本発明に係る液晶表示装置は、入力映像信号による映像を表示する液晶パネルと、液晶パネルを照射する光源と、バックライトの発光輝度を調節する光源制御部と、入力映像信号のゲイン設定を行うゲイン設定部とを備え、バックライトの発光輝度とゲイン設定とを連動して制御するものである。なお、この光源は、バックライト光源、又はバックライトと呼ばれる。
以下に説明する本発明に係る各実施形態では、液晶表示装置において、入力映像信号の映像特徴量に応じて入力映像信号の増幅度合い(ゲイン設定)を調整するもので、このときに、目標となるコントラスト比(ターゲットCR;CRはコントラスト比)を設定し、バックライトの発光輝度の制御とゲインの制御によりそのターゲットCRに近づけるように映像表現を行う。このような映像信号とバックライトの輝度変調処理を本明細書では「アドバンスト輝度変調処理」とする。なお、本発明において、ゲイン設定は、このようなターゲットCRを設定して実行するに限らず、入力映像信号の映像特徴量(以下、単に特徴量という)に応じて実行されていればよい。さらに、ゲイン設定は、入力映像信号の特徴量に応じて行うことが、バックライト発光輝度との連動性の面でより効果的な輝度制御が可能となるため好ましいが、これに限ったものではなく、例えばOPC(Optical Picture Control;明るさセンサともいう)のみに応じたゲイン設定などを採用してもよい。
〈アドバンスト輝度変調処理の概要〉
映像を表示する場合の表示輝度は、表示する映像信号のレベルを忠実に再現するのが理想である。つまり、黒画面を表示する場合、表示輝度は理想的には0でなければならない。しかし、液晶パネルとバックライトを使用した映像表示装置の場合、現実には液晶パネルには若干の光漏れがあり、黒画面を表示する場合にも黒ではなくグレー表示となる。
映像表示装置の重要な性能の一つとしてコントラスト比(CR)がある。映像表示装置において、CRは表示パネル上の最大輝度と最小輝度の比である。液晶表示装置の場合、最大輝度はバックライトの最大発光輝度で決まり、最小輝度は黒表示時の光漏れ量によって決まる。よって、バックライトの発光輝度が一定の場合、同一の液晶パネルにおいてはコントラスト比は一定となる。
図1は、CRが3000と6000の液晶パネルについて、入力階調レベル(映像信号レベル)と液晶パネル上での輝度値との関係を示すグラフである。入力階調レベルは、入力映像信号がとり得る画素値(ここでは映像信号の輝度値)を指す。最大輝度は共に同じ450cdであるが、画素値0での液晶パネル上の表示輝度(最小輝度)はCR3000の場合に0.15cd、CR6000の場合に0.075cdとなり、2倍の差がある。
ここで、CR3000の液晶パネル使用時に光源の発光輝度を50%まで下げるとともにゲイン設定で入力映像信号を所定量増幅させると、入力映像信号の画素値と液晶パネルの表示輝度値との関係は、図1において点線で示すような関係となり、画素値0〜128においてはCR6000の液晶パネルに近い輝度表現をさせることが可能になる。しかしながら、画素値128より大きい映像は階調表現できず、いわゆる白つぶれを起こすことになる。従って、入力映像信号の特徴量に応じてバックライトの発光輝度の調節と、ゲイン設定を行う必要がある。
例えば、入力映像信号の輝度のヒストグラムが画素値128以下の輝度分布を示す場合に、上述の図1で示すようにバックライトの輝度輝度を50%まで下げるとともにゲイン設定で所定入力映像信号を所定量増幅させるような制御を行うようにすればよい。このように入力映像信号の特徴量に応じてバックライトの発光輝度の制御及びゲイン設定を行うことにより、コントラスト感を高めることができると同時にバックライトの発光輝度を下げることによる省電力化を図ることが可能になる。
上記では入力映像信号の輝度のヒストグラムが画素値128以下の輝度分布を示す場合を例に挙げ説明したが、上記例以外でも、例えば、映像中の白部分が極めて少ない場合には、白部分の重視度を下げ、黒表現の向上を同様にして図ることができる。このとき、重視しない部分の白つぶれは無視してもよいし、ターゲットCRを実現させるゲイン設定によっても白つぶれが緩和できるように、白側領域でのゲインを決めるようにしてもよい。
また、アドバンスト輝度変調処理では、省電力化を図るために、後述するように映像信号から得た映像のAPL等の特徴量に応じて動的にバックライトの発光輝度を抑える処理も併せて実行する。
つまり、ゲイン設定及びバックライトの発光輝度レベルを設定するための参照用の発光輝度レベルを、まず映像特徴量(APL,ピーク(最大輝度値)等のヒストグラム情報)に応じて設定し、省電力化を図ると共に、設定した参照用の発光輝度レベルに対して、さらに上述のごときコントラスト感を出すための処理(すなわち発光輝度レベルを参照用の発光輝度レベル以下の適切な値にする処理)を実行して、CR向上及び更なる省電力化を図り、その処理と連動させて映像信号のゲインを設定して、視覚上の輝度を保つようにする処理である。
〈アドバンスト輝度変調処理を行う液晶表示装置のシステム構成例〉
図2は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置のシステム構成例を示すブロック図である。図2で例示する液晶表示装置は、スケーリング部1、Yヒストグラム検出部2、APL検出部3、BL(バックライト)輝度レベル設定部8、CPU(Central Processing Unit)/CPLD(Complex Programmable Logic Device)11、BL調整部12、画質補正部14、RGBγ/WB(White Balance)調整部15、FRC(Frame Rate Control)部16、及び映像出力部17を備える。
図2で例示する液晶表示装置は、さらに上述のアドバンスト輝度変調処理の主な部分を実行するアドバンスト輝度変調部20を備える。アドバンスト輝度変調部20は、ヒストグラムストレッチング部4、ディストーションモジュール5、シーンチェンジ検出部6、第1のテンポラリフィルタ7、第2のテンポラリフィルタ9、可変ディレイ10、コンフィグレーションデザイン部13を有する。アドバンスト輝度変調部20は、その処理の一部又は全部をソフトウェアで実現するよう構成してもよい。なお、上述したように、アドバンスト輝度変調処理は、APL等の特徴量に応じた動的なバックライトの発光輝度制御を行うだけでなく、その特徴量の所定の条件により決定されるバックライトの参照用発光輝度レベルBLrefに対しさらにコントラスト感を出すような発光輝度レベルBLreducedを選択し、且つ映像信号のゲインも設定するという進化した輝度変調処理である。
まず、図2の液晶表示装置における各ブロックの概要について説明する。
映像出力部17は、映像信号による映像を表示する液晶パネルと、映像信号を液晶パネル駆動のための信号に変換し液晶パネルに出力する液晶制御回路とを有する。その詳細は後述するが、映像信号は、アドバンスト輝度変調部20で設定されたゲインを用いて変換された後、この映像出力部17に入力される。つまり、アドバンスト輝度変調処理においては、この映像出力部17で表示すべき映像を示す映像信号が処理対象となる。ゲイン及びその設定については後述する。
BL調整部12は、蛍光管で構成されるランプと、そのランプを駆動するランプ駆動回路とを有し、液晶パネルを背面や側面から照射するバックライトを構成する。アドバンスト輝度変調処理においては、このランプが発光輝度制御の対象となる。
BL調整部12は、CPU/CPLD11で制御される。CPU/CPLD11は、アドバンスト輝度変調部20から出力された発光輝度レベルBLreducedを示す信号(例えばデューティ信号(バックライトDUTY))に従って、BL調整部12のランプ駆動回路(例えばインバータ回路)で実際に調光するための信号(例えばパルス幅変調等の駆動に適した信号)に変換して、BL調整部12へ出力する。バックライト調光値を実際のバックライト調光のための信号に変換するものである。また、ランプとしては、例えばLED(Light Emitting Diode)で構成されるものや、LEDと蛍光管の組み合わせで構成されるものを採用してもよく、同時にそれに対応したランプ駆動回路を設けておけばよい。
映像出力部17へ出力する映像信号の処理、並びにCPU/CPLD11を介してBL調整部12の制御を行う部位が、スケーリング部1、Yヒストグラム検出部2、APL検出部3、BL輝度レベル設定部8、画質補正部14、RGBγ/WB調整部15、FRC部16、及びアドバンスト輝度変調部20である。
まず、スケーリング部1は、液晶パネルの解像度等に応じて、入力された映像信号(入力映像信号)が示す映像フレームの画素数、或いはその映像フレームのアスペクト比を、演算により変更する。
ここで、入力映像信号としては、例えば放送波として受信した映像信号を復調した信号、通信ネットワーク経由で受信した映像信号、内部記憶装置に記憶された映像信号を読み出した信号、各種レコーダや各種プレーヤやチューナ機器といった外部機器から受信した映像信号などが該当し、或いはそれら映像信号に対して各種映像処理を施した後の映像信号が該当する。図示しないが、図2の液晶表示装置は、このような映像信号のいずれかを取得可能なよう構成しておけばよい。
