しかしながら、このような従来の印刷では、複数枚の被印刷媒体の中の一部の抜き取りや紛失を容易に確認することができないという問題点があった。例えば、機密情報と共にページ数が印刷されている場合でも、被印刷媒体がページ順に全て揃っていることを確かめなければ、抜き取りの確認を行うことができなかった。また、被印刷媒体がコピーされると、コピーされた元の被印刷媒体と、コピーによって複製された複製物との区別が付け難かったため、簡単にコピーが取られてしまうという問題点があった。さらに、印刷された機密情報毎に、誰がいつ印刷した情報であるかを管理することが困難であるという問題点もあった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、複数枚の被印刷媒体に印刷された情報の一部の抜き取りや紛失を容易に確認することを可能にすると共に、情報が印刷された被印刷媒体の複製防止や情報の管理を行うことを可能とする印刷データ作成装置、印刷装置、及び印刷データ作成プログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の印刷データ作成装置は、印刷装置での印刷に用いられる印刷データを画像データに基づいて作成する印刷データ作成装置であって、画像データを取得する画像データ取得手段と、前記画像データ取得手段によって取得された画像データから、印刷が行われる被印刷媒体の印刷枚数が複数であるか否かを判断する印刷枚数判断手段と、前記印刷枚数判断手段によって印刷枚数が複数であると判断された場合に、複数の被印刷媒体がページ順に重ねられることによって、前記被印刷媒体の端部が集合して形成される端部集合面に所定の図形が形成されるように、それぞれの前記被印刷媒体の端部に前記所定の図形の構成部分を印刷する印刷データを作成する印刷データ作成手段とを備えている。
また、本発明の請求項2に記載の印刷データ作成装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記印刷データ作成手段は、複数の被印刷媒体の抜き取りや紛失の確認を可能とするために前記端部集合面に形成される抜き取り確認図形の構成部分を、被印刷媒体に沿う方向における所定方向側の端と、隣り合うページの構成部分における前記所定方向とは反対側の端とが一致する位置に印刷する印刷データを作成する抜き取り確認図形データ作成手段を含むことを特徴とする。
また、本発明の請求項3に記載の印刷データ作成装置は、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記抜き取り確認図形を形成する側の被印刷媒体の端部の長さを印刷枚数で割ることで、前記抜き取り確認図形の各構成部分における、前記端部に沿う方向の幅を算出する構成部分幅算出手段を備え、前記抜き取り確認図形データ作成手段は、最初のページの被印刷媒体には、前記端部における一方の角に前記抜き取り確認図形の前記構成部分を必ず印刷する印刷データを作成すると共に、最後のページの被印刷媒体には、前記一方の角とは反対側の前記端部の角に前記抜き取り確認図形の前記構成部分を必ず印刷する印刷データを作成することを特徴とする。
また、本発明の請求項4に記載の印刷データ作成装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記印刷データ作成手段は、被印刷媒体に印刷されている情報の管理を可能とするための図形であり、印刷データを作成する毎にパターンが異なる管理図形を前記端部集合面に形成する印刷データを作成する管理図形データ作成手段を含むことを特徴とする。
また、本発明の請求項5に記載の印刷データ作成装置は、請求項4に記載の発明の構成に加え、前記管理図形のパターンを、管理図形と共に被印刷媒体に印刷される情報に関連付けて記憶する管理図形パターン記憶手段を備えている。
また、本発明の請求項6に記載の印刷データ作成装置は、請求項4又は5に記載の発明の構成に加え、前記端部集合面に形成される前記管理図形は太さが均一な直線であり、前記管理図形データ作成手段は、印刷データを作成する毎に、被印刷媒体の端部に沿う方向における前記管理図形の各構成部分の幅、最初のページの被印刷媒体において前記構成部分が印刷される位置、及び最後のページの被印刷媒体において前記構成部分が印刷される位置の少なくともいずれかが互いに異なる印刷データを作成することを特徴とする。
また、本発明の請求項7に記載の印刷データ作成装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記画像データ取得手段によって取得された画像データが機密情報の画像データであるか否かを判断する機密情報判断手段を備え、前記印刷データ作成手段は、前記印刷枚数判断手段によって印刷枚数が複数であると判断され、且つ前記機密情報判断手段によって機密情報であると判断された場合に、前記所定の図形の構成部分を印刷する印刷データを作成することを特徴とする。
