請求項1に記載の発明は、断熱区画された貯蔵室と、前記貯蔵室の前面開口部を閉塞する扉と、前記貯蔵室内に設けられた収納容器と、前記収納容器内にミストを噴霧するミスト噴霧手段とを有し、前記貯蔵室内に隣接された低温環境からの輻射冷却により貯蔵室を冷却する輻射面にミスト噴霧手段を備えたものである。
これによって、ミスト噴霧で高湿化を図る貯蔵室の低温化を輻射冷却を用いて行うことにより気流による霧化部への影響が少なくなるので安定した噴霧が可能にすることができ、貯蔵室の保存機能をより向上させることができるので、より品質の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項2に記載の発明は、輻射冷却面に隣接する低温環境は、他室を冷却するために構成された冷却風路であるものである。
これによって、特別の輻射冷却手段を用いなくてもその冷却風路から熱伝導を含めた間接冷却で貯蔵室を冷却できる。
請求項3に記載の発明は、輻射冷却面に隣接する低温環境は、前記貯蔵室と比較して低温温度帯の貯蔵室であるものである。
これによって、特別の輻射冷却手段を用いなくてもその貯蔵室からの熱伝導を含めた間接冷却で貯蔵室を冷却できる。
請求項4に記載の発明は、ミスト噴霧手段は、貯蔵室内の水分を結露させて前記貯蔵室にミストとして噴霧するものである。
これによって、タンクなどの貯水、給水手段を用いず、メンテナンスフリーで噴霧手段に水を供給することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の縦断面図である。図2は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の野菜室近傍の断面図である。図3は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の野菜室近傍の別形態の断面図である。
図において、冷蔵庫100の断熱箱体101は主に鋼板を用いた外箱102とABSなどの樹脂で成型された内箱103で構成され、その内部には例えば硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材が充填されている。これにより、貯蔵室を断熱するのと同時に、複数の貯蔵室に区分されている。冷蔵庫100の最上部には第一の貯蔵室としての冷蔵室104、その冷蔵室104の下部に第四の貯蔵室としての切換室105と第五の貯蔵室としての製氷室106が横並びに設けられ、その切換室105と製氷室106の下部に第二の貯蔵室としての野菜室107、そして最下部に第三の貯蔵室としての冷凍室108が構成されている。
冷蔵室104は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1℃〜5℃とし、野菜室107は冷蔵室104と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃としている。冷凍室108は冷凍温度帯に設定されており、冷凍保存のために通常−22℃〜−15℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば−30℃や−25℃の低温で設定されることもある。切換室105は、1℃〜5℃で設定される冷蔵、2℃〜7℃で設定される野菜、通常−22℃〜−15℃で設定される冷凍の温度帯以外に、冷蔵温度帯から冷凍温度帯の間で予め設定された温度帯に切り換えることができる。切換室105は製氷室106に並設された独立扉を備えた貯蔵室であり、引出し式の扉を備えることが多い。なお、本実施の形態では切換室105を冷蔵,冷凍の温度帯までを含めた貯蔵室としているが、冷蔵は冷蔵室104,野菜室107、冷凍は冷凍室108に委ねて、冷蔵と冷凍の中間の上記温度帯のみの切り換えに特化した貯蔵室としても構わない。また、特定の温度帯に固定された貯蔵室でもかまわない。製氷室106は、冷蔵室104内の貯水タンク(図示せず)から送られた水で室内上部に設けられた自動製氷機(図示せず)で氷を作り、室内下部に配置した貯氷容器(図示せず)に貯蔵する。
断熱箱体101の天面部は冷蔵庫の背面方向に向かって階段状に凹みを設けた形状であり、この階段状の凹部に機械室を形成して圧縮機109、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの高圧側構成部品が収容されている。すなわち、圧縮機109を配設する機械室は、冷蔵室104内の最上部の後方領域に食い込んで形成されることになる。手が届きにくくデッドスペースとなっていた断熱箱体101の最上部の貯蔵室後方領域に機械室を設けて圧縮機109を配置することにより、従来の冷蔵庫で、使用者が使いやすい断熱箱体101の最下部にあった機械室のスペースを貯蔵室容量として有効に転化することができ、収納性や使い勝手を大きく改善することができる。なお、本実施の形態における、以下に述べる発明の要部に関する事項は、従来一般的であった断熱箱体101の最下部の貯蔵室後方領域に機械室を設けて圧縮機109を配置するタイプの冷蔵庫に適用しても構わない。
野菜室107と冷凍室108の背面には冷気を生成する冷却室110が設けられ、その間には、断熱性を有する各室への冷気の搬送風路と、各室と断熱区画するための断熱材で構成された奥面仕切り壁111が備えられている。冷却室110内には、冷却器112が配設されており、冷却器112の上部空間には強制対流方式により冷却器112で生成した冷気を冷蔵室104、切換室105、製氷室106、野菜室107、冷凍室108に送風する冷却ファン113が配置され、冷却器112の下部空間には冷却時に冷却器112やその周辺に付着する霜や氷を除霜するためのガラス管製のラジアントヒータ114が設けられ、さらにその下部には除霜時に生じる除霜水を受けるためのドレンパン115、その最深部から庫外に貫通したドレンチューブ116が構成され、その下流側の庫外に蒸発皿117が構成されている。
野菜室107には、野菜室107の引出し扉118に取り付けられたフレームに載置された下段収納容器119と、下段収納容器119に載置された上段収納容器120が配置されている。
下段収納容器119は、仕切り体167より扉118側の飲料収納部166にペットボトルや缶、ビンなどを収納する飲料収納部166と飲料と食品収納の空間を仕切るための飲料仕切り板167が構成されている。
引出し扉118が閉ざされた状態で主に上段収納容器120を略密閉するための蓋体122が野菜室上部の第一の仕切り壁123及び内箱103に保持されている。引出し扉118が閉ざされた状態で蓋体122と上段収納容器120の上面の左右辺、奥辺が密接し、上面の前辺は略密接している。さらに、上段収納容器120の背面の左右下辺と下段収納容器119の境界部は、上段収納容器120が稼働する上で接触しない範囲で食品収納部の湿気が逃げないよう隙を詰めている。
