JP2009192228A - 断片化抗体を標識物質に固定した標識粒子 - Google Patents

断片化抗体を標識物質に固定した標識粒子 Download PDF

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Abstract

【課題】抗原との反応性が高く、非特異吸着を抑制した標識粒子、及び、この標識粒子を使用したイムノクロマトグラフ方法を提供する。
【解決手段】断片化した抗体を化学結合させた標識粒子を用いることで、標識粒子に結合させることによる抗体の反応性の低下、および標識粒子の非特異的吸着を抑制する。該断片化された抗体と該標識粒子の結合が、直接、あるいは親水性ポリマーを介して行われている標識粒子。被験物質と、該被験物質に対する該標識粒子とをこれらの複合体を形成させた状態で多孔性担体上において展開し、該被験物質に対する第二の抗体を有する多孔性担体上の反応部位において該被験物質と該標識粒子を捕捉して該被験物質を検出することを含むサンドイッチイムノクロマトグラフ方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗原との反応性が高く非特異吸着を抑制した標識粒子、及び、この標識粒子を使用したイムノクロマトグラフ方法に関する。
尿、血液等の生体試料中に存在する被検物質の存在を定性的にあるいは定量的に測定する方法として、免疫学的測定方法が汎用されている。その中でも、例えばイムノクロマトグラフィー法は、操作が簡便であり短時間で測定可能であることから、一般的によく利用されている。
イムノクロマトグラフィー法で用いられている免疫反応としては、競合型反応、サンドイッチ型反応が広く使われている。その中でも、イムノクロマトグラフィー法ではサンドイッチ型反応が主流であり、その典型例においては、試料中の抗原よりなる被検出物質を検出するために、以下のような操作が行われる。(1)被検出物質である抗原に対する抗体により感作させた微粒子を固相微粒子としてクロマトグラフ媒体に固定化することにより、あるいはこの抗体そのものをクロマトグラフ媒体に直接固定化することにより、反応部位を有するクロマトグラフ媒体を調整する。(2)一方、標識微粒子に被検出物質と特異的に結合可能な抗体を感作させて感作標的微粒子を調整する。(3)この感作標識微粒子を、試料と共に、クロマトグラフ媒体上でクロマトグラフ的に移動させる。
以上の操作により、クロマトグラフ媒体に形成された反応部位において、固定化された抗体が固定化試薬となり、これに被検出物質である抗原を介して感作標識微粒子特異的に結合し、その結果、感作標識微粒子が反応部位に捕捉されることにより生ずるシグナルの有無または程度を目視で判定することにより、試料中の被検出物質の存在の有無または量を測定する。
このようなイムノクロマトグラフィー法において、標識微粒子を調製するための微粒子としては、コロイド状金属粒子またはコロイド状金属酸化物粒子、コロイド状非金属粒子および染料粒子が用いられている。
従来、抗体を標識粒子に結合させる場合、まず抗体と標識粒子を混合して物理吸着させ、その後標識粒子の露出している部分をタンパク質やポリマーなどでブロッキングするという方法が広く行われている。しかし、このように物理吸着させる場合、結合した抗体の配向がばらばらになり、抗原結合部位が標識粒子側に向いてしまうものが多数存在してしまう。また、粒子に吸着させた時、抗体の構造が変化してしまうものもあると考えられる。このような状態のものは、検出感度の低下や非特異吸着の増加の原因となる。
さらに、イムノクロマトグラフィー法の中には、感度が低いために抗原が検出されない(偽陰性)問題を回避するために、検出シグナルを増幅させる方法が行われる場合がある。しかしこの場合、非特異吸着分子のシグナル増幅により、ノイズが上昇し、抗原がない場合にもシグナルが検出される(偽陽性)問題も生じる場合がある。
特開平7−146280号公報 特開平11−295313号公報 特表2005−512074号公報
これらのような問題点がある状況で、標識粒子を用いた免疫学的測定方法の検出感度を上げるためには、標識粒子に結合させることによる抗体の反応性の低下、および標識粒子の非特異的吸着を抑制することが重要である。本発明では、標識粒子への抗体の配向を一定にすることで、これらの問題を解決し、高感度な免疫学的測定方法を提供することが目的である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、断片化した抗体を化学結合させた標識粒子を用いることで、反応性の向上、及び非特異吸着の抑制ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、断片化された抗体が化学結合で標識物質に固定されている標識粒子が提供される。
好ましくは、該断片化された抗体がFabフラグメント及び/又はFab'フラグメント及び/又はF(ab')2フラグメントである。
好ましくは、該断片化された抗体と該標識粒子の結合が、直接、あるいは親水性ポリマーを介して行われている。
好ましくは、該親水性ポリマーが、エチレングリコール基を少なくとも一部に含む。
好ましくは、前記エチレングリコール基を少なくとも一部に含むポリマーが、ポリエチレングリコール及びその誘導体から選択された少なくとも1種である。
好ましくは、該断片化された抗体と該標識粒子の結合が、抗体のSH基を介して行われている。
好ましくは、該標識物質が金属コロイドである。
好ましくは、該金属コロイドが金コロイド、銀コロイド、または白金コロイドである。
本発明によればさらに、被験物質と、該被験物質に対する該標識粒子とをこれらの複合体を形成させた状態で多孔性担体上において展開し、該被験物質に対する第二の抗体を有する多孔性担体上の反応部位において該被験物質と該標識粒子を捕捉して該被験物質を検出することを含むサンドイッチイムノクロマトグラフ方法において、該標識粒子が上記した本発明の標識粒子であることを特徴とする、イムノクロマトグラフ方法が提供される。
好ましくは、平均粒子サイズが1μm以上20μm以下のサイズを有する標識物質を検出する。
好ましくは、被験物質を検出する際に、銀を含む化合物及び銀イオンのための還元剤を用いて増感することによって検出を行う。
好ましくは、銀を含む化合物及び銀イオンのための還元剤を用いて増感するための反応時間が7分以内である。
好ましくは、検出部位の標識物質の数が1×106/mm3以下である。
好ましくは、標識物質が、金属コロイドである。
本発明により、反応性を向上、および非特異吸着を減少させた断片化抗体固定化標識粒子を作製することができる。これにより、検出感度上昇、および擬陽性の減少を達成することができ、明瞭かつ確実なアッセイ結果を得ることができる。
本発明で使用する断片化された抗体とは、Fabフラグメント及び/又はFab'フラグメント及び/又はF(ab')2フラグメントのことを示す。
抗体は、2つの重鎖と2つの軽鎖とからなり、Y字型の4本鎖構造を基本構造としている。この重鎖と軽鎖がジスルフィド結合で結びついてヘテロダイマーを形成し、さらにこのヘテロダイマー同士が2つのジスルフィド結合で結びついて、Y字型のヘテロテトラマーを形成する。"Y"字の上半分の "V"字の部分をFab領域といい、この2つのFab領域の先端の部分で抗原と結合する。2本の軽鎖と2本の重鎖からなる。重鎖のFab領域とFc部分はヒンジ部でつながっている。左右の重鎖はこのヒンジ部がジスルフィド結合している。このヒンジ部は、公知の方法(酵素処理、あるいは化学処理)によってこのヒンジ部分を切断することができるが、ヒンジ部分の切断部位によって、生成する抗体断片が変わる。Fab領域にヒンジ部のジスルフィド結合が含まれる場合、大きなFabが2個くっついたF(ab')2フラグメント1つと、Fcフラグメント生成する。F(ab')2フラグメントは、ジスルフィド結合部を含むため、2つ分のFabフラグメントよりも構造が大きく、Fabフラグメントと区別するため Fab' フラグメントとしている。F(ab')2フラグメントは、2−メルカプトエチルアミンなどの還元剤で処理することにより、Fab'フラグメントにすることもできる。また、Fab領域にヒンジ部のジスルフィド結合が含まれない場合、2個のFabフラグメントと、1個のFcフラグメントが生成する。さらに、これらの抗体断片は、遺伝子工学的手法を用いても得ることができる。
