JP2009205875A - ダイレクトアルコール型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】発電効率が良好で、かつ小型化が可能なダイレクトアルコール型燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質膜の表裏両面のそれぞれに電極が設けられた膜・電極接合体7を挟んだ一方に燃料室が形成されるとともに他方に空気室が形成され、その燃料室にアルコールが供給されるダイレクトアルコール型燃料電池において、液体アルコールを貯留する燃料タンク1が、供給管路3を介して前記燃料室に連通して設けられ、その供給管路の途中に前記液体アルコールを加熱することにより蒸気化して前記燃料室に送る蒸気化部4が設けられている。
【選択図】図1
【解決手段】電解質膜の表裏両面のそれぞれに電極が設けられた膜・電極接合体7を挟んだ一方に燃料室が形成されるとともに他方に空気室が形成され、その燃料室にアルコールが供給されるダイレクトアルコール型燃料電池において、液体アルコールを貯留する燃料タンク1が、供給管路3を介して前記燃料室に連通して設けられ、その供給管路の途中に前記液体アルコールを加熱することにより蒸気化して前記燃料室に送る蒸気化部4が設けられている。
【選択図】図1
Description
この発明は、ノートパソコン、携帯電話、小型ビデオカメラなどの小型から自動車用や家庭用などの大型機器に到る各種の電気機器の電源として用いることのできる燃料電池に関するものである。
ダイレクトアルコール型の燃料電池は、比較的低い温度での発電が可能なこと、可燃性ガスを使用する燃料電池と比較して、液体燃料を用いるために、燃料のエネルギ密度が高いこと、またその結果として燃料容器が小型化できること、さらには、貯蔵の難しい水素ガスを燃料に用いないなどのことから、燃料電池全体の構成を小型化することができるなどの特徴を有する。したがって今後、ノートパソコン、携帯電話、小型ビデオカメラなどの小型携帯型の機器用電源として有望視される燃料電池である。
一方、従来のダイレクトアルコール型の燃料電池は、水素ガスを燃料とした燃料電池と比較して、発電される電力が小さいなどの問題があり、発電電力の向上が課題になっている。
液体燃料としてメタノールを用いたダイレクトメタノール型燃料電池は電池本体への燃料供給方法によって、液体燃料をそのまま電池本体に供給する液体供給型と、気化させたメタノールを電池本体に供給する気化供給型とに大別される。
前者の液体供給型のメタノール燃料電池は、電池本体の燃料側にメタノールを供給した場合、そのメタノールはメッシュ状の金属で構成された電極を透過し、さらに多孔質で構成されたガス拡散層を透過して触媒層に到達する。白金/ルテニウムの混合物によって構成された触媒層にメタノールとそれと同量以上の水分が到達あるいは触媒層に存在すると、メタノールは二酸化炭素、プロトン、電子に分解される。
CH3OH + H2O → CO2 + 6H+ + 6e- …(1)
この時発生した二酸化炭素は、燃料が透過してきたガス拡散層、電極を通って外部へ放出される。また発生したプロトンは電解質膜中を透過し、空気供給側に移動する。さらにまた発生した電子は、導電体である多孔質のガス拡散層を透過して電極で捕捉され、反対側(空気供給側)の電極との間に形成した回路中を移動して電気を発生する。
CH3OH + H2O → CO2 + 6H+ + 6e- …(1)
この時発生した二酸化炭素は、燃料が透過してきたガス拡散層、電極を通って外部へ放出される。また発生したプロトンは電解質膜中を透過し、空気供給側に移動する。さらにまた発生した電子は、導電体である多孔質のガス拡散層を透過して電極で捕捉され、反対側(空気供給側)の電極との間に形成した回路中を移動して電気を発生する。
電極の構造は、液体と気体とを透過させやすく、さらに電気を捕捉しやすいようにメッシュ状が望ましい。また電極の材料には、電気的腐食を受けないように、白金あるいは金などの貴金属によってメッキ処理が施された鉄あるいは銅などの金属が望ましい。
またガス拡散層は、電極と同様に液体と気体とを透過させやすく、さらに電気の良導体であるカーボン繊維やカーボン紙などが望ましい。さらに望ましくは、ガス拡散層を構成する素材は、液体を透過させやすいよう水和処理を施しておくとよい。水和処理は酸化錫などをカーボン繊維などに含浸させることが一般的である。
