JP5346207B2 - ポリエーテルエステル及びポリエーテルエステル組成物 - Google Patents

ポリエーテルエステル及びポリエーテルエステル組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP5346207B2
JP5346207B2 JP2008311038A JP2008311038A JP5346207B2 JP 5346207 B2 JP5346207 B2 JP 5346207B2 JP 2008311038 A JP2008311038 A JP 2008311038A JP 2008311038 A JP2008311038 A JP 2008311038A JP 5346207 B2 JP5346207 B2 JP 5346207B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
weight
polyether ester
glycol
polyetherester
fiber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008311038A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010132802A (ja
Inventor
哲子 高橋
仁一郎 加藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Fibers Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Fibers Corp filed Critical Asahi Kasei Fibers Corp
Priority to JP2008311038A priority Critical patent/JP5346207B2/ja
Publication of JP2010132802A publication Critical patent/JP2010132802A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5346207B2 publication Critical patent/JP5346207B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)
  • Knitting Of Fabric (AREA)
  • Artificial Filaments (AREA)
  • Woven Fabrics (AREA)

Description

本発明は、耐酸化安定性、耐熱性、色相に優れ、かつ、長期保存性に優れた成形体用原料として有用なポリエーテルエステル及びポリエーテルエステル組成物に関する。本発明は、機械的特性、弾性特性、耐圧縮永久歪特性に優れたポリエーテルエステル成形体にも関する。
ハードセグメントにポリブチレンテレフタレート(以下、PBTとも略記する)を、そしてソフトセグメントにポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(以下、PTMGとも略記する)を用いたポリエーテルエステル系エラストマー(以下、PBT系エラストマーとも略記する)は、従来のオレフィン系エラストマーやポリウレタン系エラストマーと比較して優れた成形性や耐熱性を有することから、自動車用の樹脂成形体として利用されており、特に自動車の駆動用ギアのカバー(CVJブーツ)においてはPBT系エラストマーは市場の半分を占めている。しかしながら、PBT系エラストマーは、圧縮永久歪(一定の条件(温度・時間)で応力をかけた後、当該応力を取り除き一定時間経過後に残留している歪)が大きいために、高温下継続的に一定の応力がかかるエンジン周り部品等への利用は困難であり、利用領域が限定される。
PBT系エラストマーは、弾性繊維として利用できることも知られているが、PBT系エラストマーは弾性回復率が低く(一定伸長率で引き伸ばした後の戻りが悪く)、また伸長時の応力値に対して収縮時の応力値が非常に低く(収縮時の締め付け力が弱い:ストレッチバック特性が悪く)弾性特性が不十分であることから、衣料用繊維・資材用繊維としてはほとんど実用化されていない。
一方、PBTよりも優れた伸縮特性を有するポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTとも略記する)をハードセグメントに、そしてポリテトラメチレングリコール又はポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコールをソフトセグメントに使用したポリエーテルエステル系エラストマー(以下、PTT系エラストマーとも略記する)は、上記PBT系エラストマーの課題を解決し得る材料として期待されている(以下、特許文献1、特許文献2、非特許文献1を参照のこと)。しかしながら、これらの従来技術のPTT系エラストマーは、溶融成形前の予備結晶工程や乾燥工程でポリマーの着色(黄変及び赤変)が起こる。さらに、これらのPTT系エラストマーは、溶融紡糸等の成形工程で酸化分解や熱分解が起こり、ポリマーが激しく着色するほか、重合度が著しく低下する。そのため、得られた弾性繊維を初めとする成形体は、十分な機械的特性や弾性特性を発揮することができず、実用性に欠ける。さらに、上記従来のPTT系エラストマーにおいては、常温で数週間から数ヶ月保管している間にポリマーの着色と重合度低下が起こることが、今般、本発明者らによって明らかとなった。これらの現象はPBT系エラストマーには見られないPTT系エラストマー特有の課題である。
特開平2−248425号公報 特表2005−507972号公報 Journal of the Korean Fiber Society vol.37,No.11,2000
本発明が解決しようとする課題は、前記した従来技術のPTT系エラストマーの有する問題を生じない、耐酸化安定性、耐熱性、色相に優れ、かつ、長期保存性に優れた成形体用原料として利用できる新規ポリエーテルエステル及びポリエーテルエステル組成物を提供することである。本発明が解決しようとする他の課題は、機械的特性、弾性特性、耐圧縮永久歪特性に優れたポリエーテルエステル成形体を提供することでもある。
具体的には、本発明は、以下の[1]〜[10]である:
[1]主たるジカルボン酸成分としてのテレフタル酸、主たるジオール成分としての1,3−プロピレングリコール、及び共重合比率が35〜80重量%である数平均分子量500〜20000のポリアルキレンエーテルグリコールから構成されるポリエーテルエステルであって、下記(1)〜(6):
(1)1.0dl/g≦還元粘度(ηsp/c)≦5.0dl/g;
(2)末端カルボキシル基量≦20ミリ当量/kg樹脂;
(3)ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルの共重合比率≦1.8重量%;
(4)L*値≧70、−5≦b*値≦20、−5≦a*値≦5;
(5)熱重量測定における5%減量温度≧300℃;及び
(6)融点よりも20℃高い温度で10分間保持した前後の還元粘度保持率≧80%;
を満たすことを特徴とするポリエーテルエステル。
[2]前記ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、及びポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールから成る群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]に記載のポリエーテルエステル。
[3]前記ポリアルキレンエーテルグリコールの繰り返し単位の3〜30%が、下記式(1):又は式(2):
Figure 0005346207
Figure 0005346207
で表される、前記[2]に記載のポリエーテルエステル。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエーテルエステルから構成される繊維、不織布、フィルム、成型体又は発泡体。
[5]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエーテルエステル20〜99重量%にゴム80〜1重量%を配合してなるポリエーテルエステル組成物。
[6]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエーテルエステル50〜99.9重量%に無機物フィラー0.01〜50重量%を配合してなるポリエーテルエステル組成物。
[7]前記無機物フィラーが、マイカ、ガラス、シリカ、タルク、シリカ・アルミナ、ジルコニア、窒化硼素、窒化珪素、硼素、チタンカリ、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、銅、及び真鍮から成る群から選ばれる少なくとも1種である、前記[6]に記載のポリエーテルエステル組成物。
[8]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエーテルエステル50〜99.9重量%に顔料0.01〜50重量%を配合してなるポリエーテルエステル組成物。
[9]前記顔料が、亜鉛華、鉛白、リトポン、酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛・クロム黄、亜鉛黄、ウルトラマリン青、フェロシアン化鉄カリ、及びカーボンブラックから成る群から選ばれる少なくとも1種である、前記[8]に記載のポリエーテルエステル組成物。
[10]前記[5]〜[9]のいずれかに記載のポリエーテルエステル組成物から構成されるフィルム、成型体又は発泡体。
本発明に係るポリエーテルエステルは、主たるジカルボン酸成分としてのテレフタル酸、主たるジオール成分としての1,3−プロピレングリコール、及び共重合比率が35〜80重量%である数平均分子量500〜20000のポリアルキレングリコールから構成される。このように、ハードセグメント(結晶相)にPTTを設定することで、従来のPBT系エラストマーからなる成形体と比較して優れた弾性特性や耐圧縮永久歪特性(以下、弾性特性等と記載する場合がある)を発揮することができる。
本発明に係るポリエーテルエステルを構成するポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は、耐熱性向上並びに弾性特性等向上の観点から500〜20000であることが必要である。ポリアルキレンエーテルの数平均分子量が500未満では、ポリエーテルエステルの融点が低く、優れた耐熱性を発揮できない上に、最終製品たる成形体の弾性特性等が劣るものとなる。一方、ポリアルキレンエーテルの数平均分子量が20000を超えると、ミクロ相分離構造を形成しにくくなるためか、弾性特性等が一挙に低下する。該ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は、好ましくは1000〜4500、最も好ましくは1500〜4000の範囲である。
