請求項1に記載の発明は、断熱区画された貯蔵室と、前記貯蔵室内にミストを噴霧させる霧化部と、前記霧化部に電気的に接続された電圧印加部とを有し、前記霧化部は前記貯蔵室内の水分を結露させた水分を前記貯蔵室にミストとして噴霧するものであって、前記貯蔵室の状態を検知して前記霧化部への結露の可否を判定する結露可否判定手段と、前記結露可否判定手段の結果が結露可能ならば前記電圧印加部を動作させ、結果が結露不可ならば前記電圧印加部を停止する制御手段とを有するもので、前記霧化部は、霧化電極と、前記霧化電極に対向する位置に配された対向電極と、前記霧化電極に接続された電極接続部材を有し、前記電極接続部材は霧化電極に比べて50倍以上の熱容量を有する金属ピンとするとともに、前記結露可否判定手段は、前記霧化電極に液滴がある放電時のみ流れる放電電流の検知で結露水がなくなったことを判断することにより、貯蔵室内の環境を検知して外気の流入や野菜などの蒸散による水分から結露水を集めることができるときのみ霧化部を動作させることができ、確実に安定した噴霧量のミストの噴霧を行うことができる。
また、結露可能な時のみ動作させることとなるので、霧化部に結露水が発生していない状態で高電圧印加部が動作することを防止することで信頼性の向上と省エネルギーをはかることができ、貯蔵室内に安定した噴霧量のミストを噴霧できるとともに、動作時間を短縮することができるため、信頼性が高く消費電力を抑えた使い勝手の良い霧化部を備えた冷蔵庫を提供することが可能となる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の冷蔵庫に加え、前記霧化電極の付着する水量を調整する調整手段と、前記霧化電極に接続された電極接続部材を有し、前記調整手段によって前記電極接続部材を冷却または加熱することで間接的に前記霧化電極の温度調整を行うこととしたことにより、前記霧化電極を直接冷却することなく、前記電極接続部材を冷却することで間接的に前記霧化電極を冷却することができ、前記電極接続部材が前記霧化電極よりも大きな熱容量を有することで、前記調整手段の温度変化が前記霧化電極に直接大きな影響を与えることを緩和し、霧化電極の温度を調整することができ、霧化電極の負荷変動を抑え、安定した噴霧量のミスト噴霧を実現することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明に加え、前記調整手段は冷却手段と加熱手段を有することにより、容易に霧化電極の温度を調整することができ、前記霧化電極に付着する水量を安定した霧化を実現するための適切な範囲に調整することがより容易に行うことができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明に加え、前記冷却手段が冷蔵庫の冷凍サイクルで生成された冷却源であることにより、前記冷却手段として装置および電力を必要としないので、省材料かつ省エネルギーでのミスト噴霧を実現できる。
また、前記加熱手段はヒータであることとしたことにより、前記霧化電極の先端温度の制御を容易に行うことが可能となり、前記霧化電極に結露する液滴の大きさもしくは量を調整することができるので、安定的に噴霧することができ、更に信頼性も向上する。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明に加え、冷蔵庫は複数の貯蔵室と、前記貯蔵室を冷却するための冷却器を収納する冷却室と、前記冷却室と前記貯蔵室とを断熱区画するための仕切り壁とを有し、前記霧化部は前記冷却室側の仕切り壁に取り付けたことにより、冷蔵庫の冷凍サイクルで生成された冷却源を用いて冷却される冷気の中でも最も低温度なる冷却室の冷気もしくは冷気からの熱伝達を利用したパイプ等の部材を冷却手段として用いることができるため、簡単な構造で前記冷却手段を構成することができるので、故障が少なく信頼性が高い前記霧化部を実現することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明に加え、貯蔵室と、前記貯蔵室に備えられ基準電位部にアースされた部分と、霧化電極と前記基準電位部にアースされた部分との間に電位差を発生させる電圧印加部を有したことにより、特に対向電極を持たなくても、貯蔵室側の一部にアースされた部材を備えることで、霧化電極と電位差を発生させて、ミスト噴霧を行うことができ、より簡単な構成で安定的な電界が構成されることにより安定的に前記霧化部からミストを噴霧することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の縦断面図である。図2は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の野菜室近傍の正面図である。図3は図2のA−A部の静電霧化装置近傍の詳細断面図である。