また、本発明の請求項8に記載の印刷装置は、請求項1乃至7のいずれかに記載の印刷データ作成装置と、前記印刷データ作成装置によって作成された印刷データの印刷を行う印刷手段とを備えている。
また、本発明の請求項9に記載の印刷データ作成プログラムは、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明の各種処理手段としてコンピュータを機能させる。
本発明の請求項1に記載の印刷データ作成装置によると、複数の被印刷媒体がページ順に重ねられることによって、被印刷媒体の端部が集合して形成される端部集合面に所定の図形が形成されるように、それぞれの被印刷媒体の端部に所定の図形の構成部分を印刷する印刷データを作成することができる。これにより、印刷が行われた複数の被印刷媒体をページ順に重ねると、表紙側を正面側とした場合の紙束の右側面側、左側面側、平面側、及び底面側(本発明における「端部集合面」)の少なくともいずれかに所定の図形が形成される。従って、印刷物の閲覧者は、この図形が正しく形成されているか否かを確認するだけで、被印刷媒体の一部の抜き取りや紛失を容易に確認することができる。また、図形の構成部分の印刷位置まで正確にコピーすることは困難であるため、図形が正しく形成されているか否かを確認することで、その被印刷媒体が正規に印刷されたものであるか、コピーによる複製物であるかを判別することができる。さらに、その被印刷媒体への印刷を指示した人物や印刷時間、印刷場所等を被印刷媒体に対応付けることで、これらの様々な情報を管理することができる。
また、本発明の請求項2に記載の印刷データ作成装置は、請求項1に記載の発明の効果に加え、それぞれの被印刷媒体に印刷する抜き取り確認図形の構成部分の所定方向側の端が、隣り合うページの構成部分における所定方向側とは反対側の端と一致するように印刷データを作成することができる。すなわち、端部集合面では、各構成部分が一定方向に順に連なって抜き取り確認図形を形成することとなる。これにより、複数の被印刷媒体の一部が抜き取られていたり、紛失されていたり、ページ順に重ねられていなかったりすると、抜き取り確認図形の構成部分の端同士が一致しなくなる。従って、印刷物の閲覧者は、抜き取り確認図形の構成部分の端同士が一致していることを確認するだけで、被印刷媒体の抜き取り、紛失、及びページ順の間違いがないことを容易に確認することができる。
また、本発明の請求項3に記載の印刷データ作成装置は、請求項2に記載の発明の効果に加え、抜き取り確認図形を構成する各構成部分の端部に沿う方向の幅が、端部の長さを印刷枚数で割ることによって算出される。そして、端部集合面に形成される抜き取り確認図形が、矩形となる端部集合面の対角線上に延びる直線となる。従って、印刷物の閲覧者は、端部集合面の角に直線が掛かっていなければ、最初のページ又は最後のページが抜けていることを容易に認識することができる。また、直線の歪みや凹凸の存在がある場合には、ページの抜けや複製等の異常があることにすぐに気付くことができるため、抜き取り確認図形が他の図形である場合よりも、容易に異常に気付くことができる。
また、本発明の請求項4に記載の印刷データ作成装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加え、印刷データを作成する毎に異なるパターンの管理図形を形成する印刷データを作成することができる。従って、その被印刷媒体への印刷を指示した人物や印刷時間、印刷場所等を管理図形に対応付けて、情報を管理することができる。
また、本発明の請求項5に記載の印刷データ作成装置は、請求項4に記載の発明の効果に加え、管理図形のパターンを、共に被印刷媒体に印刷される情報に関連付けて記憶することができるため、管理図形のパターンを用いて情報を管理することができる。
また、本発明の請求項6に記載の印刷データ作成装置は、請求項4又は5に記載の発明の効果に加え、印刷データを作成する毎に、被印刷媒体の端部に沿う方向の構成部分の幅、最初のページでの構成部分の印刷位置、最後のページでの構成部分の印刷位置の少なくともいずれかが互いに異なる印刷データを作成することができる。従って、これらに基づいて管理図形を特定し、情報を管理することができる。
また、本発明の請求項7に記載の印刷データ作成装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明の効果に加え、画像データ取得手段によって取得された画像データが機密情報の画像データでなければ、端部集合面に所定の図形を形成するための印刷データが作成されることはない。従って、無駄な処理が行われることを防止し、被印刷媒体の抜き取りの確認や情報の管理等を行う必要がある場合のみ、所定の図形を端部集合面に形成することができる。