また、扉が閉じる場合に、蓋体122の背面側の背面蓋係合部124bと、背面蓋係合部124bと係合する上段収納容器120と上段収納容器係合部120aとは互いに傾斜しており、扉が完全に閉まる際に初めて背面蓋係合部124bと上段収納容器係合部120aとが係合する形状としている。
なお、本実施の形態における、以下に述べる発明の要部に関する事項は、従来一般的であった扉に取り付けられたフレームと内箱に設けられたレールにより開閉するタイプの冷蔵庫に適用しても構わない。また、蓋体122、風路構成については、収納容器の形態によりそれらは最適化される。
奥面仕切り壁111は、主にABSなどの樹脂を用いた奥面仕切り壁表面151と発泡スチロールなどを用い、各室へ冷気を循環するための風路と、風路と冷却室を仕切るための冷却室仕切り壁161と、冷却室110と野菜室107の間を隔離、断熱性を確保する断熱材152で構成され、奥面仕切り壁表面151から野菜室107を輻射によって間接冷却している。このとき、野菜室107が一般的に野菜温度帯である2℃〜7℃に設定されており、一般的に冷却室110や風路等の冷凍温度帯―22℃〜−15℃とは10℃以上の大きな温度差がある。ここで、輻射面(厳密にいうと熱吸収面)である奥面仕切り壁表面151が構成された奥面仕切り壁111の一部に他の箇所より低温になるように凹部111aを設け、その箇所に霧化装置である静電霧化装置131が設置されている。
霧化装置である静電霧化装置131は主に霧化部139、電圧印加部133、外郭ケース137で構成され、外郭ケース137の一部には、噴霧口132と湿度供給口138が構成されている。霧化部139は、霧化先端部である霧化電極135が設置され、霧化電極135はアルミニウムやステンレスなどの良熱伝導部材からなる電極冷却部材である円柱状の金属ピン134の一端でほぼ中心に固定されて接続している。
霧化部139は、霧化電極135が設置され、霧化電極135はアルミニウムやステンレス、真鍮などの良熱伝導部材であり、霧化電極135は伝熱接続部材である金属ピン134の一端のほぼ中心に固定され、電気的にも電圧印加部133から配線されている一端を含め接続している。
伝熱接続部材である金属ピン134は、例えば、直径10mm程度、長さが15mm程度の円柱形状で構成されており、直径1mm程度、長さが5mm程度の霧化電極135に比べて50倍以上、好ましくは100倍以上の大きな熱容量を有するアルミや銅などの高熱伝導部材が好ましく、金属ピン134の一端からもう一端に冷熱を熱伝導で効率よく伝導させるため、その周囲は断熱部材で覆われていることが望ましい。
また、長期的に霧化電極135と金属ピン134の熱伝導の維持も必要であるので、接続部に湿度等の侵入を防止するためにエポキシ部材などを流しこみ、熱抵抗を抑え、さらに、霧化電極135と金属ピン134を固定する。また、熱抵抗を低下させるために霧化電極135を金属ピン134に圧入等により固定してもよい。
さらに、金属ピン134は、貯蔵室と冷却器112もしくは風路を断熱するための断熱材内で冷温を熱伝導させる必要があるので、その長さは5mm以上好ましくは10mm以上確保することが望ましい。ただし、その長さを30mm以上にした場合は、その効果は低下する。
また、金属ピン134は外郭ケース137に固定され、金属ピン134自体は外郭ケース137から突起して構成されている。また、霧化電極135に対向している位置で貯蔵室側にドーナツ円盤状の対向電極136が、霧化電極135の先端と一定距離を保つように取付けられ、その延長上に噴霧口132が構成されている。
さらに、霧化部139の近傍に電圧印加部133が構成され、高電圧を発生する電圧印加部133の負電位側が霧化電極135と、正電位側が対向電極136とそれぞれ電気的に接続されている。
対向電極136は、例えば、ステンレスで構成されていて、また、その長期信頼性を確保する必要があり、特に異物付着防止、汚れ防止するため、例えば白金メッキなどの表面処理をすることが望ましい。
電圧印加部133は、冷蔵庫本体の制御手段146と通信、制御され、冷蔵庫100もしくは静電霧化装置131からの入力信号で高圧のON/OFFを行う。
また、電圧印加部133は静電霧化装置131に設置され、貯蔵室内の低温高湿雰囲気なるため、その基板表面上には、防湿のためのモールド材やコーティング材を塗布している。
ただし、電圧印加部を貯蔵室外の高温部に設置した場合や電圧印加部に連続的に印加を行うことによりその基板部が貯蔵室より高温に維持できる場合に電圧印加部および基板部に結露することはないので、コーティングは不必要になる。
さらに、静電霧化装置131を固定している奥面仕切り壁表面151と断熱材152の間には、貯蔵室の温度調節をする、もしくは表面の結露を防止するための仕切り壁ヒータ154が設置されている。さらに静電霧化装置131に備えられた伝熱接続部材である金属ピン134の温度調整と、霧化先端部である霧化電極135を含めた周辺部の過剰結露を防止するための金属ピンヒータ158が霧化部139近傍に設置されている。
この伝熱接続部材である金属ピン134が外郭ケース137に固定され、金属ピン134自体は外郭から突起した凸部134aを有して構成されている。この金属ピン134は霧化電極135と逆側に凸部134aを有する形状で、凸部134aが奥面仕切り壁111の凹部111aよりもさらに深い最深凹部111bに嵌めあわされている。
よって、伝熱接続部材である金属ピン134の背面側には凹部111aよりもさらに深い最深凹部111bが備えられており、すなわち冷却室110側は断熱材152が野菜室107の背面側の仕切り壁における他の部分よりも薄くなっており、この薄い断熱材152を熱緩和部材として、背面から冷却室110の冷気もしくは暖気が熱緩和部材である断熱材152を介して金属ピン134を冷却するように設置されている。
また、伝熱接続部材である金属ピン134の冷却は、冷却室110で生成された冷気を用いており、金属ピン134は熱伝導性のよい金属片で形成したので、冷却手段は、冷却器112で生成された冷気が流れる風路からの熱伝導だけで必要な冷却を行うことができる。
このように簡単な構造で調整手段を構成することができるので、故障が少なく信頼性が高い霧化部を実現することができる。また、冷凍サイクルの冷却源を利用して伝熱接続部材および霧化電極の冷却を行うことができるので、省エネルギで霧化を行うことができる。
また、この時、本実施の形態の伝熱接続部材である金属ピン134は霧化電極と逆側に凸部134aを有する形状をしているので、霧化部の中で凸部134a側の端部134bが冷却手段もしくは加熱手段に最も近接する為、金属ピン134の中でも霧化電極135から最も遠い端部134b側から調整手段によって冷却もしくは加熱されることとなる。