図1から3において、冷蔵庫100の断熱箱体101は主に鋼板を用いた外箱102とABSなどの樹脂で成型された内箱103で構成され、その内部には例えば硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材が充填されている。これにより、貯蔵室を断熱するのと同時に、複数の貯蔵室に区分されている。冷蔵庫100の最上部には第一の貯蔵室としての冷蔵室104、その冷蔵室104の下部に第四の貯蔵室としての切換室105と第五の貯蔵室としての製氷室106が横並びに設けられ、その切換室105と製氷室106の下部に第二の貯蔵室としての野菜室107、そして最下部に第三の貯蔵室としての冷凍室108が構成されている。
冷蔵室104は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1℃〜5℃とし、野菜室107は冷蔵室104と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃としている。冷凍室108は冷凍温度帯に設定されており、冷凍保存のために通常−22℃〜−15℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば−30℃や−25℃の低温で設定されることもある。切換室105は、1℃〜5℃で設定される冷蔵、2℃〜7℃で設定される野菜、通常−22℃〜−15℃で設定される冷凍の温度帯以外に、冷蔵温度帯から冷凍温度帯の間で予め設定された温度帯に切り換えることができる。切換室105は製氷室106に並設された貯蔵室ドアである独立扉を備えた貯蔵室であり、引き出し式の貯蔵室ドアである扉を備えることが多い。なお、本実施の形態では切換室105を冷蔵,冷凍の温度帯までを含めた貯蔵室としているが、冷蔵は冷蔵室104,野菜室107、冷凍は冷凍室108に委ねて、冷蔵と冷凍の中間の上記温度帯のみの切り換えに特化した貯蔵室としても構わない。また、特定の温度帯に固定された貯蔵室でもかまわない。製氷室106は、冷蔵室104内の貯水タンク(図示せず)から送られた水で室内上部に設けられた自動製氷機(図示せず)で氷を作り、室内下部に配置した貯氷容器(図示せず)に貯蔵する。
断熱箱体101の天面部は冷蔵庫の背面方向に向かって階段状に凹みを設けた形状であり、この階段状の凹部に機械室を形成して圧縮機109、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの高圧側構成部品が収容されている。すなわち、圧縮機109を配設する機械室は、冷蔵室104内の最上部の後方領域に食い込んで形成されることになる。手が届きにくくデッドスペースとなっていた断熱箱体101の最上部の貯蔵室後方領域に機械室を設けて圧縮機109を配置することにより、従来の冷蔵庫で、使用者が使いやすい断熱箱体101の最下部にあった機械室のスペースを貯蔵室容量として有効に転化することができ、収納性や使い勝手を大きく改善することができる。なお、本実施の形態における、以下に述べる発明の要部に関する事項は、従来一般的であった断熱箱体101の最下部の貯蔵室後方領域に機械室を設けて圧縮機109を配置するタイプの冷蔵庫に適用しても構わない。
野菜室107と冷凍室108の背面には冷気を生成する冷却室110が設けられ、その間には、断熱性を有する各室への冷気の搬送風路と、各室と断熱区画するための断熱材で構成された奥面仕切り壁111が備えられている。冷却室110内には、冷却器112が配設されており、冷却器112の上部空間には強制対流方式により冷却器112で生成した冷気を冷蔵室104、切換室105、製氷室106、野菜室107、冷凍室108に送風する冷却ファン113が配置され、冷却器112の下部空間には冷却時に冷却器112やその周辺に付着する霜や氷を除霜するためのガラス管製のラジアントヒータ114が設けられ、さらにその下部には除霜時に生じる除霜水を受けるためのドレンパン115、その最深部から庫外に貫通したドレンチューブ116が構成され、その下流側の庫外に蒸発皿117が構成されている。
