JP2009172995A - 熱可塑性樹脂被覆frp線条物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドロップ光ケーブル用テンションメンバなどとして用いられる熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の熱可塑性樹脂被覆厚みを薄くして外径を細径化した熱可塑性樹脂被覆FRP線条物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】有機合成繊維からなる補強繊維11束に未硬化の熱硬化性樹脂組成物を含浸させた後、所定形状に絞り成形した線条物の外周面に熱可塑性樹脂からなる被覆層を形成し、前記被覆層を冷却固化した後に、前記熱硬化性樹脂を硬化させ、しかる後被覆層の外径を整径してなる熱可塑性樹脂被覆FRP線条物6であって、前記未硬化の熱硬化性樹脂組成物が、当該熱硬化性樹脂100質量部に対して炭酸カルシウムを0.5〜3質量部含有してなることを特徴とする耐座屈性に優れた熱可塑性樹脂被覆FRP線条物6である。
【選択図】図2

Description

本発明は、ノンメタリック型のドロップ光ケーブル用テンションメンバなどとして用いられる外径を細径化した熱可塑性樹脂被覆FRP線条物及びその製造方法に関するものである。
情報化社会が到来し、インターネットなどの伝送情報容量の増大化に伴い、ビル、住宅など加入者へ光ファイバケーブルを敷設するFTTH化が急速に進展している。
FTTH用ドロップ光ファイバケーブルとして、テンションメンバ(以下、TMということがある。)に金属線を使用したものが提案されているが、雷によるサージングを回避するためにアースが必要となり、アース工事の手間と工事費用が嵩み、各家庭への普及において問題があった。
そこで、金属線のTMに代えてFRP(繊維強化合成樹脂)線などのノンメタリックTMを使用することによりアース工事が不要となるノンメタリック型のドロップ光ファイバケーブルが検討され、現在、このノンメタリック型のドロップ光ファイバケーブルが主流となっている。
本出願人は、ノンメタリック型のドロップ光ファイバケーブルとして、熱可塑性樹脂製被覆層の内周とFRP抗張力体の外周とが、アンカー接着しているFRP製の抗張力体(TM)と、光ファイバ心線と、前記被覆付FRPTMと前記光ファイバ心線とを一括して熱可塑性樹脂で被覆する本体被覆部とを有し、被覆付きFRPTM外周と、本体被覆部とが、相互に融合接着し、結果的に本体被覆部とFRP抗張力体が、アンカー接着しているものを特許文献1で提案した。
また、本出願人らは、ドロップ光ファイバケーブルを製造する際に、本体被覆部又は被覆付FRP製抗張力体の被覆部が発泡する現象を解消するため、ドロップ光ファイバケーブル用FRP製抗張力体においてFRP部の残存スチレンモノマー量を、0.03重量%以下に制限することを特許文献2で提案した。
また、特許文献2に示されているように、被覆付FRP抗張力体において、熱可塑性樹脂被覆層表面は整径加工されるが、その外径精度は、レーザー外径測定器による表面凹凸度を2〜3/100mm以下とすることが、本体被覆時の発泡トラブルの発生を防止するために望ましいことも知得された。
このような表面凹凸度とするためには、特許文献3に示されているように、被覆付FRP製抗張力体を予熱ダイス、整形ダイスに通して外皮(表面被覆層)を切削する方法が用いられていた。
しかし、前述の残存スチレン濃度を下げるため、長い高温蒸気硬化槽の温度を150℃程度にし、かつ生産速度を30m/分や50m/分に増速すると、被覆層に用いたポリエチレン系樹脂の溶融物がガイド類などの接触箇所に蓄積し、それらが熱可塑性樹脂被覆FRP線条物素線に異常部として付着するというトラブルが発生し、これらの異常部が、予熱ダイス部で過大抵抗を生じ、線条物の切断や、被覆の剥がれの原因となり、途中切断を余儀なくされる事象が多く発生した。
また、最近ドロップ光ファイバケーブル製造工程における生産効率の向上などの要請から、長尺品(25km、50kmなど)のTMが求められている。
しかし、前述の如く、被覆付FRP製抗張力体の製造条件はより厳しい条件となっているので、長い硬化槽中で、そのシャッターやガイドに溶融した熱可塑性樹脂が溜まり、これが走行する素線に付着するなどして、素線径より極端に径大の異物となる場合があり、これが被覆破れなどの整径トラブルとなって、長尺品歩留まりの低下原因となっている。
