この発明は、ノートパソコン、携帯電話、小型ビデオカメラ用などの小型の機器から自動車用および家庭用などの大型機器に至る各種の電気機器の電源として用いることのできる燃料電池に関するものである。
ダイレクトアルコール型の燃料電池は、比較的低い温度での発電が可能なこと、可燃性ガスを使用する燃料電池と比較して、液体燃料を用いるために、燃料のエネルギ密度が高いこと、またその結果として燃料容器が小型化できること、さらには、貯蔵の難しい水素ガスを燃料に用いないなどのことから、燃料電池全体の構成を小型化することができるなどの特徴を有する。したがって今後、ノートパソコン、携帯電話、小型ビデオカメラなどの小型携帯型の機器用電源として有望視される燃料電池である。
一方、従来のダイレクトアルコール型の燃料電池は、水素ガスを燃料とした燃料電池と比較して、発電される電力が小さいなどの問題があり、発電電力の向上が課題になっている。
液体燃料としてメタノールを用いたダイレクトメタノール型燃料電池は電池本体への燃料供給方法によって、液体燃料をそのまま電池本体に供給する液体供給型と、気化させたメタノールを電池本体に供給する気化供給型とに大別される。
前者の液体供給型のメタノール燃料電池は、電池本体の燃料側にメタノールを供給した場合、そのメタノールはメッシュ状の金属で構成された電極を透過し、さらに多孔質で構成されたガス拡散層を透過して触媒層に到達する。白金/ルテニウムの混合物によって構成された触媒層にメタノールとそれと同量以上の水分が到達あるいは触媒層に存在すると、メタノールは二酸化炭素、プロトン、電子に分解される。
CH3OH + H2O → CO2 + 6H+ + 6e- …(1)
この時発生した二酸化炭素は、燃料が透過してきたガス拡散層、電極を通って外部へ放出される。また発生したプロトンは電解質膜中を透過し、空気供給側に移動する。さらにまた発生した電子は、導電体である多孔質のガス拡散層を透過して電極で捕捉され、反対側(空気供給側)の電極との間に形成した回路中を移動して電気を発生する。
電極の構造は、液体と気体とを透過させやすく、さらに電気を捕捉しやすいようにメッシュ状が望ましい。また電極の材料には、電気的腐食を受けないように、白金あるいは金などの貴金属によってメッキ処理が施された鉄あるいは銅などの金属が望ましい。
またガス拡散層は、電極と同様に液体と気体とを透過させやすく、さらに電気の良導体であるカーボン繊維やカーボン紙などが望ましい。さらに望ましくは、ガス拡散層を構成する素材は、液体を透過させやすいよう水和処理を施しておくとよい。水和処理は酸化錫などをカーボン繊維などに含浸させることが一般的である。
空気供給側では、標準気圧によって吸入した空気中に含まれる酸素が、空気供給側の電極およびガス拡散層を経て触媒層に到達し、燃料供給側から移動してきたプロトンと電解質膜において、電子とともに反応して水が生成する。
3/2O2 + 6H+ + 6e- → 3H2O …(2)
しかしながら、上述した一般的なメタノール燃料電池において、必要とする電力を安定的に取り出そうとする場合に、液体状態のメタノールを標準気圧下で外部からの動力を用いずに供給することは、必要とする電力を安定的に取り出すためには不十分である。そのため従来では、小型ポンプを用いて、メタノールの流量を制御しながら強制的に燃料電極へ供給している。
ところで、携帯電話のような携帯型の小型電子機器に同様の燃料電池を用いようとした場合には、上記のような燃料供給用ポンプはその大きさの観点から採用することはできない。また一般的に、ポンプを制御するためには電力が必要であり、燃料電池で発電した電力の一部をポンプの駆動に用いた場合には、燃料電池全体としての出力電力の低下を招く。
一方、後者の気化供給型のメタノール燃料電池は、従来ポンプによって送液されたメタノールを気化させて、ブロワによって供給する方法が知られている。また電極反応性能は、液体供給型と比較して高いが、この方法においても気化器などの補器を設ける必要があり、装置の大型化を招く。
また従来、ポンプに替えて毛管作用の生じるウィック構造の燃料供給媒体を用いることが提案されている。ウィック構造を用いることにより、従来の燃料電池のようなアクティブ構造ではなく、パッシブ構造を採用することができる。また燃料の供給に関するエネルギの供給を極力抑え、かつ燃料供給構造をも小さく抑えることができるため、前述した小型携帯型の機器用電源としての可能性をより高めることができる。
ウィック構造の燃料供給媒体を提案した例が下記の特許文献に記載されている。特許文献1には、液体燃料供給型アルコール燃料電池において、液体燃料を毛細管現象を用いて単電池内に導入し、発電部の反応熱によって液体燃料を気化させることにより、電極反応性を高めて、出力電力が向上するように構成されている。また燃料気化層内の気体燃料は、ほぼ飽和状態に保たれるので、電池反応による燃料の消費分だけ液体燃料が気化し、さらに気化した分だけ液体燃料が毛細管力によって単電池内に導入されるように構成されている。
このような液体供給型燃料電池の周辺技術として特許文献2には、液体燃料供給型アルコール燃料電池において、毛細管現象によって燃料供給する場合に、アルコール水溶液からなる液体燃料に界面活性剤を添加して、アルコール水溶液からなる液体燃料と毛細管との濡れ性を向上させるように構成されている。
