JP2009168229A - 転動装置用軌道部材の製造方法 - Google Patents

転動装置用軌道部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】車輪支持用転がり軸受ユニットの内部空間に水が浸入した場合にも、フレーキングの発生を有効に防止して長寿命化を図る事ができ、且つ、寿命のばらつきを抑えられる外輪2を、低コストで得られる製造方法を実現する。
【解決手段】上記外輪2を形成する為の素材として、非金属介在物の分布にばらつきを生じる、円柱状素材16を使用する。そして、第一工程として、この円柱状素材16に超音波探傷検査を行い、所定の大きさ以上の欠陥が存在しない円柱状素材16を選出する。次いで、第二工程として、選出された円柱状素材16のうちで、上記第一工程で清浄度を保証された部分であり、且つ、他の部分に比べて清浄度の高くなった部分のみから、外輪軌道10、10の表層部を形成する。最後に、第三工程として、これら各外輪軌道10、10の表層部を対象とした超音波探傷検査を行う。これにより、上記課題を解決する。
【選択図】図3

Description

この発明は転動装置(転がり軸受、転がり軸受ユニット、ボールねじ装置、リニアガイド装置等)を構成する軌道部材(転がり軸受の外輪及び内輪、転がり軸受ユニットの外径側軌道輪部材及び内径側軌道輪部材、ボールねじ装置のねじ軸及びボールナット、リニアガイド装置のレール及び移動体等)の製造方法の改良に関する。特に本発明は、車輪支持用転がり軸受ユニットや圧延機用ロールネック軸受、ウォータポンプ軸受等、内部に水が浸入し易い環境下で使用される転動装置の軌道部材を製造するのに好適である。
例えば自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する為に、図5に示す様な、車輪支持用転がり軸受ユニット1を使用する。この車輪支持用転がり軸受ユニット1は、独立式の懸架装置に支持する駆動輪(FF車の前輪、FR車及びRR車の後輪、4WD車の全輪)用の車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示している。上記車輪支持用転がり軸受ユニット1を構成する外径側軌道部材である外輪2は、外周面に形成した外向フランジ状の取付部3により、ナックル等の懸架装置に支持固定されて、使用時にも回転しない。この様な外輪2の内径側には、内径側軌道部材であるハブ4を、この外輪2と同心に設けている。
上記ハブ4は、ハブ本体5と内輪6とから成り、このうちのハブ本体5の中心部にはスプライン孔7を、軸方向外(軸方向に関して外とは、車両への組み付け時に幅方向外側になる側を言い、図5の左)端部外周面には、外向フランジ状の取付フランジ8を、それぞれ形成している。又、上記ハブ本体5の軸方向内(軸方向に関して内とは、車両への組み付け時に幅方向中央側になる側を言い、図5の右)端部には、かしめ部9を形成し、このかしめ部9により、上記内輪6の内端面を抑え付けている。車両への組み付け時に、上記スプライン孔7には、図示しない等速ジョイントに付属したスプライン軸を挿入し、上記取付フランジ8には、車輪を固定する。
又、上記外輪2の内周面に複列の外輪軌道10、10を、上記ハブ本体5の軸方向中間部外周面と上記内輪6の外周面とに内輪軌道11、11を、それぞれ形成している。そして、これら各外輪軌道10、10と内輪軌道11、11との間に転動体12、12を、それぞれ複数個ずつ設けて、上記外輪2の内径側に上記ハブ4を回転自在に支持している。尚、上記各転動体12、12は、それぞれ保持器13、13により、転動自在に保持している。又、図示の例では転動体12、12として玉を使用しているが、重量が嵩む車両用の転がり軸受ユニットの場合には、転動体としてテーパころを使用する場合もある。
更に、上記外輪2の軸方向外端部内周面と上記ハブ本体5の軸方向中間部外周面との間、並びに、この外輪2の軸方向内端部内周面と上記内輪6の軸方向内端部外周面との間に、それぞれシール装置14a、14bを設け、上記外輪2の内周面と上記ハブ4の外周面との間で、上記各転動体12、12を設置した内部空間15の軸方向両端開口を塞いでいる。これにより、この内部空間15への異物の浸入を防止すると共に、この内部空間15に存在するグリースの漏洩防止を図っている。
ところで、上述の様な車輪支持用転がり軸受ユニット1の場合、使用時に、上記各外輪軌道10、10、及び、上記各内輪軌道11、11に、上記各転動体12、12から高面圧下で繰り返しせん断応力が負荷される。この為、上記外輪、内輪各軌道10、11の表面及び表面下に、欠陥(Al2 3 やSiO2 等の酸化物系介在物及びTiN等のチタン系介在物に代表される非金属介在物や傷等)が存在すると、上記欠陥にせん断応力が集中し、この欠陥を起点としてフレーキング(早期剥離)を発生させる可能性がある。そして、この様に、上記外輪、内輪各軌道10、11にフレーキングが発生した場合には、上記外輪2や上記ハブ4(ハブ本体5、内輪6)の寿命が短くなり、延いては上記車輪支持用転がり軸受ユニット1が短寿命になると言った問題を生じる。この様な問題は、転がり軸受を始めとして、ボールねじ装置、リニアガイド装置でも同様に生じる。
