JP5369602B2 - 車両 - Google Patents

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Description

本発明は、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関するものである。
従来、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関する技術が提案されている。例えば、同軸上に配置された2つの駆動輪を有し、運転者の重心移動による車体の姿勢変化を感知して駆動する車両、球体状の単一の駆動輪に取り付けられた車体の姿勢を制御しながら移動する車両等の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この場合、センサで車体のバランスや動作の状態を検出しながら、回転体の動作を制御して車両を停止又は移動させるようになっている。
特開2004−129435号公報
しかしながら、前記従来の車両においては、車両の走行速度に応じて走行状態や車体姿勢を制御する場合、あらかじめ設定された所定のパラメータによって走行速度の影響を推定することができるが、搭乗者の体型又は搭載物の形状の違いや摩擦特性の経年変化などによって、その実際のパラメータ値が設定値と異なると、走行速度や車体姿勢の制御における誤差が大きくなってしまい、操縦性や乗り心地が悪化することがある。
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、駆動輪の回転状態、車体の重心位置、駆動トルク等の時間履歴に基づいて、走行速度に応じて車両に作用する影響である速度依存抵抗トルクを推定することによって、後天的な推定やパラメータ補正を実現できるため、様々な使用条件や使用履歴に対して、走行速度に適応する走行状態及び車体姿勢の制御を高精度で実行することができ、安全に、かつ、快適に走行することができる車両を提供することを目的とする。
そのために、本発明の車両においては、回転可能に車体に取り付けられた駆動輪と、該駆動輪に付与する駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、前記駆動輪の回転状態及び/又は前記車体の重心位置及び/又は前記駆動トルクの時間履歴によって、車両速度に伴って前記駆動輪及び/又は前記車体に作用する抵抗トルクである速度依存抵抗トルクを推定する推定手段と、該推定手段によって推定された速度依存抵抗トルクに応じて前記車体の姿勢を制御する姿勢制御手段とを備え、前記推定手段は、前記車体の重心の移動速度又は移動加速度が所定の閾値以上であるときの時間履歴を推定に用いることを禁止する。
本発明の他の車両においては、さらに、前記推定手段は、前記駆動輪の回転角速度、前記駆動輪の回転角加速度、前記車体の傾斜角のいずれか1つ以上についての時間履歴によって推定する。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車体に対して移動可能に取り付けられた能動重量部を更に有し、前記推定手段は、前記能動重量部の駆動輪との相対位置の時間履歴によって推定する。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記推定手段は、前記車体に作用する空気抵抗である車体空気抵抗及び/又は前記空気抵抗に伴い前記車体に作用するトルクである車体空気抵抗トルク及び/又は前記駆動輪の回転に対する摩擦抵抗である駆動輪摩擦抵抗トルクを推定する。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記推定手段は、前記駆動輪の回転角速度が所定の閾値以下であるときの前記速度依存抵抗トルクの推定値をオフセット量として前記速度依存抵抗トルクの推定値を補正する。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、前記駆動輪の回転角速度及び前記速度依存抵抗トルクの推定値の時間履歴によって前記駆動輪の回転角速度の累乗と前記速度依存抵抗トルクの相関パラメータである速度依存抵抗パラメータを決定するパラメータ決定手段を備え、前記推定手段は、前記速度依存抵抗パラメータに応じて前記速度依存抵抗トルクを推定する。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記パラメータ決定手段は、前記空気抵抗と前記駆動輪の回転角速度の累乗との比である車体空気抵抗係数と前記車体空気抵抗の作用中心の高さである車体空気抵抗中心高さと前記駆動輪の摩擦抵抗と前記駆動輪の回転角速度の累乗との比である駆動輪摩擦抵抗係数の少なくとも1つを決定する。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記パラメータ決定手段は、現在から所定の時間だけ前までの範囲における前記駆動輪の回転角速度と前記速度依存抵抗トルクの推定値の組データに対する最小二乗法によって、前記速度依存抵抗パラメータを決定する。
請求項1の構成によれば、あらかじめ設定されたパラメータを使用せずに、車両の走行状態や車体の姿勢変化と入力の関係から速度依存抵抗トルクを推定するので、車両の使用状況や使用履歴に伴うパラメータの変化に依らず、速度依存抵抗トルクを高い精度で推定することができる。
請求項2の構成によれば、速度依存抵抗トルクを推定するために特別なセンサを別途用意する必要が無く、倒立制御に必要なセンサのみで推定を実現できる。
請求項3の構成によれば、能動重量部の位置の情報を活用することで、より高い精度で推定することができる。
請求項4の構成によれば、走行速度によって車両に作用する影響を細分化して扱うことで、走行速度による走行状態や車体姿勢への影響をより適切に考慮できる。
請求項の構成によれば、速度依存抵抗トルクの推定値におけるオフセット量の影響を簡単に取り除くことができる。
請求項の構成によれば、速度依存抵抗パラメータを推定することで、車両の使用状況や使用履歴に伴うパラメータの変化を適切に考慮できるのと共に、その結果を間接的に速度依存抵抗トルクの推定値に反映させることで安定な推定とその適応制御を実現できる。
請求項の構成によれば、走行速度によって車両に作用する影響およびそのパラメータを細分化して扱うことで、速度依存抵抗トルクをより高精度に推定できる。
請求項の構成によれば、走行速度と速度依存抵抗トルクの相関関係および速度依存抵抗パラメータをより簡単に推定することができる。
また、請求項の構成によれば、推定した速度依存抵抗トルクに応じた車体の姿勢制御を行うので、車体の姿勢を理想的に制御でき、乗り心地が向上する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における車両の構成を示す概略図であり乗員が搭乗した状態で加速前進している状態を示す図、図2は本発明の第1の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。
図において、10は、本実施の形態における車両であり、車体の本体部11、駆動輪12、支持部13及び乗員15が搭乗する搭乗部14を有し、倒立振り子の姿勢制御を利用して車体の姿勢を制御する。そして、前記車両10は、車体を前後に傾斜させることができるようになっている。図1に示される例においては、車両10は矢印Aで示される方向に加速中であり、車体が進行方向前方に向かって傾斜した状態が示されている。
前記駆動輪12は、車体の一部である支持部13によって回転可能に支持され、駆動アクチュエータとしての駆動モータ52によって駆動される。なお、駆動輪12の軸は図1の図面に垂直な方向に延在し、駆動輪12はその軸を中心に回転する。また、前記駆動輪12は、単数であっても複数であってもよいが、複数である場合、同軸上に並列に配設される。本実施の形態においては、駆動輪12が2つであるものとして説明する。この場合、各駆動輪12は個別の駆動モータ52によって独立して駆動される。なお、駆動アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、内燃機関等を使用することもできるが、ここでは、電気モータである駆動モータ52を使用するものとして説明する。