また特許文献3には、液体燃料供給型燃料電池用の燃料収容容器に圧力調整機構を設けた構成が記載されており、この構成では液体燃料の消費による液体燃料収容容器内の圧力減少を容器外部の大気を取り入れることにより圧力調整する。また電極の反応熱に伴う温度上昇によって液体燃料が気化することによる液体燃料収容容器内の圧力上昇を同容器内に封入した不活性ガスのガス圧によって排出して、液体燃料収容容器内の圧力を一定に保ち、液体燃料を安定して供給するように構成されている。
特許第3442688号公報
特許第3563648号公報
特許第3668069号公報
しかしながら、特許文献1に記載された構成では、発電によって生じた熱によってメタノールを加熱し、蒸発させるから、メタノールの蒸発およびその蒸気の燃料電力への供給は発電に対して時間的に遅れることになり、そのために発電要求に対する応答性が低くなる可能性がある。またメタノールを加熱する熱量は、結局は、発電量に制約されるから、熱量の供給量の制御性が必ずしも良好とは言い得ない。さらに、供給したメタノールの反応効率(使用効率)が100%になることは殆どなく、一定の出力を維持するためには、燃料を連続的に供給することになり、その結果、不可避的に未反応のメタノールが排出されてしまう可能性がある。
液体供給型燃料電池の周辺技術として特許文献2に記載された燃料電池用の燃料組成物は、毛細管現象によって燃料供給する場合に、アルコール水溶液からなる液体燃料と毛細管との濡れ性を向上させるために、アルコール水溶液からなる液体燃料に界面活性剤を添加するとされている。しかしながら、液体燃料が凍結し得る低温あるいは液体燃料の粘性が大きく発電力に影響する低温時の起動時においては効果的であるが、通常の使用条件では気化能が大きいことは必ずしも利点ではない。発電部において電池反応させる際に、気化させた液体燃料の比率が少ない場合には燃料の輸送は効率的に行われるが、気化させた液体燃料の比率が多い場合には、適切な燃料輸送がおこなわれない虞がある。また、液体燃料供給型アルコール燃料電池の使用条件によっては、一度気化させた液体燃料が再凝縮し液化する場合もあり、この場合は気化させた液体燃料の分圧を下げる必要がある。
また特許文献3に記載された液体燃料供給型燃料電池用の燃料収容容器は、液体燃料消費時の燃料収容容器内の圧力減少を容器外部から大気を取り入れることによって調整し、反応熱による燃料収容容器内の圧力上昇を同時に封入した不活性ガスのガス圧によって排出するとされている。しかしながら反応熱によって液体燃料を気化させる場合においては、気化させられた液体燃料の圧力によって発電部へ燃料が供給されるために、燃料収容容器内の圧力減少は問題となりにくい。また燃料収容容器に断熱構造を施すことにより、電池反応に伴う反応熱あるいは触媒と未反応メタノール(オフメタノール)との反応熱によって、液体燃料が気化することによる燃料収容容器内の圧力上昇は回避することができる。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、発電効率が良好でかつ小型化が可能なダイレクトアルコール型燃料電池を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、電解質膜の表裏両面のそれぞれに電極が設けられた膜・電極接合体を挟んだ一方に燃料室が形成されるとともに他方に空気室が形成され、その燃料室にアルコールが供給されるダイレクトアルコール型燃料電池において、加熱して蒸気化したアルコール燃料を前記膜・電極接合体に対して供給するアルコール蒸気源と、そのアルコール蒸気源から前記膜・電極接合体に対して供給されるアルコール蒸気に非凝縮性ガスを混合させる非凝縮性ガス混合部とを備えていることを特徴とするダイレクトアルコール型燃料電池である。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記非凝縮性ガス混合部は、過酸化水素を貯留する過酸化水素タンクと、前記アルコール蒸気の流路と前記過酸化水素タンクとを連通する非凝縮性ガス供給路と、その非凝縮性ガス供給路の途中に設けられかつ前記過酸化水素を分解して酸素を発生させる触媒とを備えていることを特徴とするダイレクトアルコール型燃料電池である。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記非凝縮性ガス混合部は、アルコール燃料と過酸化水素との混合液を前記膜・電極接合体に向けて流通させる燃料供給路と、その燃料供給路の途中に介在させられかつ前記過酸化水素を分解して酸素を発生させる触媒とを備えていることを特徴とするダイレクトアルコール型燃料電池である。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記過酸化水素のアルコール中での濃度が10重量パーセント以内であることを特徴とするダイレクトアルコール型燃料電池である。
請求項5の発明は、請求項1または請求項4の発明において、前記アルコールは、メタノールであることを特徴とするダイレクトアルコール型燃料電池である。