これらの処理で得られるFabフラグメント及びF(ab')2フラグメント及びFab'フラグメントには抗体結合部位があるが、不要なFcフラグメントが除去されている。従って、抗原検出でこれらのフラグメントを使用することで、非特異吸着が減少しノイズも減少する。そのため、ELISAなどのイムノアッセイでは、完全な抗体分子よりも断片化されたFabフラグメントやF(ab')2フラグメントやFab'フラグメントが用いられる傾向がある。
従来のイムノクロマトグラフィー法では、検出感度が低かったために、非特異吸着によるノイズはあまり問題となっていなかった。しかし最近、酵素などのシグナル増幅により高感度化された結果、非特異吸着分子のシグナル増幅によりノイズが上昇し、偽陽性となる問題が生じる場合もある。本発明では、断片化された抗体フラグメントを用いてイムノクロマトキットを作製することで、完全な抗体分子を用いて作製した場合よりも、非特異吸着の抑制を可能にしている。
本発明では、断片化抗体は、その動物種やサブクラス等によらず使用できる。例えば、本発明に用いることが可能な抗体は、マウスIgG、マウスIgM、ラットIgG、ラットIgM、ウサギIgG、ウサギIgM、ヤギIgG、ヤギIgM、ヒツジIgG、ヒツジIgM等であり、ポリクローナルもしくはモノクローナルの両方に適用可能である。
抗体の部位を特異的かつ化学的に標識粒子に結合させる方法としては特に限定はないが、例えば抗体のヒンジ部のSH基を介して結合させる、抗体の糖鎖を介して抗体を結合させる、または抗体に導入された官能基を介して抗体を結合させるなどの方法があげられる。
例えば抗体のヒンジ部のSH基を利用し、それを介して抗体を担体に固定化する場合を説明する。例えばF(ab')2化のマウス抗体IgG1のヒンジ部においてH鎖がS−S結合しており、それを還元したときに生じるSH基を本発明では固定化に利用する。従ってこの時の抗体は、還元されてFab´にフラグメント化されたものである。通常の抗体の還元では、ヒンジ部のS−S結合のみ還元されてSH基が生じ、他の部位のS−S結合は還元されない。従ってヒンジ部のS−S結合から生じたSH基のみが固定化反応に用いられることとなり、この特定の部位を介して抗体の固定化が行われる。抗体の還元に用いられる還元剤には特に限定はなく、通常用いられるものを使用することができる。
抗体の糖鎖を介して抗体を担体に結合させる場合は、例えばレクチン等を固定化させた担体に、抗体のFc部分に存在する糖鎖を結合させることにより、抗体を固定化することができる。これはレクチンが糖結合性蛋白質だからである。
抗体に導入させた官能基を介して抗体を担体に結合させる場合は、例えば抗体遺伝子又は抗体の抗原認識部分を含む遺伝子に6個のヒスチジンをコードする遺伝子を導入し、大腸菌、酵母、株化細胞などで発現させる。一方、担体表面にNTA(N−(5−amino−1−carboxypentyl)iminodiacetic acid)などを用いてニッケルを固定化し、この状態でヒスチジンを末端に発現させた抗体を加えると、ヒスチジン部分がニッケルに配位するため、特異的かつ一定方向に、担体表面に抗体が固定化されることになる(E. Hochuli, Journal of Chromatography, 1988,444,293(1988))。
本発明では、抗体を標識粒子に直接結合させてもよいし、リンカーを介してもよい。リンカーの一方の端は、抗体と結合するための結合基を持つか、または結合基を導入できるものである。結合基としては、特に限定はないが、抗体のヒンジ部のSH基を介する場合は、マレイミド基、ピリジルジスルフィド基、ナフチルジスルフィド基、活性ハロゲン、チオフタルイミドなどがあげられる。リンカーの例としては、直鎖または分岐のアルキル基やピペラジニル基、4級アンモニウムなどの親水性基を含むもの、またエチレングリコール系化合物などがある。
抗体と標識粒子をリンカーを介して結合させる例として、以下のようなものがある。まず、金コロイド表面にはSH基が出ているので、これとHS−PEGn―COOHのような物質を混合することで、PEG-COOH化した金コロイドが作製できる。これに、EDCとNHSを反応させることで、COOH基をNHSエステル化することができる。このNHSエステルはSH基と反応性が高いので、SH基が存在しているFab'化抗体などと混合することで、Fab'抗体をPEG鎖を介して金コロイドに結合させることができる。
また、リンカーと標識粒子とは、他の物質を介して結合させてもよい。例えば標識粒子とリンカーとの間にリガンド及びそれに対するレセプターを介在させ、それを介して抗体を標識粒子に結合させてもよい。例えばリンカーの端にリガンド(またはレセプター)を結合させ、標識粒子表面にはリガンドに対するレセプター(またはリガント)を結合させ、その両者を結合させることにより抗体の固定化を行うことができる。
リガンド及びレセプターとしては特に限定はないが、例えばアビジン−ビオチン、インシュリンとインシュリンレセプター、甲状腺刺激ホルモン(TSH)とTSHレセプターなどのホルモンとそのレセプター、アンヒドロキモトリプシンとC末端アミノ酸としてトリプトファン、ズブチリシンとズブチリシンインヒビター等のプロテアーゼとそのインヒビター、アンヒドロトリプシンとC末端アミノ酸としてアルギニン、リジンを持つペプチドなどのプロテアーゼとその基質、チロシン、フェニルアラニンを持つペプチド、相補的な配列を持つ2種類のDNAなどがあげられる。
またリガンド及びレセプターばかりでなく、高分子物質を標識粒子とリンカーとの間に介在させて抗体の固定化を行ってもよい。例えば、高分子物質をあらかじめ標識粒子に結合させておき、そこにリンカーを結合させることもできる。高分子物質としては、例えばタンパク質があげられ、具体的にはウシ血清アルブミン、カゼインなどが使用できる。そのほかにも、糖鎖、ナイロンなどの合成高分子などがあげられる。
本発明では、標識粒子として、例えば、金属コロイド標識又は金属硫化物標識を用いる。前記金属コロイド標識又は金属硫化物標識としては、特に限定されるものではなく、金属コロイド標識としては、例えば、白金コロイド、金コロイド、又は銀コロイドを挙げることができ、金属硫化物標識としては、例えば、鉄、銀、鉛、銅、カドミウム、ビスマス、アンチモン、錫、又は水銀の各硫化物などがある。例えば、金コロイドと銀コロイドは適当な粒径において、金コロイドは赤色、銀コロイドは黄色を示す点で好ましい。金属コロイドの粒径としては、約1〜500nmが好ましく、特に強い色調が得られる5〜100nmがさらに好ましい。金属コロイドとして金コロイド粒子を用いる場合には、市販のものを用いてもよい。あるいは、常法、例えば塩化金酸をクエン酸ナトリウムで還元する方法(Nature Phys. Sci., vol.241, 20, (1973)等 )により金コロイド粒子を調製することができる。その他にも、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体のような有機高分子のラテックス着色粒子、色素を含有したリポゾームやマイクロカプセル等も標識粒子として使用することができる。標識粒子(又はコロイド)の平均粒径は、0.02〜10μmの範囲が好ましい。
本発明の断片化抗体固定化標識粒子は、特に免疫学的測定用の標識粒子に好ましく用いられる。それは、短時間化が要求される診断分野の測定に用いられるためには、反応性が高く非特異吸着が抑制された標識粒子が必要だからである。免疫学的測定の代表的なものの1つとして、イムノクロマト法がある。本発明は、イムノクロマト法、及びイムノクロマトキットでも使用することができ、構成は以下の通りである。
1.イムノクロマト
一般に、イムノクロマトグラフ法とは以下のような手法で被分析物を簡便・迅速・特異的に判定・測定する手法である。すなわち、被分析物と結合可能な固定化試薬(抗体、抗原等)を含む少なくとも1つの反応部位を有するクロマトグラフ担体を固定相として用いる。このクロマトグラフ担体上で、分析対象物結合可能な試薬によって修飾された検出用標識物が分散されてなる分散液を移動層として前記クロマトグラフ担体中をクロマトグラフ的に移動させると共に、前記分析対象物と検出用標識物とが特異的に結合しながら、前記反応部位まで到達する。前記反応部位において、前記分析対象物と検出用標識物の複合体が前記固定化試薬に特異的結合することにより、被分析液中に分析対象物が存在する場合にのみ、前記固定化試薬部に検出用標識物が濃縮されることを利用し、それらを目視または適当な機器を用いて被分析液中に被検出物が存在することを定性および定量的に分析する手法である。