さらに、本発明に係るポリエーテルエステルは、該ポリアルキレンエーテルグリコールの共重合比率がポリエーテルエステルの35〜80重量%の範囲に制御されていることによって、優れた耐熱性と弾性特性等を発揮することができる。ポリアルキレンエーテルグリコールの共重合比率が35重量%未満では、優れた弾性特性等を発揮することができず、また80重量%を超えると融点が急激に低下するばかりか、弾性特性や耐圧縮永久歪特性が低下する。該ポリアルキレンエーテルグリコールの共重合比率は、好ましくは45〜75重量%である。
ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、及びポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールから成る群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、弾性特性向上の観点からポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールがより好ましい。さらに、ポリアルキレンエーテルグリコールは、エーテルオキシド繰り返し単位の3〜30%が下記式(1)又は式(2):
Figure 0005346207
Figure 0005346207
で表される構造単位であることができる。
本発明において、式(1)又は式(2)の構造単位が共重合されたポリアルキレンエーテルグリコールを利用することで、繊維の弾性特性(特にストレッチバック特性)及び成型体の耐圧縮永久歪特性が著しく向上すると共に、0℃以下の温度領域でもその特徴を維持する(低温特性に優れる)ことができる。
さらに驚くべきことに、同じ分子量、同じ含量で、ポリアルキレンエーテルグリコールとしてポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを共重合したポリエーテルエステルと比較して、式(1)又は式(2)の構造単位を3〜30%共重合したポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを共重合したポリエーテルエステルは、融点が20℃以上高くなるという効果を奏する。この特徴は、繊維やフィルム、成型体等の成形体を高温環境下で利用する場合に極めて有利である。
式(1)又は式(2)の構造単位のポリアルキレンエーテルグリコールの共重合比率は、ポリエーテルエステルの弾性特性等の向上と耐熱性向上という観点から、5〜20%がより好ましく、最も好ましくは8〜15%である。
本発明に係るポリエーテルエステルは、該ポリマー重量の10重量%未満であって、かつ、弾性特性、耐熱性、成形性を阻害しない範囲で、テレフタル酸、1,3−プロピレングリコール、及び上記特定したポリアルキレンエーテル以外の成分が共重合されていてもよい。該成分としては、イソフタル酸、ナフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族カルボン酸、セバシン酸、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、グルタル酸、コハク酸、シュウ酸、アゼライン酸、ジメチルマロン酸、フマル酸、シトラコン酸、アリルマロン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、ピメリン酸、スベリン酸、2,5−ジエチルアジピン酸、2−エチルスベリン酸、2,2,3,3−テトラメチルコハク酸、シクロペンタネンジカルボン酸、デカヒドロ−1,5−(または2,6−)ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビシクロヘキシルジカルボン酸、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルカルボン酸)、3,4−フランジカルボキシレート、1,1−シクロブタンジカルボキシレート等の脂肪族又は脂環式ジカルボン酸、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタメチレングリコール、1,6−ペンタメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の短鎖グリコール成分が挙げられる。また、該成分として3価以上の公知の多価カルボン酸、多価ジオール、多価アミド、多価エステル等をポリエーテルエステル重量に対し0.01〜5重量%で、架橋させてもよい。
本発明に係るポリエーテルエステルは、還元粘度(ηsp/c)が1.0〜5.0dl/gである必要がある。還元粘度は重合度の指標であり、引張強伸度や曲げ強度等の機械的特性、並びに弾性特性や耐圧縮永久歪特性は、重合度に大きく依存する。還元粘度が1.0dl/g未満であると、機械的特性や弾性特性等が低く、衣料用・資材用繊維、フィルム、成型体としての実用性に欠ける。一方、本発明の組成のポリエーテルエステルで還元粘度5.0を超えることは事実上困難である。本発明に係るポリエーテルエステルの還元粘度(ηsp/c)は、好ましくは1.2〜4.5dl/g、より好ましくは1.3〜4.0dl/gである。
本発明に係るポリエーテルエステルの末端カルボキシル基量は、20ミリ当量/kg樹脂以下であることが必要である。末端カルボキシル基量が20ミリ当量/kg樹脂を超えると、呼び結晶化や乾燥工程に激しい着色と溶融成形時の重合度低下が起こる。加熱時のポリマーの着色抑制、溶融成形時の重合度低下抑制、さらに得られた繊維、フィルム、成型体の機械的特性や弾性特性等の維持向上の観点から、本発明に係るポリエーテルエステルエラストマーの末端カルボキシル基量は、15ミリ当量/kg樹脂以下が好ましく、より好ましくは12ミリ当量/kg樹脂以下である。
本発明に係るポリエーテルエステルは、ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル(以下、BPEとも略記する)の共重合比率が、ポリエーテルエステル重量に対して1.8重量%以下であることが必要である。BPEは、下記式:
Figure 0005346207
に示すように、1,3−プロピレングリコールが2量化して生成され、そのままポリマーに共重合される。
ポリマーに共重合されたBPEが、該ポリマーの耐熱性や耐光性を低下させるということは既に公知であるが、本発明者らは、ポリエーテルエステルにおけるBPEは、耐熱性や耐光性のほか、成形体の弾性特性や耐圧縮永久歪特性の発現に強く関与することを発見した。本発明者らは検討を重ね、その上限値が1.8重量%以下であることを発見した。ポリエーテルエステルに共重合されたBPEが弾性特性等の発現に如何に関与するか、そのメカニズムは明らかではないが、ハードセグメントであるPTTの結晶性に関与するものと推測される。すなわち、BPEの共重合比率が1.8重量%を超えると、PTTの結晶性が阻害され、伸長時或いは圧縮時にPTTが分子鎖を強く拘束できなくなるためであると考えられる。ポリマーの着色抑制及び弾性繊維等の弾性特性向上の観点から、本発明の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマーに含有されるBPEの量は、1.3重量%以下が好ましく、より好ましくは1.0重量%以下である。
本発明に係るポリエーテルエステルは、明度の指標となるL*値が70以上、黄色味の指標となるb*値が−5〜20、赤色味の指標となるa*値が−5〜5であることが必要である。本発明のポリエーテルエステルを原料とする繊維を染色した時又は顔料を配合した時に鮮明な発色性を実現するという観点から、L*値は80以上、b*値は0〜15、a*値は−2〜3であることがより好ましい。
本発明に係るポリエーテルエステルは、熱重量測定において酸素雰囲気下、5℃/minの速度で昇温した時に測定開始前の重量に対して重量が5%減少する温度(以下、5%減量温度という)が300℃以上である必要がある。5%減量温度は、加熱時のポリマーの着色及び長期保存性と強い相関があり、5%減量温度が300℃以下であると予備結晶化や乾燥工程でポリマーが激しく着色し、L*値、b*値及びa*値を本発明に規定する範囲内に制御することができない。またポリマーを1ヶ月間保存(暗室・室温)した場合、やはり同様の着色が起こるばかりか、還元粘度が保存前の80%以下に低下してしまう。本発明に係るポリエーテルエステルの5%減量温度は、ポリマー着色抑制及び長期保存性向上の観点から、310℃以上が好ましく、最も好ましくは320℃以上である。
本発明に係るポリエーテルエステルは、融点(示差走査型熱量分析装置で測定した時のピークトップ温度)より20℃高い温度で10分間保持した前後の還元粘度保持率が80%以上である必要がある。還元粘度保持率が80%未満であると、優れた機械特性や弾性特性等を確保するために原料のポリエーテルエステルの還元粘度(ηsp/c)を1.0〜5.0dl/gに設定したとしても、溶融成形時に重合度低下が起こるので最終製品たる成形体が、優れた機械特性や弾性特性等を発揮することはできない。溶融成形時の重合度低下抑制の観点から、還元粘度保持率は82%以上が好ましく、最も好ましくは85%以上である。
本発明に係るポリエーテルエステルは、最終製品たる成形体が優れた弾性特性や耐圧縮永久歪特性を十分に発揮できるという観点から、トリメチレンテレフタレートの環状ダイマー含量は、ポリエーテルエステルに対して1.0重量%以下であることが好ましい。
本発明に係るポリエーテルエステルは、艶消し剤、摩擦係数低減剤、さらには結晶化促進剤として、平均粒径が0.01〜2μmである酸化チタンを0.01〜3重量%含有することが好ましい。
ゴム的な弾性特性を有するポリエーテルエステルは、摩擦係数が非常に高く、繊維の場合、製糸工程(紡糸、延伸工程を含む)において毛羽や糸切れが多発するという問題を有する。ポリエーテルエステルに平均粒径が0.01〜2μmである酸化チタンが0.01〜3重量%含有されていることによって、摩擦係数が低減され、製糸工程における毛羽等の発生が抑制でき、自動車部品などの樹脂成型体として利用する場合の摺動性向上にも繋がる。更に驚くべきことに、本発明のポリエーテルエステルに含まれる酸化チタンは、結晶相の効率的な結晶化を促し、その結果として、例えば得られた繊維の弾性特性が向上するという効果を奏する。艶消し剤、摩擦係数低減剤又は結晶化促進剤として酸化チタンを利用する場合、酸化チタンの好ましい含有量は、0.03〜1.5重量%、より好ましい含有量は、0.05〜1重量%である。