特に、ドロップ光ファイバケーブル用TMの熱可塑性樹脂被覆外径は、0.6〜0.8mmと非常に細く、FRP外径が0.4mmまたは0.5mmであるため、被覆樹脂の肉厚が0.15mmであり、整径によって精度を出す際に、特に前述の素線径より極端に径大の異物による被覆破れなどの整径トラブルが発生して、表面状態の良好な製品を25kmや50kmなどの長尺で製造することが難しかった。
さらに、近年、ドロップ光ケーブルにクマゼミが産卵管を突き刺し、光ファイバに損傷を与える事故が多発し、その対策として、光ファイバ心線の両側にポリアミド樹脂テープを防護壁として設ける構造が採用された。しかし、ドロップ光ケーブルの外形寸法は、従来通りであることから、テンションメンバの一層の細径化が求められた。また、ドロップ光ケーブルは、難燃性を求められており、支持線、テンションメンバ、光ファイバ心線、防護壁を一体に被覆する本体被覆樹脂として難燃性ポリエチレンが採用されている。この難燃化に伴い、1)難燃性ポリエチレンの溶融樹脂粘度が高く、テンションメンバを細径化しないと難燃樹脂の回り込みが悪い、2)本体被覆時にテンションメンバが本体被覆の外側方向へ押出される傾向にあること、3)難燃化されてないテンションメンバの被覆樹脂により難燃の効果を減退させるという問題が発生した。
上記問題から、FRP外径は機能上0.4〜0.5mmのままで、熱可塑性樹脂被覆外径が0.55〜0.6mm、すなわち被覆厚みが0.05〜0.75mmの製品の開発を要請された。
なおドロップ光ファイバケーブルは、支持線と分岐した後で屋内配線として使われることが多いため、テンションメンバとして用いられるFRP線条体には小径に曲げても座屈しない耐座屈性が必要とされ、この開発においても、現行レベルのφ5mm未満の最小曲げ直径が必要とされていた。
この耐座屈性について補足説明する。一般に、ロッド状のFRP線条体を曲げた場合、曲げ中心の外側の補強繊維部分には引張り歪が、内側の繊維部分には圧縮歪がかかる。特に、圧縮歪領域では、繊維に座屈が生じ、繊維自体が波打った形状になろうとする。特に有機系繊維の場合、引張り領域の破断による影響よりも圧縮領域の座屈の影響が大きく、有機系繊維のFRPロッドの折れは、座屈折れが主であるということができる。
この点から、アラミド繊維等の有機系繊維を補強繊維とするFRPロッドにおいては、特に耐座屈性が要求される。
熱可塑性樹脂被覆FRP線条物に関する従来の製造方法において、熱可塑性樹脂被覆層は、未硬化状FRPが硬化するまでは、「型」としての機能を有するため、始めから被覆を薄くすると、1)FRPの形状(真円性)が保てなくなる、2)硬化槽を通過するとき、槽内面に当たっているので薄いと破れることがある、3)被覆層の吐出量が少なくなるため、同じ速度で生産すると被覆切れが起きやすくなる、4)ポリエチレンに含まれる異物やゲルの影響を受けやすくなる、5)被覆を削るという整径工程において、均一に切削するのは、薄いほど困難であるという事情があった。
以上、従来においては、熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の熱可塑性樹脂被覆厚みを0.02〜0,1mm程度に薄くして外径を細径化した熱可塑性樹脂被覆FRP線条物及びその製造方法についての提案はなされていない。
特開2004−163501号公報 特開2005−172939号公報 特公昭63−58691号公報 特公昭63−2772号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ドロップ光ケーブル用テンションメンバなどとして用いられる熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の熱可塑性樹脂被覆厚みを薄くして外径を細径化した、耐座屈性に優れた熱可塑性樹脂被覆FRP線条物及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、芳香族ポリアミド繊維束に熱硬化性樹脂100質量部に対して炭酸カルシウムを0.5〜3質量部含有した未硬化状の熱硬化性樹脂を含浸させることにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)有機合成繊維からなる補強繊維束に未硬化の熱硬化性樹脂組成物を含浸させた後、所定形状に絞り成形した線条物の外周面に熱可塑性樹脂からなる被覆層を形成し、前記被覆層を冷却固化した後に、前記熱硬化性樹脂を硬化させ、しかる後被覆層の外径を整径してなる熱可塑性樹脂被覆FRP線条物であって、前記未硬化の熱硬化性樹脂組成物が、当該熱硬化性樹脂100質量部に対して炭酸カルシウムを0.5〜3質量部含有してなることを特徴とする耐座屈性に優れた熱可塑性樹脂被覆FRP線条物、