本発明におけるイムノクロマトグラフ方法を行う装置は、銀を含む化合物及び銀イオンのための還元剤を内蔵していてもよく、前記固定化試薬に結合した前記分析対象物と検出用標識物の複合体を核として増幅反応によって、シグナルを増幅し、結果として高感度化を達成することができる。本発明によれば、従来のイムノクロマトグラフ方法におけるような外部より増幅のための金属イオンや還元剤溶液を供給することを必要とせず、一段と簡便で、迅速な高感度イムノクロマトグラフを行うことができる。
2.被検試料
本発明のイムノクロマトグラフ方法で分析することのできる被検試料としては、分析対象物を含む可能性のある試料である限り、特に限定されるものではなく、例えば、生物学的試料、特には動物(特にヒト)の体液(例えば、血液、血清、血漿、髄液、涙液、汗、尿、膿、鼻水、又は喀痰)若しくは排泄物(例えば、糞便)、臓器、組織、粘膜や皮膚、それらを含むと考えられる搾過検体(スワブ)、うがい液、又は動植物それ自体若しくはそれらの乾燥体を挙げることができる。
3.被検試料の前処理
本発明のイムノクロマトグラフ方法では、前記被検試料をそのままで、あるいは、前記被検試料を適当な抽出用溶媒を用いて抽出して得られる抽出液の形で、更には、前記抽出液を適当な希釈剤で希釈して得られる希釈液の形、若しくは前記抽出液を適当な方法で濃縮した形で、用いることができる。前記抽出用溶媒としては、通常の免疫学的分析法で用いられる溶媒(例えば、水、生理食塩液、又は緩衝液等)、あるいは、前記溶媒で希釈することにより直接抗原抗体反応を実施することができる水混和性有機溶媒を用いることもできる。
4.構成
本発明のイムノクロマトグラフ方法において使用することのできるイムノクロマトグラフ用ストリップとしては、通常のイムノクロマトグラフ法に用いることができるイムノクロマトグラフ用ストリップである限り、特に限定されるものではない。例えば、図1に模式的に従来のイムノクロマトグラフ用ストリップの平面図を模式的に示す。図2に図1で示されたイムノクロマトグラフキットの縦断面を模式的に示す縦断面図である。図3は本発明で用いることができるイムノクロマトグラフ用ストリップの別の例の断面図を模式的に示す。
本発明のイムノクロマトグラフ用ストリップ10は、展開方向(図1において矢印Aで示す方向)の上流から下流に向かって、試料添加パッド5、標識化物質保持パッド(例えば金コロイド抗体保持パッド)2、クロマトグラフ担体(例えば抗体固定化メンブレン)3、及び吸収パッド4がこの順に、粘着シート5上に配置されている。
前記クロマトグラフ担体3は、補足部位3aを有し、分析対象物と特異的に結合する抗体又は抗原を固定化した領域である検出ゾーン(検出部と記載することもある)31を有し、所望により、コントロール用抗体又は抗原を固定化した領域であるコントロールゾーン(コントロール部と記載することもある)32を更に有する。検出ゾーンは、1つのクロマトグラフ担体に2つ以上設けることも可能である。さらに、検出ゾーン31およびコントロールゾーン32は、増幅のための有機銀塩と銀イオンのための還元剤を含有する。
前記標識化物質保持パッド2は、標識化物質を含む懸濁液を調製し、その懸濁液を適当な吸収パッド(例えば、グラスファイバーパット)に塗布した後、それを乾燥することにより調製することができる。
前記試料添加パッド1としては、例えばグラスファイバーパットを用いることができる。
4−1.検出用標識物
本発明方法によれば、検出用標識物として、断片化された抗体を化学結合で固定した標識粒子を用いる。
4−2.抗体
本発明のイムノクロマトグラフ方法においては、分析対象物に対して特異性を有する抗体として、特に限定されるものではないが、例えば、その分析対象物によって免疫された動物の血清から調製する抗血清、抗血清から精製された免疫グロブリン画分、またはその分析対象物によって免疫された動物の脾臓細胞を用いる細胞融合によって得られるモノクローナル抗体の断片[例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、又はFv]を用いることができる。本発明では、その動物種やサブクラス等によらず使用できる。また、これらの抗体の調製は、常法により行うことができる。
断片化抗体の作製方法として代表的なものは、次の2つである。まず、抗体をパパイン酵素で処理した場合、2つのFabフラグメントと1つのFcフラグメントに分解される。また、抗体をペプシン酵素で処理した場合、Fabフラグメントが2つ結合したF(ab')2と断片化されたFcフラグメントに分解される。これら以外にも、断片化抗体を作製する酵素としては、フィシン、リシルエンドペプチダーゼ、V8プロテアーゼ、ブロメライン、クロストリパイン、メタロエンドペプチダーゼ、パパインを活性化処理した活性化パパインなどがある。更に、F(ab')2は適切な還元剤で処理することにより、Fab'にすることもできる。抗体の還元に用いられる還元剤には特に限定はなく、通常用いられるものを使用することができる。例えば、メルカプトエタノール、メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトールなどがあげられる。これらの処理で得られるFabフラグメントとF(ab')2フラグメント及びFab'フラグメントには抗体結合部位があるが、不要なFcフラグメントが除去されている。
4−3.クロマトグラフ担体
クロマトグラフ担体としては、多孔性担体が好ましい。特に、ニトロセルロース膜、セルロース膜、アセチルセルロース膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、ナイロン膜、ガラス繊維、不織布、布、または糸等が好ましい。
通常クロマトグラフ担体の一部に検出用物質を固定化させて検出ゾーンを作製する。検出用物質は、検出用物質をクロマトグラフ担体の一部に物理的または化学的結合により直接固定化させてもいいし、検出用物質をラテックス粒子などの微粒子に物理的または化学的に結合させ、この微粒子をクロマトグラフ担体の一部にトラップさせて固定化させてもいい。本発明では、断片化抗体により検出ゾーンへの標識の非特異吸着を抑制しているので、断片化抗体を使用しない場合と比較して多量の検出用物質を検出ゾーンに固定することもできる。なお、クロマトグラフ担体は、検出用物質を固定化後、不活性蛋白による処理等により非特異的吸着防止処理をして用いるのが好ましい。
4−4.試料添加パッド
試料添加パッドの材質は、セルロース濾紙、ガラス繊維、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、及び綿布等の均一な特性を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。試料添加部は、添加された分析対象物を含む試料を受入れるだけでなく、試料中の不溶物粒子等を濾過する機能をも兼ねる。また、分析の際、試料中の分析対象物が試料添加部の材質に非特異的に吸着し、分析の精度を低下させることを防止するため、試料添加部を構成する材質は、予め非特異的吸着防止処理して用いることもある。
4−6.標識化物質保持パッド
標識化物質保持パッドの素材としては、例えば、セルロース濾紙、グラスファイバー、及び不織布等が挙げられ、前述のように調製した検出用標識物を一定量含浸し、乾燥させて作製する。
4−7.吸収パッド
吸収パッドは、添加された試料がクロマト移動により物理的に吸収されると共に、クロマトグラフ担体の検出部に不溶化されない未反応標識物質等を吸収除去する部位であり、セルロ−ス濾紙、不織布、布、セルロースアセテート等吸水性材料が用いられる。添加された試料のクロマト先端部が吸収部に届いてからのクロマトの速度は、吸収材の材質、大きさなどにより異なるので、その選定により分析対象物の測定に合った速度を設定することができる。
5.免疫検査の方法