本発明に係るポリエーテルエステルは、下記式:
Figure 0005346207
{式中、Aは、ヒンダードフェノール基量であり、そして、Bは、ポリエーテルエステルのポリトリメチレンテレフタレートユニット数を示す。}を満足する範囲内でヒンダードフェノール系酸化安定剤を含有することが好ましい。
A/Bが2.5×10-4以上、0.12以下の範囲にあることで、還元粘度や色相を本発明に規定するレベルまで到達させることができ、また加熱時のポリマーの着色や長期保存時のポリマーの着色・重合度低下を抑制することができる。A/Bは、6.5×10-4≦A/B≦0.05がより好ましい。
本発明に使用するヒンダードフェノール系酸化安定剤の種類としては、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソフタル酸、トリエチルグリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート等が挙げられる。特にペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール,ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェートが好ましい。
さらに驚くべきことに、本発明に係るポリエーテルエステルは、特定量の硫黄系酸化安定剤をヒンダードフェノール系酸化安定剤と併用した場合に限り、耐酸化安定性、耐熱性、及び長期保存性、並びに色相を著しく向上させることができる。ポリエーテルエステルに含まれる硫黄量としては、10ppm〜500ppmの範囲が好ましい。硫黄含有量が10ppmを下回ると、ヒンダードフェノール系酸化安定剤との併用に因る相乗効果が認められず、逆に硫黄含有量が500ppmを超えると、重合反応を阻害し、目的とする重合度まで到達できないばかりか、長期保存中に重合度が低下してしまう。より好ましい硫黄含有量は、20ppm〜400ppm、最も好ましくは30ppm〜300ppmである。
本発明に使用する硫黄系酸化安定剤は、チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンゾイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオカルバミン酸塩系、チオジプロピオンエステル系等の硫黄を含む化合物であり、特にチオエーテル系が好ましい。チオエーテル系酸化安定剤の具体的例としては、ジオクチルチオジプロピオネート、ジドデシルチオジプロピオネート、ジドデシルステアリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジデシルチオジプロピオネート、ジドデシル−β,β′−チオジブチレート、ジステアリル−β,β′−チオジブチレート、ペンタエリスリトール−テトラキス(ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(ドデシルチオアセテート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(ドデシルチオブチレート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3′−チオジプロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]等が挙げられる。特にペンタエリスリトール−テトラキス(ラウリルチオプロピオネート)、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジラウリル3,3′−チオジプロピオネートが好ましい。
一方、本発明に係るポリエーテルエステルは、溶融成形時の熱分解を抑制する目的で、ポリマーの重合度や色相を阻害しない範囲で、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、リン酸、亜リン酸、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート等のリン系熱安定剤を含有してもよい。
本発明に係るポリエーテルエステルは、弾性特性や成形性を阻害しない範囲で、必要に応じて、前記した物以外の各種添加剤、例えば消泡剤、整色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、酸化チタン以外の艶消し剤等と、共重合又は混合してもよい。
さらに、本発明に係るポリエーテルエステルは、ビスフェノールA−グリシジルエーテル、ビスフェノール−グリシジルエーテル、ビスフェノールS−グリシジルエーテル、イソシアヌル酸−トリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトール、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、N,N’−テレフタロイルビスカプロラクタム、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1種の鎖伸長剤を、該ポリエーテルエステルに対して10重量%未満の範囲内で含有してもよい。
以下、本発明に係るポリエーテルエステルの製造方法を説明する。
テレフタル酸を主としたジカルボン酸又は/及びその低級アルコールエステル誘導体、1,3−プロピレングリコール(以下、PDOとも略記する)、及びポリアルキレンエーテルグリコールを、エステル化触媒又は/及びエステル交換触媒の存在下、180〜240℃の温度で2〜10時間、エステル化反応又は/及びエステル交換反応を行う。ジカルボン酸又はその低級アルコールエステル誘導体に対するPDOの仕込み比率は、モル比で0.8〜3の範囲であることが、エステル交換反応を円滑に進捗させ、かつ、BPE生成を抑制するという観点から、好ましい。PDOの仕込み比率は、より好ましくは、1.4〜2.5、最も好ましくは1.5〜2.3である。
エステル化触媒としては、チタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシドに代表されるチタンアルコキサイド、粒径が1〜100nmの酸化チタンを挙げることができる。またエステル交換触媒としては、上記チタンアルコキサイド、上記酸化チタン、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢酸ナトリウム、蟻酸カルシウム、蟻酸マグネシウム、蟻酸マンガン等が挙げられる。これらの添加量は、用いるジカルボン酸に対して0.02〜2重量%で添加することが好ましい。触媒量が0.02重量%未満であるとエステル化反応又は/及びエステル交換反応に長時間要し、末端カルボキシル基量やBPE含有量の増大を招き、一方、触媒量が2重量%を超えると、熱分解反応を加速し、末端カルボキシル基量が増大する。該触媒量は、より好ましくは0.05〜1.5重量%、最も好ましくは0.1〜1.2重量%である。
エステル化反応又は/及びエステル交換反応は窒素気流下で行うが、使用する窒素の酸素含有量を5ppm以下とすることが、末端カルボキシル基量、ポリエーテルエステルの5%減量温度及び還元粘度保持率を本発明の範囲内に制御する観点から、非常に重要である。窒素の酸素含有量は、好ましくは3ppm以下、より好ましくは2ppm以下である。
エステル化反応又は/及びエステル交換反応後、チタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシドに代表されるチタンアルコキサイド、粒径が1〜100nmの酸化チタン等重縮合反応触媒の存在下、少なくとも1torr以下、好ましくは0.5torr以下の減圧下、200〜260℃の温度範囲内で重縮合反応を行う。エステル化反応触媒又は/及びエステル交換触媒にこれらのチタン触媒を用いる時は、該触媒を追加しなくてもよく、反応速度を高めるために追加してもよい。重縮合反応においては、重縮合反応触媒量は用いるジカルボン酸に対して0.02〜2重量%で添加することが好ましく、より好ましくは0.05〜1.5重量%、最も好ましくは0.1〜1.2重量%である。重縮合反応温度と反応時間は、プレポリマーの末端カルボキシル基量を評価しながら、20ミリ当量/kg樹脂以下になるように調整することが、目的とするエラストマーを得るという観点から、好ましい。重縮合反応速度を高め、かつ熱分解反応を抑制するという観点から、220〜245℃の温度範囲内で、重縮合反応時間を、重縮合反応工程の重合物の粘度が時間の経過と共に上昇するうちであって、かつ、4時間以内に調整することが好ましい。
以下、重縮合反応工程についてより詳しく説明する。
まず、本発明に係るポリエーテルエステルを製造する上で重要なことは、エステル化反応やエステル交換反応(以下、エステル化反応等とも略記する)を終了させるタイミングであり、反応率が65%〜95%の範囲でエステル化反応等を終了し、重縮合反応を開始することが好ましい。通常、エステル化反応等は、生成される水やメタノールが、仕込みのジカルボン酸やその低級アルコールエステル誘導体量に対して、理論量留出した時点(すなわち、反応率100%)を終了とし、重縮合反応に移行する。しかしながら、本発明者らは、本発明に係るポリエーテルエステルにおいては、反応率が最終エラストマーの末端カルボキシル基量及びBPE含有量に大きく影響することを見出し、その上限がエステル交換反応率95%であることを明らかにした。一方、その反応率が65%未満であると重縮合反応において重合度があがらず、最終エラストマーの還元粘度が1.0dl/gを下回ってしまう。エステル化反応等の終了タイミングは、より好ましくは反応率70%〜93%、最も好ましくは75%〜92%である。
次に、BPE共重合比率を本発明の範囲内に制御するという観点から、常圧から重縮合反応を行う高真空度(少なくとも1torr以下)に到達するまでの時間を45分以内に制御することが好ましい。45分を超えると、BPEの共重合比率が増えて本発明の範囲を超える。この時間はできるだけ短い方が好ましいが、あまり減圧速度を速くすると、突沸が起こる。したがって、高真空度に到達するまでのより好ましい時間は、20〜45分である。
また、末端カルボキシル基量を本発明の範囲内に制御するためには、重縮合反応工程における熱分解反応を抑制することが重要であって、重縮合反応時のPDOの留去を効率的に行い、重縮合反応時間を短縮する必要がある。そのためには、重合物の比表面積を大きくすることが重要である。例えばヘリカル型攪拌機、ディスクリングリアクタ等を用い、重合物を掻き揚げて、薄膜ができるように効率的な攪拌を行うとともに、釜の容積に対する原料の仕込みの比率を40vol%以下とすることが好ましく、より好ましくは35vol%である。
