以下に説明する本発明に係る実施形態では、光源としてのバックライトを備えた映像表示装置において、入力映像信号の映像特徴量に応じて入力映像信号の増幅度合い(ゲイン)を調整するもので、このときに、目標となるコントラスト(ターゲットCR)を設定し、バックライトの発光輝度の制御とゲインの制御によりそのターゲットCRに近づけるように映像表現を行う。このような映像信号とバックライトの輝度変調処理を本明細書ではアドバンスト輝度変調処理とする。
〈アドバンスト輝度変調処理の概要〉
映像を表示する場合の表示輝度は、表示する映像信号のレベルを忠実に再現するのが理想である。つまり、黒画面を表示する場合、表示輝度は理想的には0でなければならない。液晶パネルとバックライト光源を使用した映像表示装置の場合、現実には液晶パネルには若干の光漏れがあり、黒画面を表示する場合にも黒ではなくグレー表示となる。
映像表示装置の重要な性能の一つとしてコントラスト比(以下CRともいう)がある。映像表示装置において、CRは液晶パネル上の最大輝度と最小輝度の比である。液晶パネルとバックライト光源を用いた映像表示装置の場合、最大輝度はバックライト光源の最大発光輝度で決まり、最小輝度は黒表示時の光漏れ量によって決まる。よって、バックライト光源の発光輝度が一定の場合、同一の液晶パネルにおいてはコントラスト比は一定となる。
図1は、CRが3000と6000の液晶パネルについて、入力映像信号の画素値(映像信号の輝度値)と液晶パネル上での輝度値との関係を示すグラフである。最大輝度は共に同じ450cdであるが、画素値0での液晶パネル上の表示輝度(最小輝度)はCR3000の場合に0.15cd、CR6000の場合に0.075cdとなり、2倍の差がある。
例えば、CR3000の液晶パネル使用時に光源の発光輝度を50%まで下げた場合、入力映像信号の画素値と液晶パネルの輝度値との関係は、図1において点線で示すような関係となる。光源の発光輝度が50%であるので、画素値128より大きい映像は表示できない。しかし、画素値0〜128についてはCR6000の液晶パネルに近い輝度表現が可能となる。
そこで、映像に含まれる画素値の最大値が128以下の場合には、光源の発光輝度を50%にすることでCR6000の液晶パネルと同等のコントラスト感を出すことができ、且つ映像信号の画素値を2倍に伸張することによって、CR6000の液晶パネルと同等の輝度表現性能にすることができる。この伸張は、映像信号の画素値が2倍になるようなゲインを設定することで実現できる。また、CRを向上させるだけでなく、バックライト光源の発光輝度を50%に落としているため省電力化を図ることができる。なお、上述の例では画素値の最大値が128以下であるため、単純に2倍することで白潰れが生じない。
アドバンスト輝度変調処理は、この例のように、省電力化を図りつつ目標とするCR(ターゲットCR)に近づけるように、バックライト光源の発光輝度を抑え、それと連動させて、映像信号のゲインを設定しそのゲイン設定を用いて映像信号を伸張することで、バックライト光源の発光輝度の低下分を映像信号の液晶パネルへの出力値で補償する。上記例以外でも、例えば、映像中の白部分が極めて少ない場合には、白部分の重視度を下げ、黒表現の向上を同様にして図ることができる。このとき、重視しない部分の白潰れは無視してもよいし、ターゲットCRを実現させるゲイン設定によっても白潰れが緩和できるように、白側領域でのゲインを決めるようにしてもよい。
また、アドバンスト輝度変調処理では、省電力化を図るために、後述するように映像信号から得た映像のAPL等の映像特徴量に応じて動的にバックライト光源の発光輝度レベルを抑える処理も併せて実行する。
つまり、ゲイン設定及びバックライト光源の発光輝度レベルを設定するための参照用の発光輝度レベルをまず映像特徴量(APL,ピーク(最大輝度値)等のヒストグラム情報)に応じて設定し、省電力化を図ると共に、参照用の発光輝度レベルに対して、さらに上述のごときコントラスト感を出すための処理(すなわち発光輝度レベルを参照用の発光輝度レベル以下の適切な値に設定する)を実行して、CR向上及び更なる省電力化を図り、その処理と連動させて映像信号のゲインを設定して、視覚上の輝度を保つようにする。
〈アドバンスト輝度変調処理を行う映像表示装置のシステム構成例〉
図2は、本発明に係る映像表示装置の一実施形態によるシステム構成例を示すブロック図である。図2で例示する映像表示装置は、Yヒストグラム検出部2、APL検出部3、BL(バックライト)輝度レベル設定部8、調光信号生成部11、BL出力部12、画質補正部14、RGBγ/WB(White Balance)調整部15、映像出力部17、及びジャンル情報検出部18を備える。
図2で例示する映像表示装置は、アドバンスト輝度変調処理の主な部分を実行するアドバンスト輝度変調部20を備える。アドバンスト輝度変調部20は、ヒストグラムストレッチング部4、ディストーションモジュール5、シーンチェンジ検出部6、第1のテンポラリフィルタ7、第2のテンポラリフィルタ9、可変ディレイ10、コンフィグレーションデザイン部13を有する。なお、上述したように、アドバンスト輝度変調処理は、APL等の映像特徴量に応じた動的な光源の発光輝度制御を行うだけでなく、その映像特徴量の所定の条件により決定される光源の参照用の発光輝度レベルBLrefに対しさらにコントラスト感を出すような発光輝度レベルBLreducedを選択し、且つ映像信号のゲインも設定するという進化した輝度変調処理である。
まず、図2の映像表示装置における各ブロックの概要について説明する。
映像出力部17は表示すべき映像信号を出力表示する。本例では、映像表示を行う表示パネルとして液晶パネルを用いている。従って映像出力部17は、映像信号による映像を表示する液晶パネルと、映像信号を液晶パネル駆動のための信号に変換し液晶パネルに出力する液晶制御回路とを有する。その詳細は後述するが、映像信号は、アドバンスト輝度変調部20で設定されたゲインを用いて変換された後、この映像出力部17に入力される。つまり、アドバンスト輝度変調処理においては、この映像出力部17で表示すべき映像を示す映像信号が処理対象となる。ゲイン及びその設定については後述する。
BL出力部12は、蛍光管で構成されるランプと、そのランプを駆動するランプ駆動回路とを有し、映像出力部17の液晶パネルを背面や側面から照射する光源(バックライト光源、或いは単にバックライトともいう)を構成する。本例のアドバンスト輝度変調処理においては、このバックライト光源が発光輝度制御の対象となる。
BL出力部12は、調光信号生成部11で制御される。調光信号生成部11は、アドバンスト輝度変調部20から出力された発光輝度レベルBLreducedを示す信号(例えばデューティ信号)に従って、BL出力部12のランプ駆動回路(例えばインバータ回路)で実際に調光するための信号(例えばパルス幅変調等の駆動に適した信号)に変換して、BL出力部12へ出力する。バックライト調光値を実際のバックライト調光のための信号に変換するものである。また、ランプとしては、例えばLED(Light Emitting Diode)で構成されるものや、LEDと蛍光管の組み合わせで構成されるものを採用してもよく、同時にそれに対応したランプ駆動回路を設けておけばよい。
