特許文献1の技術は、圧力流体が主要な技術的要素となっており、特許文献2の技術は、芯部材が主要な技術的要素となっている。特許文献1及び2の技術を利用して金属管を扁平化加工しようとすると、これらの技術的要素のために、装置全体の製造コストや金属管の扁平化加工コストが高くなってしまう。このため、上下型等の2個のプレス型だけにより、又は2個のプレス型を主要な技術的要素にして、金属管を窪み部が発生することなく扁平化加工できる技術を開発することが求められる。
本発明の目的は、上下型等の2個のプレス型だけにより、又は2個のプレス型を主要な技術的要素にして、金属管を窪み部が発生することなく扁平化加工できるようになる装置及び方法、並びに金属管製品を提供するところにある。
本発明に係る金属管の扁平化加工装置は、互いに対向する2個のプレス型を有し、管中心軸線に関する垂直断面が円形となっている金属管を前記2個のプレス型で加圧することによって前記金属管を扁平化加工する金属管の扁平化加工装置において、前記2個のプレス型のうちの少なくとも一方のプレス型は、前記金属管の表面の一部となっている第1部位をこの金属管の中心に向かって加圧する第1加圧部と、この第1加圧部を間に挟んで前記金属管の円周方向両側にある加圧部であって、前記第1部位から前記金属管の内側方向へずれたこの金属管の表面の第2部位を、前記第1部位の側へ向かう加圧成分を生じさせて加圧する第2加圧部と、を備えていることを特徴とするものである。
この扁平化加工装置によると、2個のプレス型のうちの少なくとも一方のプレス型は、金属管の表面の一部となっている第1部位をこの金属管の中心に向かって加圧する第1加圧部と、この第1加圧部を間に挟んで金属管の円周方向両側にある加圧部であって、第1部位から金属管の内側方向へずれたこの金属管の表面の第2部位を、第1部位の側へ向かう加圧成分を生じさせて加圧する第2加圧部と、を備えているため、第1加圧部は金属管の第1部位をこの金属管の中心に向かって加圧するとともに、第2加圧部は、金属管の第2部位を第1部位の側へ向かう加圧成分を生じさせて加圧し、このように第2加圧部で加圧される金属管の第2部位は、第1部位から金属管の内側方向へずれたこの金属管の表面の部位となっているため、これらの第2加圧部の加圧力の前記加圧成分により、金属管の内側へ窪んだ窪み部が金属管に発生することを防止することができる。
そして、このように窪み部の発生を防止して金属管を扁平化加工するための作業は、前記2個のプレス型だけを用いて金属管を1回プレス加工するだけで終了することができ、このため、金属管の扁平化加工作業を効率的に行える。
また、本発明に係る扁平化加工装置において、前記2個のプレス型の金属管と対面する面を任意な形状とすることにより、扁平化加工作業後の金属管の断面形状を任意な形状に仕上げることができる。
前記一方のプレス型における金属管と対面する面を任意な形状の面とする一例は、この面を、金属管の前記垂直断面よりも大きい曲率半径となっている湾曲凹面を含む面とすることである。この例の場合には、湾曲凹面に第1加圧部と第2加圧部とを設けることができる。そして、この例の場合において、湾曲凹面は1個の曲率半径による凹面でもよく、複数の曲率半径による複数の面が組み合わされた凹面でもよい。
また、前記一方のプレス型における金属管と対面する面を任意な形状の面とする他の例は、この面を、少なくとも1個の平坦面を含む面とすることである。この例の場合には、この1個の平坦面に、第1加圧部と第2加圧部のうちの一方の加圧部を設けることができる。他方の加圧部は、前記一方のプレス型に形成した他の平坦面に設けてもよく、前記一方のプレス型に形成した湾曲凹面に設けてもよい。
第1加圧部と第2加圧部は、前記2個のプレス型のうちの1個のプレス型だけに設けてもよく、前記2個のプレス型の両方に設けてもよい。
第1加圧部と第2加圧部を前記2個のプレス型のうちの1個のプレス型だけに設ける場合には、残りのプレス型における金属管と対面する面は、例えば、管中心軸線に関する垂直断面が前記円形となっている金属管のこの垂直断面と同じ曲率半径の湾曲凹面で形成することができる。
第1加圧部と2加圧部を前記2個のプレス型の両方に設ける場合には、これらのプレス型の第2加圧部によって生ずる前記加圧成分の大きさは異なっていてもよく、同じであってもよい。これらの加圧成分の大きさが同じになっていると、金属管における前記2個のプレス型のそれぞれで扁平化加工される部分の断面形状を互いに対称形状にさせて、金属管を扁平化加工することができる。
また、本発明に係る金属管の扁平化加工装置は、前記2個のプレス型が金属管を扁平化加工しながらこの金属管を曲げ加工するための型になっている場合にも適用することができる。
このように前記2個のプレス型が金属管を扁平化加工しながらこの金属管を曲げ加工するための型になっている場合には、前述した第1加圧部と第2加圧部を金属管の曲げ加工されない非曲げ加工部分を加圧するための加圧部とし、前記2個のプレス型のうち、少なくとも曲げ加工によって圧縮される金属管の圧縮側と対面するプレス型を、金属管の表面の一部となっている第3部位をこの金属管の中心に向かって加圧する第3加圧部と、この第3加圧部を間に挟んで金属管の円周方向両側にある加圧部であって、第3部位から金属管の内側方向へずれたこの金属管の表面の第4部位を、第3部位の側へ向かう加圧成分を生じさせて加圧する第4加圧部と、を備えたものにし、この第4加圧部の加圧力の前記加圧成分を、第2加圧部の加圧力の前記加圧成分よりも大きくする。
金属管が曲げ加工されると、曲げ加工によって圧縮される金属管の圧縮側には、この曲げ加工による管中心軸線方向への圧縮力が生じるため、金属管の曲げ加工される曲げ加工部分は、前述した扁平化加工と併せて大きく圧縮されることになり、これにより、金属管には、金属管の内側へ窪んだ窪み部が一層発生しやすくなる。
