド部41と第1移動部42との相対的位置関係を保持する。そして、動作が必要であるときには、このブレーキを解除し、第1ガイド部41の基準位置からの距離が所定値となるように制御される。
また、前記第2移動機構は、リニアガイド装置等の低抵抗の直線移動機構、及び、多段アクチュエータである多段能動重量部用アクチュエータの第2段アクチュエータとしての第2制御用モータ52bを備え、該第2制御用モータ52bによって第2移動部44を駆動し、第2ガイド部43に沿って前後方向にスライドさせるようになっている。なお、搭乗部部アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、回転式の電気モータと該電気モータの回転を往復動に変換するボールねじ機構とを含むユニット等を使用することもできるが、ここでは、出力は低いが、応答性が高く、位置決め精度が高いリニアモータを第2制御用モータ52bとして使用するものとして説明する。
前記リニアガイド装置は、例えば、第2ガイド部43に取り付けられている案内レールと、第2移動部44に取り付けられ、案内レールに沿ってスライドするキャリッジと、案内レールとキャリッジとの間に介在するボール、コロ等の転動体とを備える。さらに、リニアガイド装置の動きを締結するブレーキ又はクラッチを備える。その他の点については、前記第1移動機構におけるリニアガイド装置と同様であるので、その説明を省略する。
前記搭乗部14の脇(わき)には、ジョイスティックから成る操作装置31が配設されている。乗員15は、操作装置31を操作することによって、車両10を操縦する、すなわち、車両10の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するようになっている。なお、乗員15が操作して走行指令を入力することができる装置であれば、ジョイスティックに代えて他の装置、例えば、ペダル、ハンドル、ジョグダイヤル、タッチパネル、押しボタン等の装置を操作装置31として使用することもできる。
なお、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、前記操作装置31に代えて、コントローラからの走行指令を有線又は無線で受信する受信装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。また、車両10があらかじめ決められた走行指令データに従って自動走行する場合には、前記操作装置31に代えて、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体に記憶された走行指令データを読み取るデータ読取り装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。
また、車両10は、車両制御装置としての制御ECU(Electronic Control Unit)20を有し、該制御ECU20は、車体基本制御システム21及びモータ指令値分担システム22を備える。前記制御ECU20並びに車体基本制御システム21及びモータ指令値分担システム22は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、車両10の各部の動作を制御するコンピュータシステムであり、例えば、本体部11に配設されるが、支持部13や搭乗部14に配設されていてもよい。また、前記車体基本制御システム21及びモータ指令値分担システム22は、それぞれ、別個に構成されていてもよいし、一体に構成されていてもよい。
そして、車体基本制御システム21は、操作装置31からの走行指令とともに走行、姿勢制御用センサ32の信号を受信し、タイヤ用モータ51並びに第1制御用モータ52a及び第2制御用モータ52bの動作を制御する。なお、第1制御用モータ52a及び第2制御用モータ52bを統合的に説明する場合には、制御用モータ52として説明する。
また、前記走行、姿勢制御用センサ32は、駆動輪回転状態計測装置としての車輪回転計33、車体傾斜状態計測装置としての車体傾斜角度計34、及び、能動重量部移動状態計測装置としてのスライド用位置センサ35を備える。
前記車輪回転計33は、レゾルバ、エンコーダ等から成り、駆動輪12の回転状態を示す駆動輪回転角及び/又は回転角速度を検出し、車体基本制御システム21に送信する。そして、該車体基本制御システム21は、駆動トルク指令値をタイヤ用モータ51に送信する。すると、該タイヤ用モータ51は、駆動アクチュエータとして機能し、前記駆動トルク指令値に従って駆動輪12に駆動トルクを付与する。
また、前記スライド用位置センサ35は、エンコーダ等から成り、搭乗部14の移動状態を示す能動重量部位置及び/又は移動速度を検出し、車体基本制御システム21に送信する。そして、該車体基本制御システム21は、能動重量部推力指令値をモータ指令値分担システム22を介して、能動重量部アクチュエータとして機能する制御用モータ52に送信する。すると、該制御用モータ52は、前記能動重量部推力指令値に従って搭乗部14を並進移動させる推力を発生する。