映像出力部17へ出力する映像信号の処理、並びに調光信号生成部11を介してBL出力部12の制御を行う部位が、Yヒストグラム検出部2、APL検出部3、BL輝度レベル設定部8、画質補正部14、RGBγ/WB調整部15、及びアドバンスト輝度変調部20である。
ここで、入力映像信号としては、例えば放送波として受信した映像信号を復調した信号、通信ネットワーク経由で受信した映像信号、内部記憶装置に記憶された映像信号を読み出した信号、各種レコーダや各種プレーヤやチューナ機器といった外部機器から受信した映像信号などが該当し、或いはそれら映像信号に対して各種映像処理を施した後の映像信号が該当する。図示しないが、図2の映像表示装置は、このような映像信号のいずれかを取得可能なよう構成しておけばよい。
画質補正部14は、入力された映像信号に対し、ユーザ設定等により、映像のコントラストや色味等を変更する。
RGBγ/WB調整部15は、画質補正部14から出力された映像信号に対し、映像のγ、WB等の調整を行う。さらに、RGBγ/WB調整部15は、アドバンスト輝度変調部20(実際にはコンフィグレーションデザイン部13)からのゲイン設定信号によって信号のゲインを変更する。ここでは、画質補正部14から出力された映像信号に対するゲインが変更されるか、或いはRGBγ/WB調整部15内でγ調整した後の映像信号に対するゲインが変更される。そして、RGBγ/WB調整部15ではそのゲインに基づき映像信号の変換が施され、後述するようなアドバンスト輝度変調部20で発光輝度レベルを低下させる制御に対して輝度低下分をゲインによって補償する。ここで、低階調部分のノイズを抑えるため、この変換は、γ調整後であってWB調整前に施すことが好ましい。
アドバンスト輝度変調部20からのゲイン設定信号は、上述の液晶パネルへ出力すべき映像信号の画素値(映像信号レベル)を変換するための変換係数を示す信号である。このゲイン設定信号は、以下の例で示すように映像信号(この例では0〜255の画素値をもつ映像信号)に乗算するための共通の1つの変換係数とし、後述するようにゲインすることで頭打ちとなる映像信号レベルの範囲などに基づいて得た或る映像信号レベルの範囲に対しては、ゲインをRGBγ/WB調整部15で補正してもよい。
Yヒストグラム検出部2は、映像フレームを画素単位等に分割し、各画素の輝度値の発生頻度を表したヒストグラムを生成する。Yヒストグラム検出部2で生成されたヒストグラムは、例えば画素値(Y)0〜255のそれぞれに対して頻度の値を持つ。APL検出部3は、映像信号の平均輝度レベルを、映像フレーム毎に算出する。APL検出部3で算出される値としては、全画面で黒の場合には0%を示す値となり、全画面で白の場合には100%を示す値となる。
ヒストグラムストレッチング部4は、Yヒストグラム検出部2で生成されたヒストグラムから、アドバンスト輝度変調部20で使用する範囲を設定する。例えば、ディストーションモジュール5が最小値0〜最大値255で演算を実行するモジュールであり、且つ入力映像信号が元々最小値16〜最大値235の値をとるような信号(例えば放送信号)であった場合を想定する。このような場合には、ヒストグラムストレッチング部4は、ディストーションモジュール5での演算に合わせるために、最小値16〜最大値235のそれぞれに対する頻度値を、最小値0〜最大値255のそれぞれに対する頻度値に当てはめるように引き伸ばすものである。
ディストーションモジュール5は、ヒストグラムストレッチング部4から入力されたヒストグラムと、後述するBL輝度レベル設定部8で設定された参照用の発光輝度レベル(バックライト目標値ともいう)BLrefとから、実際に設定する発光輝度レベル(バックライト値ともいう)BLreduced、すなわちバックライト光源の制御に使用する発光輝度レベルを選択(決定)する。選択は、予め定められた複数の発光輝度レベルの中からBL輝度レベル設定部8で設定された参照用の発光輝度レベルBLrefを超えない範囲で行う。また、ここでは、ターゲットCRにより近い表示映像を実現できる発光輝度レベルBLreducedを選択する。ターゲットCR等のディストーションパラメータは図示しないメインCPUから設定すればよい。
シーンチェンジ検出部6では、1フレーム前のヒストグラムと現ヒストグラムの変化の程度からシーンチェンジの有無を検出する。例えば、各輝度値の頻度変化の累計値を算出し、特定の値よりも大きかった場合にはシーンチェンジと判定する。
第1のテンポラリフィルタ7は、ディストーションモジュール5で選択された上述の実際に設定する発光輝度レベルBLreducedが急激に変化した場合に生じる、視覚上の違和感を防止するために設けられたものであり、発光輝度レベルBLreducedの変化量を時間的に緩慢なものにした後、実際に設定する発光輝度レベルBLreducedとして後段に出力する。また、シーンチェンジ時には、緩慢な発光輝度レベルBLreducedの変化を施すとかえって違和感を持つため、シーンチェンジ検出部6によるシーンチェンジ検出信号により、第1のテンポラリフィルタ7の値を変え、比較的速い変化ができるようにする。
BL輝度レベル設定部8は、APL検出部3から出力されたAPL値もしくはYヒストグラム検出部2から出力されたヒストグラム情報などの映像特徴量、および図示しないメインCPUから出力されたOPC(Optical Picture Control;明るさセンサともいう)の値やユーザ設定値などを参照して、バックライトの発光輝度レベルの最大値を決定する。例えば、APLが高い場合にはバックライトの発光輝度レベルの最大値を低い値とすることで、眩しさを感じない映像とすることができる。このバックライトの発光輝度レベルの最大値が、アドバンスト輝度変調部20で実行されるアドバンスト輝度変調の参照用の発光輝度レベル(バックライト目標値)BLrefとなる。参照用の発光輝度レベルBLrefを決定するための映像特徴量としては、上述のようにAPLやヒストグラム情報を用いることができ、実施形態に応じて使用する特徴量が選択される。ヒストグラム情報には、映像のピーク値(最大輝度値)や最小輝度、あるいは映像信号を仮に伸張すれば表現できない映像の頻度などがある。
なお、ディストーションモジュール5での選択が、BL輝度レベル設定部8で設定された参照用の発光輝度レベルBLrefを超えない範囲で行われることから、BL輝度レベル設定部8では、参照用の発光輝度レベルBLrefとしてバックライトの発光輝度レベルの最大値が設定されると説明している。また、図2の例では、第2のテンポラリフィルタ9を経由した参照用の発光輝度レベルをBLrefとしている。
