JP2009197905A - 制振装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】強制振動が加わる対象構造物に近接して配置され、対象構造物に生じた振動を制振する装置10であって、所定方向への変位が許容される振動体21と振動体21を駆動するアクチュエータ25とを含む対策装置20と、強制振動による対象構造物の振動を抑制するようにアクチュエータ25の動作を制御するコントローラ30と、を備え、振動体21は、強制振動の位相よりも、強制振動による振動体21の振動の位相が180°±10°遅れるようにその固有振動数が設定されていることを特徴とする。
【選択図】図4
Description
広く実用化されている構造物用制振装置は、対象構造の固有振動に同調して装置が振動することで、構造物振動特性における共振倍率を低減するのと等価な効果を生じる。一方、実用化されている構造物用制振装置は、固有振動数から外れた強制振動に対しては、効果を発揮しない。
特許文献1は、振動源に近接して設置される制振装置が、振動センサ、位相抽出手段および周波数抽出手段を作動させると、振動センサにより検出された振動源の振動から、位相抽出手段および周波数抽出手段により、その振動の位相および周波数が抽出される。そして、制御装置の作動によって加振機の周波数および位相が調節されて加振機が作動させられる。加振機は振動系に取り付けられているので、加振機の作動により、その振動が振動系に伝達されて、質量要素が上下方向に振動させられることになる。
特許文献1は、振動源の振動周波数が所定範囲に限られていることを前提に、振動系の共振周波数を振動源の振動周波数の略範囲内に設定しているので、加振機の周波数が振動系の共振周波数に近づくと、振動系は大きく振動し、加振機の振動周波数と一致した大きな加振力(慣性力)を発生する。加振機の振動は振動源の振動の周波数と同一で、かつ、振動源の振動と振動系の振動が逆の位相になるよう調節するので、振動系は強大な加振力を振動源の振動とは逆の位相で設置面に加えることになる。その結果、加振機により発生する比較的小さな加振力により振動系を大きく振動させることで、大きな加振力を発生することが可能となり、振動源の振動が制振され、周辺に振動が伝播することが防止されることになる。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、位相制御を行うことなく、強制振動を低減できる制振装置を提供することを目的とする。
図1の上段に示すように構造物固有振動数の外乱が入力され、構造物固有振動数と同じ固有振動数を有する対策装置を設置した場合、外乱により構造物が揺らされる。この揺れは共振なので、90°位相が遅れ、図1の中段に示すように、構造物応答変位は外乱に対して90°遅れる。このとき、構造物応答変位に対して、構造物応答加速度は180°進む。構造物応答加速度がαのとき、構造物上に設置され、構造物が揺れることで揺らされる対策装置には、−mαの慣性力が作用している状態と考えることができる。ここで、mは対策装置可動振動体の質量である。
固有振動に対する対策装置は、構造物固有振動数と同じ固有振動数になるように調整されているので、−mαの力を受けた場合、対策装置の応答変位は、−mαに対して90°遅れる(図1の下段)。このとき対策装置応答変位に対して、対策装置応答加速度は180°進む。
対策装置は、構造物応答に90°遅れる形で動くので、構造物の減衰効果として働く。あるいは、考え方を変えると、対策装置の応答加速度によって生じる装置慣性力−mβ(ここで、βは対策装置応答加速度)が構造物に入力され、この、装置慣性力により外乱がキャンセルされる。
本発明の制振装置は、対策装置が駆動されていない状態(パッシブ状態)であっても、対策装置は、強制振動の位相よりも、強制振動による対策装置の振動の位相が180°±10°の範囲で遅れるようにその固有振動数が設定されているので、強制振動をキャンセルする機能を有する。実際に、対策装置を機能させる場合には、位相の調整を行うことなく、対策装置の振動を増幅させる条件を設定すればよい。