以下、本発明のクロマトグラフ方法について、その具体的な実施態様であるサンドイッチ法について説明する。サンドイッチ法では、特に限定されるものではないが、例えば、以下の手順により分析対象物の分析を実施することができる。まず、分析対象物(抗原)に対して特異性を有する第1抗体及び第2抗体を、先に述べた方法により予め調製しておく。また、第2抗体を、予め標識化しておく。第1抗体を、適当な不溶性薄膜状支持体(例えば、ニトロセルロ−ス膜、ガラス繊維膜、ナイロン膜、又はセルロ−ス膜等)上に固定し、分析対象物(抗原)を含む可能性のある被検試料(又はその抽出液)と接触させると、その被検試料中に分析対象物が存在する場合には、抗原抗体反応が起きる。この抗原抗体反応は、通常の抗原抗体反応と同様に行なうことができる。前記抗原抗体反応と同時又は反応後に、過剰量の標識化第2抗体を更に接触させると、被検試料中に分析対象物が存在する場合には、固定化第1抗体と分析対象物(抗原)と標識化第2抗体とからなる免疫複合体が形成される。
サンドイッチ法では、固定化第1抗体と分析対象物(抗原)と第2抗体との反応が終了した後、前記免疫複合体を形成しなかった標識化第2抗体を除去し、続いて、例えば、不溶性薄膜状支持体における固定化第1抗体を固定した領域に、金属イオン及び還元剤を供給することにより、前記免疫複合体を形成した標識化第2抗体の標識からの信号を増幅する。あるいは、標識化第2抗体に金属イオン及び還元剤を添加し、同時に薄膜状支持体に添加することにより、前記免疫複合体を形成した標識化第2抗体の標識からの信号を増幅する。
6.増幅液
本発明において、使用することのできる増幅液とは、写真化学の分野での一般書物(例えば、「改訂写真工学の基礎-銀塩写真編-」(日本写真学会編、コロナ社)、「写真の化学」(笹井明、写真工業出版社)、「最新処方ハンドブック」(菊池真一他、アミコ出版社))に記載されているような、いわゆる現像液のことである。
本発明では、液中に銀イオンを含み、液中の銀イオンが現像の核となるような金属コロイド等を中心に還元される、いわゆる物理現像液であれば、どんなものでも増幅液として用いることができる。
7.銀を含む化合物
本発明で用いる銀含有化合物としては、有機銀塩、無機銀塩、もしくは銀錯体を用いることができる。
本発明に用いられる有機銀塩は、還元可能な銀イオンを含む有機化合物である。本発明で用いられる、還元可能な銀イオンを含む化合物としては、有機銀塩、無機銀塩、もしくは銀錯体など何でも良い。例えば、硝酸銀、酢酸銀、乳酸銀、酪酸銀などが知られている。
また還元剤の存在下で50℃以上まで加熱されると、光に比較的に安定な金属銀を形成する銀塩または配位化合物であってもよい。
本発明に用いられる有機銀塩は、アゾ−ル化合物の銀塩およびメルカプト化合物の銀塩より選ばれる化合物であってもよい。好ましくは、アゾ−ル化合物としては含窒素ヘテロ環化合物であり、より好ましくはトリアゾ−ル化合物およびテトラゾ−ル化合物である。メルカプト化合物は、メルカプト基またはチオン基を分子内に少なくとも1つ有する化合物である。
本発明における窒素含有ヘテロ環化合物の銀塩は、好ましくはイミノ基を有する化合物の銀塩である。代表的な化合物としては次にあげるものであるが、これらの化合物に限定されることはない。1,2,4−トリアゾ−ルの銀塩、又はベンゾトリアゾ−ルおよびその誘導体の銀塩(例えば、メチルベンゾトリアゾ−ル銀塩又は5−クロロベンゾトリアゾ−ル銀塩)、米国特許第4,220,709に記載されているフェニルメルカプトテトラゾ−ルのような1H−テトラゾ−ル化合物、米国特許第4,260,677に記載のイミダゾ−ルおよびイミダゾ−ル誘導体。この種の銀塩のうち、特に好ましい化合物はベンゾトリアゾ−ル誘導体の銀塩、又はこれらの2つ以上の混合物である。
本発明に用いられる窒素含有ヘテロ環化合物の銀塩として最も好ましくは、ベンゾトリアゾ−ル誘導体の銀塩である。
本発明におけるメルカプト基またはチオン基を持つ化合物は、好ましくは5つまたは6つの原子を含むヘテロ環化合物である。この場合に環中の原子の少なくとも1つは窒素原子であり、その他の原子は炭素、酸素、硫黄原子である。このようなヘテロ環化合物としてはトリアゾ−ル類オキサゾ−ル類、チアゾ−ル類、チアゾリン類、イミダゾ−ル類、ジアゾ−ル類、ピリジン類、およびトリアジン類が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
メルカプト基またはチオン基を持つ化合物の銀塩のうち代表的な化合物を以下に挙げるが、これらに限定されるわけではない。
3−メルカプト−4−フェニル−1,2,4−トリアゾ−ルの銀塩、2−メルカプト−ベンズイミダゾ−ルの銀塩、2−メルカプト−5−アミノチアゾ−ルの銀塩、メルカプトトリアジンの銀塩、2−メルカプトベンゾオキサゾ−ルの銀塩、および米国特許第4,123,274記載の化合物の銀塩。
本発明におけるメルカプト基またはチオン基を持つ化合物としては、ヘテロ環を含まない化合物を用いることも出来る。ヘテロ環を含まないメルカプトまたはチオン誘導体としては、総炭素数が10以上の脂肪族または芳香族炭化水素化合物が好ましい。
ヘテロ環を含まないメルカプトまたはチオン誘導体のうち有用な化合物としては以下に挙げるものがあるが、これらに制限されるわけではない。
チオグリコ−ル酸銀塩(例えば炭素原子数12から22までのアルキル基を持つS−アルキルチオグリコ−ル酸の銀塩)、ジチオカルボン酸の銀塩(たとえばジチオ酢酸の銀塩又はチオアミドの銀塩)
カルボン酸の銀塩を持つ有機化合物もまた好ましく用いられる。例えば、直鎖のカルボン酸である。具体的には、C数6〜22のカルボン酸が好ましく用いられる。加えて芳香族カルボン酸の銀塩である。芳香族カルボン酸とその他のカルボン酸の例として、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されることはない。
置換または無置換の安息香酸銀(例えば3,5−ジヒドロキシ安息香酸銀、o−メチル安息香酸銀、m−メチル安息香酸銀、p−メチル安息香酸銀、2,4−ジクロロ安息香酸銀、アセタミド安息香酸銀、およびp−フェニル安息香酸銀)、タンニン酸銀、フタル酸銀、テレフタル酸銀、サリチル酸銀、フェニル酢酸銀、又はピロメリット酸銀。
本発明においては米国特許第3,330,663に記載されたようなチオエ−テル基を含む脂肪酸銀もまた好ましく用いられる。エ−テルまたはチオエ−テル結合を含む炭化水素鎖を有するか、α−位(炭化水素基の上)またはオルト位(芳香族基の上)に立体的に遮蔽された置換基を有する可溶性のカルボン酸銀も用いることができる。これらは、塗布溶媒中で溶解性が向上し、光散乱が少ない塗布物になる。
そのような銀のカルボン酸塩は、米国特許第5,491,059に記載されている。ここで記載されている銀塩の混合物はどれでも、本発明においては必要に応じて使うことができる。
米国特許第4,504,575に記載のスルホン酸塩の銀塩もまた、本発明の態様においては使用することが出来る。
さらに、本発明においては例えば米国特許第4,761,361と米国特許第4,775,613に記載のアセチレンの銀塩も使用することが出来る。米国特許第6,355,408に記載のコア−シェル型銀塩として提供されることもできる。これらの銀塩は、一つ以上の銀塩から成るコアと一つ以上の異なる銀塩からなるシェルで構成される。
本発明中において、非感光性銀源としてもう一つ有用なものは米国特許6472131に記載の2つの異なった銀塩から構成される銀の二量体合成物である。そのような非感光性の銀の二量体合成物は2つの異なる銀塩から成る。前記二種の銀塩が直鎖の飽和炭化水素基を銀の配位子として含む場合にはそれら配位子の炭素原子数の差が6以上である。
有機銀塩は、銀として一般に0.001モル/m2〜0.2モル/m2、好ましくは0.001モル/m2〜0.05モル/m2含有される。
本発明に用いられる無機銀塩、もしくは銀錯体は、還元可能な銀イオンを含む化合物である。好ましくは、還元剤の存在下で50℃以上まで加熱されると、光に比較的に安定な金属銀を形成する無機銀塩、もしくは銀錯体である。
本発明に用いられる無機銀塩は、例えば、ハロゲン化銀(塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、ヨウ化銀、塩ヨウ化銀、塩ヨウ臭化銀、およびヨウ臭化銀等)、チオ硫酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩等)の銀塩、チオシアン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩等)の銀塩、および亜硫酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩等)の銀塩等が挙げられる。