しかし、前記2個のプレス型のうち、少なくとも曲げ加工によって圧縮される金属管の圧縮側と対面するプレス型を、上述のように、金属管の表面の一部となっている第3部位をこの金属管の中心に向かって加圧する第3加圧部と、この第3加圧部を間に挟んで金属管の円周方向両側にある加圧部であって、第3部位から金属管の内側方向へずれたこの金属管の表面の第4部位を、第3部位の側へ向かう加圧成分を生じさせて加圧する第4加圧部と、を備えたものとし、かつ、この第4加圧部の加圧力の加圧成分を、第2加圧部の加圧力の前記加圧成分よりも大きくしておくことにより、金属管の曲げ加工部分に金属管の内側への窪み部が発生することを防止しながら、この曲げ加工部分を含めて金属管を扁平化加工することができる。
このように前記2個のプレス型のうち、少なくとも曲げ加工によって圧縮される金属管の圧縮側と対面するプレス型に第3加圧部と第4加圧部を設ける場合にも、曲げ加工によって圧縮される金属管の圧縮側と対面するプレス型における金属管の曲げ加工部分と対面する面は、言い換えると、第3加圧部と第4加圧部とを備えている面は、任意な形状の面とすることができる。
その一例は、この面を、金属管の前記垂直断面よりも大きい曲率半径となっている湾曲凹面を含む面とすることである。この例の場合には、湾曲凹面に第3加圧部と第4加圧部とを設けることができる。そして、この例の場合において、湾曲凹面は1個の曲率半径による凹面でもよく、複数の曲率半径による複数の面が組み合わされた凹面でもよい。
また、第3加圧部と第4加圧部とを備えている面についての他の例は、この面を、少なくとも1個の平坦面を含む面とすることである。この例の場合には、この1個の平坦面に、第3加圧部と第4加圧部のうちの一方の加圧部を設けることができる。他方の加圧部は、曲げ加工によって圧縮される金属管の圧縮側と対面するプレス型に形成した他の平坦面に設けてもよく、このプレス型に形成した湾曲凹面に設けてもよい。
さらに、第3加圧部と第4加圧部は、前記2個のプレス型のうち、曲げ加工によって圧縮される金属管の圧縮側と対面するプレス型だけに設けてもよく、2個のプレス型の両方に設けてもよい。
第3加圧部と第4加圧部を、前記2個のプレス型のうちの曲げ加工によって圧縮される金属管の圧縮側と対面するプレス型だけに設ける場合には、残りのプレス型における金属管の曲げ加工部分と対面する面は、例えば、管中心軸線に関する垂直断面が前記円形となっている金属管のこの垂直断面と同じ曲率半径の湾曲凹面で形成することができる。
第3加圧部と第4加圧部を前記2個のプレス型の両方に設ける場合には、これらのプレス型の第4加圧部の加圧力の前記加圧成分の大きさは異なっていてもよく、同じであってもよい。これらの加圧成分の大きさが同じになっていると、金属管の曲げ加工部分における前記2個のプレス型のそれぞれで扁平化される部分の断面形状を互いに対称形状にさせて、金属管を扁平化加工することができる。
また、本発明に係る金属管の扁平化加工装置は、金属管の管中心軸線方向の一方の端面が当接し、この当接によってこの一方の端面が管中心軸線方向外側へ移動することを規制するための端面移動規制部を有していてもよい。そして、金属管の管中心軸線方向の他方の端部の外周面と対面する前記2個のプレス型のそれぞれの面は、管中心軸線に関する垂直断面が前記円形となっているこの他方の端部と同じ曲率半径の湾曲凹面で形成し、前記2個のプレス型による金属管の扁平化加工作業の終了時における前記他方の端部の外周面を、これらの湾曲凹面によって囲むようにしてもよい。
これによると、金属管を前記2個のプレス型で扁平化加工したときに、この扁平化加工によって生ずる金属管の材料の余肉のために、金属管の全長は管中心軸線方向に沿って延びることになるが、前記端面移動規制部に金属管の管中心軸線方向の一方の端面が当接しているため、この金属管の全長の延びは、管中心軸線方向の他方の側への延びとなって生ずる。このように金属管の全長が管中心軸線方向の他方の側へ延びた場合に、金属管の管中心軸線方向の前記他方の端部の外周面と対面する前記2個のプレス型のそれぞれの面が、管中心軸線に関する垂直断面が前記円形となっているこの他方の端部と同じ曲率半径の湾曲凹面で形成され、前記2個のプレス型による金属管の扁平化加工の終了時における前記他方の端部の外周面がこれらの湾曲凹面によって囲まれていることにより、前記他方の端部が前記2個のプレス型で扁平化加工されることはない。
これにより、全長が所定寸法よりも大きくなった金属管を、扁平化加工の終了後に管中心軸線と直交する方向に移動する切断具で切断して所定寸法とするときに、扁平化加工されていなくて前記円形の断面形状を維持している金属管の部分を切断することが可能となるため、この切断作業を、金属管を押し潰し変形させることなく円滑に行える。
このように扁平化加工装置に、金属管の管中心軸線方向の一方の端面が当接し、この当接によってこの端面が管中心軸線方向外側へ移動することを規制するための端面移動規制部を設ける場合には、前記2個のプレス型のうちの少なくとも1個のプレス型を、型本体と、この型本体に少なくとも一部が埋め込まれた加圧型とを含んで形成し、前記端面移動規制部を、この加圧型の少なくとも一部を埋め込むために前記型本体に形成された立上り壁としてもよい。言い換えると、端面移動規制部を、加圧型の少なくとも一部を埋め込むために型本体に形成した凹部や貫通孔等の立上り壁の部分を利用して形成してもよい。
また、本発明に係る金属管の扁平化加工装置は、前記2個のプレス型で金属管を扁平化加工するときに、この金属管の管中心軸線方向の一方の端部から金属管の内部へこの金属管の全長の途中まで挿入される芯部材を備えていてよい。
これによると、金属管の全長のうち、芯部材が挿入された長さ範囲について、金属管の断面形状を、前記2個のプレス型のプレス作用によって芯部材の形状に正確に対応した形状に成形することができる。そして、金属管の全長のうち、芯部材が挿入されない長さ範囲については、前記2個のプレス型によって扁平化加工することができるため、この扁平化加工装置は、前記2個のプレス型が主要な技術的要素となって構成され、芯部材は付随的な技術的要素となる。
以上のように、扁平化加工装置を芯部材を備えたものとする場合には、前記2個のプレス型のうちの一方のプレス型に、金属管に孔開け加工を行うための少なくとも1個のパンチ部材を設け、芯部材に、このパンチ部材をガイドするためのガイド孔を形成してもよい。
これによると、芯部材を、金属管に孔開け加工する際のパンチ部材をガイドするためのガイド部材としても利用することができる。
