JP2009189493A - 凍結乾燥容器および凍結乾燥容器の製造方法 - Google Patents

凍結乾燥容器および凍結乾燥容器の製造方法 Download PDF

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克行 吉川
Toshiharu Iwasaki
年晴 岩崎
Manabu Nakamura
学 中村
Masahiro Ito
雅浩 伊藤
Toshiro Sakabe
敏郎 坂部
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Abstract

【課題】製造コストが安価で、破損しにくく、ガスバリア性および凍結乾燥時の熱伝導性に優れ、さらに使用後の分別廃棄が不要な凍結乾燥容器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の凍結乾燥容器10は、凍結乾燥物が収容されるプラスチック製の容器本体11と、容器本体11に嵌合されるプラスチック製の栓21とを備え、容器本体11に、容器本体11を継ぎ目なく覆うアルミニウム層12が形成され、栓21にガスバリア性フィルム22が形成されていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、凍結乾燥容器および凍結乾燥容器の製造方法に関する。
一般に、蛋白質製剤、抗生物質などの医療用薬剤には、有効成分の安定性を保つため、凍結乾燥処理が施される。
凍結乾燥物は以下の操作により凍結乾燥容器に収容される。まず、凍結乾燥容器の容器本体内に、凍結乾燥物の原液を充填する。次に、容器本体に栓を半打栓し、該容器本体を、凍結乾燥装置内の加熱と冷却機能を備えた棚(加熱冷却棚)の上に配置する。さらに、容器本体を該加熱冷却棚で冷却し、凍結乾燥物の原液を凍結処理する。次に、原液を凍結状態に保ったまま減圧乾燥する。その後、凍結乾燥装置内に窒素ガスを供給して容器本体内を大気圧に戻すことで、容器本体内をガス置換した後、容器本体に栓を完全打栓する。このようにして、凍結乾燥容器に凍結乾燥物が収容される。
このような凍結乾燥容器から凍結乾燥物を取り出すには、凍結乾燥容器の栓に注射針を貫通させ、凍結乾燥容器内に凍結乾燥物を溶解するための所定の溶解液を注入し、該溶解液で凍結乾燥物を溶解する。その後、凍結乾燥物の溶液を注射針で吸引する。このようにして、凍結乾燥物の溶液を凍結乾燥容器から取り出す。
このような凍結乾燥容器の容器本体には、主にガラス容器が用いられてきた。ガラス容器はガスバリア性に優れるため、酸素や水分が容器内に透過せず、凍結乾燥物が変質しにくい。しかし、ガラス容器は衝撃に弱く、破損しやすいという問題があった。
一方、ガラス容器に代わるものとして、特許文献1には、ステンレス容器を用いた凍結乾燥容器が提案されている。ステンレス容器は優れたガスバリア性を有し、かつガラス容器に比べて破損しにくいが、材料費および成形加工費が嵩むため、容器コストが高いという問題があった。
また、ガラス容器に代わるものとして、プラスチック容器を用いた凍結乾燥容器が種々製品化されている。プラスチック容器は、ガラス容器に比べて破損しにくく、かつステンレス容器より製造コストが安価である。
特開平6−30974号公報
しかしながら、従来のプラスチック容器は、酸素や水分が容器内に透過し、ガラス容器やステンレス容器に比べてガスバリア性に劣るという問題があった。このため、プラスチック容器でガスバリア性を確保するには、容器の肉厚を厚くする必要があった。ところが、プラスチック容器は、ガラス容器やステンレス容器に比べて熱伝導性に劣るため、容器の肉厚が厚いと、凍結乾燥時の凍結処理に時間がかかるという問題があった。
ところで、従来の凍結乾燥容器用の栓には、ゴム栓が使用されている。しかし、ゴム栓は高価で、凍結乾燥容器の製造コストを押し上げる原因となっていた。
また、従来の凍結乾燥容器は、打栓後にゴム栓が容器本体から脱落しないよう、容器本体とゴム栓とをアルミニウム製の留め具でかしめていた。また、このような凍結乾燥容器は、使用後に、容器本体とゴム栓とアルミニウム製の留め具とを分別廃棄する必要があった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、製造コストが安価で、破損しにくく、ガスバリア性および凍結乾燥時の熱伝導性に優れ、さらに使用後の分別廃棄が不要な凍結乾燥容器およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)凍結乾燥物が収容されるプラスチック製の容器本体と、該容器本体に嵌合されるプラスチック製の栓とを備えた凍結乾燥容器であって、
