(実施形態1)
まず、実施形態1に係る配電システム(電力供給システム)の構成について図1〜3を用いて説明する。以下に説明する実施形態は、本発明を適用する建物として戸建て住宅の家屋を想定して説明するが、本発明の技術思想を集合住宅に適用することを妨げるものではない。家屋Hには、図1に示すように、直流電力を出力する直流電力供給部(電力供給部)101と、直流電力により駆動される負荷としての直流機器(電気機器)102とが設けられ、直流電力供給部101の出力端部に接続した直流供給線路Wdcを通して直流機器102に直流電力が供給される。直流電力供給部101と直流機器102との間には、直流供給線路Wdcに流れる電流を監視し、異常を検知したときに直流供給線路Wdc上で直流電力供給部101から直流機器102への給電を制限ないし遮断する直流ブレーカ114が設けられる。
直流供給線路Wdcは、直流電力の給電路であるとともに通信路としても兼用されており、高周波の搬送波を用いてデータを伝送する通信信号を直流電圧に重畳することにより直流供給線路Wdcに接続された機器間での通信を可能にしている。この技術は、交流電力を供給する電力線において交流電圧に通信信号を重畳させる電力線搬送技術と類似した技術である。
上記のように直流電力の給電路と通信路が兼用されていると、機器間の通信を行うために給電路とは別体の通信路を家屋Hに引き回して設ける必要がないため、機器間の通信を容易に実現することができる。
直流供給線路Wdcは、直流電力供給部101を介して宅内サーバ116に接続される。宅内サーバ116は、宅内の通信網(以下「宅内網」という。)を構築する主装置であり、宅内網において直流機器102が構築するサブシステムなどと通信を行う。
図示例では、サブシステムとして、パーソナルコンピュータ、無線アクセスポイント、ルータ、IP電話機のような情報系の直流機器102からなる情報機器システムK101、照明器具のような照明系の直流機器102からなる照明システムK102,K105、来客対応や侵入者の監視などを行う直流機器102からなるインターホンシステムK103、火災感知器のような警報系の直流機器102からなる住警器システムK104などがある。各サブシステムは、自立分散システムを構成しており、サブシステム単独でも動作が可能になっている。
上述した直流ブレーカ114は、サブシステムに関連付けて設けられており、図示例では、情報機器システムK101、照明システムK102及びインターホンシステムK103、住警器システムK104、照明システムK105に関連付けて4個の直流ブレーカ114を設けている。1台の直流ブレーカ114に複数個のサブシステムを関連付ける場合には、サブシステムごとに直流供給線路Wdcの系統を分割する接続ボックス121が設けられる。図示例においては、照明システムK102とインターホンシステムK103との間に接続ボックス121が設けられている。
情報機器システムK101としては、壁コンセント又は床コンセントの形態で家屋Hに先行配置(家屋Hの建築時に施工)される直流コンセント131に接続される直流機器102からなる情報機器システムK101が設けられる。
照明システムK102,K105としては、家屋Hに先行配置される照明器具(直流機器102)からなる照明システムK102と、天井に先行配置される引掛シーリング132に接続する照明器具(直流機器102)からなる照明システムK105とが設けられる。引掛シーリング132には、家屋Hの内装施工時に施工業者が照明器具を取り付けるか、又は家人自身が照明器具を取り付ける。
照明システムK102を構成する直流機器102である照明器具に対する制御の指示は、赤外線リモコン装置を用いて与えるほか、直流供給線路Wdcに接続されたスイッチ141から通信信号を用いて与えることができる。すなわち、スイッチ141は直流機器102とともに通信の機能を有している。また、スイッチ141の操作によらず、宅内網の別の直流機器102又は宅内サーバ116から通信信号により制御の指示がなされることもある。照明器具への指示には、点灯、消灯、調光、点滅点灯などがある。