本発明に係る金属管の扁平化加工方法は、管中心軸線に関する垂直断面が円形となっている金属管を互いに対向する2個のプレス型で加圧することによって前記金属管を扁平化加工する金属管の扁平化加工方法において、前記2個のプレス型により、前記金属管の表面の一部となっている第1部位をこの金属管の中心に向かって加圧するための第1加圧工程と、前記2個のプレス型のうちの少なくとも一方のプレス型により、前記第1部位に対して前記金属管の円周方向両側の部位であって、前記第1部位から前記金属管の内側方向へずれたこの金属管の表面の第2部位を、前記第1部位の側へ向かう加圧成分を生じさせて前記金属管を加圧するための第2加圧工程と、を含んでいることを特徴とするものである。
この扁平化加工方法によると、2個のプレス型によって金属管の表面の一部となっている第1部位をこの金属管の中心に向かって加圧するための第1加圧工程に引き続いて、2個のプレス型のうちの少なくとも一方のプレス型により、第1部位に対して金属管の円周方向両側の部位となっている金属管の表面の第2部位を、第1部位の側へ向かう加圧成分を生じさせて加圧するための第2加圧工程が実施され、第2部位は、第1部位から金属管の内側方向へずれたこの金属管の表面の部位となっているため、第2加圧部に作用する加圧力の前記加圧成分により、金属管の内側へ窪んだ窪み部が金属管に発生することを防止しながら、この金属管を扁平化加工することができる。
そして、このように窪み部の発生を防止して金属管を扁平化加工するための作業は、2個のプレス型だけを用いて金属管を1回プレス加工するだけで終了することができ、このため、金属管の扁平化加工作業を効率的に行える。
また、本発明に係る金属管の扁平化加工方法には、芯部材を、金属管の管中心軸線方向の一方の端部から金属管の内部へこの金属管の全長の途中まで挿入するための芯部材挿入工程を設けてもよい。
さらに、この扁平化加工方法には、前記2個のプレス型のうちの一方のプレス型に少なくとも1個配置されていて、前記芯部材に形成されたガイド孔でガイドされるパンチ部材により、金属管に孔を開けるための孔開け工程を設けてもよい。
本発明に係る金属管製品は、以上説明した本発明に係る装置又は方法によって製造されたものである。
また、以上説明した本発明は、金属管の全長、すなわち、金属管の長さ方向の全体を扁平化加工する場合と、金属管の長さ方向の一部を扁平化加工する場合との両方について適用することができる。また、金属管は、扁平化加工される前に、曲げ加工や、金属管の長さ方向の一部の直径を大きくする拡径加工、金属管の長さ方向の一部の直径を小さくする縮径加工等の予備加工が行われていてもよい。また、扁平化加工される金属管は1本の管によるものでもよく、異径又は同径の複数本の管を直列に接合したものでもよい。
本発明に係る装置又は方法によって扁平化加工された金属管、言い換えると、金属管製品は任意な用途に用いることができる。その用途の一例は、車両のブレーキペダル用アームであり、他の用途は、車両のサスペンションアームであり、さらに他の用途は、二輪車のメインフレームである。
本発明に係る金属管製品が、車両のブレーキペダル用アームとして用いられる場合には、このアームは、空洞部が内部に残されて扁平化加工された金属管によって形成されている。
この空洞部は、金属管の全長に渡って連続していてもよく、金属管の全長のうちの一部だけに設けられていてもよい。後者の場合において、金属管の全長のうち、内部が空洞部となっていない長さ部分は、前記扁平化加工時と同時に押し潰されていてもよく、前記扁平化加工後に行われる作業によって押し潰されていてもよい。
また、車両のブレーキペダル用アームとして用いられる金属管は、上下方向の寸法が大きい大寸法部分と、この大寸法部分よりも上下方向の寸法が小さい小寸法部分とを有し、大寸法部分に、ブレーキペダル用アームの回動中心軸が水平に挿入される孔が形成されていることが好ましい。
これによると、ブレーキペダル用アームには、車両を制動させるためにブレーキペダルを下へ踏み込んだときの大きな荷重が作用し、この荷重によってブレーキペダル用アームに生ずる曲げモーメントは、ブレーキペダル用アームの回動中心軸が水平に挿入されている孔が形成された部分で最大となるが、この部分は、上下方向の寸法が小寸法部分よりも大きい大寸法部分となっており、この大寸法部分についての水平の中立軸に関する断面係数は、この大きな上下寸法のために大きくなっているため、上記曲げモーメントに対するブレーキペダル用アームの強度を大きくすることができる。
このようにブレーキペダル用アームに、上下方向の寸法が大きい大寸法部分と、この大寸法部分よりも上下方向の寸法が小さい小寸法部分とを設け、大寸法部分に、ブレーキペダル用アームの回動中心軸が水平に挿入される孔が形成する場合には、大寸法部分の左右方向に対面する2個の面は、互いに平行となった平坦面としてもよく、外側へ湾曲等して突出した突出面となっていてよい。
大寸法部分の左右方向に対面する2個の面を互いに平行となった平坦面とした場合には、これら2個の面を外側へ湾曲等させて突出させた突出面とした場合よりも、大寸法部分の上下方向の寸法を大きくできるため、この大寸法部分についての前記断面係数も大きくできる。
大寸法部分の左右方向に対面する2個の面を、外側へ湾曲等させて突出させた突出面とした場合には、この大寸法部分を、金属管の内部に挿入される芯部材を用いることなく、2個のプレス型による扁平化加工によって成形することができる。
本発明によると、上下型等の2個のプレス型だけにより、又は2個のプレス型を主要な技術的要素にして、金属管を窪み部が発生することなく扁平化加工できるようになるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1実施形態に係る金属管の扁平化加工装置となっているプレス装置の上下型10,13の部分を示す断面図である。2個のプレス型であるこれらの上下型10,13は、型本体11,14と、これらの型本体11,14に形成された凹部11A,14Aに全体が埋め込みセットされた加圧型12,15とを備えている。この実施形態に係る金属管1は、管中心軸線N1が真っ直ぐとなっていて、同じ直径が全長に渡って連続している直管であり、また、この金属管1は、図1のS2−S2線断面図である図2で示されているとおり、管中心軸線N1に関する垂直断面が円形となっている円管である。