前記容器本体に、該容器本体を継ぎ目なく覆うアルミニウム層が形成され、
前記栓にガスバリア性フィルムが形成されていることを特徴とする凍結乾燥容器。
(2)前記栓に、該栓に貫通させる注射針に密着し、該栓に空隙が生じないようにする再封止層が設けられている(1)に記載の凍結乾燥容器。
(3)凍結乾燥物が収容されるプラスチック製の容器本体と、該容器本体に嵌合されるプラスチック製の栓とを備えた凍結乾燥容器の製造方法であって、
アルミニウム層で覆われた前記容器本体を成形し、
プラスチックから成形された前記栓にガスバリア性フィルムを溶着することを特徴とする凍結乾燥容器の製造方法。
(4)アルミニウム層の両面に合成樹脂層を形成したアルミニウム積層フィルムを深絞り成形して、容器本体を成形することを特徴とする(3)に記載の凍結乾燥容器の製造方法。
本発明の凍結乾燥容器は、製造コストが安価で、破損しにくく、ガスバリア性および凍結乾燥時の熱伝導性に優れ、さらに使用後の分別廃棄が不要である。本発明の凍結乾燥容器の製造方法によれば、この凍結乾燥容器を効率よく製造できる。
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態例の凍結乾燥容器10は、凍結乾燥物が収容されるプラスチック製の容器本体11と、容器本体11に嵌合されるプラスチック製の栓21とを備える。
容器本体11は、この実施形態例で、図2に示すように断面円形とされているが、容器本体11が自立できるものであれば他の断面形状であってもよい。
容器本体11は、アルミニウム積層フィルムからなり、該アルミニウム積層フィルムは、アルミニウム層12と、アルミニウム層12の内側に形成された合成樹脂内層13と、アルミニウム層12の外側に形成された合成樹脂外層14とからなる。また、容器本体11の上端は、凍結乾燥物の原液を充填する開口15とされている。また、開口15の内周には、中栓16が設けられている。
容器本体11の肉厚は、50〜1000μmが好ましい。50μm以上であれば、容器本体11の強度を充分に確保できる。1000μm以下であれば、容器本体11の熱伝導性を充分に確保できる。
なお、容器本体11を構成するアルミニウム積層フィルムは、凍結乾燥容器10をプラスチックとして廃棄することを鑑みて、質量比でプラスチックを主とするのが好ましい。
アルミニウム層12は、アルミニウムにより形成されている。該アルミニウムとしては、純アルミニウムまたはアルミニウム合金が挙げられる。該アルミニウム合金としては、アルミニウムを主体とし、これに鉄、銅、マンガン、ニッケル、マグネシウム、亜鉛などを含有させたものが挙げられる。
アルミニウムは、金属の中でも熱伝導性に優れている。また、アルミニウムは、比較的柔らかい金属であるため、加工性に優れている。また、アルミニウムは、金属の中でも価格が安価であるため、入手も容易である。
アルミニウム層12は、アルミニウム箔から形成されたものであってもよく、合成樹脂内層13または合成樹脂外層14にアルミニウムを蒸着させて形成されたものであってもよい。
アルミニウム層12の厚さは1〜400μmが好ましく、15〜300μmがより好ましい。アルミニウム層12の厚さが1μm以上であれば、充分なガスバリア性を有することができ、かつ容器本体11の強度を充分なものとすることができる。アルミニウム層12の厚さが400μm以下であれば、アルミニウムの使用量を抑えることができる。
アルミニウム層12は、容器本体11に、容器本体11を継ぎ目なく覆うように形成されており、容器本体11のガスバリア層として機能する。これにより、本発明の凍結乾燥容器10は、優れたガスバリア性を有することができる。
また、本発明の凍結乾燥容器10は、アルミニウム層12により容器本体11のガスバリア性を充分に確保でき、また、アルミニウム層12が容器本体11の剛性を増強することから、容器本体11の肉厚を薄くすることができる。さらにアルミニウム層12はアルミニウムから形成されているため、熱伝導性に優れている。したがって、本発明の凍結乾燥容器10は、優れた熱伝導性を有することができる。
