JP2009167541A - ポリエーテルエステル繊維、加工糸、織編物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分が1,3−プロピレングリコールと共重合比率が35〜80重量%である数平均分子量500〜20000のポリアルキレンエーテルグリコールから構成されるポリエーテルエステルであって、下記の(1)〜(5)を満足することを特徴とするポリエーテルエステル繊維。
(1)1.0dl/g ≦ 還元粘度(ηsp/c) ≦ 4.0dl/g
(2)末端カルボキシル基量 ≦ 20ミリ当量/kg繊維
(3)ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルの共重合比率 ≦ 1.8重量%
(4)引張強度 ≧0.3cN/dtex、かつ伸度 ≧ 200%
(5)140℃で4時間熱処理後又は95℃の熱水で4時間処理後のいずれにおいても200%伸長を3回繰り返した後の弾性回復率が70%以上であって、かつ3回目の伸長時の伸長160%における応力に対する3回目の収縮中の伸長160%における応力の保持率が60%以上である。
【選択図】なし
Description
本発明者らは、PTT系弾性繊維におけるこれらの問題が、末端カルボキシル基及びハードセグメントを構成するPTTの副生成物であるビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル(HOCH2CH2CH2OCH2CH2CH2OH:以下、BPEと略記する場合あり)に起因することを見出し、本発明に到達した。
(1)1.0dl/g ≦ 還元粘度(ηsp/c) ≦ 4.0dl/g
(2)末端カルボキシル基量 ≦ 20ミリ当量/kg繊維
(3)ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルの共重合比率 ≦ 1.8重量%
(4)引張強度 ≧0.3cN/dtex、かつ伸度 ≧ 200%
(5)140℃で4時間熱処理後又は95℃の熱水で4時間処理後のいずれにおいても200%伸長を3回繰り返した後の弾性回復率が70%以上であって、かつ3回目の伸長時の伸長160%における応力に対する3回目の収縮中の伸長160%における応力の保持率が60%以上である。
テル繊維で還元粘度4.0を超えることは事実上困難である。好ましくは1.2〜3.5dl/g、より好ましくは1.3〜3.0dl/gである。
2HOCH2CH2CH2OH → HOCH2CH2CH2OCH2CH2CH2OH
引張強度が0.3cN/dtex未満であると、衣料用繊維として実用に耐えず、伸度が200%未満であると、伸長時に布帛が破裂し、十分な弾性特性を発揮することができない。尚、引張強度は高ければ高いほど良いが、本発明で特定する組成範囲で引張強度10cN/dtexを超えることは困難である。引張強度は0.5〜10cN/dtexが好ましく、より好ましくは0.8〜5cN/dtexである。また使用用途により必要伸度は異なるので、伸度に上限値を設定する必要はないが、現実的には2000%以下である。
本発明のポリエーテルエステル繊維は、平均粒径が0.01〜2μmである酸化チタンを0.01〜3重量%含有し、更に当該酸化チタン粒子が集まった最長部長さが5μmを超える凝集体が7個/mg繊維以下であることが好ましい。
長さが5μmを超える凝集体を7個/mg繊維以下に制御することで、製糸工程や後加工工程における糸切れや毛羽発生を抑制することができる。より好ましくは5個/mg繊維以下、最も好ましくは3個/mg繊維以下である。
本発明のポリエーテルエステル繊維は、ゴム的な弾性特性があるために、表面摩擦抵抗が
著しく高い。繊維を扱う上においては表面摩擦抵抗を下げるために、繊維表面に仕上げ剤を付けることが好ましい。仕上げ剤の構成成分として、下記化合物(I)を30〜100重量%含有する仕上げ剤を用いることが好ましい。
(I)珪素原子含有率が20〜50重量%であって、25℃の粘度が2〜50センチストークスである有機珪素化合物
化合物(I)の有機珪素化合物は、ポリエーテルエステル繊維表面の平滑性を向上させ、そのすべりにより摩耗性を向上させる成分である。そのような成分としては、25℃の粘度が2〜50センチストークスである有機珪素化合物が好ましい。