(2)直径が0.7mm以下である前記(1)記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物、
(3)熱可塑性樹脂被覆層の厚みが0.02〜0.1mmである前記(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物、
(4)熱硬化性樹脂がビニルエステル樹脂である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物、
(5)有機合成繊維の引張弾性率が360cN/dtex以上で、かつ、破断時における伸度が3.5%以上である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物、
(6)有機合成繊維が芳香族ポリアミド繊維である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物、
(7)熱可塑性樹脂が直鎖状低密度ポリエチレンである前記(1)〜(6)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物、及び
(8)有機合成繊維からなる補強繊維束に未硬化状の熱硬化性樹脂を含浸させた混合物を所定形状に絞り成形して未硬化状線条物とし、これを溶融した熱可塑性樹脂で被覆し、該被覆樹脂を冷却固化した後、これを加圧蒸気硬化槽に導入して前記熱硬化性樹脂を硬化させ、しかる後熱可塑性樹脂被覆層の外径を整径してなる熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の製造方法であって、前記未硬化状の熱硬化性樹脂100質量部に対して炭酸カルシウムを0.5〜3質量部含有させることを特徴とする耐座屈性に優れた熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の製造方法、
を提供するものである。
本発明の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物は、細径化が要請されているクマゼミ対策用テープが配置されたドロップ光ケーブルのテンションメンバとして有効に使用できる。
また、被覆熱可塑性樹脂層厚みを薄くするので、原料費の低減、単位重量減による取扱い性の向上、荷材費、輸送費、及び保管費の低減等を図ることができる。
さらに、本発明の製造方法は、前記の特徴を有する熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の長尺品を安定して製造でき、生産性と、歩留まり(収率)の向上を図ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物は、有機合成繊維からなる補強繊維束に未硬化の熱硬化性樹脂組成物を含浸させた後、所定形状に絞り成形した線条物の外周面に熱可塑性樹脂からなる被覆層を形成し、前記被覆層を冷却固化した後に、前記熱硬化性樹脂を硬化させ、しかる後被覆層の外径を整径してなる熱可塑性樹脂被覆FRP線条物であって、前記未硬化の熱硬化性樹脂組成物が、当該熱硬化性樹脂100質量部に対して炭酸カルシウムを0.5〜3質量部含有してなることを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の実施の形態について添付図面を参照にして詳細に説明する。図1は、本発明の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物(被覆付FRP)をテンションメンバ(TM)として用いたドロップ光ファイバケーブルの一実施例を示している。同図に示したドロップ光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線2,3と、被覆付FRPTM6と、支持線7、及び光ファイバ心線2、3の両側にクマゼミ対策用防護壁としてのポリアミド樹脂製テープ10を備えている。光ファイバ心線2,3は、中心に上下に隣接するようにして配置されている。被覆付FRPTM6は、有機合成繊維強化熱硬化性樹脂製のFRP4を、熱可塑性樹脂製の被覆層5で被覆した円形断面に形成されていて、一対の被覆付FRPTM6が、光ファイバ心線2,3の上下に所定の間隔を置いて、これを挟むようにして、同軸上に配置されている。支持線7は、一方の被覆付FRPTM6の上方に配置されていて、光ファイバ心線2,3、被覆付きFRPTM6および支持線7、及びポリアミド樹脂製テープ10は、熱可塑性樹脂製の本体被覆部8により一括被覆した構成を備えている。