ヒンダードフェノール系酸化安定剤や硫黄系酸化安定剤を添加する場合は、重合のどの段階で添加してもよく、一度に又は数回に分けて添加してもよいが、エステル化反応やエステル交換反応工程におけるポリアルキレンエーテルグリコールの酸化分解を抑制する観点から、エステル化反応等の開始前に添加することが好ましい。ヒンダードフェノール系酸化安定剤の添加量としては、ポリエーテルエステルのポリトリメチレンテレフタレートユニット数(B)に対するヒンダードフェノール基量(A)が、2.5×10-4≦A/B≦0.12になるように添加することで、還元粘度や色相を本発明に規定するレベルまで到達させることができ、また加熱時のポリマーの着色や長期保存時のポリマーの着色・重合度低下を抑制することができる。
また、硫黄系酸化安定剤は、ポリエーテルエステル中に含有される硫黄量が10ppm〜500ppmになるために十分な量で添加することが、耐酸化安定性、耐熱性、及び色相、並びに長期保存性向上の観点から好ましい。
リン系熱安定剤を添加する場合は、エステル化反応等の終了後に添加することが、エステル化反応等促進の観点から好ましい。
艶消し剤、摩擦係数低減剤、結晶化促進剤として酸化チタンを添加する場合、重縮合反応工程に添加することができる。その場合、一度、溶剤に酸化チタンを加えて攪拌した後、遠心分離機、フィルター等を用いて酸化チタンの凝集体を取り除いた酸化チタン分散溶液を、重合の任意の段階で重合物に添加する。艶消し剤等に利用する酸化チタンは、硬度が低く溶剤への分散性が良好な点で、アナターゼ型が好ましい。また、酸化チタンの平均粒径は0.01〜2μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜1μmである。平均粒径0.01μm未満のものは実用的に得ることが困難であり、一方、平均粒径が2μmを超えるものは、凝集体を作りやすい。用いる酸化チタンの粒度分布は1μm以上の粒度成分が全体の20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%である。
目的とする重合度に達した時点で、高真空下で実施していた重縮合反応を終了し、溶融状態のポリマーをロープ状又はフィルム状に冷却水中に払出して固化させるが、このとき末端カルボキシル基量、5%減量温度、及び還元粘度保持率を、本発明の範囲内に制御するという観点から、真空解除に利用する窒素の酸素含有量を100ppm以下に制御することが好ましい。さらに同様の観点から、溶融ポリマーをロープ状に払い出す時のロープの径を2mm〜8mmに、フィルム状に払い出す時はフィルムの厚みを10mm以下に、溶融ポリマーが冷却水に接触するまでの時間を5秒以内に、また冷却水の温度を20℃以下に制御することが好ましい。
真空解除に利用する窒素の酸素含有量が100ppmを超えると、窒素中に含まれる酸素の影響でポリエーテルエステルが酸化分解を起こし、末端カルボキシル基量、5%減量温度、及び還元粘度保持率が、本発明の範囲を外れてしまう。真空解除に利用する窒素の酸素含有量は、より好ましくは50ppm以下、最も好ましくは20ppm以下である。溶融ロープの径が2mm未満であると、溶融ロープの比表面積が大きくなり、酸素の影響を受けやすくなる。溶融ポリマーが冷却水に接触するまでの時間が5秒を超えると、同様に酸素の影響を受け、ポリエーテルエステルの酸化分解が起こる。溶融ロープの径が8mmを超えると又は溶融フィルムの厚みが10mmを超えると、固化速度が遅くなり、水中の溶存酸素の影響で酸化分解が起こってしまう。冷却水の温度が20℃を超えても、同様に固化速度が遅くなり、酸化分解を引き起こす。
上記方法で得られたポリエーテルエステルを、チップ、粉にして、窒素やアルゴン等の不活性ガスの存在下又は真空下、気相温度をポリエーテルエステルの融点より20℃以上低い温度に設定して固相重合を行うことが好ましい。固相重合を行うことによって、末端カルボキシル基量を増大させることなくポリマーの還元粘度を増加させることができ、同時に、昇華性の環状ダイマーの含有量を低下させることができる。
不活性ガスを流しながら固相重合を行う場合、固相重合に利用される不活性ガスの酸素含有量は100ppm以下であることが、ポリエーテルエステルの酸化分解を抑制する観点から、好ましい。さらに、固相重合温度−20℃〜固相重合温度+20℃に加熱された不活性ガスを、固相重合装置に導入することが、固相重合速度を速めて、生産効率を向上させ、ポリマーの酸化分解や熱分解を抑制するという観点から、好ましい。同様の観点から、ポリマー1g当たりの不活性ガスの流量は、10ml/min以上に制御することが好ましい。
真空中で固相重合を行う場合、真空度は30kPa以下であることが好ましく、より好ましくは20kPa以下、最も好ましくは0.001〜10kPaである。
本発明に係るポリエーテルエステルは、融点以上の温度に加熱溶融させることで、繊維、不織布、フィルム、射出成型体、押出成型体、圧縮成型体、ブロー成型体等の成型体、並びに発泡体が得られる。本発明に係る各種ポリエーテルエステル成形体は、本発明で規定する下記ポリエーテルエステルの特徴を有する:
(a)末端カルボキシル基量≦20ミリ当量/kg樹脂;
(b)ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルの共重合比率≦1.8重量%;
(c)熱重量測定における5%減量温度≧300℃;
(d)融点よりも20℃高い温度で10分間保持した前後の還元粘度保持率≧80%。
通常、ポリエーテルエステルは、熱履歴を経るごとに末端カルボキシル基量(a)が増大し、ポリエーテルエステルの5%減量温度(c)や還元粘度保持率(d)が低下するが、本発明に係るポリエーテルエステルから構成される繊維や成型体等は、驚くべきことに溶融成形時の酸化分解及び熱分解が抑制され、原料のポリエーテルエステルが有する(a)〜(d)の特徴を保持することができる。ポリエーテルエステルは、成形のし易さやその弾性特性、軟化温度の高さから、例えば繊維や不織布は自動車の内装として、ポリエーテルエステルの成型体は自動車用部品として利用されるが、本発明に係るポリエーテルエステル成形体の上記特徴は、高温状態で長期使用される繊維や成型体の機械的特性や弾性特性等が維持されることを保証するものである。
以下、本発明に係るポリエーテルエステルから構成される成形体であるポリエーテルエステル繊維及び発泡体について詳細に説明する。
本発明に係るポリエーテルエステル繊維は、引張強度が0.3cN/dtex以上であり、かつ、伸度が200%以上であることが好ましい。
引張強度が0.3cN/dtex未満であると、衣料用繊維として実用に耐えず、一方、伸度が200%未満であると、伸長時に布帛が破裂し、やはり衣料用繊維として実用に耐えない。なお、引張強度は高ければ高いほど良いが、本発明の組成で引張強度10cN/dtexを超えることは困難である。引張強度は0.5〜10cN/dtexが好ましく、より好ましくは0.8〜5cN/dtexである。また、使用用途により必要伸度は異なるので、伸度に上限値を設定する必要はないが、現実的には2000%以下である。
本発明に係るポリエーテルエステル繊維は、200%伸長を3回繰り返した後の弾性回復率が70%以上であって、かつ、3回目の伸長中の伸長160%における応力に対する、3回目の収縮中の伸長160%における応力の保持率が、50%以上であることが好ましい。下記条件で熱処理した後の上記弾性回復率が70%以上、応力保持率が50%以上であることが、さらに好ましい。
(熱処理条件)
50%伸長状態で190℃の乾熱処理を1分間実施し、その状態で95℃の熱水で30分間処理した後、さらに170℃の乾熱処理を1分間実施する。
上記条件での熱処理した後の弾性回復率が70%以上、かつ、応力保持率が50%以上であることによって、乾熱環境下、湿熱環境下で長期間利用された場合でも、ポリエーテルエステル繊維は優れた弾性特性等を維持することができる。熱処理前と熱処理後のいずれにおいても、弾性回復率は75%以上、応力保持率は55%以上が好ましく、最も好ましくは弾性回復率が80%以上、応力保持率が60%以上である。
本発明に係るポリエーテルエステル繊維は、ゴム的な弾性特性があるために、表面摩擦抵抗が著しく高く、他素材との複合化の際に、糸切れや毛羽が発生する。繊維を扱う上においては表面摩擦抵抗を下げるために、繊維表面に仕上げ剤を付けることが好ましい。仕上げ剤の構成成分として、下記化合物(I)を30〜100重量%含有する仕上げ剤を用いることが好ましい:
化合物(I):珪素原子含有率が20〜50重量%であって、25℃の粘度が2〜50センチストークスである有機珪素化合物。
仕上げ剤の繊維上への付着量は、繊維重量に対して0.5〜9重量%であることが必要である。0.5重量%未満では、表面摩擦抵抗を下げる効果が低くなる。また、9重量%を超えると、繊維の走行時の抵抗が大きくなり過ぎ、仕上げ剤がロール、熱板、ガイド等に付着して、それらを汚すこととなる。仕上げ剤の繊維上への付着量は、好ましくは2.0〜8重量%、さらに好ましくは、3.0〜8.0重量%である。もちろん、仕上げ剤の一部が繊維内部へ浸透してもよい。
以下、仕上げ剤の好ましい成分について説明する。
前記化合物(I)の有機珪素化合物は、ポリエーテルエステル繊維表面の平滑性を向上させ、そのすべりにより摩耗性を向上させる成分である。そのような成分としては、25℃の粘度が2〜50センチストークスである有機珪素化合物が好ましい。
有機珪素化合物としては、特にシリコーン誘導体が好ましい。シリコーンの繰り返し単位としては、ジメチルシロキサン、メチルエチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン等があり、末端は水酸基、トリメチルシリル基等がある。繰り返し単位のシロキサンの水素の一部又は全部が、繰り返し単位数1〜100のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、あるいはこれらのブロック又はランダム共重合体で変性されてもよい。仕上げ剤中の有機珪素化合物の含有量としては、70〜95重量%が好ましく、より好ましくは80〜90重量%である。また、25℃の粘度としては、5〜30センチストークスがより好ましい。
仕上げ剤には、前記有機珪素化合物以外に、分子量300〜1500のエステル化合物、鉱物油、乳化剤、制電剤を含有させることができ、その総量は仕上げ剤重量に対して5〜30重量%の範囲である。
