JP2009192032A - 自動変速機の作動油の劣化推定装置 - Google Patents

自動変速機の作動油の劣化推定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】作動油の機械的な要因による劣化度を、検出された変速段を確立するギヤの歯面圧を求めて算出することで作動油の劣化の推定精度を向上させるようにした自動変速機の作動油の劣化推定装置を提供する。
【解決手段】検出された内燃機関の回転数と自動変速機の入力軸の回転数に基づいてトルクコンバータ12の発熱量を算出し、それと検出された作動油の温度から作動油の熱的な要因による劣化度DTHを算出すると共に(S18からS24)、算出された内燃機関の出力トルクから検出された変速段を確立するギヤの歯面圧を求めて作動油の機械的な要因による劣化度DTMを算出し(S26)、算出された熱的な要因による劣化度または機械的な要因による劣化度に基づいて作動油の劣化を推定する(S28からS32)。
【選択図】図2

Description

この発明は自動変速機の作動油の劣化推定装置に関する。
自動変速機の作動油の劣化を推定する従来技術としては、特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術にあっては、作動油の温度と算出されたトルクコンバータ内の発熱量に基づいて作動油の熱的な要因による劣化度を算出すると共に、内燃機関と自動変速機の回転数から機械的な要因による劣化度を算出し、算出された劣化度に基づいて作動油の劣化を推定している。
特開2005−172048号公報
上記したように特許文献1記載の技術にあっては、熱的な要因による劣化度は作動油の温度と算出されたトルクコンバータ内の発熱量に基づいて算出しているが、機械的な要因による劣化度、換言すれば作動油に加えた剪断の程度を単にギヤの噛合い回数、即ち、ギヤの回転数から算出しているため、劣化の推定精度が必ずしも十分に満足できるものではなかった。
即ち、作動油はギヤの剪断などの機械的な要因によって動粘度特性が低下して劣化するが、その劣化度は機関出力トルクによってギヤが噛合う際に作動油が受ける圧力(ギヤ歯面圧)に比例する。しかしながら、特許文献1記載の技術にあってはその点が考慮されていないため、劣化の推定精度が必ずしも十分に満足できるものではなかった。
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消し、上記した作動油の機械的な要因による劣化度を、検出された変速段を確立するギヤの歯面圧を求めて算出することで作動油の劣化の推定精度を向上させるようにした自動変速機の作動油の劣化推定装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、内燃機関の出力をトルクコンバータを介して入力して変速する自動変速機の作動油の劣化を推定する装置において、前記作動油の温度を検出する作動油温度検出手段と、前記内燃機関の回転数を検出する機関回転数検出手段と、前記内燃機関の負荷を検出する機関負荷検出手段と、前記自動変速機の入力軸の回転数を検出する入力軸回転数検出手段と、少なくとも前記検出された内燃機関の回転数と自動変速機の入力軸の回転数に基づいて前記トルクコンバータ内の発熱量を算出するトルクコンバータ発熱量算出手段と、前記検出された作動油の温度と前記算出されたトルクコンバータ内の発熱量に基づいて前記作動油の熱的な要因による劣化度を算出する熱的劣化度算出手段と、少なくとも前記検出された内燃機関の回転数と負荷に基づいて前記内燃機関の出力トルクを算出する機関出力トルク算出手段と、前記自動変速機で確立されている変速段を検出する変速段検出手段と、前記算出された内燃機関の出力トルクから前記検出された変速段を確立するギヤの歯面圧を求めて前記作動油の機械的な要因による劣化度を算出する機械的劣化度算出手段と、前記算出された熱的な要因による劣化度と機械的な要因による劣化度の少なくともいずれかに基づいて前記作動油の劣化を推定する作動油劣化推定手段とを備える如く構成した。