被覆付FRPTM6は、FRP抗張力体4に熱可塑性樹脂製の被覆層5を施したものであり、FRP抗張力体4の外周と被覆層5の内周とは、相互にアンカー接着している。
アンカー接着を得るためには、特許文献4に記載された方法、すなわち、補強繊維束に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させてなる未硬化状補強芯部を、溶融した熱可塑性樹脂で被覆し、その後直ちに該熱可塑性樹脂の被覆層を冷却固化した後、これを加圧高温蒸気の硬化槽に導いて、補強芯部と該被覆層の界面部分を軟化、流動状態で接触させつつ該熱硬化性樹脂を加熱硬化させ、引続いて被覆熱可塑性樹脂を冷却する方法で得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物6は、φ5mm未満の最小曲げ直径を確保する点、及びドロップ光ケーブル本体樹脂被覆時の難燃樹脂の回り込みを確保する観点から、直径が0.7mm以下であることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂被覆層が必要以上の厚みを有していると難燃性の阻害要因となるため、被覆層5は、整径後に被覆厚み0.02〜0.1mmであることが好ましい。これに伴って、未硬化状FRPの溶融被覆冷却後の直径(素線径)が0.70〜0.85mm、被覆厚みが概ね0.05〜0.1mm程度とすることが、内部の熱硬化性樹脂の硬化工程における連続硬化金型的機能を発現させ、より真円に近いFRPを得る観点などから望ましい。
本発明の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の製造方法が適用できる熱可塑性樹脂被覆FRP線条物に使用できる補強繊維としての有機合成繊維としては、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール(PBT)繊維等を挙げることができる。
また、これらの有機合成繊維は、引張弾性率が360cN/dtex以上で、かつ、破断時における伸度が3.5%以上であるものが好ましい。
引張弾性率が360cN/dtex以上であれば、光ファイバ心線を保護するための抗張力を有しており、破断時の伸度が3.5%以上であればFRPが曲がり難くなることが少なく、ドロップ光ファイバケーブル化後の取り扱いや配線工事等に支障のない、十分な耐座屈性能を保有できる。
さらにより好ましい引張弾性率は、480cN/dtex以上である。
使用する有機合成繊維としては、構成する単繊維径が10〜15μmで、複数のヤーンを合撚していない、いわゆるマルチフィラメント状のものが望ましく500〜2000dtexが使用される。この場合、番手の大きいもの、つまり2000dtexを超える補強繊維を用いた場合、FRPとした際の真円度に悪影響を及ぼし、後の熱可塑性樹脂による薄肉被覆成形工程において、均一な被覆を行うことが難しくなる。また、単糸の引き揃えが悪くなり、FRP化した際に引張性能が不十分となるおそれがある。一方、500dtex以下のヤーンも市販されているが、工程が煩雑となる上、コスト上昇につながり経済的でない。
また、有機合成繊維は、細径化及び軽量化を目的として使用されてきた実績から芳香族ポリアミド繊維が好ましい。芳香族ポリアミド繊維としては、メタ系、パラ系に大別されその種類を問わないが、例えば、東レ・デュポン株式会社から販売されているポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(商品名「ケブラー」)、帝人株式会社から販売されているパラ系アラミド繊維「テクノーラ」及び「トワロン」等のアラミド繊維を例示できる。
FRP抗張力体4の補強繊維の体積含有率は、要求される物性により決定されるが、より細径化を目的とする本願発明においては、概ね50〜70Vol.%程度が望ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物において、補強繊維としての有機合成繊維の結着に使用できる熱硬化性樹脂は、テレフタル酸系又はイソフタル酸系の不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート樹脂など)またはエポキシ樹脂などが一般的であり、これらに硬化用触媒などを添加して使用されるが、とりわけビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート樹脂など)が耐熱性などの物性の点から好ましい。