また、車体の一部である本体部11は、支持部13によって下方から支持され、駆動輪12の上方に位置する。そして、本体部11には、能動重量部として機能する搭乗部14が、車両10の前後方向に本体部11に対して相対的に並進可能となるように、換言すると、車体回転円の接線方向に相対的に移動可能となるように、取り付けられている。
ここで、能動重量部は、ある程度の質量を備え、本体部11に対して並進する、すなわち、前後に移動させることによって、車両10の重心位置を能動的に補正するものである。そして、能動重量部は、必ずしも搭乗部14である必要はなく、例えば、バッテリ等の重量のある周辺機器を並進可能に本体部11に対して取り付けた装置であってもよいし、ウェイト、錘(おもり)、バランサ等の専用の重量部材を並進可能に本体部11に対して取り付けた装置であってもよい。また、搭乗部14、重量のある周辺機器、専用の重量部材等を併用するものであってもよい。
本実施の形態においては、説明の都合上、乗員15が搭乗した状態の搭乗部14が能動重量部として機能する例について説明するが、搭乗部14には必ずしも乗員15が搭乗している必要はなく、例えば、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、搭乗部14に乗員15が搭乗していなくてもよいし、乗員15に代えて、貨物が積載されていてもよい。
前記搭乗部14は、乗用車、バス等の自動車に使用されるシートと同様のものであり、座面部14a、背もたれ部14b及びヘッドレスト14cを備え、図示されない移動機構を介して本体部11に取り付けられている。
前記移動機構は、リニアガイド装置等の低抵抗の直線移動機構、及び、能動重量部アクチュエータとしての能動重量部モータ62を備え、該能動重量部モータ62によって搭乗部14を駆動し、本体部11に対して進行方向に前後させるようになっている。なお、能動重量部アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、リニアモータ等を使用することもできるが、ここでは、回転式の電気モータである能動重量部モータ62を使用するものとして説明する。
前記リニアガイド装置は、例えば、本体部11に取り付けられている案内レールと、搭乗部14に取り付けられ、案内レールに沿ってスライドするキャリッジと、案内レールとキャリッジとの間に介在するボール、コロ等の転動体とを備える。そして、案内レールには、その左右側面部に2本の軌道溝が長手方向に沿って直線状に形成されている。また、キャリッジの断面はコ字状に形成され、その対向する2つの側面部内側には、2本の軌道溝が、案内レールの軌道溝と各々対向するように形成されている。転動体は、軌道溝の間に組み込まれており、案内レールとキャリッジとの相対的直線運動に伴って軌道溝内を転動するようになっている。なお、キャリッジには、軌道溝の両端をつなぐ戻し通路が形成されており、転動体は軌道溝及び戻し通路を循環するようになっている。
また、リニアガイド装置は、該リニアガイド装置の動きを締結するブレーキ又はクラッチを備える。車両10が停車しているときのように搭乗部14の動作が不要であるときには、ブレーキによって案内レールにキャリッジを固定することで、本体部11と搭乗部14との相対的位置関係を保持する。そして、動作が必要であるときには、このブレーキを解除し、本体部11側の基準位置と搭乗部14側の基準位置との距離が所定値となるように制御される。
前記搭乗部14の脇(わき)には、目標走行状態取得装置としてのジョイスティック31を備える入力装置30が配設されている。乗員15は、操縦装置であるジョイスティック31を操作することによって、車両10を操縦する、すなわち、車両10の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するようになっている。なお、乗員15が操作して走行指令を入力することができる装置であれば、ジョイスティック31に代えて他の装置、例えば、ジョグダイヤル、タッチパネル、押しボタン等の装置を目標走行状態取得装置として使用することもできる。
なお、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、前記ジョイスティック31に代えて、コントローラからの走行指令を有線又は無線で受信する受信装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。また、車両10があらかじめ決められた走行指令データに従って自動走行する場合には、前記ジョイスティック31に代えて、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体に記憶された走行指令データを読み取るデータ読取り装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。
また、車両10は、車両制御装置としての制御ECU(Electronic Control Unit)20を有し、該制御ECU20は、主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23を備える。前記制御ECU20並びに主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、車両10の各部の動作を制御するコンピュータシステムであり、例えば、本体部11に配設されるが、支持部13や搭乗部14に配設されていてもよい。また、前記主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23は、それぞれ、別個に構成されていてもよいし、一体に構成されていてもよい。
そして、主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22、駆動輪センサ51及び駆動モータ52とともに、駆動輪12の動作を制御する駆動輪制御システム50の一部として機能する。前記駆動輪センサ51は、レゾルバ、エンコーダ等から成り、駆動輪回転状態計測装置として機能し、駆動輪12の回転状態を示す駆動輪回転角及び/又は回転角速度を検出し、主制御ECU21に送信する。また、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、該駆動輪制御ECU22は、受信した駆動トルク指令値に相当する入力電圧を駆動モータ52に供給する。そして、該駆動モータ52は、入力電圧に従って駆動輪12に駆動トルクを付与し、これにより、駆動アクチュエータとして機能する。
また、主制御ECU21は、能動重量部制御ECU23、能動重量部センサ61及び能動重量部モータ62とともに、能動重量部である搭乗部14の動作を制御する能動重量部制御システム60の一部として機能する。前記能動重量部センサ61は、エンコーダ等から成り、能動重量部移動状態計測装置として機能し、搭乗部14の移動状態を示す能動重量部位置及び/又は移動速度を検出し、主制御ECU21に送信する。また、該主制御ECU21は、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信し、該能動重量部制御ECU23は、受信した能動重量部推力指令値に相当する入力電圧を能動重量部モータ62に供給する。そして、該能動重量部モータ62は、入力電圧に従って搭乗部14を並進移動させる推力を搭乗部14に付与し、これにより、能動重量部アクチュエータとして機能する。
さらに、主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22、能動重量部制御ECU23、車体傾斜センサ41、駆動モータ52及び能動重量部モータ62とともに、車体の姿勢を制御する車体制御システム40の一部として機能する。前記車体傾斜センサ41は、加速度センサ、ジャイロセンサ等から成り、車体傾斜状態計測装置として機能し、車体の傾斜状態を示す車体傾斜角及び/又は傾斜角速度を検出し、主制御ECU21に送信する。そして、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信する。
なお、主制御ECU21には、入力装置30のジョイスティック31から走行指令が入力される。そして、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信する。
また、前記制御ECU20は、車両速度(駆動輪12の回転角速度)に応じて速度依存抵抗トルクを推定する推定手段として機能する。また、推定された速度依存抵抗トルクに応じて車体の姿勢を制御する姿勢制御手段として機能する。