エステル化合物としては、例えば、ステアリン酸イソオクチルステアレート、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソオクチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸オレイル、ステアリン酸イソトリデシル、オレイン酸オレイル、アジピン酸ジオレイル、トリラウリン酸グリセリンエステル、ビスフェノールAジラウリレート、ビスオキシエチルビスフェノールAのジラウリレート、ビスオキシエチルビスフェノールAのジオクタネートが挙げられ、鉱物油としては分子量が500を超えるか又は常温で固体状になる脂肪族アルコールエステル、ヤシ油、ナタネ油等の多価数アルコールエステル等が挙げられる。特に好ましいものは、ステアリン酸オクチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸オレイル等、30℃におけるレッドウッド粘度が40〜800秒の鉱物油である。エステル化合物、鉱物油は、仕上げ剤重量に対し10重量%未満であることが好ましい。
乳化剤としては、炭素数5〜30のアルコール、カルボン酸、アミン、アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが付加した化合物であって、該オキシドの付加モル数が1〜100である非イオン性界面活性剤が挙げられる。乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、プロピレンオキシド/エチレンオキシドが共重合したモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールAジラウリレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAジステアレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAステアレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAジオレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAオレート、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリン酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンオレイン酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエタノールアミド、ジエチレントリアミンオレイン酸アミド等が挙げられる。
乳化剤の含有量は仕上げ剤重量に対し2〜15重量%であることが、乳化性、繊維の集束性、仕上げ剤の付着性、耐摩耗性を高める観点から、好ましい。
制電剤としては、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよいが、特にアニオン性界面活性剤を用いることが、制電性、耐摩耗性、乳化性、防錆性を付与できる観点から、好ましく、特にスルホン酸塩化合物、高級アルコール、エチレンオキシドを付加させた高級アルコール、アルキルフェノール類のリン酸エステル塩、高級脂肪酸塩が好ましい。
制電剤の含有量は仕上げ剤重量に対し3〜15重量%であることが、繊維に制電性、耐摩耗性、乳化性、防錆性を付与するという観点から、好ましい。
また、本発明に係るポリエーテルエステル繊維は、摩擦係数低減の観点から、平均粒径が0.01〜2μmである酸化チタンを0.01〜3重量%含有することが好ましい。平均粒径が0.01〜2μmである酸化チタンを0.01〜3重量%含有する本発明に係るポリエーテルエステル繊維は、PTT(結晶相)の効率的結晶化が起こり、弾性特性、特に弾性回復率が向上するという驚くべき効果を奏する。
本発明に係るポリエーテルエステル繊維は、繊維の黄色味の指標となるYI値が−30〜5、繊維の色相の指標となるWI値が50〜150であることが好ましい。YI値は−20〜4.5が好ましく、−10〜3がより好ましい。WI値は60〜100が好ましく、70〜90がより好ましい。
本発明に係るポリエーテルエステル繊維の形態は、長繊維、短繊維のいずれであってもよく、他成分とサイド・バイ・サイド型又は偏芯鞘芯型に張り合わされていてもよい。また、本発明に係るポリエーテルエステル繊維は、長繊維の場合、マルチフィラメント、モノフィラメントのいずれであってもよい。本発明に係るポリエーテルエステル繊維は、スパンボンド法、マイクロウェブ法等による不織布に加工されていてもよい。断面形状についても、丸型、三角型、扁平型、星型、W型、2〜10葉等、特に制限はなく、中実であっても中空であってもよい。
本発明に係るポリエーテルエステル繊維の総繊度としては特に制限はないが、5〜10000dtex、衣料用として用いる場合は、5〜1000dtexが好ましい。単糸繊度も特に制限はないが、好ましくは1〜100dtex、より好ましくは2〜70dtex、最も好ましくは5〜50dtexである。
本発明に係るポリエーテルエステル繊維は、その周りにポリエーテルエステル繊維以外の繊維を巻き付けることにより、高度な伸縮性、耐久性、耐熱性、耐塩素性、熱セット等を有するポリエーテルエステル加工糸を提供することができる。そのような加工糸としては、長繊維を巻き付けたシングルカバーヤーン、ダブルカバーヤーン、ツイステッドヤーン、プライヤーンや、短繊維を巻き付けたコアスパンヤーンや長繊維と短繊維を両方巻き付けた加工糸等が挙げられる。加工糸に含まれるポリエーテルエステル繊維の重量%は、通常0.5〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。こうして得られる加工糸の伸度は通常50〜300%、50%伸張時の弾性回復率は80〜100%である。このような性能を出すためには、加工糸重量中のポリエーテルエステル繊維の重量は3〜90重量%である。これらの加工糸において、ポリエーテルエステル繊維以外の繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリ乳酸繊維等の合成繊維、ベンベルグ、レーヨン、ポリノジック、アセテート等の化学繊維、コットン、ウール、絹等の天然繊維等が挙げられる。
本発明に係るポリエーテルエステル繊維は、紡糸と延伸を別々の工程で行う通常法、紡糸と延伸を連続的に行う直延法、延伸工程なしで一挙に繊維を全配向させる高速紡糸法、繊維が部分的に配向しているPOY法等いずれの方法で製造されたものであってもよいが、以下通常法を例にとって本発明のポリエーテルエステル繊維の製造方法の説明をする。
本発明に係るポリエーテルエステル繊維を製造するためには、前記した本発明に係るポリエーテルエステルを用いることが重要である。原料となるポリエーテルエステルは、乾燥機で窒素気流下30ppm以下の水分率までに乾燥させることが好ましい。ここで、乾燥機に導入する窒素の酸素含有量は20ppm以下であることが好ましい。さらに、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェートに代表されるヒンダードフェノール系酸化安定剤を、エラストマー重量に対して0.2〜5重量%を混合させてもよい。酸化安定剤が0.2重量%未満であると、乾燥工程で混入する酸素を十分にトラップできないし、5重量%を超えると溶融紡糸工程でゲル化を引き起こし、強伸度低下や弾性特性の低下を招くほか、得られる繊維が黄色く着色する。酸化安定剤は、より好ましくは0.3〜3重量%、最も好ましくは0.5〜2重量%である。
溶融紡糸温度は、エラストマーの組成によっても異なるが、180〜260℃が好ましく、より好ましくは200〜250℃である。溶融紡糸温度が180℃未満であると温度が低すぎて安定した溶融状態になりにくく、得られた繊維の斑が大きくなり、目的とする強伸度や弾性特性を達成できなくなり、一方、紡糸温度が260℃を超えると熱分解が激しく、重合度が低下してしまう。
繊維の巻取速度は特に制限はないが、通常3500m/min以下、好ましくは2500m/min以下、より好ましくは2000m/min以下である。巻取速度が3500m/minを超えると、延伸工程で延伸倍率を上げることができないので、分子を配向させることができず、十分な強伸度(機械的物性)や弾性特性を発揮することができず、巻き糸によるボビンの巻きしまりが起こり、ボビンを巻取機より取り外すことができなくなる。延伸時の延伸倍率は、好ましくは1.2〜7倍、より好ましくは1.5〜6倍、最も好ましくは1.8〜5倍である。このような延伸処理と後述する熱処理を組み合わせることにより、目的とする強伸度及び弾性特性を満足する弾性繊維を安定して製造することができる。
延伸の際の温度は、延伸ゾーンでは好ましくは0〜65℃、より好ましくは10〜60℃、最も好ましくは15〜50℃である。必要に応じて25〜60℃で予熱を行ってもよい。延伸ゾーンの温度が0℃未満であるか又は65℃を超えると、糸切れが多発し、目的の物性を満足する弾性繊維を安定的に得ることができない。
延伸後の熱セットは行っても行わなくてもよいが、経時変化を避ける目的で熱セットを行ってもよい。熱セットを行う場合の温度の上限は180℃である。熱セット温度が180℃を超えると繊維が熱セットゾーンで切れてしまい延伸することができない。また熱セットを行う場合は、延伸速度対比90〜120%の速度で行うことが、糸切れ抑制及び弾性特性を阻害しないという観点から、好ましい。
延伸糸の巻取速度は、熱セットを行わない場合、延伸速度対比、熱セットを行う場合、熱セット速度対比、70〜97%に設定して行うことが好ましく、97%を超えると糸切れが多発し、さらに巻き取った後に繊維が収縮し、パッケージの巻きしまりが起こるので、パッケージの解舒不良が発生し、ひどい場合はパッケージをスピンドルから抜き取ることができなくなる。一方、巻取速度設定が延伸速度等に対して70%未満であると、糸ゆれにより糸切れや毛羽が発生する。より好ましい巻取速度は、延伸速度等に対して75〜95%、最も好ましくは80〜93%である。また巻取り前に結晶化による弾性特性向上を目的として熱処理を行ってもよい。熱処理を行う場合の温度の上限は180℃である。熱セット温度が180℃を超えると繊維が軟化し、安定に巻き取ることができなくなる。
以上のようにして得られる弾性繊維は、単独使用でもよいが、とりわけ他素材繊維と混用することで、弾性特性に優れ、かつ染色における発色性が優れた布帛となる。他素材繊維としては特に限定はないが、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の合成繊維、ベンベルグ、レーヨン、ポリノジック、アセテート等の化学繊維、コットン、ウール、絹等の天然繊維と混用することで、従来公知の混用布帛では得られない弾性回復特性と発色性を発揮させることができる。