また、本発明の請求項8に記載の印刷装置は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明の効果を有する印刷データを印刷することができる。
また、本発明の請求項9に記載の印刷データ作成プログラムは、コンピュータに実行させることにより、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明の効果を奏することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態の印刷装置1の概略について説明する。図1は、本実施の形態の印刷装置1のハードウェアブロック図である。
印刷装置1は、コンピュータ装置2や、画像や文字からなる情報を表示する携帯型の端末等のデバイスから画像データを受信し、受信した画像データに基づいて印刷データを作成して、被印刷媒体である印刷用紙への印刷を実行する。ここで、印刷装置1は、複数の印刷用紙がページ順に重ねられることによって、印刷用紙の端部が集合して形成される面(以下、「端部集合面」という。)に所定の図形が形成されるように、それぞれの印刷用紙の端部に所定の図形の構成部分を印刷する印刷データを作成することができる。これにより、画像データに含まれていた情報の内容と、所定の図形の構成部分とが印刷された印刷用紙をページ順に重ねると、表紙側を正面側とした場合の右側面側に、印刷された情報の管理を可能とするための管理図形30(図4参照)が形成される。さらに、表紙側を正面側とした場合の平面側には、印刷用紙の抜き取りや紛失の確認を容易とするための抜き取り確認図形40(図4参照)が形成される。
尚、印刷装置1が受信する画像データには、画像や文字からなる情報の内容に加えて、送信元のデバイスを識別するIDや印刷枚数等を示すデータが含まれている。そして、画像データに含まれている情報の内容が機密情報であり、且つ印刷枚数が複数である場合には、印刷装置1は、送信元、印刷日時、印刷枚数、印刷用紙のサイズに応じて印刷データを作成する。これにより、管理図形30及び抜き取り確認図形40を端部集合面に形成することができるが、これらの詳細は図4及びフローチャートを参照して後述する。
次に、図1乃至図3を参照して、印刷装置1のハードウェア構成について説明する。図2は、RAM12の受信画像データ記憶エリア121の構成を示す模式図であり、図3は、HDD13の管理図形パターンデータ記憶エリア131の構成を示す模式図である。
図1に示すように、印刷装置1には、印刷装置1の制御を司るCPU10が設けられている。そして、このCPU10には、ROM11、RAM12、ハードディスク装置(HDD)13、電源スイッチ14、入力部15、表示部16、印刷制御部17、カウンタ18、及び外部通信I/F19がバスを介して接続されている。RAM11には各種のデータが一時的に記憶され、ROM12には印刷装置1を動作させるためのプログラム等が記憶される。また、HDD13は各種情報を記憶し、電源スイッチ14によって印刷装置1の電源の入切が行われる。また、入力部15は、ユーザによる各種入力を受け付けるボタンや十字キーからなり、表示部16には画像が表示される。また、印刷制御部17は印刷動作を制御し、カウンタ18は時間の計測等の数値制御を行う。そして、印刷装置1は、外部通信I/F19によってコンピュータ装置2等の他のデバイスに接続される。尚、本実施の形態では、画像や文字からなる情報の内容を含む画像データから、印刷に必要な印刷データへの展開を、印刷装置1において行っている。しかし、印刷装置1では、印刷に必要なデータの形式で画像データを受信し、管理図形30及び抜き取り確認図形40を形成するための印刷データのみを作成する構成としてもよい。
次に、RAM12について説明する。図1に示すように、RAM12には、受信画像データ記憶エリア121、及び作成印刷データ記憶エリア122が少なくとも設けられている。受信画像データ記憶エリア121には、コンピュータ装置2等の他のデバイスから受信した画像データが一時的に記憶される。また、作成印刷データ記憶エリア122には、受信した画像データに基づいて作成された印刷データが記憶される。
