JP5200574B2 - 車両 - Google Patents

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Description

本発明は、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関するものである。
従来、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関する技術が提案されている。例えば、同軸上に配置された2つの駆動輪を有し、運転者の重心移動による車体の姿勢変化を感知して駆動する車両、球体状の単一の駆動輪に取り付けられた車体の姿勢を制御しながら移動する車両等の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この場合、センサで車体のバランスや動作の状態を検出しながら、回転体の動作を制御して車両を停止又は移動させるようになっている。
特開2007−219986号公報
しかしながら、前記従来の車両においては、段差を乗り降りする際に、段差を昇降するための駆動トルクを追加する制御動作である段差昇降制御において、追加された駆動トルクを車体の重心移動による重力トルクで打ち消すような車体姿勢の制御を試みても、車体姿勢の目標値の急激な変化に対して実動作が遅れることによって、車体姿勢の制御が不十分になり、車両が不必要に加減速したり、車体が大きく傾いたりしてしまうことがある。これは、一般に、駆動トルクを追加する制御の応答速度に比べて車体姿勢の制御の応答速度が低いためであるが、車体姿勢の制御の応答速度を高めるためには、高出力のアクチュエータが必要となるので、車両重量やコストが増加してしまう。また、車体姿勢の制御の応答速度が高すぎると、搭乗者にとって乗り心地が悪化してしまう。
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、段差昇降トルクにより車体に作用する反トルクを車両の加減速による慣性力で打ち消すように、走行指令に応じて決定される車両加速度の目標値を補正することによって、段差昇降時における車体姿勢の急激な変化を抑制し、段差のある場所でも安全に、かつ、快適に走行することができる車両を提供することを目的とする。
そのために、本発明の車両においては、車体と、該車体に回転可能に取り付けられた駆動輪と、走行指令を入力する入力装置と、該入力装置から入力された走行指令に基づき、前記駆動輪に付与する駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、路面の段差を昇降する最中、前記駆動輪に前記段差に応じた駆動トルクを追加するとともに、前記走行指令に応じて決定される車両加速度の目標値を補正する車両であって、前記段差の昇降完了時の予測される車両速度である車両終速度予測値を予測する車両終速度予測手段を備え、前記車両制御装置は、前記車両終速度予測値に応じて前記車両加速度の目標値の補正量を変化させる
本発明の他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、前記路面の段差を上る場合には進行方向の前記車両加速度の目標値を減少させ、前記路面の段差を下る場合には進行方向の前記車両加速度の目標値を増加させる。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、前記段差に応じて追加された駆動トルクによって車体に作用する反トルクを車両の加減速による慣性力で打ち消すように、前記車両加速度の目標値を補正する。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両加速度の目標値の補正量は、前記段差に応じて追加される駆動トルクに比例して設定される。
本発明の更に他の車両においては、さらに、車両終速度予測値は、前記駆動輪の回転角速度と、前記段差による抵抗である段差抵抗トルクと、前記走行指令に応じて決定される車両加速度の目標値に基づいて決定される。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、前記車両終速度予測値が所定の第1の閾(しきい)値以下である場合には前記車両加速度の目標値の補正量をゼロにする。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、前記車両終速度予測値が所定の第2の閾値以上である場合には、前記段差に応じて追加された駆動トルクによって車体に作用する反トルクが車両の加減速に伴う慣性力によって車体に作用するトルクと等しくなるような前記車両加速度の目標値の補正量である基準値を前記車両加速度の目標値の補正量とする。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、前記車両終速度予測値が前記第1の閾値と前記第2の閾値との間の範囲にある場合には、前記車両加速度の目標値の補正量をゼロから前記基準値まで遷移させる。
請求項1の構成によれば、段差昇降時における車体姿勢の急激な変化を抑制することで、段差に乗り上げるときにも、段差を降りるときにも走行状態及び車体の姿勢を安定に保持し、段差のある場所でも安全に、かつ、快適に走行することができる。また、車両終速度を正確に予測することで、任意の車両速度に対して、より適切に車両加速度の目標値を補正することができる。
請求項2の構成によれば、昇降する段差に適した車両加速度の目標値の補正を行うことで、任意の段差に対して、安定した段差の乗り降りを実現することができる。
請求項3の構成によれば、車両速度に適した車両加速度の目標値の補正を行うことで、任意の車両速度に対して、安定した段差の乗り降りを実現することができる。
請求項4の構成によれば、車両速度が低いときに段差を上りきれなくなるような車両加速度の目標値の補正を、確実に防止することができる。
請求項の構成によれば、車両速度が高いときには、車体姿勢を全く変化させずに段差の昇降を行うことで、快適な段差の乗り降りを実現することができる。
請求項の構成によれば、車両速度による制御の切替に伴う走行状態や車体の姿勢の急激な変化を防ぐことで、安全で快適な段差の乗り降りを実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における車両の構成を示す概略図であり乗員が搭乗した状態で加速前進している状態を示す図、図2は本発明の第1の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。
図1において、10は、本実施の形態における車両であり、車体の本体部11、駆動輪12、支持部13及び乗員15が搭乗する搭乗部14を有し、前記車両10は、車体を前後に傾斜させることができるようになっている。そして、倒立振り子の姿勢制御と同様に車体の姿勢を制御する。図1に示される例においては、車両10は矢印Aで示される方向に加速中であり、車体が進行方向に傾斜した状態が示されている。
前記駆動輪12は、車体の一部である支持部13に対して回転可能に支持され、駆動アクチュエータとしての駆動モータ52によって駆動される。なお、駆動輪12の軸は図1に示す平面に垂直な方向に存在し、駆動輪12はその軸を中心に回転する。また、前記駆動輪12は、単数であっても複数であってもよいが、複数である場合、同軸上に並列に配設される。本実施の形態においては、駆動輪12が2つであるものとして説明する。この場合、各駆動輪12は個別の駆動モータ52によって独立して駆動される。なお、駆動アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、内燃機関等を使用することもできるが、ここでは、電気モータである駆動モータ52を使用するものとして説明する。
また、車体の一部である本体部11は、支持部13によって下方から支持され、駆動輪12の上方に位置する。そして、本体部11には、能動重量部として機能する搭乗部14が、車両10の前後方向へ本体部11と相対的に移動可能となるように、換言すると、車体回転円の接線方向に相対的に移動可能となるように、取り付けられている。
ここで、能動重量部は、ある程度の質量を有し、本体部11に対して前後に移動させることによって、車両10の重心位置を能動的に補正するものである。そして、能動重量部は、必ずしも搭乗部14である必要はなく、例えば、バッテリ等の重量のある周辺機器を本体部11に対して移動可能に取り付けた装置であってもよいし、ウェイト、錘(おもり)、バランサ等の専用の重量部材を本体部11に対して移動可能に取り付けた装置であってもよい。また、搭乗部14、重量のある周辺機器、専用の重量部材等を併用するものであってもよい。