本発明に用いられる無機銀塩は、好ましくはハロゲン化銀である。
本発明に用いられるハロゲン化銀の粒子形成方法は、写真業界でよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、及び米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物(例えば、硝酸銀)及びハロゲン供給化合物を添加することにより調製される。
ハロゲン化銀の粒子サイズは、検査ノイズを小さくする上で微細であることが好ましく、具体的には0.20μm以下、より好ましくは0.10μm以下、更に好ましくはナノ粒子の範囲がよい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子の投影面積(平板粒子の場合は主平面の投影面積)と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
チオ硫酸銀、チオシアン酸銀、および亜硫酸銀等もハロゲン化銀と同様の粒子形成方法により銀供給化合物(例えば、硝酸銀)及びチオ硫酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩等)の銀塩、チオシアン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩等)の銀塩、および亜硫酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩等)を混合することにより調製される。
また、一般に増幅液中の銀イオン濃度が高すぎると、増幅液中で銀イオンが還元されてしまうので、それを防ぐ為に錯化剤を用いて銀イオンが錯体を形成するようにしてもよい。このような錯化剤としては、グリシン、ヒスチジンのようなアミノ酸及び複素環式塩基や、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、プリン、ピリジン、アミノピリジン、ニコチンアミド、キノリン、その他類似の芳香族複素環式系が知られており、例えばヨーロッパ特許第0293947号中に記載されている。また、錯塩形成剤としては、チオ硫酸塩やチオシアン酸塩なども用いることができる。本発明に用いられる銀錯体の具体例としては、例えば、チオ硫酸塩と銀イオンの錯体、チオシアン酸塩と銀イオンの錯体、またはこれらの複合銀錯体、および、シュガーチオン誘導体と銀イオンの錯体、環状イミド化合物(例えば、ウラシル、ウラゾール、5−メチルウラシル、バルビツール酸など)と銀イオンの錯体、1,1−ビススルホニルアルカン類と銀イオンの錯体である。本発明に用いられる好ましい銀錯体は、環状イミド化合物(例えば、ウラシル、ウラゾール、5−メチルウラシル、バルビツール酸など)と銀イオンの錯体である。
本発明に用いられる銀錯体は、通常知られている塩形成反応により調製することができる。例えば、水もしくは水混和性溶媒中で水溶性銀供給体(例えば、硝酸銀)と銀錯体に対応する配位子化合物とを混合することにより調製される。調製された銀錯体は、透析法もしくは限外濾過法などの公知の脱塩方法により副成する塩類を除去して用いることが出来る。
無機銀塩、もしくは銀錯体は、銀として一般に0.001モル/m2〜0.2モル/m2、好ましくは0.01モル/m2〜0.05モル/m2含有される。
また、無機銀塩または銀錯体を使用する場合は、無機銀塩もしくは銀錯体の溶剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる溶剤としては、上記の銀錯体の項で説明した銀錯体を形成する配位子として用いられる化合物が好ましく用いられる。例えば、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、シュガーチオン誘導体、環状イミド化合物、および1,1−ビススルホニルアルカン類糖である。本発明に用いられる溶剤として、より好ましくは、ウラシル、ウラゾール、5−メチルウラシル、バルビツール酸などの環状イミド化合物である。本発明に用いられる溶剤は、銀イオンに対してモル比で0.1モル〜10モルの範囲で好ましく用いられる。
8.銀イオンのための還元剤
銀イオンのための還元剤は、銀(I)イオンを銀に還元することができる無機・有機のいかなる材料、またはその混合物でも用いることができる。
無機還元剤としては、Fe2+、V2+、Ti3+、などの金属イオンで原子価の変化し得る還元性金属塩、還元性金属錯塩が知られており、本発明に用いることができる。無機還元剤を用いる際には、酸化されたイオンを錯形成するか還元して、除去するか無害化する必要がある。例えば、Fe+2を還元剤として用いる系では、クエン酸やEDTAを用いて酸化物であるFe3+の錯体を形成し、無害化することができる。
本系ではこのような無機還元剤を用いることが好ましく、より好ましくはFe2+の金属塩が好ましい。
また、湿式のハロゲン化銀写真感光材料に用いられる現像主薬(例えばメチル没食子酸塩、ヒドロキノン、置換ヒドロキノン、3−ピラゾリドン類、p−アミノフェノール類、p−フェニレンジアミン類、ヒンダードフェノール類、アミドキシム類、アジン類、カテコール類、ピロガロール類、アスコルビン酸(またはその誘導体)、およびロイコ色素類)、および本分野での技術に熟練しているものにとって明らかなその他の材料は、たとえば米国特許第6,020,117号(バウアーほか)で記述されるように、本発明において用いることができる。
「アスコルビン酸還元剤」はアスコルビン酸、その誘導体との複合体を意味する。アスコルビン酸還元剤は下記のように多くの文献において記載されており、例えば米国特許第5,236,816号(プロルほか)とその中で引用されている文献が挙げられる。
本発明における還元剤として、アスコルビン酸還元剤が好ましい。有用なアスコルビン酸還元剤は、アスコルビン酸と類似物、異性体とその誘導体を含む。そのような化合物は含む以下にあげるものであるが、これらに限定されるわけではない。
D−またはL−アスコルビン酸とその糖誘導体(例えばγ−ラクトアスコルビン酸、グルコアスコルビン酸、フコアスコルビン酸、グルコヘプトアスコルビン酸、マルトアスコルビン酸)、アスコルビン酸のナトリウム塩、アスコルビン酸のカリウム塩、イソアスコルビン酸(またはL−エリスロアスコルビン酸)、その塩(例えばアルカリ金属塩、アンモニウム塩または当技術分野において知られている塩)、エンジオールタイプのアスコルビン酸、エナミノールタイプのアスコルビン酸、チオエノ−ルタイプのアスコルビン酸、たとえば米国特許第5,498,511、EP−A−0585,792、EP−A−0573700、EP−A−0588408、米国特許第5,089,819、米国特許第5,278,035、米国特許第5,384,232、米国特許第5,376,510、JP7−56286、米国特許第2,688,549、およびReseach Disclosure37152(1995年3月)に記載されているような化合物。
これらの化合物のうち、好ましくは、D、LまたはD,L−アスコルビン酸(そして、そのアルカリ金属塩)若しくはイソアスコルビン酸(またはそのアルカリ金属塩)であり、ナトリウム塩が好ましい塩である。必要に応じてこれらの還元剤の混合物を用いることができる。
ヒンダードフェノール類も単独で、または一つ以上の硬調化還元剤とコントラスト強化剤と組み合わせて好ましく用いられる。
ヒンダードフェノールは、ベンゼン環上に一つだけの水酸基を有し、少なくとも一つの置換基を水酸基に対してオルト位に有する化合物である。ヒンダードフェノール還元剤は複数の水酸基を別々のベンゼン環に持っていれば、複数の水酸基を有していて構わない。
ヒンダードフェノール還元剤は、たとえば、ビナフトール類(すなわちジヒドロキシビナフトール類)、ビフェノール類(すなわちジヒドロキシビフェノール類)、ビス(ヒドロキシナフチル)メタン類、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類(すなわちビスフェノール類)、ヒンダ−ドフェノール類、およびヒンダードナフトール類が挙げられ、これらは置換されていて構わない。
代表的なビナフトール類は以下に挙げられる化合物であるが、これらに制限されることはない。
1,1’−ビ−2−ナフトール、1,1’−ビ−4−メチル−2−ナフトール、および米国特許第3,094,417号と米国特許第5,262,295号に記載されている化合物。