次いで、RAM12の受信画像データ記憶エリア121の詳細について説明する。先述したように、本実施の形態の印刷装置1が他のデバイスから受信する画像データには、画像や文字からなる情報の内容に加えて、送信元のデバイスを識別するID、印刷枚数、用紙サイズ、及び情報の内容が機密情報であるか否かを示すデータが含まれている。そして、図2に示すように、RAM12の受信画像データ記憶エリア121には、送信元ID記憶エリア1211と、内容記憶エリア1212と、印刷枚数記憶エリア1213と、用紙サイズ記憶エリア1214と、機密性記憶エリア1215とが設けられている。送信元ID記憶エリア1211には、送信元のデバイスを識別するIDが記憶され、内容記憶エリア1212には、画像や文字からなる情報の内容が記憶される。また、印刷枚数記憶エリア1213には印刷枚数が記憶され、用紙サイズ記憶エリア1214には用紙サイズが記憶される。また、機密性記憶エリア1215には、画像や文字からなる情報の内容が機密情報であるか否かが記憶される。図2に示す例では、画像データの送信元であるデバイスのIDが「g7h8」であり、印刷枚数が20枚であり、用紙サイズがA4サイズであることを示している。また、機密性記憶エリア1215には、受信した画像データに含まれる情報が機密情報であることを示す「1」が記憶されている。
次に、HDD13について説明する。図1に示すように、HDD13には、管理図形パターンデータ記憶エリア131が少なくとも設けられている。図3に示すように、管理図形パターンデータ記憶エリア131には、印刷用紙に印刷された情報の管理を可能とするための管理図形30(図4参照)のパターン(以下、「管理図形パターン」という。)が、画像データの送信元及び印刷日時に対応付けられて記憶されている。詳細には、管理図形パターンとして、送信元のデバイスを識別する送信元IDと、印刷日時と、印刷枚数「P」と、管理図形を作成する際に用いられた値「X,Y,Z」と、管理図形30の線幅「D」と、1ページ目における管理図形30の構成部分31(図4参照)の印刷位置を示す座標と、最終ページにおける構成部分32(図4参照)の印刷位置を示す座標とが記憶される。
次に、図4を参照して、管理図形30及び抜き取り確認図形40について説明する。図4は、第一端部集合面23に管理図形30が、第二端部集合面24に抜き取り確認図形40が形成された印刷物21の一例を示す図である。
管理図形30は、印刷物21を構成する各印刷用紙に印刷された情報の管理を可能とするための図形である。本実施の形態では、複数の印刷用紙がページ順に重ねられることにより、表紙22を正面側とした場合の右側面側である第一端部集合面23に、管理図形30が直線上に形成される。この管理図形30を形成するための印刷データは、印刷日時の日、時、分によって決定される3つの値「X,Y,Z」及び印刷枚数に基づいて、印刷が行われる毎に管理図形パターンが異なるように作成される。すなわち、管理図形30は、線幅D、1ページ目における構成部分31の印刷位置、及び最終ページにおける構成部分32の印刷位置、印刷枚数Pによって決定される構成部分の数の少なくともいずれかが、既に印刷された他の印刷物の管理図形と異なるように作成される。そして、管理図形パターンが、画像データの送信元及び印刷日時に対応付けられて、管理図形パターンデータ記憶エリア131(図3参照)に記憶される。従って、印刷装置1に画像データを送信したデバイスや印刷が実行された日時を、管理図形30によって特定することができる。また、各デバイスとデバイスの使用者とを関連付けて記憶することにより、印刷を実行させたユーザを特定することもできる。よって、印刷物21に印刷されている情報の管理、すなわち、印刷を実行させたユーザや印刷日時の管理を容易に行うことができる。
抜き取り確認図形40は、印刷用紙の抜き取りや紛失の確認を容易とするための図形である。本実施の形態では、印刷済みの複数の印刷用紙がページ順に重ねられることにより、表紙22を正面側とした場合の平面側である第二端部集合面24の対角線上に、抜き取り確認図形40が形成される。この抜き取り確認図形40を構成する各印刷用紙の構成部分は、左側の端部が前のページの構成部分の右側の端部と一致し、且つ右側の端部が次のページの構成部分の左側の端部と一致する位置に印刷される。さらに、各構成部分の左右方向の幅は全て等しい。これにより、複数の印刷用紙の一部が抜き取られていたり、紛失されていたり、ページ順に重ねられていなかったりすると、抜き取り確認図形40の構成部分の端同士が一致しなくなる。また、印刷物21がコピーによって複製された場合には、構成部分の印刷位置まで正確にコピーを行うことが不可能であるため、抜き取り確認図形40が対角線上に真っ直ぐに形成されなくなる。従って、印刷用紙の抜き取り、紛失、ページ順の間違い、コピーによる複製等の確認を、抜き取り確認図形40によって容易に行うことができる。
次に、上記のように構成された印刷装置1の動作について、図5乃至図7を参照して説明する。図5は、印刷装置1で行われるメイン処理のフローチャートであり、図6は、メイン処理で実行される管理図形データ作成処理のフローチャートであり、図7は、メイン処理で実行される抜き取り確認図形データ作成処理のフローチャートである。印刷装置1では、電源が投入されるとROM11に記憶されているプログラムがRAM12に読み出されて起動され、図5に示すメイン処理がCPU10により実行される。