上述した直流コンセント131、引掛シーリング132には、任意の直流機器102を接続することができ、接続された直流機器102に直流電力を出力するから、以下では直流コンセント131、引掛シーリング132を区別する必要がない場合には「直流アウトレット」と呼ぶ。
これらの直流アウトレットは、直流機器102に直接設けた接触子(プラグ)(図示せず)又は接続線を介して設けた接触子(プラグ)(図示せず)が差し込まれる差込式のプラグ挿入孔(接続口)が器体に開口し、プラグ挿入孔に差し込まれた接触子に直接接触する接触子受けが器体に保持された構造を有している。すなわち、直流アウトレットは接触式で給電を行う。直流アウトレットに接続された直流機器102が通信機能を有する場合には、直流供給線路Wdcを通して通信信号を伝送することが可能になる。直流機器102だけではなく直流アウトレットにも通信機能が設けられている。
宅内サーバ116は、宅内網に接続されるだけではなく、インターネットを構築する広域網NTに接続される接続口を有している。宅内サーバ116が広域網NTに接続されている場合には、広域網NTに接続されたコンピュータサーバであるセンタサーバ200によるサービスを享受することができる。
センタサーバ200が提供するサービスには、広域網NTを通して宅内網に接続された機器(主として直流機器102であるが通信機能を有した他の機器も含む)の監視や制御を可能にするサービスがある。このサービスにより、パーソナルコンピュータ、インターネットTV、移動体電話機などのブラウザ機能を備える通信端末(図示せず)を用いて宅内網に接続された機器の監視や制御が可能になる。
宅内サーバ116は、広域網NTに接続されたセンタサーバ200との間の通信と、宅内網に接続された機器との間の通信との両方の機能を備え、宅内網の機器に関する識別情報(ここでは、IPアドレスを用いるものとする)の取得の機能を備える。
宅内サーバ116は、センタサーバ200との通信機能を用いることにより、広域網NTに接続された通信端末からセンタサーバ200を通して宅内の機器の監視や制御を可能にする。センタサーバ200は、宅内の機器と広域網NT上の通信端末とを仲介する。
通信端末から宅内の機器の監視や制御を行う場合は、監視や制御の要求をセンタサーバ200に記憶させ、宅内の機器は定期的に片方向のポーリング通信を行うことにより、通信端末からの監視や制御の要求を受信する。この動作により、通信端末から宅内の機器の監視や制御が可能になる。
また、宅内の機器において火災検知など通信端末に通知すべきイベントが生じたときには、宅内の機器からセンタサーバ200に通知し、センタサーバ200から通信端末に対して電子メールによる通知を行う。
宅内サーバ116における宅内網との通信機能のうち重要な機能は、宅内網を構成する機器の検出と管理である。宅内サーバ116では、UPnP(Universal Plug and Play)を応用して宅内網に接続された機器を自動的に検出する。宅内サーバ116はブラウザ機能を有する表示器117を備え、検出した機器の一覧を表示器117に表示する。この表示器117はタッチパネル式又は操作部が付設された構成を有し、表示器117の画面に表示された選択肢から所望の内容を選択する操作が可能になっている。したがって、宅内サーバ116の利用者(施工業者又は家人)は、表示器117の画面上で機器の監視ないし制御が可能になる。表示器117は宅内サーバ116とは分離して設けてもよい。
宅内サーバ116では、機器の接続に関する情報を管理しており、宅内網に接続された機器の種類や機能とアドレスとを把握する。したがって、宅内網の機器を連動動作させることができる。機器の接続に関する情報は上述のように自動的に検出されるが、機器を連動動作させるには、機器自身が保有する属性により自動的に関係付けを行うほか、宅内サーバ116にパーソナルコンピュータのような情報端末を接続し、情報端末のブラウザ機能を利用して機器の関係付けを行うこともできる。
機器の連動動作の関係は各機器がそれぞれ保持する。したがって、機器は宅内サーバ116を通すことなく連動動作することができる。各機器について、連動動作の関係付けを行うことにより、例えば、機器であるスイッチの操作により、機器である照明器具の点灯又は消灯の動作を行うことが可能になる。また、連動動作の関係付けはサブシステム内で行うことが多いが、サブシステムを超える関係付けも可能である。