したがって請求項1の発明によれば、アルコール蒸気が供給管路を経て燃料室に送られ、電解質膜を介した酸化反応を伴って電力を発生し、各電極から電力が外部に取り出される。その場合、アルコールは蒸発することにより高圧化されるので、機械的なポンプを必要とせずに燃料室に対して十分な量のアルコールを供給することができ、しかもアルコールは蒸気化されているので、燃料室の全体に広く拡散し、すなわち膜・電極接合体の表面の全体に均一に拡散するので、電解質膜の全体が有効に機能して発電効率を向上させることができる。特に膜・電極接合体を複数積層した場合であっても、各層の燃料電極側にアルコール蒸気を迅速かつ効率良く供給できるので、積層したことに伴う発電効率の低下を防止もしくは抑制することができる。そして、ポンプなどの可動部品を設ける必要がないことにより全体としての構成を小型化することができる。さらに、膜・電極接合体に対して蒸気としてアルコールが供給されるので、膜・電極接合体の表面が液体で覆われることが抑制され、そのために発電反応によって生じた二酸化炭素ガスの流通が阻害されにくく、その結果、燃料室もしくは膜・電極接合体の表面から二酸化炭素を効率良く排除でき、この点でも発電効率を向上させることができる。そしてまた、発電に伴う発熱がなくてもアルコール蒸気を膜・電極接合体に対して供給することができるので、発電を開始するいわゆる始動時間を短くすることができ、特に寒冷状態での始動性を向上させることができる。
また、アルコール蒸気に非凝縮性ガスを混合することにより、アルコール蒸気の分圧が下がるので、非凝縮性ガスと共に燃料電極側にアルコール蒸気を迅速かつ効率良く供給でき、またアルコール蒸気の凝縮を防止または抑制することができる。その結果、膜・電極接合体に対して蒸気としてアルコールが供給されるので、膜・電極接合体の表面が液体で覆われることが抑制され、そのために発電反応によって生じた二酸化炭素ガスの流通が阻害されにくく、燃料室もしくは膜・電極接合体の表面から二酸化炭素を効率良く排除でき、この点でも発電効率を向上させることができる。
請求項2の発明によれば、非凝縮性ガス供給路の途中に過酸化水素を分解して酸素を発生させる触媒を担持した部位を設けることにより、その供給路において過酸化水素が分解されて非凝縮性ガスである酸素を発生させることができる。したがって過酸化水素は液体のまま過酸化水素タンクに収容され、体積の大きい非凝縮性ガスを収容する部位を設ける必要がなく、省スペース化が図れる。
請求項3の発明によれば、アルコール燃料と過酸化水素とが混合されて、膜・電極接合体へ供給される燃料供給路において、過酸化水素を分解して酸素を発生させる触媒を備えた部位が設けられていることにより、過酸化水素は液体のまま過酸化水素タンクに収容され、体積の大きい非凝縮性ガスを収容する部位を設ける必要がなく、省スペース化が図れる。
請求項4の発明によれば、アルコール燃料中での過酸化水素の濃度が、10重量パーセント以内であることにより、非凝縮性ガスである酸素の供給過多を抑制し、また酸素の供給過少を抑えることができる。
請求項5の発明によれば、反応性が高く、エネルギ密度の高いメタノールを燃料に用いることにより、燃料収容容器を小さく抑えることができ、かつ水素などの気体燃料を用いる場合と比較して取り扱いが容易である。
つぎにこの発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池を具体例に基づいて説明する。この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池の主要な構成は、図1にブロック図で示すとおりであり、液体アルコールを貯留する燃料タンク1を備え、この燃料タンク1は発電部2に供給管路3を介して連通されている。その供給管路3の途中には、液体アルコールを加熱して蒸発させる蒸気化部4が設けられている。この蒸気化部4は、要は、供給管路3内のアルコールを加熱して蒸発させる部分であり、その熱源は、外部電源を利用した電気ヒータやアルコールを燃焼させた熱など、必要に応じて適宜のものを利用できる。図1には、アルコールの酸化熱を利用する構成を示してある。
また、過酸化水素を貯留する非凝縮性ガスタンク5を備え、この非凝縮性ガスタンク5は蒸気化部4に非凝縮性ガス供給路6を介して連通されている。また、非凝縮性ガスタンク5は、非凝縮性ガスを貯留する構成を示してあるが、例えば過酸化水素水を貯留して、非凝縮性ガス供給路6に設けた二酸化マンガンあるいは白金を触媒として、過酸化水素水から非凝縮性ガスである酸素を発生させる構成とすることもできる。なお、白金を触媒として用いた場合には、白金は過酸化水素水だけでなく、メタノールをも分解する。したがって白金とメタノールとの接触を避ける構成とする必要がある。また、白金とメタノールとが接触し、メタノールが分解されて発生した二酸化炭素などの分解生成物が、燃料タンク1あるいは非凝縮性ガスタンク5に逆流するのを防止する弁などの逆流防止機構を設ける必要がある。したがって、燃料にメタノールを用い、過酸化水素水を非凝縮性ガスである酸素の発生源とした構成では、過酸化水素水を分解する触媒には二酸化マンガンを用いることが望ましい。