図5に示すように、メイン処理が開始されると、まず、画像データを受信したか否かが判断される(S1)。本実施の形態の印刷装置1は、コンピュータ装置2(図1参照)や、情報を表示する携帯型の端末等のデバイスに外部通信I/F19(図1参照)を介して接続されることで、画像データを受信することができる。受信していなければ(S1:NO)、電源スイッチ14の操作による電源OFFの指示が行われたか否かが判断される(S10)。
一方で、他のデバイスから画像データを受信した場合には(S1:YES)、受信した画像データがRAM12の受信画像データ記憶エリア121(図2参照)に記憶される(S2)。そして、受信画像データ記憶エリア121における機密性記憶エリア1215の値により、受信した画像データが機密情報の画像データであるか否かが判断される(S3)。機密情報でないことを示す「0」が記憶されており、受信した画像データが機密情報の画像データでないと判断された場合には(S3:NO)、管理図形30及び抜き取り確認図形40を形成するための印刷データは作成されずに、情報の内容を印刷するための印刷データのみが作成されて(S8)、印刷処理が行われ(S9)、電源がOFFとされたか否かの判断へ移行する(S10)。
また、機密情報であることを示す「1」が機密性記憶エリア1215に記憶されており、受信した情報が機密情報であると判断された場合には(S3:YES)、印刷枚数が複数であるか否かが判断される(S4)。本実施の形態の印刷装置では、複数の印刷用紙が重ねられることによって形成される端部集合面23,24(図4参照)を利用して図形を形成する。従って、受信画像データ記憶エリア121の印刷枚数記憶エリア1213に、印刷枚数が1枚であることが記憶されている場合には(S4:NO)、情報の内容を印刷するための印刷データのみがそのまま作成される(S8)。そして、受信した画像データが機密情報の画像データであり(S3:YES)、印刷枚数が複数であれば(S4:YES)、管理図形データ作成処理が行われる(S5)。
図6に示すように、管理図形データ作成処理では、まず、カウンタ18(図1参照)によって計時されている現在の日(A)、時(B)、分(C)が読み出される(S11)。例えば、その時点での日時が11月25日の20時50分であれば、日を示す「25」がAとして、時を示す「20」がBとして、分を示す「50」がCとして読み出される。次いで、印刷枚数記憶エリア1213(図2参照)から印刷枚数Pが読み出される(S12)。そして、用紙サイズ記憶エリア1214(図2参照)に記憶されている用紙サイズに基づいて、印刷用紙の縦幅Hが読み出される(S13)。詳細には、印刷用紙の縦幅H及び横幅Lが、各用紙サイズに応じてROM11に記憶されており、ここでは、用紙サイズに応じた縦幅HがROM11から読み出されることとなる。
次いで、印刷用紙の右上の端部を原点Oとし、下方を正とするx座標(図4参照)が設定される(S14)。このx座標の1単位当たりの長さは、用紙サイズに基づいて読み出された縦幅Hによって変化し、「H/60(mm)」とされる。従って、x座標が60である位置は、印刷用紙の右下の端部となる。
次いで、管理図形パターンを決定するための値であるX,Y,Zの値が決定される。まず、「3N=A」となるNが存在するか否か、すなわち、既に読み出されているAの値が3の倍数であるか否かが判断される(S15)。この条件を満たすNが存在する場合には(S15:YES)、「X=A,Y=B,Z=C」とされて(S16)、S20の処理へ移行する。また、「3N=A」となるNが存在しない場合には(S15:NO)、「3N=A−1」となるNが存在するか否かが判断され(S17)、存在する場合には(S17:YES)、「X=B,Y=C,Z=A」とされて(S18)、S20の処理へ移行する。また、「3N=A−1」となるNが存在しない場合には(S17:NO)、「X=C,Y=A,Z=B」とされて(S19)、S20の処理へ移行する。
次いで、管理図形パターンを決定する各種処理が行われる。まず、管理図形30を形成する各構成部分のx座標方向の幅である線幅Dが、「D=0.1X(mm)」により求められる(S20)。そして、pページ目(1≦p≦P)における管理図形30の構成部分の中心の座標xが、「x={(Z−Y)(p−1)/(P−1)}+Y」により求められる(S21)。従って、管理図形30の構成部分の中心座標xは、1ページ目では「x=Y」となり、最終ページであるPページ目では「x=Z」となる。また、ページ数が1ページ進む毎に一定量だけxの値が変化するため、第一端部集合面23(図4参照)には、管理図形30が直線上に形成されることとなる。