また、本実施の形態においては、説明の都合上、乗員15が搭乗した状態の搭乗部14が能動重量部として機能する例について説明するが、搭乗部14には必ずしも乗員15が搭乗している必要はなく、例えば、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、搭乗部14に乗員15が搭乗していなくてもよいし、乗員15に代えて、貨物が積載されていてもよい。
前記搭乗部14は、乗用車、バス等の自動車に使用されるシートと同様のものであり、座面部14a、背もたれ部14b及びヘッドレスト14cを備え、図示されない移動機構を介して本体部11に取り付けられている。
前記移動機構は、リニアガイド装置等の低抵抗の直線移動機構、及び、能動重量部アクチュエータとしての能動重量部モータ62を備え、該能動重量部モータ62によって搭乗部14を駆動し、本体部11に対して車両進行方向に前後させるようになっている。なお、能動重量部アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、リニアモータ等を使用することもできるが、ここでは、回転式の電気モータである能動重量部モータ62を使用するものとして説明する。
リニアガイド装置は、例えば、本体部11に取り付けられている案内レールと、搭乗部14に取り付けられ、案内レールに沿ってスライドするキャリッジと、案内レールとキャリッジとの間に介在するボール、コロ等の転動体とを備える。そして、案内レールには、その左右側面部に2本の軌道溝が長手方向に沿って直線状に形成されている。また、キャリッジの断面はコ字状に形成され、その対向する2つの側面部内側には、2本の軌道溝が、案内レールの軌道溝と各々対向するように形成されている。転動体は、軌道溝の間に組み込まれており、案内レールとキャリッジとの相対的直線運動に伴って軌道溝内を転動するようになっている。なお、キャリッジには、軌道溝の両端をつなぐ戻し通路が形成されており、転動体は軌道溝及び戻し通路を循環するようになっている。
また、リニアガイド装置は、該リニアガイド装置の動きを締結するブレーキ又はクラッチを備える。車両10が停車しているときのように搭乗部14の動作が不要であるときには、ブレーキによって案内レールにキャリッジを固定することで、本体部11と搭乗部14との相対的位置関係を保持する。そして、動作が必要であるときには、このブレーキを解除し、本体部11側の基準位置と搭乗部14側の基準位置との距離が所定値となるように制御される。
前記搭乗部14の脇(わき)には、目標走行状態取得装置としてのジョイスティック31を備える入力装置30が配設されている。乗員15は、操縦装置であるジョイスティック31を操作することによって、車両10を操縦する、すなわち、車両10の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するようになっている。なお、乗員15が操作して走行指令を入力することができる装置であれば、ジョイスティック31に代えて他の装置、例えば、ペダル、ハンドル、ジョグダイヤル、タッチパネル、押しボタン等の装置を目標走行状態取得装置として使用することもできる。
なお、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、前記ジョイスティック31に代えて、コントローラからの走行指令を有線又は無線で受信する受信装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。また、車両10があらかじめ決められた走行指令データに従って自動走行する場合には、前記ジョイスティック31に代えて、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体に記憶された走行指令データを読み取るデータ読取り装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。
また、車両10は、車両制御装置としての制御ECU(Electronic Control Unit)20を有し、該制御ECU20は、主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23を備える。前記制御ECU20並びに主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、車両10の各部の動作を制御するコンピュータシステムであり、例えば、本体部11に配設されるが、支持部13や搭乗部14に配設されていてもよい。また、前記主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23は、それぞれ、別個に構成されていてもよいし、一体に構成されていてもよい。
そして、主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22、駆動輪センサ51及び駆動モータ52とともに、駆動輪12の動作を制御する駆動輪制御システム50の一部として機能する。前記駆動輪センサ51は、レゾルバ、エンコーダ等から成り、駆動輪回転状態計測装置として機能し、駆動輪12の回転状態を示す駆動輪回転角及び/又は回転角速度を検出し、主制御ECU21に送信する。また、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、該駆動輪制御ECU22は、受信した駆動トルク指令値に相当する入力電圧を駆動モータ52に供給する。そして、該駆動モータ52は、入力電圧に従って駆動輪12に駆動トルクを付与し、これにより、駆動アクチュエータとして機能する。
また、主制御ECU21は、能動重量部制御ECU23、能動重量部センサ61及び能動重量部モータ62とともに、能動重量部である搭乗部14の動作を制御する能動重量部制御システム60の一部として機能する。前記能動重量部センサ61は、エンコーダ等から成り、能動重量部移動状態計測装置として機能し、搭乗部14の移動状態を示す能動重量部位置及び/又は移動速度を検出し、主制御ECU21に送信する。また、該主制御ECU21は、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信し、該能動重量部制御ECU23は、受信した能動重量部推力指令値に相当する入力電圧を能動重量部モータ62に供給する。そして、該能動重量部モータ62は、入力電圧に従って搭乗部14を並進移動させる推力を搭乗部14に付与し、これにより、能動重量部アクチュエータとして機能する。
さらに、主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22、能動重量部制御ECU23、車体傾斜センサ41、駆動モータ52及び能動重量部モータ62とともに、車体の姿勢を制御する車体制御システム40の一部として機能する。前記車体傾斜センサ41は、加速度センサ、ジャイロセンサ等から成り、車体傾斜状態計測装置として機能し、車体の傾斜状態を示す車体傾斜角及び/又は傾斜角速度を検出し、主制御ECU21に送信する。そして、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信する。
なお、主制御ECU21には、入力装置30のジョイスティック31から走行指令が入力される。そして、前記主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信する。
また、前記制御ECU20は、車両10の走行状態及び車体姿勢の時間変化に基づいて段差抵抗トルクを推定する段差抵抗トルク推定手段として機能する。また、目標走行状態及び段差抵抗トルクに応じて目標とする車体姿勢、すなわち、車体傾斜状態及び/又は能動重量部移動状態を決定する目標車体姿勢決定手段として機能する。さらに、各センサによって取得した車両10の走行状態及び車体姿勢、並びに、目標走行状態、目標車体姿勢及び段差抵抗トルクに応じて各アクチュエータの出力を決定するアクチュエータ出力決定手段として機能する。具体的には、段差抵抗トルクに応じて追加する駆動トルクを決定する段差昇降トルク決定手段、及び、段差昇降トルクに応じて車体の重心補正量を決定する重心補正量決定手段として機能する。
なお、各センサは、複数の状態量を取得するものであってもよい。例えば、車体傾斜センサ41として加速度センサとジャイロセンサとを併用し、両者の計測値から車体傾斜角と車体傾斜角速度を決定してもよい。
次に、前記構成の車両10の動作について説明する。まず、走行及び姿勢制御処理の概要について説明する。
図3は本発明の第1の実施の形態における車両の段差昇降動作を示す概略図、図4は本発明の第1の実施の形態における車両の走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。なお、図3(a)は比較のための従来技術による動作例を示し、図3(b)は本実施の形態による動作を示している。