有機珪素化合物としては、特にシリコーン誘導体が好ましい。シリコーンの繰り返し単位としては、ジメチルシロキサン、メチルエチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン等があり、末端は水酸基、トリメチルシリル基等がある。繰り返し単位のシロキサンの水素の一部または全部が、繰り返し単位数1〜100のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、あるいはこれらのブロック、ランダム共重合体で変性されてもよい。仕上げ剤中の有機珪素化合物の含有量としては70〜95重量%が好ましく、より好ましくは80〜90重量%である。また25℃の粘度としてはが5〜30センチストークスがより好ましい。
エステル化合物としては、例えば、ステアリン酸イソオクチルステアレート、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソオクチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸オレイル、ステアリン酸イソトリデシル、オレイン酸オレイル、アジピン酸ジオレイル、トリラウリン酸グリセリンエステル、ビスフェノールAジラウリレート、ビスオキシエチルビスフェノールAのジラウリレート、ビスオキシエチルビスフェノールAのジオクタネートが挙げられ、鉱物油としては分子量が500を超えるか又は常温で固体状になる脂肪族アルコールエステル、ヤシ油、ナタネ油等の多価数アルコールエステル等が挙げられる。特に好ましくは、ステアリン酸オクチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸オレイル等、30℃におけるレッドウッド粘度が40〜800秒の鉱物油である。エステル化合物、鉱物油は、仕上げ剤重量に対し10重量%未満であることが好ましい。
ト、ポリオキシエチレンビスフェノールAジオレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAオレート、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリン酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンオレイン酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエタノールアミド、ジエチレントリアミンオレイン酸アミド等である。
乳化剤の含有量は仕上げ剤重量に対し2〜15重量%であることが乳化性、繊維の集束性、仕上げ剤の付着性、耐摩耗性を高める観点から好ましい。
制電剤の含有量は仕上げ剤重量に対し3〜15重量%であることが繊維に制電性、耐摩耗性、乳化性、防錆性を付与するという観点から好ましい。
本発明のポリエーテルエステル繊維は、繊維の黄色味の指標となるYI値が−30〜5、繊維の白度の指標となるWI値が50〜150であることが好ましい。YI値は−20〜4.5が好ましく、−10〜3がより好ましい。WI値は60〜100が好ましく、70〜90がより好ましい。
本発明のポリエーテルエステル繊維の総繊度としては特に制限はないが、5〜10000dtex、衣料用として用いる場合は、5〜1000dtexが好ましい。単糸繊度も特に制限はないが、好ましくは1〜100dtex、より好ましくは2〜70dtex、最も好ましくは5〜50dtexである。
テレフタル酸を主としたジカルボン酸又は/及びその低級アルコールエステル誘導体、
ポリアルキレンエーテルグリコール、1,3−プロピレングリコール(以下、PDOと略記する)をエステル交換触媒の存在下、180〜240℃の温度で2〜10時間、エステル化反応又は/及びエステル交換反応を行う。ジカルボン酸またはその低級アルコールエステル誘導体に対するPDOの仕込み比率は、モル比で0.8〜3の範囲であることがエステル交換反応が円滑に進捗し、かつBPE生成が抑制されるという観点から好ましい。より好ましくは、1.4〜2.5、最も好ましくは1.5〜2.3である。