さらに、前記車体傾斜角度計34は、加速度センサ、ジャイロセンサ等から成り、車体の傾斜状態を示す車体傾斜角及び/又は傾斜角速度を検出し、車体基本制御システム21に送信する。そして、該車体基本制御システム21は、駆動トルク指令値をタイヤ用モータ51に送信し、能動重量部推力指令値をモータ指令値分担システム22を介して、制御用モータ52に送信する。
また、モータ指令値分担システム22は、能動重量部推力指令値を第1制御用モータ52aと第2制御用モータ52bとに分配し、これにより、前記第1制御用モータ52aと第2制御用モータ52bとを制御パラメータの区分に応じて使い分ける。
ここで、制御パラメータは、例えば、能動重量部アクチュエータに搭乗部14を移動させる、すなわち、変位させるための推力を指令する能動重量部推力指令、搭乗部14の移動量、すなわち、変位量を指令する能動重量部変位指令、操作装置31から入力された走行指令等である。
また、前記制御パラメータは、絶対値の大きさ又は周波数に基づいて複数の区分に区分けされる。具体的には、あらかじめ設定された単数又は複数の閾(しきい)値によって複数の区分に区分けされる。
例えば、能動重量部推力指令は、その絶対値をN個の閾値と比較することによって、大から小までN+1個の区分に区分けすることができる。また、例えば、能動重量部推力指令は、その周波数成分を、N個の閾値と比較することによって、低い周波数成分から高い周波数成分までN+1個の区分に区分けすることができる。ここでは、説明の都合上、単数の閾値と比較することによって、制御パラメータを2つの区分に区分けした例についてのみ説明することとする。
次に、制御パラメータの区分に応じて、多段アクチュエータとしての第1制御用モータ52aと第2制御用モータ52bとを使い分ける動作について説明する。まず、制御パラメータが搭乗部14を移動させる推力の大きさである場合について説明する。
図3は本発明の実施の形態における推力の大きさに応じて多段アクチュエータを使い分ける動作を説明するフローチャートである。
ここでは、能動重量部推力指令の絶対値の大きさf、すなわち、推力fをあらかじめ設定された閾値Fと比較するものとする。
まず、モータ指令値分担システム22は、車体基本制御システム21から制御計算結果を取得する(ステップS1)。該制御計算結果は、後述される走行及び姿勢制御処理において算出される制御用モータ52の出力としての推力fである。
続いて、モータ指令値分担システム22は、制御用モータ52の出力としての推力fをあらかじめ設定された閾値Fと比較する、すなわち、閾値Fとの比較を行う(ステップS2)。
そして、推力fが閾値F以上である場合、すなわち、f≧Fである場合には、高い出力を発生する必要があるので、モータ指令値分担システム22は、第1制御用モータ52aを作動させる(ステップS3)。また、推力fが閾値F未満である場合、すなわち、f<Fである場合には、高い出力を発生する必要がないので、モータ指令値分担システム22は、第2制御用モータ52bを作動させる(ステップS4)。
次に、能動重量部推力指令を周波数に基づいて2つの区分に区分けする場合について説明する。
図4は本発明の実施の形態における制御パラメータを高周波成分と低周波成分とに分解する方法を説明する図、図5は本発明の実施の形態における制御パラメータの高周波成分と低周波成分とに応じて多段アクチュエータを使い分ける動作を説明するフローチャートである。なお、図4において、(a)は制御パラメータの波形を示し、(b)はフーリエ変換の結果を示している。
車体基本制御システム21が出力する能動重量部推力指令は、例えば、図4(a)に示されるような波形を有する時間の関数として表される。そして、該関数をフーリエ変換することによって、図4(b)に示されるように、周波数成分に分解される。該周波数成分は、閾値として設定された所定の周波数以上の高周波成分と所定の周波数未満の低周波成分とに分けることができる。
まず、モータ指令値分担システム22は、車体基本制御システム21から能動重量部推力指令、すなわち、制御計算結果を取得する(ステップS11)。
続いて、モータ指令値分担システム22は、ローパスフィルタによって、前記能動重量部推力指令の低周波成分を抽出する、すなわち、低周波成分の抜き取りを行う(ステップS12)。そして、モータ指令値分担システム22は能動重量部推力指令の低周波成分によって、第1制御用モータ52aを作動させる(ステップS13)。低周波成分の場合、高い精度の制御を必要としないので、比較的応答性が低く、位置決め精度が低い電気モータとボールねじ機構とを含むユニットである第1制御用モータ52aを作動させる。
また、モータ指令値分担システム22は、ハイパスフィルタによって、前記能動重量部推力指令の高周波成分を抽出する、すなわち、高周波成分の抜き取りを行う(ステップS14)。そして、モータ指令値分担システム22は能動重量部推力指令の高周波成分によって、第2制御用モータ52bを作動させる(ステップS15)。高周波成分の場合、高い精度の制御を必要とするので、応答性が高く、位置決め精度が高いリニアモータである第2制御用モータ52bを作動させる。
このように、本実施の形態においては、制御パラメータの区分に応じて、第1制御用モータ52aと第2制御用モータ52bとを使い分けるので、出力が高い第1制御用モータ52aと、応答性が高く、位置決め精度が高く、かつ、消費するエネルギ量の少ない第2制御用モータ52bとを適切に使用することができ、広い制御範囲に亘って、搭乗部14の制御の応答性及び精度を高めることができ、かつ、エネルギ消費量を抑制することができる。