燃料タンク1と蒸気化部4との間には、液体アルコールの流量を調整する流量調整機構7が設けられている。この流量調整機構7としては、流量調整バルブが最も一般的であるが、これに限らずオリフィスなどの適宜の構成のものを作用することができる。また、蒸気化部4と発電部2との間には、アルコール蒸気の流通・遮断を含めた流量の調整を行うバルブ8が設けられている。
図2には、前述した非凝縮性ガスタンク5に過酸化水素を貯留した場合に、過酸化水素から非凝縮性ガスである酸素を発生させるための主要な構成を示してある。蒸気化部4内において、非凝縮性ガス供給路6はアルコール供給管路3に連通されており、非凝縮性ガス供給路6の途中に過酸化水素を分解して酸素を発生させる触媒9が設けられている。なお、非凝縮性ガス混合部10は非凝縮性ガス供給路6と供給管路3との交差部(接続部)である。触媒9には例えば、二酸化マンガンあるいは白金を用いることができる。
発電部2は、実質的な燃料電池に相当する部分であり、電解質として高分子電解質膜を備え、その電解質膜と電極とを一体化した膜・電極接合体(MEA)11を主体として構成されている。図3にはその構造を断面図で示してあり、電解質膜12の表裏両面側に触媒層13,14が設けられている。
その電解質膜12は、パーフルオロスルホン酸系高分子膜(例えばNafion 117(登録商標))やポリベンゾイミダゾール(以下、PBIと記すことがある)からなる電解質膜などであり、特にPBIからなる電解質膜であれば、燃料のクロスオーバ現象を防止もしくは抑制することができる。さらにPBIからなる電解質膜であれば、高温度領域において、パーフルオロスルホン酸系高分子膜と比較して発電効率を向上させるのに好適である。なお、クロスオーバ現象とは、アルコール燃料が発電部2の電解質膜8において、発電に寄与する化学反応(電池反応)を行うことなく、燃料供給側から空気供給側に透過する現象のことを言う。
また、燃料側の触媒層13は、一例として、白金/ルテニウムの混合物を主成分として構成されており、また空気側の触媒層14は白金を主成分として構成されている。これらの触媒層13,14の表面側には、それぞれ、ガス拡散層15,16が形成されている。このガス拡散層15,16は、触媒層13,14の表面側に燃料や空気が流通する空間を確保するためのものであり、導電性の多孔構造とされている。具体的には、カーボン繊維をメッシュ構造に編んだものであり、また必要に応じて水和処理されている。そして、これらのガス拡散層15,16の表面側に電極17,18が設けられている。電極17,18は良導体によって構成され、これに加えて燃料や空気を触媒層13,14に到達させるために通気構造とされている。一例として、白金メッキを施したステンレスからなるメッシュ構造体である。これらの電極17,18に負荷19が接続されて電気回路20が形成されている。
図1に示す例では、前記蒸気化部4に触媒燃焼室21が付設されている。この触媒燃焼室21は、白金などの酸化触媒によってアルコールを酸化させるためのものであり、酸化によって生じた熱を、蒸気化部4におけるアルコールに伝達してこれを蒸発させるように構成されている。例えば、蒸気化部4と触媒燃焼室21とはアルミニウム板などの熱伝導性の良好な材料で隔絶されており、触媒燃焼室21で発生した熱が、蒸気化部4におけるアルコールに効率良く伝達するように構成されている。したがって、触媒燃焼室21は前記発電部2に連通され、発電部2から排出される未燃焼のアルコールを含む排気を触媒燃焼室21に導くように構成されている。
上述したこの発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池をより具体化した例を図4に示してある。図4において、中空構造のパッケージ22の内部が隔壁23によって二分割されており、図4における上側に燃料タンク1、非凝縮性ガスタンク5、流量調整機構7、蒸気化部4および触媒燃焼室21、バルブ8が設けられており、これに対して図4の下側の部分に発電部2が設けられている。この発電部2は、パッケージ22における前記隔壁23によって区画された下側の領域に該領域を二分するように膜・電極接合体11が設けられ、その膜・電極接合体11と隔壁23との間が燃料室24となり、かつその燃料室24とは反対側が空気室25となるように構成されている。その燃料室24は密閉された空間として構成されているが、空気室25は外気が導入されればよいので、解放された空間として構成してもよい。
燃料タンク1および非凝縮性ガスタンク5は図示しない注入口が設けられた密閉容器として構成され、また蒸気化部4は燃料タンク1および非凝縮性ガスタンク5の近傍に密閉室として形成されており、燃料タンク1と蒸気化部4との間に流量調整機構7が設けられている。なお、この流量調整機構7を含む管路と発電部2との間に断熱材26が介装されている。蒸気化部4と隔壁23との間(図4では蒸気化部4の下側)に触媒燃焼室21が設けられている。これら蒸気化部4と触媒燃焼室21とは相互に熱交換できるように構成され、例えば両者の間は、アルミニウムなどの熱伝導性の良好な仕切板で区画されている。