空気供給側では、標準気圧によって吸入した空気中に含まれる酸素が、空気供給側の電極およびガス拡散層を経て触媒層に到達し、燃料供給側から移動してきたプロトンと電解質膜において、電子とともに反応して水が生成する。
3/2O2 +6H+ + 6e- → 3H2O …(2)
3/2O2 +6H+ + 6e- → 3H2O …(2)
しかしながら、上述した一般的なメタノール燃料電池において、液体であるアルコールを標準気圧下で供給するのでは、必要とする電力を安定的に取り出すためには不十分である。そのため従来では、小型ポンプを用いて、メタノールの流量を制御しながら強制的に燃料電極へ供給している。
ところで、携帯電話のような携帯型の小型電子機器に同様の燃料電池を用いようとした場合には、上記のような燃料供給用ポンプはその大きさの観点から採用することはできない。また一般的に、ポンプを制御するためには電力が必要であり、燃料電池で発電した電力の一部をポンプの駆動に用いた場合には、燃料電池全体としての出力電力の低下を招く。
一方、後者の気化供給型のメタノール燃料電池は、ポンプによって送液されたメタノールを気化させて、ブロワによって供給する方法が知られている。また電極反応性能は、液体供給型と比較して高いが、この方法においても気化器などの補器を設ける必要があり、装置の大型化を招く。
また従来、ポンプに替えてウィック構造の燃料供給媒体を用いることが提案されている。ウィック構造を用いることにより、従来の燃料電池のようなアクティブ構造ではなく、パッシブ構造を採用することができる。また燃料の供給に関するエネルギの供給を極力抑え、かつ燃料供給構造をも小さく抑えることができるため、前述した小型携帯型の機器用電源としての可能性をより高めることができる。
ウィック構造の燃料供給媒体を提案した例が下記の特許文献に記載されている。特許文献1には、液体燃料供給型アルコール燃料電池において、液体燃料を毛細管現象を用いて単電池内に導入し、発電部の反応熱によって液体燃料を気化させることにより、電極反応性を高めて、出力電力が向上するように構成されている。また燃料気化層内の気体燃料は、ほぼ飽和状態に保たれるので、電池反応による燃料の消費分だけ液体燃料が気化し、さらに気化した分だけ液体燃料が毛細管力によって単電池内に導入されるように構成されている。
このような液体供給型燃料電池の周辺技術として特許文献2には、液体燃料供給型アルコール燃料電池において、毛細管現象によって燃料供給する場合に、アルコール水溶液からなる液体燃料に界面活性剤を添加して、アルコール水溶液からなる液体燃料と毛細管との濡れ性を向上させるように構成されている。
また特許文献3には、液体燃料供給型燃料電池用の燃料収容容器に圧力調整機構を設けた構成が記載されており、この構成では、液体燃料の消費による液体燃料収容容器内の圧力減少を容器外部の大気を取り入れることにより圧力調整する。また電極の反応熱に伴う温度上昇によって液体燃料が気化することによる液体燃料収容容器内の圧力上昇を同容器内に封入した不活性ガスのガス圧によって排出して、液体燃料収容容器内の圧力を一定に保ち、液体燃料を安定して供給するように構成されている。
上記の特許文献1に記載された液体供給型燃料電池は、毛細管力によって単電池内に液体燃料を導入し、発電部の反応熱によって液体燃料を気化させるから、燃料気化器などの補器を必要としない。また燃料気化層内の気体燃料は、ほぼ飽和状態に保たれるので、電池反応による燃料の消費分だけ液体燃料が気化し、さらに気化した分だけ液体燃料が毛細管力によって単電池内に導入される。すなわち燃料供給量と燃料消費量は連動しているから排出口に未反応燃料の処理機構を必要としないとされている。
しかしながら、特許文献1に記載された構成では、発電によって生じた熱によってメタノールを加熱し、蒸発させるから、メタノールの蒸発およびその蒸気の燃料電力への供給は発電に対して時間的に遅れることになり、そのために発電要求に対する応答性が低くなる可能性がある。またメタノールを加熱する熱量は、結局は、発電量に制約されるから、熱量の供給量の制御性が必ずしも良好とは言い得ない。さらに、供給したメタノールの反応効率(使用効率)が100%になることは殆どなく、一定の出力を維持するためには、燃料を連続的に供給することになり、その結果、不可避的に未反応のメタノールが排出されてしまう可能性がある。