野菜室107には、野菜室107の貯蔵室ドアである引き出し式の扉118に取り付けられたフレームに載置された下段収納容器119と、下段収納容器119に載置された上段収納容器120が配置されている。
引き出し式の扉118が閉ざされた状態で主に上段収納容器120を略密閉するための蓋体122が野菜室上部の第一の仕切壁123及び内箱103に保持されている。引き出し式の扉118が閉ざされた状態で蓋体122と上段収納容器120の上面の左右辺、奥辺が密接し、上面の前辺は略密接している。さらに、上段収納容器120の背面の左右下辺と下段収納容器119の境界部は、上段収納容器120が稼働する上で接触しない範囲で食品収納部の湿気が逃げないよう隙を詰めている。
蓋体122と第一の仕切り壁123の間には、奥面仕切り壁111に構成された野菜室用吐出口124から吐出された冷気の風路が設けられている。また、下段収納容器119と第二の仕切り壁125との間にも空間が設けられ冷気風路を構成している。野菜室107の背面の奥面仕切り壁111の下部には、野菜室107内を冷却し熱交換された冷気が冷却器112に戻るための野菜室用吸込口126が設けられている。
なお、本実施の形態における、以下に述べる発明の要部に関する事項は、従来一般的であった扉に取り付けられたフレームと内箱に設けられたレールにより開閉するタイプの冷蔵庫に適用しても構わない。また、蓋体122、野菜室吐出口、吸い込み口、風路構成については、収納容器の形態によりそれらは最適化される。
奥面仕切り壁111は、主にABSなどの樹脂を用いた奥面仕切り部表面127と発泡スチロールなどを用い、各室へ冷気を循環するための風路と、冷却室110と野菜室107の間を隔離、断熱性を確保する断熱材128で構成されている。ここで、奥面仕切り壁111の貯蔵室内側の壁面の一部に他の箇所より低温になるように凹部111aを設け、その箇所に静電霧化装置130が設置されている。
静電霧化装置130は主に霧化部131、電圧印加部132、外郭ケース133で構成され、外郭ケース133の一部には、噴霧口134と湿度供給口135が構成されている。霧化部131は、霧化電極136が設置され、霧化電極136はアルミニウムやステンレス、真鍮などの良熱伝導部材からなる電極接続部材である金属ピン137に固定され、電気的にも電圧印加部から配線されている一端を含め接続している。
また、金属ピン137の背面は断熱材128で構成された冷凍室吐出風路138となっており、この冷凍室吐出風路138が金属ピン137の冷却手段となっている。
この電極接続部材である金属ピン137は霧化電極136に比べて50倍以上、好ましくは100倍以上の大きな熱容量を有するものであり、アルミや銅などの高熱伝導部材が好ましく、金属ピン137の一端からもう一端に冷熱を熱伝導で効率よく伝導させるため、その周囲は断熱部材で覆われていることが望ましい。
また、長期的に霧化電極136と金属ピン137の熱伝導の維持も必要であるので、接続部に湿度等の侵入を防止するためにエポキシ部材などを流しこみ、熱抵抗を抑え、さらに、霧化電極136と金属ピン137を固定する。また、熱抵抗を低下させるために霧化電極136を金属ピン137に圧入等により固定してもよい。
さらに、金属ピン137は、貯蔵室と冷却器112もしくは風路を断熱するための断熱材内で冷温を熱伝導させる必要があるので、その長さは5mm以上好ましくは10mm以上確保することが望ましい。ただし、その長さを30mm以上にした場合は、その効果は低下する。
なお、貯蔵室に設置された静電霧化装置130が高湿環境下にあり、その湿度が金属ピン137に影響する可能性があるので、金属ピン137は耐腐食性、耐錆性の性能を持った金属材料、もしくはアルマイト処理などの表面処理、コーティングを行った材料を選択したほうが好ましく、本実施の形態においてもアルマイト処理を行っているものとする。
金属ピン137は外郭ケース133に固定され、金属ピン137自体は外郭ケース133から突起して構成されている。また、霧化電極136に対向している位置で貯蔵室側にドーナツ円盤状の対向電極139が、霧化電極136の先端と一定距離を保つように取付けられ、その延長上に噴霧口134が構成されている。
霧化電極136近傍では、ミスト噴霧のため、放電が常に起こるため、霧化電極136先端では、磨耗を生じる可能性がある。冷蔵庫100は、10年以上運転することになるので、霧化電極136の表面は、部品交換減少させメンテナンス性を向上するため強靭な表面処理を行うことが望ましく、例えば、ニッケルメッキ、および金メッキや白金メッキを用いることでとくに強靭となる。本実施の形態においては金メッキを施したものとする。