ポリエーテルエステル繊維の末端カルボキシル基量とBPE含有量を本発明の範囲内に制御するという観点から原料となるポリエーテルエステル樹脂の末端カルボキシル基量を20ミリ当量/kg樹脂以下、BPE含有量を1.8重量%以下に制御することが重要である。その制御の第1のポイントとしてはエステル化反応やエステル交換反応終了のタイミングであり、エステル化反応やエステル交換反応率が65%〜95%の範囲で反応を終了し、重縮合反応を開始することが好ましい。通常、エステル化反応やエステル交換反応は、生成される水やメタノールが、仕込みのジカルボン酸やその低級アルコールエステル誘導体量に対して、理論量留出した時点(即ち反応率100%)を終了とし、重縮合反応に移行する。
であって、45分以内であることが好ましい。45分を超えると、BPEの共重合比率が増えて本発明の範囲を超える。この時間はできるだけ短い方が好ましいが、あまり減圧速度を速くすると反応物の突沸が起こり、反応機の配管詰まりなどのトラブルを引き起こす。従って、好ましくは、20〜45分である。
また末端カルボキシル基量を20ミリ当量/kg樹脂以下に制御するためには、重縮合反応工程における熱分解反応を抑制することが重要であって、重縮合反応時のPDOの留去を効率的に行い、重縮合反応時間を短縮する必要がある。そのためには、重合物の比表面積を高くすることが重要であって、例えばヘリカル型攪拌機、ディスクリングリアクタ等を用い、重合物を掻き揚げて、薄膜ができるように効率的な攪拌を行うとともに、反応容器の容積に対する原料の仕込みの比率を40vol%以下とすることが好ましく、より好ましくは35vol%である。更に、重縮合反応工程の重合物の粘度が時間の経過とともに上昇するうちに、重縮合反応を停止することが好ましい。
酸化チタンのスラリー濃度としては特に限定はないが、10〜40重量%の範囲が好ましい。酸化チタンのスラリー濃度が10重量%未満であると、PDOの量が多く、常圧から減圧にするまでに長時間を要するので、末端カルボキシル基量とBPE含有量の増大を招く。また酸化チタンのスラリー濃度が40重量%を超えると200℃を超える重合物に分散液を添加したときに、熱ショックにより酸化チタンの再凝集が起こりやすく、最終エラストマーに含有される最長部の長さが5μmを超える酸化チタン凝集体の数が10個/mg樹脂を超えてしまう。より好ましくは15〜30重量%である。酸化チタン分散液は、好ましくは重縮合反応触媒、リン化合物、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加後、少なくとも1分以上十分攪拌した後、添加することが好ましい。また添加するときの温度は、熱ショックによる酸化チタンの再凝集を防止する観点から200〜240℃が好ましい。
レフタロイルビスカプロラクタム、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸無水物等の鎖伸長剤をポリエーテルエステルに対して10重量%未満の範囲内、好ましくは0.5〜5重量%の範囲内で添加することができる。添加する時期については、特に制限はないが、重縮合反応終了直前に添加することが好ましい。
℃、最も好ましくは15〜50℃である。必要に応じて25〜60℃で予熱を行っても良い。延伸ゾーンの温度が0℃未満、或いは65℃を超えると、糸切れが多発し、本発明で特性する強伸度物性及び弾性特性を満足する弾性繊維を安定的に得ることができない。
延伸後の熱処理は行っても行わなくてもよいが、経時変化をさける目的で熱処理を行っても良い。熱処理を行う場合の温度の上限は180℃である。熱セット温度が180℃を超えると繊維が熱セットゾーンで切れてしまい延伸することができない。
本発明のポリエーテルエステル繊維の応用例としては、織編物に使用できる。本発明の織編物の構造、製法は、特に制限するものではなく、公知の技術を用いることができる。本発明の繊維の形態としては、そのまま、あるいは、先に述べた加工糸として織編物とすることができる。
本発明の織物に適用される織組織は、平織、二重織、綾織等があるが、織密度を高くすることが容易であるという点で平織物が好ましい。織密度としては、以下の式で定義されるカバーファクターKが500〜4000の範囲が好ましく、1000〜2500がさらに好ましい。
カバーファクターK=
{経糸密度×(経糸のデニール)0.5}×{緯糸密度×(緯糸のデニール)0.5}