炭酸カルシウムの平均粒径は、樹脂含浸槽での沈降や熱可塑性樹脂被覆破れの防止、FRP部での均一分散性等の観点から、3μm以下のものが好ましい。
炭酸カルシウムの添加量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.5〜3質量部である。添加量が0.5〜3質量部の範囲であれば、熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の外径変動率が低く、最小曲げ特性を備え、光ドロップケーブルのテンションメンバとして使用可能である。
未硬化状補強芯部の被覆層6に用いる熱可塑性樹脂は、本体被覆部8の熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂から選択される。また、被覆付FRPTMの製造工程において、FRP部の外周の状態や、被覆熱可塑性樹脂層の偏肉等が確認し易い点から、透明な熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
さらに、被覆層5に用いる熱可塑性樹脂は、FRP抗張力体4とのアンカー接着構造を得るため、熱硬化性樹脂の加熱硬化時に少なくとも内周が、溶融状ないし軟化状態を呈することが望ましく、硬化温度110〜150℃の範囲に融点または軟化点を有する、ポリオレフィン系樹脂がより好適である。
アンカー接着の度合いは、被覆層5に用いた熱可塑性樹脂からのFRP抗張力体4の引抜力が10N/10mm以上であることが好適である。
被覆層5の厚みを、整径後に0.02〜0.1mm程度の厚みとするには、薄膜成形性の良い樹脂が望ましく、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが好適である。
LLDPEを用いる場合には、次ぎの様な特性を有するものを用いることがより好ましい。その特性とは、JIS K6760によるMFRが1〜4g/10min、密度0.920〜0.940g/cm3、JIS Z1702による引張試験において、引張強度が30 MPa以上であり、1%モジュラスが150〜250 MPaの範囲の値を有するものが好ましい。また、MFRが1〜4g/10minの範囲にある異なるMFRの2種の樹脂を混合して使用してもよい。
次に本発明の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の製造方法について、図2を参照して説明する。
要求される抗張力や耐曲げ性などに応じて選択された有機合成繊維からなる補強繊維11をFRP層の繊維体積含有率に応じて必要本数準備し、これを未硬化状熱硬化性樹脂が収納された含浸槽12中に通して補強繊維に未硬化状熱硬化性樹脂を含浸し、引続いてこれを、透孔の最終内径が得ようとするFRP部の外径と同径でこの内径に向かって順次縮径する複数の絞りノズル13に通して所定の径に絞り成形した未硬化状線条物の外周に、溶融押出機14より被覆用熱可塑性樹脂を環状に押出して被覆し、これを冷却水槽15に導いて表面の熱可塑性樹脂被覆層を冷却固化し、次いで、両端がシールされた加圧蒸気硬化槽16に挿通して、熱可塑性樹脂被覆層を溶融軟化状態とし、熱硬化性樹脂との界面において圧力下流動接触状態を経て内部の熱硬化性樹脂を硬化し、以後、冷却水槽17で冷却された被覆付きFRP素線6'とした後、整径装置18により所定の製品径に整径し、外径検査装置19を経て巻取り装置によりボビン20に巻き取られる。
整径のための製造装置18は、図3に示すようにベースブロック21に予熱用金型ブロック22、第1の整径用金型ブロック23、第2の整径用金型ブロック24がそれぞれの間に介挿された断熱材層25を介して密接配置されている。各金型ブロック22,23,24内にはヒーター26が埋設され、さらに供給される被覆付きFRP素線6'の挿通方向に沿ってダイス31,32,33が配設されている。
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