代表的なビフェノール類は以下に挙げられる化合物であるが、これらに制限されることはない。
2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4−メチル−6−n−ヘキシルフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、および米国特許第5,262,295号に記載の化合物。
代表的なビス(ヒドロキシナフチル)メタン類は以下に挙げられる化合物であるが、これらに制限されることはない。
4,4’−メチレンビス(2−メチル−1−ナフト−ル)、米国特許第5,262,295号に記載の化合物。
代表的なビス(ヒドロキシフェニル)メタン類は以下に挙げられる化合物であるが、これらに制限されることはない。
ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン(CAO−5)、1,1’−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン(NONOXまたはPERMANAX WSO)、1,1’−ビス(3,5−di−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4’−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノ−ル)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノ−ル)(LOWINOX 221B46)、2,2’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、および米国特許第5,262,295号に記載の化合物。
代表的なヒンダードフェノールは以下に挙げられる化合物であるが、これらに制限されることはない。
2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジクロロフェノール、2,6−ジメチルフェノール、および2−t−ブチル−6−メチルフェノール。
代表的なヒンダードナフトールは以下に挙げられる化合物であるが、これらに制限されることはない。
1−ナフトール、4−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、4−クロロ−1−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、および米国特許第5,262,295号に記載の化合物。
その他、下記の化合物の還元剤として開示されている。
アミドキシム類(例えばフェニルアミドキシム)、2−チエニルアミドキシム、p−フェノキシフェニルアミドキシム、脂肪族カルボン酸アリルヒドラジドとアスコルビン酸の組み合わせ(例えば2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)−プロピオニル−β−フェニルヒドラジドとアスコルビン酸の組み合わせ)、ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミン、レダクトンおよびヒドラジンの少なくとも一方の組み合わせ(たとえばヒドロキノンとビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミンの組み合わせ)、ピペリジ−4−メチルフェニルヒドラジン、ヒドロキサム酸(例えばフェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸、およびo−アラニンヒドロキサム酸)、アジンとスルホンアミドフェノール類の組合せ(たとえばフェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール)、α−シアノフェニル酢酸誘導体(例えばエチル−α−シアノ−2−メチルフェニル酢酸、エチル−α−シアノフェニル酢酸)、ビス−o−ナフトール(例えば2,2’−ジヒドロキシ−1−ビナフチル、6,6’−ジブロモ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン)。
ビス−ナフト−ルと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ(例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン)、5−ピラゾロン(例えば3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン)、レダクトン類(例えばジメチルアミノヘキソ−スレダクトン、アンヒドロジヒドロ−アミノヘキソ−スレダクトン、またはアンヒドロジヒドロ−ピペリドン−ヘキソースレダクトン)、インダン−1,3−ジオン類(例えば2−フェニルインダン−1,3−ジオン)、クロマン類(例えば2,2−ジメチル−7−t−ブチル−6−ヒドロキシクロマン)、1,4−ジヒドロキシピリジン類(例えば2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルベトキシ−1,4−ジヒドロピリジン)、アスコルビン酸誘導体(1−アスコルビン酸パルミテ−ト、アスコルビン酸ステアレ−ト)、不飽和アルデヒド(ケトン)、3−ピラゾリドン類。
本発明に用いることのできる還元剤として、米国特許第5,464,738に記載されるようなスルホニルヒドラジンを含む置換ヒドラジンがある。この他の有用な還元剤は、例えば、米国特許第3,074,809、米国特許第3,094,417、米国特許第3,080,254および米国特許第3,887,417に記載されている。米国特許第5,981,151に記載の補助還元剤もまた有用である。
還元剤として、ヒンダードフェノール還元剤とその他以下に挙げるような様々な補助還元剤から選ばれる化合物と組み合わせて用いられる場合もある。さらにコントラスト強化剤を加えた3成分の還元剤の混合物もまた有用である。補助還元剤としては米国特許第5,496,695に記載のトリチルヒドラジド、ホルミル−フェニルヒドラジドを用いることができる。
コントラスト強化剤を還元剤とともに用いることができる。コントラスト強化剤としては例えば、下記の化合物が有用であるが、これらに限定されるわけではない。
ヒドロキシルアミン(ヒドロキシルアミンとアルキルとアリ−ル置換誘導体を含む)、米国特許第5,545,505に記載のアルカノールアミンとフタル酸アンモニウム、米国特許第5,545,507に記載のヒドロキサム酸化合物、米国特許第5,558,983に記載のN−アシルヒドラジン化合物、米国特許第5,637,449に記載の水素原子ドナー化合物。
全ての還元剤と有機銀塩の組み合わせが等しく効果があるわけではない。好ましい組合せの一つは、有機銀塩としてベントリアゾ−ルの銀塩又はその置換化合物、又はその混合物と、還元剤としてアスコルビン酸型還元剤である。
本発明における還元剤は、有機銀中の銀に対して1質量%〜10質量%(乾燥質量)含まれる。多層構造において、還元剤が有機銀塩を含む層以外の層に加えられるならば、わずかに割合は高く、およそ2質量%〜15質量%がより望ましい。補助還元剤は、およそ0.001質量%〜1.5質量%(乾燥重)含まれる。
9.その他の助剤
増幅液のその他の助剤としては、緩衝剤、防腐剤、例えば酸化防止剤または有機安定剤、速度調節剤を含む場合がある。緩衝剤としては、例えば、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウムまたはこれらのどれかの塩、またはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いた緩衝剤、その他一般的化学実験に用いられる緩衝剤を用いることができる。これら緩衝剤を適宜用いて、その増幅液に最適なpHに調整することができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
以下の方法で、各イムノクロマトキットを作製した。
<(1)Fab'化抗インフルエンザ抗体の作製>
1. F(ab') 2 化抗インフルエンザA型ウイルス抗体の作製