この様な事情に鑑みて、例えば特許文献1には、完成品の軌道部材に対して超音波探傷検査を行う事で、軌道面の表層部(軌道面から転動体の平均直径の2%深さの範囲内)に存在する非金属介在物が、長さ500μm 未満となるものを選出して使用する事が提案されている。この様にして選出された軌道部材によれば、フレーキングの発生を有効に防止できるが、上記特許文献1の場合には、超音波探傷検査を、素材から完成品の軌道部材にまで加工した状態で初めて行う事としている為、歩留りが悪化し易く、製造コストの上昇を招くと言った問題を生じる。
これに対し、特許文献2には、完成品の軌道部材に対して超音波探傷検査を行うだけでなく、この軌道部材を造る為の素材に対しても超音波探傷検査を行う、軌道部材の製造方法が記載されている。具体的には、第一工程として、金属製の素材に超音波探傷検査を行い、この素材の単位体積(1.0×106 mm3 )あたりに存在する長さ0.5mm以上の非金属介在物の総長さが、80mm以下であるものを選出する。次いで、第二工程として、この様にして選出された素材に、所定の加工を施し、軌道面を有する軌道部材を形成する。そして最後に、第三工程として、この軌道部材に超音波探傷検査を行い、軌道面の表層部(軌道面から転動体の平均直径の2%深さの範囲内)に存在する全ての非金属介在物に関して、平方根長さが200μm 以下となるものを選出する。
この様な特許文献2に記載された製造方法によれば、上記第一工程で、要件を満たさない素材を、所定の加工を施す以前に不合格品として排除できる為、軌道部材にまで加工した後に廃材となるものの割合を少なくできる。従って、歩留りの低下を抑え、製造コストの上昇を抑えられる。但し、上記特許文献2に記載された製造方法により得られる軌道部材の場合にも、前述した車輪支持用転がり軸受ユニット1の様に、過酷な環境下で使用される用途に用いた場合には、フレーキングの発生を十分に防止できなくなる可能性がある。この理由は、以下の通りである。
即ち、上記車輪支持用転がり軸受ユニット1の周辺環境には、雨水、洗車時の水、泥水、更には水蒸気等の水分が存在する。この為、前述した様なシール装置14a、14bによっても、前記内部空間15への水の浸入を完全に防止する事は難しく、若干の水がこの内部空間15に浸入する可能性がある。そして、この内部空間15に水が浸入すると、この水は腐食反応によって水素となり、この水素が、前記外輪2及び前記ハブ4を構成する鋼中に浸入する可能性がある。この様に水素が浸入すると、当該部分が脆くなる為、前記外輪、内輪各軌道10、11の表層部に存在する、平方根長さが200μm 以下の非金属介在物もがフレーキングの起点となる可能性を生じる。
この様な水を原因として発生するフレーキングを防止する為に、例えば、前記第一工程及び前記第三工程で行う超音波探傷検査を、超音波の周波数を高くする等して行い、より清浄度の高い素材及び軌道部材を選出する(より小さな非金属介在物が含まれる素材及び軌道部材を不合格品として排除する)事が考えられる。但し、この様に、合否判定の基準となる欠陥の大きさを単に小さくした場合には、歩留りが悪くなり、製造コストの上昇を招く為、採用する事は難しい。又、上記素材として、予め清浄度の高いものを使用する事も考えられるが、この場合には、この素材を調達しにくくなったり、この素材の生産性が低下し、材料コストが上昇する等の問題を生じる為、やはり採用する事は難しい。
一方、特許文献3には、上述の様な超音波探傷検査を利用する事なく、非金属介在物の分布のばらつきを利用して、フレーキングの発生防止を図る、軌道部材の製造方法が記載されている。即ち、上記特許文献3に記載された製造方法の場合には、素材として円柱状の素材(円柱状素材)を使用する事で、非金属介在物が、外径寄り部分に比べて中心寄り部分に集中し易くなると言った特性を利用する。そして、上記円柱状素材の外周面からこの円柱状素材の外径寸法の30%深さの範囲内に存在する部分(円柱状素材の径方向で中心から半径の40%となる位置より外側の部分)から、軌道面の表層部を形成する事としている。
上述の様な特許文献3に記載された製造方法によれば、上記軌道面の表層部を、上記円柱状素材のうちで、非金属介在物が存在しにくくなる部分(清浄度の高い部分)を利用して形成できる。この為、上記円柱状素材として、全体の清浄度がそれ程高くないものを使用した場合にも、フレーキングの発生を有効に防止できる。
但し、上記特許文献3に記載された製造方法の場合には、非金属介在物の分布のばらつきを、円柱状素材毎に検査する事を意図していない為、形成される軌道面の表層部中に、当初想定していた以上の数(或は大きさ)の非金属介在物が含まれる可能性がある。又、上記円柱状素材から上記軌道部材にまで成形する過程(例えば鍛造加工や研削加工等)で、上記軌道面に傷や割れが生じたり、この軌道面の表層部に非金属介在物が出現する可能性もある。
尚、完成品の軌道部材に対しては、漏洩磁束探傷検査が広く行われているが、この漏洩磁束探傷検査では、水を原因とするフレーキングの起点となる様な小さな欠陥を検出する事は不可能である。この為、上述の様な原因で、上記軌道面の表層部に、水を原因とするフレーキングの起点となる様な小さな欠陥が存在した場合には、仮に漏洩磁束探傷検査を行った場合にも、この様な欠陥を有する軌道部材を排除する事はできない。従って、上記特許文献3に記載された製造方法により得られる軌道部材の場合には、フレーキングの発生を安定して防止する事が難しく、寿命にばらつきを生じる可能性がある。