蒸気化部4の内部には、液体アルコール(具体的にはメタノール)を含浸させることのできる多孔質体、例えばカーボン繊維などからなる毛管作用を行うウイック材が充填されている。これに対して触媒燃焼室21には、金属製のウイック材に白金などの触媒粒子を担持させた触媒が充填されている。また、触媒燃焼室21には前記隔壁23を貫通して前記燃料室24に開口する吸気ポート27が設けられており、またパッケージ22の外面に開口する排気管28が触媒燃焼室21に連通されている。さらに、蒸気化部4はバルブ8を介して燃料室24に連通されている。なお、バルブ8は断熱材26によって覆われている。また、図4において符号29,30はリード線であり、それぞれ各電極17,18に接続されている。
図4に示す燃料電池においても、通常のアルコール型燃料電池と同様に、膜・電極接合体11を介した酸化反応(発電反応)に伴って電力が発生する。すなわち、燃料室24に供給された燃料であるメタノールは、前述した(1)式で示す反応により二酸化炭素とプロトンとに分かれ、かつ電子を放出する。そのプロトンは電解質膜を透過して空気室25側に移動し、また電子は電極17を介して外部に取り出され、電気となる。空気室25側では、プロトンと空気中の酸素とが前述した(2)式で示す反応を行って水を生じる。
このような反応は、燃料室24に供給されたメタノールの全てについて生じるわけではなく、未燃焼のメタノールも残存し、これはパッケージ22の外部に排出される前に前記吸気ポート27から触媒燃焼室21に導かれる。すなわち、触媒燃焼室21には燃料室24からの排気が導入され、その排気に含まれるメタノールが触媒によって酸化させられる。こうして生じた熱の一部は、排気と共に前記排気管28からパッケージ22の外部に放出されるが、他の一部は、触媒燃焼室21に隣接して設けられている蒸気化部4に伝達される。
蒸気化部4には、燃料タンク1から液体メタノールが流量調整されて供給されており、その液体アルコールが触媒燃焼室21から伝達された熱によって加熱されて蒸発する。なお、寒冷時の始動を迅速にする場合には、電気ヒータを補助熱源として設けてもよい。また、非凝縮性ガスタンク5から供給される過酸化水素は、非凝縮性ガス供給路6に設けられた触媒9によって分解されて酸素を発生し、蒸気化部4内の非凝縮性ガス混合部10において、アルコール蒸気と混合される。その非凝縮性ガスを混合したアルコール蒸気は、バルブ8を経由して燃料室24に供給されるので、燃料であるメタノールは、その分圧を下げられて燃料室24に供給されることになる。したがって、アルコール蒸気の再凝縮を防止して、発電部2に対して十分な量の燃料を供給することが可能になる。
そして、混合蒸気燃料は気体であるから、燃料室24の全体に迅速に拡散するとともに、前述したガス拡散層15で電解質膜12の表面全体に拡散させられたのち、触媒層13で前述した反応が生じる。したがって、電解質膜12の全体で発電反応が生じ、効率の良い発電が行われる。
前述した(1)式で示すように、触媒層13ではメタノールの分解によって二酸化炭素ガスが生じるが、触媒層13やガス拡散層15に供給されているメタノールは加熱蒸発した気体であり、また非凝縮性ガスと混合されて、メタノールの分圧が下げられているから再凝縮が抑えられて、触媒層13やガス拡散層15に液膜が生じず、もしくは液膜が抑制されており、したがって反応によって生じた二酸化炭素ガスが迅速に排出され、メタノールは入れ替わる。その結果、触媒層13もしくは電解質膜12には常時、メタノールが新規に供給されるので、効率良く発電が生じる。
反応によって生じた二酸化炭素ガスは非凝縮性ガスである酸素と共に、前述した吸気ポート27から触媒燃焼室21に排出され、ここから前記排気管28を経由してパッケージ22の外部に放出される。したがって、二酸化炭素ガスも未燃焼のメタノールを触媒燃焼室21に搬送する機能も果たす。そして、その未燃焼のメタノールは触媒燃焼室21で酸化されて二酸化炭素ガスと水になるので、パッケージ22から放出されるメタノールは皆無もしくは僅少になり、したがって上述した構成であれば、安全性の高いアルコール型燃料電池とすることができる。そして、ポンプなどの動力装置を必要としないので、小型化が容易であり、また電力消費がないので、この点でも発電効率を向上させることができる。
つぎにこの発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池の他の具体例を示す。上述した具体例は、非凝縮性ガスの発生源として過酸化水素を非凝縮性ガスタンク5に貯留して、その供給路6に設けた触媒9によって分解して発生させた酸素を、供給管路3との交差部である非凝縮性ガス混合部10において、アルコール蒸気に混合して供給した例である。この発明は要はアルコール蒸気に非凝縮性ガスを混合して、その混合燃料蒸気を発電部2に供給する構成とされていればよいのであり、あらかじめ液体アルコールと過酸化水素とを混合してその混合燃料の供給経路において非凝縮性ガスである酸素を発生させて、混合燃料蒸気を発電部2に供給する構成としてもよい。
