JP2008194724A - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤおよび亜鉛めっき鋼板とステンレス鋼板の溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 金属外皮内にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、金属外皮およびフラックス中にワイヤ全質量に対して質量%で、C:0.01〜0.05%、Si:0.10〜0.45%、Mn:0.2〜1.0%、Cr:13〜20%、Nb:0.5〜1.0%、Cu:0.01〜0.3%、Al:0.2〜0.8%、Ti:0.1〜0.8%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。また、前記ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて亜鉛めっき鋼板または亜鉛めっき棒鋼とステンレス鋼板の重ね継手、T継手またはフレア継手溶接を行うことも特徴とする。
【選択図】 図3
Description
C:0.01〜0.05%、
Si:0.1〜0.45%、
Mn:0.2〜1.0%、
Cr:13〜20%、
Nb:0.5〜1.0%、
Cu:0.01〜0.3%、
Al:0.2〜0.8%、
Ti:0.1〜0.8%、
アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩の1種または2種以上:0.05〜0.25%を含有し、
N:0.015%以下で、残部はFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
Cは、Crと炭化物を形成し、溶接金属の高温酸化性および耐塩害腐食性を低下させる。一方、Cはオーステナイト安定化元素としてフェライトの成長を抑制し、Nbと炭化物を形成して等軸晶の生成に有効で、溶接割れの抑制に効果がある。Cが0.01質量%(以下、%という。)未満の場合、等軸晶の生成効果が期待できない。Cが0.05%を超えると、溶摘移行がスムーズに行かずスパッタ発生量が増大する。また、溶接金属の耐酸化性を低下させる。
Siは、フェライト安定化元素として溶接金属の柱状組織の粗大化を促進する作用があり、さらに脱酸効果があり酸化物として粒界に偏析して脆弱化させる作用も有するため、梨型ビード形状割れと延性低下での割れによる溶接割れ感受性を高める元素である。
Mnは、高融点のMnSを形成して高温割れ抑制に有効である。0.2%未満ではその効果が不十分であり、1.0%を超えると、溶接金属の高温酸化性を劣化させる。また、溶接金属を硬化させるとともに、亜鉛めっき鋼板の溶接する際に発生する蒸気を溶接金属内に閉じ込めやすくなり、ブローホールの原因となるため、上限を1.0%とする。
Crは、フェライト系ステンレス鋼の主要な元素である。Crは、高温でCr2O3主体の酸化物を形成し、緻密で酸素の拡散が阻止できるので、耐酸化性の機能を発揮する。また、高温強度および耐塩害腐食性などの耐食性を確保する上でも必須である。Crが13%未満だとマルテンサイト組織が析出しやすくなり溶接割れを助長する。一方、20%を超えると溶接金属の延性低下が懸念され耐溶接割れ性が劣化する。
Nbは、溶接金属のミクロ組織改善と梨型ビード形状割れの抑制に最も効果がある。Nbは、炭素および窒素と結合してフェライト形成核となる炭窒化物を生成する成分であり、炭窒化物を生成させ結晶粒の微細化および高温強度の改善が見込まれる。その効果を得るためには、炭素含有量の7倍の添加が必要であり0.5%以上とする。しかし、過剰な添加は、低融点のNbCを粒界に過剰形成させ、かえって溶接割れ感受性を高める作用があるため、上限を1.0%以下とする。
Cuは、溶接時の溶融池の粘性を下げる効果があり、本発明のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、C、Siの添加を低く抑えているため溶接ビード形状を改善させる。また、亜鉛めっき鋼板とステンレス鋼板との溶接を行う場合、Crを含有していない亜鉛めっき鋼板では、溶接金属のCr量が減少して耐食性が劣化するが、Cuを含むことによって溶接金属組織中の粒内を強化し、全面腐食の発生を抑制する効果がある。Cuが0.01%未満だとこの効果が期待できない。一方、0.3%を超えると溶接金属の融点が下がり、溶接割れを助長するとともに、重ね継手、T継手およびフレア継手の溶接時、溶接ビード形状が劣化する。
Alは、等軸晶の生成には必須元素である。溶接金属の脱酸作用により酸化物を形成し、この酸化物が等軸晶の生成を促進して梨型ビード形状割れを防止する作用を有する。Alが0.2%未満では、これら効果は不十分である。一方、0.8%を超えると、スパッタ発生量が多くなり好ましくない。
Tiは、脱酸効果と等軸晶の生成に有効な元素である。等軸晶生成のメカニズムはAlと同じであり梨型ビード形状割れ防止する作用を有する。また、アーク安定性を良化させる作用がある。Tiが0.1%未満では、これら効果は不十分である。一方、0.8%を超えると、アーク吹付け力が過剰となり、スパッタ発生量が多くなるとともにビードが凸形状となるので好ましくない。