また、このように断熱材152は熱緩和部材として金属ピン134の少なくとも冷却手段側を覆っているが、好ましくは金属ピンの凸部134aの表面全体をほぼ覆うことが望ましく、この場合には金属ピン134の長手方向と直交する横方向のからの熱侵入が少なくなり、凸部134a側の端部134b側から長手方向に向かって熱伝達が行われる為、金属ピン134の中でも霧化電極135から最も遠い端部134b側から調整手段によって冷却もしくは加熱されることとなる。
また、伝熱接続部材である金属ピン134を加熱するために金属ピンヒータ158がその近傍に設置され、例えば、印加電圧を変化もしくは、通電率を変化させることにより金属ピン134の温度を可変させることができる。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
まず、冷凍サイクルの動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御手段からの信号により冷凍サイクルが動作して冷却運転が行われる。圧縮機109の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器(図示せず)である程度凝縮液化し、さらに冷蔵庫本体の側面や背面、また冷蔵庫本体の前面間口に配設された冷媒配管(図示せず)などを経由し冷蔵庫本体の結露を防止しながら凝縮液化し、キャピラリ(図示せず)に至る。その後、キャピラリでは圧縮機109への吸入管(図示せず)と熱交換しながら減圧されて低温低圧の液冷媒となって冷却器112に至る。ここで、低温低圧の液冷媒は、冷却ファン113の動作により各貯蔵室内の空気と熱交換され、冷却器112内の冷媒は蒸発気化する。この時、冷却室110で各貯蔵室を冷却するための冷気を生成する。低温冷気は冷却ファン113から冷蔵室104、切替室105、製氷室106、野菜室107、冷凍室108に冷気を風路やダンパを用いて分流させ、それぞれの目的温度帯に冷却する。野菜室107の温度制御については、奥面仕切り壁表面からの輻射による間接冷却や仕切り壁に備えられた仕切り壁ヒータ154などのON/OFF運転で行っており、これらの制御により2℃から7℃になるように調整されている。
特に、野菜室107は鮮度維持が重要になるため乾燥空気を直接貯蔵室内に大量に流入させることは、好ましくなく、輻射などの間接冷却を主体に冷却するほうが、野菜表面の風速が遅くなり、水分蒸発が抑えられるので鮮度維持に有利である。また、輻射などの間接冷却のみで冷却が可能であれば理想的であるが、輻射冷却のみで冷却できなくとも、輻射冷却である程度冷却した上で、直接貯蔵室内に冷気を流入する冷却方法とを併用するのが、夏場や貯蔵室内の温度の上昇等で冷凍負荷が大きくなった場合でも貯蔵室を適切な範囲で冷却できるため、実機に搭載するには実用的な構成であるといえる。
また、輻射冷却面を備えた奥面仕切り壁111には、凹部が構成され、この箇所に静電霧化装置131が取り付けられている。ここで、霧化部139である金属ピン134の後方は最深凹部111bがあり、断熱材の厚みは例えば2mm〜10mm程度で構成され、他の箇所より低温状態になる。本実施の形態の冷蔵庫においては、この程度の厚みが金属ピンと調整手段との間に位置する熱緩和部材としての適切なものとなる。これにより、奥面仕切り壁111は凹部111aが構成され、この箇所の最背面の最深凹部111bに金属ピン134の凸部134aが突出した形状の静電霧化装置131が嵌めこまれて、取り付けられている。
金属ピン134背面の冷凍室吐出風路141には、冷凍サイクルの運転により冷却器112で冷気が生成され、冷却ファン113により−15〜−25℃程度の冷気が吐出、風路表面から熱伝導で金属ピン134が0〜−10℃程度に冷却される。このとき、金属ピン134は、良熱伝導部材であるため、冷熱を非常に伝えやすく、金属ピン134に固定された霧化電極135も金属ピン134を介して0〜−10℃程度に冷却される。
ここで、野菜室は2℃から7℃で、かつ野菜などからの蒸散により比較的高湿状態を保持するので、霧化先端部である霧化電極135は結露可能ポイント以下となり、先端を含め、霧化電極135には水が生成し、水滴が付着する。
特に、輻射による間接冷却なため貯蔵室内は比較的高湿に維持され、その中でも輻射面の一部に設置された静電霧化装置131周辺は高湿度の雰囲気となり、静電霧化装置131で空気中の水分が結露しやすい環境にすることができる。
このように高湿度の雰囲気中に配置された静電霧化装置131は隣接した別区画の野菜室よりも低温の冷気からの熱伝導によりその内部が周囲温度よりも低く冷却されており、静電霧化装置131内部で空気中の水分が結露することになる。
この結露した水を収納容器内部にミスト状に噴霧する。結果、収納食品からの蒸散水は静電霧化装置131により、再び収納食品自体に返されることになる。よって、静電霧化装置131を冷却する冷却手段は静電霧化装置131が備えられている貯蔵室よりも低温度帯の冷気が流れている空間でなければならず、このような冷却手段は風路を用いない場合でも、例えば隣接する低温度帯(例えば冷凍温度帯)の貯蔵室の冷気を用いても良い。
また、輻射による間接冷却により貯蔵室に保存されている野菜は低温維持されると同時にミストが野菜に付着して気化することにより野菜から熱を奪うことにより冷却もされており、冷却と保水が同時に行われている。特に発生するミストはナノサイズの微粒子であるため、気化効率も高い。
この時、静電霧化装置131によってミストがまず、直接噴霧される下段収納容器119内の空間にミストが充満するが、比較的ミスト粒子が小さく、軽いため拡散性に優れている。そのため、下段収納容器119の上部に位置する上段収納容器120内の空間へも静電霧化装置131によって噴霧されたミストが到達し、ミストが充満する。
これは、上段収納容器120は、その底面側の一部が下段収納容器119内に配置されており、この下段収納容器119内に配置されている上段収納容器120に複数の空気流通孔171が設けられているので、下段収納容器119に噴霧し、充満したミストのうち、特に粒子径が小さく拡散性に飛んだミストが空気流通孔171より上段収納容器120内の空間へ流入し、さらに上部が蓋体122によって閉塞されている上段収納容器120内の空間内からは湿度が流出しにくい為に高湿度を維持することが可能となる。
さらに、上段収納容器120には蓋体122がされており、比較的低温の冷気の流入を防いでいるとともに、上記のように下段収納容器119から上方へと上がってきた比較的温度の高い高湿度冷気で上段収納容器120内の空間が冷却される為、保鮮性の向上に加え、低温障害の防止を図ることができ、特に低温障害の生じやすい野菜や果物を上段収納容器120内へ保存するとより新鮮な状態で野菜や果物を長持ちさせることが可能となる。
さらに、本実施の形態ではこの波形状を側面に備えられた空気流通孔171から流入する冷気の流れと略平行となるよう上段収納容器120の左右方向に渡って凹部もしくは凸部が連続するように備えている。これによって、空気流通孔171から流入したミストを含んだ冷気がより底面部へと回り込みやすくなるので、さらに保鮮性を向上させることが可能となる。