本発明の織編の目付は、通常10〜1000g/m2である。目付が10g/m2未満であると、耐久性が悪くなる。1000g/m2を超えると編物が堅くなり弾性特性が出にくい場合がある。好ましくは、20〜500g/m2である。
本発明の編物のカバーファクターK’としては、弾性特性、耐久性の観点から50〜800が好ましく、特に好ましくは、100〜800である。50より小さくなると、耐切創性が低下し、800より大きくなると耐久性の低下が起こる場合があるからである。
尚、カバーファクターK’は以下の式で表される。
K’=(D1+D2)×Dr1/2
D1:1cm当たりの編物のウェール数
D2:1cm当たりの編物のコース数
Dr:編物に使用する繊維の繊度(単位:デシテックス)
本発明の編物は、耐久性、耐候性、耐光性の向上などを目的として、表面、内部の一部あるいは全部に樹脂を付着または含浸させてもよい。
含浸させる樹脂量としては、編物重量の5〜90重量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは200〜80重量%であることが望ましい。
精練は40〜98℃の温度範囲で行うことができるが、リラックスさせながら精練することが弾性回復特性を維持向上させる観点で好ましい。
染色前後の熱セットは、一方或いは両方を省略することも可能であるが、布帛の形態安定性、染色性を向上させるためには両方行うことが好ましい。熱セットを行う場合、弾性回復特性及び発色性に優れた織編物を得るためには、温度と時間を特定範囲内に制御することが必要である。熱セット温度としては、100〜180℃が好ましく、より好ましくは110〜160℃であり、熱セット時間としては10秒〜3分が好ましく、より好ましくは20秒〜1分30秒である。熱セット温度が180℃を超えると前記セット時間内であるとしても得られた染色物の弾性回復特性や発色性が損なわれるとともに風合いも低下する。一方、熱セット時間が3分を超えると、たとえ100〜180℃温度で熱セットを行うとしても、目的とする弾性回復特性、発色性に優れた染色物を得ることはできない。K/S値は染色物の発色性の指標であり、衣料用としての実用に耐える値としては、0.5以上であるが、本発明のポリエーテルエステル繊維を少なくとも一部に含む布帛を上記方法で精錬、プレセット、染色、ファイナルセットの工程を経て染色することで、K/S値が0.5以上の染色物が得られる。
(1)相対粘度(ηSP/C)
相対粘度は、オストワルド粘度管を35℃、o−クロロフェノールを用いて、比粘度ηSPと濃度C(g/dl)の比で求めた。
試料を溶媒:TMS(テトラメチルシラン)を含むCDCl3/HFIP−d(重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール)混合溶媒(9/1)に1〜2vol%の濃度で室温で溶解し、1H−NMR(ブルカー・バイオスピン社製 AVANCEII AV400M)を用いて測定した。
ジカルボン酸成分がテレフタル酸、ジオール成分が1,3−プロピレングリコール、ポリアルキレンエーテルグリコール成分がポリテトラメチレングリコールからなるポリエーテルエステルの場合、下記スペクトルの帰属を元にポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量、ポリアルキレンエーテルグリコールの共重合比率、ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルの共重合比率、トリメチレンエステルの環状ダイマー量を求めた。
フェニルエステルに連結されたPDOのメチレンプロトンb:4.5ppm付近のピークPDOの中間メチレンプロトンc:2.3ppm付近のピーク
フェニルエステルに直接連結されたPTMGのメチレンプロトンd:4.3ppm付近のピーク
PTMGの2番目、3番目のメチレンプロトンe:1.7〜1.9ppm付近の数種のピーク
試料1gをベンジルアルコール25mlに溶解し、その後クロロホルム25mlを加えた後、1/50Nの水酸化カリウムベンジルアルコール溶液での滴定量(VA)(ml)を求めた。一方、ペレット無しのブランク滴定での滴定量(V0)を求めた。これらの値より、以下の式によってペレット1kg当たりの末端カルボキシル基量を求めた。