また、上記の特許文献1に記載された構成では、液体のメタノールを一旦、燃料電極側に供給し、これを加熱して蒸発させるようになっている。そのために、燃料電極やその近傍もしくはその一部が液体で満たされるため、発電反応で生じた二酸化炭素ガスの排出が円滑に排出されず、これが要因となって発電効率が低下する可能性があった。このような技術的課題は、液体供給型の燃料電池である特許文献2や特許文献3に記載されている燃料電池においても同様に生じる。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、発電効率が良好でかつ小型化が可能なダイレクトアルコール型燃料電池を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、電解質膜の表裏両面のそれぞれに電極が設けられた膜・電極接合体を挟んだ一方に燃料室が形成されるとともに他方に空気室が形成され、その燃料室にアルコールが供給されるダイレクトアルコール型燃料電池において、液体アルコールを貯留する燃料タンクが、供給管路を介して前記燃料室に連通して設けられ、その供給管路の途中に前記液体アルコールを加熱することにより蒸気化して前記燃料室に送る蒸気化部が設けられていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記蒸気化部は、前記供給管路との間で熱交換可能に設けられた酸化触媒と、未燃焼の前記アルコールを含む前記燃料室からの排気を前記酸化触媒に供給する送気管路とを備え、その酸化触媒で前記未燃焼のアルコールを酸化させることによる熱を前記供給管路におけるアルコールに伝達するように構成されていることを特徴とするダイレクトアルコール型燃料電池である。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記蒸気化部は、前記供給管路内のアルコールを加熱する電気ヒータを含むことを特徴とするダイレクトアルコール型燃料電池である。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記電気ヒータは、前記供給管路の内部に設けられ、かつ前記燃料タンクから前記電気ヒータまでの前記アルコールの供給経路が、毛管作用によって液体アルコールを流動させる多孔質材料もしくは繊維状構造材のいずれかによって構成されていることを特徴とするダイレクトアルコール型燃料電池である。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記電解質膜は、ポリベンゾイミダゾールで構成されていることを特徴とするダイレクトアルコール型燃料電池である。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明において、前記液体アルコールは、メタノールであることを特徴とするダイレクトアルコール型燃料電池である。
請求項1の発明によれば、液体アルコールは、燃料タンクから燃料室に送られる過程で蒸気化部において加熱され、蒸発する。そのアルコール蒸気が供給管路を経て燃料室に送られ、電解質膜を介した酸化反応を伴って電力を発生し、各電力から電力が外部に取り出される。その場合、アルコールは蒸発することにより高圧化されるので、機械的なポンプを必要とせずに燃料室に対して十分な量のアルコールを供給することができ、しかもアルコールは蒸気化されているので、燃料室の全体に広く拡散し、すなわち膜・電極接合体の表面の全体に均一に拡散するので、電解質膜の全体が有効に機能して発電効率を向上させることができる。特に膜・電極接合体を複数積層した場合であっても、各層の燃料電極側にアルコール蒸気を迅速かつ効率良く供給できるので、積層したことに伴う発電効率の低下を防止もしくは抑制することができる。そして、ポンプなどの可動部品を設ける必要がないことにより全体としての構成を小型化することができる。さらに、膜・電極接合体に対して蒸気としてアルコールが供給されるので、膜・電極接合体の表面が液体で覆われることが抑制され、そのために発電反応によって生じた二酸化炭素ガスの流通が阻害されにくく、その結果、燃料室もしくは膜・電極接合体の表面から二酸化炭素を効率良く排除でき、この点でも発電効率を向上させることができる。そしてまた、発電に伴う発熱がなくてもアルコール蒸気を膜・電極接合体に対して供給することができるので、発電を開始するいわゆる始動時間を短くすることができ、特に寒冷状態での始動性を向上させることができる。
請求項2の発明によれば、供給した燃料の未使用分を回収してアルコールの加熱に利用するので、燃料の使用効率あるいは電池全体としての熱効率を向上させることができ、またアルコールを外部に排出することを防止もしくは抑制して安全性を高めることができる。