さらに、霧化部131の近傍に電圧印加部132が構成され、高電圧を発生する電圧印加部132の負電位側が霧化電極136と、正電位側が対向電極139とそれぞれ電気的に接続されている。
対向電極139は、例えば、ステンレスで構成されていて、同様に、その長期信頼性を確保することが望まれており、特に異物付着防止、汚れ防止するため、例えば白金メッキなどの表面処理が特に優れている。
電圧印加部132は、第一の仕切り壁123と貯蔵室ドアである扉118の接触部分に設けたドアの開閉を検知し、電気信号を出力するドアスイッチ140の信号を取得した冷蔵庫本体の制御手段146によって高電圧印加のON/OFFを行う。
このドアスイッチ140は機械式、非接触式などあり、機械式は構造を単純かつ安価に構成ができ、非接触式は機械構造ではないため信頼性を高めることができる。
また、ドアスイッチ140はドアの閉め忘れによるドアの開放状態が継続した場合などに、使用者に対して音などを用いて報知するための検知手段と併用することができ、大きなコストアップとはならない。
さらに、静電霧化装置130を固定している奥面仕切り表面127と断熱材128の間には、貯蔵室の温度調節をする、もしくは表面の結露を防止するための仕切り壁ヒータ154が設置されている。さらに静電霧化装置130に備えられた電極接続部材である金属ピン137の温度調整と、霧化電極136を含めた周辺部の過剰結露を防止するための金属ピンヒータ158が霧化部131近傍に設置されている。
また、このように断熱材128は熱緩和部材として金属ピン137の少なくとも冷却手段側を覆っているが、金属ピン137の表面全体をほぼ覆うことが望ましく、この場合には金属ピン137の長手方向と直交する横方向のからの熱侵入が少なくなり、冷却手段である冷凍室吐出風路138から霧化電極136に向かって熱伝達が行われる為、金属ピン137の中でも霧化電極136から最も遠い端部側から調整手段によって冷却されることとなる。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
まず、冷凍サイクルの動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御手段146からの信号により冷凍サイクルが動作して冷却運転が行われる。冷凍サイクルは圧縮機109、凝縮器(図示せず)、膨張手段であるキャピラリ、冷却器112とを有した管状の経路を有し、内部に冷媒が流れている。圧縮機109の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器(図示せず)である程度凝縮液化し、さらに冷蔵庫本体の側面や背面、また冷蔵庫本体の前面間口に配設された冷媒配管(図示せず)などを経由し冷蔵庫本体の結露を防止しながら凝縮液化し、キャピラリ(図示せず)に至る。その後、キャピラリでは圧縮機109への吸入管(図示せず)と熱交換しながら減圧されて低温低圧の液冷媒となって冷却器112に至る。ここで、低温低圧の液冷媒は、冷却ファン113の動作により各貯蔵室内の空気と熱交換され、冷却器112内の冷媒は蒸発気化する。この時、冷却室110で各貯蔵室を冷却するための冷気を生成する。低温冷気は冷却ファン113から冷蔵室104、切換室105、製氷室106、野菜室107、冷凍室108に冷気を風路やダンパを用いて分流させ、それぞれの目的温度帯に冷却する。特に、野菜室107は、冷蔵室104を冷却した後、その空気を冷却器112に循環させるための冷蔵室戻り風路の途中に構成された野菜室用吐出口124から野菜室107に吐出し、上段収納容器120や下段収納容器119の外周に流し間接的に冷却し、その後、野菜室用吸込口126から再び冷却器112に戻る循環風路になっている。また、野菜室107の温度制御については、冷気の配分や仕切り壁に備えられた仕切り壁ヒータ154などのON/OFF運転で行っており、これらの制御により2℃から7℃になるように調整されている。なお、一般的には庫内温度検知手段をもたないものが多い。
野菜室107の奥面に設置されている奥面仕切り壁111には、凹部が構成され、この箇所に静電霧化装置130が取り付けられている。ここで、霧化部131である金属ピン137の後方はさらに凹部があり、断熱材の厚みは例えば2mm〜10mm程度で構成され、他の箇所より低温状態になる。本実施の形態の冷蔵庫においては、この程度の厚みが金属ピンと調整手段との間に位置する熱緩和部材としての適切なものとなる。これにより、奥面仕切り壁111は凹部111aが構成され、この箇所に最背面に金属ピン137の凸部133aが突出した形状の静電霧化装置130が嵌めこまれて、取り付けられている。