本実施例について、図2を引用して説明する。補強繊維束11として破断伸度3.6%、引張弾性率490cN/dtexのパラ系アラミド繊維(東レ・デュポン製:ケブラー29、単糸径12μm、1670dtex)のマルチフィラメント1本を用い、これをビニルエステル樹脂(昭和高分子製、R3130)100質量部と、熱硬化性触媒として化薬アクゾー社製の商品名「カドックスBCH50」4質量部、及び「カヤブチルB」1質量部の混合触媒、及び日東粉化工業株式会社製炭酸カルシウム(NS#200、平均粒径約2.0μm)を1質量部添加した未硬化の熱硬化製樹脂含浸槽12に導き、補強繊維束に熱硬化製樹脂を含浸した。引き続いて、内径を段階的に小さくした絞りノズル13に導いて、未硬化状樹脂が含浸された補強繊維束を絞り成形し、外径が0.490mmの細径線条物を得、これを溶融押出機14のクロスヘッドダイ(200℃)に通して、LLDPE(日本ユニカー製、NUCG5225/NUCG5361=1:1ブレンド品)により、被覆厚み約0.13mmで環状に被覆し、直ちに冷却水層15に導いて、表面の被覆部を冷却固化した。
引き続いて、このLLDPE被覆未硬化線状物を入口及び出口に加圧シール部を設けた長さ36mの加圧蒸気硬化槽16に50m/minの速度で導いて150℃(0.4Mpa)で硬化し、被覆外径が約0.77mmの熱可塑性樹脂被覆FRP線条物素線として、最終内径が0.605mmの整径ダイスが装着された整径装置18に連続して供給して被覆外径が0.60mmの熱可塑性樹脂被覆FRP線条物を得た。FRP部の補強繊維含有率は63Vol.%であった。
得られた熱可塑性樹脂被覆FRP線条物に対し、次の方法で最小曲げ直径を測定した。すなわち試料を円弧状に曲げ、曲げ径を小さくしていき、亀裂、折れの生じる曲げ直径(内径)を各6回測定し、その最大値を最小曲げ直径とした。この時得られた最小曲げ直径は4mmであり、耐座屈性に優れていることを確認できた。
これをレーザー外径検査器19に通して全長検査を行い、所定のプラスチック製ボビン20に巻き付けて50kmの長さを有する熱可塑性樹脂被覆FRP線条物製品を得た。
50km製造に要する時間は1000分(16.7時間)であり、この間のレーザー外径検査器19による外径変動率は3.3%であった。
実施例2
実施例1と同一の条件で50km/本の定長品の連続生産を1ヶ月間行ったところ、製造は極めて安定しており、定長品を85%以上の確率で製造することができた。
比較例1
炭酸カルシウムを添加しないこと以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂被覆FRP線条物を製造したところ、被覆直後の被覆切れ、硬化槽内あるいは整径での被覆破れが断続的に発生して、50kmの連続生産は不可能であった。
被覆破れは、未硬化状FRPにおける変形、被覆樹脂の偏肉、または整径ノズルでの整径(削り)むらによるものであった。レーザー外径検査器19による外径変動率は6.5%であった。
比較例2
炭酸カルシウムの配合を4質量部とした以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂被覆FRP線条物を製造した。
得られた熱可塑性樹脂被覆FRP線条物について、最小曲げ直径、連続生産性、整径性を評価した結果、連続生産性や整径性は問題なかったが、最小曲げ直径が大きく、耐座屈性に劣るものであった。
実施例3
炭酸カルシウムの配合を2.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂被覆FRP線条物を製造した。
得られた熱可塑性樹脂被覆FRP線条物について、最小曲げ直径、連続生産性、整径性を評価した結果、連続生産性や整径性に問題なく、最小曲げ直径も良好な結果であった。
実施例及び比較例の評価結果を合わせて表1に示す。
なお、表1において、耐座屈性、連続生産性、及び整径性の評価は以下に示すとおりである。
・耐座屈性:○=最小曲げ直径が5mm未満である。×=最小曲げ直径が5mm以上である。
・連続生産性:○=連続生産により50km巻きの製品を安定して製造できる。◎=50km巻きの製品を連続して1ヶ月間、安定して製造できる。×=50km巻きの製品を安定して製造することが困難である。
・整径性:○=50km巻きの製品製造時に整径トラブルの発生がない。×=50km巻きの製品製造時に整径トラブルが発生し、50km巻きの連続生産が不可能である。
Figure 2009172995