その一方で、水滴が付着した霧化電極135に負電圧、対向電極136を正電圧側として、電圧印加部133によりこの電極間に高電圧(例えば4〜10kV)を印加させる。このとき電極間でコロナ放電が起こり、霧化電極135の先端の水滴が、静電エネルギにより微細化され、さらに液滴が帯電しているためレイリー分裂により数nmレベルの目視できない電荷をもったナノレベルの微細ミストと、それに付随してオゾンやOHラジカルなどが発生する。なお、電極間に印加する電圧は、4〜10kVと非常に高電圧であるが、そのときの放電電流値は数μA、入力としては0.5〜1.5Wと非常に低入力であるため庫内温度への影響は微小である。
具体的には、霧化電極135を基準電位側(0V)、対向電極136を高電圧側(+7kV)とすると霧化電極135先端に付着した結露水により、対向電極136の距離が接近し、これにより空気絶縁層が破壊され、放電が開始する。このとき結露水は帯電し、また、液滴表面において、表面に発生した静電気力は表面張力を超え、微細な粒子が発生する。さらに対向電極136がプラス側のため、帯電した微細ミストは引き寄せられ、微細粒子がさらにレイリー分裂により超微粒化され、ラジカルを含んだ数nmレベルの目視できない電荷をもったナノレベルの微細ミストが対向電極136に引き寄せられ、その慣性力により、貯蔵室に向けて、微細ミストが噴霧される。
なお、霧化電極135に水がないときは、放電距離が離れ、空気の絶縁層を破壊することができず、放電現象がおこらない。これにより霧化電極135と対向電極136間に電流がながれない。
ここで、静電霧化装置で発生したミストは、下段収納容器内に向けて噴霧されるが、その粒子径が極めて小さいためその拡散性は比較的高いことにより下段収納容器全体および上記収納容器内にも拡散される。つまり野菜室全体にラジカルを含んだ微細ミストが噴霧されることになる。
また、霧化電極135に対向する位置に配された対向電極136を備え、霧化電極135と対向電極136間に高圧電位差を発生させる電圧印加部133を有することで、霧化電極135近傍の電界が安定に構築できることによって微粒化現象、噴霧方向が定まり、収納容器内に噴霧する微細ミストの精度、噴霧量をより高めることができる。
このとき噴霧された微細ミストは拡散されるが蓋体122などにより収納容器の開口面積が少ないことからラジカルを含んだミストが逃げ出しにくくなっている。さらに、貯蔵室内の水分を結露させた水滴を用いて静電霧化装置131によって噴霧されたミストは、粒子径が細かく拡散性の高い微細ミストとなって下段収納容器119を満たし、さらにその中でもさらに粒子径が小さく拡散性の高いミストがより下方に比べて温度が高い上方に位置する上段収納容器120へと流入して保湿を行うようにしている。
このように簡単な構造で冷却手段を構成することができるので、故障が少なく信頼性が高い霧化部を実現することができる。また、冷凍サイクルの冷却源を利用して伝熱接続部材である金属ピン134および霧化先端部である霧化電極135の冷却を行うことができるので、省エネルギで霧化を行うことができる。
また、野菜室107の一部に凹部があり、そこに霧化部139が挿入されていることにより、青果物や食品などを収納する収納量に影響することがなく、また、伝熱接続部材を確実に冷やすとともに、それ以外の部分については、断熱性が確保できる壁厚が確保できるのでケース内の結露を防止することができ、信頼性を向上することができる。
また、伝熱接続部材である金属ピン134は、ある程度の熱容量を確保できているので冷却風路からの熱伝導の応答を緩和することができるので、霧化電極の温度変動を抑制することができ、また蓄冷部材としての働きを有することになるので、霧化電極の結露発生の時間を確保し、凍結も防止することができる。さらに、良熱伝導性の金属ピン134と断熱材を組み合わせることにより損失なく良好に冷熱を伝導することができ、さらに金属ピン134と霧化電極135の接合部の熱抵抗を抑えているので霧化電極135と金属ピン134の温度変動が良好に追従する。また、接合に関しても湿度が侵入することができないので、長期的に熱接合性が維持される。
噴霧される微細ミストは、高圧放電で生成されたため、マイナスの電荷を帯びている。野菜室107内には青果物である野菜の中でも緑の菜っ葉ものや果物等も保存されており、これらの青果物は蒸散あるいは保存中の蒸散によってより萎れやすいものである。野菜室内に保存されている野菜や果物の中には、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態のものが含まれており、プラスの電荷をもつ。よって、霧化されたミストは、野菜や果物の表面に集まりやすく、これにより保鮮性が向上する。
また、青果物に付着して劣化を進行させる菌類に対しては、酸化力のあるOHラジカルなどを含んだ微細ミストが菌類自体の細胞膜,菌糸に直接作用して除菌や抑制の効果を発揮し、これは一般細菌にとどまらず、カビやウイルス等の抑制にも有効に作用して外部要因としての劣化要因を低減できる。
また、青果物にOHラジカルを含んだミストが付着することにより表面の細菌が除菌されるため菌による野菜表面細胞の壊死が防止できる。これにともない野菜表面細胞が壊死することによる青果物の老化促進媒体であるエチレンガスの発生を抑制できる。
本発明によると、ラジカルを含んだナノレベルの微細ミストは、青果物を外的要因から防護するだけに留まらず、青果物内部の細胞レベルまで浸透して内部の生体活動を活性化し、また、劣化要因となるような酵素反応を抑制することができるものである。
また、一般にOHラジカルはその寿命が短く、例えば貯蔵室内を浮遊している間の数秒の間に他の物質と反応してラジカルが消滅しまう懸念があるが、本発明のラジカルは水分子で覆われている為に、寿命が300倍程度の10分程度まで長くなることができ、より浮遊時間が長く、効果的にOHラジカルを食品に付着させることができる。さらに野菜室内が輻射による間接冷却により冷却されているため貯蔵室内の空気の流れは、温度差で発生する自然対流が主体となるためその流れは非常に遅く、そのミストが空間にただよう滞在時間も長くなる。
ここで、霧化電極135に水がないときは、放電距離が離れ、空気の絶縁層を破壊することができず、放電現象がおこらない。これにより霧化電極と対向電極間に電流がながれない。この現象を冷蔵庫100の制御手段146で検知することにより電圧印加部133の高圧をON/OFFすることもできる。
また、本実施の形態において、電圧印加部133は貯蔵室内の比較的低温で高湿の位置に設置されており、電圧印加部はポッチング材やコーティング材による防湿・防水構造をとることにより回路の保護を行っている。
なお、電圧印加部133を貯蔵室外に設置し場合や電圧印加部に連続的に印加を行い電圧印加部が収納されている基板が貯蔵室温度より高く維持されている場合は、上記対応を行わなくてもよい。