ところで、直流電力供給部101は、基本的には、商用電源のように宅外から供給される交流電源ACの電力変換により直流電力を生成する。図示する構成では、交流電源ACは、分電盤110に内器として取り付けられた主幹ブレーカ111を通して、スイッチング電源を含むAC/DCコンバータ112に入力される。AC/DCコンバータ112から出力される直流電力は、協調制御部113を通して各直流ブレーカ114に接続される。
直流電力供給部101には、交流電源ACから電力が供給されない期間(例えば、商用電源ACの停電期間)に備えて二次電池162が設けられている。また、直流電力を生成する太陽電池161や燃料電池163を併用することも可能になっている。交流電源ACから直流電力を生成するAC/DCコンバータ112を備える主電源に対して、太陽電池161や二次電池162や燃料電池163は分散電源になる。なお、図示例において、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163は出力電圧を制御する回路部を含み、二次電池162は放電だけではなく充電を制御する回路部も含んでいる。
分散電源のうち太陽電池161や燃料電池163は必ずしも設けなくてもよいが、二次電池162は設けるのが望ましい。二次電池162は主電源や他の分散電源により適時充電され、二次電池162の放電は、交流電源ACから電力が供給されない期間だけではなく必要に応じて適時に行われる。二次電池162の充放電や主電源と分散電源との協調は、協調制御部113により行われる。すなわち、協調制御部113は、直流電力供給部101を構成する主電源及び分散電源から直流機器102への電力の配分を制御する直流電力制御部として機能する。なお、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163の出力を交流電力に変換し、AC/DCコンバータ112の入力電力として用いる構成を採用してもよい。
直流機器102の駆動電圧は機器に応じた複数種類の電圧から選択されるから、協調制御部113にDC/DCコンバータを設け、主電源及び分散電源から得られる直流電圧を必要な電圧に変換するのが望ましい。通常は、1系統のサブシステム(又は1台の直流ブレーカ114に接続された直流機器102)に対して1種類の電圧が供給されるが、1系統のサブシステムに対して3線以上を用いて複数種類の電圧を供給するように構成してもよい。また、直流供給線路Wdcを2線式とし、線間に印加する電圧を時間経過に伴って変化させる構成を採用することも可能である。DC/DCコンバータは、直流ブレーカと同様に複数に分散して設けてもよい。
上述の構成例では、AC/DCコンバータ112を1個だけ図示しているが、複数個のAC/DCコンバータ112を並設することが可能であり、複数個のAC/DCコンバータ112を設けるときには、負荷の大きさに応じて運転するAC/DCコンバータ112の台数を増減させるのが望ましい。
上述したAC/DCコンバータ112、協調制御部113、直流ブレーカ114、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163には通信機能が設けられており、主電源及び分散電源や直流機器102を含む負荷の状態に対処する連携動作を行うことを可能にしている。この通信に用いる通信信号は、直流機器102に用いる通信信号と同様に直流電圧に重畳する形式で伝送する。
上述の例では主幹ブレーカ111から出力された交流電力をAC/DCコンバータ112により直流電力に変換するために、AC/DCコンバータ112を分電盤110内に配置しているが、主幹ブレーカ111の出力側において分電盤110内に設けた分岐ブレーカ(図示せず)で交流供給線路を複数系統に分岐し、各系統の交流供給線路にAC/DCコンバータを設けて系統ごとに直流電力に変換する構成を採用してもよい。