Na2CO3,K2CO3,Li2CO3等のアルカリ金属炭酸塩およびCaCO3,BaCO3等のアルカリ土類金属炭酸塩は、アーク安定性作用とアーク集中性を高める。その効果は0.05%未満では得られない。一方、0.25%を超えると、アークの集中性が強すぎてスパッタ発生量が多くなる。したがって、本発明ではアルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩の1種または2種以上の含有量を0.05〜0.25%とした。
Nは、オーステナイト安定化元素してフェライト相析出を抑制する効果がある。しかし、本発明の対象とする金属組織は、フェライト単相組織であり溶接のままの状態では延性が少なく、オーステナイト安定化元素であるNの添加は、更なる延性劣化の要因となる。亜鉛めっき鋼板とステンレス鋼板との溶接を行う場合、異材溶接となり溶接金属にマルテンサイト組織が析出する可能性があり、耐食性が劣化するためオーステナイト安定化元素の添加を抑える必要がる。また、亜鉛めっき鋼板を溶接する際に発生する蒸気とともにブローホールの原因となるため、0.015%以下とする。
Niは、オーステナイト安定化元素であり、溶接金属組織中のオーステナイト相を安定化させ溶接金属の延性を得るが、非常に高価な原料であり、コスト上昇にもつながる。特に、亜鉛めっき鋼板とステンレス鋼板との溶接を行う場合、異材溶接となり溶接金属にマルテンサイト組織が析出する可能性があり、耐食性が劣化してしまう。また、多量の添加はP、S等の割れに有害な微量成分の偏析を促進し、溶接割れが発生しやすくなるため0.2%以下とする。
Arガスを主体とした混合ガスは、溶接金属組織の清浄度が上がり耐食性が向上する。また、溶接時のアークを安定させ、溶接作業性を良好にする効果がある。Arに5%を超えるO2を混合したガスを用いると、溶接金属中にTi、Si等と結合した酸化物が溶接部表面に多量に発生し、ビード外観を損ないビード形状を劣化させる。Arに25%を超えるCO2を混合したガスを用いると、アークがグロビュール移行となりスパッタが多量に発生し溶接作業性を劣化させる。また、亜鉛めっき鋼板とステンレス鋼の溶接の場合、異材溶接となりマルテンサイト組織が析出する可能性があるため、ワイヤ成分を規定してもシールドガス中のCのピックアップにより、組織変態の要因となるとともに耐食性を劣化させる要因となる。
パルス波形制御によって溶接を行うことにより、アークが安定し、スパッタの飛散の少ない良好な溶接作業性が得られる。亜鉛めっき鋼板とステンレス鋼板の溶接時には、パルスの振幅により発生した振動が、亜鉛めっきが蒸発して発生した気泡を溶融池に浮上させ、ブローホールおよびピットの発生を抑制する効果がある。インバータ制御またはサイリスタ制御の溶接電源を使用しても、溶融池に与える振動が小さくなるためブローホールおよびピットの発生を抑制する効果が得にくい。
表1に示す化学成分の金属外皮を用いて、表2に示す化学成分のフラックス入りワイヤを試作した。ワイヤ径は1.2mmであり、またフラックス充填率は18〜23%とした。
ワイヤ記号S28は、Cuが少ないので、ビード形状が不良であった。また、酸化試験で酸化増量が多く耐酸化性も不良であった。
表1に示す化学成分の金属外皮を用いて、表6に示す化学成分のフラックス入りワイヤを試作した。ワイヤ径は1.2mmであり、またフラックス充填率は18〜23%とした。
2 フラックス
3 合わせ目
4 スリット
5 母材
6 溶接金属
7 亜鉛皮膜
S 溶接のスタート点
E 溶接終了点
a 縦脚長
b 横脚長
Claims (4)
- 金属外皮内にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、金属外皮およびフラックス中にワイヤ全質量に対して質量%で、
C:0.01〜0.05%、
Si:0.1〜0.45%、
Mn:0.2〜1.0%、
Cr:13〜20%、
Nb:0.5〜1.0%、
Cu:0.01〜0.3%、
Al:0.2〜0.8%、
Ti:0.1〜0.8%、
アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩の1種または2種以上:0.05〜0.25%、を含有し、
N:0.015%以下で、残部はFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - ワイヤ全質量に対して質量%で、C:0.01〜0.03%を含有し、Ni:0.2%以下であることを特徴とする請求項1記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 亜鉛めっき鋼板または亜鉛めっき棒鋼とステンレス鋼板の重ね継手、T継手またはフレア継手を請求項2記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて溶接を行うことを特徴とする亜鉛めっき鋼板とステンレス鋼板の溶接方法。
- Arに5体積%以下のO2またはArに25体積%以下のCO2を混合したガスおよび溶接電源にパルス波形制御を用いることを特徴とする請求項3記載の亜鉛めっき鋼板とステンレス鋼板の溶接方法。
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