請求項2に係る自動変速機の作動油の劣化推定装置にあっては、前記自動変速機が複数のギヤを噛合させて前記変速段を確立する変速機であると共に、前記機械的劣化度算出手段は、前記内燃機関の出力トルクと前記複数のギヤについて予め設定された係数に基づいて前記歯面圧を求める如く構成した。
請求項1に係る自動変速機の作動油の劣化推定装置にあっては、検出された作動油の温度と算出されたトルクコンバータ内の発熱量に基づいて作動油の熱的な要因による劣化度を算出すると共に、算出された内燃機関の出力トルクから検出された変速段を確立するギヤの歯面圧を求めて作動油の機械的な要因による劣化度を算出する如く構成したので、熱的な要因による劣化度の算出に加え、機械的な要因による劣化度を精度良く算出することができ、よって作動油の劣化の推定精度を向上させることができる。また、変速段を確立するギヤの歯面圧は車重に比例して増減することから、ギヤの歯面圧から機械的な要因による劣化度を算出することで、どのような車種であっても機械的な要因による劣化度を精度良く算出することができる。
請求項2に係る自動変速機の作動油の劣化推定装置にあっては、内燃機関の出力トルクと変速段を確立する複数のギヤについて予め設定された係数に基づいて歯面圧を求める如く構成したので、上記した効果に加え、係数を予め設定しておくことで、ギヤの歯面圧を簡易に算出することができる。
以下、添付図面に即してこの発明に係る自動変速機の作動油の劣化推定装置を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、この発明の実施例に係る自動変速機の作動油の劣化推定装置を全体的に示す概略図である。
図1はその装置を全体的に示す概略図である。
以下説明すると、符号Tは自動変速機を示す。自動変速機Tは車両(図示せず)に搭載される、前進5速および後進1速の平行2軸式の有段の自動変速機からなる。
自動変速機Tは、火花点火式の4気筒を備えた内燃機関(以下「エンジン」という)Eのクランクシャフト10にロックアップ機構Lを有するトルクコンバータ12を介して接続されたメインシャフト(入力軸)MSと、このメインシャフトMSに複数のギヤ列を介して接続されたカウンタシャフト(出力軸)CSとを備える。
メインシャフトMSには、メイン1速ギヤ14、メイン2速ギヤ16、メイン3速ギヤ18、メイン4速ギヤ20、メイン5速ギヤ22、およびメインリバースギヤ24が支持される。
また、カウンタシャフトCSには、メイン1速ギヤ14に噛合するカウンタ1速ギヤ28、メイン2速ギヤ16と噛合するカウンタ2速ギヤ30、メイン3速ギヤ18に噛合するカウンタ3速ギヤ32、メイン4速ギヤ20に噛合するカウンタ4速ギヤ34、メイン5速ギヤ22に噛合するカウンタ5速ギヤ36、およびメインリバースギヤ24にリバースアイドルギヤ40を介して接続されるカウンタリバースギヤ42が支持される。
上記において、メインシャフトMSに相対回転自在に支持されたメイン1速ギヤ14を1速用油圧クラッチC1でメインシャフトMSに結合すると、1速(ギヤ。変速段)が確立する。
メインシャフトMSに相対回転自在に支持されたメイン2速ギヤ16を2速用油圧クラッチC2でメインシャフトMSに結合すると、2速(ギヤ。変速段)が確立する。カウンタシャフトCSに相対回転自在に支持されたカウンタ3速ギヤ32を3速用油圧クラッチC3でカウンタシャフトCSに結合すると、3速(ギヤ。変速段)が確立する。
また、カウンタシャフトCSに相対回転自在に支持されたカウンタ4速ギヤ34をセレクタギヤSGでカウンタシャフトCSに結合した状態で、メインシャフトMSに相対回転自在に支持されたメイン4速ギヤ20を4速−リバース用油圧クラッチC4RでメインシャフトMSに結合すると、4速(ギヤ。変速段)が確立する。
また、カウンタシャフトCSに相対回転自在に支持されたカウンタ5速ギヤ36を5速用油圧クラッチC5でカウンタシャフトCSに結合すると、5速(ギヤ。変速段)が確立する。