「背景技術」の項で説明したような従来の車両の場合、図3(a)に示されるように、段差に乗り上げるために駆動輪12に付与した駆動トルクの反作用、すなわち、反トルクが車体に作用するので、車体が後方に傾いてしまう。そのため、段差に乗り上げるときに、安定した車体姿勢及び走行の制御を行うことができない。
これに対し、本実施の形態においては、搭乗部14が能動重量部として機能し、図3(b)に示されるように、搭乗部14を前後に移動させることによって、車両10の重心位置を能動的に補正する。これにより、段差に乗り上げるときには、車体の重心を前方に移動させるので、段差に乗り上げるための駆動トルクを駆動輪12に付与したときの反作用、すなわち、反トルクが車体に作用しても、車体が後方に傾いてしまうことがない。したがって、段差に乗り上げるときにも安定した車体姿勢及び走行の制御を行うことができる。本実施の形態は、特に停止状態及び低速走行状態から段差に進入する場合に効果的である。
また、段差に乗り上げるための駆動トルクを、乗り上げ動作の間、リアルタイムで推定して駆動輪12に付与する。これにより、任意の形状の段差に対して、安定した乗り上げが可能となる。
すなわち、本実施の形態においては、車両10の重心位置補正や駆動トルクの付与を含む走行及び姿勢制御処理を実行することによって、車両10は安定して段差を昇降することができる。
走行及び姿勢制御処理において、制御ECU20は、まず、状態量の取得処理を実行し(ステップS1)、各センサ、すなわち、駆動輪センサ51、車体傾斜センサ41及び能動重量部センサ61によって、駆動輪12の回転状態、車体の傾斜状態及び搭乗部14の移動状態を取得する。
次に、制御ECU20は、段差昇降トルクの決定処理を実行し(ステップS2)、状態量の取得処理で取得した状態量、すなわち、駆動輪12の回転状態、車体の傾斜状態及び搭乗部14の移動状態と、各アクチュエータの出力値、すなわち、駆動モータ52及び能動重量部モータ62の出力値に基づき、オブザーバによって段差抵抗トルクを推定し、段差昇降トルクを決定する。ここで、前記オブザーバは、力学的なモデルに基づいて、制御系の内部状態を観測する方法であり、ワイヤードロジック又はソフトロジックで構成される。
次に、制御ECU20は、目標走行状態の決定処理を実行し(ステップS3)、ジョイスティック31の操作量に基づいて、車両10の加速度の目標値、及び、駆動輪12の回転角速度の目標値を決定する。
次に、制御ECU20は、目標車体姿勢の決定処理を実行し(ステップS4)、段差昇降トルクの決定処理によって決定された段差昇降トルクと、目標走行状態の決定処理によって決定された車両10の加速度の目標値に基づいて、車体姿勢の目標値、すなわち、車体傾斜角及び能動重量部位置の目標値を決定する。
最後に、制御ECU20は、アクチュエータ出力の決定処理を実行し(ステップS5)、状態量の取得処理によって取得された各状態量、段差昇降トルクの決定処理によって決定された段差昇降トルク、目標走行状態の決定処理によって決定された目標走行状態、及び、目標車体姿勢の決定処理によって決定された目標車体姿勢に基づいて、各アクチュエータの出力、すなわち、駆動モータ52及び能動重量部モータ62の出力を決定する。
次に、走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。まず、状態量の取得処理について説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態における車両の力学モデル及びそのパラメータを示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態においては、状態量やパラメータを次のような記号によって表す。なお、図5には状態量やパラメータの一部が示されている。
θW :駆動輪回転角〔rad〕
θ1 :車体傾斜角(鉛直軸基準)〔rad〕
λS :能動重量部位置(車体中心点基準)〔m〕
τW :駆動トルク(2つの駆動輪の合計)〔Nm〕
S :能動重量部推力〔N〕
g:重力加速度〔m/s2
W :駆動輪質量(2つの駆動輪の合計)〔kg〕
W :駆動輪接地半径〔m〕
W :駆動輪慣性モーメント(2つの駆動輪の合計)〔kgm2
W :駆動輪回転に対する粘性減衰係数〔Ns/rad〕
1 :車体質量(能動重量部を含む)〔kg〕
1 :車体重心距離(車軸から)〔m〕
1 :車体慣性モーメント(重心周り)〔kgm2
1 :車体傾斜に対する粘性減衰係数〔Ns/rad〕
S :能動重量部質量〔kg〕
S :能動重量部重心距離(車軸から)〔m〕
S :能動重量部慣性モーメント(重心周り)〔kgm2
S :能動重量部並進に対する粘性減衰係数〔Ns/rad〕
Figure 0005200574
次に、段差昇降トルクの決定処理について説明する。
図7は本発明の第1の実施の形態における段差昇降トルクの決定処理の動作を示すフローチャートである。
段差昇降トルクの決定処理において、主制御ECU21は、まず、段差抵抗トルクτD を推定する(ステップS2−1)。この場合、状態量の取得処理で取得した各状態量と、前回(一つ前の時間ステップ)の走行及び姿勢制御処理におけるアクチュエータ出力の決定処理で決定した各アクチュエータの出力に基づき、次の式(1)により、段差抵抗トルクτD を推定する。
Figure 0005200574
続いて、主制御ECU21は、段差昇降トルクτC を決定する(ステップS2−2)。この場合、推定した段差抵抗トルクτD の値を段差昇降トルクτC の値とする。すなわち、τC =τD とする。
このように、本実施の形態においては、駆動モータ52が出力する駆動トルクと、状態量としての車両並進加速度を示す駆動輪回転角加速度、車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度とに基づいて段差抵抗トルクを推定する。この場合、駆動輪12の回転状態を示す駆動輪回転角加速度だけでなく、車体姿勢の変化を示す車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度も考慮している。すなわち、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両、いわゆる倒立型車両に特有の要素である車体姿勢の変化を考慮している。
従来においては、駆動トルクと駆動輪回転角加速度とに基づいて段差抵抗トルクを推定するため、特に車体の姿勢が変化しているとき、段差抵抗トルクの推定値に大きな誤差が生じることがあった。しかし、本実施の形態においては、車体の姿勢変化を示す車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度をも考慮して段差抵抗トルクを推定するので、大きな誤差が生じることがなく、高い精度で段差抵抗トルクを推定することができる。
一般的に、倒立型車両では、駆動輪と相対的に車体の重心が前後に移動するので、駆動輪が停止していても、車両の重心が前後に移動することがある。したがって、重心の加速度と駆動力、あるいは、駆動トルクとから段差抵抗トルクを高い精度で推定するためには、このような影響を考慮する必要がある。一般的な倒立型車両においては、車両全体に対する車体の重量比率が高く、かつ、段差昇降動作中の姿勢変化が大きいので、このような影響が大きくなる。
また、本実施の形態においては、段差の昇降動作中に変化する段差抵抗トルクを常に推定している。例えば、段差の昇降動作中に一定の駆動トルクを駆動輪12に付与すると、昇降終了直前に、車両10が不必要に加減速してしまうことがある。これは、例えば、段差に乗り上げる場合、車両10が段差を上るのと共に段差抵抗トルクが小さくなるためである。そこで、本実施の形態においては、段差昇降状態と共に変化する段差抵抗トルクの推定をリアルタイムで行い、その値を常に更新することで、常に段差の昇降動作に適した段差昇降トルクを付与するようになっている。
なお、段差抵抗トルクの推定値にローパスフィルタをかけることによって、推定値の高周波成分を除去することもできる。この場合、推定に時間遅れが生じるが、高周波成分に起因する振動を抑制することができる。
本実施の形態においては、慣性力のみを考慮しているが、駆動輪12の転がり抵抗や回転軸の摩擦による粘性抵抗、あるいは、車両10に作用する空気抵抗などを副次的な影響として考慮してもよい。
また、本実施の形態においては、駆動輪12の回転運動に関する線形モデルを使用しているが、より正確な非線形モデルを使用してもよいし、車体傾斜運動や能動重量部並進運動についてのモデルを使用してもよい。なお、非線形モデルについては、マップの形式で関数を適用することもできる。
さらに、計算の簡略化のために、車体姿勢の変化を考慮しなくてもよい。