なお、野菜室吐出口を持ったものや野菜室吸込口を設置する場合には、貯蔵室容器外を重点に冷気を流して容器の外側からの冷却を主体とすると、貯蔵室の収納容器内は比較的空気の流れが緩やかになるので、輻射冷却である程度冷却した上で、直接貯蔵室内に冷気を流入する冷却方法の場合は、こういった形がより保鮮効果を高める構成として望ましい。
以上のように、本実施の形態1においては、断熱区画された貯蔵室と、前記貯蔵室の前面開口部を閉塞する扉と、前記貯蔵室内に設けられた収納容器と、前記収納容器内にミストを噴霧するミスト噴霧手段とを有し、前記貯蔵室内に隣接された低温環境からの輻射冷却により貯蔵室を冷却する輻射面にミスト噴霧手段を備えたことにより、ミスト噴霧で高湿化を図る貯蔵室の低温化を輻射冷却を用いることにより気流による霧化部への影響が少なくなるので安定した噴霧が可能にすることができる。
また、噴霧されたミストは直接、野菜容器内の食品に噴霧することができ、ミストと野菜の電位を利用して野菜表面にミストを付着させることができるので、保鮮の効率が向上すると同時に脱臭、食品表面の有害物質除去、防汚などの効果もさらに向上する。
なお、本実施の形態では、霧化電極を基準電位側(0V)と対向電極(+7kV)間に高圧電位差を発生させたが、対向電極を基準電位側(0V)とし、霧化電極に印加(−7kV)し、高圧電位差を発生させてもよい。この場合、貯蔵室に近い対向電極が基準電位側になるので、人が対向電極に近づいても感電等を起こさない。また、霧化電極に−7kVにした場合、貯蔵室側を基準電位側とすれば、特に対向電極を持たなくてもよい場合もある。
なお、本実施の形態では、輻射冷却する面に隣接する冷却源は、冷凍室吐出風路としたが、製氷室の吐出風路や、冷凍室戻り風路などの低温風路でもかまわない。また、対象貯蔵室と比較して、低温空間である貯蔵室でもかまわない。これにより、静電霧化装置の設置可能場所が拡大する。
なお、本実施の形態では、静電霧化装置の霧化電極周囲には、保水材を設けなかったが、保水材を配設してもよい。これにより、霧化電極近傍で生成された結露水を霧化電極周囲に保持することができるので霧化電極に適時に供給することができる。
なお、本実施の形態において、冷蔵庫の貯蔵室は野菜室としたが、冷蔵室や切替室などの他の温度帯の貯蔵室でもよく、この場合、様々な用途に展開が可能となる。
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における冷蔵庫の野菜室近傍の断面図である。
本実施の形態では、実施の形態1で詳細に説明した構成と異なる部分についてのみ詳細な説明を行い、実施の形態1で詳細に説明した構成と同じ部分もしくは、同じ技術思想が適用できる部分については、説明を省略する。
図において、冷蔵庫100の断熱箱体101は主に鋼板を用いた外箱102とABSなどの樹脂で成型された内箱103で構成され、その内部には例えば硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材が充填、周囲と断熱され、複数の貯蔵室に区分されている。本実施例においては、野菜室107が冷蔵庫の最下部に構成され、その上部に冷凍温度帯の温度設定を行っている冷凍室108もしくは製氷室がその上に構成され、その間を仕切り壁で仕切り、貯蔵室として区画されている。
冷凍室108の背面には冷気を生成する冷却室110が設けられ、その間には、断熱性を有する各室への冷気の搬送風路と、各室と断熱区画するために構成された奥面仕切り壁111が構成されている。
冷却室の冷却器で生成された冷気は、各室に冷却ファンにより搬送される。ここで本実施例の野菜室107は、冷凍室108と野菜室107を区画する仕切り壁214からの輻射による間接冷却で冷却されているよう構成されている。
仕切り壁214は、ABSなどの樹脂で構成された野菜室側仕切り板213と冷凍室側仕切り板212とその間に断熱性を確保するための発泡スチロールやウレタンなどで構成された断熱材211で構成されている。ここで、仕切り壁214の野菜室側の壁面の一部は、野菜室を輻射による間接冷却を行うとともに他の箇所より低温になるように凹部を設け、その箇所に静電霧化装置131とミスト風路217が設置されている。
静電霧化装置131は主に霧化部139、電圧印加部133で構成されている。霧化部139は、霧化電極135が設置され、霧化電極135はアルミニウムやステンレス、真鍮などの良熱伝導部材からなる伝熱接続部材である金属ピン134に固定され、電気的にも電圧印加部から配線されている一端を含め接続している。
伝熱接続部材である金属ピン134は、断熱材211の一部に設けられた凹部にはめ合わせられ断熱材211に固定され、霧化電極135は金属ピン134とL字型に突起した形で取り付けられている。これは、庫内収納量を大きくするために仕切り壁の薄型化に寄与している。
よって、伝熱接続部材である金属ピン134の霧化電極の反対側の端面は、ABSやPPなどの樹脂で成型された冷凍室側の仕切り板に圧接され、その冷凍室の冷気を仕切り板に伝熱させ、熱伝導で霧化電極を冷却させ、その先端に結露させ、水を生成する。
このように簡単な構造で冷却手段を構成することができるので、故障が少なく信頼性が高い霧化部を実現することができる。また、冷凍サイクルの冷却源を利用して伝熱接続部材および霧化電極の冷却を行うことができるので、省エネルギで霧化を行うことができる。
また、霧化電極135に対向している位置で貯蔵室側にドーナツ円盤状の対向電極136が、霧化電極135の先端と一定距離を保つように取付けられ、その延長上にミスト風路217が形成されている。
ミスト風路217は、野菜室107と冷凍室108を区画する仕切り壁214の凹部に設けられている。
仕切り壁214は、断熱性と庫内容量を確保するため一般に25mm〜45mmで構成されている。この凹部にミスト風路を設ける。
ミスト風路217は、野菜室から湿度を供給するためのミスト吸込み口とミストを野菜室へ噴霧するミスト吐出口216があり、このミスト吸込み口から霧化部に高湿な空気を流入し、霧化部の霧化電極は冷凍室から熱伝導で金属ピンを介して冷却されているため、霧化電極先端は結露する。
霧化電極先端と対向電極間に高電圧を印加さえることによりミストを発生させ、発生したミストは、ミスト風路217を通過して、ミスト吐出口216より野菜室に噴霧しながら、その一方で野菜室を輻射冷却している。
さらに、霧化部139と電気的に接続された電圧印加部133が構成され、高電圧を発生する電圧印加部133の負電位側が霧化電極135と、正電位側が対向電極136とそれぞれ電気的に配線、接続されている。
なお、静電霧化装置131を固定している仕切り壁214には、風路内の結露を防止するためヒータ等の加熱手段218が設置されている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