特開2000−130447号公報 特開2005−201330号公報 特開2006−250317号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑み、転動装置の内部に水が浸入する等の過酷な環境下で使用した場合にも、フレーキングの発生を有効に防止して長寿命化を図る事ができ、且つ、寿命のばらつきを抑えられる軌道部材を、低コストで得られる製造方法を実現すべく発明したものである。
本発明の転動装置用軌道部材の製造方法は、互いに対向する面にそれぞれ軌道面を有する1対の軌道部材と、これら両軌道面同士の間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えた転動装置を構成する、上記両軌道部材のうちの少なくとも一方の軌道部材を、金属製の円柱状素材から造る為に利用する。
特に本発明の転動装置用軌道部材の製造方法の場合には、次の第一工程から第三工程を備える。
先ず、第一工程として、上記円柱状素材に超音波探傷検査を行う事により、この円柱状素材の外周面からこの円柱状素材の外径寸法の30%深さの範囲内に、所定の大きさ(例えば平方根長さが200μm )以上の欠陥(非金属介在物や傷等)が存在しないものを選出する。
次に、第二工程として、選出された円柱状素材に所定の加工(例えば鍛造加工)を施す事により、軌道面の表層部(例えば軌道面から転動体の平均直径の2%深さの範囲)が、上記円柱状素材のうちで、外周面からこの円柱状素材の外径寸法の30%深さの範囲内に存在する部分のみから形成された、軌道部材を得る。
最後に、第三工程として、得られた軌道部材に超音波探傷検査を行う事により、この軌道部材に形成された軌道面の表層部に、所定の大きさ(例えば平方根長さが180μm 、好ましくは150μm 、より好ましくは120μm 、更に好ましくは100μm )以上の欠陥が存在しないものを選出する。
又、上述した請求項1に記載した発明を実施する場合に好ましくは、例えば請求項2に記載した様に、次の(1)〜(3)の条件のうちの少なくとも1つの条件を満足させる。
(1)第三工程の超音波探傷検査で、軌道部材の軌道面に対して送波する超音波の入射角を、第一工程の超音波探傷検査で、円柱状素材の外周面に対して送波する超音波の入射角よりも大きくする。
(2)第三工程の超音波探傷検査で、軌道部材の軌道面に対して送波する超音波の周波数を、第一工程の超音波探傷検査で、円柱状素材の外周面に対して送波する超音波の周波数よりも高くする。
(3)第一工程の超音波探傷検査で、超音波を送波する為の探触子に印加する電圧(円柱状素材の外周面に対して送波する超音波の出力)を、第三工程の超音波探傷検査で、超音波を送波する為の探触子に印加する電圧(軌道部材の軌道面に対して送波する超音波の出力)よりも高くする。
上述した様な本発明の転動装置用軌道部材の製造方法によれば、転動装置の内部に水が浸入する等の過酷な環境下で使用した場合にも、フレーキングの発生を有効に防止して長寿命化を図る事ができ、且つ、寿命のばらつきを抑えられる軌道部材を、低コストで得られる。
即ち、本発明の場合には、素材として、非金属介在物の分布にばらつきを生じる円柱状素材を使用し、第二工程で、この円柱状素材のうちで清浄度の高くなった部分から、軌道面の表層部を形成する。この為、上記第二工程の前後に行う、第一工程及び第三工程の超音波探傷検査を、前述した特許文献2に記載された製造方法(の第一工程及び第三工程)の場合に比べて、清浄度の高い部分を対象に(探傷範囲として)行う事が可能となる。この為、上記特許文献2に記載された製造方法の場合に比べて、合否判定の基準となる欠陥の大きさを小さくする事による、歩留りの低下を抑えられる。従って、本発明の場合には、水を原因とするフレーキングの起点となる様な小さな欠陥を、上記第三工程での合否判定の基準とした場合にも、製造コストの上昇を十分に抑えられる。この結果、本発明の場合には、水を原因とするフレーキングの発生を有効に防止できて、長寿命化を図れる軌道部材を、低コストで得られる。
又、本発明の場合には、上述した様に、上記第二工程で、上記円柱状素材のうちで清浄度の高くなった部分のみから、上記軌道面の表層部を形成する為、この円柱状素材として、全体の清浄度がそれ程高くないものを使用できる。この為、材料コストの上昇を抑える事もできる。
又、本発明の場合には、上記軌道面の表層部を、上記第一工程で清浄度の保証された部分から形成するだけでなく、この軌道面の表層部を対象として、上記第三工程で超音波探傷検査を行う。この為、この軌道面の表層部の清浄度に関して、高い信頼性を確保できる。従って、本発明の場合には、前述した特許文献3に記載された製造方法の場合に比べて、フレーキングの発生を安定して防止でき、寿命のばらつきを抑えられる軌道部材を得られる。