金属ピン137背面の冷凍室吐出風路138には、冷凍サイクルの運転により冷却器112で冷気が生成され、冷却ファン113により−15〜−25℃程度の冷気が吐出、風路表面から熱伝導で金属ピン137が0〜−6℃程度に冷却される。このとき、金属ピン137は、良熱伝導部材であるため、冷熱を非常に伝えやすく、金属ピン137に固定された霧化電極136も金属ピン137を介して0〜−6℃程度に冷却される。
ここで、扉118の開閉を行うと、野菜室107に暖気が流入し、野菜室107の温度上昇とともに、湿度が上昇する。これにより、霧化電極136は露点以下となり、先端を含め、霧化電極136には水が生成され、水滴が付着する。
制御手段146は扉118が閉められた事をドアスイッチ140からの信号によって検知すると、水滴が付着した霧化電極136に負電圧、対向電極139を正電圧側として、電圧印加部132に信号を送り、電極間に高電圧(例えば4〜10kV)を印加させる。このとき電極間でコロナ放電が起こり、霧化電極136の先端の水滴が、静電エネルギーにより微細化され、さらに液滴が帯電しているためレイリー分裂により数nmレベルの目視できない電荷をもったナノレベルの微細ミストと、それに付随してオゾンやOHラジカルなどが発生する。なお、電極間に印加する電圧は、4〜10kVと非常に高電圧であるが、そのときの放電電流値は数μA、入力としては0.5〜1.5Wと非常に低入力であるため庫内温度への影響は微小である。
具体的には、霧化電極136を基準電位側(0V)、対向電極139を高電圧側(+7kV)とすると霧化電極136先端に付着した結露水により、対向電極139の距離が接近し、これにより空気絶縁層が破壊され、放電が開始する。このとき結露水は帯電し、また、液滴表面において、表面に発生した静電気力は表面張力を超え、微細な粒子が発生する。さらに対向電極139がプラス側のため、帯電した微細ミストは引き寄せられ、微細粒子がさらにレイリー分裂により超微粒化され、ラジカルを含んだ数nmレベルの目視できない電荷をもったナノレベルの微細ミストが対向電極139に引き寄せられ、その慣性力により、貯蔵室に向けて、微細ミストが噴霧される。
なお、霧化電極136から微細ミストが噴霧されるとき、イオン風が発生する。このとき、湿度供給口135より、新たに高湿な空気が霧化部131に流入するため、連続して噴霧することができる。
発生した微細ミストは、下段収納容器119内に噴霧されるが非常に小さい微粒子のため拡散性が強く、上段収納容器120にも微細ミストは到達する。噴霧される微細ミストは、高圧放電で生成するため、マイナスの電荷を帯びている。野菜室107内には青果物である野菜の中でも緑の菜っ葉ものや果物等も保存されており、これらの青果物は蒸散あるいは保存中の蒸散によってプラスの電荷をもつ。よって、霧化されたミストは、野菜の表面に集まりやすく、野菜表面に付着したナノレベルの微細ミストは、OHラジカルなどのラジカルと微量ではあるがオゾンなどを多く含んでおり、殺菌、抗菌、除菌などに効果がある。さらに、酸化分解による農薬除去や抗酸化によるビタミンC量などの栄養素の増加を野菜に促す。
また、扉118を閉じ、野菜室107に微細ミストが行き渡り野菜への付着・吸収や、野菜室107の温度を目的温度にするための冷却器112により冷却された低湿度の風の流入などにより、徐々に湿度が低下していき、霧化電極136が結露しない状態が発生する。
この結露しない状態のとき、省エネルギーのために電圧印加部132への通電を停止する。通電を停止する判定方法としては、湿度センサ等を用い湿度により結露可能かを判断する方法、霧化電極136に液滴がある放電時のみ流れる電流の有無で結露水がなくなったことを判断する方法、所定時間の経過で判断する方法などがある。放電電流の有無は結露水がなくなったことを確実に判定できるためより安定した霧化を実現でき、所定時間の経過による判断では、制御手段146を実現するものとして一般的なマイコンの標準的な機能であるタイマを用いることで、新たな構成が必要なく省材料での実現が可能となる。
放電電流の検知方法としては、電流センサを用いたり、電流経路に抵抗を設け、その抵抗の両端の電圧を測定するなどがある。これらの値はアナログもしくはデジタルの値どちらでも構わず、アナログであれば値の変化の仕方から動作を決定できるため、より精度よく制御でき、デジタルであれば閾値を設け、閾値を超えたかどうかで霧化を停止すればよく、より単純な制御となる。また、この閾値には一般的にヒステリシスが設けられノイズには反応しないように設定される。