本発明に係るポリエーテルエステル繊維は、織編物に使用できる。織編物の構造、製法は、特に制限するものではなく、公知の技術を用いることができる。本発明に係るポリエーテルエステル繊維の形態としては、そのまま、又は先に述べた加工糸として織編物としたものであることができる。
織編物に含まれるポリエーテルエステル繊維の割合は特に制限はないが、弾性特性、取り扱い性、形態安定性等の観点から、好ましくは0.2〜40重量%、より好ましくは1〜20重量%である。一方、加工糸の場合は、特に制限はなく、任意の混合割合を取ることができる。
織物に適用される織組織は、平織、二重織、綾織等があるが、織密度を高くすることが容易であるという点で平織物が好ましい。織密度としては、以下の式:
Figure 0005346207
で定義されるカバーファクターKが500〜4000の範囲であることが好ましく、1000〜2500がさらに好ましい。
編物では、性能を発揮するために、ウエール/吋が10〜100、好ましくは、12〜50、コース/吋が10〜200、好ましくは、12〜100である。
織編の目付は、通常10〜1000g/m2である。目付が10g/m2未満であると、耐久性が悪くなり、一方、1000g/m2を超えると編物が堅くなり弾性特性が出にくい場合がある。織編の目付は、好ましくは、20〜500g/m2である。
編物のカバーファクターK’は以下の式:
Figure 0005346207
{式中、D1:1cm当たりの編物のウェール数、D2:1cm当たりの編物のコース数、そしてDr:編物に使用する繊維の繊度(単位:デシテックス)である。}で表される。
本発明においては、編物のカバーファクターK’は、弾性特性、耐久性の観点から、50〜800が好ましく、特に好ましくは、100〜800である。カバーファクターK’が50より小さくなると、耐切創性が低下し、800より大きくなると耐久性の低下が起こる場合があるからである。
本発明において、編物の組織としては、一般的に使用されるものを用いてよく、経編、緯編のいずれでもよく、平編(天竺)、ゴム編、パール編、タック編、浮き編、片畦編、レース編、両畦編、添え糸編、もじり畦編、メリディアン、トリコット、ラッセル、二重トリコットなどがその例として挙げられる。
編物は、耐久性、耐候性、耐光性の向上などを目的として、表面、内部の一部又は全部に樹脂を付着又は含浸させてもよい。
含浸させる樹脂としては、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を、そのまま、又は改良して使用してもよく、必要に応じては複数種類の樹脂を混合してもよい。使用可能な樹脂として、例えば熱可塑性樹脂としては、シリコン樹脂、フッ素系樹脂、ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム、ポリブタジエンゴム、アクリル酸エステルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴムなど)、ウレタン樹脂、ナイロン6、ナイロン6・6等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。
含浸させる樹脂量としては、編物重量の5〜90重量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは200〜80重量%であることが望ましい。
本発明の織編物は、染色されていてもよく、例えば製編織後、常法により精錬、プレセット、染色、ファイナルセットの工程を経て染色することができる。また、必要に応じて、精錬後、染色前に常法によるアルカリ減量処理を行うことができる。
精練は40〜98℃の温度範囲で行うことができるが、リラックスさせながら精練することが、弾性回復特性を維持向上させる観点から、好ましい。
染色前後の熱セットは、一方又は両方を省略することも可能であるが、布帛の形態安定性、染色性を向上させるためには両方行うことが好ましい。熱セットを行う場合、弾性回復特性及び発色性に優れた織編物を得るためには、温度と時間を特定範囲内に制御することが必要である。熱セット温度としては、100〜180℃が好ましく、より好ましくは110〜160℃であり、熱セット時間としては10秒〜3分が好ましく、より好ましくは20秒〜1分30秒である。熱セット温度が180℃を超えると、前記セット時間内であったとしても得られる染色物の弾性特性や発色性が損なわれるとともに風合いも低下し、一方、熱セット時間が3分を超えると、例え100〜180℃温度で熱セットを行ったとしても、目的とする弾性回復特性、発色性に優れた染色物を得ることができない。K/S値は染色物の発色性の指標であり、衣料用としての実用に耐える値としては、0.5以上であるが、本発明に係るポリエーテルエステル繊維を少なくとも一部に含む布帛を上記方法で精錬、プレセット、染色、ファイナルセットの工程を経て染色することで、K/S値が0.5以上の染色物が得られる。
次に本発明に係る発泡体について説明する。
本発明において発泡体とは、樹脂の内部に多くの空隙(「気泡」、「ボイド」、「マイクロボイド」、「キャビティー」、「セル」等の語が有する概念をも包含する。)が存在する、見かけ密度の小さい、樹脂の連続相中に、空隙相(空隙は連続のものも、独立のものも含む)が混在した、二相構造又は多相構造を有する樹脂構造体を包含し、例えば、細胞構造を有する高分子、発泡高分子、膨張高分子、高分子発泡体、高分子フォーム等の構造体であり、軟質のものも硬質のものも包含する。
本発明の発泡体の見かけ密度は、クッション性、耐衝撃性、強度が優れるという観点から0.001〜1.2g/cm3 であることが好ましい。0.001g/cm3 未満では気泡部分が多くなりすぎて耐衝撃性や強度が低くなる。1.2g/cm3 を越えると気泡部分が少なすぎてクッション性が悪くなる。より好ましくは0.005〜1.0g/cm3、最も好ましくは0.015〜0.5g/cm3 の範囲である。
本発明の発泡体の製造方法としては特に制限はないが、予め揮発型発泡剤を含浸させたポリマーを射出成形に供しても、あるいは射出成形機に発泡剤を供給する別ラインをつけ、該ラインから揮発型発泡剤をフィードし、射出成形をしてもよい。この場合は、揮発型発泡剤は超臨界状態で、溶融した樹脂と完全相溶であることが好ましい。また射出成形後、結晶化度を向上させ、クッション性、圧縮強度を高めるために、熱処理してもよい。熱処理温度としては50〜220℃、更に好ましくは70〜200℃の範囲である。
本発明において、ポリマーの溶融温度はポリマーの(融点+10)〜(融点+50)℃で溶融することが、発泡性の向上、分子量低下や着色を抑制できるので好ましい温度範囲である。本発明において、射出成形等の成形前、あるいは成形中に、ポリマーに予め揮発型発泡剤を接触、吸収させる圧力には特に限定されない。具体的には通常0.1〜30MPa、好ましくは0.5〜25MPa、より好ましくは1〜21MPaの範囲である。0.1MPa未満の減圧下で行っても発泡効果は少ない。30MPaを超えると装置的なコストが高くなる場合がある。
揮発型発泡剤の具体例としては、例えば、窒素、炭酸ガス、アルゴン、水等不活性化合物発泡剤、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、石油エーテル、ペンタン類(n−ペンタン、2,2−ジメチルプロパン、1−ペンテン、シクロペンタン等)、ヘキサン類(n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、シクロヘキサン等)、ヘプタン類(n−ヘプタン、2,2−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、1−ヘプテン等)、トルエン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロフルオロメタン、メタノール、2−プロパノール、イソプロピルエーテル、メチルエチルケトン等脂肪族炭化水素系発泡剤、塩化メチル、ジクロロエタン、クロロホルム、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロエタン、クロルトリフルオロメタン、ジクロルジフルオロメタン、フルオロクロロエタン、ジクロルテトラフルオロエタン等が挙げられる。フルオロカーボン類の具体例としては、例えば、フロン(R−11、R−12)、代替フロン(R−134a)、CFC−11、CFC−12、CFC−113、CFC−114等のCFCシリーズのフロン(フレオン)ハロゲン化炭化水素系発泡剤等が挙げられる。本発明においては、揮発型発泡剤としては、一般的には、安全性と経済性、地球環境安全性を兼ね備えた揮発性発泡剤である炭酸ガスや水が特に好ましい。
本発明においては、揮発型発泡剤の添加量は、発明の目的を損なうものでなければ特に制限されない。本発明においては、揮発型発泡剤の添加量は、発泡成形時の目的とする発泡倍率や発泡剤によっても異なるが、一般的には、ポリマー重量に対して、1〜30重量%が好ましく、3〜27重量%がより好ましく、5〜25重量%が更に好ましい。通常、1重量%未満だと発泡しなくなったり不均一になったりする傾向があり、逆に30重量%を超えると、過剰に添加した効果がないばかりか、外観不良や気泡の径が不均一になる等の問題が生ずる場合があり好ましくはない。
本発明では、発泡性の向上や発泡体の物性を目的(例えば、発泡性の向上、発泡体の軟質性、引張強度、耐熱性、耐候性等の向上)として、必要に応じて各種添加剤(核剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、内部離型剤、無機添加剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料等滑剤、分散剤)等を添加することができる。核剤の具体例としては、例えば、酸化チタン、タルク、カオリン、クレー、珪酸カルシウム、シリカ、クエン酸ソーダ、炭酸カルシウム、珪藻土、焼成パーライト、ゼオライト、ベントナイト、ガラス、石灰石、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸第二鉄等が挙げられる。発泡体中のこれらの添加剤の含有量としては、目的に応じて任意に設定できるが、通常は0.01〜50重量%、好ましくは、0.2〜35重量%である。これらの添加剤はポリマーの重合中、あるいは射出成形機の中でポリマーと混練して混ぜてもよく、その添加方法は公知の方法を用いることができる。
また、発泡体の機械特性、結晶化特性、発泡性を改良するために、他の樹脂を混合してもよい。そのような樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、ウレア樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン樹脂等、公知のものを使用してよく、この混合比率も目的に応じて任意に設定できる。好ましくは、1〜50重量%である。