画質補正部14は、スケーリング部1から出力された映像信号に対し、ユーザ設定等により、映像のコントラストや色味等を変更する。
RGBγ/WB調整部15は、画質補正部14から出力された映像信号に対し、映像のγ、WB等の調整を行う。さらに、RGBγ/WB調整部15は、アドバンスト輝度変調部20(図2ではコンフィグレーションデザイン部13)からのゲイン設定信号によって信号のゲインを変更する。ここでは、画質補正部14から出力された映像信号に対するゲインが変更されるか、或いはRGBγ/WB調整部15内でγ調整した後の映像信号に対するゲインが変更される。そして、RGBγ/WB調整部15ではそのゲインに基づき映像信号の変換が施され、後述するようなアドバンスト輝度変調部20で発光輝度レベルを低下させる制御に対して輝度低下分をゲインによって補償する。ここで、低階調部分のノイズを抑えるため、この変換は、γ調整後であってWB調整前に施すことが好ましい。
アドバンスト輝度変調部20からのゲイン設定信号は、上述の液晶パネルへ出力すべき映像信号の画素値(映像信号レベル)を変換するための変換係数(ゲイン設定値)を示す信号である。このゲイン設定信号は、以下の例で示すように各映像信号レベル(この例では0〜255の値)に乗算するための共通の1つの変換係数とし、後述するようにゲインすることで頭打ちとなる映像信号レベルの範囲などに基づいて得た或る映像信号レベルの範囲に対しては、ゲインをRGBγ/WB調整部15で補正してもよい。
FRC部16は、フレームレートコンバータであり、RGBγ/WB調整部15から出力された調整後の映像信号に対し、映像の動きベクトルを検出し補完映像を生成することによって、通常60Hzの表示周波数から120Hzの表示周波数に変換するものである。勿論、FRC部16での処理対象の表示周波数や処理後の表示周波数はこれに限ったものではない。図2の例では、映像出力部17の液晶駆動回路は、FRC部16から出力された映像信号を液晶パネル駆動のための信号に変換し、液晶パネルに出力することになる。
Yヒストグラム検出部2は、映像フレームを画素単位等に分割し、各画素の輝度値の発生頻度を表したヒストグラムを生成する。Yヒストグラム検出部2で生成されたヒストグラムは、例えば輝度値(Y)0〜255のそれぞれに対して頻度の値を持つ。APL検出部3は、映像信号の平均輝度レベルを、映像フレーム毎に算出する。APL検出部3で算出される値としては、全画面で黒の場合には0%を示す値となり、全画面で白の場合には100%を示す値となる。
ヒストグラムストレッチング部4は、Yヒストグラム検出部2で生成されたヒストグラムから、アドバンスト輝度変調部20で使用する範囲を設定する。例えば、ディストーションモジュール5が最小値0〜最大値255で演算を実行するモジュールであり、且つ、入力映像信号が例えば(i)通常のエンコード出力範囲である最小値16〜最大値235をとるような信号や、(ii)より黒を表現するために最小値10〜最大値235の値をとるような信号であった場合を想定する。ヒストグラムストレッチング部4は、ディストーションモジュール5での演算に合わせるために、上記(i)の場合には最小値16〜最大値235のそれぞれに対する頻度値を、最小値0〜最大値255のそれぞれに対する頻度値に当てはめるように引き伸ばし、上記(ii)の場合には最小値10〜最大値235のそれぞれに対する頻度値を、最小値0〜最大値255のそれぞれに対する頻度値に当てはめるように引き伸ばすものである。
ディストーションモジュール5は、ヒストグラムストレッチング部4から入力されたヒストグラムと、後述するBL輝度レベル設定部8で設定された参照用の発光輝度レベル(バックライト目標値ともいう)BLrefとから、実際に設定する発光輝度レベル(バックライト値ともいう)BLreduced、すなわちバックライトの制御に使用する発光輝度レベルを選択(決定)し、出力する。選択は、予め定められた複数の発光輝度レベルの中からBL輝度レベル設定部8で設定された参照用発光輝度レベルBLrefを超えない範囲で行う。また、ここでは、ターゲットCRをもつ液晶パネルにより近い表示映像を実現できるバックライト値BLreducedを選択する。ターゲットCR等のディストーションパラメータは図示しないメインCPUから設定すればよい。
シーンチェンジ検出部6では、1フレーム前のヒストグラムと現ヒストグラムの変化の程度からシーンチェンジの有無を検出する。例えば、各輝度値の頻度変化の累計値を算出し、特定の値よりも大きかった場合には場面が変わったと判定する。シーンチェンジ検出部6での検出結果は第1,第2のテンポラリフィルタ7,9で使用される。
第1のテンポラリフィルタ7は、本発明の主たる特徴となる部分である。概要を説明すると、第1のテンポラリフィルタ7は、ディストーションモジュール5で選択された上述の実際に設定する発光輝度レベルBLreduced(バックライトDUTY)が急激に変化した場合に生じる、視覚上の違和感を防止するために設けられたものであり、発光輝度レベルBLreducedの変化量を時間的に緩慢なものにした後、実際に設定する発光輝度レベルBLreducedとして後段に出力する。シーンチェンジ時には、緩慢な発光輝度レベルBLreducedの変化を施すと返って違和感を持つため、シーンチェンジ検出部6によるシーンチェンジ検出信号により、第1のテンポラリフィルタ7の値を変え、比較的早い変化ができるようにする。
BL輝度レベル設定部8は、スケーリング部1から出力された映像信号のAPL値により、また図示しないメインCPUから出力されたOPCの値やユーザ設定値などを参照して、バックライトの発光輝度レベルの最大値を決定する。例えば、APLが高い場合にはバックライトの発光輝度レベルの最大値を低い値とすることで、眩しさを感じない映像とすることができる。このバックライトの発光輝度レベルの最大値が、アドバンスト輝度変調部20で実行されるアドバンスト輝度変調の参照用発光輝度レベル(バックライト目標値)BLrefとなる。
なお、ディストーションモジュール5での選択が、BL輝度レベル設定部8で設定された参照用発光輝度レベルBLrefを超えない範囲で行われることから、BL輝度レベル設定部8では、参照用発光輝度レベルBLrefとしてバックライトの発光輝度レベルの最大値が設定されると説明している。
第2のテンポラリフィルタ9は、第1のテンポラリフィルタ7と共に本発明の主たる特徴となる部分である。概略を説明すると、APLが急激に変化し、且つその変化がディストーションモジュール5での選択に影響を与えないような場合に、第1のテンポラリフィルタ7から出力される発光輝度レベルBLreduced(バックライトDUTY)はその時間的変化が緩和されている。しかし、ゲイン設定はBL輝度レベル設定部8から出力された参照用発光輝度レベルBLrefを元に計算するため、ゲインが変化してしまい、液晶パネル上の表示輝度が急激に変化してしまう。このような表示輝度の急激な変化を無くす或いは緩和するために、第2のテンポラリフィルタ9は設けられている。第2のテンポラリフィルタ9を、第1のテンポラリフィルタ7と同等の機能を持つフィルタとすることで、急激な変化を無くすことができる。また、シーンチェンジ時には、第1のテンポラリフィルタ7の値の変化に追従させるために、シーンチェンジ検出部6からの検出結果に基づき、第2のテンポラリフィルタ9の値も変え、違和感のないようにすることが好ましい。
可変ディレイ10は、映像出力部17での映像出力とBL調整部12でのバックライト調光とのタイミングを取るための遅延部である。バックライト調光は、調光値が決定すれば比較的少ない処理後、バックライト輝度制御が行われる。それに対して、映像信号はアドバンスト輝度変調で映像のゲインが決定し、映像信号の輝度レベルを変更した後もFRC部16でのフレームレート制御や、液晶制御回路でのパネル制御信号への変換など、多くの処理が行われるため、時間的な遅延が発生する。そうすると、本来同時におこなわれるべきバックライト調光制御と映像のゲイン制御のタイミングがずれてしまい、バックライトと映像のバランスが崩れてしまうことになる。そこで、可変ディレイ10によってバックライト調光をあえて遅らせ(アドバンスト輝度変調部20から出力されるバックライトDUTYを遅らせ)、バックライト調光制御と映像のゲイン制御のタイミングを合わせるものである。
コンフィグレーションデザイン部13では、BL輝度レベル設定部8で決定された参照用発光輝度レベルBLrefとディストーションモジュール5によって選択された発光輝度レベルBLreducedとに基づき、映像信号のゲインを決定する。なお、図2の例では各レベルBLreduced,BLrefがそれぞれテンポラリフィルタ7,9を通過したレベルを用いている。参照用発光輝度レベル(バックライト目標値)BLrefと選択された発光輝度レベル(バックライト値)BLreducedが同じであれば、映像信号の輝度レベルを変更する必要はなく、ゲイン設定値は1である。また、参照用発光輝度レベルよりも選択された発光輝度レベルが低い場合は、その値に応じて、映像信号の輝度レベルを上げる方向にゲイン設定を行う。