次に、目標走行状態の決定処理について説明する。
図8は本発明の第1の実施の形態における目標走行状態の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標走行状態の決定処理において、主制御ECU21は、まず、操縦操作量を取得する(ステップS3−1)。この場合、乗員15が、車両10の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するために操作したジョイスティック31の操作量を取得する。
続いて、主制御ECU21は、取得したジョイスティック31の操作量に基づいて、車両加速度の目標値を決定する(ステップS3−2)。例えば、ジョイスティック31の前後方向への操作量に比例した値を車両加速度の目標値とする。
続いて、主制御ECU21は、決定した車両加速度の目標値から、駆動輪回転角速度の目標値を算出する(ステップS3−3)。例えば、車両加速度の目標値を時間積分し、駆動輪接地半径RW で除した値を駆動輪回転角速度の目標値とする。
次に、目標車体姿勢の決定処理について説明する。
図9は本発明の第1の実施の形態における能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値の変化を示すグラフ、図10は本発明の第1の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標車体姿勢の決定処理において、主制御ECU21は、まず、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する(ステップS4−1)。この場合、目標走行状態の決定処理によって決定された車両加速度の目標値と、段差昇降トルクの決定処理によって取得された段差昇降トルクτC に基づき、次の式(2)及び(3)により、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
Figure 0005200574
Figure 0005200574
続いて、主制御ECU21は、残りの目標値を算出する(ステップS4−2)。すなわち、各目標値を時間微分又は時間積分することにより、駆動輪回転角、車体傾斜角速度及び能動重量部移動速度の目標値を算出する。
このように、本実施の形態においては、車両加速度に伴って車体に作用する慣性力及び駆動モータ反トルクだけでなく、段差抵抗トルクτD に応じた段差昇降トルクτC に伴って車体に作用する反トルクも考慮して、車体姿勢の目標値、すなわち、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
このとき、車体に作用して車体を傾斜させようとするトルク、すなわち、車体傾斜トルクを重力の作用によって打ち消すように、車体の重心を移動させる。例えば、車両10が段差を上るときには、搭乗部14を前方へ移動させ、あるいは、さらに車体を前方へ傾ける。また、車両10が段差を下るときには、搭乗部14を後方へ移動させ、あるいは、さらに車体を後方へ傾ける。
本実施の形態においては、図9に示されるように、まず、車体を傾斜させずに搭乗部14を移動させ、該搭乗部14が能動重量部移動限界に達すると、車体の傾斜を開始させる。そのため、細かい加減速に対しては車体が前後に傾かないので、乗員15にとっての乗り心地が向上する。また、格別に高い段差でなければ、段差の上でも車体が直立状態を維持するので、乗員15にとっての視界の確保が容易となる。さらに、格別に高い段差でなければ、段差の上でも車体が大きく傾斜することがないので、車体の一部が路面に接触することが防止される。
なお、本実施の形態においては、能動重量部移動限界が前方と後方とで等しい場合を想定しているが、前方と後方とで異なる場合には、各々の限界に応じて、車体の傾斜の有無を切り替えるようにしてもよい。例えば、加速性能よりも制動性能を高く設定する場合、後方の能動重量部移動限界を前方の限界よりも遠くに設定する必要がある。
また、本実施の形態においては、加速度が低いときや段差が低いときには、搭乗部14の移動だけで対応させているが、その車体傾斜トルクの一部又は全部を車体の傾斜で対応させてもよい。車体を傾斜させることにより、乗員15に作用する前後方向の慣性力を軽減することができる。
さらに、本実施の形態においては、線形化した力学モデルに基づいた式を使用しているが、より正確な非線形モデル又は粘性抵抗を考慮したモデルに基づいた式を使用してもよい。なお、式が非線形になる場合には、マップの形式で関数を適用することもできる。
次に、アクチュエータ出力の決定処理について説明する。
図11は本発明の第1の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。
アクチュエータ出力の決定処理において、主制御ECU21は、まず、各アクチュエータのフィードフォワード出力を決定する(ステップS5−1)。この場合、各目標値と段差昇降トルクτC とから、次の式(4)により駆動モータ52のフィードフォワード出力を決定し、また、次の式(5)により能動重量部モータ62のフィードフォワード出力を決定する。
Figure 0005200574
このように、段差抵抗トルクτD に応じた段差昇降トルクτC を自動的に追加することにより、つまり、段差抵抗トルクτD に応じて駆動トルクを補正することにより、段差の昇降の際にも、平地と同様の操縦感覚を提供することができる。すなわち、平地と同様の操縦操作で段差を乗り降りすることができる。また、ジョイスティック31の一定の操縦操作に対して、段差の昇降の際に、車両10が不必要に加減速することがない。
Figure 0005200574
このように、本実施の形態においては、理論的にフィードフォワード出力を与えることによって、より高精度な制御を実現する。
なお、必要に応じて、フィードフォワード出力を省略することもできる。この場合、フィードバック制御により、定常偏差を伴いつつ、フィードフォワード出力に近い値が間接的に与えられる。また、前記定常偏差は、積分ゲインを適用することによって低減させることができる。
続いて、主制御ECU21は、各アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップS5−2)。この場合、各目標値と実際の状態量との偏差から、次の式(6)により駆動モータ52のフィードバック出力を決定し、また、次の式(7)により能動重量部モータ62のフィードバック出力を決定する。
Figure 0005200574
なお、スライディングモード制御等の非線形のフィードバック制御を導入することもできる。また、より簡単な制御として、KW2、KW3及びKS5を除くフィードバックゲインのいくつかをゼロとしてもよい。さらに、定常偏差をなくすために、積分ゲインを導入してもよい。
最後に、主制御ECU21は、各要素制御システムに指令値を与える(ステップS5−3)。この場合、主制御ECU21は、前述のように決定したフィードフォワード出力とフィードバック出力との和を駆動トルク指令値及び能動重量部推力指令値として、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23に送信する。
このように、本実施の形態においては、段差抵抗トルクτD をオブザーバによって推定し、段差昇降トルクτC を与えるとともに、搭乗部14を段差の上段方向に移動させる。そのため、段差の上でも車体を直立に保持することができ、段差の昇降にも対応することができる。また、段差を計測する装置が不要となり、システム構成を簡素化してコストを低減することができる。
さらに、車体の姿勢を示す車体傾斜角θ1 及び能動重量部位置λS を考慮して段差昇降トルクτC を推定するので、大きな誤差が生じることなく、極めて高い精度で段差昇降トルクτC を推定することができる。
なお、本実施の形態は、段差を上るときだけでなく、段差を降りるときにも有効であることを注記する。段差昇降トルクの付与によって段差降下時の車両の加速を抑えるのと共に、搭乗部14を後方に移動させることにより車体を直立に保持する。これは、以降で説明する第2及び第3の実施の形態でも同様である。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図12は本発明の第2の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図、図13は本発明の第2の実施の形態における車両の段差の昇降における動作を示す概略図である。
前記第1の実施の形態においては、搭乗部14が、車両10の前後方向に本体部11に対して相対的に並進可能となるように取り付けられ、能動重量部として機能する。この場合、能動重量部モータ62を備える移動機構が配設され、これにより搭乗部14を並進させるので、構造の複雑化、コストや重量の増加と共に、制御システムも複雑化する。一方、前記第1の実施の形態は、搭乗部14を移動させる移動機構を有していない倒立型車両に適用することは不可能である。