こうして得られた発泡体は、クッション性、耐衝撃性、断熱性などに優れているため各種包装・梱包材、建築用・工業用断熱材、家具、自動車クッション材、内装材、生活用品、スポーツ用品、健康用品、農業用資材などに好適に使用される。用途により、発泡体中の空胞が隣接空胞と小孔で通じている(連続気泡)状態にあることが望まれる場合と、個々の空胞が独立して存在する(独立気泡)ことが望まれる場合もあり、どちらでもよい用途もある。発泡体は、2〜3倍の低発泡から10〜20倍の中発泡、30〜50倍(場合により、30〜100倍)の高発泡とすることができる。
本発明の好ましい態様として、ポリエーテルエステルにゴムを配合したものを挙げることができる。本発明に係るポリエーテルエステルは、PBT系エラストマー等の従来技術のポリエーテルエステルと比較して、弾性特性、耐圧縮永久歪特性、及び柔軟性が優れているが、本発明に係るポリエーテルエステル20〜90重量%にゴム80〜1重量%を配合してなるポリエーテルエステル組成物は、本発明の特徴である耐酸化安定性及び耐熱性を維持したままで、弾性特性、耐圧縮永久歪特性、及び柔軟性をさらに向上させることができる。各種の合成ゴム又は天然ゴムを単独で又は組み合わせて利用することができる。好ましいゴムとしては、極性ジエン系ゴム又はその水素添加物、アクリルゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロフォスファゼンゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、シリコーンゴムやフッ素ゴムが挙げられる。本発明に係るポリエーテルエステルにゴムが配合されたポリエーテルエステル組成物は、単純にこれらをブレンドするだけでも得ることができるが、耐圧縮永久歪特性をさらに向上させるために、架橋を施してもよい。本発明において利用できる架橋剤としては、通常のゴムに対して利用される過酸化物、樹脂架橋剤、硫黄などの架橋剤が挙げられる。
具体的な架橋剤としては、1,3−ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3−(t−ブチルクミルペルオキシド)等である。架橋剤の量は、要求される性能や使用する架橋剤の種類によって異なるが、十分な架橋を生起させ、かつポリエーテルエステルの耐酸化安定性と耐熱性を維持できるという観点から、ゴム100重量部に対して、0.01〜8重量部が好ましい。架橋の方法としては、バンバリミキサー、ニーダー、二軸押出機等各種押出機を利用して、本発明に係るポリエーテルエステルのマトリックス中に、ゴムをブレンドし、架橋剤とともに混練りしながらゴムを硬度に架橋させて、ポリエーテルエステルにゴムを微細に分散させる、いわゆる動的架橋法を採用することが、組成物の均一性や生産性を高める観点から、好ましい。
本発明に係るポリエーテルエステルに無機物フィラー0.01〜50重量%を配合することで、フィルムや成型体の寸法安定性を向上させることができる。また、無機物フィラーが配合されたポリエーテルエステル組成物は、結晶化速度が速いので成形性が極めて良好である。本発明に利用される無機フィラーとしては、マイカ、ガラス、シリカ、タルク、シリカ・アルミナ、ジルコニア、窒化硼素、窒化珪素、硼素、チタンカリ、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、銅、真鍮が挙げられる。無機物フィラーの形態としては、板状、粒子状、繊維状がある。
本発明に係るポリエーテルエステルには、顔料を0.01〜50重量%を配合することができる。本発明に係るポリエーテルエステルは、加熱乾燥時、溶融成形時に着色が起こらないので、顔料を配合した時に優れた発色性を呈する。使用する顔料としては、亜鉛華、鉛白、リトポン、酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛・クロム黄、亜鉛黄、ウルトラマリン青、フェロシアン化鉄カリ及びカーボンブラックが挙げられる。
このような本発明に係るポリエーテルエステル組成物は、フィルム、シート状物、成型体の原料として有効に利用することができる。
本発明に係るポリエーテルエステルは、耐酸化安定性、耐熱性、及び色相に優れ、かつ、長期保存性に優れているので、繊維、不織布、フィルム、成型体等の原料として有効に利用できる。さらに、本発明に係るポリエーテルエステルに、ゴム、無機物フィラー、顔料が配合されたポリエーテルエステル組成物は、優れた耐圧縮永久歪特性や寸法安定性、高い発色性、高い成形性が要求される射出成型体、押出成型体に代表される樹脂成型体の原料として、有効に利用できる。さらに、本発明に係るポリエーテルエステルから構成される繊維や不織布は、機械的特性や弾性特性に優れており、衣料用途や椅子張りやフィルターなどの資材用途に有効に利用できる。さらに、本発明に係るポリエーテルエステル、ポリエーテルエステル組成物から構成されるフィルムや成型体は、機械的特性や耐圧縮永久歪特性、柔軟性に優れており、チューブ、ホース、ベルト、摺動剤等の自動車部品材料、電子・電気部品材料、医療材料、工業用材料として有効に利用できる。
以下、非制限的な実施例により本発明を具体的に説明する。尚、物性の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)還元粘度(ηSP/C
還元粘度は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶剤に用いて、0.6wt%濃度(25℃)で試料を1時間かけて溶解し、ウベローデ粘度管を用いて、比粘度ηSPと濃度C(g/dl)の比で求めた。
(2)ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量、PTTのユニット数、ポリアルキレンエーテルグリコールの共重合比率、ポリアルキレンエーテルグリコールに対するネオペンチレンオキシドの共重合比率、ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルの共重合比率、トリメチレンエステルの環状ダイマー量、ヒンダードフェノール基量
試料を溶媒:TMS(テトラメチルシラン)を含むCDCl3/HFIP−d(重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール)混合溶媒(9/1)に1〜2vol%の濃度で、室温で溶解し、1H−NMR(ブルカー・バイオスピン社製 AVANCEII AV400M)を用いて測定した。
ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分が1,3−プロピレングリコールであり、そしてポリアルキレンエーテルグリコール成分が、ネオペンチレンオキシドが共重合されたポリテトラメチレングリコールである該各成分からなるポリエーテルエステルの場合、下記スペクトルの帰属を元にポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量、PTTのユニット数、ポリアルキレンエーテルグリコールの共重合比率、ポリアルキレンエーテルグリコールに対するネオペンチレンオキシドの共重合比率、ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルの共重合比率、トリメチレンエステルの環状ダイマー量、ヒンダードフェノール基量を求めた:
Figure 0005346207
主鎖のフェニルプロトンa:8.1ppm付近のピーク;
フェニルエステルに連結されたPDOのメチレンプロトンb:4.5ppm付近のピーク;
PDOの中間メチレンプロトンc:2.3ppm付近のピーク;
フェニルエステルに直接連結されたPTMGのメチレンプロトンd:4.3ppm付近のピーク;
PTMGの2番目、3番目のメチレンプロトンe:1.7〜1.9ppm付近の数種のピーク;
エーテル基に直接連結されたPTMGのメチレンプロトンf:3.5ppm付近のピーク;
Figure 0005346207
ネオペンチレンオキシド構造単位のメチレンプロトンg:0.9〜1.2ppmの数種のピーク;
Figure 0005346207
BPEのエーテル基に連結されたPDOのメチレンプロトンh:3.8ppm付近のピーク;
Figure 0005346207
ヒンダードフェノール基のメチレンプロトンi:1.3〜1.4ppm;
Figure 0005346207
環状ダイマーのフェニルプロトンj:7.6ppm付近のピーク;
(3)末端カルボキシル基量
試料1gをベンジルアルコール25mlに溶解し、その後クロロホルム25mlを加えた後、1/50Nの水酸化カリウムベンジルアルコール溶液での滴定量(VA)(ml)を求めた。一方、ペレット無しのブランク滴定での滴定量(V0)を求めた。これらの値より、以下の式:
Figure 0005346207
により、ペレット1kg当たりの末端カルボキシル基量を求めた。
(4)色調(L*値、b*値、a*値)
ポリエーテルエステルの円柱状のペレットを、ガラス製のセル(内径40mm、深さ30mm)に深さの90〜100%まで満たし、ミノルタ(株)製の色彩色差計(機種:CM−3500)を用いて、CIE−L*a*b*(CIE1976)表色系で、L*値、a*値、b*値を測定した。
(5)5%減量温度
示差熱熱重量同時測定装置(機種:TG/DTA7000、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、酸素雰囲気下(100ml/min)、試料を室温から400℃まで、5℃/minの速度で昇温した時に、測定開始前の重量に対して重量が5%減少する温度を測定した。ここで、測定に用いる試料は、除湿乾燥機パールロータリージョイント(株式会社 昭和技研工業社製)を用いて115℃で6時間乾燥させ、水分率30ppm以下にしたものを用いる。
(6)還元粘度保持率
試料を除湿乾燥機パールロータリージョイント(株式会社 昭和技研工業社製)を用いて115℃で6時間乾燥させ、水分率30ppm以下にした。バレル径9.55mmφ、バレル長350mm(有効長250mm)のキャピログラフ−1B(東洋精機社製)に紡口(1mm×1Hole)を取り付け、ポリマー融点より20℃高い温度に昇温した後、乾燥試料(還元粘度a)10gをバレルに投入した。ピストンを100m/minで降下させ、紡口からポリマーが少量押し出された時点でピストンを停止した。この時、押し出された少量のポリマーは廃棄した。バレルに試料を投入してから10分間経過後に、ピストンを100/minで降下させ、全てのポリマー(還元粘度b)を押し出した。
