JP2009214171A - 亜鉛系合金めっき鋼材の溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも一方が亜鉛系合金めっき鋼材である鋼材同士を溶接接合する際、溶接ワイヤとしてフェライト系ステンレス鋼組成のものをもちいる。
亜鉛系合金めっき鋼材の母材の熱膨張率と溶接金属の熱膨張率が近似するため、溶接接合後に、溶接部あるいはその近傍での割れ発生を抑制することができる。また、溶接金属がフェライト系ステンレス鋼組成を有しているために耐食性にも優れた溶接構造物が得られる。
【選択図】なし
Description
従来、比較的にサイズの小さい鋼製溶接構造物にあっては、非めっき部材を所定形状に組み合わせて溶接接合し、その後に、亜鉛系合金めっき浴に浸漬して鋼製部材および溶接部表面に亜鉛系合金めっき付着させ、溶接構造物全体の耐食性を確保している。
しかしながら、この方法も、比較的サイズの小さい構造物の製造に限定される。さらに生産性が低いために、結果的に製造コストが高いものとなっている。
ところが、亜鉛系合金めっき鋼板を溶接接合する際に、溶接部はめっき層がなくなった状態となって耐食性が低下する、と言った問題点がある。この問題点は、溶接後、溶接部およびその近傍を、ジンクリッチペイント等の防錆塗料で後塗装することによって解消しているが、後塗装を必要とする点で生産性が低下するばかりでなく、塗装部の信頼性も十分でない。
例えば特許文献1では、質量%で、C:0.01〜0.05%、Si:0.1〜1%、Mn:0.5〜3%、Ni:7〜12%、Cr:24〜30%を含有し、さらに、Mo:2%以下およびN:0.17%以下の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼組成の溶接ワイヤを用いて亜鉛系合金めっき鋼板を溶接接合している。
しかしながら、溶接金属をオーステナイト系ステンレス鋼組成のものとすると、母材部の板厚が厚いものまたは拘束状態にあるような溶接条件の場合、オーステナイト系ステンレス鋼組成の溶接金属の熱膨張係数が大きいため、溶接時の溶接金属膨張後の収縮により母材部または溶着金属に引張応力が働き、さらに溶接時の熱により母材のめっきが溶融状態となり、溶接部近傍の母材部あるいは溶接金属に割れが発生することがある。割れが生じると本来の強度を発現しなくなってしまう。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、亜鉛系合金めっき鋼材を溶接接合する際に、溶接部およびその近傍において割れが発生することなく、素材亜鉛系めっき鋼板の耐食性を維持できる溶接方法を提供することを目的とする。
なお、本発明を適用する亜鉛系合金めっき鋼材とは、亜鉛めっき鋼板の他に、Zn−Al系合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg−Si系合金めっき鋼板等を含むものである。
したがって、亜鉛系合金めっき鋼材を素材とした溶接構造物として、所望に接合強度を発現し、かつ耐食性を維持したものを安定的に提供することができる。
まず、溶接金属を、従来の普通鋼組成とした場合、溶接部の耐食性が低下することは言うまでもない。また、特許文献1で提案されているようなオーステナイト系ステンレス鋼組成とした場合、溶接条件によっては溶接部あるいはその近傍に割れが生じやすいことは前記した通りである。
例えば、C:0.08質量%,Si:0.38質量%,Mn:1.08質量%,Ni:8.17質量%,Cr:18.50質量%のオーステナイト系ステンレス鋼の熱膨張係数は17/℃×10-6程度である。
一方、C:0.1質量%,Si:0.005質量%,Mn:0.5質量%の低炭素鋼の熱膨張係数は11.6/℃×10-6程度である。この差が、溶接後の溶接部あるいはその近傍での割れ発生の要因とも言える。
現実の溶接、特にアーク溶接を行う際には、溶接金属を溶接ワイヤとして供給するので、溶接ワイヤとして、フェライト系ステンレス鋼組成のものを使用する。
その成分組成としては、C:0.01〜0.1質量%,Si:0.1〜2.0質量%,Mn:0.1〜2.0質量%,Ni:0.6質量%以下,Cr:11.0〜25.0質量%,さらに必要に応じてTi:0.01〜0.5質量%,Nb:0.1〜1.0質量%,Zr:0.1〜1.0質量%,V:0.1〜1.0質量%のうち一種以上を含み、さらに必要に応じてMo:0.1〜3.0質量%を含有し残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成の溶接ワイヤを用いる。
C:0.01〜0.1%
Cは各種元素と化合物を作り、強度を増す元素であり、溶接金属の熱膨張係数を下げるが、その効果を得るために0.01%以上含有させる。ただし、0.1%を超える含有は溶接金属の強度を過剰に増加させるとともに、熱膨張係数を下げすぎ鋼材母材との差を生じさせ、溶接部およびその近傍に割れを生じさせる事があるため0.1%以下とした。