この場合、家屋Hの各階や各部屋を単位として直流電力供給部101を設けることができるから、直流電力供給部101を系統別に管理することができ、しかも、直流電力を利用する直流機器102との間の直流供給線路Wdcの距離が小さくなるから、直流供給線路Wdcでの電圧降下による電力損失を低減させることができる。また、主幹ブレーカ111及び分岐ブレーカを分電盤110に収納し、AC/DCコンバータ112と協調制御部113と直流ブレーカ114と宅内サーバ116とを分電盤110とは別の盤に収納してもよい。
続いて、直流アウトレット(直流コンセント131、引掛シーリング132)の構成について図2を用いて説明する。直流アウトレットは、直流供給線路Wdcに挿入されて設けられるものであり、直流機器3のプラグ(図示せず)と着脱自在に接続する接続手段である接続部20と、接続部20と直流供給線路Wdcの間に挿入されて設けられる電界効果トランジスタ(FET)5と、ユーザが電界効果トランジスタ5のオンオフ状態を切り替えるために操作する操作部6と、直流機器3に印加される印加電圧を制御する電圧制御手段7とを備えている。
電界効果トランジスタ5は、ソース電極及びドレイン電極が接続部20及び直流供給線路Wdcに接続され、ゲート電圧の電圧値に基づいて、ソースとドレインの間に流れる電流つまり直流機器3に供給される供給電流の電流値を変化させる電流制御手段である。電界効果トランジスタ5と接続部20の間には3端子レギュレータ50が設けられている。
電圧制御手段7は、操作部6での設定操作に基づいてオンオフ信号(図3参照)を出力する制御部70と、制御部70からのオンオフ信号を制御信号(図3参照)に変換するCR回路71とを備えている。CR回路71は、抵抗器710とコンデンサ711とで構成されている。CR回路71と電界効果トランジスタ5の間にはオペアンプ72が設けられている。なお、抵抗器710の電器抵抗値及びコンデンサ711の容量としては、各直流機器3ごとに適した値が設定される。
制御部70は、直流機器3がオン状態である場合、オンレベルのオンオフ信号をCR回路71に出力する。CR回路71では、オンレベルのオンオフ信号が入力されると、一定の電圧値L2の制御信号(図3参照)を電界効果トランジスタ5のゲート電極に出力する。上記の制御部70及びCR回路71の機能により、電圧制御手段7は、電界効果トランジスタ5のソースとドレインの間に流れる電流つまり直流機器3への供給電流を電流値I2とする(図3参照)。
一方、直流機器3がオフ状態である場合、直流機器3に電流を全く供給しないのではなく、直流機器3における通信や電圧制御手段7など最低限の機能を駆動するための電流を供給する。この場合、制御部70は、オフレベルのオンオフ信号をCR回路71に出力する。CR回路71では、オフレベルのオンオフ信号が入力されると、一定の電圧値L1の制御信号を電界効果トランジスタ5のゲート電極に出力する。上記の制御部70及びCR回路71の機能により、電圧制御手段7は、電界効果トランジスタ5のソースとドレインの間に流れる電流つまり直流機器3への供給電流を電流値I1とする。
ところで、直流機器3をオフ状態からオン状態に切り替えて直流機器3に印加される印加電圧を高くする場合、制御部70は、オフレベルからオンレベルに切り替えたオンオフ信号をCR回路71に出力する(図3参照)。CR回路71では、オフレベルからオンレベルに切り替わったオンオフ信号が入力されると、図3に示すように、電圧値がL1からL2(L2>L1)に向けて次第に大きくなっていく制御信号を電界効果トランジスタ5のゲート電極に出力する。上記の制御部70及びCR回路71の機能により、電圧制御手段7は、ソースとドレインの間に流れる電流つまり直流機器3への供給電流を次第に大きくさせるように電界効果トランジスタ5を制御する。
一方、直流機器3をオン状態からオフ状態に切り替えて印加電圧を低くする場合、制御部70は、オンレベルからオフレベルに切り替えたオンオフ信号をCR回路71に出力する。CR回路71では、オンレベルからオフレベルに切り替わったオンオフ信号が入力されると、図3に示すように、電圧値がL2からL1に向けて次第に小さくなっていく制御信号を電界効果トランジスタ5のゲート電極に出力する。上記の制御部70及びCR回路71の機能により、電圧制御手段7は、直流機器3への供給電流を次第に小さくさせるように電界効果トランジスタ5を制御する。