〈アドバンスト輝度変調処理を実行する主要ブロックの詳細説明〉
図2の液晶表示装置におけるアドバンスト輝度変調処理を実行する主要ブロックとして、BL輝度レベル設定部8、ディストーションモジュール5、コンフィグレーションデザイン部13、及びRGBγ/WB調整部15を、この順序で説明し、処理の具体例も挙げる。なお、本発明の主たる特徴である第2のテンポラリフィルタ9、第1のテンポラリフィルタ7、及びシーンチェンジ検出部6については、別途、フィルタ組込例として後述する。
《BL輝度レベル設定部8》
BL輝度レベル設定部8には、APL検出部3で検出された映像信号のAPLが入力されるとともに、周囲の明るさ(周囲の照度)を測定する図示しない明るさセンサの検出情報に基づく制御信号、及び液晶パネルの明るさを設定するユーザ設定に基づく制御信号が入力される。そして、BL輝度レベル設定部8ではこれらの制御信号とAPLとに基づいて、参照用発光輝度レベルBLrefを出力する。より具体的には、画面単位(フレーム単位)で変化する入力映像信号のAPLに応じて、バックライト輝度を動的に調整する方式を適用し、これにより得られた発光輝度レベルを参照用発光輝度レベルBLrefとして出力する。
参照用発光輝度レベルBLrefの生成には、BL輝度レベル設定部8に保持されている輝度制御テーブル(ルックアップテーブル)が用いられる。輝度制御テーブルは、入力映像信号の映像特徴量(ここではAPL)に応じたバックライトの発光輝度レベルの関係、すなわち輝度制御特性を定めるものである。そして予め選択可能な複数の輝度制御テーブルを用意し、BL輝度レベル設定部8が備えるROM(Read Only Memory)等のテーブル格納メモリに保持させておく。
液晶表示装置周囲の明るさを測定する明るさセンサには、例えばフォトダイオードが適用される。明るさセンサは、検出した周囲光に応じた直流電圧信号を生成し、図示しないメインCPUに出力する。メインCPUは、周囲光に応じた直流電圧信号に応じて輝度制御テーブルを選択する制御信号をBL輝度レベル設定部8に出力する。
さらに、メインCPUは、液晶パネルの明るさを設定するユーザ設定に基づく制御信号として、輝度制御テーブルの輝度制御値を調整するための輝度調整係数を出力する。輝度調整係数は、ユーザ操作に応じて画面全体の明るさ設定を行うために使用される。例えば、液晶表示装置が保持するメニュー画面には、画面の明るさ調整項目が設定されている。ユーザは、その設定項目を操作することによって、任意の画面明るさを設定することができる。メインCPUは、その明るさ設定を認識し、設定された明るさに従ってBL輝度レベル設定部8に輝度調整係数を出力する。
BL輝度レベル設定部8では、明るさセンサの検出情報に従ってメインCPUから出力された制御信号により、テーブルNoを指定して輝度制御テーブルを選択する。若しくは選択する輝度制御テーブルを演算によって生成するようにしてもよい。そして、選択した輝度制御テーブルの輝度変換値に対して、ユーザ設定に基づく制御信号として得た輝度調整係数を乗算し、輝度制御テーブルの輝度制御特性の傾きを変化させ、最終的に、参照用発光輝度レベルBLrefの生成に使用する輝度制御テーブルを決定する。そして、BL輝度レベル設定部8は、決定した輝度制御テーブルの輝度制御特性を使用し、APL検出部3から出力されたAPLに応じて参照用発光輝度レベルBLrefを生成して出力する。
輝度制御テーブルは、上述したように、入力映像信号の特徴量であるAPLとバックライトの発光輝度レベルとの関係を定めるものであって、例えば、APLが大きいときにはバックライトの発光輝度レベルが小さくなるように設定することで、高輝度の映像のときに眩しさを感じないようにバックライトの発光輝度を抑えるようにしている。輝度制御テーブルの輝度制御特性に従って、映像信号のAPLの変化に応じて発光輝度レベルBLrefが動的に変化する。本実施形態においては、輝度制御テーブルにおける輝度制御特性については特に限定されるものではなく、入力映像信号の特徴量に応じてバックライトの発光輝度レベルを動的に変化させる特性を規定するものを適宜適用することができる。なお、入力映像信号の特徴量としてAPLを採用した例を示したが、Yヒストグラム検出部2から得たピーク輝度値、或いはピーク輝度値及びAPLを採用するなどしてもよい。また、BL輝度レベル設定部8は、その設定処理の一部又は全部をソフトウェアで実現するよう構成してもよい。
このようにしてBL輝度レベル設定部8から出力され第2のテンポラリフィルタ9の作用で遅延された参照用発光輝度レベルBLrefは、コンフィグレーションデザイン部13に入力し、映像ゲインの演算に使用されるとともに、ディストーションモジュール5に入力して、ヒストグラムに応じた発光輝度レベルBLreducedの決定に使用される。
《ディストーションモジュール5》
アドバンスト輝度変調部20で実行されるアドバンスト輝度変調処理の基本思想は、使用する液晶パネルにおいてバックライトの発光輝度レベルが100%の時に表示可能な映像輝度範囲と、目標(理想的ともいう)とするCR(ターゲットCR)を持つ液晶パネルにおいて表示可能な映像輝度範囲とを設定しておき、使用する液晶パネルにおいてバックライトの発光輝度レベルをコントロールすることで、ターゲットCRを性能として持つ液晶パネルで表示可能な映像輝度範囲に近づけるようにするものである。
ここでは、バックライトの発光輝度レベルを落とすのであるから、映像信号が高輝度の部分を含む場合には低減後のバックライト発光輝度で表現しきれない高輝度部分について白つぶれが発生する。また、映像信号に低輝度を含まない場合には、バックライトの発光輝度レベルを落とす必要はない。
そこで、ディストーションモジュール5では、バックライト輝度制御の判定基準として、或る発光輝度レベルにおいて表現できない低輝度部分、高輝度部分がどの程度あるかを、評価値(Distortion)として数値化する。ここではディストーションモジュール5は、予め定めたバックライトの輝度制御範囲においてこの数値化を行い、最も評価値が小さくなる発光輝度レベルを、発光輝度レベルBLreduced(バックライトDUTY)として選択し出力することとする。バックライトの輝度制御範囲とは、ディストーションパラメータの一つであり、バックライトの発光輝度レベルとして許容する範囲を指す。例えば10%〜100%、20%〜100%などと、デフォルト設定やユーザ設定などにより予め決めておけばよい。
また、最も評価値が小さくなる発光輝度レベルが複数ある場合は、より低い発光輝度レベルを発光輝度レベルBLreducedとして選択する。液晶パネル上の映像表現品位として同等であれば、バックライトの発光輝度レベルを下げたほうが、省電力になるからである。
図3は、図2の液晶表示装置におけるディストーションモジュールで実行される発光輝度レベル選択処理の一例を説明するための図である。h1は映像信号のYヒストグラムを示している。ここで横軸は映像信号の入力階調(映像信号としてとりうる画素値、又は映像信号レベルともいう)を示し、縦軸は各映像信号レベルの頻度を示している。
このような映像のヒストグラムh1に対して、使用する液晶パネルにおいてバックライトの発光輝度レベルが100%の時に表示可能な映像輝度範囲をAとする。また、ターゲットCRの液晶パネルで表示可能な映像輝度範囲をBとする。また、ディストーションモジュール5で選択可能な発光輝度レベルのうち、或る特定の発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲をCとする。そして、ヒストグラムh1において、映像輝度範囲Cの両側で映像輝度範囲Bと重なる部分が、上述の数値化を行う対象となる部分であり、評価値算出部分である。この評価値算出部分のうち、低輝度部分をD1、高輝度部分をD2とする。
評価値(Distortion)は、選択可能な発光輝度レベルに対して、頻度と重み付けによって下式(1)によって算出する。
Distortion=Σ{(映像輝度範囲D1+D2の頻度)×(距離重み)}・・・(1)
重みとしては、評価値算出対象となる発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲Cから遠ざかる程大きくする距離重みを用いる。ここでは、低輝度部分D1の距離重みをE1、高輝度部分D2の距離重みをE2とする。従って、同じ頻度値であっても、表現できる範囲から遠いほうが、評価値は大きくなる。これは表現できる範囲から遠いほうが、映像として表現できない影響が大きいためである。頻度と重み付けによって算出した値はF1(低輝度部分)、F2(高輝度部分)である。評価値はF1とF2の面積(累計)を合計した値となる。