次に、車両10の走行及び姿勢制御処理について説明する。
図6は本発明の実施の形態における車両の走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態において、重心位置の初期調整が終了した車両10は、走行及び姿勢制御処理を実行することによって、安定して停止及び走行することができるようになっている。
走行及び姿勢制御処理において、制御ECU20は、まず、状態量の取得処理を実行し(ステップS21)、各センサ、すなわち、車輪回転計33、車体傾斜角度計34及びスライド用位置センサ35によって、駆動輪12の回転状態、車体の傾斜状態及び搭乗部14の移動状態を取得する。
次に、制御ECU20は、路面勾(こう)配の取得処理を実行し(ステップS22)、状態量の取得処理で取得した状態量、すなわち、駆動輪12の回転状態、車体の傾斜状態及び搭乗部14の移動状態と、各アクチュエータの出力値、すなわち、タイヤ用モータ51及び制御用モータ52の出力値とに基づき、オブザーバによって路面勾配を推定する。ここで、前記オブザーバは、力学的なモデルに基づいて、制御系の内部状態を観測する方法であり、ワイヤードロジック又はソフトロジックで構成される。
次に、制御ECU20は、目標走行状態の決定処理を実行し(ステップS23)、操作装置31の操作量に基づいて、車両10の加速度の目標値、及び、駆動輪12の回転角速度の目標値を決定する。
次に、制御ECU20は、目標車体姿勢の決定処理を実行し(ステップS24)、路面勾配の取得処理によって取得された路面勾配と、目標走行状態の決定処理によって決定された車両10の加速度の目標値とに基づいて、車体姿勢の目標値、すなわち、車体傾斜角及び能動重量部位置の目標値を決定する。
最後に、制御ECU20は、アクチュエータ出力の決定処理を実行し(ステップS25)、状態量の取得処理によって取得された各状態量、路面勾配の取得処理によって取得された路面勾配、目標走行状態の決定処理によって決定された目標走行状態、及び、目標車体姿勢の決定処理によって決定された目標車体姿勢に基づいて、各アクチュエータの出力、すなわち、タイヤ用モータ51及び制御用モータ52の出力を決定する。
次に、走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。まず、状態量の取得処理について説明する。
図7は本発明の実施の形態における車両の力学モデル及びそのパラメータを示す図、図8は本発明の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態においては、状態量やパラメータを次のような記号によって表す。なお、図7には状態量やパラメータの一部が示されている。
θW :駆動輪回転角〔rad〕
θ1 :車体傾斜角(鉛直軸基準)〔rad〕
λS :能動重量部位置(車体中心点基準)〔m〕
τW :駆動トルク(2つの駆動輪の合計)〔Nm〕
SS :能動重量部推力〔N〕
g:重力加速度〔m/s2 〕
η:路面勾配〔rad〕
mW :駆動輪質量(2つの駆動輪の合計)〔kg〕
RW :駆動輪接地半径〔m〕
IW :駆動輪慣性モーメント(2つの駆動輪の合計)〔kgm2 〕
DW :駆動輪回転に対する粘性減衰係数〔Ns/rad〕
m1 :車体質量(能動重量部を含む)〔kg〕
l1 :車体重心距離(車軸から)〔m〕
I1 :車体慣性モーメント(重心周り)〔kgm2 〕
D1 :車体傾斜に対する粘性減衰係数〔Ns/rad〕
mS :能動重量部質量〔kg〕
lS :能動重量部重心距離(車軸から)〔m〕
IS :能動重量部慣性モーメント(重心周り)〔kgm2 〕
DS :能動重量部並進に対する粘性減衰係数〔Ns/rad〕
θW :駆動輪回転角〔rad〕
θ1 :車体傾斜角(鉛直軸基準)〔rad〕
λS :能動重量部位置(車体中心点基準)〔m〕
τW :駆動トルク(2つの駆動輪の合計)〔Nm〕
SS :能動重量部推力〔N〕
g:重力加速度〔m/s2 〕
η:路面勾配〔rad〕
mW :駆動輪質量(2つの駆動輪の合計)〔kg〕
RW :駆動輪接地半径〔m〕
IW :駆動輪慣性モーメント(2つの駆動輪の合計)〔kgm2 〕
DW :駆動輪回転に対する粘性減衰係数〔Ns/rad〕
m1 :車体質量(能動重量部を含む)〔kg〕
l1 :車体重心距離(車軸から)〔m〕
I1 :車体慣性モーメント(重心周り)〔kgm2 〕
D1 :車体傾斜に対する粘性減衰係数〔Ns/rad〕
mS :能動重量部質量〔kg〕
lS :能動重量部重心距離(車軸から)〔m〕
IS :能動重量部慣性モーメント(重心周り)〔kgm2 〕
DS :能動重量部並進に対する粘性減衰係数〔Ns/rad〕
次に、路面勾配の取得処理について説明する。
図9は本発明の実施の形態における路面勾配の取得処理の動作を示すフローチャートである。
路面勾配の取得処理において、制御ECU20は、路面勾配ηを推定する(ステップS22−1)。この場合、状態量の取得処理で取得した各状態量と、前回(一つ前の時間ステップ)の走行及び姿勢制御処理におけるアクチュエータ出力の決定処理で決定した各アクチュエータの出力とに基づき、次の式(1)により、路面勾配ηを推定する。