合成樹脂内層13を形成する合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂およびこれらの共重合体や混合樹脂などが挙げられる。中でも、凍結乾燥物への影響が少ないポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、合成樹脂内層13は、複数の層からなる多層構造とされていてもよい。
合成樹脂内層13の厚さは1〜600μmが好ましい。合成樹脂内層13の厚さが1μm以上であれば、取り扱い時の擦れなどからアルミニウム層12を充分に保護することができる。合成樹脂内層13の厚さが600μm以下であれば、容器本体11の熱伝導性を充分に確保することができる。
合成樹脂外層14を形成する合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂およびこれらの共重合体や混合樹脂などが挙げられる。また、合成樹脂外層14は、複数の層からなる多層構造とされていてもよい。
合成樹脂外層14の厚さは1〜600μmが好ましい。合成樹脂外層14の厚さが1μm以上であれば、取り扱い時の擦れなどからアルミニウム層12を充分に保護することができる。合成樹脂内層13の厚さが600μm以下であれば、容器本体11の熱伝導性を充分に確保することができる。
なお、この実施形態例では、アルミニウム層12、合成樹脂内層13および合成樹脂外層14で形成された容器本体11を例示したが、本発明は容器本体11がプラスチック製で、かつ容器本体11を継ぎ目なく覆うアルミニウム層12が形成されていればよい。したがって、容器本体11は、アルミニウム層12と合成樹脂内層13のみで形成されたものであってもよく、アルミニウム層12と合成樹脂外層14のみで形成されていてもよい。また、本発明におけるアルミニウム層12はアルミニウムを主体とするものであるが、アルミニウム以外の金属、例えば、鉄、銅、マグネシウムなどの各種金属を主成分として用いてもよい。
中栓16は、開口15を補強し、容器本体11と栓21とをより堅固に嵌合するために設けられる。
中栓16を形成する樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などのプラスチック、および熱可塑性エラストマー、ゴムが挙げられる。中栓16は、容器本体11と栓21との嵌合をより確実にするためのものである。中栓16は、容器本体11と溶着され、気密性をより完全とすることが好ましい。
また、後述する栓21の脚部24に相当する部分を中栓16に設けて、当該部分の外周面側と、脚部を具備しない栓の内周面側とが接して嵌合する構造とすることができるようにしてもよい。
なお、中栓16は、必須の部品ではなく、容器本体11と栓21とを直接嵌合する構成にした場合には、省略してもよい。
栓21は、図1に示すように、打栓により容器本体11の開口15を塞ぐ頭部23と、頭部23の下方に連続して形成され、打栓により開口15に嵌合される脚部24とからなり、この実施形態例では頭部23の内側にガスバリア性フィルム22が形成されている。なお、脚部24は、この切欠き28の形状に限定されること無く、半打栓の状態で凍結乾燥容器内外を連通させ、凍結乾燥しうる機能を有していれば、どのような形状であってもよい。また、頭部23には、図1、3に示すように、天面25に孔26が設けられている。孔26は、凍結乾燥容器10内への溶解液の注入および凍結乾燥物の溶液の取り出しを行う注射針を挿入する孔である。なお、孔26は、ガスバリア性フィルム22で塞がれている。注射針の挿入の際、該注射針はガスバリア性フィルム22を貫通して、凍結乾燥容器10内に挿入される。
栓21を形成する合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。中でも、凍結乾燥物への影響が少ないポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ガスバリア性フィルム22は、酸素バリア性、水蒸気バリア性を有するフィルムである。ガスバリア性フィルム22の酸素バリア性の指標となる酸素透過量は、0〜0.5ml/m/24hrs/MPaであることが好ましく、0〜0.1ml/m/24hrs/MPaであることがより好ましい。ガスバリア性フィルム22の水蒸気バリア性の指標となる水蒸気透過量は、0〜1.0g/m/24hrsであることが好ましく、0〜0.5g/m/24hrsであることがより好ましい。