第2のテンポラリフィルタ9は、第1のテンポラリフィルタ7と同等の機能を持つフィルタである。概略を説明すると、APLが急激に変化し、且つその変化がディストーションモジュール5での選択に影響を与えないような場合に、第1のテンポラリフィルタ7から出力される発光輝度レベルBLreducedはその時間的変化が緩和されている。しかし、ゲイン設定はBL輝度レベル設定部8から出力された参照用の発光輝度レベルBLrefを元に計算するため、ゲインが変化してしまい、液晶パネル上の表示輝度が急激に変化してしまう。このような表示輝度の急激な変化を無くす或いは緩和するために、第2のテンポラリフィルタ9が設けられている。
可変ディレイ10は、映像出力部17での映像出力とBL出力部12でのバックライト調光とのタイミングを取るための遅延部である。バックイト調光は、調光値が決定すれば比較的少ない処理後、バックライト輝度制御が行われる。それに対して、映像信号はアドバンスト輝度変調で映像のゲインが決定し、映像信号レベルを変更した後も液晶制御回路でのパネル制御信号への変換など、多くの処理が行われるため、時間的な遅延が発生する。そうすると、本来同時におこなわれるべきバックライト調光制御と映像のゲイン制御のタイミングがずれてしまい、バックライトと映像のバランスが崩れてしまうことになる。そこで、可変ディレイ10によってバックライト調光をあえて遅らせ、バックライト調光制御と映像のゲイン制御のタイミングを合わせるものである。
コンフィグレーションデザイン部13では、BL輝度レベル設定部8で決定された参照用の発光輝度レベルBLrefとディストーションモジュール5によって選択された発光輝度レベルBLreducedとに基づき、映像信号のゲインを決定する。なお、図2の例では各レベルBLreduced,BLrefがそれぞれテンポラリフィルタ7,9を通過したレベルを用いている。参照用の発光輝度レベル(バックライト目標値)BLrefと選択された発光輝度レベル(バックライト値)BLreducedが同じであれば、映像信号レベルを変更する必要はなく、ゲインは1である。また、参照用の発光輝度レベルBLrefよりも選択された発光輝度レベルBLreducedが低い場合は、その値に応じて、映像信号レベルを上げる方向にゲイン設定を行う。
ジャンル情報検出部18は、入力映像信号のジャンル情報を検出するものである。
上述したように、ディストーションモジュール5では、ヒストグラムストレッチング部4から入力されたヒストグラムと、BL輝度レベル設定部8で設定された参照用の発光輝度レベル(バックライト目標値ともいう)BLrefとから、実際に設定する発光輝度レベル(バックライト値ともいう)BLreduced、を選択している。そして、本発明に係る実施形態では、ジャンル情報検出部18によって検出したジャンル情報に応じて、ディストーションモジュール5において発光輝度レベルの選択に使用するパラメータを変更させるようにしている。
ジャンル情報検出部18で検出されたジャンル情報は、図示しないCPUに送られ、CPUではジャンル情報に応じたディストーションパラメータを選択して、アドバンスト輝度変調部20のディストーションモジュール5に出力する。あるいは、ディストーションモジュール5にジャンル情報を入力させ、ディストーションモジュール5でジャンル情報に応じたディストーションパラメータを選択させるようにしてもよい。
ジャンル情報は、例えば、デジタル放送の放送信号に重畳されて送信されてくる電子番組情報(EPG情報)の一部にジャンルコードとして含まれている。
例えば入力映像信号としてデジタル放送信号が入力したときに、ジャンル情報検出部18は、デジタル放送信号の中からジャンル情報としてジャンルコードを検出する。検出したジャンルコードは、ディストーションモジュール5におけるバックライトの発光輝度レベルの選択処理に用いられる。また、ジャンル情報は、アナログ放送に重畳されてくるEPG情報からも取得が可能である。
ディストーションモジュール5で使用するジャンル情報は、上記のような放送信号から検出するジャンルコードのみならず、例えば、映像表示装置に外部機器(DVD再生機やブルーレイディスク再生機など)を接続し、外部機器で再生された映像信号が映像表示装置に入力したときに、DVD等のメディア媒体内に付加されたコンテンツ内容を表すフラグ(例えば“映画”を示す識別コード)をジャンル情報検出部18で検出することにより取得することができる。
さらにジャンル情報は、入力映像信号と同時に入力される場合の他、映像信号とは別のサブ情報として入力される場合もある。例えばWeb上の番組表などからジャンル情報を取得する場合である。このように、映像信号とジャンル情報とが別々に入力される場合であっても、ジャンル情報がどの映像情報を示すのかが対応付けられて入力されていれば、入力映像情報のジャンル情報を取得することができる。
〈アドバンスト輝度変調処理を実行する主要ブロックの詳細説明〉
図2の映像表示装置における主要ブロックとして、BL輝度レベル設定部8、シーンチェンジ検出部6、第1のテンポラリフィルタ7、ディストーションモジュール5、コンフィグレーションデザイン部13、RGBγ/WB調整部15を、この順序で説明する。
《BL輝度レベル設定部8》
BL輝度レベル設定部8には、APL検出部3で検出された映像信号のAPLが入力されるとともに、周囲の明るさ(周囲の照度)を測定する図示しない明るさセンサの検出情報に基づく制御信号、及び液晶パネル上の明るさを設定するユーザ設定に基づく制御信号が入力される。また、映像特徴量として、映像信号の最小輝度及び最大輝度などの情報を使用する場合には、ヒストグラム検出部2から、映像信号の画面単位(フレーム単位)で必要とするこれら情報(ヒストグラム情報とする)が入力される。また、APLとヒストグラム情報の両方を使用する場合には、それぞれの情報がBL輝度レベル設定部8に入力される。
そして、BL輝度レベル設定部8ではこれらの制御信号と映像特徴量とに基づいて、参照用の発光輝度レベルBLrefを出力する。具体的には、画面単位(フレーム単位)で変化する入力映像信号に応じて、バックライト光源の発光輝度を動的に調整する方式を適用し、これにより得られた発光輝度レベルを参照用の発光輝度レベル(バックライト目標値)BLrefとして出力する。
参照用発光輝度レベルBLrefの生成には、BL輝度レベル設定部8に保持されている輝度制御テーブル(ルックアップテーブル)が用いられる。輝度制御テーブルは、入力映像信号の映像特徴量(APL、もしくはヒストグラム情報等)に応じたバックライトの発光輝度レベルの関係、すなわち輝度制御特性を定めるものである。そして予め選択可能な複数の輝度制御テーブルを用意し、BL輝度レベル設定部8が備えるROM(Read Only Memory)等のテーブル格納メモリに保持させておく。
映像表示装置周囲の明るさを測定する明るさセンサには、例えばフォトダイオードが適用される。明るさセンサは、検出した周囲光に応じた直流電圧信号を生成し、図示しないメインCPUに出力する。メインCPUは、周囲光に応じた直流電圧信号に応じて輝度制御テーブルを選択する制御信号をBL輝度レベル設定部8に出力する。