このように、本実施の形態においては、タイヤ用モータ51が出力する駆動トルクと、状態量としての駆動輪回転角加速度、車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度とに基づいて路面勾配を推定する。この場合、駆動輪12の回転状態を示す駆動輪回転角加速度だけでなく、車体の姿勢変化を示す車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度をも考慮している。すなわち、倒立振り子の姿勢制御を利用した、いわゆる倒立型車両に特有の要素である車体の姿勢変化を考慮している。
次に、目標走行状態の決定処理について説明する。
図10は本発明の実施の形態における目標走行状態の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標走行状態の決定処理において、制御ECU20は、まず、操縦操作量を取得する(ステップS23−1)。この場合、乗員15が、車両10の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するために操作した操作装置31の操作量を取得する。
続いて、制御ECU20は、取得した操作装置31の操作量に基づいて、車両加速度の目標値を決定する(ステップS23−2)。例えば、操作装置31の前後方向への操作量に比例した値を車両加速度の目標値とする。
続いて、制御ECU20は、決定した車両加速度の目標値から、駆動輪回転角速度の目標値を算出する(ステップS23−3)。例えば、車両加速度の目標値を時間積分し、駆動輪接地半径RW で除した値を駆動輪回転角速度の目標値とする。
次に、目標車体姿勢の決定処理について説明する。
図11は本発明の実施の形態における能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値の変化を示すグラフ、図12は本発明の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標車体姿勢の決定処理において、制御ECU20は、まず、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する(ステップS24−1)。この場合、目標走行状態の決定処理によって決定された車両加速度の目標値と、路面勾配の取得処理によって取得された路面勾配ηとに基づき、次の式(2)及び(3)により、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
続いて、制御ECU20は、残りの目標値を算出する(ステップS24−2)。すなわち、各目標値を時間微分又は時間積分することにより、駆動輪回転角、車体傾斜角速度及び能動重量部移動速度の目標値を算出する。
このように、本実施の形態においては、車両加速度に伴って車体に作用する慣性力及び駆動モータ反トルクだけでなく、路面勾配ηに応じた登坂トルクに伴って車体に作用する反トルクも考慮して、車体姿勢の目標値、すなわち、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
このとき、車体に作用して車体を傾斜させようとするトルク、すなわち、車体傾斜トルクを重力の作用によって打ち消すように、車体の重心を移動させる。例えば、車両10が加速するとき及び坂を上るときには、搭乗部14を前方へ移動させ、あるいは、さらに車体を前方へ傾ける。また、車両10が減速するとき及び坂を下るときには、搭乗部14を後方へ移動させ、あるいは、さらに車体を後方へ傾ける。
本実施の形態においては、図11に示されるように、まず、車体を傾斜させずに搭乗部14を移動させ、該搭乗部14が能動重量部移動限界に達すると、車体の傾斜を開始させる。そのため、細かい加減速に対しては車体が前後に傾かないので、乗員15にとっての乗り心地が向上する。また、格別な急勾配でなければ、坂道の上でも車体が直立状態を維持するので、乗員15にとっての視界の確保が容易となる。さらに、格別な急勾配でなければ、坂道の上でも車体が大きく傾斜することがないので、車体の一部が路面に当接することが防止される。
なお、本実施の形態においては、能動重量部移動限界が前方と後方とで等しい場合を想定しているが、前方と後方とで異なる場合には、各々の限界に応じて、車体の傾斜の有無を切り替えるようにしてもよい。
次に、アクチュエータ出力の決定処理について説明する。
図13は本発明の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。
アクチュエータ出力の決定処理において、制御ECU20は、まず、各アクチュエータのフィードフォワード出力を決定する(ステップS25−1)。この場合、各目標値と路面勾配ηとから、後述の式(4)によりタイヤ用モータ51のフィードフォワード出力を決定し、また、同じく後述の式(5)により制御用モータ52のフィードフォワード出力を決定する。
このように、路面勾配ηに応じた登坂トルクを自動的に付加することにより、つまり、路面勾配ηに応じて駆動トルクを補正することにより、坂道であっても、平地と同様の操縦感覚を提供することができる。すなわち、坂道で停止した後、乗員15が操作装置31から手を放しても、車両10は動くことがない。また、坂道の上であっても、操作装置31の一定の操縦操作に対して、平地と同様の加減速を行うことができる。