なお、速度依存抵抗とは走行速度の上昇に伴い増加する抵抗であり、本実施の形態においては、車体に作用する空気抵抗や駆動輪12の回転軸に作用する粘性摩擦等の抵抗を速度依存抵抗として考慮する。
また、推定手段は、車体に作用する空気抵抗のトルクである車体空気抵抗トルク、駆動輪12の回転に対する摩擦抵抗である駆動輪摩擦抵抗及び空気抵抗の反トルクを推定する。さらに、姿勢制御手段は、能動重量部としての搭乗部14を移動させて車体の重心位置を移動させる。
なお、各センサは、複数の状態量を取得するものであってもよい。例えば、車体傾斜センサ41として加速度センサとジャイロセンサとを併用し、両者の計測値から車体傾斜角と傾斜角速度とを決定するようにしてもよい。
次に、前記構成の車両10の動作について説明する。まず、走行及び姿勢制御処理の概要について説明する。
図3は本発明の第1の実施の形態における車両の高速走行時の動作を示す概略図、図4は本発明の第1の実施の形態における車両の走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。なお、図3(a)は比較のための従来技術による動作例を示し、図3(b)は本実施の形態による動作を示している。
本実施の形態においては、車両10の走行速度に応じて駆動輪12の駆動トルクと車体の重心位置とを補正する。具体的には、速度依存抵抗トルク(粘性抵抗トルク)を打ち消すように駆動トルクを追加するとともに、車体に作用する空気抵抗のトルク及び駆動トルクの追加分に対する反トルクを車体の重心移動に伴う重力トルクで打ち消すように、能動重量部として機能する搭乗部14を、図3(b)に示されるように、車両10の進行方向に移動させることによって、車両10の重心位置を能動的に補正するようになっている。これにより、高速走行時でも、走行状態と車体姿勢を高精度に制御できる。その結果、操縦性や乗り心地のより良い倒立型の車両10を提供することが可能となる。
これに対し、仮に、「背景技術」の項で説明した従来の車両のように、走行速度に応じた駆動輪12の駆動トルクと車体の重心位置の補正を行わない場合、走行速度が高くなると、走行速度や車体姿勢の制御における誤差が大きくなる。つまり、倒立型車両の場合、図3(a)に示されるように、車両速度が高くなると、速度依存抵抗、すなわち、車両10に作用する空気抵抗や駆動輪12の回転軸に作用する粘性摩擦のような抵抗が増加し、走行及び姿勢制御への影響が強くなる。
具体的には、速度依存抵抗によって、車両速度が目標値よりも低くなる場合がある。また、車体に作用する空気抵抗のトルクや速度依存抵抗を打ち消すための駆動トルク追加に伴って車体に作用する反トルクにより、車体が後方に傾く場合がある。
その結果、モビリティとして重要な操縦性や乗り心地が悪くなる。特に、一般的な倒立型車両は、重量に対する投影面積が大きく、また、前後方向が短い形状をしているため、空気抵抗の影響を受けやすい。そして、その影響は車体の姿勢制御に及ぶ。そのため、その対策は重要である。
そこで、本実施の形態においては、車両10の走行速度に応じて駆動輪12の駆動トルクと車体の重心位置とを補正するように走行及び姿勢制御処理を実行することによって、車両10の走行速度が上昇しても、車両10は安定して走行することができる。
走行及び姿勢制御処理において、制御ECU20は、まず、状態量の取得処理を実行し(ステップS1)、各センサ、すなわち、駆動輪センサ51、車体傾斜センサ41及び能動重量部センサ61によって、駆動輪12の回転状態、車体の傾斜状態及び搭乗部14の移動状態を取得する。
次に、制御ECU20は、目標走行状態の決定処理を実行し(ステップS2)、ジョイスティック31の操作量に基づいて、車両10の加速度の目標値、及び、駆動輪12の回転角速度の目標値を決定する。
次に、制御ECU20は、目標車体姿勢の決定処理を実行し(ステップS3)、目標走行状態の決定処理によって決定された車両10の加速度の目標値と駆動輪12の回転角速度の目標値に基づいて、車体姿勢の目標値、すなわち、車体傾斜角及び能動重量部位置の目標値を決定する。
最後に、制御ECU20は、アクチュエータ出力の決定処理を実行し(ステップS4)、状態量の取得処理によって取得された各状態量、目標走行状態の決定処理によって決定された目標走行状態、及び、目標車体姿勢の決定処理によって決定された目標車体姿勢に基づいて、各アクチュエータの出力、すなわち、駆動モータ52及び能動重量部モータ62の出力を決定する。
次に、走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。まず、状態量の取得処理について説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態における車両の力学モデル及びそのパラメータを示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態においては、状態量、入力、パラメータ、物理定数等を次のような記号によって表す。なお、図5には状態量やパラメータの一部が示されている。
状態量
θW :駆動輪回転角〔rad〕
θ1 :車体傾斜角(鉛直軸基準)〔rad〕
λS :能動重量部位置(車体中心点基準)〔m〕
入力
τW :駆動トルク(2つの駆動輪の合計)〔Nm〕
S :能動重量部推力〔N〕
パラメータ
W :駆動輪質量(2つの駆動輪の合計)〔kg〕
W :駆動輪接地半径〔m〕
W :駆動輪慣性モーメント(2つの駆動輪の合計)〔kgm2
1 :車体質量(能動重量部を含む)〔kg〕
1 :車体重心距離(車軸から)〔m〕
1 :車体慣性モーメント(重心周り)〔kgm2
S :能動重量部質量〔kg〕
S :能動重量部重心距離(車軸から)〔m〕
S :能動重量部慣性モーメント(重心周り)〔kgm2
物理定数
g:重力加速度〔m/s2
Figure 0005369602
次に、目標走行状態の決定処理について説明する。
図7は本発明の第1の実施の形態における目標走行状態の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標走行状態の決定処理において、主制御ECU21は、まず、操縦操作量を取得する(ステップS2−1)。この場合、乗員15が、車両10の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するために操作したジョイスティック31の操作量を取得する。
続いて、主制御ECU21は、取得したジョイスティック31の操作量に基づいて、車両加速度の目標値を決定する(ステップS2−2)。例えば、ジョイスティック31の前後方向への操作量に比例した値を車両加速度の目標値とする。
続いて、主制御ECU21は、決定した車両加速度の目標値から、駆動輪回転角速度の目標値を算出する(ステップS2−3)。例えば、車両加速度の目標値を時間積分し、駆動輪接地半径RW で除した値を駆動輪回転角速度の目標値とする。
次に、目標車体姿勢の決定処理について説明する。
図8は本発明の第1の実施の形態における能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値の変化を示すグラフ、図9は本発明の第1の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標車体姿勢の決定処理において、主制御ECU21は、まず、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する(ステップS3−1)。この場合、目標走行状態の決定処理によって決定された車両加速度の目標値と、駆動輪回転角速度の目標値とに基づき、次の式(1)及び(2)により、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
Figure 0005369602
一方、λS,V * は、車体に作用する空気抵抗によるトルクと、駆動輪12の回転軸に作用する粘性摩擦等の摩擦抵抗によるトルクの反トルクとに対して車体のバランスをとるのに必要な能動重量部移動量、すなわち、速度依存抵抗による影響を打ち消す移動量である。なお、λS,V * を表す式の分子の第1項は、駆動輪12の回転軸に作用する粘性摩擦等の摩擦抵抗トルクの大きさを表し、同第2項は、車体に作用する空気抵抗トルクの大きさ(厳密には、車体に作用する空気抵抗が直接的に車体を傾けようとするトルクと、空気抵抗を打ち消すように追加した駆動トルクの反トルクとの和)を表す。