図5はその例を示しており、燃料タンク1にメタノールおよび過酸化水素水を混合して貯留し、混合燃料タンク31と発電部2との間に連通して設けられた混合燃料供給管路32と、その供給管路32の途中に設けられた蒸気化部4と混合燃料タンク31との間に触媒9を配置した構成としている。発電部2および他の構成は、上述した図3および図4に示す構成と同様であるから、図5に図3および図4と同様の符号を付してその説明を省略する。
混合燃料タンク31は発電部2を連通させる混合燃料供給管路32が形成されている。この供給管路32には、カーボン繊維などの細線を束ねた構成、あるいは多孔質材などからなる図示しないウイック材が充填されている。このウイック材は、燃料としてのメタノールが浸透させて毛管作用を生じさせるためのものである。混合燃料タンク31から供給された混合燃料は、蒸気化部4の途中に設けられた触媒9によって、その混合燃料中の過酸化水素水が分解されて、非凝縮性ガスである酸素を発生させる。次いで、蒸気化部4においてウイック材に浸透しているメタノールが加熱されて蒸発されるように構成されている。
メタノールの蒸発が生じることにより、供給管路32内のウイック材のメニスカスが低下し、それに伴う毛管圧力によって混合燃料タンク31内の混合燃料を吸引するようになっている。また、非凝縮性ガスによって、メタノール蒸気の分圧が下げられるので、混合燃料蒸気は迅速かつ効率良く発電部2に供給できる。なお、混合燃料タンク31から発電部2に流れるメタノールを、選択的に止めるためのバルブを設けてもよい。
したがって、図5に示す構成のアルコール型燃料電池では、混合燃料供給管路32に設けられた触媒9によって酸素を発生させ、蒸気化部4において、メタノールを蒸気化してその混合燃料ガスが供給される。その混合燃料蒸気は、前述した図4に示す構成のアルコール型燃料電池におけると同様に、膜・電極接合体11で発電反応の用に供され、電力を生じる。そして、燃料室24では、メタノール蒸気がその分圧を下げられて供給されるので、十分な量のメタノールを迅速に供給でき、また均一に拡散させて効率の良い発電を行うことができる。また、発電反応によって生じた二酸化炭素を非凝縮性ガスである酸素と共に迅速に排出し発電効率を向上させ得ることは前述した図4に示す例と同様である。特に図5に示す構成では、図示しないウイック材からメタノールが蒸発し、それに伴ってメニスカスが変化することによりウイック材が液体メタノールを吸引するので、メタノールの流量調整を自動的に行うことができる。なお、ポンプなどの動力装置を必要としないことにより、小型化が容易で、また発電効率を向上させることができることは図4に示す例と同様である。
図4に示す実験機を作製し、燃料として水で希釈した50%のメタノール溶液を使用した。なお、過酸化水素水の濃度は3%となるように水を用いて希釈した。過酸化水素を分解する触媒には二酸化マンガンを用いた。蒸気化部および触媒燃焼室は、10×10×5mmの密閉室で、各部位の肉厚は1mmとし、蒸気化部にはカーボン繊維を水和処理したウイック材を充填した。また触媒燃焼室には、金属製のウイック材に白金を担持させた触媒を充填した。
電解質膜として0.1mmのNafion 117(登録商標)を使用し、燃料室側の触媒は、白金とルテニウムの等量混合物を使用し、空気室側の触媒には白金を使用した。それぞれの触媒層の厚さは20μmに調整した。なお、触媒層の作製方法を説明すると、アルコ−ル類を溶媒としてそこに粉末状の触媒を混ぜてインク化し、スクリーン印刷機によりテフロンシート上に触媒膜を作製した。これを電解質膜と重ね合わせ、ホットプレス機(140℃x5分)で加熱加圧し、その後加圧状態を保った状態で冷却し、触媒膜を電解質膜に転写して作製した。
さらにガス透過層として水和処理を施した厚み1mmの力一ボン繊維を、燃料室側と空気室側とに配置し、さらに電極は開口径を2mmとしたメッシュ構造で材質は白金メッキを施したステンレスを用いた。
以上の材料をホットプレス機で加熱加圧し、一体構造としてMEAを作製した。このときの電極面積は25cm2(5x5cm)とした。
燃料電池の発電量が安定してから蒸気化部と触媒燃焼室との仕切部の温度を測定したところ、約200℃の発熱を確認した。メタノールの沸点は標準気圧下では約65℃であり、メタノールを蒸気化させるためには十分な熱量が得られることが確認された。
また、測定された起電力を図6に示す。図6において、実線はこの発明に係るダイレクトメタノール型燃料電池の発電特性であり、破線は液体メタノールを発電部に直接供給する従来タイプの比較例の発電特性を示している。この発明に係るダイレクトメタノール型燃料電池において非凝縮性ガスを混合しなかった場合では、発電部に液体メタノールを供給した場合と比較して、発電量が高くなり、また安定した発電特性が得られていることが確認できた。
また図示しないが、事前に過酸化水素から発生させる酸素によるメタノール蒸気の搬送量を評価したところ、一時間あたり20gのメタノール蒸気を輸送可能なことを確認した。
