JP2009196903A - 眼科用組成物 - Google Patents

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【課題】ビタミンAの安定性に優れ、眼刺激が抑制された安全性の高いビタミンAを配合する眼科用組成物の提供。
【解決手段】ビタミンA、並びにアスタキサンチン及び/またはその誘導体を含有する眼科用組成物。ビタミンAが、レチノイン酸、レチノール、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステルから選ばれる1種または2種以上である該組成物。更に、ビタミンE、水溶性高分子から選ばれる1種または2種以上を含有し、好ましくは水溶性高分子が酸性ムコ多糖である該組成物。点眼剤または洗眼剤である該組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ビタミンA並びにアスタキサンチン及び/又はやその誘導体を含有する、ビタミンAの安定性に優れ、かつ眼刺激が抑制された眼科用組成物に関する。
近年、さまざまな生活・社会環境の変化に伴い、目に対して負担をかける機会が増えている。その代表例として、エアコンの普及による室内の乾燥や、パソコン等のVDT作業の増加、コンタクトレンズ使用者の増加などに伴って、ドライアイ患者が急増している。その数は潜在患者も含めて全国で2000万人ともいわれており、ドライアイ患者の急増は社会問題ともなっている。
ドライアイに対しては、角膜創傷治癒作用を有するヒアルロン酸やビタミンAを配合した点眼剤の投与が効果的であることが報告されている(非特許文献1,2)。特に、ビタミンAは涙液中のムチンを産生し、涙液の安定化を促進することでドライアイを改善する作用を有している。
一方で、脂溶性ビタミンであるビタミンAは、空気、光、熱、酸、金属イオンなどに非常に敏感で、特に水溶液中では極めて不安定であるため、点眼剤などの外用剤に安定に配合することは困難である。
このように不安定なビタミンAの安定化技術としては、従来から、乳化系または粉末系にジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)及びトコフェロール類などの脂溶性抗酸化剤、アスコルビン酸、ヒドロキノン、システインなどの水溶性抗酸化剤またはこれらの双方の抗酸化剤を添加ないしは混合する方法(特許文献1、特許文献2)、ビタミンAをゼラチン、カゼイン、デキストリン等を用いて被覆し、粒状または粉末状として空気との接触を断って安定化する方法(特許文献3)、また、ビタミンE、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレンジアミン四酢酸等を配合したビタミンA及びビタミンE可溶化点眼剤(特許文献4)等が知られている。
しかしながら、ビタミンAの水溶液(本発明の用語「水溶液」は、可溶化液を含む意味で用いる)中での安定性は充分ではなく、ドライアイへの効果をより高めるため、高濃度とすることが困難であった。さらに、創傷治癒作用等への活性が高いレチノイン酸は極めて安定性が低く、点眼剤や洗眼剤等の水溶液への配合は、これまで実現化されていない。一方で、ビタミンAを高濃度で眼軟膏に配合した検討例があるが、眼刺激等を生じる頻度が高いといった副作用の問題が指摘されている(非特許文献3)。
また、本発明においてビタミンAとともに配合するアスタキサンチンは、抗酸化防止効果、抗炎症効果(特許文献5) 、皮膚老化防止効果(特許文献6) 、抗ストレス作用(特許文献7)、眼の調節機能改善作用(特許文献8)、眼中枢神経疾患・損傷改善作用(特許文献9)が報告されている。
特開昭48−48617 特開昭58−41813 特開昭61−212322 特開平6−247853 特開平2−49091 特開平5−155736 特開平9−124470 WO2002/094253 US5527533
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本発明は、ビタミンAの安定性に優れ、眼刺激を低減した安全性の高いビタミンAを配合する眼科用組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために検討を加えた結果、ビタミンAを配合する水溶液にアスタキサンチンを配合することでビタミンAの安定性が高まり、かつ眼刺激を低減して安全性が高まることを見出した。更に、ビタミンEおよび/または水溶性高分子を配合することで、その効果がさらに向上することを見出し、本発明を完成した。
従って、本発明は、
〔1〕ビタミンA並びに及びアスタキサンチン及び/又はその誘導体を含有することを特徴とする、眼科用組成物
〔2〕ビタミンAが、レチノイン酸、レチノール、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステルから選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の眼科用組成物
〔3〕更に、ビタミンEおよび/または水溶性高分子から選ばれる1種または2種以上を配合したことを特徴とする請求項1及び2記載の眼科用組成物
〔4〕水溶性高分子が酸性ムコ多糖である請求項3記載の眼科用組成物
〔5〕点眼剤または洗眼剤である請求項1〜4記載の眼科用組成物
本発明によれば、ビタミンA並びにアスタキサンチン及び/又はその誘導体を配合した眼科用組成物、更に前記眼科用組成物にビタミンEおよび/または水溶性高分子から選ばれる1種または2種以上を配合することによって、ビタミンAの安定性に優れ、かつ眼刺激が低減された、安全性が高い眼科用組成物を提供することができる。
本発明の「ビタミンA」は、レチノール、レチナール、レチノイン酸、これらの塩、誘導体(エステル、エーテル)、さらに3−デヒドロ体(ビタミンA2)を総称する意味で使用される。本発明に用いられるビタミンAは、ビタミンAの他にビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体などが挙げられ、化学合成品でも、天然物から抽出されたものでもよい。例えば、レチノイン酸、レチノール、レチナール、カロチン、デヒドロレチナール、リコピン及びその薬理学的に許容される誘導体や塩、例えば、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステルなどが挙げられる。中でも、特に好ましいものはレチノイン酸、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステルである。