また、DW は駆動輪回転角速度に対する駆動輪摩擦抵抗係数、D1 は駆動輪回転角速度に対する車体空気抵抗係数、h1,D は車体空気抵抗中心高さ(路面から空気抵抗作用中心までの高さ)をそれぞれ表し、所定の定数をあらかじめ与えておく。
Figure 0005369602
一方、θ1,V * は、車体に作用する空気抵抗によるトルクと、駆動輪12の回転軸に作用する粘性摩擦等の摩擦抵抗によるトルクの反トルクとに対して車体のバランスをとるのに必要な車体傾斜角、すなわち、速度依存抵抗による影響を打ち消す傾斜角である。
続いて、主制御ECU21は、残りの目標値を算出する(ステップS3−2)。すなわち、各目標値を時間微分又は時間積分することにより、駆動輪回転角、車体傾斜角速度及び能動重量部移動速度の目標値を算出する。
このように、本実施の形態においては、車両加速度の目標値に伴って車体に作用する慣性力及び駆動モータ反トルクだけでなく、駆動輪回転角速度(車両速度)の目標値に伴って車体に作用する空気抵抗等の速度依存抵抗及び駆動モータ反トルクも考慮して、車体姿勢の目標値、すなわち、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
このとき、車体に作用して車体を傾斜させようとするトルク、すなわち、車体傾斜トルクを重力の作用によって打ち消すように、車体の重心を移動させる。例えば、車両10が前進走行するときには、搭乗部14をより前方へ移動させ、あるいは、さらに車体を前方へ傾ける。また、車両10が後退走行するときには、搭乗部14をより後方へ移動させ、あるいは、さらに車体を後方へ傾ける。
本実施の形態においては、図8に示されるように、まず、車体を傾斜させずに搭乗部14を移動させ、該搭乗部14が能動重量部移動限界に達すると、車体の傾斜を開始させる。そのため、細かい加減速又は低速走行時には車体が前後に傾かないので、乗員15にとっての乗り心地が向上するのと共に視界の揺動が抑制される。
なお、本実施の形態においては、速度依存抵抗の大きさを推定するための駆動輪回転角速度として、その目標値を使用しているが、実際に計測した値、すなわち、実値を使用してもよい。また、空気抵抗の推定時に駆動輪12のスリップ率も加えて考慮してもよい。
また、本実施の形態においては、能動重量部移動限界が前方と後方とで等しい場合を想定しているが、前方と後方とで異なる場合には、各々の限界に応じて、車体の傾斜の有無を切り替えるようにしてもよい。例えば、加速性能よりも制動性能を高く設定する場合、後方の能動重量部移動限界を前方よりも遠くに設定する必要がある。
さらに、本実施の形態においては、加速度や速度が低いときには、搭乗部14の移動だけで対応させているが、その車体傾斜トルクの一部又は全部を車体の傾斜で対応させてもよい。車体を傾斜させることにより、乗員15に作用する前後方向の力を軽減させることができる。
さらに、本実施の形態においては、駆動輪摩擦抵抗トルクは線形モデルに基づいた式を使用し、車体空気抵抗は速度の2乗に比例するモデルに基づいた式を使用しているが、より正確な非線形モデル又は粘性抵抗を考慮したモデルに基づいた式を使用してもよい。なお、式が非線形になる場合には、マップの形式で関数を適用してもよい。
次に、アクチュエータ出力の決定処理について説明する。
図10は本発明の第1の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。
アクチュエータ出力の決定処理において、主制御ECU21は、まず、各アクチュエータのフィードフォワード出力を決定する(ステップS4−1)。この場合、各目標値から、次の式(3)により駆動モータ52のフィードフォワード出力を決定し、また、次の式(4)により能動重量部モータ62のフィードフォワード出力を決定する。
Figure 0005369602
このように、力学モデルによって推定された速度依存抵抗を打ち消すように駆動トルクを付加することによって、車両10の走行及び姿勢制御を高精度で実行することができるとともに、常に同様の操縦感覚を乗員15に提供することができる。すなわち、高速走行時であっても、ジョイスティック31の一定の操縦操作に対して、低速走行時と同様の加減速を行うことができる。
Figure 0005369602
このように、本実施の形態においては、理論的にフィードフォワード出力を与えることによって、より高精度な制御を実現する。
なお、本実施の形態においては、搭乗部14に作用する空気抵抗による搭乗部14の位置制御への影響を考慮していないが、これを考慮してもよい。例えば、式(4)の右辺第3項として、駆動輪回転角速度を2乗した値に、搭乗部14の形状や投影面積に基づいてあらかじめ設定される所定の係数を乗じた値を加えてもよい。これにより、さらに高精度な姿勢制御が実現することができる。
また、必要に応じて、フィードフォワード出力を省略することもできる。この場合、フィードバック制御により、定常偏差を伴いつつ、フィードフォワード出力に近い値が間接的に与えられる。また、前記定常偏差は、積分ゲインを適用することによって低減させることができる。
続いて、主制御ECU21は、各アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップS4−2)。この場合、各目標値と実際の状態量との偏差から、次の式(5)により駆動モータ52のフィードバック出力を決定し、また、次の式(6)により能動重量部モータ62のフィードバック出力を決定する。
Figure 0005369602
なお、スライディングモード制御等の非線形のフィードバック制御を導入することもできる。また、より簡単な制御として、KW2、KW3及びKS5を除くフィードバックゲインのいくつかをゼロとしてもよい。さらに、定常偏差をなくすために、積分ゲインを導入してもよい。
最後に、主制御ECU21は、各要素制御システムに指令値を与える(ステップS4−3)。この場合、主制御ECU21は、前述のように決定したフィードフォワード出力とフィードバック出力との和を駆動トルク指令値及び能動重量部推力指令値として、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23に送信する。
このように、本実施の形態においては、車両10の走行速度に応じて駆動輪12の駆動トルクと車体の重心位置とを補正する。つまり、速度依存抵抗を打ち消すように駆動トルクを追加するとともに、車体に作用する空気抵抗トルク及び駆動トルクの追加分に対する反トルクを車体の重心移動に伴う重力トルクで打ち消すように、搭乗部14を前後に移動させる。これにより、高速走行時でも、走行状態と車体姿勢とを高精度に制御することができ、操縦性や乗り心地をより向上させることができる。
なお、本実施の形態においては、速度依存抵抗として、駆動輪12に作用する粘性摩擦と車体に作用する空気抵抗を考慮しているが、他の作用も考慮してもよい。例えば、駆動輪12の転がり摩擦抵抗における速度と共に増加する成分、あるいは、駆動輪12に作用する空気抵抗を、駆動輪12に作用する粘性摩擦と同様の方法で考慮することで、より高精度の制御を実現することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図11は本発明の第2の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図、図12は本発明の第2の実施の形態における車両の高速走行時の動作を示す概略図である。なお、図12(a)は比較のための従来技術による動作例を示し、図12(b)は本実施の形態による動作を示している。
前記第1の実施の形態においては、搭乗部14が、車両10の前後方向に本体部11に対して相対的に並進可能となるように取り付けられ、能動重量部として機能する。この場合、能動重量部モータ62を備える移動機構が配設され、これにより搭乗部14を並進させるので、構造や制御システムの複雑化、コスト高、重量増、等が問題になる場合がある。当然のことながら、搭乗部14を移動させる移動機構を持たない倒立型車両に適用することは不可能である。
そこで、本実施の形態においては、搭乗部14を移動させる移動機構が省略されている。また、図11に示されるように、制御システムからも、能動重量部制御システム60が省略され、能動重量部制御ECU23、能動重量部センサ61及び能動重量部モータ62が省略されている。なお、その他の点の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