更に、本発明の場合には、上記第一工程で、素材である円柱状素材に対して超音波探傷検査を行う為、上記第三工程の超音波探傷検査で、完成品である軌道部材が不合格品となる割合を低くする事ができる。この為、歩留りの低下を抑え、製造コストの上昇を抑えられる。
図1〜4は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の1例を示している。本例では、前記図5に示した様な、車輪支持用転がり軸受ユニット1を構成する外輪2を対象として、その製造方法を説明する。本例の場合、図3に示す様に、この外輪2を造る為の素材として、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)製で、外径寸法が130mmの円柱状素材16を使用する。そして、第一工程として、この様な円柱状素材16に超音波探傷検査を行い、この円柱状素材16の外周面からこの円柱状素材16の外径寸法の30%深さ(約39mm)の範囲内に、平方根長さで200μm 以上の欠陥(非金属介在物や傷等)が存在しない円柱状素材16を、合格品として選出する。この為に、本例の場合には、図1に示す様な、超音波探傷装置17を使用する。
この超音波探傷装置17は、超音波伝達媒体である水(防錆剤を含む)を貯留した水槽18と、探触子19と、探傷器20と、ワーク回転装置21と、探触子位置調節装置22と、モータコントローラ23と、制御器24とから構成される。この様な構成を有する超音波探傷装置17を用いて超音波探傷検査を行うには、先ず、上記円柱状素材16を、上記水槽18の底部に設けられた上記ワーク回転装置21上に載置する。次いで、上記探触子19を、上記探触子位置調節装置22により所定位置(例えば円柱状素材16の軸方向端部)に移動させて、上記探触子19の先端部を、上記円柱状素材16の外周面に対向させる。尚、この様に、この探触子19の先端部を、この円柱状素材16の外周面に対向させた状態で、この探触子19に就いても、上記水槽18内の水に浸漬する。
そして、上記制御器24からの指令に基づき、上記探傷器20から上記探触子19に所定の大きさの電圧を印加する(電圧信号を送信する)。これにより、この探触子19から上記円柱状素材16の外周面に向けて、上記電圧の大きさに応じた出力(出力レベル)の超音波(パルス波)を送波すると共に、エコー(反射波)をこの探触子19により受波し、このエコーを電圧信号に変換して、上記探傷器20に送信する。本例の場合には、この様な探傷作業を、上記円柱状素材16を、上記ワーク回転装置21により一方向に所定速度で回転させつつ、上記探触子19を、上記探触子位置調節装置22により上記円柱状素材16の軸方向(図1の左右方向)に移動させながら行う(走査する)。尚、上記ワーク回転装置21は、モータ25aにより回転駆動され、上記探触子位置調節装置22は、モータ25bにより駆動される。又、これら両モータ25a、25bは、上記モータコントローラ23により制御され、このモータコントローラ23は、PC等の制御器24への入力値により作動が制御される。
上記探傷器20では、上記探触子19に送信した電圧信号と、この探触子19から受信した電圧信号とを基に、上記円柱状素材16の外周面からこの円柱状素材16の外径寸法の30%深さの範囲の欠陥の有無、及び、欠陥が存在する場合にはその大きさを計測する。そして、この探傷情報を上記制御器24に送信する。この様にして、本例の場合には、上記円柱状素材16の外周面からこの円柱状素材16の外径寸法の30%深さの範囲内に、平方根長さで200μm 以上の欠陥が存在しない事を確認(保証)された円柱状素材16を、合格品として選出する。
尚、欠陥の平方根長さとは、欠陥の形状が線状(線状欠陥)である場合は、その長さLと幅Wとの積の平方根(L×W)1/2 を言い、欠陥の形状が粒状、球状又は塊状である(非線状欠陥)である場合には、その最大径(長径)D1 と最小径(短径)D2 との積の平方根(D1 ×D2 1/2 を言う。又、上述の様な第一工程では、上記探触子19として、指向性が高く、上記円柱状素材16の外周面の曲率の影響を受けにくい、焦点型の探触子を使用できる。又、この様な焦点型の探触子としては、周波数が5〜50MHz、振動子径が3〜20mmのものを使用できる。
ここで、上述の様な第一工程により選出された円柱状素材16に就いて、この円柱状素材16を構成する金属材料中に含まれる非金属介在物の分布状態(数)を、光学顕微鏡により確認した結果の1例を、図2に示す。尚、この図2は、実際に光学顕微鏡を用いて上記円柱状素材16の径方向各位置を観察し、観察領域が重複しない様に、各位置毎に、合計の観察面積が300mm2 になるまで、複数回観察する事により得られた結果を示している。横軸の「円柱状素材の径方向位置(%)」は、円柱状素材16の中心(0%)から外周面(100%)までの径方向位置に対応し、縦軸の「非金属介在物数(個)」は、観察面積300mm2 に存在する、直径10μm 以上の非金属介在物の数を表している。
上記図2からも明らかな様に、直径10μm 以上の非金属介在物は、上記円柱状素材16の中心寄り部分に多く存在し、この円柱状素材16の外径寄り部分には、あまり存在しない。これは、本例が、前記外輪2を造る為の素材として、一体押出加工により造られて、非金属介在物が中心寄り部分に集中し易くなると言った特性を有する、上記円柱状素材16を使用すると共に、上述した第一工程で、この円柱状素材16の外径寄り部分(外周面からこの円柱状素材16の外径寸法の30%深さの範囲)に、平方根長さで200μm 以上の欠陥が存在しないものを選出した為である。