上記ビタミンAは、通常、眼科組成物中に0.1万〜50万I.U./100mL配合することができ、好ましくは1万〜30万I.U./100mL、より好ましくは3万〜15万I.U./100mLの範囲である。配合量が少なすぎると、薬効が得られない場合があり、多すぎると、安定性が損なわれたり、眼刺激が生じる場合がある。
本発明に使用するアスタキサンチン及び/またはその誘導体は、化学合成品でも、天然物から抽出されたものでもよい。
アスタキサンチン誘導体としてはエステル、エーテル等が挙げられ、例えば、グリシン、アラニン等のアミノ酸とのエステル、酢酸、クエン酸等のカルボン酸とのエステル及びその塩、リン酸、硫酸等の無機酸とのエステル及びその塩、グルコシド等の配糖体、またはエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸、オレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸またはパルミチン酸やステアリン酸等の飽和脂肪酸から選択される脂肪酸とのエステル等があげられ、それらのモノエステル体及び同種又は異種のジエステル体等を使用することができる。
上記アスタキサンチン及び/またはその誘導体は、通常、組成物中に0.00001〜0.1w/v%(質量/容量%、以下同様)が好ましく、より好ましくは0.0001〜0.05w/v%、特に好ましくは0.0005〜0.01w/v%の範囲である。配合量が少なすぎると、充分なビタミンA安定化効果が得られない場合があり、多すぎてもそれ以上の効果の増大は見られず、また使用感が損なわれる場合がある。
本発明の「ビタミンE」は、トコフェロール、トコトリエノール、これらの塩、誘導体(エステル)を総称する意味で使用される。具体的には、例えば、d−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール等があり、これらの誘導体としては、例えば、ビタミンE酢酸エステル(酢酸トコフェロール)、ビタミンEニコチン酸エステル、ビタミンEコハク酸エステル、ビタミンEリノレン酸エステルなどが挙げられる。なかでも酢酸トコフェロール(酢酸d−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール等)が好ましい。なお、本発明のビタミンEは、化学合成品でも、天然物から抽出されたものでもよい。
上記ビタミンEは1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
ビタミンEの本発明の眼科用組成物中の配合量は、通常0.001 〜0.5w/v%、好ましくは0.01〜0.25w/v%、特に好ましくは0.01〜0.1w/v%である。配合量が少なすぎると、充分な効果が得られない場合があり、多すぎてもそれ以上の効果の増大は見られず、また使用感が損なわれる場合がある。
本発明の水溶性高分子は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、それらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等)、コラーゲン、キサンタンガムなどの多糖、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースなどの水溶性セルロース誘導体や、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムなどの合成水溶性合成高分子なども使用できる。なかでも、多糖(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などの酸性ムコ多糖、アルギン酸、それらの塩、コラーゲン、キサンタンガムなど)が好適である。
上記水溶性高分子は、通常、組成物中に0.001〜10w/v%が好ましく、より好ましくは0.01〜5w/v%、より好ましくは0.02〜2w/v%の範囲である。配合量が少なすぎると、充分な効果が得られない場合があり、多すぎてもそれ以上の効果の増大は見られず、また使用感が損なわれる場合がある。また、水溶性高分子の分子量については特に限定はないが、ヒアルロン酸(塩)の例として、平均分子量が50万〜500万の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは60〜400万、特に好ましくは60〜250万である。
本発明の眼科用組成物には、上述した必須成分の他、眼科用組成物に配合可能な各種成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。それらの成分としては、各種薬物、各種添加剤(緩衝剤、安定化剤、溶解補助剤、等張化剤、防腐剤、清涼化剤、pH調整剤等)が挙げられ、残部を水とする水性組成物とすることが好ましい。
薬物としては、例えば、充血除去剤(塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリン等)、消炎・収斂剤(メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、グリチルリチン酸二カリウム、アズレンスルホン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、塩化リゾチーム等)、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イソチペンジル、クロルフェニラミンマレイン酸塩等)、水溶性ビタミン類(活性型ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12)アミノ酸類等(L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸、サルファ剤・殺菌剤(イオウ、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール等)、局所麻酔剤(リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸ジブカイン等)等を適宜配合することができる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
本発明の眼科用組成物における上記薬物の含有量は、特に制限されるものではないが、上記製剤に配合できる場合に限られる。通常、組成物全量に対して、0.001〜10w/v%、好ましくは0.003〜5w/v%、より好ましくは0.005〜4w/v%であると好適である。