さらに、カウンタシャフトCSに相対回転自在に支持されたカウンタリバースギヤ42をセレクタギヤSGでカウンタシャフトCSに結合した状態で、メインシャフトMSに相対回転自在に支持されたメインリバースギヤ24を4速−リバース用油圧クラッチC4RでメインシャフトMSに結合すると、後進変速段が確立する。
カウンタシャフトCSの回転は、ファイナルドライブギヤ46およびファイナルドリブンギヤ48を介してディファレンシャルDに伝達され、それから左右のドライブシャフト50,50を介し、エンジンEおよび自動変速機Tが搭載される車両(図示せず)の駆動輪W,Wに伝達される。
上記した油圧クラッチC1,C2,C3,C4R,C5は全て作動油ATFに浸漬された状態で使用される湿式クラッチである。作動油は原油から精製された鉱物油に添加剤が加えられた通常の潤滑油である。
車両運転席(図示せず)のフロア付近にはシフトレバー52が設けられ、運転者の操作によって8種のレンジ、P,R,N,D5,D4,D3,2,1のいずれかが選択される。
エンジンEの吸気管(図示せず)の適宜位置にはエアーフローメータ60が配置され、エンジンEに吸入される空気量Gairに応じた信号を出力すると共に、カム軸(図示せず)の付近にはクランク角センサ62が取り付けられ、特定気筒の所定のクランク角度で気筒判別信号、各気筒のピストンのTDC付近でTDC信号、TDC信号を細分して得たクランク角度(例えば30度)でCRK信号を出力する。
ファイナルドリブンギヤ48の付近には車速センサ64が設けられ、ファイナルドリブンギヤ48が所定の角度を回転するごとに車速Vを示す信号を出力する。
メインシャフトMSの付近には第1の回転数センサ66が設けられ、メインシャフトMSが1回転する度にメインシャフト回転数(自動変速機Tの入力軸の回転数)NMを示す信号を出力すると共に、カウンタシャフトCSの付近には第2の回転数センサ68が設けられ、カウンタシャフトCSが1回転する度にカウンタシャフト回転数(自動変速機Tの出力軸の回転数)NCを示す信号を出力する。
車両運転席付近に装着されたシフトレバー52の付近にはシフトレバーポジションセンサ70が設けられ、前記した8種のポジション(レンジ)の中、運転者によって選択されたポジションを示す信号を出力する。
自動変速機Tの適宜位置には温度センサ72が設けられ、ATF(Automatic Transmission Fluid。作動油)の温度(油温)TATFに比例した信号を出力する。
これらセンサの出力は、ECU(Electronic Control Unit。電子制御ユニット)76に送られる。ECU76は、CPU76a,ROM76b,RAM76c、入力回路76d、出力回路76e、A/D変換器76fおよびEEPROM(不揮発性メモリ)76gを備える。
前記したセンサなどの出力は、入力回路76dを介してECU76に入力される。それらの中、アナログ出力はA/D変換器76fを介してデジタル値に変換されると共に、デジタル出力は波形整形回路などの処理回路(図示せず)を経て処理され、RAM76cに格納される。
クランク角センサ62のCRK信号と車速センサ64の出力はカウンタ(図示せず)でカウントされ、エンジン回転数NEおよび車速Vが検出される。第1の回転数センサ66と第2の回転数センサ68の出力もカウントされ、自動変速機Tの入力軸回転数NMと出力軸回転数NCが検出される。
ECU76は目標段(変速比)を決定し、出力回路76eおよび電圧供給回路(図示せず)を介して油圧制御回路Oに配置されたシフトソレノイドSL1からSL5を励磁・非励磁して油圧回路の切替え制御を行うと共に、リニアソレノイドSL6からSL8を励磁・非励磁してトルクコンバータ12のロックアップ機構Lの動作および各クラッチの油圧を制御する。
具体的には、リニアソレノイドSL6はロックアップ機構L、1速用油圧クラッチC1、2速用油圧クラッチC2および4速−リバース用油圧クラッチC4Rの、リニアソレノイドSL7は2速用油圧クラッチC2および4速−リバース用油圧クラッチC4Rの、リニアソレノイドSL8は3速用油圧クラッチC3および5速用油圧クラッチC5の油圧をそれぞれ制御する。