抗インフルエンザA型ウイルス抗体(品番7307、メディックスバイオケミカ社)を使用し、ImmunoPureR IgG1 Fab and F(ab')2 Preparation Kit(品番 44880、ピアース社)を用いて作製した。
2. F(ab') 2 化抗インフルエンザB型ウイルス抗体の作製
抗インフルエンザB型ウイルス抗体(品番1131(ヴァイロスタット社))とリシルエンドペプチダーゼ(品番125-05061、和光純薬)をモル比で1:100となるように50 mM Tris-Hclバッファー(pH 8.5)で希釈し,37℃で3時間反応させた。その後、ImmunoPure (A) IgG Purification Kit(品番 44667、ピアース社)で F(ab')2化抗体を精製した。
3. Fab'化抗インフルエンザウイルス抗体の作製
A型B型両方のF(ab')2化インフルエンザ抗体をそれぞれ、0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH6.0)、5mM EDTAで、一晩4℃で透析した。この透析済み抗体を0.5mg/mLに調整し、終濃度6mg/mLとなるようにメルカプトエチルアミンを加えて室温で1時間反応させることで、抗体をFab'化した。この反応物をAmiconUltra-4(MWCO 30,000)を用いて、PBSバッファーにバッファー交換し、未反応のメルカプトエチルアミンの除去を行った。
<(2)抗体修飾金コロイドの作製>
比較例1:Fab'化抗体を物理吸着させた金コロイドの作製
1.SH基をブロックしたFab'化抗体の作製
比較例としてFab'化抗体を金コロイドに物理吸着させるために、以下のような手順でSH基をブロックした。作製したFab'抗体溶液(1mg/mLに濃度調整した)1mLに対し、1mg/mL N-エチルマレイミド(品番 23030、ピアース社)を1mL添加し、室温で2時間反応させ、SH基をブロックした。これらの反応物をAmiconUltra-4(MWCO 30,000)を用いて、PBSバッファーにバッファー交換し、未反応のN-エチルマレイミドの除去を行った。
2. Fab'化抗体物理吸着金コロイドの作製
A型B型抗体それぞれに対し、以下の同様な操作を行った。
直径50 nm金コロイド溶液(EM.GC50、BBI社)9 mLに50 mM Boraxバッファー(pH 8.5)1 mLを加えることでpHを調整した金コロイド溶液に、300 μg / mLのSHをブロックしたFab'化抗体溶液1 mLを加え攪拌した。10分間静置した後、1%ポリエチレングリコール(PEG Mw.20000、品番168-11285、和光純薬)水溶液を550 μL加え攪拌し、続いて10 %牛血清アルブミン(BSA FractionV、品番A-7906、SIGMA)水溶液を1.1 mL加え攪拌した。この溶液を8000×g、4℃、30分間遠心(himacCF16RX、日立社)した後、1 mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散した。この後、20 mLの金コロイド保存液(20 mM Tris-HClバッファー(pH 8.2), 0.05%PEG(Mw.20000), 150 mM NaCl, 1%BSA, 0.1%NaN3)に分散し、再び8000×g、4℃、30分間遠心した後、1 mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散し、抗体修飾金コロイド(50 nm)溶液を得た。
実施例1:Fab'化抗体をSH基を介して直接固定化した金コロイドの作製
作製したFab'化抗体を0.5mg/mLに調整し、この溶液1mLと直径50nm金コロイド溶液を混合した後、室温で1時間反応させて固定化した。この反応液に、1%ポリエチレングリコール(PEG Mw.20000)水溶液を500 μL加え攪拌し、続いて10 %牛血清アルブミン水溶液を1.0 mL加え攪拌した。この溶液を8000×g、4℃、30分間遠心した後、1 mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散した。この後、20 mLの金コロイド保存液(20 mM Tris-HClバッファー(pH 8.2), 0.05%PEG(Mw.20000), 150 mM NaCl, 1%BSA, 0.1%NaN3)に分散し、再び8000×g、4℃、30分間遠心した後、1 mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散し、抗体修飾金コロイド溶液を得た。
ここで作製した修飾金コロイドに抗体がSH基を介して結合できたことの確認は、0.1%SDS溶液に混合しても抗体が溶出してこないことを確認することで行った。
実施例2:Fab'化抗体をSH基を介してPEGポリマーを用いて固定化した金コロイドの作製
9mLの直径50nm金コロイド溶液と1mLの1mM Thiol-dPEG4 acid(品番 QB10247a、クオンタ社)を混合した後、室温で18時間反応させて表面をPEG処理した。この反応液に、500μLの0.2M EDC(品番 E1769、シグマアルドリッチ社)と500μLの0.05M NHS(品番 130672、アルドリッチ社)を添加し、室温で3時間反応させてCOOH基をNHSエステル化した。この溶液を8000×g、25℃、15分間遠心した後、1 mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散した。この後、20 mLの50 mM KH2PO4バッファー(pH 7.0)に分散し、再び8000×g、25℃、15分間遠心した後、1 mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散し、50 mM KH2PO4バッファー(pH 7.0)で合計9mLになるように調整した。
この金コロイド液に1で作製したFab'化抗体を1mL加え、室温で2時間反応させた。この後、1mM amino-dPEG4 alcohol(品番 QB10240a、クオンタ社)を添加し室温で1時間反応させることで、未反応のNHSエステルをブロッキングした。この溶液を8000×g、4℃、30分間遠心した後、1 mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散した。この後、20 mLの金コロイド保存液(20 mM Tris-HClバッファー(pH 8.2), 0.05%PEG(Mw.20000), 150 mM NaCl, 1%BSA, 0.1%NaN3)に分散し、再び8000×g、4℃、30分間遠心した後、1 mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散し、抗体修飾金コロイド溶液を得た。
ここで作製した修飾金コロイドに抗体がSH基を介してPEGポリマーを用いて固定化できたことの確認は、0.1%SDS溶液に混合しても抗体が溶出してこないことを確認することで行った。
<(3)金コロイド抗体保持パッドの作製>
比較例1、実施例1,2で作製した各抗体修飾金コロイドをそれぞれ、金コロイド塗布液(20 mM Tris-Hclバッファー(pH 8.2), 0.05 % PEG(Mw.20000), 5 % スクロース)及び水により希釈し、それぞれ520 nmのODが3.0となるように希釈した。これらの希釈した抗A型ウイルス抗体修飾金コロイド溶液と抗B型ウイルス抗体修飾金コロイド溶液を1:1の比率で混合し、8 mm×150 mmに切ったグラスファイバーパッドに1枚あたり0.8 mLずつ均一に塗布し、一晩減圧乾燥し、金コロイド抗体保持パッドを得た。
<(4)抗体固定化メンブレン(クロマトグラフ担体)の作製>