ディストーションモジュール5では、各発光輝度レベルに対して算出した評価値のうち、最も評価値が低い映像輝度範囲Cに対応する発光輝度レベルを、出力する発光輝度レベルBLreducedとして選択する。このとき、ディストーションモジュール5では、BL輝度レベル設定部8で設定された発光輝度レベルBLrefを越えない範囲で、最も評価値が低い映像輝度範囲Cに対応する発光輝度レベルBLreducedを選択する。
このような評価値の算出は、ディストーションモジュール5で、選択可能な発光輝度レベルの全てについて行うことが理想である。しかし、処理時間等の制限があるため、選択可能な発光輝度レベルの輝度制御範囲を均等に分け、例えば10%程度毎の発光輝度レベルについて算出すればよい。
つまり、上式(1)の特定の発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲をCとして、選択可能な発光輝度レベルを順番に適用し、各発光輝度レベルごとに評価値を算出する。そして算出した評価値の中から、最も低い評価値をもつ発光輝度レベルを、選択した発光輝度レベルBLreducedとし、この値を(図2の例では第1のテンポラリフィルタ7に出力して)バックライトの調光制御に用いるとともに、コンフィグレーションデザイン部13に出力して映像ゲインの設定(算出)に用いる。
ディストーションモジュール5での選択処理を、図4〜図7を参照し具体的な数値で説明する。図4は、図2の液晶表示装置におけるアドバンスト輝度変調処理の具体例を説明するための図で、映像ヒストグラムにおけるパネルCRとターゲットCRとの関係の一例を示す図である。ここでは、使用する液晶パネルのCR(パネルCR)が2000、ターゲットCRが3500、バックライトの輝度制御範囲が20〜100%で、バックライト輝度100%のときの液晶パネルの最大輝度は450cdとする。また、図4における各アルファベット記号は図3に準拠する。
この例において、使用する液晶パネルで表示可能な映像輝度範囲Aは、450cd〜0.225cdである。また、目標とする液晶パネルの表示可能な映像輝度範囲Bは、450cd〜0.128cdである。そして、各映像信号レベル0〜255に対する頻度を映像輝度範囲Bに合わせるように割り付ける。この場合、映像輝度範囲Aと映像輝度範囲Bとの差は5デジット程度である。
ヒストグラムh1において、映像輝度範囲Bと映像輝度範囲Aとの差の部分に映像があれば、バックライトの発光輝度レベルを下げることで、よりターゲットCRに近い輝度表現が可能になる。しかし、高輝度側にも映像が分布していると、バックライトの発光輝度レベルを下げることで表現できない部分が発生する。そこで、上述したように、評価値を算出して最適な発光輝度レベルBLreducedを求める。
図5は、選択対象の一つである発光輝度レベル100%のときの映像輝度範囲Cを示す図、図6は、選択対象の一つである発光輝度レベル70%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図、図7は、選択対象の一つである発光輝度レベル50%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図である。図5〜図7における各アルファベット記号は図3に準拠する。
図5で示したように、発光輝度レベルが100%を示すものである場合、低輝度部分の評価値F1には或る程度の値があり、高輝度部分の評価値F2には値がない。また、図6で示したように、発光輝度レベルを70%程度に下げた場合、低輝度部分の評価値F1及び高輝度部分の評価値F2ともに、低い値を持つ。また、図7で示したように、発光輝度レベルを50%程度に下げた場合、低輝度部分の評価値F1には値がなく、高輝度部分の評価値F2には大きな値を持つ。図5〜図7で例示した各発光輝度レベルでの評価値算出結果の面積(累積)を比較してみると、発光輝度レベルが70%のときが最も低い。従って、ディストーションモジュール5では発光輝度レベル70%を選択し、出力することになる。
《コンフィグレーションデザイン部13》
液晶パネルへ入力される画素値と液晶パネルでの表示輝度との関係を示す基本的なモデルは、下式(2)により示される。ここで、Yは液晶パネルでの表示輝度、BLはバックライトの発光輝度レベル(バックライトDUTY)、CV(Code Value)は液晶パネルへ入力される画素値である。また、この例では映像信号の階調は0〜255で量子化されているものとする。
Y=BL(CV/255)γ ・・・(2)
コンフィグレーションデザイン部13は、ディストーションモジュール5で選択された発光輝度レベルBLreducedによってバックライトの発光輝度が低下したときに、画面上の輝度を上げるように、映像ゲインを調整する。ゲインをかけた画素値をCVreducedとするとき、発光輝度レベルを低下させたときの画面の明るさ(液晶パネルでの表示輝度)は、BLreduced(CVreduced/255)γである。一方で、参照用発光輝度レベルBLrefでバックライトを制御したときの画面の明るさは、BLref(CVref/255)γとなる。これらの値を等しくさせ、発光輝度レベルBLreducedによって生じるバックライトの発光輝度の低下分を補償するように、画素値を決定すればよい。つまり、コンフィグレーションデザイン部13は、下式(3)を満たすようなゲイン設定を行えばよい。
Y=BLreduced(CVreduced/255)γ=BLref(CVref/255)γ・・・(3)
従って、ゲイン(Gとする)は、下式(4)のようになる。例えば、参照用発光輝度レベルBLrefが100%のときには、下式(5)のようになる。なお、BLrefとBLreducedとの関係をルックアップテーブルとしてコンフィグレーションデザイン部13のROMなどに格納しておき、下式(4)の演算処理を高速に実行させることが好ましい。
G=CVreduced/CVref=(BLref/BLreduced)1/γ・・・(4)
G=(1/BLreduced)1/γ ・・・(5)
《RGBγ/WB調整部15》
図8は、図2の液晶表示装置におけるアドバンスト輝度変調部から出力されるゲイン設定信号に基づきRGBγ/WB調整部で設定される映像信号ゲインの例を示す図で、図9は、図2の液晶表示装置におけるRGBγ/WB調整部での調整処理例を説明するための図である。
図8を参照して、入力されるゲイン設定値(変換係数)とそこから得るゲインカーブの関係について説明する。図8(A)に示すように、アドバンスト輝度変調部20から出力される映像信号のゲイン設定が1.0の場合には全輝度について単純にその値を乗するゲインのまま、つまり線形のままで問題ない。しかし、ゲインが1.0以上の場合、図8(B)に示すように、高輝度部分が一律255の値となり、いわゆる白つぶれが発生する。アドバンスト輝度変調処理の基本思想は、少数の白輝度部分の白つぶれを犠牲にし黒をより引き締めるものであり、図8(B)のごときゲインでRGBγ/WB調整部15が処理を実行してもよいが、高輝度部分があからさまに255の値で一定(頭打ち)になってしまうことは品位上避けた方がよい。
そこで、低中輝度については、ゲイン設定に応じた信号伸張を行い、高輝度については、ゲインカーブを非線形にすることによって、高輝度部分の階調性の低下を軽減することが好ましい。この手法は明るさと白つぶれのトレードオフの関係になる。非線形とする領域を狭めれば、正規の明るさを表現できる領域が増えるが、高輝度の階調性が低下する。逆に、非線形とする領域を広めれば正規の明るさを表現できる領域が減るが、高輝度の階調性が或る程度保たれることになる。実際の製品では非線形とする輝度は、ゲイン設定による出力の例えば90%以上の部分や95%以上の部分とするなどして、白つぶれの影響のある部分のみ非線形とすればよい。図8(C)には、ゲイン設定が1.2の場合に90%以上の部分を非線形にするように補正したゲインカーブを示している。また、図8(D)には、ゲイン設定が1.6の場合に90%以上の部分を非線形にするように補正したゲインカーブを示している。
また、上述のように、ゲイン設定が1.0を超えた場合に頭打ちを避けるためには、ゲインカーブを一部非線形にする必要がある。しかし、RGBγ/WB調整部15は、ゲイン設定に基づき単純に比例計算により、このようなゲインカーブを算出ことができない。そのため、ゲイン設定ごとにゲインカーブをもつことも考えられるが、メモリ容量の関係から難しい。そこで、線形部分は、ゲイン設定値から単純に比例計算し、図8(C),(D)に例示したように90%以上の部分については、補間等によって非線形部分を算出すればよい。なお、ゲイン設定は毎フレーム変化するので、その都度、ゲインカーブを計算している。
次に、図9、図10を参照して、RGBγ/WB調整部15での各調整処理について説明する。RGBγ/WB調整部15は、画質補正部14から出力された映像信号に対し、上述のゲインカーブでゲインを得る処理、映像のγ調整処理、WB調整処理、さらにはCT(色温度)等の調整も行う。また、CT調整処理は、WB調整処理と合わせて1つの調整カーブを参照して実行してもよい。