以下、添付する図4〜図8に示す第1実施形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施形態に係る制振装置10は、外乱として強制振動が加わる対象構造物(例えば、ドーム球場、コンサートホール)に近接して配置されるものであり、対策装置20と、コントローラ30と、対象構造物振動センサ40aと、対策装置振動センサ40bとを備えている。なお、本実施の形態において、外乱としての強制振動の周波数は既知であり、かつ一定なものとする。「縦ノリ」の場合、その周波数は2〜3Hzである。
対策装置20は、所定の質量を有する振動体21と、振動体21の可動方向を規定する板ばね22とを振動系の構成要素として有している。各板ばね22は、その一端部が、設置面A上に設置された断面コ字状の架台23に固定される。また、各板ばね22は、他端部が、振動体21の上下両端部に固定されている。したがって、振動体21は、図4に矢印で示すように上下(鉛直)方向には変位可能であるが、左右(水平)方向の変位は規制される。なお、板ばね22の枚数を変更することにより、対策装置20の固有振動数を調整することができる。
架台23と振動体21の間には、コイルばね24が配置されている。このコイルばね24は、振動体21の重量により圧縮されることにより、振動体21を支持している。そして、振動体21が上下方向に変位すると、その変位量に応じた力を振動体21に加えるようになっている。
コントローラ30は、対象構造物に設置された対象構造物振動センサ40aから、対象構造物の変位、速度を含む振動情報を入手する。この振動情報は、対策装置20の振動による振動情報を含んでいる。また、コントローラ30は、対策装置20に設置された対策装置振動センサ40bから、対策装置20の変位、速度を含む振動情報を入手する。
コントローラ30は、対象構造物振動センサ40aから取得した振動情報を、FFT処理することにより、強制振動成分と固有振動成分を抽出することができる。ここで、強制振動成分については、応答振幅が最も大きい周波数を抽出する。この強制振動成分を、本発明では、主要な強制振動成分と定義する。
例えば、コンサートにおいて縦ノリが生じた場合、コントローラ30は、対象構造物振動センサ40aを介して対象構造物の応答(振動情報)を計測する(S101)。次いで、コントローラ30は対象構造物振動センサ40aから振動情報を取得し、FFT器31は取得した振動情報をFFT処理することにより、周波数分析を行う(S103)。この結果は、例えば図6に示した通りである。
コントローラ30は、FFT処理の結果を参照して、主要な強制振動成分を抽出する(S105)。主要な強制振動成分は強制振動対策コントローラ32に送られる。
次に、強制振動対策コントローラ32は、逆算することにより求められた外乱を打ち消すための対策力を設定する(S111)。そのために、強制振動対策コントローラ32は、対策装置振動センサ40bにより得られた対策装置20の挙動(変位)を計測し(S113)、その挙動を増幅することで、外乱振幅と同じ振幅の対策力を求める。具体的には、強制振動コントローラ32は、任意の係数であるβを設定することにより、対策力を、例えば、周波数:f1(Hz)、振幅:β*A1/a1(N)に設定する。なお、βは、0.0〜1.0の範囲で設定される。1.0は外乱を完全に打ち消す対策力を与え、0.0は対策力を与えないことを意味する。しかし、通常は、βを1.0とすると制御の安定性の問題が生じ、また、大きなモーターパワーが必要となるため、1.0未満の値で設定される。
なお、本実施の形態では、振動体21が上下(鉛直)方向に変位する例を示したが、本発明はこれに限らず、水平方向に変位する振動体を有する対策装置はもちろん、任意の方向であって、かつ振動方向と一致する方向に変位する振動体を有する対策装置に適用することができる。
第1実施形態の制振装置10では、対象構造物振動センサ40aにより振動情報を計測し、それに基づいて対策装置20に与えられる対策力を設定したが、第2実施形態では、対象構造物振動センサ40aよりも簡易な変位センサ41を用いて対策装置20に与えられる対策力を設定するものである。
例えば、コンサートにおいて縦ノリが生じた場合、振動体42の変位(振動体応答)が変位センサ41により計測される(S201)。この計測により、コントローラ30の強制振動対策コントローラ32は、振動体42の振幅を例えばA1(m)と特定する。ただし、強制振動対策コントローラ32は、この振幅A1を得る前提として、図10のS207に示すように対策装置モデルを用いて、後述するシミュレーションを行う。