ガスバリア性フィルム22の具体例としては、銅、アルミニウム、マグネシウムなどの金属からなる5〜100μmの金属箔フィルム、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などからなるフィルムに、シリカ、アルミニウム、アルミナなどを蒸着させた蒸着フィルム、5〜100μm程度の厚みの金属箔を、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂などで挟み込んだ金属箔積層フィルム、PETやセロファンなどのフィルムにポリビニリデンクロライド(PVDC)をコートしたKコートフィルム、バリア性を有する有機系および/または無機系のバリア性材料をポリエステルまたはポリアミドなどからなるフィルムにコートしたコート系バリアフィルムが挙げられる。また、フィルムの原材料としてポリビニルアルコール系樹脂(PVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、PVDC、メタキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(MXD)を用いたフィルム、さらには、これら原材料を用いたフィルムと前述した他のガスバリアフィルムとをドライラミネート法などにより積層した積層フィルム、さらには、これら原材料とポリオレフィン樹脂などとを共押出にて積層した共押出系バリアフィルムが挙げられる。なお、特に優れたガスバリア性が要求される場合、ガスバリア性フィルム22には、ガスバリア性に特に優れたアルミニウム積層フィルムが好ましく用いられる。
ガスバリア性フィルム22は市販品であってもよく、例えば、凸版印刷株式会社製の「GLフィルム」、大日本印刷株式会社製の「IBフィルム」、三菱樹脂株式会社製の「テックバリア」、東セロ株式会社製の「マックスバリア」、株式会社クラレ製の「エバールフィルム」や「クラリスタ」、株式会社クレハ製の「ベセーラ」、旭化成株式会社製の「サランUB」、タマポリ株式会社製の「ハイトロンBX」などが挙げられる。
ガスバリア性フィルム22の厚さは、樹脂の種類にもよるが、概ね10〜100μmが好ましく、20〜80μmがより好ましい。ガスバリア性フィルム22の厚さが10μm以上であれば、充分なガスバリア性を確保することができる。ガスバリア性フィルム22の厚さが100μm以下であれば、ガスバリア性フィルム22に注射針を貫通させやすい。
なお、この実施形態例では、ガスバリア性フィルム22は、頭部23の内側に形成されているが、本発明はこれに限らず、頭部23の外側にガスバリア性フィルム22が形成されていてもよく、頭部23の内側および外側にガスバリア性フィルム22が形成されていてもよい。
ガスバリア性フィルム22の表面には、ガスバリア性フィルム22を保護する保護層が設けられていることが好ましい。これにより、擦れなどによるガスバリア性フィルム22のガスバリア層の損傷をより確実に防止でき、ガスバリア性を維持できる。
前記保護層を形成する樹脂としては、PETなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などが挙げられる。前記保護層の厚さとしては、5〜100μmが好ましい。
ガスバリア性フィルム22と頭部23との間には、ガスバリア性フィルム22と頭部23との接合を強固にする接着層(不図示)が形成されていることが好ましい。これにより、凍結乾燥時の温度変化に基づくガスバリア性フィルム22と頭部23との膨張率および収縮率の差により発生する物理的刺激や、頭部23を透過しうる内容物からの化学的刺激などにより、ガスバリア性フィルム22が頭部23から剥離することを防止でき、良好なガスバリア性を維持できる。なお、この接着層は、頭部23の樹脂と接着可能な、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂、または公知の接着剤や接着性樹脂から形成される。また、この接着層の厚みは5〜100μmが好ましい。前記接着剤としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、エステル系接着剤などが挙げられる。前記接着性樹脂としては、変性ポリエチレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
孔26の大きさは、挿入される注射針の直径より大きいものとされ、概ね1〜10mmの口径が好ましい。なお、この実施形態例では、孔26を有した凍結乾燥容器10を示したが、本発明はこれに限らず、孔26を有さない代わりに、天面25を注射針が貫通できる程度に薄い肉厚とされた栓であってもよい。