末端カルボキシル基(ミリ当量/kg)=(VA−V0)×20
ポリエーテルエステルの円柱状のペレットを、ガラス製のセル(内径40mm、深さ30mm)に深さの90〜100%まで満たし、ミノルタ(株)製の色彩色差計(CM−3500)を用いて、CIE−L*a*b*(CIE1976)表色系で、L*値、a*値、b*値を測定した。
原料の酸化チタンの平均粒径は、酸化チタンをヘキサメタリン酸ナトリウム1g/l水溶液に分散させ、ベックマンコールター社製のレーザー回折−散乱法平均粒径測定装置(機種:LSI3320)を用いて測定した。
ポリエーテルエステル組成物又は繊維に含まれる酸化チタン凝集体の数は、次の方法で計測した。
樹脂又は個/mg繊維)とした。
DSC(パーキンエルマー社製 Pyris−1)で窒素気流下(200ml/min)、試料を室温から250℃まで50℃/minで昇温、250℃で3分間保持した後、0℃まで20℃/minの冷却速度で冷却させた。冷却させた試料を更に20℃/minの昇温速度で250℃まで昇温させた。融点(Tm)は、2回目の昇温熱曲線から求めた。
試料を除湿乾燥機パールロータリージョイント(株式会社 昭和技研工業社製)を用いて115℃で6時間乾燥させ、水分率50ppm以下にした。バレル径9.55mmφ、バレル長350mm(有効長250mm)のキャピログラフ−1B(東洋精機社製)に紡口を取り付け、設定紡糸温度に到達した後、乾燥試料をバレル内に投入し、投入より10分後に50m/minの押出し速度で押出し、固化した未延伸糸に25℃の粘度が20センチストークスのポリジメチルシロキサン(珪素含有量:38重量%)/ポリオキシエチレン10量体のジオレイルエーテル/オレイルラウレート=90/5/5(重量比)分子量からなる仕上げ剤を繊維重量に対して6重量%付与し巻き取り機を用いて、糸管に巻き取った。ついで、未延伸糸を横型延伸機を用い、供給ロール5m/minで、伸度が400%程度になるように引き取りロール速度を調整して延伸を行った(延伸温度:室温)。また延伸糸は、巻取り速度を引き取りロール速度(延伸速度)対比85%に設定して巻き取った。
繊維の強伸度は、JIS−L−1013に準じて測定した。
(9)耐熱性、耐熱水性評価
熱処理なし及び熱処理、熱水処理後の弾性回復率及び荷重除去時の応力保持率を下記方法で評価した。
尚、熱処理は、かせ巻きした繊維を内温140℃のギアオーブン内で無張力状態で4時間加熱して行った。また熱水処理は、同じくかせ巻きした繊維を実温95℃にコントロールしたウォーターバス中に無張力状態で4時間浸漬した。
(a)200%伸長弾性回復率
繊維をチャック間距離20cmで定速伸長形の引っ張り試験機に取り付け、伸長率200%まで引っ張り速度20cm/minで伸長し、同じ速度で収縮させ、これを3回繰り返して応力−ひずみ曲線を描く。3回目の収縮中、応力がゼロになった時の伸度を残留伸度(La)とする。弾性回復率は以下の式に従って求めた(図1)。
弾性回復率=(200−La)/200×100(%)
(b)荷重除去時の応力保持率
(a)の200%伸長繰返し試験において、3回目の伸長中の伸長160%における応力(S1)と3回目の収縮中の伸長160%における応力(S2)より、以下の式に従って求めた(図2参照)。
荷重除去時の応力保持率=(S2)/(S1)×100(%)
ASTM D1925−70に準拠した方法にて黄色度であるYI値を、ASTM−E313−73に準拠した方法にて白色度であるWI値を下記条件にて測定した。
装置:分光測色計 MacbethCE−3000(マクベス社製)
測定条件
視野・・・2°
光源・・・C(CIE 1964)
鏡面光沢・・・含む
計算は、次式に従って、YI値及びWI値を求めた。
YI=100×(1.28X−1.06Z)/Y
WI=4×0.847Z−3Y
ここで、X,Y,Zは、資料のXYZ表色系における三刺激値である。