請求項3の発明によれば、外部の電源を必要とするものの発電反応に制約されることなくアルコールを加熱することができるので、特に寒冷状態からの発電の開始を迅速に行うことができる。
請求項4の発明によれば、電気ヒータで加熱されてアルコールが蒸発すると、多孔質材料もしくは繊維状構造材に生じているメニスカスが低下し、それに伴う毛管作用によって液体アルコールが燃料タンクから電気ヒータ側に吸引される。したがって、電気ヒータで加熱した蒸発したアルコールの量に応じて液体アルコールが燃料タンクから取り出されるので、液体アルコールの流量制御を自動的に生じさせることができ、その制御が容易になる。
請求項5の発明によれば、電解質膜がポリベンゾイミダゾールによって形成されているので、燃料のいわゆるクロスオーバ現象を防止して発電効率を向上させることができる。
請求項6の発明によれば、反応性が高く、エネルギ密度の高いメタノールを燃料に用いることにより、燃料収容容器を小さく抑えることができ、かつ水素などの気体燃料を用いる場合と比較して取り扱いが容易であり、また発電効率を向上させるとともに、発電コストを低廉化することができる。
つぎにこの発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池を具体例に基づいて説明する。この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池の主要な構成は、図1にブロック図で示すとおりであり、液体アルコールを貯留する燃料タンク1を備え、この燃料タンク1は発電部2に供給管路3を介して連通されている。その供給管路3の途中には、液体アルコールを加熱して蒸発させる蒸気化部4が設けられている。この蒸気化部4は、要は、供給管路3内のアルコールを加熱して蒸発させる部分であり、その熱源は、外部電源を利用した電気ヒータやアルコールを燃焼させた熱など、必要に応じて適宜のものを利用できる。図1には、アルコールの酸化熱を利用する構成を示してある。
燃料タンク1と蒸気化部4との間には、液体アルコールの流量を調整する流量調整機構5が設けられている。この流量調整機構5としては、流量調整バルブが最も一般的であるが、これに限らずオリフィスなどの適宜の構成のものを作用することができる。また、蒸気化部4と発電部2との間には、アルコール蒸気の流通・遮断を含めた流量の調整を行うバルブ6が設けられている。
発電部2は、実質的な燃料電池に相当する部分であり、電解質として高分子電解質膜を備え、その電解質膜と電極とを一体化した膜・電極接合体(MEA)7を主体として構成されている。図2にはその構造を断面図で示してあり、電解質膜8の表裏両面側に触媒層9,10が設けられている。
その電解質膜8は、パーフルオロスルホン酸系高分子膜(例えばNafion 117(登録商標))やポリベンゾイミダゾール(以下、PBIと記すことがある)からなる電解質膜などであり、特にPBIからなる電解質膜であれば、燃料のクロスオーバ現象を防止もしくは抑制して発電効率を向上させるのに好適である。なお、クロスオーバ現象とは、アルコール燃料が発電部2の電解質膜8において、発電に寄与する化学反応(電池反応)を行うことなく、燃料供給側から空気供給側に透過する現象のことを言う。
また、燃料側の触媒層9は、一例として、白金/ルテニウムの混合物を主成分として構成されており、また空気側の触媒層10は白金を主成分として構成されている。これらの触媒層9,10の表面側には、それぞれ、ガス拡散層11,12が形成されている。このガス拡散層11,12は、触媒層9,10の表面側に燃料や空気が流通する空間を確保するためのものであり、導電性の多孔構造とされている。具体的には、カーボン繊維をメッシュ構造に編んだものであり、また必要に応じて水和処理されている。そして、これらのガス拡散層11,12の表面側に電極13,14が設けられている。電極13,14は良導体によって構成され、これに加えて燃料や空気を触媒層9,10に到達させるために通気構造とされている。一例として、白金メッキを施したステンレスからなるメッシュ構造体である。これらの電極13,14に負荷15が接続されて電気回路16が形成されている。