脚部24には、図1に示すように、切欠き28が設けられている。切欠き28は、凍結乾燥物の原液の減圧乾燥において、半打栓された凍結乾燥容器10内外を繋ぎ、凍結乾燥容器10内から空気及び水分を逃がすために設けられている。
この実施形態例では、栓21に、凍結乾燥物の取り出しの際、栓21に貫通させる注射針に密着し、栓21に空隙が生じないようにする再封止層27が設けられている。再封止層27により、凍結乾燥物の取り出しの際、注射針を貫通させても容器内の密閉状態を維持できる。これにより、外界の空気に含まれるホコリ、雑菌などの異物が凍結乾燥容器10内に混入するのを防止でき、かつ凍結乾燥物およびその溶液が外界に漏れ出すのを防止できる。
再封止層27は、少なくとも孔26を覆うように設けられていればよく、例えばこの実施形態例のように、ガスバリア性フィルム22に貼着された状態で設けられる、またはガスバリア性フィルム22内に多層フィルムとしてあらかじめ設けられていてもよく、天面25側に設けられていてもよい。
再封止層27を形成する樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマーなど、密着性に優れた樹脂が挙げられる。中でもポリエチレン樹脂が好ましく、特に低密度ポリエチレン樹脂および高強度な直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。再封止層27の厚さは、50〜1000μmが好ましい。
容器本体11、栓21はともにプラスチック製である。したがって、凍結乾燥容器10は、容器本体11への栓21の打栓により、容器本体11と栓21とを物理的に気密な状態で嵌合して固定することができる。さらに、容器本体11と栓21とを溶着することで、気密性をより高め、かつ栓21の脱落防止を確実なものとすることができる。該溶着の方法には、高周波溶着、超音波溶着、レーザー溶着、熱板溶着、インパルス溶着などが挙げられる。なお、この実施形態例のように、容器本体11に中栓16が設けられている場合は、中栓16と栓21との溶着によって、凍結乾燥容器10のより確実な気密性向上、および栓21の脱落防止を図ることができる。
また、凍結乾燥容器10は、容器本体11と栓21とを合わせた質量中、質量比でプラスチックが主とされる。これにより、凍結乾燥容器10をプラスチックとして廃棄できる。なお、凍結乾燥容器10の質量比でプラスチックを主とするには、後述の凍結乾燥容器10の製造において、アルミニウム層12を形成する金属の質量より、容器本体11、栓21に用いられる樹脂の質量が多くなるように、各層の厚みや各部材の体積などを適宜調整すればよい。また、ガスバリア性フィルム22が、前述した金属箔フィルム、金属箔積層フィルム、金属箔フィルム、蒸着フィルムである場合、それらのフィルムに含まれる金属の質量も、凍結乾燥容器10に使われた金属の質量として加味される。
以上説明した本発明の凍結乾燥容器10にあっては、容器本体11をプラスチック製としているため、衝撃に強く、破損しにくい。
また、本発明の凍結乾燥容器10にあっては、容器本体11をプラスチック製としているため、ステンレス製の容器に比べて製造コストを安価にすることができる。
また、本発明の凍結乾燥容器10にあっては、栓21をプラスチック製としているため、従来用いられてきたゴム栓に比べて製造コストを安価にすることができる。
また、本発明の凍結乾燥容器10にあっては、容器本体11栓21がともにプラスチック製であり、かつ容器本体11、栓21を物理的に嵌合して固定することが可能であり、また、それらの溶着が可能なことから、アルミの留め具を必要としない。そのため、使用後の分別廃棄が不要である。なお、凍結乾燥容器10は、前述の通り、質量比でプラスチックが主とされているため、通常のプラスチックとして廃棄可能である。
また、本発明の凍結乾燥容器10にあっては、容器本体11に、容器本体11を継ぎ目なく覆うアルミニウム層12が形成されているため、ガスバリア性に優れている。
また、本発明の凍結乾燥容器10にあっては、容器本体11を覆うアルミニウム層12によりガスバリア性を充分に確保でき、また剛性が増強されることから、従来のプラスチック容器に比べて容器本体11の肉厚を薄くすることができ、かつアルミニウム層12の熱伝導性も相まって、優れた熱伝導性を有することができる。
次に本発明の凍結乾燥容器10の製造方法の一実施形態例について説明する。