3L容積の反応容器に、テレフタル酸ジメチル267g、数平均分子量1800を有するPTMG734g、1,3−プロピレングリコール(PDO)210g、チタンテトラブトキシド0.71g、酸化防止剤:イルガノックス1010(チバスペシャリティーケミカルズ社製)5.0gを投入し、窒素雰囲気下ヒーター温度220℃でエステル交換反応を行い、エステル交換反応は、メタノールが理論量の77%留出した時点で終了した。トリメチルホスフェート0.17gを添加し、その5分後チタンテトラブトキシド0.71gを添加、更にその5分後下記方法で調整した酸化チタンスラリーをポリエーテルエステル重量あたり0.5重量%になるように添加した。その後、常圧から0.2torrまで42分かけて減圧し、245℃で4時間重縮合反応を行った。得られた樹脂を、3mm角にペレット化した。得られたペレットは色調に優れており、更に(7)に記載された条件で乾燥した後も赤変することもなかった。ペレットの物性を表2に示す。
また得られたペレットを紡糸温度245℃で(7)に記載された条件(具体的条件:表3に記載)で、紡糸延伸を行った。得られた繊維は優れた弾性回復特性、荷重除去時の応力保持率を示し、熱処理及び熱水処理後もその特性が失われることはなかった。当該繊維の物性を表3に示す。
PDOに平均粒径0.5μmのアナターゼ型酸化チタンを21重量%加え、1000rpmで10時間攪拌した。その後、500メッシュのフィルターを1回通し、更に6000rpmの遠心分離を25分行い、上澄み液のみ単離した。処理液中の酸化チタンの含量は20重量%であった。
テレフタル酸ジメチル352g、数平均分子量1800を有するポリテトラメチレングリコール(PTMG)642g、PDO276g添加し、酸化チタンを添加しないことと、表1に記載されたEI反応率でEI反応を終了し高真空到達時間を制御した以外は、実施例1と同様に重合反応を行った。また表3に記載された条件で紡糸・延伸を行った。ペレット物性及び繊維物性を表2及び表3に示す。
表1に記載されたEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。また表3に記載された条件で紡糸・延伸を行った。ペレット物性及び繊維物性を表2及び表3に示す。
テレフタル酸ジメチル394g、数平均分子量1800を有するPTMG596g、PDO309g添加し、表1に記載されたEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例1と同様に重合反応を行った。また表3に記載された条件で紡糸・延伸を行った。ペレット物性及び繊維物性を表2及び表3に示す。
ポリアルキレンエーテルグリコールに数平均分子量3000を有するPTMG734g添加し、表1に記載されたEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以
外は、実施例1と同様に重合反応を行った。また表3に記載された条件で紡糸・延伸を行った。ペレット物性及び繊維物性を表2及び表3に示す。
ポリアルキレンエーテルグリコールに数平均分子量2000を有するポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール(PPG)642g添加し、表1に記載されたEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。また表3に記載された条件で紡糸・延伸を行った。ペレット物性及び繊維物性を表2及び表3に示す。
ポリアルキレンエーテルグリコールに数平均分子量1800を有し、ネオペンチレンオキシドが10%共重合されたPTMG642g添加し、表1に記載されたEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。また表3に記載された条件で紡糸・延伸を行った。ペレット物性及び繊維物性を表2及び表3に示す。
ポリアルキレンエーテルグリコールに数平均分子量1800を有し、ネオペンチレンオキシドが10%共重合されたPTMG734g添加し、表1に記載されたEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例4と同様に重合反応を行った。また表3に記載された条件で紡糸・延伸を行った。ペレット物性及び繊維物性を表2及び表3に示す。
実施例7で得られたペレットを窒素雰囲気下175℃で8時間固相重合を行った。固相重合されたポリエーテルエステルペレットのトリメチレンテレフタレートの環状ダイマー含量は0.9重量%であり、当該ペレットから未延伸糸は、べとつき感がなく、延伸時の糸の解舒が実施例7(環状ダイマー含量2.1重量%)より更にスムーズであった。また表3に記載された条件で紡糸・延伸された繊維は強伸度、弾性回復特性、荷重除去時の応力保持率が向上した。ペレット物性及び繊維物性を表2及び表3に示す。