次いで、管理図形パターンの重複を避けるための処理が行われる。まず、HDD13の管理図形パターンデータ記憶エリア131(図3参照)に記憶されている、既に印刷データの作成が行われた機密情報についての管理図形パターンが読み出される(S22)。そして、読み出された管理図形パターンの中に同じパターンがあるか否かが判断される(S23)。詳細には、線幅Dと、1ページ目における管理図形の構成部分の座標と、最終ページにおける管理図形の構成部分の座標と、印刷枚数とが比較されて、全てが同じ値となっていれば、同じパターンが存在していると判断される。そして、同じパターンがあった場合には(S23:YES)、線幅Dの値に0.1が追加されて(S24)、S23の判断へ戻る。同じパターンが無い場合には(S23:NO)、そのままメイン処理に戻る。
次いで、図5の説明に戻り、管理図形データ作成処理(S5)が終了すると、作成された管理図形データが、送信元のデバイス及び印刷日時に関連付けられて、管理図形パターンデータ記憶エリア131に記憶される(S6)。そして、抜き取り確認図形データ作成処理が行われる(S7)。
図7に示すように、抜き取り確認図形データ作成処理では、まず、印刷枚数記憶エリア1213(図2参照)から印刷枚数Pが読み出されて(S31)、印刷用紙の横幅Lが用紙サイズに基づいて読み出される(S32)。そして、印刷用紙の左上の端部を原点O´とし、右方を正とするy座標(図8参照)が設定される(S33)。このy座標の1単位当たりの長さは横幅Lによって変化し、「L/P(mm)」とされる。
次いで、抜き取り確認図形40の印刷位置や幅等を決定するための各種処理が行われる。まず、抜き取り確認図形40を形成する各構成部分のy座標方向の幅である線幅Kが、「K=L/P(mm)」により求められる(S34)。すなわち、抜き取り確認図形40の構成部分の線幅Kは、y座標の1単位当たりの長さに等しい。そして、pページ目における抜き取り確認図形40の構成部分の左端の座標yが、「y=p−1」により求められて(S35)、メイン処理に戻る。従って、抜き取り確認図形40の構成部分の左端の座標yは、1ページ目では「y=0」となり、最終ページであるPページ目では「y=P−1」となる。また、ページ数が1ページ進む毎に1座標分だけyの値が変化し、各構成部分のy座標方向の線幅Kは1座標分の長さに等しい。よって、1ページ目の構成部分は印刷用紙の左上の端部に掛かり、最終ページの構成部分は印刷用紙の右上の端部に掛かる。さらに、第二端部集合面24(図4参照)には、抜き取り確認図形40が対角線上に形成されることとなる。
次いで、図5の説明に戻り、抜き取り確認図形データ作成処理(S7)が終了すると、印刷データが作成されて、作成された印刷データがRAM12の作成印刷データ記憶エリア122に記憶される(S8)。ここで、管理図形データ及び抜き取り確認図形データが作成されている場合には、画像データに含まれている情報の内容と共に、各印刷用紙の端部に図形の構成部分を印刷する印刷データが作成される。尚、管理図形30及び抜き取り確認図形40の構成部分の、端部に垂直な方向の幅は、あらかじめ特定の値に定められている。そして、作成された印刷データに基づいて印刷用紙への印刷が行われて(S9)、電源がOFFとされたか否かが判断される(S10)。電源がOFFとされていなければ(S10:NO)、S1の判断へ戻り、電源がOFFとされた場合には(S10:YES)、メイン処理を終了する。
次に、印刷物の端部集合面に形成される管理図形及び抜き取り確認図形について説明する。図8は、印刷物61を構成する5枚の印刷用紙62を並べた図であり、図9は、図8に示す印刷用紙62をページ順に重ねた場合の第二端部集合面64を示す図である。
まず、図2乃至図4を参照して、管理図形30について説明する。図4に示す例では、図2に示す例の画像データから、図3に示す「印刷4」の管理図形パターンが作成されて形成された管理図形30を示しており、管理図形パターンの作成は、先述した管理図形データ作成処理(図6参照)にて行われる。まず、印刷日時が11月25日の20時50分であるため、「A=25,B=20,C=50」とされ、印刷枚数「P=20」、A4サイズの印刷用紙の縦幅「H=297」が読み出されて、印刷用紙右端にx座標が設定される。次いで、Aの値が「3N=A−1」を満たすため、「X=B=20,Y=C=50,Z=A=25」とされて、線幅「D=2(mm)」が算出される。そして、pページ目における管理図形30の構成部分の中心座標xが、「x=−25(p−1)/19+50」によりページ毎に求められる。この結果、1ページ目における管理図形30の構成部分の座標は50、最終ページにおける構成部分の座標は25となる。