この実施形態例では、図4に示すように、アルミニウム層12と、アルミニウム層12の一方の面に合成樹脂内層13が形成され、アルミニウム層12の他方の面に合成樹脂外層14が形成されたアルミニウム積層フィルム30を用いて、これを深絞り成形することにより、アルミニウム層12で継ぎ目なく覆われた容器本体11を成形する。
深絞り成形に用いるアルミニウム積層フィルム30を形成する手順としては、以下の1〜4の方法が挙げられる。
1.アルミニウム層12を形成するアルミニウム箔の片面に合成樹脂内層13を形成する合成樹脂フィルムを積層し、アルミニウム層12を形成するアルミニウム箔の他方の面に合成樹脂外層14を形成する合成樹脂フィルムを積層する方法。
2.アルミニウム層12を形成するアルミニウム箔に、合成樹脂内層13および合成樹脂外層14を形成する合成樹脂をコーティングする方法。
3.アルミニウム層12を形成するアルミニウム箔の片面に合成樹脂内層13を形成する合成樹脂フィルムを積層し、アルミニウム層12を形成するアルミニウム箔の他方の面に合成樹脂外層14を形成する合成樹脂をコーティングする方法。
4.アルミニウム層12を形成するアルミニウム箔の片面に合成樹脂外層14を形成する合成樹脂フィルムを積層し、アルミニウム層12を形成するアルミニウム箔の他方の面に合成樹脂内層13を形成する合成樹脂をコーティングする方法。
アルミニウム積層フィルム30のアルミニウム層12の厚さは60〜200μmが好ましい。より好ましくは100〜140μmである。60μm以上であれば、容器の成形時にアルミニウム層12の破断が生じにくい。200μm以下にすることで、アルミニウムの使用量を抑えて製造コストを低減できる。
合成樹脂内層13の厚さは1〜300μmが好ましい。合成樹脂内層13の厚さを1μm以上とすることで、容器本体11の成形時に、合成樹脂内層13に破断が生じにくい。合成樹脂内層13の厚さを300μm以下とすることで、容器本体11の成形が行いやすく、生産性を良好とすることができる。
なお、合成樹脂内層13が合成樹脂フィルムから形成される場合、好ましくは10〜300μmであり、より好ましくは50〜250μmである。また、合成樹脂内層13がアルミニウム層12への合成樹脂のコーティングにより形成される場合、好ましくは1〜10μmであり、より好ましくは3〜8μmである。
合成樹脂内層13が合成樹脂フィルムより形成される場合、該合成樹脂フィルムの材質には、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびこれらの混合物が用いられる。合成樹脂内層13が合成樹脂のコーティングにより形成される場合、コーティングに用いる合成樹脂には、酸変性ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂などが用いられる。
合成樹脂外層14の厚さは1〜600μmが好ましい。合成樹脂外層14の厚さを1μm以上とすることで、容器本体11の成形時に、合成樹脂外層14に破断が生じにくい。合成樹脂外層14の厚さを600μm以下とすることで、容器本体11の成形が行いやすく、生産性を良好とすることができる。
なお、合成樹脂外層14が合成樹脂フィルムから形成される場合、好ましくは10〜600μmであり、より好ましくは50〜500μmである。また、合成樹脂外層14がアルミニウム層12への合成樹脂のコーティングにより形成される場合、好ましくは1〜10μmであり、より好ましくは3〜8μmである。
合成樹脂外層14が合成樹脂フィルムより形成される場合、該合成樹脂フィルムの材質には、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびこれらの混合樹脂が用いられる。合成樹脂外層14が合成樹脂のコーティングにより形成される場合、コーティングに用いる合成樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、塩化ビニル樹脂などが用いられる。
なお、合成樹脂内層13または合成樹脂外層14の形成方法において、合成樹脂フィルムの積層は、ドライラミネート法、押出ラミネート法などで行われ、合成樹脂のコーティングは溶液コーティング、粉体コーティングなどで行われる。
なお、凍結乾燥容器10をプラスチックとして廃棄可能とするためには、凍結乾燥容器10の質量中、プラスチックが主であることが必要条件となる。アルミニウム層12および合成樹脂層(合成樹脂内層13および合成樹脂外層14)の厚みは、この必要条件も鑑みた上で、適宜調整される。