そして、本実施の形態においては、車両10の走行速度に応じて駆動輪12の駆動トルクと車体の傾斜角とを補正する。具体的には、速度依存抵抗トルク(粘性抵抗トルク)を打ち消すように駆動トルクを追加するとともに、車体に作用する粘性抵抗のトルク及び駆動トルクの追加分に対する反トルクを車体の重心移動に伴う重力トルクで打ち消すように、図12(b)に示されるように、車体を車両10の進行方向に傾斜させることによって車両10の重心位置を能動的に補正するようになっている。これにより、高速走行時でも、走行状態と車体姿勢を高精度に制御できる。その結果、高速走行時でも操縦性や乗り心地の良い安価な倒立型の車両10を提供することが可能となる。
これに対し、仮に、「背景技術」の項で説明した従来の車両のように、走行速度に応じて駆動輪12の駆動トルクと車体の傾斜角の補正を行わない場合、走行速度が高くなると、走行速度や車体姿勢の制御における誤差が大きくなる。つまり、倒立型車両の場合、図12(a)に示されるように、車両速度が高くなると、速度依存抵抗、すなわち、車両10に作用する空気抵抗や駆動輪12の回転軸に作用する粘性摩擦のような抵抗が増加し、走行及び姿勢制御への影響が強くなる。
具体的には、速度依存抵抗によって、車両速度が目標値よりも低くなる場合がある。また、車体に作用する空気抵抗のトルクや速度依存抵抗を打ち消すための駆動トルクの追加に伴って車体に作用する反トルクにより、車体が後方に傾く場合がある。その結果、モビリティとして重要な操縦性や乗り心地が悪くなる。
そこで、本実施の形態においては、車両10の走行速度に応じて駆動輪12の駆動トルクと車体の傾斜角とを補正するように走行及び姿勢制御処理を実行することによって、車両10の走行速度が上昇しても、車両10は安定して停止及び走行することができる。
次に、本実施の形態における走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。なお、走行及び姿勢制御処理の概要及び目標走行状態の決定処理については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略し、状態量の取得処理、目標車体姿勢の決定処理及びアクチュエータ出力の決定処理についてのみ説明する。まず、状態量の取得処理について説明する。
図13は本発明の第2の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。
Figure 0005369602
次に、目標車体姿勢の決定処理について説明する。
図14は本発明の第2の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標車体姿勢の決定処理において、主制御ECU21は、まず、車体傾斜角の目標値を決定する(ステップS3−11)。この場合、目標走行状態の決定処理によって決定された車両加速度の目標値と駆動輪回転角速度の目標値とに基づき、次の式(7)により、車体傾斜角の目標値を決定する。
Figure 0005369602
一方、θ1,V * は、車体に作用する空気抵抗によるトルク、駆動輪12の回転軸に作用する粘性摩擦等の摩擦抵抗によるトルクの反トルクに対して車体のバランスをとるのに必要な車体傾斜角、すなわち、速度依存抵抗による影響を打ち消す傾斜角である。
続いて、主制御ECU21は、残りの目標値を算出する(ステップS3−12)。すなわち、各目標値を時間微分又は時間積分することにより、駆動輪回転角及び車体傾斜角速度の目標値を算出する。
このように、本実施の形態においては、車両加速度の目標値に伴って車体に作用する慣性力及び駆動モータ反トルクだけでなく、駆動輪回転角速度(車両速度)の目標値に伴って車体に作用する空気抵抗等の速度依存抵抗及び駆動モータ反トルクも考慮して、車体傾斜角の目標値を決定する。
このとき、車体に作用して車体を傾斜させようとするトルク、すなわち、車体傾斜トルクを重力の作用によって打ち消すように、車体の重心を移動させる。例えば、車両10が前進走行するときには、車体をより前方へ傾ける。また、車両10が後退走行するときには、車体をより後方へ傾ける。
なお、本実施の形態においては、駆動輪摩擦抵抗トルクは線形モデルに基づいた式を使用し、車体空気抵抗は速度の2乗に比例するモデルに基づいた式を使用しているが、より正確な非線形モデル又は粘性抵抗を考慮したモデルに基づいた式を使用してもよい。なお、式が非線形になる場合には、マップの形式で関数を適用してもよい。
次に、アクチュエータ出力の決定処理について説明する。
図15は本発明の第2の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。
アクチュエータ出力の決定処理において、主制御ECU21は、まず、アクチュエータのフィードフォワード出力を決定する(ステップS4−11)。この場合、各目標値とから、前記第1の実施の形態において説明した前記式(3)により駆動モータ52のフィードフォワード出力を決定する。
前記式(3)に表されるように、力学モデルによって推定された速度依存抵抗を打ち消すように駆動トルクを付加することにより、車両10の走行及び姿勢制御を高精度で実行することができるとともに、常に同様の操縦感覚を乗員15に提供することができる。すなわち、高速走行時であっても、ジョイスティック31の一定の操縦操作に対して、低速走行時と同様の加減速を行うことができる。
続いて、主制御ECU21は、アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップS4−12)。この場合、各目標値と実際の状態量との偏差から、次の式(8)により駆動モータ52のフィードバック出力を決定する。
Figure 0005369602
なお、スライディングモード制御等の非線形のフィードバック制御を導入することもできる。また、より簡単な制御として、KW2及びKW3を除くフィードバックゲインのいくつかをゼロとしてもよい。さらに、定常偏差をなくすために、積分ゲインを導入してもよい。
最後に、主制御ECU21は、要素制御システムに指令値を与える(ステップS4−13)。この場合、主制御ECU21は、前述のように決定したフィードフォワード出力とフィードバック出力との和を駆動トルク指令値として、駆動輪制御ECU22に送信する。
このように、本実施の形態においては、車両10の走行速度に応じて駆動輪12の駆動トルクと車体の重心位置とを補正する。つまり、速度依存抵抗を打ち消すように駆動トルクを追加するとともに、車体に作用する空気抵抗トルク及び駆動トルクの追加分に対する反トルクを車体の重心移動に伴う重力トルクで打ち消すように、車体を前方に傾斜させる。したがって、搭乗部14の移動機構を持たない倒立型車両に適用することができる。また、構造及び制御システムを簡素化することができ、安価で軽量な倒立型車両を実現することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図16は本発明の第3の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。
本実施の形態においては、対気速度を計測し、その計測値に基づいて車両10の制御を行うようになっている。
駆動輪回転角速度に基づいて空気抵抗を推定すると、駆動輪12が空転した場合に空気抵抗の推定値に大きな誤差が生じることがある。一般的に、駆動輪12の回転速度から推定した車両速度を用いると、空気抵抗が過大に評価される。これは、空気抵抗が速度の2乗に比例するため、誤差が著しく大きくなるからである。また、誤った空気抵抗の推定値に対して駆動トルクを増加させるため、駆動輪12の空転状態を更に悪化させる可能性がある。さらに、誤った空気抵抗の推定値と釣り合うように車体重心を移動させるため、車体が大きく傾く可能性がある。なお、駆動輪12がロックして路面上をスリップした場合にも、同様の問題が生じる。
また、外気風が強くなると、走行速度や車体姿勢の制御における誤差が大きくなる。これは、強風に伴う大きな空気抵抗が、車両10の走行及び姿勢制御に影響を及ぼすためである。そのため、モビリティとして、操縦性や乗り心地が悪くなってしまう。一般的に、倒立型車両は走行速度が低いため、相対的に外気風の影響が大きくなる。
そこで、本実施の形態においては、駆動輪12の回転速度と車両10の対気速度とに応じて、駆動輪12の駆動トルク及び搭乗部14の位置を補正する。具体的には、駆動輪回転角速度に基づいて、駆動輪12に作用する粘性摩擦を推定するとともに、対気速度計によって計測した対気速度に基づいて、車体に作用する空気抵抗を推定する。