本発明の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物は、細径化が要請されているクマゼミ対策用テープが配置されたドロップ光ケーブルのテンションメンバとして有効に利用できる。
また、被覆熱可塑性樹脂層厚みを薄くするので、原料費の低減、単位重量減による取扱い性の向上、荷材費、輸送費、及び保管費の低減した経済的なドロップ光ケーブルのテンションメンバ等として利用できる。
さらに、本発明の製造方法は、前記の特徴を有する熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の長尺品を安定して製造でき、生産性と、歩留まり(収率)の向上を図ることができる方法として利用できる。
本発明の製造方法により得られた熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の使用例の説明図である。 本発明の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の製造方法の工程例の説明図である。 本発明の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の製造に用いられる整径装置の構成例の説明図である。
符号の説明
1 ドロップ光ファイバケーブル
2、3 光ファイバ心線
4 FRPテンションメンバ(抗張力体)
5 熱可塑性樹脂被覆層
6 熱可塑性樹脂被覆FRP線条物(被覆付きFRPTM)
6' 熱可塑性樹脂被覆FRP線条物素線
7 支持線
8 本体被覆層
10 ポリアミド樹脂補強テープ
11 補強繊維
12 含浸槽
13 絞りノズル
14 溶融押出機
15、17 冷却水槽
16 加圧蒸気硬化槽
18 整径装置
19 外径検査装置
20 巻取りボビン
21 ベースブロック
22 予熱用金型ブロック
23、24 第1、第2整径用金型ブロック
25 断熱材
26 ヒーター
28 熱電対
31、32、33、40 ダイス
34 ピンゲージ
35 ボルト

Claims (8)

  1. 有機合成繊維からなる補強繊維束に未硬化の熱硬化性樹脂組成物を含浸させた後、所定形状に絞り成形した線条物の外周面に熱可塑性樹脂からなる被覆層を形成し、前記被覆層を冷却固化した後に、前記熱硬化性樹脂を硬化させ、しかる後被覆層の外径を整径してなる熱可塑性樹脂被覆FRP線条物であって、前記未硬化の熱硬化性樹脂組成物が、当該熱硬化性樹脂100質量部に対して炭酸カルシウムを0.5〜3質量部含有してなることを特徴とする、耐座屈性に優れた熱可塑性樹脂被覆FRP線条物。
  2. 直径が0.7mm以下である請求項1記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物。
  3. 熱可塑性樹脂被覆層の厚みが0.02〜0.1mmである請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物。
  4. 熱硬化性樹脂がビニルエステル樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物。
  5. 有機合成繊維の引張弾性率が360cN/dtex以上で、かつ、破断時における伸度が3.5%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物。
  6. 有機合成繊維が芳香族ポリアミド繊維である請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物。
  7. 熱可塑性樹脂が直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂被覆FRP線条物。
  8. 有機合成繊維からなる補強繊維束に未硬化状の熱硬化性樹脂を含浸させた混合物を所定形状に絞り成形して未硬化状線条物とし、これを溶融した熱可塑性樹脂で被覆し、該被覆樹脂を冷却固化した後、これを加圧蒸気硬化槽に導入して前記熱硬化性樹脂を硬化させ、しかる後熱可塑性樹脂被覆層の外径を整径してなる熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の製造方法であって、前記未硬化状の熱硬化性樹脂100質量部に対して炭酸カルシウムを0.5〜3質量部含有させることを特徴とする、耐座屈性に優れた熱可塑性樹脂被覆FRP線条物の製造方法。
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