ポリアルキレンエーテルグリコールに数平均分子量2000を有するポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール(PPG)642g添加し、表1に記載されたEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。また表3に記載された条件で紡糸・延伸を行った。ペレット物性及び繊維物性を表2及び表3に示す。
テレフタル酸ジメチル647g、数平均分子量1800を有するPTMG321g、PDO507g添加し、表1に記載されたEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例1と同様に重合反応を行った。また表3に記載された条件で紡糸・延伸を行った。得られた繊維の弾性回復率は40%未満であり、弾性特性の劣るものであった。ペレット物性及び繊維物性を表2及び表3に示す。
EI反応率63%でEI反応を終了した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。得られたペレットは還元粘度が1.0dl/gを下回り、乾燥工程での着色が大きいものであった。更に紡糸時に繊維状に固化させることができず、未延伸糸を巻き取ることがで
きなかった。
高真空到達時間を63分に制御した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。得られたペレットは、乾燥工程での着色が激しく、更に得られた繊維は、熱処理、熱水処理により弾性回復率及び荷重除去時の応力保持率が著しく低下した。
EI反応率96%でEI反応を終了した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。得られたペレットは末端カルボキシル基量及びBPEが本発明の範囲を超え、乾燥工程での着色が大きいものであった。更に得られた繊維は、熱処理、熱水処理により弾性回復率及び荷重除去時の応力保持率が著しく低下した。
PDOの代わりに1,4−ブタンジオールを用いた以外は実施例1と同様に重合を行い、還元粘度2.0dl/gのポリエーテルエステルポリマーを合成した。このポリマーの融点は152℃しかなく、実施例1のPTT系エラストマーの融点と比較して20℃以上も低いものであった。
またこのポリマーを用いて、ポリエーテルエステル繊維を作成したところ、得られた繊維は、熱処理のあるなしにかかわらず弾性回復率及び荷重除去時の応力保持率が著しく低下した(表3)。
ナイロン66繊維13dtex/5fを被覆用糸とし、実施例1のようにして作成したポリエーテルエステル繊維(18dtex/3f)のフルカバリング糸(下撚りZ方向2400T/m、上撚りS方向2200T/m)を作成した。続いて、該糸を用いて3.5インチ径360本針の靴下編機で靴下地を編成し、常法により染色仕上げして得られた靴下の風合いはソフトで、外観は、針筋、表面凹凸、ループの乱れがほとんどなく著しく高品位なものであった。
ナイロン66繊維13dtex/5fを被覆用糸とし、実施例7のようにして作成したポリエーテルエステル繊維(18dtex/3f)のフルカバリング糸(下撚りZ方向2400T/m、上撚りS方向2200T/m)を作成した。続いて、該糸を用いて3.5インチ径360本針の靴下編機で靴下地を編成し、常法により染色仕上げして得られた靴下の風合いはソフトで、外観は、針筋、表面凹凸、ループの乱れがほとんどなく著しく高品位なものであった。
ナイロン6繊維(44dtex/34f)をフロントおよびバックに、実施例1と7の方法で得たポリエーテルエステル繊維310dtexをミドルに配置し、下記条件にてラッセル編地を編成した。なお、弾性糸は100%伸張して整経した。
編機 カールマイヤー社製 ラッセル編機 56ゲージ/2インチ 組織 フロント 20/02/20/24/42/24 ミドル 00/44/22/66/22/44 バック 00/22/00/22/00/22 ランナー長 フロント 122cm/480コース ミドル 11.4cm/480コース バック 16.0cm/480コース