図2で示されているように、上下型10,13の加圧型12,15における金属管1と対面する面、言い換えると、金属管1を加圧するための加圧面12A,15Aは、湾曲凹面となっており、これらの湾曲凹面は円弧面であって、金属管1の上記円形の垂直断面の曲率半径よりも大きい曲率半径で形成されている。そして、これらの加圧面12Aと15Aの曲率半径は同じである。金属管1は、図1で示されているように、上下型10,13が型開きしているときに下型13の加圧型15の加圧面15A上にセットされ、下降した上型10の型本体11が下型13の型本体14と当接する所定位置まで達することにより、金属管1は、図3で示されているように、加圧型12,15で扁平化加工される。
この扁平化加工は、最初に、金属管1の表面の一部となっている図2及び図3の水平方向中央部の最高部位1Aと最低部位1Bが、言い換えると、第1部位1A,1Bが加圧型12,15の加圧面12A,15Aで金属管1の中心に向かって加圧されることにより開始され、上型10が引き続いて下降することにより、上型10では、第1部位1Aに対して金属管1の円周方向両側の金属管1の表面の部位となっている第2部位1Cが加圧型12の加圧面12Aで加圧されるとともに、下型13では、第1部位1Bに対して金属管1の円周方向両側の部位となっている第2部位1Dが加圧型15の加圧面15Aで加圧される。
このようにして金属管1が加圧型12,15で扁平化加工される際には、図3で示されているとおり、金属管1の第1部位1A,1Bには、金属管1の中心に向かう鉛直の加圧力F1が作用し、金属管1の第2部位1C,1Dには、加圧面12A,15Aの曲率半径に対応して斜めの向きとなった加圧力F2が作用する。これらの加圧力F2は、加圧力F1によって加圧される第1部位1A,1Bの側へ向かう水平方向の加圧成分F2Hを有している。また、加圧面12A,15Aのうち、上記加圧力F1を発生させる部分は、上型10が下降を開始した後に最初に金属管1の第1部位1A,1Bを加圧する第1加圧部となっており、加圧面12A,15Aのうち、それぞれの第1加圧部1A,1Bを間に挟んで金属管1の円周方向両側にあって、上記加圧力F2を発生させる部分は、その次に金属管1を加圧する第2加圧部となっている。第2加圧部の位置は、上型10の下降が進行するにしたがい、第1部位1A,1Bから金属管1の円周方向へ離れる位置へ移行する。
以上のように金属管1が加圧型12,15で加圧されたときには、図22の場合と同様に、金属管1における加圧型12,15で加圧される円周方向長さは、これらの円周方向長さが当接する加圧型12,15の加圧面12A,15Aの箇所の長さよりも長いために、それぞれの第1部位1A,1Bを間に挟んだ金属管1の円周方向両側において、図23の場合と同様に、第1部位1A、1Bの側へ向かう圧縮方向の荷重が生ずることになる。しかし、金属管1には、それぞれの第1部位1A,1Bに対して金属管1の円周方向両側の部位となっている第2部位1C,1Dにおいて、上記加圧力F2が作用し、これらの加圧力F2は、第1部位1A,1Bの側へ向かう加圧成分F2Hを有しており、また、第2部位1C,1Dは、第1部位1A,1Bから金属管1の内側方向へずれた金属管1の表面の部位となっているため、第2部位1Cに作用する加圧力F2の加圧成分F2Hにより、金属管1の最高部位となっている第1部位1Aは加圧面12A側へ押し上げられ、第2部位1Dに作用する加圧力F2の加圧成分F2Hにより、金属管1の最低部位となっている第1部位1Bは加圧面15A側へ押し下げられる。このため、金属管1は、金属管1の内側へ窪んだ窪み部が発生することなく扁平化加工されることになる。
したがって、本実施形態によると、互いに上下に対向する2個のプレス型となっている上下型10,13に、金属管1を加圧する加圧面12A,15Aを湾曲凹面とした加圧型12,15を設けるだけで、金属管1を、窪み部が発生することなく所定厚さ寸法まで扁平化加工することができ、プレス装置には特別の部材、機器類を装備する必要がないため、プレス装置全体の製造コスト及び金属管1の扁平化加工コストを低減できる。
また、1個の金属管1についての扁平化加工作業は、上型10が下型13に対して1回上下動するだけで終了するため、この扁平化加工作業を効率的に行え、短時間で多数の金属管1を加工処理できることになる。
また、本実施形態では、上下型10,13に分かれて配置されている加圧型12,15の加圧面12A,15Aは、同じ曲率半径の湾曲凹面となっているため、金属管1を、管中心軸線N1に関する上下部分であって加圧面12A,15Aで成形される部分を対称形状にさせて、扁平化加工できることになる。
図4及び図5は、第2実施形態に係る上下型20,23を示す。この実施形態でも、上下型20,23は、型本体21,24と、これらの型本体21,24に形成された凹部21A,24Aに全体が埋め込みセットされた加圧型22,25とを備えているが、これらの加圧型22,25の加圧面22A,25Aは湾曲凹面で形成されておらず、金属管1の水平の直径方向中央の第1平坦面26,28と、これらの第1平坦面26,28に対して金属管1の水平の直径方向両側、言い換えると、金属管1の円周方向両側に設けられた第2平坦面27,29とで形成されている。上型20の加圧型22の第2平坦面27は、第1平坦面26から下り傾斜で傾いた傾斜面となっており、下型23の加圧型25の第2平坦面29は、第1平坦面28から上り傾斜で傾いた傾斜面となっている。
この実施形態では、上型20が下型23に向かって下降すると、最初に、金属管1の最高部位、最低部位となっている第1部位1A、1Bが加圧面22A,25Aの第1平坦面26,28で金属管1の中心に向かって加圧され、次に、上型20では、第1部位1Aに対して金属管1の円周方向両側の部位となっている第2部位1Cが加圧面22Aの第2平坦面27で加圧されるとともに、下型23では、第1部位1Bに対して金属管1の円周方向両側の部位となっている第2部位1Dが加圧面25Aの第2平坦面29で加圧される。この加圧状態が図5で示されている。