これにより、例えば駆動輪12が空転しても、走行状態と車体姿勢の高精度な制御を実現し、操縦性や乗り心地の良い倒立型の車両10を提供することができる。また、強風発生時にも、同様に、走行状態と車体姿勢の高精度な制御を実現し、操縦性や乗り心地の良い倒立型の車両10を提供することができる。
そのため、車両10は、図16に示されるように、対気速度計測手段としての対気速度センサ71を有する。該対気速度センサ71は、例えば、ピトー管による計測装置であって動圧を計測するものを使用するが、対気速度を計測可能なものであれば、いかなる種類のセンサであってもよい。
また、車両10は、対気速度センサ71を含む対気速度計測システム70を有する。そして、対気速度センサ71は、外気に対する車両10の速度である対気速度を計測して主制御ECU21に送信する。
次に、本実施の形態における走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。なお、走行及び姿勢制御処理の概要及び目標走行状態の決定処理については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略し、状態量の取得処理、目標車体姿勢の決定処理及びアクチュエータ出力の決定処理についてのみ説明する。まず、状態量の取得処理について説明する。
図17は本発明の第3の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。
Figure 0005369602
続いて、主制御ECU21は、対気速度を取得する(ステップS1−23)。この場合、対気速度センサ71の計測した対気速度を取得する。
次に、目標車体姿勢の決定処理について説明する。
図18は本発明の第3の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標車体姿勢の決定処理において、主制御ECU21は、まず、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する(ステップS3−21)。この場合、目標走行状態の決定処理によって決定された車両加速度の目標値と駆動輪回転角速度の目標値、及び、対気速度センサ71の計測した対気速度に基づき、前記第1の実施の形態において説明した前記式(1)及び(2)により、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
Figure 0005369602
続いて、主制御ECU21は、残りの目標値を算出する(ステップS3−22)。すなわち、各目標値を時間微分又は時間積分することにより、駆動輪回転角、車体傾斜角速度及び能動重量部移動速度の目標値を算出する。
このように、本実施の形態においては、車両加速度の目標値に伴って車体に作用する慣性力及び駆動モータ反トルクだけでなく、駆動輪回転角速度(車両速度)の目標値に伴って車体に作用する空気抵抗等の速度依存抵抗及び駆動モータ反トルクも考慮して、車体姿勢の目標値、すなわち、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
このとき、車体に作用して車体を傾斜させようとするトルク、すなわち、車体傾斜トルクを重力の作用によって打ち消すように、車体の重心を移動させる。例えば、車両10が前進走行するとき、あるいは、前方からの向かい風が存在するときには、搭乗部14をより前方へ移動させ、あるいは、さらに車体を前方へ傾ける。また、車両10が後退走行するとき、あるいは、後方からの追い風が存在するときには、搭乗部14をより後方へ移動させ、あるいは、さらに車体を後方へ傾ける。
本実施の形態においては、前記第1の実施の形態において説明した図8に示されるように、まず、車体を傾斜させずに搭乗部14を移動させ、該搭乗部14が能動重量部移動限界に達すると、車体の傾斜を開始させる。そのため、低速走行時や弱い外気風に対しては車体が前後に傾かないので、乗員15にとっての乗り心地が向上するのと共に、視界の揺動が抑制される。
なお、本実施の形態においては、駆動輪12の粘性摩擦を推定するための駆動輪回転角速度として、その目標値を使用しているが、実際に計測した値、すなわち、実値を使用してもよい。
また、本実施の形態においては、能動重量部移動限界が前方と後方とで等しい場合を想定しているが、前方と後方とで異なる場合には、各々の限界に応じて、車体の傾斜の有無を切り替えるようにしてもよい。例えば、加速性能よりも制動性能を高く設定する場合、後方の能動重量部移動限界を前方よりも遠くに設定する必要がある。
さらに、本実施の形態においては、車両10の加速度や速度が低いときや外気風が弱いときには、搭乗部14の移動だけで対応させているが、その車体傾斜トルクの一部又は全部を車体の傾斜で対応させてもよい。車体を傾斜させることによって、乗員15に作用する前後方向の力を軽減させることができる。
さらに、本実施の形態においては、駆動輪摩擦抵抗トルクは線形モデルに基づいた式を使用し、車体空気抵抗は速度の2乗に比例するモデルに基づいた式を使用しているが、より正確な非線形モデル又は粘性抵抗を考慮したモデルに基づいた式を使用してもよい。なお、式が非線形になる場合には、マップの形式で関数を適用してもよい。
次に、アクチュエータ出力の決定処理について説明する。
図19は本発明の第3の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。
アクチュエータ出力の決定処理において、主制御ECU21は、まず、各アクチュエータのフィードフォワード出力を決定する(ステップS4−21)。この場合、各目標値と対気速度とから、次の式(9)により駆動モータ52のフィードフォワード出力を決定し、また、前記第1の実施の形態において説明した前記式(4)により能動重量部モータ62のフィードフォワード出力を決定する。
Figure 0005369602
このように、力学モデルによって推定された速度依存抵抗トルクを打ち消すように駆動トルクを付加することによって、車両10の走行及び姿勢制御を高精度で実行することができるとともに、常に同様の操縦感覚を乗員15に提供することができる。すなわち、高速走行時や強い外気風が存在する場合であっても、ジョイスティック31の一定の操縦操作に対して、低速走行時と同様の加減速を行うことができる。
続いて、主制御ECU21は、各アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップS4−22)。この場合、各目標値と実際の状態量との偏差から、前記第1の実施の形態において説明した前記式(5)により駆動モータ52のフィードバック出力を決定し、また、前記第1の実施の形態において説明した前記式(6)により能動重量部モータ62のフィードバック出力を決定する。
なお、スライディングモード制御等の非線形のフィードバック制御を導入することもできる。また、より簡単な制御として、KW2、KW3及びKS5を除くフィードバックゲインのいくつかをゼロとしてもよい。さらに、定常偏差をなくすために、積分ゲインを導入してもよい。
最後に、主制御ECU21は、各要素制御システムに指令値を与える(ステップS4−23)。この場合、主制御ECU21は、前述のように決定したフィードフォワード出力とフィードバック出力との和を駆動トルク指令値及び能動重量部推力指令値として、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23に送信する。
このように、本実施の形態においては、駆動輪12の回転速度と車両10の対気速度とに応じて、駆動輪12の駆動トルク及び搭乗部14の位置を補正する。つまり、駆動輪回転角速度に基づいて、駆動輪12に作用する摩擦抵抗トルクを推定するとともに、対気速度計によって計測した対気速度に基づいて、車体に作用する空気抵抗を推定する。
これにより、駆動輪12が空転やスリップ状態にあっても、走行状態と車体姿勢とを高精度に制御することができるので、操縦性や乗り心地の良い倒立型の車両10を提供することができる。また、外気風が強い場合においても、同様に、走行状態と車体姿勢とを高精度に制御することができるので、操縦性や乗り心地の良い倒立型の車両10を提供することができる。