また、RGBγ/WB調整部15で実行される各処理は、映像信号のR,G,Bのそれぞれに対し独立して実行される。その際、γ調整処理、ゲインを得る処理については、R,G,Bで同一のカーブによる演算がなされ、WB調整処理/CT調整処理についてはR,G,Bそれぞれ別個の特性のカーブによる演算がなされる。そして、RGBγ/WB調整部15で実行される各処理の順序としては、まずγ調整処理が施され、次いでゲインを得る処理が施され、最後にWB調整処理/CT調整処理を実行することが好ましい。
図9は、ゲイン処理、γ調整処理の順に階調変換処理を行った場合の出力時の階調特性を示すもので、(A)はゲイン処理による階調特性、(B)はγ調整処理による階調特性、(C)は出力時(画面の見かけ上)の階調特性をそれぞれ示すものである。図10は、γ調整処理、ゲイン処理の順に階調変換処理を行った場合の出力時の階調特性を示すもので、(A)、(B)、(C)に関しては、上記図9と同様である。また、図9、図10の(C)中の点線は(B)のγ調整処理による階調特性を示すものである。
ここで、図9、図10の出力時の階調特性(C)を比較すると、図9の方がγ調整処理の階調特性から大きくずれることが分かる。出力時の階調特性では、γ調整処理により調整された適切な階調特性を反映する必要があるが、図9のような処理順序では、それが大きくずれ、所望の画質をえることができない。従って、図10のようなγ調整処理を行った後にゲイン処理を行うことによって、出力時の階調特性のずれを緩和することが可能になる。また、WB調整処理/CT調整処理は、ゲイン処理の前などで行うと、WB調整処理/CT調整処理したにも関わらず後のゲイン処理でずれてしまうことになるため、R,G,Bの階調変換が完了した最後に行うことで、適切に調整が可能になる。
アドバンスト輝度変調処理を実行する主要部であるBL輝度レベル設定部8、ディストーションモジュール5、コンフィグレーションデザイン部13、及びRGBγ/WB調整部15を上述のような構成にすることによって、入力映像信号の特徴量に応じたバックライトの発光輝度、及び入力映像信号のゲイン設定値を求めることができ、表示品位の高い映像表示を可能にする。
次に、上記で説明したアドバンスト輝度変調処理の具体例を以下に説明する。
(具体例1)
具体例1のアドバンスト輝度変調処理に使用する設定値は以下の内容とする。また、第1,第2のテンポラリフィルタ7,9は考慮せずに、処理の傾向のみを概略的に説明する。
(1)パネルCR(使用する液晶パネルのコントラスト比):3000
(2)ターゲットCR(目標とする液晶パネルのコントラスト比):6000
(3)入力される参照用発光輝度レベルBLref:70%
(4)バックライトの輝度制御範囲:20%〜100%
(5)入力映像:全白(ヒストグラムで255のみに頻度が分布する映像フレーム)
上記(1)、(2)、(4)は通常固定値であり、液晶表示装置に選択可能に設けられた画質モードによって、或いはジャンル等によって、設定を変更してもよい。上記(3)は映像のAPL値やOPCやユーザ設定等によってフレーム単位で変化するものである。上記(5)は入力映像であり、本具体例では、白(255)の頻度が極めて大きい映像である。
本具体例では、映像のAPL等に基づき参照用発光輝度レベルBLrefとして70%が設定される。例えば、映像が明るく眩しさを軽減するためにバックライトの発光輝度レベルを70%に落とすような制御により、設定される。
そして、参照用発光輝度レベルBLrefが70%としてディストーションモジュール5に入力される。同時に映像のヒストグラム値もヒストグラムストレッチング部4を通して入力される。なお、ヒストグラムストレッチング部4は、入力映像信号が0〜255ではなく10〜235等の値の場合に0〜255に合わせるものであり、本具体例の入力映像は全白(255)であるため考慮する必要はない。
入力映像(入力画像)が全白であるため、バックライトの発光輝度を下げ、映像を伸張しようとしても映像は255以上にはならない。従って、ディストーションモジュール5は、評価値を算出して得た結果、発光輝度レベルBLreducedとして参照用発光輝度レベルBLrefと同じ70%を選択する。もし、入力映像が全白でなければディストーションモジュール5は70%よりも低い値を選択する場合もある。そして、最終的にCPU/CPLD11へ出力されるデューティ信号(バックライトデューティインデックス)には70%が出力される。
次に、映像のゲイン設定を行うコンフィグレーションデザイン部13には、BLreducedとBLrefが入力され、上式(4)で示した(BLref/BLreduced)1/γを計算する。本具体例では70%/70%であり、ゲインは1となる。つまり、本具体例は映像のゲインアップの制御を行わない例である。
(具体例2)
具体例2のアドバンスト輝度変調処理に使用する設定値は以下の内容とする。すなわち、具体例1と入力映像のみが異なる例である。
(1)パネルCR(使用する液晶パネルのコントラスト比):3000
(2)ターゲットCR(目標とする液晶パネルのコントラスト比):6000
(3)入力される参照用発光輝度レベルBLref:70%
(4)バックライトの輝度制御範囲:20%〜100%
(5)入力映像:黒(0)の中に白(255)が数点のみ分布する映像フレーム
本具体例では、ディストーションモジュール5は、入力画像のヒストグラムから、白の頻度が極めて少ないと判断し、白つぶれを或る程度犠牲にして黒表現を優先する。より具体的には、参照用発光輝度レベルBLrefよりも低い発光輝度レベルのうち、評価値を算出して評価値が最小となる発光輝度レベル(本具体例では50%)を、発光輝度レベルBLreducedとして選択決定する。最終的にバックライトの発光輝度は50%となる。
次に、映像のゲイン設定を行うコンフィグレーションデザイン部13には、BLreducedとBLrefが入力され、上式(4)で計算する。本具体例では70%/50%であり、γ=2.2とすると、ゲインは1.16となる。
本具体例では、黒の頻度が多いため、頻度の少ない白を犠牲にして黒を優先し、参照用発光輝度レベルBLrefより低い値を発光輝度レベルBLreducedとして選択している。このような選択による効果を、発光輝度レベル100%,0%で制御した時の液晶パネルの明るさをそれぞれ450cd,0.15cdとした場合を例に説明する。
参照用発光輝度レベルBLrefと同じ値の発光輝度レベルBLreduced(70%)を選択した場合には、数点の最大値の白(255)は315cd(450×70%)の明るさを持ち、黒(0)は0.1cd(0.15×70%)の明るさを持つことになる。
これに対し、アドバンスト輝度変調処理を施して、参照用発光輝度レベルBLrefより低い値の発光輝度レベルBLreduced(50%)を選択した場合には、数点の最大値の白(255)は225cd(450×50%)の明るさを持ち、黒(0)は0.075cd(0.15×50%)の明るさを持つことになる。従って、数点の白については本来よりも暗く表現されてしまうが、黒表現については、より理想に近い明るさで表現できたことになる。これが、アドバンスト輝度変調処理の効果である。もちろん、数点の白がなければ、白つぶれ等の不都合を発生させることなく、黒表現を高めることができる。
(具体例3)
具体例3のアドバンスト輝度変調処理に使用する設定値は以下の内容とする。すなわち、具体例2とターゲットCRのみが異なる例である。
(1)パネルCR(使用する液晶パネルのコントラスト比):3000
(2)ターゲットCR(目標とする液晶パネルのコントラスト比):3000
(3)入力される参照用発光輝度レベルBLref:70%
(4)バックライトの輝度制御範囲:20%〜100%
(5)入力映像:黒(0)の中に白(255)が数点のみ分布する映像フレーム
具体例2と同様の参照用発光輝度レベルBLref(70%)、同様のヒストグラム(黒の中に数点の最大値の白)がディストーションモジュール5に入力されるが、パネルCRとターゲットCRが同一であるため、ディストーションモジュール5は、構成する各輝度値について白つぶれを発生させない発光輝度レベルBLreducedを選択する。より具体的には、評価値を算出して評価値が最小となる発光輝度レベルを選択する。本具体例では数点の最大値の白についても、白つぶれ等が発生しないようにするので、発光輝度レベルBLreducedとして70%を選択する。これは、参照用発光輝度レベルが70%に設定されている為、その値を超えない範囲で発光輝度レベルBLreducedが選択される。従って、本具体例での映像信号のゲインは1となる。
(具体例4)
具体例4のアドバンスト輝度変調処理に使用する設定値は以下の内容とする。すなわち、具体例3と入力映像のみが異なる例である。
(1)パネルCR(使用する液晶パネルのコントラスト比):3000
(2)ターゲットCR(目標とする液晶パネルのコントラスト比):3000
(3)入力される参照用発光輝度レベルBLref:70%
(4)バックライトの輝度制御範囲:20%〜100%