図1に示す例では、前記蒸気化部4に触媒燃焼室17が付設されている。この触媒燃焼室17は、白金などの酸化触媒によってアルコールを酸化させるためのものであり、酸化によって生じた熱を、蒸気化部4におけるアルコールに伝達してこれを蒸発させるように構成されている。例えば、蒸気化部4と触媒燃焼室17とはアルミニウム板などの熱伝導性の良好な材料で隔絶されており、触媒燃焼室17で発生した熱が、蒸気化部4におけるアルコールに効率良く伝達するように構成されている。したがって、触媒燃焼室17は前記発電部2に連通され、発電部2から排出される未燃焼のアルコールを含む排気を触媒燃焼室17に導くように構成されている。
上述したこの発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池をより具体化した例を図3に示してある。図3において、中空構造のパッケージ20の内部が隔壁21によって二分割されており、図3における上側に燃料タンク1、流量調整機構5、蒸気化部4および触媒燃焼室17、バルブ6が設けられており、これに対して図3の下側の部分に発電部2が設けられている。この発電部2は、パッケージ20における前記隔壁21によって区画された下側の領域に該領域を二分するように膜・電極接合体7が設けられ、その膜・電極接合体7と隔壁21との間が燃料室22となり、かつその燃料室22とは反対側が空気室23となるように構成されている。その燃料室22は密閉された空間として構成されているが、空気室23は外気が導入されればよいので、解放された空間として構成してもよい。
燃料タンク1は図示しない注入口が設けられた密閉容器として構成され、また蒸気化部4は燃料タンク1の近傍に密閉室として形成されており、これら燃料タンク1と蒸気化部4との間に流量調整機構5が設けられている。なお、この流量調整機構5を含む管路と発電部2との間に断熱材24が介装されている。蒸気化部4と隔壁21との間(図3では蒸気化部4の下側)に触媒燃焼室17が設けられている。これら蒸気化部4と触媒燃焼室17とは相互に熱交換できるように構成され、例えば両者の間は、アルミニウムなどの熱伝導性の良好な仕切板で区画されている。
蒸気化部4の内部には、液体アルコール(具体的にはメタノール)を含浸させることのできる多孔質体、例えばカーボン繊維などからなる毛管作用を行うウイック材が充填されている。これに対して触媒燃焼室17には、金属製のウイック材に白金などの触媒粒子を担持させた触媒が充填されている。また、触媒燃焼室17には前記隔壁21を貫通して前記燃料室22に開口する吸気ポート25が設けられており、またパッケージ20の外面に開口する排気管26が触媒燃焼室17に連通されている。さらに、蒸気化部4はバルブ6を介して燃料室22に連通されている。なお、バルブ6は断熱材24によって覆われている。また、図3において符号27,28はリード線であり、それぞれ各電極13,14に接続されている。
図3に示す燃料電池においても、通常のアルコール型燃料電池と同様に、膜・電極接合体7を介した酸化反応(発電反応)に伴って電力が発生する。すなわち、燃料室22に供給された燃料であるメタノールは、前述した(1)式で示す反応により二酸化炭素とプロトンとに分かれ、かつ電子を放出する。そのプロトンは電解質膜を透過して空気室23側に移動し、また電子は電極13を介して外部に取り出され、電気となる。空気室23側では、プロトンと空気中の酸素とが前述した(2)式で示す反応を行って水を生じる。
このような反応は、燃料室22に供給されたメタノールの全てについて生じるわけではなく、未燃焼のメタノールも残存し、これはパッケージ20の外部に排出される前に前記吸気ポート25から触媒燃焼室17に導かれる。すなわち、触媒燃焼室17には燃料室22からの排気が導入され、その排気に含まれるメタノールが触媒によって酸化させられる。こうして生じた熱の一部は、排気と共に前記排気管26からパッケージ20の外部に放出されるが、他の一部は、触媒燃焼室17に隣接して設けられている蒸気化部4に伝達される。
蒸気化部4には、燃料タンク1から液体メタノールが流量調整されて供給されており、その液体アルコールが触媒燃焼室17から伝達された熱によって加熱されて蒸発する。なお、寒冷時の始動を迅速にする場合には、電気ヒータを補助熱源として設けてもよい。そのアルコール蒸気は、バルブ6を経由して燃料室22に供給されるので、燃料であるメタノールは、加圧されて燃料室22に供給されることになる。したがって、発電部2に対して十分な量の燃料を供給することが可能になる。
そして、メタノール蒸気は気体であるから、燃料室22の全体に迅速に拡散するとともに、前述したガス拡散層11で電解質膜8の表面全体に拡散させられたのち、触媒層9で前述した反応が生じる。したがって、電解質膜8の全体で発電反応が生じ、効率の良い発電が行われる。