続いて、直流機器102の構成について図2を用いて説明する。本実施形態の直流機器102には、電界効果トランジスタ(電流制御手段)5及び電圧制御手段7を備えていないもの(図2の直流機器3)と、電界効果トランジスタ5及び電圧制御手段7を備えているもの(図2の直流機器4)とがある。
直流機器3は、直流アウトレット(直流コンセント131、引掛シーリング132)を介して他の直流機器3と並列に接続され、直流アウトレットを介して直流電力供給部101から直流電力が供給されるとともに、印加電圧に通信信号を重畳させることによって他の機器との通信を行うものである。
直流機器4は、直流供給線路Wdc上に他の直流機器4と並列に接続され、直流電力供給部101から直流電力が供給されるとともに、印加電圧に通信信号を重畳させることによって他の機器との通信を行うものであり、直流電力が供給されると動作する主機能部40を備えているとともに、電界効果トランジスタ5と、操作部6と、電圧制御手段7とを備えている。直流機器4に備えられている電界効果トランジスタ5、操作部6及び電圧制御手段7の基本的な構成や機能は、直流アウトレットに備えられているものと同様である。
次に、本実施形態の配電システムにおいて、操作部6で直流機器3,4のオンオフ状態を切り替えるための設定操作が行われたときの動作について図3を用いて説明する。最初、直流機器3,4はオフ状態である。操作部6でユーザにより直流機器3,4をオフ状態からオン状態に切り替えるための設定操作が行われると(図3の時間t1)、電圧制御手段7において、制御部70は、オンオフ信号をオフレベルからオンレベルに切り替えてCR回路71に出力する。CR回路71は、オフレベルからオンレベルに切り替わったオンオフ信号が入力されると、時間t1から時間t2にかけて電圧値がL1からL2に次第に大きくなる制御信号を電界効果トランジスタ5に出力する。電界効果トランジスタ5は、制御信号の電圧値に応じて供給電流の電流値をI1からI2に向けて次第に大きくしていく。これにより、印加電圧の電圧値はV1からV2に向けて次第に高くなっていく。上記のように、供給電流に対する電流制限を徐々に解除していくことで、リンギングの発生を抑えることができる。
直流機器3,4がオン状態である間(時間t3〜t4)では、電圧値L2の制御信号が電圧制御手段7から電界効果トランジスタ5に出力され、電圧値V2の印加電圧が直流機器3,4に印加される。
その後、操作部6でユーザにより直流機器3,4をオン状態からオフ状態に切り替えるための設定操作が行われると(図3の時間t3)、電圧制御手段7において、制御部70は、オンオフ信号をオンレベルからオフレベルに切り替えてCR回路71に出力する。CR回路71は、オンレベルからオフレベルに切り替わったオンオフ信号が入力されると、時間t3から時間t4にかけて電圧値がL2からL1に次第に小さくなる制御信号を電界効果トランジスタ5に出力する。電界効果トランジスタ5は、制御信号の電圧値に応じて供給電流の電流値をI2からI1に向けて次第に小さくしていく。これにより、印加電圧の電圧値はV2からV1に向けて次第に低くなっていく。上記のように、供給電流に対する電流制限を徐々に加えていくことで、リンギングの発生を抑えることができる。
直流機器3,4がオフ状態である間(時間t4〜)では、電圧値L1の制御信号が電圧制御手段7から電界効果トランジスタ5に出力され、電圧値V1の印加電圧が直流機器3,4に印加される。
以上、本実施形態によれば、直流機器102(3,4)に印加される印加電圧を高くする場合に直流機器102(3,4)の供給電流を次第に大きくさせ、印加電圧を低くする場合に供給電流を次第に小さくさせることによって、直流供給線路Wdc上の電圧及び印加電圧にリンギングが発生するのを防止したり、リンギングの発生期間を短縮したりすることができるので、印加電圧の電圧値の変化が開始した直後(図3のt1,t3)からシステム内の機器間の通信を正常に行うことができる。つまり、図3の時間t1〜t2及び時間t3〜t4においても、通信を行うことができる。
特に、直流機器102(3,4)が照明負荷の場合、リンギングが発生するとちらつきが発生して視覚的にユーザに不快感を与えるが、本実施形態のようにリンギングの発生を防止したり、リンギングの発生期間を短縮したりすることによって、上記のようなユーザの不快感を低減することができる。この点から、直流機器102(3,4)として照明負荷を用いることが好ましい。