なお、本実施の形態においては、対気速度センサ71から取得した対気速度に基づいて空気抵抗を推定する例について説明したが、対気速度センサ71としてピトー管等の動圧計測型のセンサを使用する場合には、動圧値を直接取得して空気抵抗を推定してもよい。これにより、大気の密度変化による影響を正しく考慮することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第3の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図20は本発明の第4の実施の形態における駆動輪速度依存抵抗トルクのパラメータ推定を示す図、図21は本発明の第4の実施の形態における車体速度依存抵抗トルクのパラメータ推定を示す図、図22は本発明の第4の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態においては、走行状態、車体姿勢等の時間履歴に基づいて速度依存抵抗のパラメータを推定するようになっている。
速度依存抵抗のパラメータは、車両10の使用状況や使用履歴によって変化する。例えば、駆動輪摩擦抵抗係数は、経年変化が生じやすい。また、車体空気抵抗係数や作用中心高さは、搭乗部14上の乗員15又は積載物の形状により相違する。そして、速度依存抵抗のパラメータに誤差があると、走行及び姿勢制御が適切に実行されない場合がある。また、使用状況や使用履歴によっては、操縦性や乗り心地が悪化する場合がある。
そこで、本実施の形態においては、計測した走行状態、車体姿勢及びアクチュエータ出力に基づいて、速度依存抵抗のパラメータを推定する。具体的には、種々の駆動輪回転角速度と速度依存抵抗トルクとの関係の時間履歴から、パラメータを推定する。さらに、車体姿勢の変化速度が低い場合におけるデータのみを推定に利用する。そして、車両速度が低い状態おける推定値を速度依存抵抗トルクのオフセット値として誤差の修正に利用する。
これにより、車両10の使用状況や使用履歴に依らず、車両10に作用する速度依存抵抗の値を高精度で推定することができる。したがって、操縦性や乗り心地のより良い倒立型の車両10を提供することができる。
次に、本実施の形態における走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。なお、走行及び姿勢制御処理の概要並びに目標走行状態の決定処理、目標車体姿勢の決定処理及びアクチュエータ出力の決定処理については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略し、状態量の取得処理についてのみ説明する。
Figure 0005369602
続いて、主制御ECU21は、車体姿勢は安定か否かを判断する(ステップS1−33)。この場合、車体傾斜角速度、車体傾斜角加速度、能動重量部移動速度、能動重量部移動加速度のすべての絶対値が所定の閾値以下であるとき、車体姿勢は安定である、すなわち、車体の姿勢変化の影響が小さいと判断する。
本実施の形態における速度依存抵抗のパラメータの推定においては、車体姿勢の変化時のデータは使用しない。具体的には、車体傾斜角速度、車体傾斜角加速度、能動重量部移動速度、能動重量部移動加速度の各車体姿勢状態量について、それらの絶対値のいずれかが、それぞれについてあらかじめ設定された閾値より大きいときには、車体姿勢変化によるパラメータ推定値への影響が大きいと判断して、速度依存抵抗のパラメータの推定値の更新を行わず、また、そのときのデータも以降の速度依存抵抗のパラメータの推定値に反映させない。
つまり、車体の姿勢が激しく変化しているときには、速度依存抵抗のパラメータを推定しない。これは、速度依存抵抗のパラメータが短時間で急激に変化する可能性は極めて低く、車体の姿勢が激しく変化しているような場合の推定は不要とする考えに基づく。
このように、高精度の推定が困難で誤差が大きいと予想される場合を積極的に回避することで、高精度の推定を簡単に実現することができる。
なお、本実施の形態においては、車体姿勢変化時のデータを速度依存抵抗のパラメータの推定に使用しないようにしているが、他の要因によってデータの使用を禁止してもよい。例えば、坂路走行時、段差昇降時、急加減速時、車両停止時、搭乗者乗降時、システム異常時等には、データの使用を禁止するようにしてもよい。一方、これらの要因を十分高精度に考慮することができる推定モデルを用いる場合には、それらの要因を考慮して、速度依存抵抗のパラメータの推定を行ってもよい。
そして、車体姿勢が安定していると判断した場合、主制御ECU21は、速度依存抵抗トルクを推定する(ステップS1−34)。この場合、各状態量、及び、前回(1つ前の時間ステップ)の走行及び姿勢制御処理におけるアクチュエータ出力の決定処理で決定した各アクチュエータの出力に基づき、次の式(10)及び(11)により、駆動輪速度依存抵抗トルク及び車体速度依存抵抗トルクをそれぞれ推定する。
Figure 0005369602
Figure 0005369602
このように、本実施の形態においては、車両10の走行状態、車体姿勢及び駆動トルクの値に基づいて、速度依存抵抗トルクを推定する。つまり、駆動輪12や車体に作用するトルクから、車両速度に依存する粘性抵抗トルクの成分を抽出する。具体的には、駆動トルクから、駆動輪回転角速度、車体傾斜角及び能動重量部位置の計測値に基づいて、理論的な力学モデルにより想定される他のトルク成分を取り除くことで、粘性抵抗トルクの成分を抽出する。本実施の形態においては、駆動輪12に作用する駆動トルクから、車両10の慣性力の成分を除いた値を駆動輪速度依存抵抗トルクとする。さらに、車体に作用する駆動トルクの反トルクから、車体傾斜に伴う重力トルク、車両10の加速度に伴う慣性力によるトルク、及び、搭乗部14の位置ずれに伴う重力トルクを除いた値を車体速度依存抵抗トルクとする。
また、各速度依存抵抗トルクの推定値から、車両速度に無関係な成分を取り除く。具体的には、駆動輪回転角速度が所定の閾値よりも低いときの速度依存抵抗トルクの推定値を、車両速度に無関係な成分とする。そして、この条件を満たす推定値を選択的に抽出し、所定の時定数で定義されるローバスフィルタをかけた値を、速度依存抵抗トルク推定値のオフセット値(定数成分)とみなし、逐次得られる推定値からこのオフセット成分を取り除くことで、速度依存抵抗トルク推定値を補正する。この成分は、力学モデルで考慮されていない他の成分(例えば、車体の重心ズレ、路面勾(こう)配、静止摩擦等)に相当し、これをできる限り取り除くことによって、速度依存抵抗トルク推定値の精度を向上させることができる。
なお、本実施の形態においては、簡単な線形の力学モデルに基づき、抵抗トルクの推定値から主要な他の成分を取り除いているが、各成分について、より厳密な非線形モデルを用いてもよい。また、他の成分を理論的に考慮してもよい。例えば、他のオブザーバにより車体の重心ズレや路面勾配の値を推定し、その成分を除去してもよい。
さらに、本実施の形態においては、駆動輪回転角速度に基づいて無関係な成分を抽出しているが、異なる条件に基づいて、想定される他の成分を抽出し、補正に利用してもよい。
続いて、主制御ECU21は、速度依存抵抗パラメータを推定する(ステップS1−35)。この場合、初めに、推定した駆動輪速度依存抵抗トルクと車体速度依存抵抗トルク、及び、駆動輪回転角速度の時間履歴に基づき、次の式(12)により、駆動輪摩擦抵抗係数、車体空気抵抗係数及び車体空気抵抗中心高さを推定するのに必要な、各速度依存抵抗トルクと駆動輪回転角速度との関係式における各係数を求める。
Figure 0005369602
前記式(12)は、各速度依存抵抗トルクと駆動輪回転角速度との関係式を二次関数と仮定し、その各係数を最小二乗法によって推定する計算式である。
図20は駆動輪速度依存抵抗トルクのパラメータ推定を説明する図であり、縦軸は駆動輪速度依存抵抗トルクを示し、横軸は駆動輪回転角速度を示している。そして、白抜きの丸○は、所定時間だけ前の時刻から現時点までの間に推定された駆動輪速度依存抵抗トルクの推定値とそれに対応する駆動輪回転角速度の値とをプロットしたものである。また、曲線Bは複数の丸○が示す駆動輪速度依存抵抗トルクの推定値と駆動輪回転角速度の値との関係を次の式(13)で表される二次関数で仮定して、最小二乗法によって求めた結果を示す。
Figure 0005369602
また、図21は車体速度依存抵抗トルクのパラメータ推定を説明する図であり、縦軸は車体速度依存抵抗トルクを示し、横軸は駆動輪回転角速度を示している。そして、白抜きの丸○は、所定時間だけ前の時刻から現時点までの間に推定された車体速度依存抵抗トルクの推定値とそれに対応する駆動輪回転角速度の値とをプロットしたものである。また、曲線Cは複数の丸○が示す車体速度依存抵抗トルクの推定値と駆動輪回転角速度の値との関係を、次の式(14)で表される二次関数で仮定して、最小二乗法によって求めた結果を示す。