従って、続く第二工程で、上記円柱状素材16のうちで外周面からこの円柱状素材16の外径寸法の30%深さの範囲(図2の40〜100%の範囲)に存在する部分のみから、上記外輪2のうちで、少なくとも外輪軌道10、10の表層部{外輪軌道10、10の表面から、転動体12、12(図5参照)の平均直径の2%深さの範囲を指し、以下、単に「表層部」と呼ぶ。}を形成する事で、上記各外輪軌道10、10の表層部中に含まれる非金属介在物の数を、十分に且つ確実に少なくできる事が確認できる。尚、上述の様に、上記各外輪軌道10、10の表層部の範囲を規制した理由は、これら各外輪軌道10、10に上記各転動体12、12から作用するせん断応力が最大となる深さが、これら各転動体12、12の平均直径の2%未満となる為である。
上述の様な第一工程により選出された上記円柱状素材16には、続く第二工程で、所定の加工を施す事により、上記外輪2を得る。特に本例の場合には、上記各外輪軌道10、10の表層部を、上記円柱状素材16のうちで、外周面からこの円柱状素材16の外径寸法の30%深さの範囲に存在する部分のみから形成する。この様な第二工程に就いて、以下、図3を参照しつつ説明する。
先ず、上記円柱状素材16に、軸方向に圧縮する据え込み加工を施して、同図の(b)に示した様な、軸方向寸法が短く且つ直径が大きい短円柱状の第一中間素材26を得る。次いで、この第一中間素材26に鍛造加工を施して、同図の(c)に示した様な、得るべき外輪2の大まかな形状を有する、第二中間素材27を得る。この第二中間素材27には、軸方向中間部外周面に取付部3を、軸方向中間部内周面に1対の外輪軌道10、10を、これら両外輪軌道10、10同士の間に隔壁部28を、それぞれ形成している。そして、この様な形状を有する上記第二中間素材27に、ピアス加工を施す事により、上記隔壁部28を打ち抜いて、同図の(d)に示す様な外輪2を得る。尚、上記両外輪軌道10、10部分には、必要とする旋削加工及び研削加工に加えて、焼き入れ処理を施す。
本例の場合には、上述の様な各工程を採用する事で、上記円柱状素材16の中心寄り部分(清浄度の低くなった部分)を構成する金属材料から、上述したピアス加工により除去される、上記隔壁部28を形成する様にしている。これにより、上記円柱状素材16の外径寄り部分(清浄度の高くなった部分)を構成する金属材料から、上記両外輪軌道10、10の表層部を含む、上記外輪2の大部分を形成している。この為に、本例の場合には、上記据え込み加工時に、上記第一中間素材26の外径寸法と軸方向寸法との比を調整すると共に、上記鍛造加工時に、上記連結部28の軸方向位置(形成位置)及び軸方向厚さ(肉厚)を調整している。この様に、本例の場合には、金属材料の移動位置を適正に規制し易い鍛造加工を利用する事で、上記両外輪軌道10、10の表層部を、前述した第一工程により清浄度を保証された部分(円柱状素材16のうちで外周面からこの円柱状素材16の外径寸法の30%深さの範囲に存在する部分)のみから確実に形成している。
尚、本例の場合には、上述の様なピアス加工の後、上記両外輪軌道10、10の表層部を対象とした超音波探傷検査を行う前に、これら両外輪軌道10、10に対して、旋削加工及び研削加工を施している。この理由は、これら両外輪軌道10、10の形状精度及び寸法精度を確保すると共に、後述する第三工程で、これら両外輪軌道10、10の表層部を対象とした超音波探傷検査を行う際に、これら両外輪軌道10、10に送波された超音波が乱反射する事を防止する為である。更に、この超音波探傷検査後に旋削加工及び研削加工を施す事で、非金属介在物等の欠陥が上記各外輪軌道10、10の表層部に新たに出現したり、この研削加工時にこれら各外輪軌道10、10に傷や割れ等の欠陥が生じる事を防止する為である。
上述の様な第二工程により、上記外輪2を形成した後は、第三工程として、この外輪2の超音波探傷検査を行う。そして、この外輪2に形成された上記各外輪軌道10、10の表層部に、平方根長さが100μm 以上の欠陥(非金属介在物や傷等)が存在しない外輪2を、合格品として選出する。この為に、本例の場合には、図4に示す様な、超音波探傷装置17aを使用する。
上記超音波探傷装置17aは、超音波伝達媒体である白灯油(防錆剤を含む)を貯留した液槽29と、探触子19aと、探傷器20aと、ワーク回転装置21aと、探触子位置調節装置22aと、モータ駆動用制御アンプ30と、位置合わせ制御アンプ31と、制御器24aとから構成される。この様な構成を有する超音波探傷装置17aを用いて超音波探傷検査を行うには、先ず、上記外輪2を、図示しない搬送装置を用いて、上記液槽29の底部に設けられた上記ワーク回転装置21aを構成する回転テーブル32上に、中心軸を鉛直方向に配置した状態で載置する。そして、上記探触子19aを、上記探触子位置調節装置22aにより所定位置に移動させて、この探触子19aの先端部を、上記外輪2の内周面に形成された片側の外輪軌道10(図4の上方位置の外輪軌道10)に対向させる。尚、この様に、上記探触子19aの先端部を、この外輪軌道10に対向させた状態で、この探触子19aに就いても、上記液槽29内の白灯油に浸漬する。