ところで、この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池では、高温の蒸気化されたアルコールを燃料として用いるために、一般的な電解質膜材料であるパーフルオロスルホン酸系高分子膜を用いた場合、アルコールのクロスオーバ現象が生じる。クロスオーバ現象が生じると、蒸気化されたメタノールが燃料室側の電極(アノード)から空気室側の電極(カソード)に達して、カソード上において蒸気化されたメタノールと外部から供給された酸素とが反応してメタノール酸化反応を起こす。その結果、電極電位がマイナス方向にシフトして、いわゆる起電力(発電力)が低下する。
このクロスオーバ現象は、電解質膜が高温なほど、またアルコール濃度が高いほど発生し易い。この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池においては、燃料であるメタノールなどのアルコールを加熱して蒸気化させるから、電解質膜は高温となり、またアルコールの蒸気圧の関係から、アルコールは高濃度となり易い。その結果、クロスオーバ現象を生じ易い。
そこでこの実施例では、クロスオーバ現象を防止もしくは抑制するために、電解質膜として、ガラス転移点の高いPBIを用いることが好ましい。PBIは前述したこの発明にかかるダイレクトアルコール型燃料電池の定常状態、すなわち発電量が安定した状態において、触媒燃焼室から発生する約200℃の熱負荷下であっても安定して存在するため、前述のクロスオーバ現象を生じ難い。図7には、この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池の電解質膜のみをPBIに変更して作製した燃料電池の発電特性を示した。図7において、実線は電解質膜にパーフルオロスルホン酸系高分子膜を用いた場合の発電特性を示し、破線は電解質膜にPBIを用いた場合の発電特性を示している。電解質膜にPBIを用いた場合には、電解質膜にパーフルオロスルホン酸系高分子膜を用いた場合と比較して、出力電力値が約50%向上したことが認められた。
この発明においては、燃料供給経路に使用するウイック材は、ウィック構造としたガラス繊維が熱的に安定であり、最も適しているが、その使用条件に応じて綿またはセラミックスあるいはアルミニウム細線を用いてもよい。さらに、前述した蒸気化部と触媒燃焼室とは高温となるために、安全性や燃料電池全体の長期信頼性の観点から、外部に対して断熱構造とすることが望ましい。
一方、燃料電池を寒冷地などの外部温度の低い環境において使用する場合、発電部の温度が低いことから、発電開始にかかる時間が長くなる虞がある。その対策として、前述した触媒燃焼室から発生した熱を発電部に伝熱することにより、発電部を加温することも有効な方法である。この場合の伝熱手段として、金属板あるいはヒートパイプなどの一般的な部材を用いてもよい。
触媒である二酸化マンガンは、下記に記す方法によってガラス繊維に担持させた。10%の濃度となるようにエタノールを用いて希釈された硝酸マンガン(六水和物)に、あらかじめ洗浄されたガラス繊維を浸漬して400℃にて1時間加熱して担持させた。なお過酸化水素を分解する触媒には、二酸化マンガン以外では白金を用いてもよい。ただし、使用する燃料にアルコール類、特にメタノールを用いる場合は、メタノールは白金の触媒作用によって分解されるために、メタノールと白金とが接触しない構造をとる必要がある。
また触媒燃焼室の白金触媒は、下記に記す方法によってガラス繊維に担持させた。10%の濃度となるように水を用いて希釈された六塩化白金酸(六水和物)に、あらかじめ洗浄されたガラス繊維を浸漬した後、溶液中から取り出し、300℃に加熱し、その後室温での水素還元処理を施して担持させた。
非凝縮性ガスの発生源である過酸化水素は、燃料であるアルコールにあらかじめ混合させてもよい。この場合において、過酸化水素水を分解するために、過酸化水素とアルコールとの混合液ごと触媒を配置した供給経路を通過させることになるが、触媒として二酸化マンガンを用いた場合、過酸化水素のみが分解されるので、アルコールは触媒の影響を受けない。
このほか、非凝縮性ガスを発生させる方法として下記の例が挙げられる。過酸化水素の場合には、ヒドラジンと接触させることにより、窒素ガスを発生させることができる。
H2O2 + N2H4 → N2 + 4H2O
その他、酸化剤と燃料成分、必要に応じて添加剤に構成される成分を互いに接触させることによっても非凝縮性ガスを得ることができる。
酸化剤には、硝酸類、亜硝酸類、塩基性硝酸類、オキソハロゲン酸塩などが挙げられる。
硝酸類としては、硝酸、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウムが挙げられる。
亜硝酸類としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸ストロンチウムが挙げられる。
塩基性硝酸類としては、塩基性硝酸銅、塩基性硝酸マンガン、塩基性硝酸鉄、塩基性硝酸モリブデン、塩基性硝酸ビスマス、塩基性硝酸セリウムが挙げられる。
オキソハロゲン酸塩としては、ハロゲン塩、過ハロゲン酸塩などが挙げられる。