前述した(1)式で示すように、触媒層9ではメタノールの分解によって二酸化炭素ガスが生じるが、触媒層9やガス拡散層11に供給されているメタノールは加熱蒸発した気体であるから、触媒層9やガス拡散層11に液膜が生じず、もしくは液膜が抑制されており、したがって反応によって生じた二酸化炭素ガスが迅速に排出され、メタノールが入れ替わる。その結果、触媒層9もしくは電解質膜8には常時、メタノールが新規に供給されるので、効率良く発電が生じる。
反応によって生じた二酸化炭素ガスは、前述した吸気ポート25から触媒燃焼室17に排出され、ここから前記排気管26を経由してパッケージ20の外部に放出される。したがって、二酸化炭素ガスも未燃焼のメタノールを触媒燃焼室17に搬送する機能も果たす。そして、その未燃焼のメタノールは触媒燃焼室17で酸化されて二酸化炭素ガスと水になるので、パッケージ20から放出されるメタノールは皆無もしくは僅少になり、したがって上述した構成であれば、安全性の高いアルコール型燃料電池とすることができる。そして、ポンプなどの動力装置を必要としないので、小型化が容易であり、また電力消費がないので、この点でも発電効率を向上させることができる。
つぎにこの発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池の他の具体例を示す。上述した具体例は、排気に含まれる未燃焼のメタノール(すなわちオフメタノール)を酸化させることにより熱で燃料としてのメタノールの加熱蒸発させるように構成した例であるが、この発明は要は燃料であるアルコールを加熱して蒸発され、その蒸気を発電部に供給するように構成されていればよいのであり、その加熱のために電気ヒータを用いることもできる。図4はその例を示しており、パッケージ20の内部が隔壁21によって二分割されており、一方(図4の下側)が発電部2とされ、他方(図4の上側)が燃料タンク1とされている。その発電部2の構成は、上述した図3に示す構成と基本的には同様であるから、図4に図3と同様の符号を付してその説明を省略する。
燃料タンク1は隔壁21が区画された半分の全体を示しており、この燃料タンク1と燃料室22とを連通させる供給管路29が隔壁21を貫通して形成されている。この供給管路29には、カーボン繊維などの細線を束ねた構成、あるいは多孔質材などからなるウイック材30が充填されている。このウイック材30は、燃料としてのメタノールが浸透させて毛管作用を生じさせるためのものである。このウイック材30の前記燃料室22側の端部に電気ヒータ31が配置されている。この電気ヒータ31は図示しない外部の電源から電流が供給されて発熱することにより、ウイック材30に浸透しているメタノールを加熱して蒸発されるように構成されている。例えば、フレキシブルプリント回路のように薄型の発熱線を巻いた構成の電気ヒータである。したがって、ウイック材30においては、電気ヒータ31側でメタノールの蒸発が生じることにより、メニスカスが低下し、それに伴う毛管圧力によって燃料タンク1内の液体メタノールを吸引するようになっている。なお、燃料室22の排気口は、特には図示しないが、パッケージ20を貫通させて適宜設けることができる。なお、燃料タンク1から燃料室22に流れるメタノールを、選択的に止めるためのバルブを設けてもよい。
したがって、図4に示す構成のアルコール型燃料電池では、電気ヒータ31に通電することにより、メタノールが蒸発し、その蒸気が燃料室22に供給される。そのメタノール蒸気は、前述した図3に示す構成のアルコール型燃料電池におけると同様に、膜・電極接合体7で発電反応の用に供され、電力を生じる。そして、燃料室22では、メタノールが気体の形が加圧されて供給されるので、十分な量のメタノールを迅速に供給でき、また均一に拡散させて効率の良い発電を行うことができる。また、発電反応によって生じた二酸化炭素を迅速に排出した発電効率を向上させ得ることは前述した図3に示す例と同様である。特に図4に示す構成では、ウイック材30からメタノールが蒸発し、それに伴ってメニスカスが変化することによりウイック材30が液体メタノールを吸引するので、メタノールの流量調整を自動的に行うことができる。なお、ポンプなどの動力装置を必要としないことにより、小型化が容易で、また発電効率を向上させることができることは図3に示す例と同様である。