放電電流を検知する方法であれば、金属ピン133に水滴が付着したことも検知可能となるが、常時通電では消費電力が大きくなるため、結露可否判定手段であるドアスイッチ140からの信号が結露可能であるときから、放電電流を検知する。
また、冷蔵庫100の実使用状態を考慮したとき、使用される環境、開閉動作、食品収納状態により、野菜室107の湿度状況、加湿量は変化するので霧化電極136に結露する量が過剰になることも想定でき、場合によれば、霧化電極136全体を覆うほどの液滴になり、放電による静電気力が表面張力を勝ることができず、霧化できない可能性がある。
過剰結露を検知は、湿度センサを用い霧化動作を行っている際の湿度の状態を検知し、湿度が所定値以上で湿度の上昇が無い場合に過剰結露と判定する方法や、定期的に結露の有無を放電電流の検知などで判定し、扉118を開いたときに結露しているかを判定し、結露していれば過剰結露として判定する方法などがある。
このとき金属ピンヒータ158を通電することにより霧化電極136を加熱することにより、付着している水滴の蒸発を促進させ、過剰結露を防止し、継続的・安定的に霧化を行うことができる。
また、過剰結露を検知しない場合に金属ピンヒータ158を通電しながら過剰結露した状態であっても霧化動作させ、霧化されなくなった時点で金属ピンヒータ158の通電を停止することで、過剰結露の状態から蒸散が促進され、短時間で霧化可能な状態に遷移する。結露水が無くなり、霧化が不可能な状態を放電電流などの検知で、金属ピンヒータを停止することで、金属ピンの温度上昇を低く抑えられ、霧化状態にすばやく復帰できる。
また、タイマにより霧化時間を決定するものに関しても、金属ピンヒータを所定時間1だけ通電し過剰結露していたとしても過剰結露が解消させ、所定時間1経過後に所定時間2の間に霧化動作せず結露するのを待ち、所定時間2の経過後に霧化動作を所定時間3の間だけ行うなどで、過剰結露を検知することなく安定した霧化を行うことができる。
このように、霧化電極136を直接冷却もしくは加熱することなく、電極接続部材である金属ピン137を冷却もしくは加熱することで間接的に霧化電極136の温度調節をすることができ、電極接続部材133が霧化電極136よりも大きな熱容量を有することで、調節手段の温度変化が霧化電極に直接的に大きな影響を与えることを緩和し、霧化電極の温度を調整することができ、霧化電極の負荷変動を抑え、安定した噴霧量のミスト噴霧を実現することができる。
また、霧化電極136に対向する位置に配された対向電極139とを備え、霧化電極136と対向電極139間に高圧電位差を発生させる電圧印加部132を有することで、霧化電極136近傍の電界が安定に構築できることによって微粒化現象、噴霧方向が定まり、収納容器内に噴霧する微細ミストの精度をより高めることができ、霧化部131の精度を向上させることができ、信頼性の高い静電霧化装置130置を提供することができる。
さらに、電極接続部材である金属ピン137は熱緩和部材を介して冷却もしくは加温されるので、上記のように霧化電極136を金属ピン137で間接的に温度を変化させるものにさらに、熱緩和部材である断熱材128を介して二重構造で間接的に温度を変化させることができ、霧化電極136が極度に冷却もしくは加温されることを防ぐことができる。霧化電極136が極度に冷却されると、それに伴い結露量が多大となり霧化部131の負荷の増大による静電霧化装置130への入力の増大および霧化部131の霧化不良が懸念されるが、こういった霧化部131の負荷増大による不具合を防ぐことができ、適切な結露量を確保することができ、低入力で安定的なミスト噴霧を実現することができる。
また、霧化電極136が極度に加熱されると、電圧印加部および霧化部周辺の貯蔵室温度が急激に上がり、電気部品の故障や収納物の温度上昇による冷却不良等の不具合が発生するが、こういった霧化部131の温度上昇による不具合を防ぐことができ、適切な結露量を確保することができ、低入力で安定的なミスト噴霧を実現することができる。
また、霧化電極136を電極接続部材と熱緩和部材とを介して二重構造で間接的に温度調節することで、調節手段の温度変化が霧化電極に直接的に大きな影響を与えることをさらに緩和することができるので、霧化電極の負荷変動を抑え、安定した噴霧量のミスト噴霧を実現することができる。