そこで、本実施の形態においては、搭乗部14を移動させる移動機構が省略されている。また、図12に示されるように、制御システムからも、能動重量部制御システム60が省略され、能動重量部制御ECU23、能動重量部センサ61及び能動重量部モータ62が省略されている。なお、その他の点の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
そして、本実施の形態においては、図13に示されるように、段差を昇降する際には、段差を昇降するための駆動輪12に付与する駆動トルク、すなわち、段差昇降トルクの反作用として車体に作用する反トルクとしての車体傾斜トルクに対し、車体を段差昇降トルクに応じた角度だけ段差の上段方向に傾けることにより、車体傾斜トルクを重力の作用で打ち消してバランスを保つようになっている。
なお、「背景技術」の項でも説明したように、例えば、段差に乗り上げるとき、必要な駆動トルクを駆動輪に付与すると、その反作用が車体に働くので、車体が段差と逆の方向、すなわち、段差の下段方向に大きく傾いてしまう。一方、車体の姿勢を直立に維持しようとすると、必要な駆動トルクを駆動輪に付与することができないので、段差に乗り上げることができなくなってしまう。また、段差を降りるときにも同様の現象が発生し、車体が前方に傾いてしまう。
これに対し、本実施の形態においては、段差の高さに適した角度だけ車体を段差の上段方向に意図的に傾けるので、段差の昇降の際にも、安定した車体の姿勢を保つことができ、段差のある場所でも安全に、かつ、快適に走行することができる。
次に、本実施の形態における走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。なお、走行及び姿勢制御処理の概要及び目標走行状態の決定処理については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略し、状態量の取得処理、段差昇降トルクの決定処理、目標車体姿勢の決定処理及びアクチュエータ出力の決定処理についてのみ説明する。まず、状態量の取得処理について説明する。
図14は本発明の第2の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。
Figure 0005200574
次に、段差昇降トルクの決定処理について説明する。
図15は本発明の第2の実施の形態における段差昇降トルクの決定処理の動作を示すフローチャートである。
段差昇降トルクの決定処理において、主制御ECU21は、段差抵抗トルクτD を推定する(ステップS2−11)。この場合、状態量の取得処理で取得した各状態量と、前回(一つ前の時間ステップ)の走行及び姿勢制御処理におけるアクチュエータ出力の決定処理で決定した各アクチュエータの出力とに基づき、次の式(8)により、段差抵抗トルクτD を推定する。
Figure 0005200574
続いて、主制御ECU21は、段差昇降トルクτC を決定する(ステップS2−12)。この場合、推定した段差抵抗トルクτD の値を段差昇降トルクτC の値とする。すなわち、τC =τD とする。
このように、本実施の形態においては、駆動モータ52が出力する駆動トルクと、状態量としての駆動輪回転角加速度及び車体傾斜角加速度に基づいて段差抵抗トルクを推定する。この場合、駆動輪12の回転状態を示す駆動輪回転角加速度だけでなく、車体姿勢の変化を示す車体傾斜角加速度も考慮している。すなわち、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両、いわゆる倒立型車両に特有の要素である車体姿勢の変化を考慮している。
従来においては、駆動トルクと駆動輪回転角加速度とに基づいて段差抵抗トルクを推定するため、特に車体の姿勢が大きく変化するとき、段差抵抗トルクの推定値に大きな誤差が生じることがあった。しかし、本実施の形態においては、車体の姿勢変化を示す車体傾斜角加速度を考慮して段差抵抗トルクを推定するので、大きな誤差が生じることがなく、高い精度で段差抵抗トルクを推定することができる。
また、本実施の形態においては、段差の昇降動作中に変化する段差抵抗トルクを常に推定している。例えば、段差の昇降動作中に一定の駆動トルクを駆動輪12に付与すると、昇降終了直前に、車両10が不必要に加減速してしまうことがある。これは、例えば、段差に乗り上げる場合、車両10が段差を上るのと共に段差抵抗トルクが小さくなるためである。そこで、本実施の形態においては、段差昇降状態と共に変化する段差抵抗トルクの推定をリアルタイムで行い、その値を常に更新することで、常に段差の昇降動作に適した段差昇降トルクを付与するようになっている。
なお、前記第1の実施の形態と同様に、段差抵抗トルクの推定値にローパスフィルタをかけることによって、推定値の高周波成分を除去することもできる。この場合、推定に時間遅れが生じるが、高周波成分に起因する振動を抑制することができる。
本実施の形態においては、慣性力のみを考慮しているが、駆動輪12の転がり抵抗や回転軸の摩擦による粘性抵抗、あるいは、車両10に作用する空気抵抗などを、副次的な影響として考慮してもよい。
また、より正確な非線形モデルを使用してもよいし、車体傾斜運動についてのモデルを使用してもよい。なお、非線形モデルについては、マップの形式で関数を適用することもできる。
さらに、計算の簡略化のために、車体姿勢の変化を考慮しなくてもよい。
次に、目標車体姿勢の決定処理について説明する。
図16は本発明の第2の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標車体姿勢の決定処理において、主制御ECU21は、まず、車体傾斜角の目標値を決定する(ステップS4−11)。この場合、目標走行状態の決定処理によって決定された車両加速度の目標値と、段差昇降トルクの決定処理によって取得された段差昇降トルクτC とに基づき、次の式(9)により、車体傾斜角の目標値を決定する。
Figure 0005200574
続いて、主制御ECU21は、残りの目標値を算出する(ステップS4−12)。すなわち、各目標値を時間微分又は時間積分することにより、駆動輪回転角及び車体傾斜角速度の目標値を算出する。
このように、本実施の形態においては、車両加速度に伴って車体に作用する慣性力及び駆動モータ反トルクだけでなく、段差抵抗トルクτD に応じた段差昇降トルクτC に伴って車体に作用する反トルクも考慮して、車体姿勢の目標値、すなわち、車体傾斜角の目標値を決定する。
このとき、車体傾斜トルクを重力の作用によって打ち消すように、車体の重心を移動させる。例えば、車両10が加速するとき及び段差を上るときには車体を前方へ傾ける。また、車両10が減速するとき及び段差を下るときには車体を後方へ傾ける。
なお、本実施の形態においては、線形化した力学モデルに基づいた式を使用しているが、より正確な非線形モデル又は粘性抵抗を考慮したモデルに基づいた式を使用してもよい。なお、式が非線形になる場合には、マップの形式で関数を適用することもできる。
次に、アクチュエータ出力の決定処理について説明する。
図17は本発明の第2の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。
アクチュエータ出力の決定処理において、主制御ECU21は、まず、アクチュエータのフィードフォワード出力を決定する(ステップS5−11)。この場合、目標値と段差昇降トルクτC とから、前記第1の実施の形態において説明した前記式(4)により駆動モータ52のフィードフォワード出力を決定する。
前記式(4)に表されるように、段差抵抗トルクτD に応じた段差昇降トルクτC を自動的に追加することにより、段差の昇降の際にも、平地と同様の操縦感覚を提供することができる。すなわち、平地と同様の操縦操作で段差を乗り降りすることができる。また、ジョイスティック31の一定の操縦操作に対して、段差の昇降の際に、車両10が不必要に加減速することがない。
なお、本実施の形態においては、理論的にフィードフォワード出力を与えることによって、より高精度な制御を実現するが、必要に応じて、フィードフォワード出力を省略することもできる。この場合、フィードバック制御により、定常偏差を伴いつつ、フィードフォワード出力に近い値が間接的に与えられる。また、前記定常偏差は、積分ゲインを適用することによって低減させることができる。
続いて、主制御ECU21は、アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップS5−12)。この場合、各目標値と実際の状態量との偏差から、次の式(10)により駆動モータ52のフィードバック出力を決定する。