図3に示す実験機を作製し、燃料として水で希釈した50%のメタノール溶液を使用した。蒸気化部および触媒燃焼室は、10×10×5mmの密閉室で、各部位の肉厚は1mmとし、蒸気化部にはカーボン繊維を水和処理したウイック材を充填した。また触媒燃焼室には、触媒粒子としてウイック材に白金を担持させた触媒を充填した。その触媒は、10%の濃度になるように水を用いて希釈された六塩化白金酸(六水和物)に、予め洗浄されたガラス繊維を浸漬し、300℃にて加熱し、その後室温で水素還元処理して、白金をウイック材としてのガラス繊維に担持させたものである。
電解質膜として0.1mmのNafion 117(登録商標)を使用し、燃料室側の触媒は、白金とルテニウムの等量混合物を使用し、空気室側の触媒には白金を使用した。それぞれの触媒層の厚さは20μmに調整した。なお、触媒層の作製方法を説明すると、アルコ−ル類を溶媒としてそこに粉末状の触媒を混ぜてインク化し、スクリーン印刷機によりテフロンシート上に触媒膜を作製した。これを電解質膜と重ね合わせ、ホットプレス機(140℃x5分)で加熱加圧し、その後加圧状態を保った状態で冷却し、触媒膜を電解質膜に転写して作製した。
さらにガス透過層として水和処理を施した厚み1mmの力一ボン繊維を、燃料室側と空気室側とに配置し、さらに電極は開口径を2mmとしたメッシュ構造で材質は白金メッキを施したステンレスを用いた。
以上の材料をホットプレス機で加熱加圧し、一体構造としてMEAを作製した。このときの電極面積は25cm2(5x5cm)とした。
電解質膜として0.1mmのNafion 117(登録商標)を使用し、燃料室側の触媒は、白金とルテニウムの等量混合物を使用し、空気室側の触媒には白金を使用した。それぞれの触媒層の厚さは20μmに調整した。なお、触媒層の作製方法を説明すると、アルコ−ル類を溶媒としてそこに粉末状の触媒を混ぜてインク化し、スクリーン印刷機によりテフロンシート上に触媒膜を作製した。これを電解質膜と重ね合わせ、ホットプレス機(140℃x5分)で加熱加圧し、その後加圧状態を保った状態で冷却し、触媒膜を電解質膜に転写して作製した。
さらにガス透過層として水和処理を施した厚み1mmの力一ボン繊維を、燃料室側と空気室側とに配置し、さらに電極は開口径を2mmとしたメッシュ構造で材質は白金メッキを施したステンレスを用いた。
以上の材料をホットプレス機で加熱加圧し、一体構造としてMEAを作製した。このときの電極面積は25cm2(5x5cm)とした。
燃料電池の発電量が安定したから蒸気化部と触媒燃焼室との仕切部の温度を測定したところ、約200℃の発熱を確認した。メタノールの沸点は標準気圧下では約65℃であり、蒸気化させるためには十分な熱量が得られることが確認された。
また、測定された起電力を図5に示す。図5において、実線はこの発明に係るダイレクトメタノール型燃料電池の発電特性であり、破線は液体メタノールを発電部に直接供給する従来タイプの比較例の発電特性を示している。この発明に係るダイレクトメタノール型燃料電池では、発電部に液体メタノールを供給した場合と比較して、発電量が高くなり、また安定した発電特性が得られていることが確認できた。
また、測定された起電力を図5に示す。図5において、実線はこの発明に係るダイレクトメタノール型燃料電池の発電特性であり、破線は液体メタノールを発電部に直接供給する従来タイプの比較例の発電特性を示している。この発明に係るダイレクトメタノール型燃料電池では、発電部に液体メタノールを供給した場合と比較して、発電量が高くなり、また安定した発電特性が得られていることが確認できた。
ところで、この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池では、高温の蒸気化されたアルコールを燃料として用いるために、一般的な電解質膜材料であるパーフルオロスルホン酸系高分子膜を用いた場合、アルコールのクロスオーバ現象が生じる。クロスオーバ現象が生じると、蒸気化されたメタノールが燃料室側の電極(アノード)から空気室側の電極(カソード)に達して、カソード上において蒸気化されたメタノールと外部から供給された酸素とが反応してメタノール酸化反応を起こす。その結果、電極電位がマイナス方向にシフトして、いわゆる起電力(発電力)が低下する。
このクロスオーバ現象は、電解質膜が高温なほど、またアルコール濃度が高いほど発生し易い。この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池においては、燃料であるメタノールなどのアルコールを加熱して蒸気化させるから、電解質膜は高温となり、またアルコールの蒸気圧の関係から、アルコールは高濃度となり易い。その結果、クロスオーバ現象を生じ易い。