また、直流アウトレット(直流コンセント131、引掛シーリング132)が電界効果トランジスタ5及び電圧制御手段7を備えることによって、電界効果トランジスタ5及び電圧制御手段7の設置スペースを直流アウトレットとは別に確保する必要がないので、狭い場所であっても使用することができる。また、電界効果トランジスタ5及び電圧制御手段7を備えていない直流機器3(例えば従来の直流機器など)にも対応することができる。
さらに、直流機器4が電界効果トランジスタ5及び電圧制御手段7を備えることによって、電界効果トランジスタ5及び電圧制御手段7の設置スペースを直流機器4とは別に確保する必要がないので、狭い場所であっても使用することができる。
(実施形態2)
実施形態2では、実施形態1の電圧制御手段7(図2参照)に代えて図4の電圧制御手段7aを直流アウトレット(直流コンセント131、引掛シーリング132)及び直流機器4に備えている構成について説明する。図4のAは図2のAでオペアンプ72と接続し、図4のBは図2のBで操作部6と接続する。なお、実施形態1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の電圧制御手段7aは、記憶部73と、時間計測を行うタイマ74と、操作部6での設定操作に基づいてパルス信号(図5参照)を出力する制御部70aと、制御部70aからのパルス信号を制御信号(図5参照)に変換するD/Aコンバータ75とを備えている。
記憶部73には、直流機器3,4をオフ状態からオン状態に切り替えるときに用いられる第1のデータテーブルと、直流機器3,4をオン状態からオフ状態に切り替えるときに用いられる第2のデータテーブルとが記憶されている。
第1のデータテーブルには、直流機器3,4をオフ状態からオン状態に切り替えるための設定操作が行われたときからの経過時間に対して、パルス信号の電圧変化率の絶対値が閾値以下で一定値となるように、各経過時間とパルス信号の電圧値とが対応付けられている。第2のデータテーブルには、直流機器3,4をオン状態からオフ状態に切り替えるための設定操作が行われたときからの経過時間に対して、パルス信号の電圧変化率の絶対値が閾値以下で一定値となるように、各経過時間とパルス信号の電圧値とが対応付けられている。なお、上記閾値は、リンギングが発生しないように直流機器3,4に印加される印加電圧の立上り及び立下りの傾きを緩やかにすることができるような値に予め設定されている。
タイマ74は、直流機器3,4をオフ状態からオン状態又はオン状態からオフ状態に切り替えるための設定操作が行われたときに、制御部70aの制御によって、設定操作時からの経過時間の計測を開始する。経過時間の計測を開始したタイマ74は、所定時間が経過すると経過時間の計測を終了する。
制御部70aは、直流機器3,4がオン状態である場合、オンレベルのパルス信号(図5参照)をD/Aコンバータ75に出力する。D/Aコンバータ75では、オンレベルのパルス信号が入力されると、一定の電圧値L2の制御信号(図5参照)を電界効果トランジスタ5のゲート電極に出力する。上記の制御部70a及びD/Aコンバータ75の機能により、電圧制御手段7aは、電界効果トランジスタ5のソースとドレインの間に流れる電流つまり直流機器3,4への供給電流を電流値I2とする(図5参照)。
一方、直流機器3,4がオフ状態である場合、制御部70aは、オフレベルのパルス信号をD/Aコンバータ75に出力する。D/Aコンバータ75では、オフレベルのパルス信号が入力されると、一定の電圧値L1の制御信号を電界効果トランジスタ5のゲート電極に出力する。上記の制御部70a及びD/Aコンバータ75の機能により、電圧制御手段7aは、電界効果トランジスタ5のソースとドレインの間に流れる電流つまり直流機器3,4への供給電流を電流値I1とする。