このようにして形成されたアルミニウム積層フィルム30を、図5に示すように、深絞り成形機50に設置する。ここで、深絞り成形機50は、上下に移動可能なダイ51、パンチ台53に固定されたパンチ52、上下に移動可能なブランクホルダ54とから概略構成される。
次いで、深絞り成形機50に設置されたアルミニウム積層フィルム30に対して、図6のようにダイ51およびブランクホルダ54を下げ、パンチ52をアルミニウム積層フィルム30に押し当てることで、アルミニウム積層フィルム30を容器本体11の形状に成形する。その後、ダイ51およびブランクホルダ54を上げて、成形されたアルミニウム積層フィルム30を深絞り成形機50から取り出し、余分なバリなどを切除して、容器本体11を得る。このようにして、深絞り成形機50を用いた深絞り成形により、アルミニウム層12で継ぎ目なく覆われた容器本体11を成形する。
なお、この実施形態例では、アルミニウム積層フィルム30を用い、これを深絞り成形することにより容器本体11を成形する方法を説明したが、他にも、射出成形などにより成形されたプラスチック容器の外側または内側に、アルミニウムの蒸着によりアルミニウム層12を形成してから、必要に応じて、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂などで、アルミニウム層12をコーティングすることで、アルミニウム層12で継ぎ目なく覆われた容器本体11を成形できる。
容器本体11の開口15に設けられる中栓16は、インサート成形、射出成形などで成形される。中でも、インサート成形が好ましく用いられる。インサート成形では、まず押出成形金型に溶液本体11を固定し、次いで該成形金型内にポリプロピレン樹脂などの合成樹脂を流し込むことで、容器本体11の所定位置に中栓16を成形する。なお、インサート成形、射出成形には、それぞれ公知の成形機を用いることができる。
また、中栓16を射出成形で別に成形した場合でも、中栓16と開口15とを物理的に嵌合する、または高周波溶着などで溶着することで、中栓16を開口15に固定できる。
栓21は、前述した栓21を形成する合成樹脂を、射出成形、ブロー成形、パイプ成形などで押出成形する、または栓21を形成する合成樹脂からなる樹脂シートを真空成形、圧縮成形することなどにより成形される。そして、このプラスチックから成形された栓21に、ガスバリア性フィルム22を溶着することで、ガスバリア性を有した栓21を製造する。なお、栓21の押出成形法としては、前記押出成形の中でも、射出成形を好ましく用いることができる。また、前記射出成形、前記ブロー成形、前記パイプ成形、前記シートからの真空成形、圧縮成形には、それぞれ公知の成形機を用いることができる。
なお、ガスバリア性フィルム22と頭部23との間に、前述した接着層を設ける場合は、ガスバリア性フィルム22の頭部23と接する面、および/または頭部23のガスバリア性フィルム22と接する部分に、あらかじめこの接着層を形成する接着剤や樹脂を塗布してから、射出成形を行えばよい。
ガスバリア性フィルム22には、前述したガスバリア性を有するフィルムを用いることができる。ガスバリア性フィルム22は栓21に、インモールド成形、高周波溶着、熱板溶着、インパルス溶着などにより溶着される。中でも、インモールド成形を好ましく用いることができる。
インモールド成形では、あらかじめ所定の寸法に切断されたガスバリア性フィルム22を栓21の射出成形金型内の所定位置に固定しておき、該成形金型に栓21の材料となる合成樹脂を流すことで、栓21の成形時にガスバリア性フィルム22を溶着できる。
このように、射出成形時にインモールド成形を行うことにより、一回の成形で栓21を製造でき、栓21を成形してからガスバリア性フィルム22を溶着する方法に比べて、製造工程を簡略化できる。
次に、本発明の一実施形態例の凍結乾燥容器10に、凍結乾燥物を収容する手順について説明する。
まず、凍結乾燥容器10の容器本体11内に、無菌状態とされた凍結乾燥物の原液を充填し、容器本体11に栓21を半打栓した上で、凍結乾燥装置内の加熱と冷却機能を備えた棚(加熱冷却棚)の上に配置する。該凍結乾燥装置としては、公知の凍結乾燥装置を用いることができる。
次に、凍結乾燥物の原液を充填した容器本体11を、加熱冷却棚を用いて冷却し、凍結乾燥物の原液を凍結処理する。ここで、容器本体11には、アルミニウム層12が形成されているため、熱伝導性に優れており、凍結処理を迅速に行える。