機上コース 75 コース/インチ得られた編地を90℃温水中でリラックスし、190℃でプレセット後、染色を95℃で30分行い、170℃で仕上げセットを行って表1
に示すC/W(編密度)に仕上げた。得られた編地の物性を表4に示した。
得られた生地を用いてロングガードルを作製し、パネラー3名にて着用した。太腿のずれは、直立して所定の位置に太腿ラインを決め、かがむ動作を10回繰り返した後のずりあがりを測定し、3名の平均値で示した。着用感は、着脱および着用感のアンケート調査の結果を示したものであり、以下のように評価した。
◎◎:とても良好で風合いがソフト、 ◎:とても良好、○:良好 ×:フィット感が足りない
本発明のポリエーテルエステル繊維を用いたラッセルは、伸縮性に優れ、衣料にした場合の着用感にも優れる。
ポリエーテルエステル繊維を比較例5の方法で作成し、実施例12を繰り返した。得られたラッセルは弾性特性が低く、着用感も不十分であった(表4)。
実施例11と12の繊維を用いて、カバーファクター2000の平織を作成した。得られた織物は、優れた伸縮特性を示し、また布帛の黄色度と白色度を表す(YI値/WI値)は、3.4/82、2.8/85と良好であった。一方、比較例4と5のポリエーテルエステル繊維を用いて同様の加工糸を作成し同様の平織物を作成したが、伸縮性、弾性回復性は明らかに劣るものであった。また比較例4から得られた平織物の(YI値/WI値)は、7.6/55と明らかに着色していた。
Claims (8)
- 主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分が1,3−プロピレングリコールと共重合比率が35〜80重量%である数平均分子量500〜20000のポリアルキレンエーテルグリコールから構成されるポリエーテルエステルであって、下記の(1)〜(5)を満足することを特徴とするポリエーテルエステル繊維。
(1)1.0dl/g ≦ 還元粘度(ηsp/c) ≦ 4.0dl/g
(2)末端カルボキシル基量 ≦ 20ミリ当量/kg繊維
(3)ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルの共重合比率 ≦ 1.8重量%
(4)引張強度 ≧0.3cN/dtex、かつ伸度 ≧ 200%
(5)140℃で4時間熱処理後又は95℃の熱水で4時間処理後のいずれにおいても200%伸長を3回繰り返した後の弾性回復率が70%以上であって、かつ3回目の伸長時の伸長160%における応力に対する3回目の収縮中の伸長160%における応力の保持率が60%以上である。 - 前記ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のポリエーテルエステル繊維。
- 仕上げ剤が繊維表面に0.5〜9.0重量%付着しており、仕上げ剤の構成成分として、下記化合物(I)を70〜95重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエーテルエステル繊維。
(I)珪素原子含有率が20〜50重量%であって、25℃の粘度が2〜50センチストークスである有機珪素化合物 - 平均粒径が0.01〜2μmである酸化チタンが0.01〜3重量%含有されており、かつ当該酸化チタン粒子が集まった最長部長さが5μmを超える凝集体が7個/mg繊維以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエーテルエステル繊維。
- 単糸繊度が1〜100dtexであって、かつ総繊度が5〜10000dtexであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエーテルエステル繊維。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリエーテルエステル繊維のまわりに、該ポリエーテルエステル繊維以外の繊維を巻き付けたことを特徴とするポリエーテルエステル複合糸。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のポリエーテルエステル繊維を含有する織編物。
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