このため、この実施形態では、加圧面22A,25Aの第1平坦面26,28には、金属管1を最初に加圧する第1加圧部が存在し、加圧面22A,25Aの第2平坦面27,29には、第1加圧部を挟んで金属管1の円周方向両側にあって、金属管1を次に加圧する第2加圧部が存在している。また、第1加圧部で加圧される第1部位1A,1Bには、金属管1の中心に向かう鉛直の加圧力F3が作用し、第2加圧部で加圧される第2部位1C,1Dには、第2平坦面27,29の傾斜角度に対応して斜めの向きとなった加圧力F4が作用する。これらの加圧力F4は、第1部位1A,1Bの側へ向かう水平方向の加圧成分F4Hを有しており、そして、前述した実施形態と同じく、第2部位1C,1Dは、第1部位1A,1Bから金属管1の内側方向へずれている。
このため、この実施形態でも、加圧力F4の加圧成分F4Hにより、金属管1を、金属管1の内側へ窪んだ窪み部が発生することなく扁平化加工することができる。
また、この実施形態によると、上下型20,23の加圧型22,25の加圧面22A,25Aを第1平坦面26,28と第2平坦面27,29の組み合わせで形成でき、加圧型22,25にこれらの平坦面26,27,28,29を形成するための作業は、加圧型に湾曲凹面を形成するための作業よりも容易であるため、加圧型22,25を容易に製造することができる。
図6は第3実施形態を示す。この実施形態の上下型40,43も、型本体41,44と、これらの型本体41,44に形成された凹部41A,44Aに埋め込みセットされた加圧型42,45とを備えているが、これらの加圧型42,45は、金属管31を曲げ加工するための山部46,谷部47を備えている。このため、加圧型42,45は、凹部41A,44Aに埋め込まれた部分と、凹部41A,44Aから露出している部分とを有する。
図7は、金属管31における曲げ加工されない非曲げ加工部分の位置となっている図6のS7−S7線位置での金属管31の扁平化加工時を示す断面図であり、図8は、金属管31における曲げ加工される曲げ加工部分の位置となっている図6のS8−S8線位置での金属管31の扁平化加工時を示す断面図である。これらの図7と図8で示されているように、上下型40,43の加圧型42,45における金属管31と対面する面となっている加圧面42A,45Aは、図2及び図3の実施形態と同様に、湾曲凹面となっている。これらの湾曲凹面は、扁平化加工される前の金属管31の管中心軸線N2(図6を参照)に関する円形の垂直断面の曲率半径よりも大きい曲率半径で形成されている。
そして、図7と図8との比較で分かるように、金属管31の曲げ加工部分と対応する部分での加圧面42A,45Aの曲率半径は、金属管31の非曲げ加工部分と対応する部分での加圧面42A,45Aの曲率半径よりも小さくなっている。このように曲率半径が曲げ加工部分と非曲げ加工部分とで異なっている加圧面42A,45Aは、滑らかに連続する面として加圧型42,45に形成されている。
なお、この実施形態の金属管31は、図6で示されているように、予め実施された予備曲げ加工によって管中心軸線N2が少し曲がった曲管となっているが、この実施形態で曲げ加工されながら扁平化加工される金属管は、予備曲げ加工されていない直管でもよい。
この実施形態では、上型40が下型43に向かって下降すると、図7で示されている金属管31の非曲げ加工部分では、この非曲げ加工部分での金属管31の最高部位と最低部位になっている第1部位31A,31Bが、加圧型42,45の加圧面42A,45Aからの加圧力F5で金属管31の中心に向かって加圧され、次いで第1部位31A,31Bに対して金属管31の円周方向両側の部位となっている第2部位31C、31Dが、加圧型42,45の加圧面42A,45Aからの加圧力F6で加圧される。また、図8で示されている金属管31の曲げ加工部分でも、この曲げ加工部分での金属管31の最高部位と最低部位になっている第3部位31E,31Fが、加圧型42,45の加圧面42A,45Aからの加圧力F7で金属管31の中心に向かって加圧され、次いで、第3部位31E,31Fに対して金属管31の円周方向両側の部位となっている第4部位31G,31Hが、加圧型42,45の加圧面42A,45Aからの加圧力F8で加圧される。
このため、金属管31の非曲げ加工部分と対応する加圧面42A,45Aの部分には、金属管31を加圧力F5で加圧する第1加圧部と、加圧力F6で加圧する第2加圧部とが存在し、また、金属管31の曲げ加工部分と対応する加圧面42A,45Aの部分には、金属管31を加圧力F7で加圧する第3加圧部と、加圧力F8で加圧する第4加圧部とが存在する。
そして、第2部位31C,31Dは、第1部位31A,31Bから金属管1の内側方向へずれており、第4部位31G,31Hは、第3部位31E,31Fから金属管1の内側方向へずれている。
この実施形態でも、第2加圧部の加圧力F6と第4加圧部の加圧力F8は、加圧面42A,45Aの曲率半径に応じた斜めの加圧力となるため、加圧力F6は、第1部位31A,31Bの側へ向かう加圧成分F6Hを有し、加圧力F8は、第3部位31E,31Fの側へ向かう加圧成分F8Hを有する。そして、上述したように、金属管31の曲げ加工部分と対応する部分での加圧面42A,45Aの曲率半径は、金属管31の非曲げ加工部分と対応する部分での加圧面42A,45Aの曲率半径よりも小さいため、加圧力F8の加圧成分F8Hは、加圧力F6の加圧成分F6Hよりも大きくなっている。
図6において、金属管31は上下型40,43の加圧型42,45で下側へ凸形状となって曲げ加工されるため、金属管31の曲げ加工部分における上型40の加圧型42と対面する上側の部分49は、曲げ加工によって管中心軸線N2の方向へ圧縮される圧縮部分となっている。
この圧縮部分49は、非曲げ加工部分と同様に扁平化加工される部分にもなっているため、圧縮部分49には、扁平化加工による金属管31の円周方向への圧縮力と、曲げ加工による管中心軸線N2の方向への圧縮力とが生じ、このため、圧縮部分49は、非曲げ加工部分よりも金属管31の内側へ窪んだ窪み部が発生しやすい状態となっている。