静電霧化装置131が設置されている仕切り壁214の断熱材211の厚さは、霧化電極135が固定されている金属ピン134を冷却するための冷却能力が必要であり、静電霧化装置131が備えられている箇所の壁厚は他の部分より薄く構成されている。そのため、比較的低温である冷凍室からの熱伝導により金属ピン134を冷却し、霧化電極135を冷却することが出来る。ここで、霧化電極135の先端温度を結露可能ポイント以下にすれば、霧化電極135近傍の水蒸気は霧化電極135に結露し、水滴が確実に生成される。
ここでは図示しないが庫内に庫内温度検知部や庫内湿度検知部などを設置することにより、あらかじめ決められた演算により厳密に庫内環境下の変化に応じて結露可能ポイントを割り出すことが出来る。
この状態で霧化電極135を負電圧側とし、対向電極136を正電圧側として、電圧印加部133によりこの電極間に高電圧(例えば7.5kV)を印加させる。このとき、電極間で空気絶縁層が破壊されコロナ放電が起こり、霧化電極135の水が電極先端から霧化し、目視できない1μm未満の電荷をもったナノレベルの微細ミストと、それに付随するオゾンやOHラジカルなどが発生する。
発生した微細ミストは、野菜容器内に噴霧される。静電霧化装置131から噴霧される微細ミストは、マイナスの電荷を帯びている。一方、野菜室内には青果物である野菜が収納されており、その中には緑の菜っ葉ものや果物等も保存されている。これらの青果物は、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態で収納されていることが多い。これらの青果物は通常、プラスの電荷に帯電されており、噴霧されたマイナスの電荷を持った微細ミストは、野菜表面に集まりやすい。よって、噴霧された微細ミストは野菜室内を再び高湿にすると同時に青果物の表面に付着し、青果物からの蒸散を抑制し、保鮮性を向上させる。また、野菜や果物の細胞の隙間から組織内に浸透し、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。
また、発生した微細ミストは、オゾンやOHラジカルなどを保持しており、これらは強い酸化力を保持する。そのため、発生した微細ミストが野菜室内の脱臭や野菜表面を抗菌、殺菌することが出来ると同時に、野菜表面に付着する農薬やワックスなどの有害物質を酸化分解・除去することが出来る。
以上のように、本実施の形態2は、冷蔵庫本体は複数の貯蔵室を有し、霧化部を備えた貯蔵室である野菜室の天面側には霧化部を備えた貯蔵室である野菜室よりも低温に保たれた低温貯蔵室である冷凍室が備えられ、霧化部は野菜室を冷却するための野菜室の天面側の輻射面に取り付けた。
これによって、霧化部を備えた貯蔵室の上部に冷凍室や製氷室のような冷凍温度帯の貯蔵室がある場合、それらを仕切る天面の仕切り壁に霧化部を設置することで、上部貯蔵室の冷気で霧化部の伝熱接続部材である金属ピンを冷却し、霧化電極が冷却され、結露させることができるので、特別な冷却装置が不必要で、簡単な構成で霧化部を備えることができるので、故障が少なく信頼性が高い霧化部を実現することができる。
また、輻射面を貯蔵室の最上部である天面の仕切り壁とし、その天面の仕切り壁に霧化装置を備えることで、冷たい空気が下方へと自然対流をする特性を上手く利用して、噴霧されたミストが輻射冷却された冷たい冷気と共に貯蔵室内へ自然対流によって拡散しやすくすることができ、輻射冷却で間接的に貯蔵室を冷却することと同時にミスト噴霧の拡散性を向上させる効果を奏する。
このように、ミスト噴霧で高湿化を図る貯蔵室の低温化を輻射冷却を用いることにより気流による霧化部への影響が少なくなるのでより保鮮性を向上させることができる。
貯蔵室を区画するための仕切り壁と、貯蔵室の天面側には低温貯蔵室が備えられ、静電霧化装置は天面の仕切り壁に取り付けたことにより、冷凍室や製氷室のような冷凍温度帯の貯蔵室が上部にある場合、それらを仕切る天面の仕切り壁に設置され、その冷却源で静電霧化装置の霧化電極を冷却し、結露させることができるので、特別な冷却装置が不必要で、また、天面から噴霧できるので収納容器全体に拡散しやすい。
さらに、本実施の形態の補給水は、外部から供給する水道水ではなく結露水を用いる。そのためミネラル成分や不純物がなく、霧化電極先端の劣化や目詰まりによる保水性の劣化を防ぐことが出来る。
さらに、本実施の形態のミストはラジカルを含んでいることにより野菜表面に付着する農薬やワックスなどを極めて少ない水量で分解・除去出来るので節水ができ、かつ低入力化が出来る。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における静電霧化装置近傍の詳細断面図である。
本実施の形態では、実施の形態1および2で説明した構成と異なる部分を中心に詳細な説明を行い、実施の形態1および2と同一構成である部分および同一の技術思想が適用できる部分については、詳細な説明を省略する。
図に示すように、野菜室107と製氷室106の温度帯を区切るために断熱性を確保した第一の仕切り壁123に霧化装置である静電霧化装置131は、組み込まれており、特に霧化部139の伝熱接続部材である金属ピン134部については、その断熱材が凹形状になっており、その近傍に金属ピンヒータ158が構成されている。
この第一の仕切り壁123は、野菜室107を輻射による間接冷却するためにも用いられており、その温度は貯蔵室温度と比較して低温になっている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
静電霧化装置131が設置されている第一の仕切り壁123の厚さは、霧化先端部である霧化電極135が固定されている金属ピン134を冷却するための冷却能力が必要であり、静電霧化装置131が備えられている凹部123aの壁厚は他の部分より薄く構成されており、さらに金属ピン134が保持されている最深凹部123bの壁厚は凹部123aよりもさらに薄く構成されている。そのため、比較的低温である製氷室からの熱伝導により金属ピン134を冷却し、霧化電極135を冷却することが出来る。ここで、霧化電極135の先端温度を結露可能ポイント以下にすれば、霧化電極135近傍の水蒸気は霧化電極135に結露し、水滴が確実に生成される。
また、第一の仕切り壁123の野菜室側の面は比較的低温である製氷室からの熱伝導であるため野菜室107を間接冷却面としても使われている。
ここで、野菜室の上部に輻射冷却面が存在することから輻射により冷えた空気は自然対流により貯蔵室内の比較的暖かい空気との温度差、濃度差で対流が起こり、冷却能力が向上する。
このように、野菜室の上部に輻射冷却面が存在し、その天面の仕切り壁に霧化装置を備えることで、冷たい空気が下方へと自然対流をする特性を上手く利用して、噴霧されたミストが輻射冷却された冷たい冷気と共に貯蔵室内へ自然対流によって拡散しやすくすることができ、輻射冷却で間接的に貯蔵室を冷却することと同時にミスト噴霧の拡散性を向上させる効果を奏する。