Figure 0005369602
次に、得られた各速度依存抵抗トルクと駆動輪回転角速度との関係式における各係数の値に基づいて、駆動輪摩擦抵抗係数、車体空気抵抗係数及び車体空気抵抗中心高さを推定する。具体的には、駆動輪摩擦抵抗係数DW の値をDW =CW,1 より、車体空気抵抗係数D1 の値をD1 =CW,2 /RW より、車体空気抵抗中心高さh1,D の値をh1,D =(C1,2 +RW )/D1 よりそれぞれ推定する。
このように、本実施の形態においては、車両速度及び速度依存抵抗トルク推定値の時間履歴から、速度依存抵抗パラメータを推定する。具体的には、所定の時間だけ前の時刻から現在までの駆動輪回転角速度と速度依存抵抗トルク推定値とを用いて、駆動輪回転角速度と速度依存抵抗トルクとの相関関係及びそのパラメータを推定する。この場合、最小二乗法によりパラメータを求める。このとき、速度依存抵抗トルクは定数項並びに駆動輪回転角速度の1次項及び2次項の3項から成ると仮定する。
なお、理論的な力学モデルでは、駆動輪速度依存抵抗トルクは1次項と2次項とから成り、車体速度依存抵抗トルクは2次項のみから成るが、他の項も仮定することにより、力学モデルで考慮していない要素が速度依存抵抗パラメータの推定値に影響する程度を軽減している。
そして、相関パラメータから、各速度依存抵抗パラメータを求める。つまり、駆動輪摩擦抵抗係数を、駆動輪速度依存抵抗トルクの1次の係数により決定する。また、車体空気抵抗係数を、駆動輪速度依存抵抗トルクの2次の係数により決定する。さらに、車体空気抵抗中心高さを、車体速度依存抵抗トルクの2次の係数により決定する。
なお、本実施の形態においては、最小二乗法により所定の時間内における平均的な相関関係を推定しているが、他の方法を用いてもよい。例えば、3点のデータから瞬間的な相関関係を求め、その相関パラメータにローバスフィルタをかけることで、平均的な相関関係を少ないメモリ容量および演算量で算出することができる。
また、本実施の形態においては、相関関係を2次関数で仮定しているが、より高次の関数や他の非線形関数を用いてもよい。これにより、より正確に速度依存抵抗成分を抽出することができる可能性がある。
そして、主制御ECU21は、このようにして推定した速度依存抵抗パラメータに基づいて、以降の目標走行状態の決定処理、目標車体姿勢の決定処理及びアクチュエータ出力の決定処理を実行する。なお、車体姿勢は安定か否かを判断して、安定でないと判断した場合には、主制御ECU21は、速度依存抵抗トルクを推定することなく、かつ、速度依存抵抗パラメータも推定することなく、そのまま、状態量の取得処理を終了する。
このように、本実施の形態においては、走行状態、車体姿勢等の時間履歴に基づいて速度依存抵抗のパラメータを推定する。具体的には、種々の駆動輪回転角速度と各速度依存抵抗トルクとの関係からパラメータを推定する。さらに、車体姿勢の変化速度が低い状態のデータのみを利用する。そして、車両速度が低いときの推定値をオフセット値として誤差の修正に利用する。
これにより、車両10の使用状況や使用履歴に依らず、車両10に作用する速度依存抵抗の値を高精度で推定することができる。また、車両速度が低い状態おける推定値をオフセット値とすることにより、把握不能な抵抗等の種々の因子を誤差としてオフセットすることができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の第1の実施の形態における車両の構成を示す概略図であり乗員が搭乗した状態で加速前進している状態を示す図である。 本発明の第1の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態における車両の高速走行時の動作を示す概略図である。 本発明の第1の実施の形態における車両の走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における車両の力学モデル及びそのパラメータを示す図である。 本発明の第1の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における目標走行状態の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値の変化を示すグラフである。 本発明の第1の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。 本発明の第2の実施の形態における車両の高速走行時の動作を示す概略図である。 本発明の第2の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。 本発明の第3の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。 図20は本発明の第4の実施の形態における駆動輪速度依存抵抗トルクのパラメータ推定を示す図である 本発明の第4の実施の形態における車体速度依存抵抗トルクのパラメータ推定を示す図である。 本発明の第4の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。
符号の説明
10 車両
12 駆動輪
20 制御ECU

Claims (8)

  1. 回転可能に車体に取り付けられた駆動輪と、
    該駆動輪に付与する駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、
    該車両制御装置は、前記駆動輪の回転状態及び/又は前記車体の重心位置及び/又は前記駆動トルクの時間履歴によって、車両速度に伴って前記駆動輪及び/又は前記車体に作用する抵抗トルクである速度依存抵抗トルクを推定する推定手段と、
    該推定手段によって推定された速度依存抵抗トルクに応じて前記車体の姿勢を制御する姿勢制御手段とを備え
    前記推定手段は、前記車体の重心の移動速度又は移動加速度が所定の閾値以上であるときの時間履歴を推定に用いることを禁止することを特徴とする車両。
  2. 前記推定手段は、前記駆動輪の回転角速度、前記駆動輪の回転角加速度及び前記車体の傾斜角のいずれか1つ以上についての時間履歴によって前記速度依存抵抗トルクを推定する請求項1に記載の車両。
  3. 前記車体に対して移動可能に取り付けられた能動重量部を更に有し、
    前記推定手段は、前記能動重量部の駆動輪との相対位置の時間履歴によって速度依存抵抗トルクを推定する請求項1又は2に記載の車両。
  4. 前記推定手段は、前記車体に作用する空気抵抗である車体空気抵抗及び/又は前記空気抵抗に伴い前記車体に作用するトルクである車体空気抵抗トルク及び又は前記駆動輪の回転に対する摩擦抵抗である駆動輪摩擦抵抗トルクを推定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両。
  5. 前記推定手段は、前記駆動輪の回転角速度が所定の閾値以下であるときの前記速度依存抵抗トルクの推定値をオフセット量として前記速度依存抵抗トルクの推定値を補正する請求項1〜のいずれか1項に記載の車両。
  6. 前記車両制御装置は、前記駆動輪の回転角速度及び前記速度依存抵抗トルクの推定値の時間履歴によって前記駆動輪の回転角速度の累乗と前記速度依存抵抗トルクの相関パラメータである速度依存抵抗パラメータを決定するパラメータ決定手段を備え、
    前記推定手段は、前記速度依存抵抗パラメータに応じて前記速度依存抵抗トルクを推定する請求項1〜のいずれか1項に記載の車両。
  7. 前記パラメータ決定手段は、前記空気抵抗と前記駆動輪の回転角速度の累乗との比である車体空気抵抗係数と前記車体空気抵抗の作用中心の高さである車体空気抵抗中心高さと前記駆動輪の摩擦抵抗と前記駆動輪の回転角速度の累乗との比である駆動輪摩擦抵抗係数の少なくとも1つを決定する請求項に記載の車両。
  8. 前記パラメータ決定手段は、現在から所定の時間だけ前までの範囲における前記駆動輪の回転角速度と前記速度依存抵抗トルクの推定値の組データに対する最小二乗法によって、前記速度依存抵抗パラメータを決定する請求項又はに記載の車両。
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