ハロゲン塩としては、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウムなどのハロゲン酸アルカリ金属塩、塩素酸バリウム、塩素酸カルシウムなどのハロゲン酸アルカリ土類金属塩、塩素酸アンモニウムなどのハロゲン酸アンモニウム塩などが挙げられる。過ハロゲン酸塩としては、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウムなどの過ハロゲン酸アルカリ金属塩、過塩素酸バリウム、過塩素酸カルシウムなどの過塩素酸アルカリ土類金属塩、過塩素酸アンモニウムなどの過ハロゲン酸アンモニウム塩などが挙げられる。
燃料成分としては含窒素化合物、有機酸、有機酸の塩、粉末状微結晶炭素などが挙げられる。
含窒素化合物としては、ニトラミン化合物、グアニジン誘導体、テトラゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ヒドラジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体などが挙げられる。
ニトラミン化合物としては、トリメチレントリニトロアミン(RDX)、テトラメチレンテトラニトロアミン(HMX)などが挙げられる。
グアニジン誘導体としては、ニトログアニジン、トリアミノグアニジンネイトレート(TAGM)などが挙げられる。
テトラゾール誘導体としては、アミノテトラゾール、テトラゾール、アゾテトラゾール、ビテトラゾールなどが挙げられる。
トリアゾール誘導体としては、トリアゾール、ウラゾールなどが挙げられる。
ヒドラジン誘導体としては、硝酸ヒドラジン(HN)などが挙げられる。
アゾジカルボンアミド誘導体としては、アゾジカルボンアミド、ヒドラゾジカルボンアミドなどが挙げられる。
粉末状微結晶炭素としては、活性炭、木炭、コークス、獣炭、骨炭、瀝青炭およびカーボンブラックなどが挙げられる。
その他の添加剤としては、経時安定性を向上させるために経時安定剤を配合させることができる。そのような経時安定剤としては、経時安定性を向上させることができるものであれば全て使用できる。
例えば経時安定剤として、ジフェニルウレア誘導体、ジフェニルアミン誘導体、フェニルウレタン誘導体、ジフェニルウレタン誘導体などが挙げられる。
ジフェニルウレア誘導体としては、ジフェニルウレア、メチルジフェニルウレア、エチルジフェニルウレア、ジエチルジフェニルウレア、ジメチルジフェニルウレア、メチルエチルジフェニルウレアなどが挙げられる。
ジフェニルアミン誘導体としては、ジフェニルアミン、2−ニトロジフェニルアミンなどが挙げられる。
フェニルウレタン誘導体としては、エチルフェニルウレタン、メチルフェニルウレタンなどが挙げられる。
ジフェニルウレタン誘導体としては、ジフェニルウレタンなどが挙げられる。このほかレゾルシノールなどが挙げられる。
酸化剤などの分解により生成するアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物をミストとして外部へ放出することを抑制するために、その他の添加剤としてスラグ形成剤を配合させることができる。
例えばスラグ形成剤として、シリカ、アルミナ、酸性白土、タルク、マイカ、二硫化モリブデンなどの少なくとも1種から選ばれたスラグ形成剤が挙げられる。これらの中ではシリカやアルミナあるいは酸性白土がスラグ形成剤として好ましい。
そのほか、アルカリ金属、アルカリ土類金属、金属アルミニウムなどの両性金属に水を接触させた場合は、非凝縮性ガスである水素が発生する。
なお、これらの化学反応は爆発的に進むことがあるので、その安全性の観点から、酸化剤あるいは燃料成分のいずれか一方を、例えば錠剤のような形状に成形して、その化学反応表面積を減少させる、あるいは精密に流量制御を行う、さらにまた低濃度の材料を用いるなどの手法をとることが望ましい。
さらに他の方法として、アゾ類を加熱することにより、非凝縮性ガスである窒素を発せさせることができる。その化学反応式を下記に記した。
2NaN3 → 2Na + 3N2
この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池の主要構成を示すブロック図である。
非凝縮性ガスを発生させる液体と液体アルコールとの混合燃料の供給管路を模式的に示した図である。
この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池の発電部を模式的に示す断面図である。
この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池を模式的に示す断面図である。
非凝縮性ガスを発生させる液体と液体アルコールとの混合燃料の供給管路の他の例を模式的に示した図である。
この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池の発電特性と液体メタノールを発電部に直接供給する比較例の発電特性とを示す図である。
この発明において電解質膜にPBIを用いた場合の発電特性と、電解質膜にパーフルオロスルホン酸系高分子膜を用いた場合の発電特性とを示す図である。
符号の説明
1…燃料タンク、 2…発電部、 4…蒸気化部、 5…非凝縮性ガスタンク、 10…非凝縮性ガス混合部、 11…膜・電極接合体(MEA)、 12…電解質膜、 23…隔壁、 24…燃料室、 27…吸気ポート、 28…排気管、 31…混合燃料タンク。