次いで、管理図形パターンの重複を避けるための処理が行われる。作成された管理図形パターンは、既に印刷データの作成が行われた「印刷3」(図3参照)の管理図形パターンと、線幅D、1ページ目の構成部分の座標、最終ページの構成部分の座標、及び印刷枚数の全てが一致している。従って、線幅Dに0.1が加算されて「D=2.1(mm)とされ、「印刷3」のパターンとは異なる管理図形パターンが作成される。そして、この管理図形パターンに基づいて印刷データが作成され、印刷が行われる。
すると、図4に示すように、印刷済みの印刷用紙がページ順に重ねられることにより、各印刷用紙の右端が集合して形成される第一端部集合面23に固有の管理図形30が形成される。この管理図形30を構成する各構成要素のx座標方向の幅は、2.1mmで一定である。また、表紙22の構成要素31の中心は、x座標の値が50であり、x座標の1単位当たりの長さが「297/60(mm)」であるため、右上の端部から「50×297/60(mm)」だけ下方となる。また、最終ページの構成要素32の中心は、x座標の値が25であるため、右上の端部から「25×297/60(mm)」となる。
次に、図8及び図9を参照して、抜き取り確認図形について説明する。ここでは、説明を簡略化するため、横幅Lが120mmである5枚の印刷用紙62によって構成される印刷物61を例に挙げ、この印刷物61の第二端部集合面64に形成される抜き取り確認図形60について説明する。抜き取り確認図形パターンの作成は、先述した抜き取り確認図形データ作成処理(図7参照)にて行われる。まず、印刷枚数「P=5」、及び印刷用紙の横幅「L=120」が読み出されて、印刷用紙上端にy座標が設定される。次いで、各構成部分のy座標方向の線幅「K=120/5=24(mm)」が算出される。そして、pページ目における抜き取り確認図形60の構成部分の左端の座標yが、「y=p−1」によりページ毎に求められる。
すると、図8に示すように、1枚目(図8における紙面手前側)の印刷用紙62には左上の端部から、2枚目には左上端部から1座標分(24mm)だけ右方を自身の左端として、それぞれy座標方向の幅が24mmの構成部分63が印刷される。同様に、3枚目には左上端部から2座標分だけ右方、4枚目には左上端部から3座標分だけ右方、5枚目には左上端部から4座標分だけ右方を自身の左端として構成部分63がそれぞれ印刷される。よって、1枚目の抜き取り確認図形60の構成部分63は印刷用紙の左上端部に、最終ページの構成部分63は印刷用紙の右上端部に掛かることになる。
そして、図9に示すように、印刷が行われた印刷用紙62がページ順に重ねられると、2〜5ページ目の構成部分63の左端は、前のページの構成部分63の右端と一致する。また、1〜4ページ目の構成部分63の右端は、次のページの構成部分63の左端と一致する。そして、抜き取り確認図形60は、第二端部集合面64の対角線上に形成されることとなる。
以上説明したように、本実施の形態の印刷装置1によれば、印刷用紙の端部が集合して形成される端部集合面23,24,64に所定の図形が形成されるように、それぞれの印刷用紙の端部に所定の図形の構成部分を印刷する印刷データを作成することができる。ユーザは、この図形が不備なく形成されていることを確認することで、機密情報の一部の抜き取り、紛失、不正なコピー等の確認を容易に行うことができる。さらに、印刷装置1へ画像データを送信したデバイスや印刷時間等と図形とを対応付けることで、画像データに含まれている機密情報の管理を行うこともできる。
詳細には、印刷データが作成される毎に、線幅Dや構成部分の印刷位置等が異なる固有の管理図形30が形成されるように印刷データを作成し、機密情報の印刷が行われた時間や印刷指示を行ったデバイスに関連付けて管理図形パターンを記憶する。これにより、管理図形30を用いた機密情報の管理を行うことができる。
また、印刷装置1では抜き取り確認図形40,60を形成するための印刷データを作成することができる。この抜き取り確認図形40,60の構成部分は、隣り合うページの構成部分の端と一致する位置に印刷されると共に、第二端部集合面24,64の対角線上に抜き取り確認図形40,60が形成される。従って、印刷用紙の一部が抜き取られていたり、紛失されていたり、ページ順に重ねられていなかったりすると、抜き取り確認図形40,60の構成部分の端同士が一致しなくなるため、印刷用紙の抜き取り等を容易に確認することが可能となる。また、第二端部集合面24,64の角に抜き取り確認図形40,60が掛かっていることを確認するだけで、最初のページ及び最後のページの抜けがないことを確認することができる。そして、印刷装置1に送信された画像データが機密情報に関するデータである場合のみ、管理図形30及び抜き取り確認図形40,60を形成する印刷データを作成することができる。よって、必要がある場合のみ、これらの図形を端部集合面23,24,64に形成させることができる。