そして、上記制御器24aの指令に基づき、上記探傷器20aから上記探触子19aに所定の大きさの電圧を印加する(電圧信号を送信する)。これにより、この探触子19aから上記外輪軌道10に向けて、上記電圧の大きさに応じた出力(出力レベル)の超音波を送波すると共に、エコー(反射波)をこの探触子19aにより受波し、このエコーを電圧信号に変換して、上記探傷器20aに送る。本例の場合には、この様な探傷作業を、上記外輪2を、上記ワーク回転装置21aにより一方向に所定速度で回転させつつ、上記探触子19aを、上記探触子位置調節装置22aにより上記外輪軌道10の幅方向に回転又は揺動させながら行う。具体的には、上記探触子19aを、この外輪軌道10との間に一定の間隔を保持した状態で、この外輪軌道10の曲率に沿って回転又は揺動させる。
尚、上記ワーク回転装置21aは、モータ25cにより回転駆動され、このモータ25cは、上記モータ駆動用制御アンプ30により制御される。又、上記探触子位置調節装置22aは、上記探触子19aのX方向及びY方向への移動を自在とする為の1組の並進移動機構と、この探触子19aのZ方向への移動を自在とする為の昇降機構と、この探触子19aの揺動を自在とする為の揺動機構とを備え、これら各機構は、それぞれモータ25d〜25gにより駆動される。又、これら各モータ25d〜25gは、上記位置合わせ制御アンプ31によりそれぞれ制御されており、この位置合わせ制御アンプ31及び上記モータ駆動用制御アンプ30は、前記制御器24aへの入力値により作動が制御されている。
上記探傷器20aでは、上記探触子19aに送信した電圧信号と、この探触子19aから受信した電圧信号とを基に、上記外輪軌道10の表層部の欠陥の有無、及び、欠陥が存在する場合にはその大きさを計測する。そして、この探傷情報を上記制御器24aに送信し、この制御器24aに付属のディスプレイ等に表示する。
この様にして、本例の場合には、先ず、片側の外輪軌道10の表層部に、平方根長さが100μm 以上の欠陥が存在しない事が確認(保証)された外輪2を選出する。次いで、この様に選出された外輪2には、他側の外輪軌道10の表層部を対象として超音波探傷検査を行う。これにより、この他側の外輪軌道10の表層部に就いても、平方根長さが100μm 以上の欠陥が存在しない事を確認された外輪2を、合格品として選出する。尚、この様な第三工程では、上記探触子19aとして、例えば、焦点型で、周波数が10〜50MHz、振動子径が3〜20mmのものを使用できる。又、前記液槽29内に貯留する超音波伝達媒体としては、白灯油以外にも、例えば前記第二工程の研削加工時に使用した研削液等を使用する事もできる。
以上の様に、上述した第三工程では、合否判定の基準となる欠陥の大きさを、前述した第一工程の場合に比べて小さくしている(第三工程:平方根長さ100μm 、第一工程:平方根長さ200μm )。この為、本例の場合には、上記第三工程で行う超音波探傷検査を、上記第一工程で行う超音波探傷検査よりも高い精度で行うべく、探傷面に対する超音波の入射角の大きさ、及び、超音波の周波数の高さを、以下の様に規制している。
即ち、探傷面に対する入射角を大きくする程、より高い精度で欠陥の検出が可能になる為、上記第三工程で、前記探触子19aから前記外輪軌道10に対して送波する超音波の、この外輪軌道10の円周方向に関する入射角を、上記第一工程で、前記探触子19から前記円柱状素材16の外周面に対して送波する超音波の、この円柱状素材16の外周面の円周方向に関する入射角よりも大きくしている。尚、本例の場合には、上記第三工程で、上記探触子19aから上記外輪軌道10に対して送波する超音波の、この外輪軌道10の円周方向に関する入射角を、屈折角が90度に近い値になる様に設定している。
更に、超音波の周波数を高くする程、より高い精度で欠陥の検出が可能になる為、上記第三工程で、上記探触子19aから上記外輪軌道10に対して送波する超音波の周波数を、上記第一工程で、上記探触子19から上記円柱状素材16の外周面に対して送波する超音波の周波数よりも高くしている。尚、この様に、超音波の周波数を高くした場合には、減衰が大きくなる為、探傷深さが深くなると十分な検出精度を確保する事が難しくなる。但し、上記第三工程では、探傷深さの比較的浅い、上記外輪軌道10の表層部を探傷範囲とする為、超音波の周波数を高くする事で、検出精度の向上を図れる。
一方、本例の場合には、上記第一工程で行う超音波探傷検査の精度を確保する為に、上記探触子19に印加する電圧(探触子19から円柱状素材16の外周面に送波する超音波の出力)の大きさを、次の様に規制している。即ち、本例の場合には、上記第三工程の場合よりも上記第一工程の場合で、探傷深さが深くなる。この為、探触子に印加する電圧の値を、この第一工程と上記第三工程とで仮に同じ値とすると、超音波の減衰により、この第一工程で行う超音波探傷検査に就いて十分な精度を確保する事が難しくなる。この為、本例の場合には、上記第一工程で、上記探触子19に前記探傷器20から印加する電圧(探触子19から円柱状素材16の外周面に送波する超音波の出力)を、上記第三工程で、上記探触子19aに前記探触器20aから印加する電圧(探触子19aから外輪軌道10に送波する超音波の出力)よりも高くしている。