Figure 0005200574
なお、スライディングモード制御等の非線形のフィードバック制御を導入することもできる。また、より簡単な制御として、KW2及びKW3を除くフィードバックゲインのいくつかをゼロとしてもよい。さらに、定常偏差をなくすために、積分ゲインを導入してもよい。
最後に、主制御ECU21は、要素制御システムに指令値を与える(ステップS5−13)。この場合、主制御ECU21は、前述のように決定したフィードフォワード出力とフィードバック出力との和を駆動トルク指令値として、駆動輪制御ECU22に送信する。
このように、本実施の形態においては、車体を段差の上段方向に傾けて、段差の昇降の際にバランスを保つことができる。したがって、搭乗部14を移動させる移動機構を有していない倒立型車両に適用することができ、構造及び制御システムを簡素化することで、安価で軽量な倒立型車両でも安定した段差の乗り降りを実現することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図18は本発明の第3の実施の形態における車両の構成を示す概略図であり段差手前で段差を検出している状態を示す図、図19は本発明の第3の実施の形態における車両の段差の昇降における動作を示す概略図、図20は本発明の第3の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。なお、図18において、(b)は(a)の要部拡大図、図19において、(a)〜(c)は一連の動作を示す図である。
段差の昇降動作中に一定の駆動トルクを駆動輪12に付与すると、昇降終了直前に、車両10が不必要に加減速してしまうことがある。これは、例えば、段差に乗り上げる場合、車両10が段差を上るのと共に段差抵抗トルクが小さくなるためである。
そこで、本実施の形態においては、車両10の進行方向の段差をセンサによって検出し、該センサによって計測した段差の位置と高さ、及び、段差の昇降状態に相当する駆動輪回転角に応じて、段差昇降トルクを変化させるようになっている。
そのため、本実施の形態において、車両10は、図18に示されるように、段差計測センサとしての距離センサ71を有する。該距離センサ71は、例えば、レーザ光を利用したものであるが、いかなる種類のセンサであってもよい。図18に示される例においては、2つの距離センサ71が、互いに前後に離れて、搭乗部14の下面に配設され、各々が下面から路面までの距離を計測する。そして、各距離センサ71の計測値の変化から、路面の段差を検出し、検出した段差の位置及び高さを取得することができる。望ましくは、一方の距離センサ71が駆動輪12の路面に接地する部位よりも前方に位置し、他方の距離センサ71が駆動輪12の路面に接地する部位よりも後方に位置するように配設される。このように、2つの距離センサ71が駆動輪12の接地点から前後に離れた位置において路面までの距離を計測するので、車両10の前後の段差を検出することができる。
また、車両10は、図20に示されるように、距離センサ71を含む段差計測システム70を有する。そして、距離センサ71は、前後の2点において、路面までの距離としての対地距離を検出して主制御ECU21に送信する。
これにより、例えば、段差に乗り上げる場合、図19に示されるように、車両10が上昇するのに応じて搭乗部14の移動量、段差に乗り上げるための駆動トルク等を変化させ、安定した車体姿勢及び走行の制御を行うことができる。
次に、本実施の形態における走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。なお、走行及び姿勢制御処理の概要、状態量の取得処理、目標走行状態の決定処理、目標車体姿勢の決定処理及びアクチュエータ出力の決定処理については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略し、段差昇降トルクの決定処理についてのみ説明する。
図21は本発明の第3の実施の形態における上りの段差を測定するときの幾何学的条件を示す図、図22は本発明の第3の実施の形態における上りの段差の段差昇降抵抗率の変化を示す図、図23は本発明の第3の実施の形態における下りの段差を測定するときの幾何学的条件を示す図、図24は本発明の第3の実施の形態における下りの段差の段差昇降抵抗率の変化を示す図、図25は本発明の第3の実施の形態における段差昇降トルクの決定処理の動作を示すフローチャートである。
段差昇降トルクの決定処理において、主制御ECU21は、まず、距離センサ71の計測値を取得する(ステップS2−21)。この場合、前後2つの距離センサ71から対地距離の計測値を取得する。
続いて、主制御ECU21は、段差の位置と高さとを決定する(ステップS2−22)。この場合、各距離センサ71から取得した対地距離の時間履歴と、車体傾斜角θ1 と、搭乗部14の位置、すなわち、能動重量部位置λS とに基づき、段差の位置と高さとを決定する。
続いて、主制御ECU21は、段差抵抗トルクτD を決定する(ステップS2−23)。この場合、段差抵抗トルクτD を、次の式(11)により算出する。
τD =ξτD,Max ・・・式(11)
ここで、τD,Max は最大段差抵抗トルクであり、ξは段差昇降抵抗率である。
図21に示されるように、段差が上り、すなわち、昇段である場合、最大段差抵抗トルクτD,Max 及び段差昇降抵抗率ξは、次の式(12)及び(13)で表される。なお、図21において、Xは段差検出時における段差までの距離であり、Hは段差の高さである。昇段の場合、Hはゼロ以上となる。
Figure 0005200574
なお、η0 は、仮想登坂角であり、段差を上るために必要な駆動輪回転角に相当する。また、θW,S は駆動輪12が段差に接触した時点の駆動輪回転角であり、θW,0 は段差を検出した時点の駆動輪回転角である。さらに、ΔθW は段差接触以降の駆動輪回転角であり、その値は、駆動輪12が段差に接触した時点でゼロになる。
そして、段差抵抗トルクτD の値は、図22に示されるように変化する。すなわち、駆動輪12が段差に接触した時点で最大値であるτD,Max となり、昇段中に徐々に減少し、昇段を終了した時点で最小値であるゼロになる。
また、図23に示されるように、段差が下り、すなわち、降段である場合、最大段差抵抗トルクτD,Max 及び段差昇降抵抗率ξは、次の式(14)及び(15)で表される。なお、図23においても、Xは段差検出時における段差までの距離であり、Hは段差の高さであるが、降段の場合、Hはゼロ未満、すなわち、マイナスとなる。
Figure 0005200574
そして、段差抵抗トルクτD の値は、図24に示されるように変化する。すなわち、駆動輪12が段差に接触した時点で最小値であるゼロであり、降段中に徐々に減少し、降段を終了する時点の直前で最大値であるτD,Max となる。
最後に、主制御ECU21は、段差昇降トルクτC を決定する(ステップS2−24)。この場合、推定した段差抵抗トルクτD の値を段差昇降トルクτC の値とする。すなわち、τC =τD とする。
このように、段差昇降トルクの決定処理においては、段差の高さHに応じて段差抵抗トルクτD の大きさを変えるようになっている。つまり、段差の高さHの値が大きいほど段差抵抗トルクτD の値を大きくする。
また、車両10の段差昇降状態に応じて段差抵抗トルクτD の大きさを変えるようになっている。つまり、駆動輪回転角θW から車両10の昇降状態を推定し、段差昇降抵抗率ξの値を変化させる。これにより、車両10の速度変化にも対応することができる。
具体的には、段差を上る場合、すなわち、段差の高さHがゼロ以上の場合、駆動輪回転角θW の増加とともに、段差抵抗トルクτD (段差昇降抵抗率ξ)を減少させる。これは、段差を上るにつれて、車両10を支持するために必要な駆動トルクが減少するからである。
一方、段差を下る場合、すなわち、段差の高さHがゼロ未満の場合、駆動輪回転角θW の増加とともに、段差抵抗トルクτD (段差昇降抵抗率ξ)を増加させる。これは、段差を下るにつれて、車両10を支持するために必要な駆動トルクが増加するからである。
これにより、段差昇降時における車両10の走行状態を安定的に制御することができる。
なお、本実施の形態においては、車両10の前方に位置する段差に前進して突入した場合についてのみ説明したが、車両10の後方に位置する段差に後進して突入した場合についても、同様の制御を実施することができる。
また、本実施の形態においては、段差の昇降動作中に距離センサ71を使用しない場合について説明したが、車両10の段差昇降状態をより正確に把握するために、距離センサ71の計測値を利用することもできる。これにより、駆動輪12がスリップしても安定した制御を行うことが可能となる。