Mnは溶接金属の脱酸脱硫作用があり、その効果を得るために0.1%以上含有させる。ただし、2.0%を超える含有はオーステナイトを生成し溶接金属の熱膨張係数を増加させ鋼材母材との差を生じ、溶接部およびその近傍に割れを生じさせる事があるため2.0%以下とした。
Niは溶接金属の耐食性を増し、オーステナイトを生成する元素であるが、0.6%を超える含有は溶接金属の熱膨張係数が増加し鋼材母材との差を生じさせ、溶接部およびその近傍に割れを生じさせる事があるため0.6%以下とした。
なお、通常、ステンレス鋼では、Niは不可避的に含まれており、規定していない場合であっても少量の含有を許容している(例えばJIS G4304等)ので、本明細書にあっては、下限値は規定しないこととした。
Crは溶接金属の耐食性を増し、13%以上含有すると著しく耐食性が向上する。また、フェライトを生成する元素である。これらの効果を得るために11%以上含有していればよいがフェライトを生成させ熱膨張係数を鋼材母材と近似させるためには16%以上の含有が好ましい。ただし、25%を超える含有は溶接金属中に化合物が生成し溶接金属の靭性を低下させる事があるため25%以下とした。
Tiはフェライトを生成する元素であり、結晶粒を微細化し脱酸効果もあるので、必要に応じて含ませる。これらの効果を得るために0.01%以上含有させる。ただし、0.5%を超える含有は溶接金属の靭性を低下させる事があるため0.5%以下とした。
Nbは溶接金属中のCやNを安定化する作用があり耐粒界腐食性があるので、必要に応じて含ませる。その効果をえるために0.1%以上含有する。ただし、1.0%を超える含有は溶接金属中に金属間化合物を析出し、溶接金属の靭性を低下させる事があるため1.0%以下とした。
Zrはフェライトを生成する元素であり、クロム炭化物の析出による耐食性の劣化を改善する効果があるので、必要に応じて含ませる。これらの効果を得るために0.1%以上含有させる。ただし、1.0%を超える含有は溶接金属の強度を増加させ、溶接部およびその近傍に割れを生じさせる事があるため1.0%以下とした。
Vは耐食性向上および結晶粒を微細化し粘り強くする効果があるので、必要に応じて含ませる。これらの効果を得るために0.1%以上含有させる。ただし、1.0%を超える含有は溶接金属の強度を増加させ、溶接部およびその近傍に割れを生じさせる事があるため1.0%以下とした。
Moは高温加熱時に結晶粒の粗大化を防ぎ靭性低下を防止する。また、耐食性を向上させる。したがって、必要に応じて含ませる。これらの効果を得るために0.1%以上含有させる。ただし、3.0%を超える含有は溶接金属の強度を増加させ、溶接部およびその近傍に割れを生じさせる事があるため3.0%以下とした。
TiO2はアークの安定性、溶接金属成分を整えるのに必要な成分であるが、4.0%未満だとその効果が現れないため、4.0%以上含有させる。ただし、7.0%を超えると粘性が低下して溶接金属の形状がいびつになり外観が損なわれるため7.0%以下とした。
SiO2は溶接金属を覆うスラグ形成に必要な成分であるが、1.5%未満だと溶接金属を十分に覆うようなスラグ形成が困難であり、溶接金属の酸化防止効果が得られないため、1.5%以上含有させる。ただし、3.5%を超えるとスラグの剥離性が劣化し作業性が損なわれるため3.5%以下とした。
そして、溶接ビードが重なるラップ部とその反対側の溶接ビードが重なっていないシングル部の断面について目視観察を行った。めっき鋼板母材または溶接金属に割れがなかったものを○とし、割れが認められたものを×で評価した。
その結果を表4に示す。
Claims (5)
- 少なくとも一方が亜鉛系合金めっき鋼材である鋼材同士を溶接接合する際、C:0.01〜0.1質量%,Si:0.1〜2.0質量%,Mn:0.1〜2.0質量%,Ni:0.6質量%以下,Cr:11.0〜25.0質量%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成の溶接ワイヤを用いることを特徴とする亜鉛系合金めっき鋼材の溶接方法。
- さらに、Ti:0.01〜0.5質量%,Nb:0.1〜1.0質量%,Zr:0.1〜1.0質量%,V:0.1〜1.0質量%のうち一種以上を含む鋼組成の溶接ワイヤを用いる請求項1に記載の亜鉛系合金めっき鋼材の溶接方法。
- 上記に加えMo:0.1〜3.0質量%の鋼組成の溶接ワイヤを用いる請求項1または2に記載の亜鉛系合金めっき鋼材の溶接方法。
- フラックス入りの溶接ワイヤを用いる請求項1〜3のいずれかに記載の亜鉛系合金めっき鋼材の溶接方法。
- フラックスが、スラグ成分として、全ワイヤ質量に対して、TiO2:4.0〜7.0質量%,SiO2:1.5〜3.5質量%を含有し、スラグ成分の合計量が5.5〜10.5質量%である溶接ワイヤを用いる請求項4に記載の亜鉛系合金めっき鋼材の溶接方法。
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