(5)入力映像:全黒(ヒストグラムで0のみに頻度が分布する映像フレーム)
本具体例では、具体例3と同様にパネルCRとターゲットCRが同一であるため、ディストーションモジュール5は、構成する各輝度値についてつぶれを発生させない発光輝度レベルBLreducedを選択する。より具体的には、参照用発光輝度レベルBLrefよりも低い発光輝度レベルのうち、評価値を算出して評価値が最小となる発光輝度レベルを、発光輝度レベルBLreducedとして選択決定する。
しかし、本具体例の画像は全黒のため、評価値が最小となる発光輝度レベルが複数選択される。換言すると、本具体例の画像は全黒のため、各輝度値のつぶれを発生することなく、バックライトの発光輝度を下げることができる。
本具体例では、バックライトの輝度制御範囲は20〜100%のレンジであるので、最も低い発光輝度レベルである20%を選択する。従って、最終的な発光輝度レベルBLreducedは20%であり、映像信号のゲインは1.75となる。ここで、最も低い値を選択するのは、省電力上最も有利であるからである。このように、ディストーションモジュール5では、評価値が同じであれば、より低い発光輝度レベルを選択することが、省電力上、好ましい。
以上では、アドバンスト輝度変調処理の具体例を説明したが、次に、図2のアドバンスト輝度変調部20に記載のシーンチェンジ検出部6、第1テンポラリフィルタ7及び第2のテンポラリフィルタ9について、特にテンポラリフィルタの配置を考慮して具体的に説明する。
まず、シーンチェンジ検出部6の具体的動作について説明する。図11は映像信号のYヒストグラム及びその遷移を説明するための図で、図11(A)は前フレームのYヒストグラムの一例を示す図、図11(B)は図11(A)に続く現フレームのYヒストグラムの一例を示す図、図11(C)は、図110(A)と図11(B)に示す各フレームのヒストグラムを合成し、頻度変化部分を示した図である。図12は、図2の液晶表示装置におけるシーンチェンジ検出部6の構成例を示すブロック図である。
通常、映像のシーンは例えば映像制作者(脚本家や演出家など)の意図により、一連の場面設定に基づく一区切りの映像とされ、シーンチェンジ(映像内容の変化)に伴って、映像信号の輝度分布も大きく変わると考えられる。シーンチェンジ検出部6は、これを利用してシーンチェンジを検出するもので、具体的には、映像信号の1フレーム前のヒストグラムと現ヒストグラムの変化の程度からシーンチェンジの有無を検出する。なお、シーンチェンジ検出部6でのシーンチェンジ検出をヒストグラム変化により実行するものとして説明しているが、例えばAPL検出部3で検出されたAPLやヒストグラム検出時に得られるピーク輝度値等、映像信号の他の特徴量に基づいて(特徴量の変化により)実行してもよい。
図12に示すように、シーンチェンジ検出部6は、ヒストグラムバッファ61とヒストグラム変化検出部62とを有する。ヒストグラムバッファ61は、1フレーム前のヒストグラムデータを記憶するものである。ヒストグラム変化検出部62は、ヒストグラムストレッチング部4からの出力に基づき、現フレームと前フレームのヒストグラムデータを比較し、その頻度変化の累計値を算出し、特定の値よりも大きいときにシーンチェンジと判定し、判定結果を出力する。
図2に示すような、第1テンポラリフィルタ7及び第2テンポラリフィルタ9の配置例(テンポラリフィルタ配置例1)では、シーンチェンジ検出部6は、シーンチェンジ検出結果を、第1のテンポラリフィルタ7及び第2のテンポラリフィルタ9に出力するように組み込まれている。
図11で示すような場合、ヒストグラムバッファ61には図11(A)のヒストグラムデータが記憶されている。ヒストグラム変化検出部62は、ヒストグラムバッファ61のデータと現フレームのヒストグラムデータ図11(B)を比較し、その頻度変化を検出する。図11(C)の斜線部分が頻度変化部分である。ヒストグラム変化検出部62では、この頻度変化部分の累積値、言い換えれば面積を算出し、予め設定された特定の値よりも大きい場合はシーン変化が発生したと判定する。そして、ヒストグラム変化検出部62は、その判定結果を出力する。
次に、第1のテンポラリフィルタ7の動作について具体的に説明する。
図13は、図2の液晶表示装置における第1のテンポラリフィルタ7の構成例を示す図である。第1のテンポラリフィルタ7は、例えば、巡回型ローパスフィルタであり、図13に示すように、重み付け係数1−aを入力される現フレームnの値(バックライトDUTY)Xnに乗算する乗算器、重み付け係数aを前フレームn−1に対する出力値(バックライトDUTY)Yn-1に乗算する乗算器、及びそれらの乗算器からの出力を加算する加算器を備える。ここで、nを自然数、aを1未満の係数(フィルタ係数)とする。第1のテンポラリフィルタ7のこのような構成を式で表すと、下式(6)となる。
Yn=aYn-1+(1−a)Xn ・・・(6)
アドバンスト輝度変調部20で実行されるアドバンスト輝度変調処理では、バックライトの発光輝度レベルを動的に変化させるが、1フレーム単位でバックライトの発光輝度レベルが大きく変動すると違和感を感じる場合もある。そこで、第1のテンポラリフィルタ7として、1秒程度の時定数のローパスフィルタを用い、該第1のテンポラリフィルタ7にディストーションモジュール5で決定された発光輝度レベルBLreduced(バックライトDUTY)を通すことによって、バックライト輝度変動を時間的に滑らかにし、違和感を無くすようにしている。テンポラリフィルタ配置例1では、第1のテンポラリフィルタ7が、ディストーションモジュール5の出力を時間的にフィルタリングして後段のコンフィグレーションデザイン部13及び可変ディレイ10へ出力するように組み込まれている。
また、シーンチェンジ時には、映像自体が大きく変化しているので、バックライトの発光輝度レベルを急激に変化させても違和感を生じることが少ないと考えられる。そこで、例えば、シーンチェンジ時には第1のテンポラリフィルタ7の係数aを小さくすることによってバックライト輝度変化を速めている。具体的には、シーンチェンジが検出されたフレームのみ、式(6)の係数aを十分小さくし、次のフレームからは係数aの値を元に戻す。このようにすることで、入力に近い値が第1のテンポラリフィルタ7の出力となり、バックライトの発光輝度レベルBLreducedの変化を速めたことになる。このように、第1のテンポラリフィルタ7は、シーンチェンジ検出部6でシーンチェンジが検出されたか否かによって、係数aを変更することが好ましい。
次に、第2のテンポラリフィルタ9の動作について具体的に説明する。
図2で例示した第2のテンポラリフィルタ9について説明するが、その効果をより的確に説明するために、図14に示すような図2から第2のテンポラリフィルタ9を除いた構成を持つ液晶表示装置を用いて説明する。
図14は、従来の液晶表示装置の部分的な構成例を示す図で、図15は、映像信号のAPL及びヒストグラムの変化の例を示す図である。また、図16は、図14の液晶表示装置において図15のような映像信号の変化が生じたときの、参照用発光輝度レベルBLref、発光輝度レベルBLreduced、ゲイン設定値、及び液晶パネル上の表示輝度の変化を説明するための模式図である。
図14のごとき第2のテンポラリフィルタ9を除いた構成を持つ液晶表示装置において、例えば図15のようにAPLが小から大に急激に変化し、且つディストーションモジュール5での判定結果に影響が無かった場合について、図16を参照して考察する。
図15のようにAPLが小から大に急激に変化し、図16(A)に示すように目標となる参照用発光輝度レベルBLrefが100%から50%へと低く変更されたとする。ディストーションモジュール5の評価は変わらない場合を想定しているので、発光輝度レベルBLreducedとしては50%をそのまま出力し、図16(B)のように第1のテンポラリフィルタ7によって時間的変化が緩和された発光輝度レベルBLreduced(バックライトDUTY)が出力される。ところが、コンフィグレーションデザイン部13において、ゲインが発光輝度レベルBLreducedだけでなく参照用発光輝度レベルBLrefを基に計算されるため、図16(C)の楕円P内の実線で示すようにゲイン設定値が急激に変化してしまう。そのため、本来最終的な液晶パネル上の表示輝度は、図16(D)の点線Qのように徐々に変化させたいにも拘わらず、図16(D)の実線で図示したように急激に変化してしまう。
点線Qのように徐々に表示輝度を変化させるためには、このようなAPLの変化に対しても、ゲイン設定値が図16(C)の楕円P内の点線で示すように一定に推移するように出力される必要がある。
上記の問題に対し、第2のテンポラリフィルタ9を設けることにより解決できる。図17は、図2の液晶表示装置(テンポラリフィルタ配置例1)において図15のような映像信号の変化が生じたときの、参照用発光輝度レベルBLref、発光輝度レベルBLreduced、ゲイン設定値、及び液晶パネル上の表示輝度の変化を説明するための模式図である。