尚、上記実施の形態において、図5に示すS1で他のデバイスから外部通信I/F19を介して画像データを受信するCPU10が「画像データ取得手段」として機能する。また、図5のS4で印刷枚数が複数であるか否かを判断するCPU10が「印刷枚数判断手段」として機能し、管理図形30及び抜き取り確認図形40が「所定の図形」に相当する。また、図5のS5〜S8で、管理図形30及び抜き取り確認図形40の構成部分を印刷する印刷データを作成するCPU10が「印刷データ作成手段」として機能する。
また、図7に示す抜き取り確認図形データ作成処理、及び図5のS8で、抜き取り確認図形40,60の構成部分を印刷する印刷データを作成するCPU10が「抜き取り確認図形データ作成手段」として機能する。また、図7のS34で、抜き取り確認図形40,60の構成部分の線幅Kを算出するCPU10が「構成部分幅算出手段」として機能する。また、図6に示す管理図形データ作成処理、及び図5のS8で、管理図形30の構成部分を印刷する印刷データを作成するCPU10が「管理図形データ作成手段」として機能し、図3に示すHDD13の管理図形パターンデータ記憶エリア131が「管理図形パターン記憶手段」に相当する。また、図5のS3で、画像データが機密情報に関する画像データであるか否かを判断するCPU10が「機密情報判断手段」として機能する。また、印刷制御部17が「印刷手段」に相当する。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。まず、本実施の形態の管理図形30及び抜き取り確認図形40,60は、いずれも端部集合面23,24,64において直線のように見える図形であるが、これらの図形は直線である必要はない。例えば、円形、多角形、キャラクタの絵、バーコード等、他の図形を管理図形30及び抜き取り確認図形40,60として印刷させることも可能である。
また、本実施の形態では管理図形30及び抜き取り確認図形40,60の2種類の図形を形成する印刷データを作成しているが、いずれか一方のみを形成する印刷データを作成してもよい。例えば、図5に示すS3の判断で機密情報の画像データでないと判断された場合には、管理図形データを作成せずに、抜き取り確認図形データのみを作成することも可能である。また、本実施の形態では、受信したデータが機密情報の画像データである場合のみ、管理図形30及び抜き取り確認図形40,60を形成する印刷データを作成しているが、機密情報の画像データでない場合にもこれらの図形を形成させる構成としてもよい。
また、HDD13の管理図形パターンデータ記憶エリアで131(図3参照)では、送信元ID、日時、印刷枚数、線幅D、1ページ目における管理図形30の構成部分の座標、最終ページにおける構成部分の座標が記憶されている。そして、これらの値が比較されることにより、同一の管理図形データ30の重複を避けているが、管理図形パターンとして記憶される値は変更が可能である。例えば、印刷枚数を記憶しなくても本発明は実現できるし、送信元IDの代わりに送信元のデバイスを使用しているユーザ名を記憶してもよい。また、カラー印刷を行うことが可能な印刷装置を使用し、管理図形30の構成部分の色を変化させて、この色を管理図形パターンとして記憶してもよい。
また、本実施の形態では、印刷装置1において印刷データを作成している。しかし、本実施の形態において説明した図形を構成するための印刷データを、画像や文字等の情報を表示する携帯型の端末や、文書や画像を作成可能なコンピュータ装置等のデバイスにおいて作成し、作成された印刷データを印刷装置へ送信する構成としてもよい。すなわち、本発明に係る「印刷データ作成装置」は、印刷を行う印刷装置に限られず、他の様々な装置として実現することができる。また、本実施の形態では、他のデバイスから画像データを受信した場合に(S1:YES、図5参照)、印刷データを作成する処理を行っている。しかし、画像データをあらかじめ記憶しておき、記憶されている画像データの印刷指示が入力された場合に、その画像データについての印刷データを作成する構成としてもよい。
また、本実施の形態では、各印刷用紙の端部、すなわち、印刷用紙の縁に図形の構成部分を印刷することで、端部集合面に管理図形30及び抜き取り確認図形40,60を形成する。従って、印刷用紙に縁を形成しない印刷処理である、所謂縁なし印刷を実行する必要がある。そこで、印刷データの作成が行われる前に(例えば、図5に示すS2とS3との間)、縁なし印刷を実行できるか否かを判断してもよい。この場合、縁なし印刷を実行できないと判断されれば、図形の構成部分を印刷させる印刷データを作成せずに、画像データの内容のみを印刷させる印刷データを作成すればよい(S8、図5参照)。また、縁なし印刷を実行できない場合に、印刷データの作成自体を行わないように設定してもよい。