また、ECU76は、後述するようにATF(作動油)の劣化推定を実行する。
尚、ECU76に加え、エンジンEの燃料噴射量と点火時期を制御するエンジンECU(図示せず)がアクセス自在に設けられ、エアーフローメータ60やクランク角センサ62などの出力は実際にはエンジンECUに送られる。ECU76はエンジンECUにアクセスしてそれらを取得する。
次いで、ECU76が実行する上記したATF(作動油)の劣化推定について図2フロー・チャートを参照して説明する。ECU76は運転者によってイグニションスイッチ(図示せず)がオンされて起動され、図示のプログラムを1secごとに実行する。
以下説明すると、S10においてエンジンEがスタート中か判断する。これは、スタータモータ(図示せず)への通電などからクランキングされているか否か判定すると共に、エンジン回転数NEが完爆回転数に達したか否か判定することで判断する。エンジン回転数NEが完爆回転数に達していないとき、エンジンEはスタート中と判断する。
S10で肯定されるときはS12に進み、EEPROM76gに格納されている機械的ATF劣化度、熱的ATF劣化度、走行距離、ATF交換判定結果などのデータを読み込む。
他方、S10で否定されるときはS14に進み、エンジンEが停止か否かをイグニションスイッチがオフされたか否か判定することで判断し、肯定されるときはS16に進み、上記したデータをEEPROM76gに書き込む(格納する)。尚、ECU76はイグニションスイッチがオフされた後も微小時間動作を継続し、S16に示す処理を実行する。
S10からS16までの処理は、車両の走行(トリップ)の度に前回までに得たデータに今回の走行で得たデータを累積(加算)して劣化判定に備える処理である。
S14で否定、即ち、今回の走行が開始したと判断されるときはS18に進み、温度センサ72で検出されたATF温度TATFから図3に示す特性を検索し、熱的ATF劣化率を算出する。図3に示す特性において、熱的ATF劣化率はATF温度TATFが上昇するほど増加するように設定される。図3に示す特性はROM76bに格納される。
次いでS20に進み、トルクコンバータ(T/C)12の内部の発熱量を以下の式から算出する。
発熱量=TQIN×NE−TQOUT×NM
上記で、TQIN=τ×(NE/1000)
TQOUT=k×TQIN
尚、TQIN:トルクコンバータ12のポンプ吸収トルク(入力トルク)
TQOUT:トルクコンバータ12のタービントルク(出力トルク)
τ:ポンプ吸収トルク係数
k:トルクコンバータ12のトルク比
次いでS22に進み、算出されたトルクコンバータ12の内部の発熱量から図4に示す特性を検索し、熱的劣化加速係数を算出する。同様の理由から図4の特性において熱的劣化加速係数は発熱量が上昇するほど増加するように設定される。図4の特性もROM76bに格納される。
次いでS24に進み、算出された熱的ATF劣化率を熱的劣化加速係数に乗じて熱的ATF劣化度DTH、即ち、ATFの熱的な要因による劣化度DTH(無次元数)を算出する。
尚、図示のプログラムは1secごとに実行されることから、熱的ATF劣化度DTHは、今回のプログラムループで算出された値を前回プログラムループ時の値に加算して累積することで算出する。
次いでS26に進み、機械的ATF劣化度、即ち、ATFの機械的な要因による劣化度DTMを算出する。
図5はその処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
S100において検出された吸気量Gairとエンジン回転数NEから予め設定されてROM76bに格納されているエンジントルクマップを検索し、エンジントルク(エンジンEの出力トルク)Tinを算出する。