しかし、この実施形態では、上型40の加圧型42で発生する加圧力F8の加圧成分F8Hは、加圧力F6の加圧成分F6Hよりも大きいため、このように大きく設定されている加圧成分F8Hにより、窪み部が生ずるのを防止しながら金属管31を扁平化加工できることになる。
また、本実施形態でも、上下型40,43の加圧型42,45の加圧面42A,45Aは、金属管31の曲げ加工部分において、曲率半径が同じになった湾曲凹面となっているため、金属管31の曲げ加工部分を、管中心軸線N2に関する上下部分を対称形状にさせて扁平化加工することができ、金属管31の非曲げ加工部分でも加圧面41A,45Aの曲率半径は同じであるため、金属管31の非曲げ加工部分でも、管中心軸線N2に関する上下部分を対称形状にさせて扁平化加工することができる。
図9及び図10は、図6、図7及び図8の実施形態と同じく、金属管31の一部を曲げ加工しながらこの金属管31を扁平化加工する第4実施形態を示し、図9は、図7に対応する図であり、図10は、図8に対応する図である。この実施形態では、上下型50,53の型本体51,54にセットされている加圧型52,55の加圧面52A,55Aは、複数の平坦面の組み合わせで形成されている。
すなわち、図9で示す金属管31の非曲げ加工部分と対応する部分における加圧面52A,55Aは、金属管31の水平の直径方向中央の第1平坦面56,58と、これらの第1平坦面56,58に対して金属管31の水平の直径方向両側に設けられた第2平坦面57,59とで形成されている。上型50の加圧型52の第2平坦面57は、第1平坦面56から金属管31の水平の直径方向に対して下り傾斜で傾いた傾斜面となっており、下型53の加圧型55の第2平坦面59は、第1平坦面58から金属管31の水平の直径方向に対して上り傾斜で傾いた傾斜面となっている。
また、図10で示す金属管31の曲げ加工部分と対応する部分における加圧面52A,55Aは、金属管31の水平の直径方向中央の第3平坦面60,62と、これらの第3平坦面60,62に対して金属管31の水平の直径方向両側に設けられた第4平坦面61,63とで形成されている。上型50の加圧型52の第4平坦面61は、第3平坦面60から金属管31の水平の直径方向に対して下り傾斜で傾いた傾斜面となっており、下型53の加圧型55の第4平坦面63は、第3平坦面62から金属管31の水平の直径方向に対して上り傾斜で傾いた傾斜面となっている。第1平坦面56,58と第3平坦面60,62は滑らかに連続し、第2平坦面57,59と第4平坦面61,63も滑らかに連続している。
そして、第3平坦面60,62に対する第4平坦面61,63の傾斜角度は、第1平坦面56,58に対する第2平坦面57,59の傾斜角度よりも大きくなっている。
この実施形態では、上型50が下型53に向かって下降すると、図9で示されている金属管31の非曲げ加工部分では、金属管31の最高部位と最低部位になっている第1部位31A,31Bが、加圧型52,55の第1平坦面56,58からの加圧力F9で金属管31の中心に向かって加圧され、次いで、第1部位31A、31Bに対して金属管31の円周方向両側の部位となっている第2部位31C、3Dが、加圧型52,55の第2平坦面57,59からの加圧力F10で加圧される。また、図10で示されている金属管31の曲げ加工部分でも、金属管31の最高部位と最低部位になっている第3部位31E,31Fが、加圧型52,55の第3平坦面60,62からの加圧力F11で金属管31の中心に向かって加圧され、次いで、第3部位31E,31Fに対して金属管31の円周方向両側の部位となっている第4部位31G,31Hが、加圧型52,55の第4平坦面61,63からの加圧力F12で加圧される。
このため、金属管31の非曲げ加工部分と対応する第1平坦面56,58の部分には金属管31を加圧力F9で加圧する第1加圧部が、第2平坦面57,59の部分には金属管31を加圧力F10で加圧する第2加圧部が、それぞれ存在し、また、金属管31の曲げ加工部分と対応する第3平坦面60,62の部分には金属管31を加圧力F11で加圧する第3加圧部が、第4平坦面61,63の部分には金属管31を加圧力F12で加圧する第4加圧部が、それぞれ存在する。第2加圧部で発生する加圧力F10は、第1部位31A,31Bの側へ向かう加圧成分F10Hを有し、第4加圧部で発生する加圧力F12は、第3部位31E,31Fの側へ向かう加圧成分F12Hを有する。
そして、第3平坦面60,62に対する第4平坦面61,63の傾斜角度は、第1平坦面56,58に対する第2平坦面57,59の傾斜角度よりも大きくなっているため、加圧力F12の加圧成分F12Hは、加圧力F10の加圧成分F10Hよりも大きい。また、第2部位31C,31Dは、第1部位31A,31Bから金属管1の内側方向へずれており、第4部位31G,31Hは、第3部位31E,31Fから金属管1の内側方向へずれている。
このため、この実施形態でも、図6、図7及び図8の実施形態と同様に、金属管31を、窪み部が生ずるのを防止しながら扁平化加工できることになる。
次に第5実施形態について説明する。図11は、この実施形態における扁平化加工前の金属管71を示し、図12は、扁平化加工後の金属管71’、言い換えると、この実施形態に係る金属管71の扁平化加工装置及び方法によって製造された金属管製品を示す。扁平化加工された金属管71’は、四輪車両のブレーキペダル用アームとして用いられるものである。
図11で示されているとおり、扁平化加工前の金属管71は、拡径加工によって直径が大きくなった大径部分72と、この大径部分72と滑らかに連続し、拡径加工されていない小径部分73とからなる。また、大径部分72は小径部分73に対して角度θ1で曲げ加工されており、小径部分73における大径部分72とは反対側の端部73Aは、角度θ1とは異なる方向に曲げ加工されている。これらの拡径加工や曲げ加工は、扁平化加工の前に予備加工として実施されている。また、扁平化加工前の金属管71における管中心軸線N3の方向の任意な位置において、金属管71の管中心軸線N3に関する垂直断面は、これまでの実施形態と同じく、円形となっている。