制御部70aは、直流機器3,4に印加される印加電圧を高くする場合、タイマ74による経過時間の計測を開始させ、予め設定された間隔で、タイマ74で計測された経過時間に対応付けられたパルス信号の電圧値を第1のデータテーブルから抽出し、抽出した電圧値のパルス信号をD/Aコンバータ75に出力する。D/Aコンバータ75では、図5に示すように、これらのパルス信号に応じて電圧値がL1からL2(L2>L1)に一定の割合で次第に大きくなっていく制御信号を電界効果トランジスタ5のゲート電極に出力する。上記の制御部70a及びD/Aコンバータ75の機能により、電圧制御手段7aは、電界効果トランジスタ5のソースとドレインの間に流れる電流つまり直流機器3,4への供給電流を一定の割合で次第に大きくさせるように電界効果トランジスタ5を制御する。
一方、印加電圧を低くする場合、制御部70aは、タイマ74による経過時間の計測を開始させ、予め設定された間隔で、タイマ74で計測された経過時間に対応付けられたパルス信号の電圧値を第2のデータテーブルから抽出し、抽出した電圧値のパルス信号をD/Aコンバータ75に出力する。D/Aコンバータ75では、図5に示すように、これらのパルス信号に応じて電圧値がL2からL1に一定の割合で次第に小さくなっていく制御信号を電界効果トランジスタ5のゲート電極に出力する。上記の制御部70a及びD/Aコンバータ75の機能により、電圧制御手段7aは、直流機器3,4への供給電流を一定の割合で次第に小さくさせるように電界効果トランジスタ5を制御する。
なお、直流機器3,4がオン状態又はオフ状態である場合の電圧制御手段7aの機能は、実施形態1の電圧制御手段7(図2参照)と同様である。
次に、本実施形態の配電システムにおいて、操作部6で直流機器3,4のオンオフ状態を切り替えるための設定操作が行われたときの動作について図5を用いて説明する。最初、直流機器3,4はオフ状態である。操作部6でユーザにより直流機器3,4をオフ状態からオン状態に切り替えるための設定操作が行われると(図5の時間t11)、電圧制御手段7aにおいて、制御部70aは、記憶部73に記憶されている第1のデータテーブルに基づいて、パルス信号を時間t11から時間t12にかけて次第に大きくしていき、これらのパルス信号を順次、D/Aコンバータ75に出力する。D/Aコンバータ75では、制御部70aからのパルス信号に応じて電圧値がL1からL2まで一定の傾きで高くなっていく制御信号を電界効果トランジスタ5に出力する。電界効果トランジスタ5は、制御信号の電圧値に応じて供給電流の電流値をI1からI2に向けて次第に大きくしていく。これにより、印加電圧の電圧値はV1からV2に向けて次第に高くなっていく。上記のように、供給電流に対する電流制限を徐々に解除していくことで、リンギングの発生を抑えることができる。
その後、操作部6でユーザにより直流機器3,4をオン状態からオフ状態に切り替えるための設定操作が行われると(図5の時間t13)、電圧制御手段7aにおいて、制御部70aは、記憶部73に記憶されている第2のデータテーブルに基づいて、パルス信号を時間t13から時間t14にかけて次第に小さくしていき、これらのパルス信号を順次、D/Aコンバータ75に出力する。D/Aコンバータ75では、制御部70aからのパルス信号に応じて電圧値がL2からL1まで一定の傾きで低くなっていく制御信号を電界効果トランジスタ5に出力する。電界効果トランジスタ5は、制御信号の電圧値に応じて供給電流の電流値をI2からI1に向けて次第に小さくしていく。これにより、印加電圧の電圧値はV2からV1に向けて次第に低くなっていく。上記のように、供給電流に対する電流制限を徐々に加えていくことで、リンギングの発生を抑えることができる。
以上、本実施形態においても、実施形態1と同様の効果を奏する。つまり、図5の時間t11〜t12及び時間t13〜t14においても、通信を行うことができる。
(実施形態3)
実施形態3では、実施形態2の電圧制御手段7a(図4参照)に代えて図6の電圧制御手段7bを直流アウトレット(直流コンセント131、引掛シーリング132)及び直流機器4に備えている構成について説明する。図6のAは図2のAでオペアンプ72と接続し、図6のBは図2のBで操作部6と接続する。なお、実施形態1,2と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の電圧制御手段7bは、予め設定された間隔でカウントするカウンタ76と、操作部6での設定操作に基づいてパルス信号を出力する制御部70bと、制御部70bからのパルス信号を制御信号に変換するD/Aコンバータ75とを備えている。