さらに、本実施の形態においては、段差昇降抵抗率ξの決定式に不連続な関数を使用した場合について説明したが、不連続部分を連続に修正した関数を使用することもできる。また、不連続部分における制御のチャタリング又は車両動作のハンチングを防止するために、ヒステリシス制御(例えば、2つの閾値を設定し、駆動輪12の回転方向に応じて閾値を変える制御)を導入してもよい。
さらに、本実施の形態においては、非線形の力学モデルに基づく決定式を使用した場合について説明したが、簡略化のために、線形近似した式を使用してもよい。また、駆動輪12の変形、転がり摩擦、スリップ条件等を考慮した、より高度な決定式を使用してもよい。
このように、本実施の形態においては、車両10の進行方向の段差を距離センサ71によって検出し、該距離センサ71によって計測した段差の位置及び高さH並びに駆動輪回転角θW に応じて、段差昇降トルクτC の値を変化させるようになっている。したがって、段差の昇降時にも車体の倒立姿勢を安定に保つことができる。これにより、車両10は、段差のある場所でも安全に、かつ、快適に走行することができる。
なお、本実施の形態においては、2つの距離センサ71によって段差の検出、並びに、段差の位置及び高さHを計測した場合について説明したが、他の装置や方法を使用することもできる。例えば、カメラによって車両10の進行方向の画像を取得し、取得した画像を解析することによって、段差の検出、並びに、段差の位置及び高さHを計測してもよい。また、例えば、GPS(Global Positioning System)を利用して車両10の位置を取得する車両位置取得システムと、路面と段差に関する情報を含む地図データとに基づいて、車両10の周囲に存在する段差の情報を取得してもよい。
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第3の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図26は本発明の第4の実施の形態における車両の段差昇降動作を示す概略図、図27は本発明の第4の実施の形態における終速度補正係数の変化を示す図、図28は本発明の第4の実施の形態における目標走行状態の決定処理の動作を示すフローチャートである。なお、図26(a)は第1の実施の形態による動作例を示し、図26(b)は本実施の形態による動作を示している。
車両10が段差を乗り降りする際に、段差を昇降するための駆動トルクを追加する制御動作(以下「段差昇降制御」と称する。)において、追加された駆動トルクを車体の重心移動による重力トルクで打ち消すような車体姿勢の制御を試みても、車体姿勢の目標値の急激な変化に対して実動作が遅れることによって、車体姿勢の制御が不十分になり、車両10が不必要に加減速したり、車体が大きく傾いたりしてしまうことがある。これは、車体姿勢の制御である車体傾斜角の制御や搭乗部14の位置制御には、目標値の設定に対する時間遅れが存在するためである。すなわち、車体姿勢の制御の応答速度が駆動トルクを追加する制御の応答速度に比べて低いため、車体姿勢の制御に不釣り合いが生じる。
もっとも、車体姿勢の制御の応答速度を高めることは可能であるが、そのために、例えば、搭乗部14の移動速度を高くしようとすると、アクチュエータとして高出力の能動重量部モータ62が必要となるので、車両10の重量やコストが増加する。また、車体姿勢の制御の応答速度が高すぎると、乗員15にとって乗り心地が悪化する場合がある。
そこで、本実施の形態においては、段差昇降中に、車体姿勢が一定となるように、ジョイスティック31の操作量に基づいて決定される車両加速度の目標値を補正する。具体的には、図26(b)に示されるように、段差を上る場合には、段差昇降の開始から終了まで、車体姿勢が一定となるように、段差昇降トルクτC によって車体に作用する反トルクを車両10の減速による慣性力で打ち消すように車両加速度の目標値を減少させる。つまり、段差の昇降に必要な段差昇降トルクτC の反作用として車体に作用する反トルクが、車両10の加減速に伴う慣性力によるトルクと釣り合うように、車両加速度の目標値を補正する。
なお、車両速度が低い場合や段差が高い場合には、段差の昇降を完遂することができないため、車両加速度の目標値を補正しない。すなわち、前記第1の実施の形態で説明したように、また、図26(a)に示されるように、搭乗部14を駆動し、段差昇降トルクτC によって車体に作用する反トルクを搭乗部14の移動による重力で打ち消すように本体部11に対して車両進行方向に前後させる。
これにより、段差昇降時における車体姿勢の急激な変化を抑制することができ、段差のある場所でも安全に、かつ、快適に走行することができる。
次に、本実施の形態における走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。なお、走行及び姿勢制御処理の概要、状態量の取得処理、段差昇降トルクの決定処理、目標車体姿勢の決定処理及びアクチュエータ出力の決定処理については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略し、ここでは、目標走行状態の決定処理についてのみ説明する。
目標走行状態の決定処理において、主制御ECU21は、まず、操縦操作量を取得する(ステップS3−11)。この場合、乗員15が、車両10の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するために操作したジョイスティック31の操作量を取得する。
続いて、主制御ECU21は、取得したジョイスティック31の操作量に基づいて、車両加速度の目標値を決定する(ステップS3−12)。この場合、ジョイスティック31の操作量と、駆動輪回転角速度と、段差抵抗トルクとに基づき、次の式(16)により、車両加速度の目標値α* を決定する。
Figure 0005200574
ここで、ξVCは終速度補正係数であり、車両10が段差を上がり終えた時点での車両速度を予測した値である車両終速度予測値Vf によって、図27に示されるように変化させる。すなわち、車両終速度予測値Vf が低いときほど、終速度補正係数ξVCを小さくする。なお、ξVC=0は、車両加速度の目標値を補正しないことを意味し、前記第1の実施の形態で説明したような制御を実行することに相当する。
具体的に、終速度補正係数ξVCは次の式(18)によって設定される。
Figure 0005200574
また、Vf0及びVf1は、車両終速度予測値Vf の第1の閾値としての低速側閾値、及び、第2の閾値としての高速側閾値であり、あらかじめ設定された所定値である。そして、車両終速度予測値Vf は、次の式(19)によって与えられる。
Figure 0005200574
ここで、CI は慣性に関するパラメータ、Vは修正車両速度、ηは仮想登坂角であり、次の式(20)、(21)及び(22)によって、それぞれ表される。
Figure 0005200574
ここで、εは、微小定数であり、前記式(19)の分母がゼロになることを防止するために設定された所定値である。
なお、仮想登坂角ηは、段差の昇降を完了するのに必要な駆動輪12の回転角であり、例えば、図26(b)に示されるように、駆動輪12が段差に接した状態において、駆動輪12の周面と段差との接点における周面の接線が路面(水平面)となす角度に等しい。
Figure 0005200574
最後に、主制御ECU21は、決定した車両加速度の目標値から、駆動輪回転角速度の目標値を算出する(ステップS3−13)。例えば、車両加速度の目標値を時間積分し、駆動輪接地半径RW で除した値を駆動輪回転角速度の目標値とする。
なお、ここでは、車両10の前方に位置する段差に前進して進入して上がる場合についてのみ説明したが、車両10の後方に位置する段差に後進して進入する場合についても、また、段差を下がる場合についても、同様の制御を実施することができる。
このように、主制御ECU21は、段差昇降中に、車体姿勢が一定となるように車両加速度の目標値を補正する。
具体的には、段差の昇降に必要な段差昇降トルクの反作用として車体に作用する反トルクが、車両10の加減速に伴う慣性力によるトルクと釣り合うように、車両加速度の目標値を補正する。前進して段差を上がる場合、段差昇降トルクの反作用として車体を後方に倒そうとする反トルクを打ち消すように、車両10を減速させて車体を前方に倒そうとする慣性力を発生させる。このとき、適切な減速を実現するための目標車両加速度補正量基準値を、段差昇降トルクに比例する関数として設定する。これにより、段差昇降時における車体姿勢(車体の傾斜角、搭乗部14の位置等)の急激な変化を抑制して、安定で快適な段差の昇降動作を実現することができる。