さらに、メインCPUは、液晶パネル上の明るさを設定するユーザ設定に基づく制御信号として、輝度制御テーブルの輝度制御値を調整するための輝度調整係数を出力する。輝度調整係数は、ユーザ操作に応じて画面全体の明るさ設定を行うために使用される。例えば、映像表示装置が保持するメニュー画面には、画面の明るさ調整項目が設定されている。ユーザは、その設定項目を操作することによって、任意の画面明るさを設定することができる。メインCPUは、その明るさ設定を認識し、設定された明るさに従ってBL輝度レベル設定部8に輝度調整係数を出力する。
BL輝度レベル設定部8では、明るさセンサの検出情報に従ってメインCPUから出力された制御信号により、テーブルNoを指定して輝度制御テーブルを選択する。若しくは選択する輝度制御テーブルを演算によって生成するようにしてもよい。そして、選択した輝度制御テーブルの輝度変換値に対して、ユーザ設定に基づく制御信号として得た輝度調整係数を乗算し、輝度制御テーブルの輝度制御特性の傾きを変化させ、最終的に、参照用の発光輝度レベルBLrefの生成に使用する輝度制御テーブルを決定する。そして、BL輝度レベル設定部8は、決定した輝度制御テーブルの輝度制御特性を使用し、APL検出部3から出力されたAPLやヒストグラム検出部2から出力されたヒストグラム情報に応じて参照用発光輝度レベルBLrefを生成して出力する。
このようにしてBL輝度レベル設定部8から出力された参照用の発光輝度レベルBLrefは、第1のテンポラリフィルタ7の作用で遅延された後、コンフィグレーションデザイン部13に入力し、映像ゲインの演算に使用されるとともに、ディストーションモジュール5に入力して、ヒストグラムに応じた発光輝度レベルBLreducedの決定に使用される。
《シーンチェンジ検出部6》
図3は映像信号のYヒストグラム及びその遷移を説明するための図で、図3(A)は前フレームのYヒストグラムの一例を示す図、図3(B)は図3(A)に続く現フレームのYヒストグラムの一例を示す図、図3(C)は、図3(A)と図3(B)に示す各フレームのヒストグラムを統合し、頻度変化部分を示した図である。図4は、図2の映像表示装置におけるシーンチェンジ検出部の構成例を示すブロック図である。
映像のシーンが変わった場合には、その映像の内容が大きく変わるのであるから、映像信号の輝度分布も大きく変わると考えられる。シーンチェンジ検出部6は、これを利用してシーンチェンジを検出するもので、具体的には、映像信号の1フレーム前のヒストグラムと現ヒストグラムの変化の程度からシーンチェンジの有無を検出する。
シーンチェンジ検出部6は、ヒストグラムバッファ61とヒストグラム変化検出部62とを有する。ヒストグラムバッファ61は、1フレーム前のヒストグラムデータを記憶するものである。ヒストグラム変化検出部62は、現フレームと前フレームのヒストグラムデータを比較し、その頻度変化の累計値を算出し、特定の値よりも大きいときにシーンチェンジと判定するものである。ヒストグラム変化検出部62は、シーンチェンジと判定した場合には、そのフレーム間シーンチェンジ検出信号を第1のテンポラリフィルタ7に出力する。
具体例として前フレームの映像が図3(A)のようなヒストグラムであり、現フレームの映像が図3(B)のようなヒストグラムである場合を考える。この場合、ヒストグラムバッファ61には図3(A)のヒストグラムデータが記憶されている。ヒストグラム変化検出部62は、ヒストグラムバッファ61のデータと現フレームのヒストグラムデータを比較し、その頻度変化を検出する。図3(C)の斜線部分が頻度変化部分である。ヒストグラム変化検出部62では、この頻度変化部分の累積値、言い換えれば面積を算出し、予め設定された特定の値よりも大きい場合はシーンチェンジが発生したと判定する。そして、ヒストグラム変化検出部62は、シーンチェンジと判定されたフレームのみについて、シーンチェンジ検出信号を出力する。
《第1のテンポラリフィルタ7》
図5は、図2の映像表示装置における第1のテンポラリフィルタの構成例を示す図である。第1のテンポラリフィルタ7は巡回型ローパスフィルタであり、図5に示すように、重み付け係数1−aを入力される現フレームnの値Xnに乗算する乗算器、重み付け係数aを前フレームn−1に対する出力値Yn-1に乗算する乗算器、及びそれらの乗算器からの出力を加算する加算器を備える。ここで、nを自然数、aを1未満の係数とする。第1のテンポラリフィルタ7のこのような構成を式で表すと、下式(1)となる。
Yn=aYn-1+(1−a)Xn ・・・(1)
アドバンスト輝度変調部20で実行されるアドバンスト輝度変調処理では、バックライト光源の発光輝度レベルを動的に変化させるが、1フレーム単位でバックライトの発光輝度レベルが大きく変動すると違和感を感じる場合もある。そこで、第1のテンポラリフィルタ7として、1秒程度の時定数のローパスフィルタを用い、ここにディストーションモジュール5で決定された発光輝度レベルBLreducedを通すことによって、バックライト光源の輝度変動の違和感を無くすようにしている。
また、シーンチェンジ時には、映像自体が大きく変化しているので、バックライトの発光輝度レベルを急激に変化させても違和感を生じない。そこで、シーンチェンジ時には第1のテンポラリフィルタ7の係数aを小さくすることによってバックライト光源の輝度変化を速めている。具体的には、シーンチェンジが検出されたフレームのみ、式(1)の係数aを十分小さくし、次のフレームからは係数aの値を元に戻す。このようにすることで、入力に近い値が第1のテンポラリフィルタ7の出力となり、バックライト光源の発光輝度レベルBLreducedの変化を速めたことになる。
《ディストーションモジュール5》
アドバンスト輝度変調部20で実行されるアドバンスト輝度変調処理の基本思想は、使用する液晶パネルにおいてバックライト光源の発光輝度レベルが100%の時に表示可能な映像輝度範囲と、目標(理想的ともいう)とするCR(ターゲットCR)を持つ液晶パネルにおいて表示可能な映像輝度範囲とを設定しておき、使用する液晶パネルにおいてバックライト光源の発光輝度レベルをコントロールすることで、ターゲットCRを性能として持つ液晶パネルで表示可能な映像輝度範囲に近づけるようにするものである。
ここでは、バックライト光源の発光輝度レベルを落とすのであるから、映像信号が高輝度の部分を含む場合には低減後のバックライト発光輝度で表現しきれない高輝度部分について白潰れが発生する。また、映像信号に低輝度を含まない場合には、バックライトの発光輝度レベルを落とす必要はない。