次いでS102に進み、前記したエンジンECUにアクセスして点火時期の補正量を読み込み、それに応じて算出されたエンジントルクTinを補正する。即ち、点火時期がMBT(Minimum Advance for Best Torque)を超えて遅角方向に補正されると、その補正量に応じてエンジンEの出力トルクが減少することから、補正量があるときは、それに応じて算出値を補正する。
次いでS104に進み、エンジンEによってエアコンディショナなどの補機(図1で図示省略)が駆動されているか否か判断し、肯定されるときは同様にエンジンEの出力トルクが減少することから、補機の駆動に応じて算出値を補正する。
次いでS106に進み、自動変速機Tでプログラム実行時に確立されている変速段(速度)Sを検出する。これは、前記したリニアソレノイドSL1からSL5の励磁・非励磁から検出する。
次いでS108に進み、検出された変速段SがLow(1速)ではないか否か判断し、否定されてLowと判断されるときはS110に進み、算出されたエンジントルクTinからLowを確立するギヤG1による機械的ATF劣化度DTMを算出する。図5フロー・チャートのS110などでギヤ14から36の中、速度nを確立するギヤをGnという。
他方、S108で肯定されるときはS112に進み、検出された変速段Sが2nd(2速)ではないか否か判断し、否定されて2ndと判断されるときはS114に進み、算出されたエンジントルクTinから2ndを確立するギヤG2による機械的ATF劣化度DTMを算出する。
またS112で肯定されるときはS116に進み、検出された変速段Sが3rd(3速)ではないか否か判断し、否定されて3rdと判断されるときはS118に進み、算出されたエンジントルクTinから3rdを確立するギヤG3による機械的ATF劣化度DTMを算出する。
さらにS116で肯定されるときはS120に進み、検出された速度段Sが4th(4速)ではないか否か判断し、否定されて4thと判断されるときはS122に進み、算出されたエンジントルクTinから4thを確立するギヤG4による機械的ATF劣化度DTMを算出する。
さらにS120で肯定されるときはS124に進み、検出された速度段Sが5th(5速)ではないか否か判断し、否定されて5thと判断されるときはS126に進み、算出されたエンジントルクTinから5thを確立するギヤG5による機械的ATF劣化度DTMを算出する。尚、S124で肯定されるときは5速以上がないことから以降の処理をスキップする。
S110,S114,S118,S122,S126の処理を説明すると、機械的ATF劣化度DTMは以下のように算出される。
DTM=α√Tin+β√Tin+γ√Tin+δ√Tin
=(α+β+γ+δ)×√Tin
上記で、α,β,γ,δは、前記したメイン1速ギヤ14、カウンタ3速ギヤ32などメインシャフトMSとカウンタシャフトCSのギヤ14から36などを噛合させたとき、噛合された2個のギヤ同士の噛合状態を示す係数であり、変速段によって異なるため、固有の値として予め別々に設定される。
4th(4速)を例にとって具体的に説明すると、4thは、カウンタシャフトCSに相対回転自在に支持されたカウンタ4速ギヤ34をセレクタギヤSGでカウンタシャフトCSに結合した状態で、メインシャフトMSに相対回転自在に支持されたメイン4速ギヤ20を4速−リバース用油圧クラッチC4RでメインシャフトMSに結合することで確立され、ファイナルドライブギヤ46とファイナルドリブンギヤ48を介してディファレンシャルDなどから駆動輪W,Wに伝達される。
従って、4th(4速)の場合、上記した係数は以下のようになる。
α:メイン4速ギヤ20とカウンタ4速ギヤ34の間に固有の噛合状態を示す係数。
β:ファイナルドライブギヤ46とファイナルドリブンギヤ48の間に固有の噛合状態を示す係数。
また、2nd(2速)の場合は以下のようになる。
α:メイン2速ギヤ16とカウンタ2速ギヤ30の間に固有の噛合状態を示す係数。
β:ファイナルドライブギヤ46とファイナルドリブンギヤ48の間に固有の噛合状態を示す係数。
よって機械的ATF劣化度DTMは以下のように算出される。
DTM=α√Tin+β√Tin
=(α+β)×√Tin