また、霧化部が取り付けられている奥面仕切り壁111は、貯蔵室側の一部に凹部111aがあり、この凹部111aに凸部133aを有した霧化部が挿入されることによって、熱緩和部材として貯蔵室の仕切り壁を構成する断熱材128を用いることができ、特別な熱緩和部材を備えることなく断熱材の厚みを調整することで霧化電極が適度に冷却されるような熱緩和部材を備えることができ、霧化部131をより簡単な構成にすることができる。
また、凹部111aに霧化部131および凸部133aを有する金属ピン137を挿入することで、霧化部をガタツキなく確実に仕切り壁に取り付けることができると共に、貯蔵室である野菜室107側への出っ張りを抑えることができ、人の手にも触れにくいので安全性を向上させることができる。
また、貯蔵室である野菜室107の奥面仕切り壁111を挟んだ外側に霧化部131が出っ張らないので、風路面積に影響を与えず、風路抵抗を増加させることによる冷却量の低下を防ぐことができる。
また、野菜室107の一部に凹部があり、そこに霧化部131が挿入されていることにより、青果物や食品などを収納する収納量に影響することがなく、また、電極接続部材を確実に冷やすとともに、それ以外の部分については、断熱性が確保できる壁厚が確保できるのでケース内の結露を防止することができ、信頼性を向上することができる。
また、電極接続部材である金属ピン137は、ある程度の熱容量を確保できているので冷却風路からの熱伝導の応答を緩和することができるので、霧化電極136の温度変動を抑制することができ、また蓄冷の働きを有することになるので、霧化電極136の結露発生の時間を確保し、凍結も防止することができる。さらに、良熱伝導性の金属ピン137と断熱材を組み合わせることにより損失なく良好に冷熱を伝導することができ、さらに金属ピン137と霧化電極136の接合部の熱抵抗を抑えているので霧化電極136と金属ピン137の温度変動が良好に追従する。また、接合に関しても湿度が侵入することができないので、長期的に熱接合性が維持される。
また、貯蔵室が高湿環境下にあり、その湿度が金属ピン137に影響する可能性があるので、金属ピン137は耐腐食性、耐錆性の性能を持ったアルマイト処理コーティングを行っているので、さび等が発生せず、表面熱抵抗の増加が抑制され、安定した熱伝導が確保できる。
なお、金属ピン137を耐腐食性、耐錆性の金属材料で構成してもアルマイト処理と同様の作用・効果がある。
さらに、霧化電極136表面が金メッキを用いているので、霧化電極先端の放電による磨耗が抑制され、これにより、霧化電極136先端の形状が維持できるので、長期に噴霧することが可能となり、また、その先端の液滴形状も安定する。
なお、霧化電極136表面をニッケルメッキ、白金メッキとしても同様の作用・効果がある。
以上のように、本実施の形態1においては、断熱区画された貯蔵室と、前記貯蔵室内にミストを噴霧させる霧化部と、前記霧化部は、電位差を発生させる電圧印加部と、前記電圧印加部に電気的に接続された霧化電極に空気中の水分を結露させて前記貯蔵室にミストとして噴霧するものであって、前記霧化部への結露の可否を判定する結露可否判定手段と、前記結露可否判定手段の結果が結露可能ならば前記電圧印加部を動作させ、結果が結露不可ならば前記電圧印加部を停止する制御手段とを有したことにより、外気の流入や野菜などの蒸散による水分から結露水を集めることができるときのみ動作させることができ、確実に抗菌作用のあるミストの噴霧を行うことができる。
さらに、結露可能な時のみ動作させることとなるので、霧化部の信頼性の向上と、省エネルギーをはかることができる。
さらに、水道水ではなく結露水を用いるためミネラル成分や不純物がないため、保水材を用いたときの劣化や目詰まりによる保水性の劣化を防ぐことができる。
さらに、超音波振動による超音波霧化ではないので、水の欠損による圧電素子の破壊、その周囲部材の変形の心配がなく、また、貯水タンクが不必要であり、入力も小さいので庫内の温度影響が少ない。
さらに、電圧印加部が収納されている部分についても奥面仕切り壁に埋め込まれて、冷却されているので基板の温度上昇を抑えることができる。これにより、貯蔵室内の温度影響を少なくすることができると同時に基板の信頼性も向上する。
また、本実施の形態では貯蔵室が貯蔵室ドアを備え、前記結露可否判定手段が前記貯蔵室ドアの開閉の状態を検知する手段とし、開から閉に状態が遷移したときを結露可能としたことにより、ドアを開け暖気が流入し庫内の重量絶対湿度が上昇したときに霧化動作することとなるので、より簡便な構造で容易かつ確実に霧化電極に結露させることができ、信頼性を向上させることができる。