そこで、ディストーションモジュール5では、バックライト光源の輝度制御の判定基準として、或る発光輝度レベルにおいて表現できない低輝度部分、高輝度部分がどの程度あるかを評価値(Distortion)として数値化する。ここではディストーションモジュール5は、予め定めたバックライト光源の輝度制御範囲においてこの数値化を行い、最も評価値が小さくなる発光輝度レベルを、発光輝度レベルBLreducedとして選択することとする。バックライト光源の輝度制御範囲とは、ディストーションパラメータの一つであり、バックライト光源の発光輝度レベルとして許容する範囲を指す。例えば10%〜100%、20%〜100%などと、デフォルト設定やユーザ設定などにより予め決めておけばよい。
また、最も評価値が小さくなる発光輝度レベルが複数ある場合は、より低い発光輝度レベルを発光輝度レベルBLreducedとして選択する。液晶パネル上の映像表現品位として同等であれば、バックライト光源の発光輝度レベルを下げたほうが、省電力になるからである。
図6は、図2の映像晶表示装置におけるディストーションモジュールで実行される発光輝度レベル選択処理の一例を説明するための図である。h1は映像信号のYヒストグラムを示している。ここで横軸は映像信号の画素値(映像信号レベル)を示し、縦軸は各画素値の頻度を示している。
このような映像のヒストグラムh1に対して、使用する液晶パネルにおいてバックライト光源の発光輝度レベルが100%の時に表示可能な映像輝度範囲をAとする。また、ターゲットCRの液晶パネルで表示可能な映像輝度範囲をBとする。また、ディストーションモジュール5で選択可能な発光輝度レベルのうち、ある特定の発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲をCとする。そして、ヒストグラムh1において、映像輝度範囲Cの両側で映像輝度範囲Bと重なる部分が、上述の数値化を行う対象となる部分であり、評価値算出部分である。この評価値算出部分のうち、低輝度部分をD1、高輝度部分をD2とする。
評価値(Distortion)は、選択可能な発光輝度レベルに対して、頻度と重み付けによって下式(2)によって算出する。
Distortion=Σ{(映像輝度範囲D1+D2の頻度)×(距離重み)}・・・(2)
重みとしては、評価値算出対象となる発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲Cから遠ざかる程大きくする距離重みを用いる。ここでは、低輝度部分D1の距離重みをE1、高輝度部分D2の距離重みをE2とする。従って、同じ頻度値であっても、表現できる範囲から遠いほうが、評価値は大きくなる。これは表現できる範囲から遠いほうが、映像として表現できない影響が大きいためである。頻度と重み付けによって算出した値はF1(低輝度部分)、F2(高輝度部分)である。評価値はF1とF2の面積(累計)を合計した値となる。
ディストーションモジュール5では、各発光輝度レベルに対して算出した評価値のうち、最も評価値が低い映像輝度範囲Cに対応する発光輝度レベルを、出力する発光輝度レベルBLreducedとして選択する。このとき、ディストーションモジュール5では、BL輝度レベル設定部8で設定され、第2のテンポラリフィルタ9によって緩和された参照用の発光輝度レベルBLrefを越えない範囲で、最も評価値が低い映像輝度範囲Cに対応する発光輝度レベルBLreducedを選択する。
このような評価値の算出は、ディストーションモジュール5で、選択可能な発光輝度レベルの全てについて行うことが理想である。しかし、処理時間等の制限があるため、選択可能な発光輝度レベルの輝度制御範囲を均等に分け、例えば10%程度毎の発光輝度レベルについて算出すればよい。
つまり、上式(2)の特定の発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲をCとして、選択可能な発光輝度レベルを順次適用し、各発光輝度レベルごとに評価値を算出する。そして算出した評価値の中から、最も低い評価値をもつ発光輝度レベルを、選択した発光輝度レベルBLreducedとし、この値を第1のテンポラリフィルタ7に出力してバックライトの調光制御に用いるとともに、コンフィグレーションデザイン部13に出力して映像ゲインの設定(算出)に用いる。このとき、最も低い評価値をもつ発光輝度レベルが複数あった場合には、より低い発光輝度レベルを選択する。
ディストーションモジュール5での選択処理を、図7〜図10を参照し具体的な数値で説明する。図7は、本発明に係る映像表示装置における輝度変調処理の具体例を説明するための図で、映像ヒストグラムにおけるパネルCRとターゲットCRとの関係の一例を示す図である。ここでは、使用する液晶パネルのCR(パネルCR)が2000、ターゲットCRが3500、バックライトの輝度制御範囲が20〜100%で、バックライト輝度100%のときの液晶パネルの最大輝度は450cdとする。また、図7における各アルファベット記号は図6に準拠する。
この例において、使用する液晶パネルで表示可能な映像輝度範囲Aは、450cd〜0.225cdである。また、目標とする液晶パネルの表示可能な映像輝度範囲Bは、450cd〜0.128cdである。そして、各映像信号レベル0〜255に対する頻度を映像輝度範囲Bに合わせるように割り付ける。この場合、映像輝度範囲Aと映像輝度範囲Bとの差は5デジット(画素値)程度である。
ヒストグラムh1において、映像輝度範囲Bと映像輝度範囲Aとの差の部分に映像があれば、バックライトの発光輝度レベルを下げることで、よりターゲットCRに近い輝度表現が可能になる。しかし、高輝度側にも映像が分布していると、バックライトの発光輝度レベルを下げることで表現できない部分が発生する。そこで、上述したように、評価値を算出して最適な発光輝度レベルBLreducedを求める。
図8は、選択対象の一つである発光輝度レベル100%のときの映像輝度範囲Cを示す図、図9は、選択対象の一つである発光輝度レベル70%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図、図10は、選択対象の一つである発光輝度レベル50%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図である。図8〜図10における各アルファベット記号は図6に準拠する。
図8で示したように、発光輝度レベルが100%を示すものである場合、低輝度部分の評価値F1には或る程度の値があり、高輝度部分の評価値F2には値がない。また、図9で示したように、発光輝度レベルを70%程度に下げた場合、低輝度部分の評価値F1及び高輝度部分の評価値F2ともに、低い値を持つ。また、図10で示したように、発光輝度レベルを50%程度に下げた場合、低輝度部分の評価値F1には値がなく、高輝度部分の評価値F2には大きな値を持つ。図8〜図10で例示した各発光輝度レベルでの評価値算出結果の面積(累積)を比較してみると、発光輝度レベルが70%のときが最も低い。従って、ディストーションモジュール5では発光輝度レベル70%を選択し、出力することになる。
《コンフィグレーションデザイン部13》