カウンタ76は、直流機器3,4をオフ状態からオン状態又はオン状態からオフ状態に切り替えるための設定操作が行われたときに、制御部70bの制御によって、設定操作時から一定間隔でカウントする。カウントを開始したカウンタ76は、所定時間が経過するとカウントを終了する。
制御部70bは、直流機器3,4に印加される印加電圧を高くする場合、カウンタ76によるカウントを開始させ、カウンタ76のカウント加算値に比例する電圧値のパルス信号をD/Aコンバータ75に出力する。D/Aコンバータ75では、これらのパルス信号に応じて電圧値がL1からL2(L2>L1)に一定の割合で次第に大きくなっていく制御信号を電界効果トランジスタ5のゲート電極に出力する。上記の制御部70b及びD/Aコンバータ75の機能により、電圧制御手段7bは、電界効果トランジスタ5のソースとドレインの間に流れる電流つまり直流機器3,4への供給電流を一定の割合で次第に大きくさせるように電界効果トランジスタ5を制御する。
一方、印加電圧を低くする場合、制御部70bは、カウンタ76によるカウントを開始させ、基準値からカウンタ76のカウント加算値を差し引いた値に比例する電圧値のパルス信号をD/Aコンバータ75に出力する。D/Aコンバータ75では、これらのパルス信号に応じて電圧値がL2からL1に一定の割合で次第に小さくなっていく制御信号を電界効果トランジスタ5のゲート電極に出力する。上記の制御部70b及びD/Aコンバータ75の機能により、電圧制御手段7bは、直流機器3,4への供給電流を一定の割合で次第に小さくさせるように電界効果トランジスタ5を制御する。
次に、本実施形態の配電システムにおいて、操作部6で直流機器3,4のオンオフ状態を切り替えるための設定操作が行われたときの動作について図5を参照して説明する。最初、直流機器3,4はオフ状態である。操作部6でユーザにより直流機器3,4をオフ状態からオン状態に切り替えるための設定操作が行われると(図5の時間t11)、電圧制御手段7bにおいて、制御部70bは、カウンタ76のカウント加算値に比例する電圧値のパルス信号を順次、D/Aコンバータ75に出力する。D/Aコンバータ75では、制御部70bからのパルス信号に応じて電圧値がL1からL2まで一定の傾きで高くなっていく制御信号を電界効果トランジスタ5に出力する。電界効果トランジスタ5は、制御信号の電圧値に応じて供給電流の電流値をI1からI2に向けて次第に大きくしていく。これにより、印加電圧の電圧値はV1からV2に向けて次第に高くなっていく。上記のように、供給電流に対する電流制限を徐々に解除していくことで、リンギングの発生を抑えることができる。
その後、操作部6でユーザにより直流機器3,4をオン状態からオフ状態に切り替えるための設定操作が行われると(図5の時間t13)、電圧制御手段7bにおいて、制御部70bは、基準値からカウンタ76のカウント加算値を差し引いた値に比例する電圧値のパルス信号を順次、D/Aコンバータ75に出力する。D/Aコンバータ75では、制御部70bからのパルス信号に応じて電圧値がL2からL1まで一定の傾きで低くなっていく制御信号を電界効果トランジスタ5に出力する。電界効果トランジスタ5は、制御信号の電圧値に応じて供給電流の電流値をI2からI1に向けて次第に小さくしていく。これにより、印加電圧の電圧値はV2からV1に向けて次第に低くなっていく。上記のように、供給電流に対する電流制限を徐々に加えていくことで、リンギングの発生を抑えることができる。
以上、本実施形態においても、実施形態1と同様の効果を奏する。つまり、図5の時間t11〜t12及び時間t13〜t14においても、通信を行うことができる。
なお、実施形態1〜3では、電界効果コンデンサ(電流制御手段)5及び電圧制御手段7を直流アウトレットや直流機器4に内蔵された構成について説明したが、電界効果コンデンサ5及び電圧制御手段7が直流アウトレットや直流機器4とは別に設けられる構成であってもよい。この場合、電界効果コンデンサ5は直流供給線路Wdcに挿入されて設けられる。