よって、ミスト噴霧で高湿化を図る貯蔵室の低温化を輻射冷却を用いることにより気流による霧化部への影響が少なくなるのでより保鮮性を向上させることができる。
さらに、外気温度変動や速氷等の製氷室106の温調が変動し、霧化電極135が過冷になる場合があるため、霧化電極135近傍に設置された金属ピンヒータ158で霧化電極135の温度を調整することにより霧化電極135先端の水量を最適化する。
ここでは図示しないが庫内に庫内温度検知部や庫内湿度検知部などを設置することにより、あらかじめ決められた演算により厳密に庫内環境下の変化に応じて結露可能ポイントを割り出すことが出来る。
この状態で霧化電極135を負電圧側とし、対向電極136を正電圧側として、電圧印加部133によりこの電極間に高電圧(例えば7.5kV)を印加させる。このとき、電極間で空気絶縁層が破壊されコロナ放電が起こり、霧化電極135の水が電極先端から霧化し、目視できない1μm未満の電荷をもったナノレベルの微細ミストと、それに付随するオゾンやOHラジカルなどが発生する。
発生した微細ミストは、野菜容器内に噴霧される。静電霧化装置131から噴霧される微細ミストは、マイナスの電荷を帯びている。一方、野菜室内には青果物である野菜が収納されており、その中には緑の菜っ葉ものや果物等も保存されている。これらの青果物は、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態で収納されていることが多い。これらの青果物は通常、プラスの電荷に帯電されており、噴霧されたマイナスの電荷を持った微細ミストは、野菜表面に集まりやすい。よって、噴霧された微細ミストは野菜室内を再び高湿にすると同時に青果物の表面に付着し、青果物からの蒸散を抑制し、保鮮性を向上させる。また、野菜や果物の細胞の隙間から組織内に浸透し、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。
また、発生した微細ミストは、オゾンやOHラジカルなどを保持しており、これらは強い酸化力を保持する。そのため、発生した微細ミストが野菜室内の脱臭や野菜表面を抗菌、殺菌することが出来ると同時に、野菜表面に付着する農薬やワックスなどの有害物質を酸化分解・除去することが出来る。
現在、冷凍サイクルの冷媒としては、地球環境保全の観点から地球温暖化係数が小さい可燃性冷媒であるイソブタンが使用されているものが主流になっている。
この、炭化水素であるイソブタンは空気と比較して常温、大気圧下で約2倍の比重である(2.04、300Kにおいて)。
仮に、圧縮機の停止時に冷凍システムから可燃性冷媒であるイソブタンが漏洩した場合には、空気よりも重いので、下方に漏洩することになる。このとき、奥面の仕切り壁111より、庫内へ冷媒が漏洩する可能性がある。特に、冷媒の滞留量が多い冷却器112から漏洩する場合には、漏洩量が多くなる可能性があるが、静電霧化装置131を具備する野菜室107は、冷却器112より上方に設置されているため、漏洩しても野菜室には漏洩することがない。
また、仮に野菜室107に漏洩したとしても、冷媒は空気より重いため貯蔵室下部に滞留する。よって、静電霧化装置131が貯蔵室天面に設置されているため、静電霧化装置131付近が可燃濃度になることは極めて低い。
以上のように、本実施の形態3は、貯蔵室を区画するための仕切り壁と、貯蔵室の天面側には低温貯蔵室が備えられ、静電霧化装置は天面の仕切り壁に取り付けたことにより、冷凍室や製氷室のような冷凍温度帯の貯蔵室が上部にある場合、野菜室を輻射による間接冷却を行う一方、その冷却源で静電霧化装置の霧化電極を冷却し、結露させることができるので、特別な冷却装置が不必要で、また、天面から噴霧できるので収納容器全体に拡散しやすく、また、人の手にも触れにくいので安全性が向上させることができる。
また、本実施の形態の霧化部は静電霧化方式によってミストを生成するものであり、高電圧等の電気エネルギを使って水滴を分裂させ、細分化することによって微細ミストを発生させる。発生したミストは電荷を帯びている為、そのミストに野菜や果物等の付着させたい物と逆の電荷を持たすことによって、例えばプラスの電荷を持つ野菜に対してマイナスの電荷を帯びたミストを噴霧することにより、野菜や果物への付着力が向上するため、より均一に野菜表面にミストが付着するとともに、電荷を帯びていないタイプのミストと比較してミストの付着率をより向上させることが出来る。また、噴霧された微細ミストは直接、野菜容器内の食品に噴霧することができ、微細ミストと野菜の電位を利用して野菜表面に微細ミストを付着させることが出来るので、保鮮性を効率よく向上させることが出来る。
また、静電霧化装置を蒸発器より上方に配置していることから、イソブタンやプロパンなどの可燃性冷媒を用いて冷凍サイクルを構成した場合であって、かつ、冷媒が漏洩した場合も、空気より重いため冷媒が野菜室に充満することはないので安全である。
また、野菜室内においても静電霧化部を貯蔵室の上方に設置しているので、冷媒が漏洩しても、貯蔵室の下部に滞留するので着火することはない。
なお、貯蔵室内は冷媒配管等に直接面している部分がないので、冷媒が漏洩することはない。よって、可燃性冷媒に着火することはない。
(実施の形態4)
図6は本発明の実施の形態4における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の詳細断面図である。
本実施の形態では、実施の形態1〜3で詳細に説明した構成と異なる部分についてのみ詳細な説明を行い、実施の形態1〜3で詳細に説明した構成と同じ部分もしくは、同じ技術思想が適用できる部分については、説明を省略する。
図において、奥面仕切り壁111は、ABSなどの樹脂で構成された奥面仕切り壁表面151と、野菜室107と冷凍室吐出風路141との間の断熱性を確保するための発泡スチロールなどで構成された断熱材152で構成される。また、冷凍室吐出風路141と冷却室110とを隔離するための仕切り板161を備えており、また、奥面仕切り壁表面151には、貯蔵室の温度調節をする、もしくは表面の結露を防止するためヒータ等の加熱手段154が奥面仕切り壁表面151と断熱材152の間に設置され、奥面仕切り壁表面から野菜室107を輻射により間接冷却している。
ここで、奥面仕切り壁111の貯蔵室内側の壁面の一部に霧化装置である超音波霧化装置260が設置されている。
このように、霧化装置である超音波霧化装置260は側壁の中でもヒータ等の加熱手段154を備える奥面仕切り壁111に備えられており、少なくとも超音波霧化装置260よりも下方側に加熱手段154が備えられているものとする。