次に、強制振動対策コントローラ32は、逆算することにより求められた外乱を打ち消すための対策力を設定する(S205)。この対策力は、外乱振幅と同じ振幅として設定される。つまり、対策力は、振幅:β*A1/a1(N)に設定される。なお、βは任意の係数である。
変位センサ41により得られる対策装置20の変位情報は、対策力が加えられた挙動(変位)を含んでいる。このままでは、次の時刻には、この増幅後の装置応答をさらに増幅しようとし、応答は発散してしまう。そこで、強制外乱により対象構造物が振動させられ、それにより受動的に振動させられている対策装置20の応答を常に把握し、その結果に基づいて対策力を設定する。
強制振動対策コントローラ32は、変位センサ41により得られる対策装置20の変位情報から、対策力β*A1/a1(N)のみによって対策装置20に生ずる応答(変位)をシミュレーションにより求める。この結果を、変位センサ41により計測された振動体42の変位(振動体応答)から差し引くことで、強制外乱により対策装置20が受動的に振動させられたことによる振幅:A1(m)を特定するのである(S203)。そして、この結果に基づいて、次の対策力が設定される(S205)。
第2実施形態の制振装置50では、設置面Aにコイルばね43を介して振動体42を設置して、外乱による振動体42の変位を計測し、その変位から外乱を逆算して求め、それに基づいて対策装置20に与えられる対策力を設定したが、第3実施形態では、対策装置20の変位を変位センサ44で計測して対策装置20に与えられる対策力を設定するものである。
例えば、コンサートにおいて縦ノリが生じた場合、対策装置20の変位(振動体応答)が変位センサ44により計測される(S301)。この計測により、コントローラ30の強制振動対策コントローラ32は、対策装置20の振幅を例えばA1(m)と特定する。ただし、強制振動対策コントローラ32は、この振幅A1を得る前提として、図12のS307に示すように対策装置モデルを用いて、後述するシミュレーションを行う。
次に、強制振動対策コントローラ32は、逆算することにより求められた外乱を打ち消すための対策力を設定する(S305)。この対策力は、外乱振幅と同じ振幅として設定される。つまり、対策力は、振幅:β*A1/a1(N)に設定される。なお、βは任意の係数である。
変位センサ44により得られる対策装置20の変位は、対策力が加えられた挙動(変位)を含んでいる。このままでは、次の時刻には、この増幅後の装置応答をさらに増幅しようとし、応答は発散してしまう。そこで、強制外乱により対象構造物が振動させられ、それにより受動的に振動させられている対策装置20の応答を常に把握し、その結果に基づいて対策力を設定する。
強制振動対策コントローラ32は、変位センサにより得られる対策装置20の変位情報から、対策力β*A1/a1(N)のみによって対策装置20に生ずる応答(変位)をシミュレーションにより求める。この結果を、変位センサ44により計測された対策装置20の変位(振動体応答)から差し引くことで、強制外乱により対策装置20が受動的に振動させられたことによる振幅:A1(m)を特定する(S303)。そして、この結果に基づいて、次の対策力が設定される(S305)。
また、対象構造物の振動周波数ごとの振幅比(m/N)を予め把握しておけば、第2、第3実施形態のように、加速度センサを省略した簡易なセンサで、対策力を設定することができる。
Claims (2)
- 強制振動が加わる対象構造物に近接して配置され、前記対象構造物に生じた振動を制振する装置であって、
所定方向への変位が許容される振動体と前記振動体を駆動する駆動手段とを含む対策装置と、
前記強制振動による前記対象構造物の振動を抑制するように前記駆動手段の動作を制御するコントローラと、を備え、
前記振動体は、
前記強制振動の位相よりも、前記強制振動による前記振動体の振動の位相が180°±10°の範囲で遅れるようにその固有振動数が設定されていることを特徴とする制振装置。 - 前記対象構造物又は前記対策装置の振動又は変位を検出するセンサを備え、
前記コントローラは、
前記振動又は前記変位に関する情報に基づき、前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
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