図12で示されているように、扁平化加工後の金属管71’は、大径部分72と、端部73Aを除く小径部分73の大部分とが扁平化加工されており、また、大径部分72と小径部分73との間は角度θ1よりも大きい角度θ2に曲げ加工されている。小径部分73の端部73Aを扁平化加工しない理由は、扁平化加工後の金属管71’を所定の全長とするために、管中心軸線N3と直交する方向へ移動する切断具74で金属管71’の端部73Aを切断する際に、端部73Aが扁平化されていると、この切断作業を実施することが困難になってしまうからであり、端部73Aの管中心軸線N3に関する垂直断面が円形に維持されていると、この端部73Aを切断具74で押し潰し変形させることなく容易に切断できるからである。
図13は、この実施形態に係る金属管71の扁平化加工装置となっているプレス装置の上下型80,83の部分を示す要部断面図であり、図14は、図13のS14−S14線矢視図、図15は、金属管71を扁平化加工した後の上下型80,83の部分の要部断面図である。図13で示されているように、プレス型である上下型80,83は、型本体81,84と、これらの型本体81,84に形成された凹部81A,84Aに埋め込みセットされた加圧型82,85とを備えている。これらの加圧型82,85の金属管71と対面する面は、金属管71の小径部分73の端部73Aと対面する部分82B,85Bを除き、金属管71を扁平化加工するために加圧する加圧面82A,85Aとなっている。
加圧型82,85の金属管71と対面する面のうち、小径部分73の端部73Aと対面する部分82B,85Bは、扁平化加工前のこの端部73Aの断面形状と曲率半径が同じになっている湾曲凹面である。このため、図15で示されているように、下降した上型80の型本体81が下型83の型本体84に当接して型締めがなされ、これによって金属管71の扁平化加工が終了したときには、端部73Aの外周面はこれらの湾曲凹面82B,85Bで単に囲まれた状態となっており、端部73Aは加圧型82,85で扁平化加工されないようになっている。
また、加圧型82,85は、金属管71の大径部分72を扁平化加工するための第1部分86,88と、端部73Aを除く小径部分73を扁平化加工するための第2部分87,89とを有し、第2部分87,89は、水平となっている第1部分86,88から上り傾斜で傾斜している部分となっている。これにより、金属管71は、扁平化加工されると同時に、大径部分72と小径部分73との間で角度θ2に曲げ加工されるようになっている。
また、この実施形態では、扁平化加工前の大径部分72の直径に対して、扁平化加工後の大径部分72の厚さ寸法は充分に小さくなるため、上型80が下型83に対して所定距離だけ下降して大径部分72の扁平化加工が所定程度まで進行したときに、下型80の加圧型85上にセットされている金属管71の大径部分72の内部に挿入されるようになっている芯部材90が、この実施形態のプレス装置に用意されている。この芯部材90は、例えば、上型80の上下動によって駆動されるスライドカム手段又は油圧シリンダ等による駆動手段で金属管71に向かって進退動するものとなっており、図13で示されているように、加圧型85を埋め込みセットするために下型83の型本体84に形成されている前記凹部84Aの芯部材90側の立上り壁84B及びこの立上り壁84Bの厚さ部分の内部には、芯部材90の進退動を案内するためのガイドブッシュ91が組み込まれている。
金属管71の上下型80,83による扁平化加工は、図13で示されているように、金属管71における管中心軸線N3の方向の一方の端面となっている大径部分72の端面72Aを上記立上り壁84Bに当接させることによって、金属管71を下型83の加圧型85上にセットした後に開始される。上型80が下降することにより、金属管71の大径部分72と、端部73Aを除く小径部分73は、加圧型82,85の加圧面82A,85Aによって扁平化加工され、大径部分72の扁平化加工は、金属管71の内部に芯部材90が挿入されて行われる。
この芯部材90の挿入は、上型80が下降を始めて金属管71の扁平化加工が始まった後に、芯部材90が端面72Aから金属管71の内部に挿入されることによって始まり、この後、加圧型82,85で大径部分72が所定に断面形状に成形される前までには、芯部材90は、金属管71の全長の途中までとなっている大径部分72の長さ範囲に挿入される。
また、金属管71の扁平化加工は、大径部分72と小径部分73との間で金属管71が角度θ2に曲げ加工されながら行われ、金属管71の曲げ加工部分と対応する加圧型82,85の加圧面82A,85Aの部分には、図7と図8の実施形態又は図9と図10実施形態と同様に、第3加圧部と第4加圧部が設けられている。また、金属管71の非曲げ加工部分となっている小径部分73と対応する加圧型82,85の加圧面82A,85Aの部分にも、図7と図8の実施形態又は図9と図10実施形態と同様に、第1加圧部と第2加圧部が設けられている。そして、第4加圧部で発生する加圧力には、第3加圧部の加圧力による加圧側へ向かう加圧成分があり、第2加圧部で発生する加圧力には、第1加圧部の加圧力による加圧側へ向かう加圧成分があり、第4加圧部の加圧力の加圧成分は第2加圧部の加圧力の加圧成分よりも大きいため、金属管71の曲げ加工部分は、金属管71の内側への窪み部が発生することなく、扁平化加工されて曲げ加工されることになる。
また、加圧型82,85の加圧面82A,85Aのうち、大径部分72と対応する部分は、金属管71の内面が芯部材90に接触するまで、この大径部分72を扁平化加工するための部分となっている。
以上の金属管71の扁平化加工と曲げ加工は、小径部分73の端部73Aを除く金属管71の全体を圧縮しながら行われるため、この圧縮のため、扁平化加工後の金属管71’は、金属管71の材料の余肉の移動によって管中心軸線N3の方向に全長が延びていることになる。本実施形態の金属管71の扁平化加工と曲げ加工は、金属管71における管中心軸線N3の方向の一方の端面72Aを上記立上り壁84Bに当接させて行われるため、金属管71の全長の延びは、この端面72Aが管中心軸線N3の外側方向に移動することを阻止させて行われることになる。