超音波霧化装置260は、霧化部であるホーン部261、電極部262、圧電素子263、電極部264、金属ピン265で構成されたホーン型超音波振動子268と、それらを固定、囲う外郭ケース267、外郭ケースの備えられたミストを野菜室内に噴霧するための噴霧口269で構成されている。また、奥面仕切り壁111に貫通部259を備え、貫通部259に金属ピン265が備えられている。霧化先端部であるホーン部261は、切削加工や焼結加工等により底面部から先端部に向けて凸部状となっている。ホーン先端部261aは、矩形もしくは円形上に加工され、その断面積比は約1/5以下でホーン部261の側面形状は圧電素子263の発振周波数に依存しており、ホーン部261、電極部262、圧電素子263、電極部264の順に一体的に形成され、各接続間にエポキシやシリコン系の接着剤で接着固定し、圧電素子263で発生する振動をホーン先端部261aで最大振幅となるように構成されている。
また、圧電素子、電極部はここでは図示しないが円筒系で構成されており、その中心部は空間である。ここに金属ピンが構成され、ホーン部と圧着、固定されている。
ホーン型超音波振動子268の外郭はシリコン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂等でコーティングがされている(図示せず)。
霧化先端部であるホーン部261は、熱伝導性の高い材質としており、例えばアルミニウム、チタン、ステンレス等の金属が挙げられる。特に、軽量で、熱伝導性が高く、超音波伝達時の振幅の増幅性能の点からするとアルミニウムを主成分とするもの選択することが好ましいが、冷蔵庫のような耐腐食性が必要でかつ長寿命化の配慮が必要なものにはSUS304やSUS316Lのようなステンレスを主成分とするものを選択すると、経年劣化が起こりにくく長期に渡る信頼性が確保できる為望ましい。
噴霧口269は、外郭ケース267の一部に矩形や円形の孔が設けられ、霧化部から液体が霧化発生する方向、つまりホーン部261のホーン先端部261aと対向する部分の外郭ケース267に圧電素子の振幅方向の一端に孔が設けられている。
霧化装置である超音波霧化装置260は霧化部に備えられた霧化先端部であるホーン261を冷却手段によって結露可能ポイント温度以下に冷却することで、霧化部周辺の空気中の水分をホーン部261に結露させて生成した結露水をホーン先端部261aからミストとして噴霧させるものである。
また、扉開閉等で多湿状態が続き、ホーン部261に必要以上の結露水が供給された時、排水口138より排水する。この排水口138は、外郭ケース267内に溜まった水を外部へ排出する水抜き穴という機能に加え、外郭ケース267内へ冷気を取り入れる冷気供給口の機能も果たしている。
排水された結露水は、仕切り壁111の奥面仕切り壁表面151を沿い流れるが、ごく微量なため野菜室の対流や背面のヒータにより蒸発する。この時、壁面にヒータ等の加熱手段154が備えられていることで他の側面壁と比較して奥面仕切り壁111周辺は上昇気流が発生しやすい。よって、この奥面仕切り壁111に霧化部が備えられ、さらに霧化部を収納する外郭ケース267の下面部に備えられている冷気供給口の機能を果たす排水口138から再高湿度の冷気が流れ込み、より結露を促進させることが可能になる。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
野菜室107内の余分な水蒸気を奥面仕切り壁111の一部の設置された超音波霧化装置260の金属ピン265は、ミストが噴霧されている貯蔵室である野菜室よりも低温冷気が流れている冷凍室風路により冷却される。そして、金属ピン265とホーン部261が圧着しているため霧化先端部であるホーン部261が熱伝導により冷却され、野菜室の高湿空気に含まれる水蒸気が低温化されたホーン部261によりホーン部に結露することで結露水が生成され、先端部261aに付着する。
この状態で高圧・発振回路に通電し、高電圧を所定の周波数(例えば80k〜210kHz)で発振させ、電極部262、電極部264に印加すると、圧電素子263は振動を起こし、供給された霧化部であるホーン部261の先端部261aに付着した水の表面にはキャピラリー波が発生し、先端の水は数μmから数十μmの微粒子化され、その振動方向にミストとして霧化する。その微粒子ミストは、噴霧口269を通過させることで、ホーン部261の先端部261a以外から発生した粒子径の大きいミストは矩形や円形の噴霧口269の外周壁に衝突し、貯蔵室内へ噴霧されずケース内に残るので、比較的小さい粒子径のミストのみを分級し、微細ミストのみが貯蔵室である野菜室107へと噴霧される。
また、超音波霧化装置260を一定間隔、例えば1分間ON、9分間OFFのようなインターバルで通電し、霧化発生の霧化量を調整しながら野菜室107に噴霧し、野菜室107をすばやく加湿する。これにより、野菜室107は高湿化でき、野菜からの蒸散が抑えられるのと同時に、圧電素子263で発生する振動をホーン部261先端であるホーン先端部261aで最大振幅となるようにエネルギを集中していることから、圧電素子263は1Wから2W程度の低発熱量に抑えられ、野菜室107への温度影響を軽減することができる。
圧電素子263を覆うコーティング材は、平均10年程度の長期使用が前提となる冷蔵庫においてはコーディング材の劣化を防ぐ為、超音波伝達時の振幅の増幅性能の点から柔軟性がある為に繰り返し振動を受けても劣化しにくいシリコン樹脂を主成分とするもの選択することが好ましく、ホーン部261、電極部262、圧電素子263、電極部264とのそれぞれの結合部における液体や水蒸気の侵入を防ぎ、接着剤の劣化を防ぎ、寿命信頼性の向上に寄与し、冷蔵庫に搭載した場合の実負荷に耐え得る構成となる。
なお、外郭ケース267とホーン型超音波振動子の隙間には、水漏れ防止や共振防止のためにパッキン材(図示せず)を用いてもよい。これにより、上記に記載したような液体や水蒸気の侵入をより確実に防ぐとともに騒音も低減できる。なお、具体的には、フッ素系のパッキン材を用いることにより寿命信頼性が向上する。
以上のように、本実施の形態においては、断熱区画された比較的高湿環境である野菜室と、野菜室に液体を噴霧するためのホーン型超音波霧化装置を備え、ホーン先端に結露水を生成するためホーン部に金属ピンを設置することにより、先端に結露させ、それを直接噴霧させることにより野菜室内の品質を保持することができる。
なお、本実施の形態において、霧化させる液体は、静菌力、消臭力を持つ金属イオンを含む、例えば、亜鉛イオン水、銀イオン水、銅イオン水などでもかまわない。これにより貯蔵室内に発生する菌の抑制効果を向上させることができる。
なお、本実施の形態においては、金属ピン265を備える部分の断熱材152の形状は図6で示すものを例に挙げたが、金属ピン265を配置する部分に関する形状は実施の形態1〜3で説明したような形状にしても同様の効果を奏するのは言うまでもない。
なお、本実施の形態においては、霧化装置は超音波霧化装置260としたが、実施の形態1〜3で説明した静電霧化装置や、それ以外のエジェクタ方式等の霧化装置であっても、空気中の水分を積極的に結露させた水を用いてミスト噴霧を行うものであれば、他の霧化装置であっても良く、上記実施の形態で説明した技術思想を適用することができる。