以上の様な本例の製造方法の場合には、前記車輪支持用転がり軸受ユニット1(図5参照)の内部空間15に水が浸入した場合にも、上記各外輪軌道10、10にフレーキングが発生する事を有効に防止して長寿命化を図る事ができ、且つ、寿命のばらつきを抑えられる外輪2を、低コストで得られる。
即ち、本例の場合には、素材として、非金属介在物の分布にばらつきを生じる、前記円柱状素材16を使用し、前記第二工程で、この円柱状素材16のうちで清浄度の高くなった部分から、上記各外輪軌道10、10の表層部を形成する。この為、上記第二工程の前後に行う、上記第一工程及び上記第三工程の超音波探傷検査を、前述した特許文献2に記載された製造方法(の第一工程及び第三工程)の場合に比べて、清浄度の高い部分を対象に(探傷範囲として)行う事ができる。この為、本例の様に、合否判定の基準となる欠陥の大きさを、上記第一工程及び上記第三工程でそれぞれ小さくした場合にも、上記特許文献2に記載された製造方法の場合に比べて、歩留りの低下を抑える事ができる。従って、本例の場合には、上記第三工程での合否判定の基準となる欠陥の大きさを、平方根長さで100μm と、水を原因とするフレーキングの発生を十分に防止できる大きさとした場合にも、製造コストの上昇を十分に抑えられる。この結果、本例の場合には、水を原因とするフレーキングの発生を有効に防止できて、長寿命化を図れる外輪2を、低コストで得られる。
又、本例の場合には、上述の様に、上記第二工程で、上記円柱状素材16のうちで清浄度の高くなった部分(外周面からこの円柱状素材16の外径寸法の30%深さの範囲内に存在する部分)のみから、上記各外輪軌道10、10の表層部を形成する為、上記円柱状素材16として、全体の清浄度がそれ程高くないものを使用できる。この為、材料コストの上昇を抑える事もできる。
更に、本例の場合には、上記各外輪軌道10、10の表層部を、上記第一工程で清浄度の保証された部分から形成できるだけでなく、これら各外輪軌道10、10の表層部を対象として、上記第三工程で超音波探傷検査を行う。この為、本例の場合には、上記第二工程で、上記各外輪軌道10、10に傷や割れが生じたり、これら各外輪軌道10、10の表層部に、非金属介在物が出現した場合にも、この様な欠陥を有する外輪2を、不合格品として排除する事ができる。しかも、本例の場合には、この様な欠陥の検出を、超音波探傷検査により行う為、前述した漏洩磁束探傷検査では検出できない様な小さな欠陥の検出も可能になる。この為、本例の場合には、前述した特許文献3に記載された製造方法の場合に比べて、フレーキングの発生を安定して防止できて、寿命のばらつきを抑えられる外輪2を得られる。従って、本例の場合には、上記各外輪軌道10、10の表層部の清浄度に関して高い信頼性を確保できる安全性の高い外輪2を、製品として使用(提供)する事ができる。
又、本例の場合には、上記第一工程で、素材である円柱状素材16に対して超音波探傷検査を行う為、上記第三工程の超音波探傷検査で、完成品である外輪2が不合格品となる割合を低くする事ができる。この為、歩留りの低下を抑え、製造コストの上昇を抑えられる。以下、この様な効果を得られる事を確認すべく、本発明者が行った実験内容及びその実験結果に就いて説明する。
本実験では、前述した様な第一工程で、合格品として選出された円柱状素材16から形成した外輪A(本発明品)と、不合格品として排除された円柱状素材16から形成した外輪B(比較品)とを、それぞれ500個ずつ用意した。そして、上記外輪A及び外輪Bに形成された外輪軌道10、10を対象として超音波探傷検査を行い、欠陥のエコー(S)の強度とノイズ(N)の強度との比(S/N)が3以上となる外輪の数、及び、その存在率を求めた。この様にして行った実験の結果を、以下の表1に示す。
Figure 2009168229
上記表1からも明らかな通り、上記第一工程で合格品として選出された円柱状素材16から形成される外輪Aの方が、不合格品となった円柱状素材16から形成された外輪Bに比べて、上記各外輪軌道10、10の表層部に存在する欠陥の数及びその存在率が、著しく低くなる。従って、以上の様な実験により、前述した様な第一工程で、素材である上記円柱状素材16に対して超音波探傷検査を行う事により、上記第三工程の超音波探傷検査で、完成品である外輪2が不合格品となる割合を低くする事ができて、歩留りの低下を図り、製造コストの上昇を抑える上で有効である事が確認できた。
上述した実施の形態に於いては、第三工程で行う超音波探傷検査の精度を確保すべく、請求項2のうちの(1)の条件(超音波の入射角の大きさに関する条件)、及び、(2)の条件(超音波の周波数の高さに関する条件)をそれぞれ満たし、且つ、第一工程で行う超音波探傷検査の精度を確保すべく、請求項2のうちの(3)の条件(探触子に印加する電圧の大きさに関する条件)を満たす事としている。但し、本発明を実施する場合には、上記(1)〜(3)の条件の全てを満たす必要はなく、何れか1つを、或は2つの条件を満たす事によっても、超音波探傷検査の精度の向上を図る上で有効になる。