上記で√Tinはエンジントルクの平方根を示し、それに係数を乗じてギヤ歯面圧に相当する値を求め、噛合い箇所、即ち、ギヤごとに同様の値を求め、それらを合算することで機械的ATF劣化度DTMを算出する。
即ち、機械的ATF劣化度はギヤの歯面圧に比例し、ギヤの歯面圧はエンジントルクの平行根に比例することから、補機の駆動や点火時期の補正を考慮してエンジントルクを求め、それが個々のギヤの歯に作用する面圧を求め、ギヤごとに求めた値を合計することで機械的ATF劣化度を算出するようにした。
尚、機械的ATF劣化度は後の処理で熱的ATF劣化度と比較されるため、熱的ATF劣化度と同様の無次元数として算出する。
また、図1に示す自動変速機Tは前進5速および後進1速の平行2軸式であるため、係数はα,βの2種で足りるが、前進6速以上あるいは平行3軸式などの場合はγ以降の係数を必要とする。
次いでS128に進み、今回のプログラムループで算出された機械的ATF劣化度DTMを前回プログラムループ時の値に加算(累積)する。
図2フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS28に進み、熱的ATF劣化度DTHが機械的ATF劣化度DTMを超えるか否か判断し、肯定されるときはS30に進み、ATFの劣化を示すパラメータとして熱的ATF劣化度DTHを選択する一方、否定されるときはS32に進み、ATFの劣化を示すパラメータとして機械的ATF劣化度DTMを選択する。
次いでS34に進み、検出された車速Vに時間を乗じて車両の走行距離を算出してS12で読み込んだ前回データに加算する。
次いでS36に進み、ATFの交換が必要か否かを判定する。具体的には、選択された熱的ATF劣化度DTHあるいは機械的ATF劣化度DTMが交換しきい値を超えたとき、あるいは車両の走行距離が所定距離を超えたとき、ATFの交換が必要と判断する。
この実施例は上記の如く、内燃機関(エンジン)Eの出力をトルクコンバータ12を介して入力して変速する自動変速機Tの作動油ATFの劣化を推定する装置(ECU76)において、前記作動油の温度TATFを検出する作動油温度検出手段(温度センサ72,ECU76)と、前記内燃機関の回転数(エンジン回転数)NEを検出する機関回転数検出手段(クランク角センサ62,ECU76)と、前記内燃機関の負荷(吸気量Gair)を検出する機関負荷検出手段(エアーフローメータ60,ECU76)と、前記自動変速機の入力軸の回転数NMを検出する入力軸回転数検出手段(第1の回転数センサ66,ECU76)と、少なくとも前記検出された内燃機関の回転数Eと自動変速機の入力軸の回転数NMに基づいて、より具体的にはトルクコンバータ12のポンプ吸収トルクとタービントルクと、前記検出された内燃機関の回転数NEと自動変速機の入力軸の回転数NMなどに基づいて前記トルクコンバータ12の内部の発熱量を算出するトルクコンバータ発熱量算出手段(ECU76,S18,S20)と、前記検出された作動油の温度と前記算出されたトルクコンバータ内の発熱量に基づいて前記作動油の熱的な要因による劣化度DTHを算出する熱的劣化度算出手段(ECU76,S22,S24)と、少なくとも前記検出された内燃機関の回転数と負荷に基づいて前記内燃機関の出力トルク(エンジントルク)を算出する機関出力トルク算出手段(ECU76,S26,S100)と、前記自動変速機Tで確立されている変速段S(速度)を検出する変速段検出手段(ECU76,S26,S106)と、前記算出された内燃機関の出力トルクから前記検出された変速段Sを確立するギヤの歯面圧を求めて前記作動油の機械的な要因による劣化度DTMを算出、より具体的には歯面圧をギヤごとに求めて合算することで前記作動油の機械的な要因による劣化度を算出する機械的劣化度算出手段(ECU76,S26,S108からS128)と、前記算出された熱的な要因による劣化度と機械的な要因による劣化度の少なくともいずれか、より具体的には大きい方に基づいて前記作動油の劣化を推定する作動油劣化推定手段(ECU76,S28からS32)とを備える如く構成した。