液晶パネルへ入力される画素値と液晶パネルでの表示輝度との関係を示す基本的なモデルは、下式(3)により示される。ここで、Yは液晶パネルでの表示輝度、BLはバックライトの発光輝度レベル(バックライトDUTY)、CV(Code Value)は液晶パネルへ入力される画素値である。また、この例では映像信号の階調は0〜255で量子化されているものとする。
Y=BL(CV/255)γ ・・・(3)
コンフィグレーションデザイン部13は、ディストーションモジュール5で選択された発光輝度レベルBLreducedによってバックライトの発光輝度が低下したときに、画面上の輝度を上げるように、映像ゲインを調整する。ゲインをかけた画素値をCVreducedとするとき、発光輝度レベルを低下させたときの画面の明るさ(液晶パネルでの表示輝度)は、BLreduced(CVreduced/255)γである。一方で、参照用の発光輝度レベルBLrefでバックライトを制御したときの画面の明るさは、BLref(CVref/255)γとなる。これらの値を等しくさせ、発光輝度レベルBLreducedによって生じるバックライトの発光輝度の低下分を補償するように、画素値を決定すればよい。つまり、コンフィグレーションデザイン部13は、下式(4)を満たすようなゲイン設定を行えばよい。
Y=BLreduced(CVreduced/255)γ=BLref(CVref/255)γ・・・(4)
従って、ゲイン(Gとする)は、下式(5)のようになる。例えば、参照用の発光輝度レベルBLrefが100%のときには、下式(6)のようになる。なお、BLrefとBLreducedとの関係をルックアップテーブルとしてコンフィグレーションデザイン部13のROMなどに格納しておき、下式(5)の演算処理を高速に実行させることが好ましい。
G=CVreduced/CVref=(BLref/BLreduced)1/γ・・・(5)
G=(1/BLreduced)1/γ ・・・(6)
《RGBγ/WB調整部15》
図11は、図2の映像表示装置におけるアドバンスト輝度変調部から出力されるゲイン設定信号に基づきRGBγ/WB調整部で設定される映像信号ゲインの例を示す図で、図12は、図2の映像表示装置におけるRGBγ/WB調整部での調整処理例を説明するための図である。
図11を参照して、入力されるゲイン設定値(変換係数)とそこから得るゲインカーブの関係について説明する。図11(A)に示すように、アドバンスト輝度変調部20から出力される映像信号のゲイン設定が1.0の場合には全輝度について単純にその値を乗するゲインのまま、つまり線形のままで問題ない。しかし、ゲインが1.0以上の場合、図11(B)に示すように、高輝度部分が一律255の値となり、いわゆる白潰れが発生する。アドバンスト輝度変調処理の基本思想は、少数の白輝度部分の白潰れを犠牲にして黒をより引き締めるものであり、図11(B)のごときゲインでRGBγ/WB調整部15が処理を実行してもよいが、高輝度部分があからさまに255の値で一定(頭打ち)になってしまうことは品位上避けた方がよい。
そこで、低中輝度については、ゲイン設定に応じた信号伸張を行い、高輝度については、ゲインカーブを非線形にすることによって、高輝度部分の階調性の低下を軽減することが好ましい。この手法は明るさと白潰れのトレードオフの関係になる。非線形とする領域を狭めれば、正規の明るさを表現できる領域が増えるが、高輝度の階調性が低下する。逆に、非線形とする領域を広めれば正規の明るさを表現できる領域が減るが、高輝度の階調性が或る程度保たれることになる。実際の製品では非線形とする輝度は、ゲイン設定による出力の例えば90%以上の部分や95%以上の部分とするなどして、白潰れの影響のある部分のみ非線形とすればよい。図11(C)には、ゲイン設定が1.2の場合に90%以上の部分を非線形にするように補正したゲインカーブを示している。また、図11(D)には、ゲイン設定が1.6の場合に90%以上の部分を非線形にするように補正したゲインカーブを示している。
また、上述のように、ゲイン設定が1.0を超えた場合に頭打ちを避けるためには、ゲインカーブを一部非線形にする必要がある。しかし、RGBγ/WB調整部15は、ゲイン設定に基づき単純に比例計算により、このようなゲインカーブを算出することができない。そのため、ゲイン設定ごとにゲインカーブをもつことも考えられるが、メモリ容量の関係から難しい。そこで、線形部分は、ゲイン設定値から単純に比例計算し、図11(C),(D)に例示したように90%以上の部分については、補間等によって非線形部分を算出すればよい。なお、ゲイン設定は毎フレーム変化するので、その都度、ゲインカーブを計算している。
次に、図12を参照して、RGBγ/WB調整部15での各調整処理について説明する。RGBγ/WB調整部15は、画質補正部14から出力された映像信号に対し、上述のケインカーブでゲインを得る処理、映像のγ調整処理、WB調整処理、さらにはCT(色温度)等の調整も行う。また、CT調整処理は、WB調整処理と合わせて1つの調整カーブを参照して実行してもよい。
また、RGBγ/WB調整部15で実行される各処理は、映像信号のR,G,Bのそれぞれに対し独立して実行される。その際、γ調整処理、ゲインを得る処理については、R,G,Bで同一のカーブによる演算がなされ、WB調整処理/CT調整処理についてはR,G,Bそれぞれ別個の特性のカーブによる演算がなされる。そして、RGBγ/WB調整部15で実行される各処理の順序としては、まずγ調整処理が施され、次いでゲインを得る処理が施され、最後にWB調整処理/CT調整処理を実行することが好ましい。実際、図12で示すように、低階調の領域NがNA→NB→NCとあまり増幅されず、低階調部分のノイズが目立ちにくくなる。これに対し、ゲイン→γ調整→WB/CTの順序で処理した場合には、最初の低階調の領域のノイズが増幅される。このことは、ゲインを得る処理がバックライトの発光輝度レベルを低下させる制御を補償するための変換であり、液晶パネルに近い方で処理されることが好ましいことからも分かる。
〈アドバンスト輝度変調処理の具体例〉
アドバンスト輝度変調処理では、入力映像信号の輝度ヒストグラムに応じて最適なバックライトの発光輝度レベルBLreducedを選択し、選択した発光輝度レベルBLreducedに応じた映像ゲイン与え、画面上の明るさをほぼ保つようにし、且つバックライトの発光輝度の低減による低消費電力化を実現する。
また、従来からより表示画像を見やすくするため、或いは消費電力を低減するために、画面単位で変化する入力映像信号に応じて、バックライトの発光輝度を動的に調整する方式の映像表示装置が提供されている。この方式では、入力映像信号の映像特徴量として例えばAPLやヒストグラムを検出し、検出した映像特徴量に応じてバックライトの発光輝度レベルを変化させる。これにより画面毎に、その画面の映像特徴量に応じて画面輝度が変化する。これにより、例えば、高輝度で眩しさを感じないようにバックライト輝度を抑える制御が実行され、最適な映像品位の映像表示を行われるとともに、バックライトの低消費電力化を実現している。