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、リン酸又はその塩(リン酸一水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)、グルタミン酸又はその塩(グルタミン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、各種アミノ酸、トロメタモール等またはそれらの組合せが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
安定化剤としては、例えば、エデト酸、クエン酸、アスコルビン酸、亜硫酸塩、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
溶解補助剤としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、ポリオキシエチレン(p=60)硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(p=20)ソルビタンモノオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのポロクサマー類のノニオン界面活性剤等が挙げられる。なお、これらの溶解補助剤は単独で配合されていてもよく、又は二種以上組み合わせて配合されていてもよい。
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩類、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール、ブトウ糖,マンニトール,ソルビトール等の糖類等が挙げられる。
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、アクリノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、アルキルポリアミノエチルグリシン、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、クロロブタノール等が挙げられる。
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノール、メントン、ユーカリ油等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
pH調整剤としては、塩酸、硫酸、酢酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
本発明の眼科用組成物の好ましい粘度は、20℃におけるE型粘度計による測定で、1〜200mPa・sが好ましく、より好ましくは 1〜50mPa・sである。
本発明の眼科用組成物は、眼科用として許容されるpH範囲であれば、そのpHが特に制限されるものではなく、通常pH4〜9の範囲が好適であり、より好ましくはpH4.5〜8であり、さらに好ましくはpH5〜7.8である。
本発明の眼科用組成物は、その浸透圧が制限されるものではないが、通常、0.1〜5圧比に調整すると好適であり、0.2〜2圧比に調整すると、より好適である。なお、浸透圧の調整は、通常眼科用組成物において行なわれる方法により、調整することができる。
本発明の眼科用組成物は形態が特に制限されるものではなく、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液等として好ましく使用され、特に点眼剤、洗眼剤が好適である。
本発明の眼科用組成物は、その調製方法が特に制限されるものではなく、常法に準じて調製することができる。
本発明の眼科用組成物は眼科的に許容される範囲であれば投与量が特に制限されるものではないが、例えば点眼剤として用いる場合、通常、1回量1〜3滴を1日4〜6回投与することが好ましい。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
表1に示す組成で点眼剤を調製し(配合量:g/100mL、但しビタミンAはIU/100mL)、以下に示す試験1〜3を行った。
<試験1>ビタミンA(レチノイン酸)の安定性評価試験
表1に示す組成をそれぞれ容器に充填し、40℃ 75%RH(相対湿度)で保存する加速試験を1ヵ月間行ない、レチノイン酸の残存率を測定した(下記の指標に従い表1に記入)。
○ : 〃 90%以上
△ : 〃 80%以上90%未満
× : 〃 80%以下
<試験2>点眼による眼刺激性評価試験
表1に示す組成を点眼容器に無菌的に充填した点眼剤を用いて、5名の専門パネラーによる点眼試験を下記のように実施した。
試験条件:1回1〜3滴、1日4〜6回点眼、3日間連続して点眼
<眼刺激の有無の判定>
○:眼刺激をほとんど感じない(眼刺激を感じたパネラーが0〜1人)
△:眼刺激をわずかに感じる( 眼刺激を感じたパネラーが2〜3人)
×:眼刺激を感じる(眼刺激を感じたパネラーが4人以上)

Figure 2009196903
アスタキサンチン、酢酸トコフェロール及びヒアルロン酸ナトリウムを配合した試験例1では、レチノイン酸の残存率及び眼刺激性が良好であった。
表2〜3に示す組成の点眼剤を調製し、上記試験1、2の評価を行ったところ、いずれも良好な結果が得られた。
Figure 2009196903
Figure 2009196903

Claims (5)

  1. ビタミンA並びにアスタキサンチン及び/またはその誘導体を含有することを特徴とする、眼科用組成物。
  2. ビタミンAが、レチノイン酸、レチノール、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステルから選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の眼科用組成物。
  3. 更に、ビタミンE、水溶性高分子から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1及び2記載の眼科用組成物。
  4. 水溶性高分子が酸性ムコ多糖である請求項3記載の眼科用組成物。
  5. 点眼剤または洗眼剤であることを特徴とする、請求項1〜4記載の眼科用組成物。
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