テンポラリフィルタ配置例1において、第2のテンポラリフィルタ9は、シーンチェンジ検出部6から受けたシーンチェンジ検出結果に基づき、BL輝度レベル設定部8からの出力を時間的にフィルタリングしてコンフィグレーションデザイン部13へ出力するように配置されている。第2のテンポラリフィルタ9は、例えば図13の第1のテンポラリフィルタ7のようなフィルタで構成すればよい。
このような第2のテンポラリフィルタ9の組み込みにより、コンフィグレーションデザイン部13に入る信号である参照用発光輝度レベルBLrefと発光輝度レベルBLreducedとが同一の時間的な遅延量になるので、図16(D)で説明したような表示輝度の急激な変化を無くすことができる。つまり、第2のテンポラリフィルタ9を、第1のテンポラリフィルタ7と同等の機能・特性(時定数、係数a、及び係数aの変更も同じとする)を持つフィルタとすること、すなわちシーンチェンジ時に第1のテンポラリフィルタ7の値の変化に追従させることで、上述のようなAPLの変化に対しても、ゲイン設定値を図17(C)の楕円R内で示すように一定に推移するように設定することができる。その結果として、図17(D)の実線Sで示すように、表示輝度の急激な変化を無くすことができる。言い換えれば、第1のテンポラリフィルタと第2のテンポラリフィルタとを設けることにより、ディストーションモジュール5から出力される発光輝度レベルBLreducedの出力遅延量と、コンフィグレーションデザイン部13から出力されるゲイン設定値の出力遅延量とが相関することになる。
このように、第2のテンポラリフィルタ9の時定数と第1のテンポラリフィルタ7の時定数とを同じにして、双方のフィルタリング対象のフレームを合わせること、すなわちバックライト輝度変調に用いる発光輝度レベルBLreducedとゲイン設定との出力時定数を合わせることが好ましい。また、第2のテンポラリフィルタ9の係数と第1のテンポラリフィルタ7の係数aとを同じにして、双方の現フレームの重みを合わせることが好ましい。また、第2のテンポラリフィルタ9も、第1のテンポラリフィルタ7での係数aの変更と合わせて、シーンチェンジ検出部6でシーンチェンジが検出されたか否かによって係数を変更することが好ましい。
また、時定数及び係数aを第1のテンポラリフィルタ7と同じにしなくても、シーンチェンジ検出結果に基づき係数aと同傾向の変更を第2のテンポラリフィルタ9の係数に加えることで、図16(D)で説明したような表示輝度の急激な変化を、無くすことはできなくても緩和することは可能である。
また、第1,第2のテンポラリフィルタ7,9における係数aの変更について説明したが、その例に限らず、各テンポラリフィルタ7,9は、シーンチェンジ検出部6でシーンチェンジであると判定された場合にのみ、発光輝度レベルBLreduced(バックライトDUTY)及びゲイン設定値の出力遅延を行わず、シーンチェンジではないと判定された場合には発光輝度レベルBLreduced及びゲイン設定値の出力遅延を行うようにしてもよい。
テンポラリフィルタ配置例1として説明したように、本発明では、(I)BL輝度レベル設定部8及びディストーションモジュール5等で構成される光源制御部から出力される光源輝度信号(発光輝度レベルBLreduced、つまりバックライトDUTY)の出力遅延量に応じて、コンフィグレーションデザイン部13等で構成されるゲイン設定部から出力されるゲイン設定値を遅延させて出力するか、或いは、(II)ゲイン設定部から出力されるゲイン設定値の出力遅延量に応じて光源制御部から出力される光源輝度信号を遅延させて出力することになる。上記(I),(II)のいずれの構成においても、一方の出力遅延量が他方の出力遅延量に連動(時間的に追従)するものであり、光源制御部から出力される光源輝度信号の出力遅延量とゲイン設定部から出力されるゲイン設定値の出力遅延量とが相関することになる。なお、ここでの遅延は上述した通りであり、可変ディレイ10で実行される、映像出力部17での映像出力とBL調整部12でのバックライト調光とのタイミングを取るための遅延とは別のものである。
このように、本発明の液晶表示装置によれば、バックライトの発光輝度変化と入力映像信号のゲイン設定とを適切に連動させて、表示品位を高くすることができる。
本発明の上記(I),(II)のような構成は、テンポラリフィルタ配置例1として前述しテンポラリフィルタ配置例2〜4として後述するように、第1のテンポラリフィルタ7(光源制御部側のフィルタ)、第2のテンポラリフィルタ9(ゲイン設定部側のフィルタ)を挿入することで実現できるが、それに限ったものではない。テンポラリフィルタ配置例1は、時定数や係数aや係数aの変更を2つのテンポラリフィルタ7,9で合わせることで、バックライトの発光輝度レベルBLreducedの出力遅延量とゲイン設定値の出力遅延量とを同じにすることが可能となる、好適な例に過ぎない。
なお、シーンチェンジ検出部6は必須ではなく、第1のテンポラリフィルタ7及び第2のテンポラリフィルタ9をテンポラリフィルタ配置例1のように配置することのみによっても、バックライトの発光輝度レベルBLreducedの出力遅延量とゲイン設定値の出力遅延量とを同じにすることが可能となる。また、シーンチェンジ検出部6が、シーンチェンジ検出結果を第1のテンポラリフィルタ7及び第2のテンポラリフィルタ9に出力するものとして説明した。しかし、シーンチェンジ検出部6は、シーンチェンジ検出結果を第1のテンポラリフィルタ7又は第2のテンポラリフィルタ9に出力し、検出信号を受けた側のフィルタが他方のフィルタにそれを伝えてもよいし、単に一方を緩和するだけと考えれば、一方にシーンチェンジ検出信号を出力するだけの構成を採用してもよい。また、シーンチェンジを検出して、その判定結果をテンポラリフィルタに反映させるに限られることはなく、もっと他の判定材料を基準にしてテンポラリフィルタを制御させるようにしてもよい。
以上では、図2に記載のテンポラリフィルタ配置例1を基に説明を行ってきた。以下では、他のテンポラリフィルタ配置例を挙げ説明する。
図18は、図2の液晶表示装置におけるテンポラリフィルタの別の配置例(テンポラリフィルタ配置例2)を示す部分的なブロック図である。図18を参照して説明するテンポラリフィルタ配置例2は、テンポラリフィルタ配置例1において、第2のテンポラリフィルタ9の配置が異なるものであり、その他の部分は、係数や係数の変更に関する応用例やシーンチェンジ検出部6を具備しない応用例も含め、同様である。
図18で部分的に示される液晶表示装置は、図2における第2のテンポラリフィルタ9の代わりに同じ第2のテンポラリフィルタ(符号は9aとする)が別の位置に設けられている。つまり、テンポラリフィルタ配置例2において、第2のテンポラリフィルタ9aは、シーンチェンジ検出部6から受けたシーンチェンジ検出結果に基づき、BL輝度レベル設定部8からの出力を時間的にフィルタリングして、コンフィグレーションデザイン部13及びディストーションモジュール5へ出力するように組み込まれている。つまり、ディストーションモジュール5では、BL輝度レベル設定部8で設定され、第2のテンポラリフィルタ9によって緩和された発光輝度レベルBLrefを越えない範囲で、最も評価値が低い映像輝度範囲に対応する発光輝度レベルBLreducedを選択することになる。このようなテンポラリフィルタ配置例2は、例えば、BL輝度レベル設定部8で選択された参照用発光輝度レベルBLrefがソフトウェア処理によりディストーションモジュール5及びコンフィグレーションデザイン部13へ一括して設定(入力)される場合に用いられる。
また、テンポラリフィルタ配置例2においては、シーンチェンジ検出部6が、ヒストグラムストレッチング部4からの出力に基づき得たシーンチェンジ検出結果を、第1のテンポラリフィルタ7及び第2のテンポラリフィルタ9aに出力するように、第1のテンポラリフィルタ7が、ディストーションモジュール5の出力を時間的にフィルタリングして後段のコンフィグレーションデザイン部13及び可変ディレイ10へ出力するように組み込まれている。
テンポラリフィルタ配置例2では、テンポラリフィルタ配置例1での時定数に関する応用例については必ずしも最適とは言えない。すなわち、テンポラリフィルタ配置例2では第1のテンポラリフィルタ7と第2のテンポラリフィルタ9とは同じ時定数を採用してもよいが、より好適には、第2のテンポラリフィルタ9aの出力遅延量を第1のテンポラリフィルタ7の出力遅延量の数分の1程度にするなどにより、合計2箇所でフィルタリングされる発光輝度レベルBLreducedの出力遅延量と1箇所でフィルタリングされるBLrefの出力遅延量とを、適宜、合わせるようにしてもよい。
図19は、図18の液晶表示装置において図15のような映像信号の変化が生じたときの、参照用発光輝度レベルBLref、発光輝度レベルBLreduced、ゲイン設定値、及び液晶パネル上の表示輝度の変化を説明するための模式図である。