本発明では、このような映像特徴量に応じたバックライトの発光輝度の制御方式を用い、映像特徴量に応じた発光輝度レベルを参照値(BLref)として映像ゲインの演算に使用する(上式(5)を参照)とともに、この参照値(BLref)を、実際にバックライト制御に適用する発光輝度レベルBLreducedの決定(ヒストグラムとターゲットCRに応じた決定)にも使用する。
本発明に係る実施形態では、上述したごとくのアドバンスト輝度変調技術を使用し、白潰れを回避した明るさ感の表現を可能とする一方で、黒の締まりも改善した映像表現を行うことを可能としたものである。アドバンスト輝度変調は、全体的に暗い映像が入力された場合に、バックライトの輝度を低下させ、映像ゲインを上げることによってピーク輝度を同等に保ちながら、省電力化を行うとともに、黒輝度を低下させてコントラスト感を向上させるようにしている。
このような効果は、映像のジャンルによって異なり、ジャンルに応じてアドバンスト輝度変調のパラメータを最適化することにより、映像の特徴に応じたきめ細やかな映像表現が可能となる。すなわち、本発明に係る実施形態では、映像信号のジャンルに応じて、アドバンスト輝度変調のパラメータを個々に設定し、ジャンルに応じた最適なパラメータによってバックライトの発光輝度レベルを選択する。
さらに本発明に係る実施形態では、上記のアドバンスト輝度変調のパラメータを、映像表示装置の周囲の明るさに応じて個々に設定する。これにより周囲環境に応じた最適なパラメータによってバックライトの発光輝度レベルを選択する。
図13は、映像のジャンルに応じた輝度変調パラメータの設定例を示す図である。図13に示すように、本発明に係る実施形態の映像表示装置では、表示する映像のジャンルに応じてアドバンスト輝度変調のパラメータを予め設定しておく。
例えば、ジャンルとしては、“無し/その他”、“映画”、“ニュース”、“アニメ”が設定される。映画、ニュース、アニメなどのジャンルは、電子番組表において規定された分類に一致している。これらジャンルに対して設定されるパラメータは、ターゲットCRと白重視度(白:黒)である。また、表示パネルのパネルコントラストが2000であるものとする。
この例では、ターゲットCRは、ジャンル“無し/その他”のときに“2000”,“映画”のときに“3000”、“ニュース”、及び“アニメ”のときに“2500”に設定されている。また白重視度は、ジャンル“無し/その他”のときに“2:1”,“映画”のときに“1:4”、“ニュース”のときに“2:1”、“アニメ”のときに“1:2”に設定されている。白重視度について以下に説明する。
図14は、ジャンル毎に設定する白重視度について説明するための図である。図中、h2は映像信号のYヒストグラムであり、その他のアルファベット記号は、図6〜図10に準ずるものとする。
図6〜図10を参照して説明したように、ディストーションモジュール5で実行される発光輝度レベルの選択においては、ヒストグラムh1において、ある特定の発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲Cの両側で、ターゲットCRの液晶パネルで表示可能な発光輝度範囲と重なる部分を評価して評価値(Distortion)を算出している。
評価値は、選択可能な発光輝度レベルに対して頻度と重み付けによって算出している。重み付けとしては、映像輝度範囲Cから遠ざかる程大きくする距離重みを用いている。そして、頻度と重み付けによって算出した値F1(低輝度部分)と、F2(高輝度部分)との面積(頻度の累計)を合計することで評価値を得るようにしている。
本例における上記の距離重みは、図14に示すように、映像輝度範囲Cの両側で、その映像輝度範囲Cから遠ざかる程、線形に大きくなる特性を有している。ジャンル毎に定められる白重視度は、この距離重みの傾きとして表すことができる。すなわち、映像輝度範囲Cの低輝度側の距離重みE1の傾きと、高輝度側の距離重みE2の傾きとの比(この場合絶対値の比)が白(高輝度側)と黒(低輝度側)との比として表される。
例えば白重視度が2:1とは、白側の重み(傾き)が黒側の重み(傾き)の2倍であることを示している。この場合、映像輝度範囲Cの端部から同じ距離(画素値)だけ離れた位置の画素値であっても、白側の方が2倍の重みで評価値が計算されることになる。
図14(A)の例では、白側と黒側とでそれぞれ異なる距離重みE1,E2が設定されている。そして、ディストーンションモジュールで発光輝度レベルを選択した結果、図14(B)の映像輝度範囲Cが得られる発光輝度レベルが選択されたものとする。このときの映像輝度範囲Cは、選択可能なバックライトの発光輝度レベルのうち、評価値F1+F2の値が最も小さくなる発光輝度レベルに対応した映像輝度範囲である。
これに対して、図15(A)のように、黒側の距離重みE1を図14よりも大きくし、黒を重視する制御を行うようにした場合、図15(B)に示すように、ディストーションモジュール5で選択される発光輝度レベルは、図14(B)よりも低輝度側に設定されやすくなる。つまりバックライトの発光輝度レベルが低くなる。これは、低輝度側の重みが大きく、その重みを軽減して評価値を下げるように制御されるからである。
上記のような思想に基づいて、映像のジャンルごとに、ターゲットCR及び白重視度をディストーションパラメータとして予め設定しておく。そしてディストーションモジュール5では、ジャンル情報検出部18が検出した映像のジャンル情報に応じたディストーションパラメータに従って、バックライトの発光輝度レベルを選択する処理を行う。
図16は、映画のジャンルの映像に対するバックライト輝度レベルの選択処理例について説明するための図である。図中、h3は映像のYヒストグラムで、その他のアルファベット記号は上記図6〜図10に準ずる。
映画のヒストグラムの例は、特徴的には図16(A)に示すような分布をもつ。この場合、ヒストグラムhは、中輝度から低輝度にかけて多く分布していて、中輝度から高輝度にかけては殆ど分布していない。また、表示パネルのコントラストは2000であるものとする。
この場合、図16(B)に示すように、ターゲットCRを2000に設定すると、ディストーションモジュール5では、バックライトの制御範囲の中で、バックライトの発光輝度レベルを最も低下させるように制御する。これは、高輝度側に殆どヒストグラムh3の分布がないため、バックライト輝度を低下させても評価値が上がらないためである。
そしてさらに、図16(C)に示すように、同じヒストグラムh3でターゲットCRを3000に設定した場合にも、同様にバックライトの制御範囲の中で、バックライトの発光輝度レベルを最も低下させるように制御する。
次に映画のジャンルの映像の他の例として、図17(A)に示すような高輝度側に若干の分布をもつヒストグラムh4の場合を考える。この場合、図17(B)に示すように、ターゲットCRを2000に設定すると、ヒストグラムh4には高輝度側の分布があることにより、バックライトの発光輝度レベルを低下させると評価値が上がってしまうため、バックライトの発光輝度レベルは低下させない。このため、黒側の漏れ光による黒浮きが生じる。