即ち、熱的な要因による劣化度DTHの算出に加え、機械的な要因による劣化度DTMを精度良く算出することができ、よってATF(作動油)の劣化の推定精度を向上させることができる。また、変速段Sを確立するギヤの歯面圧は車重に比例して増減することから、ギヤの歯面圧から機械的な要因による劣化度を算出することで、どのような車種であっても機械的な要因による劣化度を精度良く算出することができる。
また、前記自動変速機Tが複数のギヤ14から36の中の任意の組み合わせを噛合させて前記変速段Sを確立する変速機であると共に、前記機械的劣化度算出手段は、前記内燃機関の出力トルクと前記複数のギヤについて予め設定された係数α,β,γ,δに基づいて前記歯面圧を求める如く構成したので、上記した効果に加え、係数を予め設定しておくことで、ギヤの歯面圧を簡易に算出することができる。
尚、この実施例では前進5速および後進1速の平行2軸式の自動変速機を使用したが、この発明は前進6速以上の自動変速機あるいは平行3軸式などの自動変速機にも妥当する。
この発明の実施例に係る自動変速機の作動油の劣化推定装置を全体的に示す概略図である。 図1に示す装置の動作を示すフロー・チャートである。 図2フロー・チャートのATF温度TATFに対する熱的劣化率の特性を示す説明グラフである。 図2フロー・チャートのトルクコンバータ内ATF発熱量に対する熱的劣化加速係数の特性を示す説明グラフである。 図2フロー・チャートの作動油ATF交換判定を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
符号の説明
T 自動変速機、E 内燃機関(エンジン)、MS メインシャフト、CSカウンタシャフト、12 トルクコンバータ、14から22 メインn速ギヤ、28から36 カウンタn速ギヤ、Cn n速用クラッチ、46 ファイナルドライブギヤ、48 ファイナルドリブンギヤ、60 エアーフローメータ、62 クランク角センサ、66 第1の回転数センサ、72 温度センサ、76 ECU(電子制御ユニット)

Claims (2)

  1. 内燃機関の出力をトルクコンバータを介して入力して変速する自動変速機の作動油の劣化を推定する装置において、
    a.前記作動油の温度を検出する作動油温度検出手段と、
    b.前記内燃機関の回転数を検出する機関回転数検出手段と、
    c.前記内燃機関の負荷を検出する機関負荷検出手段と、
    d.前記自動変速機の入力軸の回転数を検出する入力軸回転数検出手段と、
    e.少なくとも前記検出された内燃機関の回転数と自動変速機の入力軸の回転数に基づいて前記トルクコンバータ内の発熱量を算出するトルクコンバータ発熱量算出手段と、
    f.前記検出された作動油の温度と前記算出されたトルクコンバータ内の発熱量に基づいて前記作動油の熱的な要因による劣化度を算出する熱的劣化度算出手段と、
    g.少なくとも前記検出された内燃機関の回転数と負荷に基づいて前記内燃機関の出力トルクを算出する機関出力トルク算出手段と、
    h.前記自動変速機で確立されている変速段を検出する変速段検出手段と、
    i.前記算出された内燃機関の出力トルクから前記検出された変速段を確立するギヤの歯面圧を求めて前記作動油の機械的な要因による劣化度を算出する機械的劣化度算出手段と、
    j.前記算出された熱的な要因による劣化度と機械的な要因による劣化度の少なくともいずれかに基づいて前記作動油の劣化を推定する作動油劣化推定手段と、
    を備えたことを特徴とする自動変速機の作動油の劣化推定装置。
  2. 前記自動変速機が複数のギヤを噛合させて前記変速段を確立する変速機であると共に、前記機械的劣化度算出手段は、前記内燃機関の出力トルクと前記複数のギヤについて予め設定された係数に基づいて前記歯面圧を求めることを特徴とする請求項1記載の自動変速機の作動油の劣化推定装置。
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