第1のテンポラリフィルタ7に対するこのような第2のテンポラリフィルタ9aの組み込みにより、バックライトの発光輝度レベルBLreducedの出力遅延量とゲイン設定値の出力遅延量のズレを緩和することができ、その結果、図16(D)で説明したような表示輝度の急激な変化を緩和することができる。つまり、第2のテンポラリフィルタ9aを、第1のテンポラリフィルタ7と同等の機能・特性(ここでは係数a及びその変更も同じとする)を持つフィルタとすること、すなわちシーンチェンジ時に第1のテンポラリフィルタ7の値の変化に追従させることで、上述のようなAPLの変化に対しても、ゲイン設定値を図19(C)の楕円U内で示すように一定ではないが図16(C)に比べて変化が少なく(変化を軽減させて)推移するように設定することができる。その結果として、図19(D)の点線Vで示すように完全に急激な変化を無くすことはできないものの、図19(D)の実線で示すように、表示輝度の急激な変化を軽微な変化へと緩和することができる。言い換えれば、テンポラリフィルタ配置例2においても、第1のテンポラリフィルタと第2のテンポラリフィルタとを設けることにより、ディストーションモジュール5から出力される発光輝度レベルBLreducedの出力遅延量と、コンフィグレーションデザイン部13から出力されるゲイン設定値の出力遅延量とが相関することになる。
このように、テンポラリフィルタ配置例2で示した液晶表示装置でも、バックライトの発光輝度変化と入力映像信号のゲイン設定とを適切に連動させて、表示品位を高くすることができる。また、係数aを第1のテンポラリフィルタ7と同じにしなくても、シーンチェンジ検出結果に基づき係数aと同傾向の変更を第2のテンポラリフィルタ9の係数に施すことで、図16(D)で説明したような表示輝度の急激な変化を、図19(D)の実線で示すまでは緩和されないものの、やや軽微な変化へと緩和することは可能である。
また、ディストーションモジュール5の入力に第2テンポラリフィルタ9aのようなフィルタを設けたテンポラリフィルタ配置例2は、参照用発光輝度レベルBLrefの変化を緩和してディストーションモジュール5での評価を行えるだけでなく、ディストーションモジュール5及びコンフィグレーションデザイン部13をソフトウェアにより構成した場合に特に有益となる。つまり、テンポラリフィルタ配置例2では、ディストーションモジュール5とコンフィグレーションデザイン部13とに、ソフトウェアにより一括して同じ参照用発光輝度レベルBLref(入力DUTY)が設定でき、またその設定だけで第2テンポラリフィルタ9aでフィルタリングも両方に一括してかけることができる。そのため、テンポラリフィルタ配置例2の構成の方がテンポラリフィルタ配置例1等の構成に比べて簡易に設計することができる。
以上では、テンポラリフィルタ配置例2について説明したが、以下に、さらに他のテンポラリフィルタ配置例としてテンポラリフィルタ配置例3を説明する。
図20は、図2の液晶表示装置におけるテンポラリフィルタの別の配置例を示す部分的なブロック図である。図20を参照して説明するテンポラリフィルタ配置例3は、テンポラリフィルタ配置例1において、さらに第3のテンポラリフィルタ9bを設けたものであり、その他の部分は、時定数や係数や係数の変更に関する応用例、シーンチェンジ検出部6を具備しない応用例も含め、同様に適用できる。但し、ここで言う時定数、係数、係数の変更とは、第1のテンポラリフィルタ7と第2のテンポラリフィルタ9とのものとなり、第3のテンポラリフィルタ9bの時定数、係数、係数の変更は基本的に無関係である。
図20で部分的に示されるテンポラリフィルタ配置例3の液晶表示装置は、テンポラリフィルタ配置例1において、第3のテンポラリフィルタ9bは、シーンチェンジ検出部6から受けたシーンチェンジ検出結果に基づき、BL輝度レベル設定部8からの出力を時間的にフィルタリングして、第2のテンポラリフィルタ9及びディストーションモジュール5へ出力するように組み込まれている。また、第2のテンポラリフィルタ9は、シーンチェンジ検出部6から受けたシーンチェンジ検出結果に基づき、第3のテンポラリフィルタ9bからの出力を時間的にフィルタリングして、コンフィグレーションデザイン部13へ出力するように組み込まれている。また、シーンチェンジ検出部6が、ヒストグラムストレッチング部4からの出力に基づき得たシーンチェンジ検出結果を、第1のテンポラリフィルタ7及び第2のテンポラリフィルタ9に出力するように、第1のテンポラリフィルタ7が、ディストーションモジュール5の出力を時間的にフィルタリングして後段のコンフィグレーションデザイン部13及び可変ディレイ10へ出力するように組み込まれている。
このような第2のテンポラリフィルタ9の組み込みにより、コンフィグレーションデザイン部13に入る信号である参照用発光輝度レベルBLrefと発光輝度レベルBLreducedとが同一のディレイで入ることになるので、図17で示したように、図16(D)で説明したような表示輝度の急激な変化を無くすこと(ゲイン設定時の第1のテンポラリフィルタ7による誤動作を回避すること)ができる。さらに、テンポラリフィルタ配置例3では、フテンポラリフィルタ配置例1において、参照用発光輝度レベルBLrefの変化を緩和してディストーションモジュール5での評価を行えるようになる。言い換えれば、テンポラリフィルタ配置例3においても、第1のテンポラリフィルタ、第2のテンポラリフィルタ、第3のテンポラリフィルタを設けることにより、ディストーションモジュール5から出力される発光輝度レベルBLreducedの出力遅延量と、コンフィグレーションデザイン部13から出力されるゲイン設定値の出力遅延量とが相関することになる。
ここで例示したように、本発明ではフィルタの個数は2つに限ったものではなく、バックライトの発光輝度レベルBLreducedの出力遅延量とゲイン設定値の出力遅延量が関連する(好ましくは同じになる)ように構成すればよい。
以上では、テンポラリフィルタ配置例3について説明したが、以下に、さらに他のテンポラリフィルタ配置例としてテンポラリフィルタ配置例4を説明する。
図21は、図2の液晶表示装置におけるテンポラリフィルタの別の組込例を示す部分的なブロック図である。図21を参照して説明するテンポラリフィルタ配置例4は、テンポラリフィルタ配置例1において、第1のテンポラリフィルタ7(符号は7aとする)及び第2のテンポラリフィルタ9(符号は9cとする)の配置が異なるものであり、その他の部分は、時定数や係数や係数の変更に関する応用例、シーンチェンジ検出部6を具備しない応用例も含め、同様である。
図21で部分的に示されるテンポラリフィルタ配置例4の液晶表示装置は、フィルタ組込例1において第1,第2のテンポラリフィルタ7,9を取り除き、第1のテンポラリフィルタ7aが、ディストーションモジュール5の出力を時間的にフィルタリングして後段の可変ディレイ10へ出力するように組み込まれている。さらに、第2のテンポラリフィルタ9cが、シーンチェンジ検出部6から受けたシーンチェンジ検出結果に基づき、コンフィグレーションデザイン部13からの出力であるゲイン設定値を時間的にフィルタリングして、RGBγ/WB調整部15へ出力するように組み込まれている。ここで、シーンチェンジ検出部6は、ヒストグラムストレッチング部4からの出力に基づき得たシーンチェンジ検出結果を、第1のテンポラリフィルタ7a及び第2のテンポラリフィルタ9cに出力するように組み込まれている。
このような第1,第2のテンポラリフィルタ7a,9cの組み込み方法を採用することにより、コンフィグレーションデザイン部13に入る信号である参照用発光輝度レベルBLrefと発光輝度レベルBLreducedとが元々時間的に同一であるため、図16(C)で説明したようなゲイン設定値の急激な変化が生じない。そして、最終的な液晶パネル上の表示輝度は、第1のテンポラリフィルタ7aによりシーンチェンジ検出の有無などによるバックライト輝度変動の違和感を無くすようにしているが、第2のテンポラリフィルタ9cではゲイン設定後にフィルタリングするので、図16(D)の実線で示したような表示輝度の急激な変化を無くし、図16(D)の点線Qや図17(D)の実線Sのように徐々に表示輝度を変化させることができる。言い換えれば、テンポラリフィルタ配置例4においても、第1のテンポラリフィルタと第2のテンポラリフィルタとを設けることにより、ディストーションモジュール5から出力される発光輝度レベルBLreducedの出力遅延量と、コンフィグレーションデザイン部13から出力されるゲイン設定値の出力遅延量とが相関することになる。
1…スケーリング部、2…Yヒストグラム検出部、3…APL検出部、4…ヒストグラムストレッチング部、5…ディストーションモジュール、6…シーンチェンジ検出部、7,7a…第1のテンポラリフィルタ、8…BL輝度レベル設定部、9,9a,9c…第2のテンポラリフィルタ、9b…第3のテンポラリフィルタ、10…可変ディレイ、11…CPU/CPLD、12…BL調整部、13…コンフィグレーションデザイン部、14…画質補正部、15…RGBγ/WB調整部、16…FRC部、17…映像出力部、20…アドバンスト輝度変調部、61…ヒストグラムバッファ、62…ヒストグラム変化検出部。