また、車両加速度の目標値の補正量を制限し、過度の補正を防止する。すなわち、目標車両加速度補正量基準値を、所定の最大値である目標車両加速度補正量最大値で制限することによって、自動的な修正に伴う乗員15の操縦感覚との不一致、及び、急な加減速に伴う乗り心地の悪化を防止する。
さらに、低速走行時は、車両加速度の目標値の補正量を制限し、段差昇降の未遂や折り返し動作を防止する。これにより、段差に低速で進入した場合でも、必要な段差昇降制御を適切に実行して安定した段差昇降を実現することができる。
具体的には、初めに、段差昇降完了時の車両速度を予測した値である車両終速度予測値によって、目標車両加速度補正量修正値による補正を行ったときに段差昇降を完遂することができるか否かを判断する。ここで、車両終速度予測値は、力学的なモデルに基づき、駆動輪回転角速度、段差抵抗トルク、及び、固定した車体姿勢の目標値を決定するジョイスティック31の操作量に応じた車両加速度の目標値の関数として設定される。これにより、重要な判断要素である車両終速度をより正確に予測することができる。
そして、車両終速度予測値が所定の高速側閾値以上である場合、終速度補正係数を1として補正を行う。すなわち、車両速度が大きく低下して段差昇降の未遂や折り返し動作が起こる可能性は低いと判断し、車両を減速させることで、車体姿勢を変化させることなく、安定した状態で段差を上らせる。
一方、車両終速度予測値が所定の低速側閾値以下である場合、終速度補正係数を0として補正を行わない。すなわち、車両速度が大きく低下すると段差昇降の未遂や折り返し動作が起こる可能性が高いと判断し、車体姿勢を変化させて重心を移動させることで、走行状態を変化させることなく、安定した状態で段差を上らせる。
また、車両終速度予測値が高速側閾値と低速側閾値との間にある場合には、線形補間した関数によって終速度補正係数を与えることで、制御の切替に伴う走行状態や車体の姿勢の急激な変化や、閾値付近で周期的に切替が繰り返されるような振動を防ぐ。
以上の方法により、車両速度と段差の高さ(段差抵抗トルクの大きさ)とを考慮した適度な補正を、簡単に実現することができる。
なお、本実施の形態においては、車両終速度予測値が所定の高速側閾値以上である場合には終速度補正係数を1として車体姿勢を一定にする制御、すなわち、車体姿勢を優先した制御を実行する例について説明したが、終速度補正係数を1以下の値として、車体姿勢と車両走行状態とをある程度両立させるようにしてもよい。また、操縦装置であるジョイスティック31にパラメータ調整装置を配設し、乗員15自身が終速度補正係数の値を調整することができるようにしてもよい。
また、本実施の形態においては、車両終速度予測値が所定の高速側閾値及び低速側閾値と比較することによって補正実行の可否を判断する例について説明したが、現時点の車両速度と車両終速度予測値との差分や比率、あるいは他の指標に基づいて補正実行の可否を判断してもよい。
さらに、本実施の形態においては、駆動輪回転角速度の計測値に基づいて車両終速度を予測する例について説明したが、駆動輪回転角速度の目標値に基づいて車両終速度を予測してもよい。これにより、外乱等に伴う駆動輪回転角速度の微小振動が制御に影響を及ぼすことを防止し、より安定した段差昇降制御を実現することができる。
さらに、本実施の形態においては、車両終速度予測値や仮想登坂角を決定するために非線形の関数を用いた例について説明したが、該非線形の関数を近似した線形の関数を用いることによって計算を簡素化してもよい。また、マップの形で非線形の関数を適用してもよい。
さらに、本実施の形態においては、段差抵抗トルクの推定値によって段差の高さを推定し、その値に基づいて車両終速度を予測する例について説明したが、前記第3の実施の形態において説明したように距離センサ71等の段差計測センサを使用し、該段差計測センサの計測結果に基づいて制御を実行してもよい。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の第1の実施の形態における車両の構成を示す概略図であり乗員が搭乗した状態で加速前進している状態を示す図である。 本発明の第1の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態における車両の段差昇降動作を示す概略図である。 本発明の第1の実施の形態における車両の走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における車両の力学モデル及びそのパラメータを示す図である。 本発明の第1の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における段差昇降トルクの決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における目標走行状態の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値の変化を示すグラフである。 本発明の第1の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。 本発明の第2の実施の形態における車両の段差の昇降における動作を示す概略図である。 本発明の第2の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態における段差昇降トルクの決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態における車両の構成を示す概略図であり段差手前で段差を検出している状態を示す図である。 本発明の第3の実施の形態における車両の段差の昇降における動作を示す概略図である。 本発明の第3の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。 本発明の第3の実施の形態における上りの段差を測定するときの幾何学的条件を示す図である。 本発明の第3の実施の形態における上りの段差の段差昇降抵抗率の変化を示す図である。 本発明の第3の実施の形態における下りの段差を測定するときの幾何学的条件を示す図である。 本発明の第3の実施の形態における下りの段差の段差昇降抵抗率の変化を示す図である。 本発明の第3の実施の形態における段差昇降トルクの決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第4の実施の形態における車両の段差昇降動作を示す概略図である。 本発明の第4の実施の形態における終速度補正係数の変化を示す図である。 本発明の第4の実施の形態における目標走行状態の決定処理の動作を示すフローチャートである。
符号の説明
10 車両
12 駆動輪
20 制御ECU
30 入力装置

Claims (5)

  1. 車体と、
    該車体に回転可能に取り付けられた駆動輪と、
    走行指令を入力する入力装置と、
    該入力装置から入力された走行指令に基づき、前記駆動輪に付与する駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、
    該車両制御装置は、路面段差の昇降最中に、前記駆動輪に前記段差に応じた駆動トルクを追加するとともに、前記走行指令に応じて決定される車両加速度の目標値を補正する車両であって、
    前記段差の昇降完了時の予測される車両速度である車両終速度予測値を予測する車両終速度予測手段を備え、
    前記車両制御装置は、前記車両終速度予測値に応じて前記車両加速度の目標値の補正量を変化させることを特徴とする車両。
  2. 前記車両制御装置は、前記路面段差を上る場合には前記車両加速度の目標値を減少させ、前記路面の段差を下る場合には前記車両加速度の目標値を増加させることで、前記車両加速度の目標値を補正する請求項1に記載の車両。
  3. 前記車両制御装置は、前記段差に応じて追加された駆動トルクによって車体に作用する反トルクを車両の加減速による慣性力で打ち消すことで、前記車両加速度の目標値を補正する請求項1又は2に記載の車両。
  4. 前記車両加速度の目標値の補正量は、前記段差に応じて追加される駆動トルクに比例して設定される請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両。
  5. 前記車両制御装置は、前記車両終速度予測値が第1の閾値以下である場合には前記車両加速度の目標値の補正量をゼロにし、前記車両終速度予測値が第2の閾値以上である場合には前記車両加速度の目標値の補正量を前記基準値とし、前記車両終速度予測値が第1の閾値と第2の閾値との間の範囲にある場合には前記車両加速度の目標値の補正量をゼロから基準値の間で遷移させる請求項に記載の車両。
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