すなわち、本実施形態では、立上り壁84Bが、端面72Aが管中心軸線N3の外側方向に移動することを規制する端面移動規制部となっており、このため、金属管71の全長の延びは、管中心軸線N3の方向の他方の側への延びとなって生ずる。このように金属管71の全長が管中心軸線N3の方向の他方の側へ延びた場合に、延び側となってい小径部分73の端部73Aの外周面は、上記扁平化加工の終了時に、図15で示されているように、加圧型82,85の前述した湾曲凹面82B,85Bで囲まれており、これらの湾曲凹面82B、85Bの曲率半径は、扁平化加工前の金属管71の小径部分73の断面形状の曲率半径と同じであるため、端部73Aは、扁平化加工されない円形の断面形状をそのまま維持することになる。
このため、上下型80,83を型開きした後に取り出された扁平化加工後の金属管71’を適正な全長とするために、図12の切断具74で端部73Aを切断する作業を所定どおり容易に行える。
なお、上型80に切断具74を取り付けることにより、上型80の下降による金属管71の扁平化加工と同時に端部73Aの切断作業を行えるようにしてもよい。
図16は、金属管71についての扁平化加工及び曲げ加工を行うときに、金属管71の大径部分72に3個の孔の孔開け加工を行えるようにした第6実施形態を示す。この実施形態の上型80には、3個のパンチ部材92,93,94が下向きに取り付けられており、芯部材90には、パンチ部材92,93,94をガイドするためのガイド孔90A,90B,90Cが形成されている。このため、金属管1から扁平加工と曲げ加工で製造された金属管71’には、大径部分72において、これらのガイド孔90A,90B,90Cでガイドされて下降するパンチ部材92,93,94により、孔95,96,97が形成されている。
これにより、金属管71’を前述したブレーキペダル用アームとする場合に必要となる孔95,96,97の加工を、金属管71から金属管71’を製造するときに同時に行える。
なお、図16のパンチ部材92,93,94は、上型80の型本体81及び加圧型82に配置されているが、例えば、上型80に、型本体81と分離していてこの型本体81から遅れて下降する分離型を設け、この分離型に3個のパンチ部材を配置することにより、大径部分72が加圧型82,85と芯部材90とで所定の断面形状に成形された直後に、上記分離型の下降により、3個のパンチ部材で大径部分72に孔95,96,97を形成するようにしてもよい。
図17は、図16の実施形態で製造された金属管71’から作られた四輪車両のブレーキペダル用アーム100と、このアーム100に取り付けられたブレーキペダル110を示す平面図であり、図18は、これらのアーム100とブレーキペダル110の側面図である。アーム100は、金属管71’の小径部分73の端部73Aが前述した切断具74で切断されたものとなっており、この切断端部にブレーキペダル110が取り付けられている。そして、アーム100は、図17で示されているように、図16の加圧型82,85による曲げ加工により、図12で示した角度θ2に曲げ加工されている。この角度θ2により、アーム100に近接させて四輪車両に配置することが必要な部材、例えば、ステアリングシャフトのための配置スペースが確保される。
また、アーム100は、図18で示されているとおり、上下寸法が大きい大寸法部分101と、この大寸法部分101よりも上下寸法が小さい小寸法部分102とからなり、前述した扁平化加工により、大寸法部分101は上述した大径部分72で形成され、小寸法部分102は小径部分73で形成されている。また、この扁平化加工は、アーム100の内部に空洞部を残して行われ、この空洞部は、アーム100の全長に渡って連続している。大寸法部分101には前述した孔95,96,97が設けられ、孔95は、ブレーキ用マスターシリンダの倍力装置とアーム100とを連結するためのリンク部材111をアーム100に接続するために用いられ、孔96は、アーム100の水平の回動中心軸112を挿入するために用いられ、孔97は、回動中心軸112を中心に下向きに回動したときのアーム100に戻り力を付与するためのリターンばね113をアーム100に連結するために用いられる。
図19は、図18で示すアーム100の小寸法部分102におけるS19−S19線断面図であり、図20は、図18で示すアーム100の大寸法部分101におけるS20−S20線断面図である。図19で示されているように、小寸法部分102の左右方向に対面する2個の面102Aは、この小寸法部分102についての前述した扁平化加工により、外側へ突出した突出面となっているが、図20で示されているように、大寸法部分101の左右方向に対面する2個の面101Aは、この大寸法部分101についての前述した扁平化加工が、前記芯部材90に大寸法部分101の内面が接触するまで行われるものとなっているため、互いに平行となった平坦面となっている。
また、小寸法部分102の上下寸法がH1であるのに対して、大寸法部分101の上下寸法はH2となっており、H2はH1よりも大きい。アーム100には、四輪車両を制動させるためにブレーキペダル110を下へ踏み込んだときの大きな荷重が作用し、この荷重によってアーム100に生ずる曲げモーメントは、アーム100の回動中心軸112が水平に挿入されている孔96が形成された部分において最大となる。本実施形態では、この部分は、上下方向の寸法が小寸法部分102よりも大きい大寸法部分101となっており、これにより、大寸法部分101ついての水平の中立軸に関する断面係数を、小寸法部分102についての水平の中立軸に関する断面係数よりも大きくすることができるため、上記曲げモーメントに対するアーム100の強度を充分大きくすることができる。
図21は、別実施形態の大寸法部分101’を示す。この実施形態では、大寸法部分101’の左右方向に対面する2個の面101’Aは、図19の小寸法部分102の2個の面102Aと同じく、外側へ突出する突出面となっている。この実施形態によると、大寸法部分101’の上下寸法H3はH2よりも小さくなるが、大寸法部分101’を、金属管の全長の途中まで挿入される前述の芯部材90を用いることなく、成形することが可能となる。
なお、この実施形態において、大寸法部分101’に前記孔95,96,97を形成する作業は、前述した扁平化加工及び曲げ加工を行った後の後加工として行なう。