抗体固定化メンブレンは、本発明では全て同一条件で作製したものを使用した。25 mm×200 mmに切断したニトロセルロースメンブレン(プラスチックの裏打ちあり、HiFlow Plus HF120、ミリポア社)に関し、以下のような方法により抗体を固定し抗体固定化メンブレンを作成した。メンブレンの長辺を下にし、下から7 mmの位置に、1.5 mg / mLとなるように調製した抗インフルエンザA型ウイルス抗体溶液をインクジェット方式の塗布機を用いて幅1 mm程度のライン状に塗布した。同様に、下から10 mmの位置に、1.5 mg / mLとなるように調製した抗インフルエンザB型ウイルス抗体溶液をインクジェット方式の塗布機を用いて幅1 mm程度のライン状に塗布した。さらに、下から13 mmの位置に0.5 mg / mLとなるように調製したコントロール用抗マウスIgG抗体溶液をライン状に塗布した。塗布したメンブレンは、温風式乾燥機で50 ℃、30分間乾燥した。ブロッキング液(0.5 w%カゼイン(乳由来、品番030-01505、和光純薬)含有50 mMホウ酸バッファー(pH 8.5))500 mLをバットに入れ、そのまま30分間静置した。その後、同様のバットに入れた洗浄・安定化液(0.5 w%スクロース、0.05 w%コール酸ナトリウム、50 mM Tris-Hcl(pH 7.5))500 mLに移して浸し、そのまま30分間静置した。メンブレンを液から取り出し、室温で一晩乾燥し、抗体固定化メンブレンを作製した。
<(5)キットの組み立て>
バック粘着シート(ARcare9020、ニップンテクノクラスタ社)に、作製した抗体固定化メンブレンを貼り付けた。その際メンブレン長辺側のうち、抗インフルエンザA型ウイルス抗体ライン側を下側とする。抗体固定化メンブレンの下側に約2 mm重なるように、作製した金コロイド抗体保持パッドを貼り付け、約4 mm重なるようにして金コロイド抗体保持パッド下側に試料添加パッド(18 mm×150 mmに切ったグラスファイバーパッド(Glass Fiber Conjugate Pad、ミリポア社))を重ねて貼り付けた。さらに、抗体固定化メンブレンの上側には約5 mm重なるように吸収パッド(5 mm×100 mmに切ったセルロース膜(Cellulose Fiber Sample Pad、ミリポア社))を重ねて貼り付けた。これら重ね張り合わせた部材を、部材の長辺側を5 mm幅になるように短辺に平行にギロチン式カッター(CM4000、ニップンテクノクラスタ社)切断していくことで、イムノクロマト用ストリップを作成した。これらをプラスチックケース(ニップンテクノクラスタ社)に入れ、試験用イムノクロマトキットとした。
<(6)測定法>
1.銀増幅液の作製
まず、硝酸鉄(III)九水和物(品番095-00995、和光純薬)を水325gに溶解して作製した1 M硝酸鉄水溶液40mL、クエン酸(品番 038-06925、和光純薬)10.5g、ドデシルアミン(品番 123-00246、和光純薬)0.1g、界面活性剤C919-C64-O-(CH2CH2O)50H 0.44gを混合し、溶解させた。全て溶解した後、スターラーで攪拌しながら硝酸(10重量%,)を40mL加えた。この溶液80mLを測りとり、硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物(品番 091-00855、和光純薬)を11.76g加えた。これをI液とする。
次に、硝酸銀溶液10mL(10gの硝酸銀を含む)に、全体量が100gとなるように水を加えた。これをII液とする。
最後に、I液 40mLに対し、II液を4.25mL加え攪拌し、銀増幅液とした。
2.抗原結合量測定法
作製した、比較例1、実施例1,2のキット全てに対し、以下の実験を行った。
抗原として、クイックS-インフルA・B「生研」陰性/陽性コントロール(品番322968、デンカ生研)を使用した。まず、陽性コントロールを1 %BSAを含むPBSバッファーで1/640に希釈した。そして、作製したキットに希釈した抗原液を100μL点着し、10分放置した。その後、このメンブレンをケースから取り出し、洗浄液を700μL入れたマイクロチューブ(品番 BM4020、ビーエム機器株式会社、)に検体滴下部が液に漬かるように立てかけ、このまま1時間洗浄した。
吸水パットを取り除き、新たな吸水パットとして5×20mm(Cellulose Fiber Sample Pad、ミリポア社))を取り除いた場所に3枚をセロハンテープで付けた。このメンブレンを、増幅液を200μL入れたマイクロチューブに検体滴下部が液に漬かるように立てかけた。増幅液を吸い上げ、検出ラインに増幅液が到達した時点を0分とし、2分経過したらこのメンブレンを取り出した。このとき検出された黒色析出物の濃淡により、メンブレンの抗体塗布部分(検出ライン)への吸着金量を測定した。銀増幅後のメンブレンの検出ラインの着色度合いは、イムノクロマトリーダー ICA-1000(浜松ホトニクス社)で定量した。その結果は、表1のようになった。
本実験において、洗浄時のチューブの形状に依存する液面の高さ、及びイムノクロマトグラフキットの試料添加パッドの形状・材質、実験環境(温度、湿度)、吸収パットの材質・厚み、吸収パットとニトロセルロースメンブレンとの接合、などは洗浄液の吸水スピード・量を変化させる要因であり、実験において、一定に保つことが必要である。この洗浄液の吸水スピード・量は、最終的な洗浄の効果(金微粒子の残存量の減少)を左右する要因である。本発明の実験は、気温24±3℃、湿度45±8%にて行った。
3.非特異吸着量測定
作製した、比較例1、実施例1,2のキット全てに対し、以下の実験を行った。
2.抗原結合量測定法で使用した陽性コントロールの代わりに1 %BSAを含むPBSバッファーを100μL点着し、それ以外は2.と同様の方法で行った。その結果は、表1のようになった。
表1の抗原結合量(A)と非特異吸着量(B)の比((A)/(B))を比較した結果、本発明の標識粒子は極めて有効であることが確認された。
本発明で用いることができるイムノクロマトグラフキットの一態様を模式的に示す平面図である。 図1で示されたイムノクロマトグラフキットの縦断面を模式的に示す縦断面図である。 本発明で用いることができるイムノクロマトグラフキットの別の態様の縦断面を模式的に示す縦断面図である。
符号の説明
1:バック粘着シート
2:金コロイド抗体保持パッド
3:抗体固定化メンブレン
3a:捕捉部位
31:検出部
32:コントロール部
4:吸収パッド
5:試料添加パッド
6:増感シート
10:イムノクロマトグラフキット

Claims (14)

  1. 断片化された抗体が化学結合で標識物質に固定されている標識粒子。
  2. 該断片化された抗体がFabフラグメント及び/又はFab'フラグメント及び/又はF(ab')2フラグメントである、請求項1に記載の標識粒子。
  3. 該断片化された抗体と該標識粒子の結合が、直接、あるいは親水性ポリマーを介して行われている、請求項2に記載の標識粒子。
  4. 該親水性ポリマーが、エチレングリコール基を少なくとも一部に含む、請求項3に記載の標識粒子。
  5. 前記エチレングリコール基を少なくとも一部に含むポリマーが、ポリエチレングリコール及びその誘導体から選択された少なくとも1種である、請求項4に記載の標識粒子。
  6. 該断片化された抗体と該標識粒子の結合が、抗体のSH基を介して行われている、請求項1から5の何れかに記載の標識粒子。
  7. 該標識物質が金属コロイドである、請求項1から6の何れかに記載の標識粒子。
  8. 該金属コロイドが金コロイド、銀コロイド、または白金コロイドである、請求項1から7の何れかに記載の標識粒子。
  9. 被験物質と、該被験物質に対する該標識粒子とをこれらの複合体を形成させた状態で多孔性担体上において展開し、該被験物質に対する第二の抗体を有する多孔性担体上の反応部位において該被験物質と該標識粒子を捕捉して該被験物質を検出することを含むサンドイッチイムノクロマトグラフ方法において、該標識粒子が請求項1から8の何れかに記載の標識粒子であることを特徴とする、イムノクロマトグラフ方法。
  10. 平均粒子サイズが1μm以上20μm以下のサイズを有する標識物質を検出することを特徴とする、請求項9に記載のイムノクロマトグラフ方法。
  11. 被験物質を検出する際に、銀を含む化合物及び銀イオンのための還元剤を用いて増感することによって検出を行うことを特徴とする、請求項9または10に記載のイムノクロマトグラフ方法。
  12. 銀を含む化合物及び銀イオンのための還元剤を用いて増感するための反応時間が7分以内である、請求項9から11の何れかに記載のイムノクロマトグラフ方法。
  13. 検出部位の標識物質の数が1×106/mm3以下である、請求項9から12の何れかに記載のイムノクロマトグラフ方法。
  14. 標識物質が、金属コロイドである、請求項9から13の何れかに記載のイムノクロマトグラフ方法。
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