このように、本実施の形態においては、理論的にフィードフォワード出力を与えることによって、より高精度な制御を実現する。
なお、必要に応じて、フィードフォワード出力を省略することもできる。この場合、フィードバック制御により、定常偏差を伴いつつ、フィードフォワード出力に近い値が間接的に与えられる。また、前記定常偏差は、積分ゲインを適用することによって低減させることができる。
続いて、制御ECU20は、各アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップS25−2)。この場合、各目標値と実際の状態量との偏差から、後述の式(6)によりタイヤ用モータ51のフィードバック出力を決定し、また、同じく後述の式(7)により制御用モータ52のフィードバック出力を決定する。
なお、スライディングモード制御等の非線形のフィードバック制御を導入することもできる。また、より簡単な制御として、KW2、KW3及びKS5を除くフィードバックゲインのいくつかをゼロとしてもよい。さらに、定常偏差をなくすために、積分ゲインを導入してもよい。
最後に、制御ECU20は、各要素制御システムに指令値を与える(ステップS25−3)。この場合、制御ECU20は、前述のように決定したフィードフォワード出力とフィードバック出力との和を駆動トルク指令値及び能動重量部推力指令値として、タイヤ用モータ51及び制御用モータ52に送信する。
このように、本実施の形態においては、車両10の姿勢を制御するために搭乗部14の位置を制御するための制御用モータ52として、出力が高い第1制御用モータ52aと、応答性が高く、位置決め精度が高く、かつ、消費するエネルギ量の少ない第2制御用モータ52bとが配設されている。そして、制御パラメータの区分に応じて第1制御用モータ52aと第2制御用モータ52bとを使い分ける。
これにより、広い制御範囲に亘って、搭乗部14の制御の応答性及び精度を高めることができ、かつ、エネルギ消費量を抑制することができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
10 車両
12 駆動輪
14 搭乗部
20 制御ECU
31 操作装置
12 駆動輪
14 搭乗部
20 制御ECU
31 操作装置
Claims (3)
- 車体と、
該車体に回転可能に取り付けられた駆動輪と、
前後方向に移動可能に前記車体に取り付けられた能動重量部と、
該能動重量部を移動させる複数のアクチュエータと、
走行指令を入力する操作装置と、
該操作装置から入力された走行指令に応じ、前記駆動輪に付与する駆動トルク及び前記能動重量部の位置を制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、
該車両制御装置は、制御パラメータの区分に応じて前記複数のアクチュエータを使い分けることを特徴とする車両。 - 前記制御パラメータは、前記能動重量部を変位させるための推力を指令する能動重量部推力指令、前記能動重量部の変位量を指令する能動重量部変位指令、又は、前記操作装置から入力された走行指令である請求項1に記載の車両。
- 前記制御パラメータは、絶対値の大きさ又は周波数に基づいて複数の区分に区分けされる請求項1に記載の車両。
Priority Applications (1)
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JP2008167060A JP2010006207A (ja) | 2008-06-26 | 2008-06-26 | 車両 |
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JP2008167060A JP2010006207A (ja) | 2008-06-26 | 2008-06-26 | 車両 |
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JP2008167060A Withdrawn JP2010006207A (ja) | 2008-06-26 | 2008-06-26 | 車両 |
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KR20120045530A (ko) * | 2010-10-29 | 2012-05-09 | 엘지이노텍 주식회사 | 발광 소자 |
-
2008
- 2008-06-26 JP JP2008167060A patent/JP2010006207A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
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KR20120045530A (ko) * | 2010-10-29 | 2012-05-09 | 엘지이노텍 주식회사 | 발광 소자 |
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