また、必要最低限の動作となるので、更なる省エネルギー、省材料をはかることができる。
なお、本実施の形態の結露可否判定手段を、前記貯蔵室内の湿度を検知する湿度センサとすることにより、結露の可否を細かく判定できるため、より精度よく霧化部の制御を行うことができる。
また、霧化電極の付着する水量を調整する調整手段と、霧化電極に接続された電極接続部材を有し、調整手段によって前記電極接続部材を冷却または加熱することで間接的に前記霧化電極の温度調整を行うとしたことにより、霧化電極を直接冷却することなく、電極接続部材を冷却することで間接的に霧化電極を零区客することができ、電極接続部材が霧化電極よりも大きな熱容量を有することで、調整手段の温度変化が霧化電極に直接大きな影響を与えることを緩和し、霧化電極の温度を調整することができ、霧化電極の負荷変動を抑え、安定した噴霧量のミスト噴霧を実現することができる。
また、調整手段は冷却手段と加熱手段を有することにより、容易に霧化電極の温度を調整することができ、安定した霧化を実現するための霧化電極に付着する水量を適切な範囲に調整することがより容易に行うことができる。
また、冷却手段が冷蔵庫の冷凍サイクルで生成された冷却源で生成された冷気であることにより、冷却手段として装置および電力を必要としないので、省材料かつ省エネルギーでのミスト噴霧を実現できる。
また、本実施の形態では冷却器と貯蔵室を断熱区画するための仕切り壁には、貯蔵室もしくは冷却器に冷気を搬送するための少なくとも1つの風路と、貯蔵室や他の風路と熱影響がないよう断熱された断熱材が備えられ、静電霧化装置の霧化電極の温度を可変するための手段は、熱伝導性のよい金属片であって、その金属片の温度を調節する手段は、冷却器で生成された冷気とヒータなどの加熱手段を用いて調整することにより、確実に霧化電極の温度を調整することができる。
なお、温度を調整する手段としてペルチェ素子を利用することで、任意のタイミングで温度を変化させることができるので、容易に霧化電極の温度調整が可能となる。さらに、ドアの開閉後に冷却を開始することで過剰結露が無くなり安定した霧化が可能となる。
また、本実施の形態では、各貯蔵室を冷却するための冷却器と、冷却器と貯蔵室を断熱区画するための仕切り壁を備え、静電霧化装置は仕切り壁に取り付けたことにより、貯蔵室内の間隙に設置することで収納容積を減少することがなく、また、奥面に取り付けられていることで容易に人の手に触れることができないので安全性も向上する。
また、本実施の形態では、静電霧化装置の霧化電極を冷却・加熱し、霧化電極先端の結露量を調整できる調整手段は、熱伝導性のよい金属片であって、その金属片を冷却・加熱する手段は、冷却器で生成された冷気が流れる風路からの熱伝導とヒータの加熱手段であるため、断熱材の壁厚とヒータ入力値を調整することで金属ピンおよび霧化電極の温度を簡単に設定することができ、また、断熱材を挟むことにより冷気の漏れがないのとヒータ等の加熱手段を備えているのでケース外郭などの着霜や結露などの信頼性低下を防止することができる。
また、本実施の形態では、静電霧化装置が取り付けられている奥面仕切り壁は、貯蔵室側の一部に凹部があり、そこに静電霧化装置の水量調整手段である金属片が挿入されていることにより、青果物や食品などを収納する収納量に影響することがなく、静電霧化装置を取り付けている部分以外は、断熱性が確保できる壁厚が確保できるのでケース内の結露を防止することができ、信頼性を向上することができる。
また、本実施の形態では、霧化部が、霧化電極と、前記霧化電極に対向する位置に配された対向電極とを備え、霧化電極と対向電極間に高圧電位差を発生させる電圧印加部を有したことにより、霧化電極近傍の電解が安定に構築できることによって微粒化現象、噴霧方向が定まり、収納容器内に噴霧する微細ミストの精度をより高めることができ、霧化部の精度を向上させることができる。
なお、本実施の形態では霧化電極に対向する位置に配された対向電極を備えるものとしたが、霧化部の対向する貯蔵室側に基準電位部にアースされた部分を備え、電圧印加部は霧化電極と前記保持部材との間に電位差を発生させることにより、特に対向電極を持たなくても、貯蔵室側の一部にアースされた部材を備えることで、霧化電極と電位差を発生させて、ミスト噴霧を行うことができ、より簡単な構成で安定的な電界が構成されることにより安定的に前記霧化部からミストを噴霧することができる。