そしてさらに、図17(C)に示すように、ターゲットCRを3000に設定すると、ディストーションモジュール5では、低輝度側の評価値を下げて低輝度側と高輝度側との評価値の総和を最低にすべく、バックライトの発光輝度レベルを低下させる。これにより黒浮きが抑えられるようになる。特に映画のジャンルでは、白重視度が1:4であり、黒側を強く重視するように設定されているため、低輝度側の分布に対する評価値を低下させる方向に強く働き、その結果バックライトの発光輝度レベルが低下しやすくなる。
このようにターゲットコントラストを比較的大きくし、バックライトの発光輝度レベルを低下させることにより、白ピークがある程度犠牲になるものの、黒が沈んでよりリアルな黒を表現することができる。また、バックライトの発光輝度レベルの低下により低消費電力化にも貢献する。映画のジャンルでは、ユーザは、暗い視聴環境下で長時間没入して視聴する場合が多いので、特に黒を重視した制御を行うことが望ましい。
図18は、ニュースのジャンルの映像に対するバックライト輝度レベルの選択処理例について説明するための図である。
ニュースの映像のヒストグラムの例では、特徴的には図18に示すような分布をもつ。この場合、ヒストグラムh5は、中輝度部分に多く分布を持つとともに、高輝度部分にも分布のピークをもっている。また、表示パネルのコントラストは2000であるものとする。
ニュースのジャンルでは、ターゲットコントラストを2500とし、白重視度を2:1として、白を重視する設定とする。ニュースのジャンルの映像は、視聴者に日常的に見られるものであり、低消費電力化を重視すべきである。また、事実を忠実に伝えるために、映像の白ピークもある程度重視する。
図18の例では、白(高輝度)側の一部の分布と、低輝度側の一部の分布とが犠牲になって、ターゲットCRで表示可能な映像輝度範囲Bに含まれる映像輝度範囲Cに対応した発光輝度レベルが選択される。
図19は、アニメのジャンルの映像に対するバックライト輝度レベルの選択処理例について説明するための図である。
アニメの映像のヒストグラムの例では、特徴的には図19に示すような分布をもつ。この場合、ヒストグラムh6は、低輝度から高輝度部分にかけてなだらかな分布をもっていて、中間輝度の分布が比較的多く、平均輝度も比較的高めである。また、表示パネルのコントラストは2000であるものとする。
アニメのジャンルでは、ターゲットコントラストを2500とし、白重視度を1:2として、黒側を重視する設定とする。アニメのジャンルの映像は、中間調が主であり、子供への目の負担を軽減させる意味から、白ピークは重視しないようにする。そして低消費電力化を重視する。
図19の例では、白(高輝度)側の一部の分布と、低輝度側の一部の分布とが犠牲になって、ターゲットCRで表示可能な映像輝度範囲Bに含まれる映像輝度範囲Cに対応した発光輝度レベルが選択される。アニメでは、白ピークがある程度犠牲になるが、ニュース映像よりはバックライトの発光輝度レベルが低下する傾向となり、低消費電力化に貢献することができる。
上記のように、本発明に係る実施形態では、映像のジャンルに応じて、アドバンスト輝度変調のパラメータであるターゲットコントラスト及び白重視度を設定することにより、映像の内容に応じたきめの細かい輝度制御が可能となり、映像内容に応じた最適な映像表現と低消費電力化とを実現することができる。
なお設定するジャンルとしては、上記の例に限定されることなく、ジャンル情報で識別できるジャンルであれば適宜設定することができる。例えば“スポーツ”のジャンルを設定し、スポーツコンテンツのダイナミックな臨場感を向上させる観点から白ピークを重視し、白重視度を4:1とし、ターゲットコントラストを2000とする、などの設定を行うことができる。
あるいは、例えば、演劇、歌舞伎等のジャンルの映像の場合、舞台の周囲は暗く、映像の視聴時に観劇の雰囲気を保つためには、引き締まった黒を表示させる必要がある。また、演技者にスポットライトが当たっているような場合には、ある程度の白重視も必要となる。また、映画の場合よりも執念の黒と演技者のコントラストが高い場面が多いことから、白の重視度を高くしないと、注目すべき演技者付近の映像が白飛びしてしまうことになる。従ってこのような演劇、歌舞伎等のジャンルの映像の場合には、例えば白重視度を2:1とし、ターゲットコントラストを3000とする、などの設定を行うことができる。
次に、明るさセンサにより検出された映像表示装置周囲の明るさに応じたパラメータ設定について説明する。上記のように、映像のジャンルに応じて、ターゲットCRと白重視度とのパラメータを設定するとともに、これらパラメータをさらに映像表示装置周囲の明るさに応じて変化させるようにしてもよい。
図20は、映像表示装置の周囲の明るさに応じて設定されるジャンルごとのパラメータの例を示す図である。この例では、周囲の明るさとして、明るい部屋(300lx)、暗い部屋(50lx)、さらに暗い部屋(0lx)の3段階が設定されている。映像表示装置の周囲の明るさは、上述したように明るさセンサを使用して、検出した周囲光に応じた電圧信号を図示しないメインCPUに入力させる。図示しないメインCPUでは、入力した電圧信号に応じて映像表示装置の周囲の明るさを判断する。この例では、明るさセンサからの電圧信号に応じて、周囲の明るさが上記3段階のいずれに相当するかを判別し、その判別した明るさと、ジャンル情報検出部18で検出した入力映像信号のジャンル情報とに基づくパラメータを用いてディストーションパラメータを選択し、バックライトの輝度レベルの選択制御を行う。
映像表示装置の周囲が暗くなる程画面の黒浮きが目立つため、周囲が暗くなるに従って白重視度において黒側を重視し、またターゲットCRを大きくして、バックライトの発光輝度レベルを低下させる傾向とする。この例では、図13に示したジャンル毎のパラメータを、明るい部屋におけるパラメータとして設定し、これに対して周囲が暗くなるに従ってターゲットCRと白重視度とを変化させている。
このように、ジャンル毎に設定したパラメータを、さらに映像表示装置の周囲の明るさに応じて変化させることにより、映像の表示環境に応じたきめ細かい映像表現がさらに可能となり、映像表現と低消費電力化とを最適な状態で設定することができる。
2…ヒストグラム検出部、3…APL検出部、4…ヒストグラムストレッチング部、5…ディストーションモジュール、6…シーンチェンジ検出部、7…テンポラリフィルタ、8…BL輝度レベル設定部、9…テンポラリフィルタ、10…可変ディレイ、11…調光信号生成部、12…BL出力部、13…コンフィグレーションデザイン部、14…画質補正部、15…RGBγ/WB調整部、17…映像出力部、18…ジャンル情報検出部、20…アドバンスト輝度変調部、61…ヒストグラムバッファ、62…ヒストグラム変化検出部。