次に、凍結乾燥物の原液を凍結状態に保ったまま減圧乾燥することで、水分を昇華させる。この半打栓状態において、水分は切欠き28から凍結乾燥容器10外に放出される。その後、凍結乾燥装置内に窒素ガスを供給して大気圧に戻すことで、凍結乾燥容器10内が窒素ガスにガス置換される。その後、栓21を完全打栓することで、凍結乾燥容器10に凍結乾燥物が収容された状態で、栓21は容器本体11に物理的に嵌合される。これにより、凍結乾燥容器10の気密性が確保される。なお、この実施形態例では、栓21は中栓16を介して、容器本体11に嵌合される。
その後、さらに気密性により完全を期すため、容器本体11と栓21との嵌合箇所を高周波溶着、超音波溶着、レーザー溶着、熱板溶着、インパルス溶着により溶着する。
次に、本発明の一実施形態例の凍結乾燥容器10に収容された凍結乾燥物を取り出す手順について説明する。
まず、孔26から注射針を挿入し、ガスバリア性フィルム22を貫通させ、凍結乾燥容器10内に凍結乾燥物を溶解するための所定の溶液を注入する。そして、該溶液により凍結乾燥物を溶解する。次いで、凍結乾燥物の溶解液を注射針で吸引する。このようにして、凍結乾燥物を溶解液の状態にして凍結乾燥容器10から取り出す。ここで、凍結乾燥容器10には、栓21に再封止層27が設けられているため、再封止層27が注射針に密着し、注射針とガスバリア性フィルム22との間に空隙が生じるのを防止できる。これにより、凍結乾燥容器10内にホコリや雑菌などの異物が混入するのを防止でき、かつ凍結乾燥容器10外に凍結乾燥物および凍結乾燥物の溶解液が漏れ出すのを防止できる。
また、凍結乾燥物を再度、溶解させずにそのまま服用したり、孔26から複数流路を有するチューブなどを挿入し、空気流下で微粉の凍結乾燥物として容器外へ搬送させて、服用することも可能である。
本発明の凍結乾燥容器は、製造コストが安価で、破損しにくく、ガスバリア性および熱伝導性に優れ、使用後の分別廃棄が不要である。本発明の凍結乾燥容器の製造方法は、前記凍結乾燥容器を効率よく製造できる。
本発明の一実施形態例の凍結乾燥容器を示す縦断面図である。 図1のA−A断面図である。 本発明の一実施形態例の凍結乾燥容器の栓の上面図である。 本発明の一実施形態例の凍結乾燥容器の成形に用いるアルミニウム積層フィルムの部分断面図である。 深絞り成形機で、本発明の凍結乾燥容器の容器本体を成形する様子を示す縦断面図である。 深絞り成形機で、本発明の凍結乾燥容器の容器本体を成形する様子を示す縦断面図である。
符号の説明
10 凍結乾燥容器
11 容器本体
12 アルミニウム層
13 合成樹脂内層
14 合成樹脂外層
15 開口
16 中栓
21 栓
22 ガスバリア性フィルム
23 頭部
24 脚部
26 孔
27 再封止層

Claims (4)

  1. 凍結乾燥物が収容されるプラスチック製の容器本体と、該容器本体に嵌合されるプラスチック製の栓とを備えた凍結乾燥容器であって、
    前記容器本体に、該容器本体を継ぎ目なく覆うアルミニウム層が形成され、
    前記栓にガスバリア性フィルムが形成されていることを特徴とする凍結乾燥容器。
  2. 前記栓に、該栓に貫通させる注射針に密着し、該栓に空隙が生じないようにする再封止層が設けられている請求項1に記載の凍結乾燥容器。
  3. 凍結乾燥物が収容されるプラスチック製の容器本体と、該容器本体に嵌合されるプラスチック製の栓とを備えた凍結乾燥容器の製造方法であって、
    アルミニウム層で継ぎ目なく覆われた前記容器本体を成形し、
    プラスチックから成形された前記栓にガスバリア性フィルムを溶着することを特徴とする凍結乾燥容器の製造方法。
  4. アルミニウム層の両面に合成樹脂層を形成したアルミニウム積層フィルムを深絞り成形して、容器本体を成形することを特徴とする請求項3に記載の凍結乾燥容器の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN112146362A (zh) * 2015-08-03 2020-12-29 简·探针公司 用于维持受控环境的设备
GB2589347A (en) * 2019-11-27 2021-06-02 Fluorogenics Ltd Freeze-drying apparatus and method

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