又、本発明の第一工程及び第三工程で行う超音波探傷検査に関して、合否判定の基準となる欠陥の大きさは、軌道部材の使用用途や使用条件、更には、この軌道部材の形状、素材となる円柱状素材の清浄度等を考慮して、適宜設定する事ができる。例えば、第三工程で行う超音波探傷検査の合否判定の基準となる欠陥の大きさは、平方根長さで100μm と設定する以外にも、120μm 、150μm 、180μm と設定する事ができる。又、上記第一工程での合否判定の基準となる欠陥の大きさは、上記第三工程の超音波探傷検査で、完成品の軌道部材が不合格品となる割合を低くする観点から、この第三工程で基準とする欠陥の大きさよりも、僅かに大きい値とする事が好ましい。更に、複列の軌道面を有する軌道部材の場合には、この軌道部材の使用条件等に基づく、水の浸入し易さの相違を考慮して、合否判定の基準となる欠陥の大きさを、軌道面毎に変える事もできる。
又、本発明の製造方法と対象となる軌道部材は、上述した実施の形態で説明した、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外輪に限定されるものではないが、この外輪の様に、複列の外輪軌道を有し、取付部が一体に形成された軌道部材が、素材である円柱状素材を効率良く利用する面からは好ましい。但し、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成するハブ(ハブ本体及び内輪)は勿論、スピンドルユニットを構成する外径側軌道部材及び内径側軌道部材、転がり軸受を構成する内輪及び外輪、ボールねじ装置を構成するねじ軸及びボールナット、リニアガイド装置を構成するレール及び移動体も、本発明の製造方法の対象となる。又、従動輪用の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外径側軌道部材及び内径側軌道部材が、本発明の製造方法の対象となる事は勿論である。
本発明の実施の形態の1例を示す、第一工程で円柱状素材に対し超音波探傷検査を行う状態を示す模式図。 同じく第一工程により選出された円柱状素材中に存在する、非金属介在物の分布状態を示す図。 同じく第二工程を工程順に説明する断面図。 同じく第三工程で外輪に対し超音波探傷検査を行う状態を示す模式図。 従来から知られた車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す断面図。
符号の説明
1 車輪支持用転がり軸受ユニット
2 外輪
3 取付部
4 ハブ
5 ハブ本体
6 内輪
7 スプライン孔
8 取付フランジ
9 かしめ部
10 外輪軌道
11 内輪軌道
12 転動体
13 保持器
14a、14b シール装置
15 内部空間
16 円柱状素材
17、17a 超音波探傷装置
18 水槽
19、19a 探触子
20、20a 探触器
21、21a ワーク回転装置
22、22a 探触子位置調節装置
23、23a モータコントローラ
24、24a 制御器
25a〜25g モータ
26 第一中間素材
27 第二中間素材
28 隔壁部
29 液槽
30 モータ駆動用制御アンプ
31 位置合わせ制御アンプ
32 回転テーブル

Claims (2)

  1. 互いに対向する面にそれぞれ軌道面を有する1対の軌道部材と、これら両軌道面同士の間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えた転動装置を構成する、上記両軌道部材のうちの少なくとも一方の軌道部材を、金属製の円柱状素材から造る、転動装置用軌道部材の製造方法であって、
    上記円柱状素材に超音波探傷検査を行う事により、この円柱状素材の外周面からこの円柱状素材の外径寸法の30%深さの範囲内に、所定の大きさ以上の欠陥が存在しないものを選出する第一工程と、
    選出された円柱状素材に所定の加工を施す事により、軌道面の表層部が、この円柱状素材のうちで外周面からこの円柱状素材の外径寸法の30%深さの範囲内に存在する部分のみから形成された軌道部材を得る、第二工程と、
    得られた軌道部材に超音波探傷検査を行う事により、この軌道部材に形成された軌道面の表層部に、所定の大きさ以上の欠陥が存在しないものを選出する第三工程とを備える事を特徴とする転動装置用軌道部材の製造方法。
  2. 次の(1)〜(3)のうちの少なくとも1つの条件を満たす、請求項1に記載した転動装置用軌道部材の製造方法。
    (1)第三工程の超音波探傷検査で、軌道部材の軌道面に対して送波する超音波の入射角が、第一工程の超音波探傷検査で、円柱状素材の外周面に対して送波する超音波の入射角よりも大きい。
    (2)第三工程の超音波探傷検査で、軌道部材の軌道面に対して送波する超音波の周波数が、第一工程の超音波探傷検査で、円柱状素材の外周面に対して送波する超音波の周波数よりも高い。
    (3)第一工程の超音波探傷検査で、超音波を送波する為の探触子に印加する電圧が、第三工程の超音波探傷検査で、超音波を送波する為の探触子に印加する電圧よりも高い。
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