そこでこの発明では、クロスオーバ現象を防止もしくは抑制するために、電解質膜として、ガラス転移点の高いPBIを用いることが好ましい。PBIは前述したこの発明にかかるダイレクトアルコール型燃料電池の定常状態、すなわち発電量が安定した状態において、触媒燃焼室から発生する約200℃の熱負荷下であっても安定して存在するため、前述のクロスオーバ現象を生じ難い。図6には、この発明に係るダイレクトアルコール型燃料電池の電解質膜のみをPBIに変更して作製した燃料電池の発電特性を示した。図6において、実線は電解質膜にパーフルオロスルホン酸系高分子膜を用いた場合の発電特性を示し、破線は電解質膜にPBIを用いた場合の発電特性を示している。電解質膜にPBIを用いた場合には、電解質膜にパーフルオロスルホン酸系高分子膜を用いた場合と比較して、出力電力値が約50%向上したことが認められた。
なお、この発明においては、加熱用電気ヒータを用いる場合、電気絶縁を施したものを用いる必要がある。また、フレキシブルな構造としてウィック体に巻いた構成のヒータとしてもよい。また、燃料供給経路に使用するウイック材は、ウィック構造としたガラス繊維が熱的に安定であり、最も適しているが、その使用条件に応じて綿あるいはアルミニウム細線を用いてもよい。さらに、前述した蒸気化部と触媒燃焼室とは高温となるために、安全性や燃料電池全体の長期信頼性の観点から、外部に対して断熱構造とすることが望ましい。
一方、燃料電池を寒冷地などの外部温度の低い環境において使用する場合、発電部の温度が低いことから、発電開始にかかる時間が長くなる虞がある。その対策として、前述した触媒燃焼室から発生した熱を発電部に伝熱することにより、発電部を加温することも有効な方法である。この場合の伝熱手段として、金属板あるいはヒートパイプなどの一般的な部材を用いてもよい。
1…燃料タンク、 2…発電部、 3…供給管路、 4…蒸気化部、 5…流量調整機構、 6…バルブ、 7…膜・電極接合体(MEA)、 17…触媒燃焼室、 20…パッケージ、 22…燃料室、 23…空気室、 29…供給管路、 30…ウイック材、 31…電気ヒータ。
Claims (6)
- 電解質膜の表裏両面のそれぞれに電極が設けられた膜・電極接合体を挟んだ一方に燃料室が形成されるとともに他方に空気室が形成され、その燃料室にアルコールが供給されるダイレクトアルコール型燃料電池において、
液体アルコールを貯留する燃料タンクが、供給管路を介して前記燃料室に連通して設けられ、その供給管路の途中に前記液体アルコールを加熱することにより蒸気化して前記燃料室に送る蒸気化部が設けられていることを特徴とするダイレクトアルコール型燃料電池。 - 前記蒸気化部は、前記供給管路との間で熱交換可能に設けられた酸化触媒と、未燃焼の前記アルコールを含む前記燃料室からの排気を前記酸化触媒に供給する送気管路とを備え、その酸化触媒で前記未燃焼のアルコールを酸化させることによる熱を前記供給管路におけるアルコールに伝達するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のダイレクトアルコール型燃料電池。
- 前記蒸気化部は、前記供給管路内のアルコールを加熱する電気ヒータを含むことを特徴とする請求項1に記載のダイレクトアルコール型燃料電池。
- 前記電気ヒータは、前記供給管路の内部に設けられ、かつ前記燃料タンクから前記電気ヒータまでの前記アルコールの供給経路が、毛管作用によって液体アルコールを流動させる多孔質材料もしくは繊維状構造材のいずれかによって構成されていることを特徴とする請求項3に記載のダイレクトアルコール型燃料電池。
- 前記電解質膜は、ポリベンゾイミダゾールで構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のダイレクトアルコール型燃料電池。
- 前記液体アルコールは、メタノールであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のダイレクトアルコール型燃料電池。
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- 2008-02-26 JP JP2008045204A patent/JP2009205875A/ja active Pending
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