払出し前後の還元粘度を、前記(1)に記載した還元粘度の測定方法に従って測定し、下記式:
Figure 0005346207
により、還元粘度保持率を算出した。なお、上記評価の基準となる融点は、以下の(7)融点及び結晶化度に記載する方法に従って測定した。
(7)融点及び結晶化度
DSC(機種:Pyris−1、パーキンエルマー社製)で窒素気流下(200ml/min)、試料を室温から250℃まで50℃/minで昇温し、250℃で3分間保持した後、0℃まで20℃/minの冷却速度で冷却させた。冷却させた試料を、さらに20℃/minの昇温速度で250℃まで昇温させた。融点(Tm)は、2回目の昇温熱曲線の融点ピークのピークトップ温度で求めた。
結晶化度は、上記冷却過程で得られる結晶化熱(ΔHc)とPTTの結晶化熱(35cal/g)から、下記式:
Figure 0005346207
により求めた。
(8)硫黄含有量
硫黄含有量は、高周波プラズマ発光分光分析(機種:IRIS−AP、サーモジャーレルアッシュ社製)を用いて測定した。分析試料は以下のように調製した。
三角フラスコに0.5gの試料と15ミリリットルの濃硫酸を加え、150℃のホットプレート上で3時間、350℃のホットプレート上で2時間分解させた。冷却後、過酸化水素水を5ミリリットル加え、酸化分解した後、その液を5ミリリットルまで濃縮し、濃塩酸/水(1:1)の水溶液を5ミリリットル加え、さらに水を40ミリリットル加えて分析試料とした。
(9)酸化チタンの平均粒径及び含有量
原料の酸化チタンの平均粒径は、酸化チタンをヘキサメタリン酸ナトリウム1g/水溶液lに分散させ、ベックマンコールター社製のレーザー回折-散乱法平均粒径測定装置(機種:LSI3320)を用いて測定した。
ポリエーテルエステル組成物又は繊維に含まれる酸化チタンの含有量は、エネルギー分散型X線分析装置(機種:Genesis XM2、エダックスジャパン社製)を用いてチタン元素量を測定して求めた。
(10)紡糸、延伸条件
試料を除湿乾燥機パールロータリージョイント(株式会社 昭和技研工業社製)を用いて115℃で6時間乾燥させ、水分率を30ppm以下にした。バレル径9.55mmφ、バレル長350mm(有効長250mm)のキャピログラフ−1B(東洋精機社製)に紡口を取り付け、設定紡糸温度に到達した後、乾燥試料をバレル内に投入し、投入より10分後に50m/minの押出し速度で押出し、固化した未延伸糸に、25℃の粘度が20センチストークスのポリジメチルシロキサン(珪素含有量:38重量%)/ポリオキシエチレン10量体のジオレイルエーテル/オレイルラウレート=90/5/5(重量比)分子量からなる仕上げ剤を、繊維重量に対して6重量%付与し、巻き取り機を用いて、糸管に巻き取った。ついで、未延伸糸を、横型延伸機を用いて、供給ロール5m/min、伸度500%程度になるように引き取りロール速度を調整して、延伸を行った(延伸温度:室温)。また延伸糸は、巻取り速度を引き取りロール速度(延伸速度)対比85%に設定して巻き取った。
(11)繊維の強伸度
繊維の強伸度は、JIS−L−1013に準じて測定した。
(12)繊維の弾性特性(弾性回復率、荷重除去時の応力保持率)評価
(a)300%伸長弾性回復率
繊維をチャック間距離20cmで定速伸長形の引っ張り試験機に取り付け、伸長率200%まで引っ張り、速度20cm/minで伸長し、同じ速度で収縮させ、これを3回繰り返して応力−ひずみ曲線を描いた。3回目の収縮中、応力がゼロになった時の伸度を残留伸度(La)とした。弾性回復率は以下の式:
Figure 0005346207
により求めた。
(b)荷重除去時の応力保持率
(a)の300%伸長繰返し試験において、3回目の伸長中の伸長240%における応力(S1)と、3回目の収縮中の伸長240%における応力(S2)とから、以下の式:
Figure 0005346207
により、荷重除去時の応力保持率を求めた。
(13)YI値/WI値
ASTM D1925−70に準拠した方法にて黄色度であるYI値を、ASTM−E313−73に準拠した方法にしたがって、白色度であるWI値を下記条件で測定した。
装置:分光測色計 MacbethCE−3000(マクベス社製)
測定条件
視野:2°;
光源:C(CIE 1964);
鏡面光沢:含む。
次式:
Figure 0005346207
{式中、X、Y、及びZは、試料のXYZ表色系における三刺激値である。}により、YI値及びWI値を求めた。
(14)耐圧縮永久歪特性
圧縮成形によって、厚み12.5mm(±0.5)(t0)のシートを作成し、直径29.0mm(±1.0)の試験片を切り出した。試験片を10.59mm(t1)に圧縮し、70℃で22時間試験を行った。試験終了後、圧縮を解除し、30分間経過後の厚み(t2)を測定し、下記式:
Figure 0005346207
により、圧縮永久歪を算出した。
(15)柔軟性
JIS−K−7215に準じて表面硬度を測定した。
(16)成形収縮率(寸法安定性)
厚さ2mmのシートを射出成形して、その成形収縮率(寸法安定性)を、下記式:
Figure 0005346207
により、算出した。
実施例1
3L容積の反応容器に、テレフタル酸ジメチル267g、数平均分子量1800を有するPTMG734g、1,3−プロピレングリコール(PDO)210g、チタンテトラブトキシド0.36g、酸化安定剤:イルガノックス1330(チバスペシャリティーケミカルズ社製)1.0gを投入し、酸素含有量1ppm未満の窒素雰囲気下ヒーター温度220℃でエステル交換(以下、EIと略記)反応を行い、EI反応は、メタノールが理論量の75%留出した時点で終了した。重縮合触媒としてチタンテトラブトキシド0.36gを添加した後、常圧から0.2torrまで41分かけて減圧し、245℃で3時間重縮合反応を行った。重合反応終了後、酸素含有量1ppm未満の窒素で真空を解除し、溶融ポリマーを直径約3mmのロープ状で押出し、払出し口の直下に設置され、5℃に温度制御された冷却槽で固化させた。固化したロープは、ペレタイザーで3mm角にカットし、ペレット化した。得られたペレットは耐酸化安定性、耐熱性及び長期保存性、並びに色相、全ての特性を満足するものであった。製造条件を以下の表1に、そして得られたペレットの物性を以下の表2に示す。
Figure 0005346207
Figure 0005346207
実施例2
テレフタル酸ジメチル352g、数平均分子量1800を有するポリテトラメチレングリコール(PTMG)642g、PDO276g添加し、表1に記載するEI反応率でEI反応を終了し高真空到達時間を制御した以外は、実施例1と同様に重合反応を行った。ペレットのポリマー物性を表2に示す。
実施例3
テレフタル酸ジメチル436g、数平均分子量1800を有するPTMG550g、PDO342g添加し、表1に記載するEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例1と同様に重合反応を行った。ペレットのポリマー物性を表2に示す。
実施例4
ポリアルキレンエーテルグリコールに数平均分子量3000を有するPTMG734g添加し、表1に記載するEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例1と同様に重合反応を行った。ペレットのポリマー物性を表2に示す。
実施例5
ポリアルキレンエーテルグリコールに数平均分子量2000を有するポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール(PPG)642g添加し、表1に記載するEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。ペレットのポリマー物性を表2に示す。
実施例6
ポリアルキレンエーテルグリコールに数平均分子量1800を有し、ネオペンチレンオキシドが10%共重合されたPTMG642g添加し、表1に記載するEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。ペレットのポリマー物性を表2に示す。
実施例7
ポリアルキレンエーテルグリコールに数平均分子量1800を有し、ネオペンチレンオキシドが10%共重合されたPTMG550g添加し、表1に記載するEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例3と同様に重合反応を行った。ペレットのポリマー物性を表2に示す。
比較例1
テレフタル酸ジメチル647g、数平均分子量1800を有するPTMG321g、PDO507g添加し、表1に記載するEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例1と同様に重合反応を行った。ペレットのポリマー物性を表2に示す。
比較例2
EI反応率63%でEI反応を終了した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。得られたペレットは還元粘度が1.0dl/gを下回り、乾燥工程での着色が大きいものであった。ペレットのポリマー物性を表2に示す。
比較例3
EI反応率96%でEI反応を終了した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。得られたペレットは、還元粘度以外の要件全てが本発明の範囲を超え、乾燥工程や長期保存中で激しい着色が起こり、さらに長期保存中に還元粘度が大きく低下していた。ペレットのポリマー物性を表2に示す。
比較例4
高真空到達時間を63分に制御した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。得られたペレットは乾燥工程や長期保存中で激しい着色が起こり、さらに長期保存中に還元粘度が大きく低下していた。ペレットのポリマー物性を表2に示す。
比較例5
EI反応時、真空解除時に酸素含有量200ppmの窒素を使用した以外は、実施例2と同様に重合反応を行った。得られたペレットは、5%減量温度及び粘度保持率が本発明の範囲を越え、特に長期保存中の粘度低下が著しかった。ペレットのポリマー物性を表2に示す。
実施例8〜実施例10
ヒンダードフェノール系酸化安定剤及び硫黄系酸化安定剤を以下の表3に記載された量添加し、さらに表3に記載するEI反応率でEI反応を終了し、高真空到達時間を制御した以外は、実施例6と同様に重合反応を行った。ペレットのポリマー物性を以下の表4に示す。
Figure 0005346207
Figure 0005346207
実施例11
重縮合反応触媒であるチタンテトラブトキシドを添加した5分後に、下記方法で調整した酸化チタンスラリーをポリエーテルエステル重量あたり5重量%になるように添加した以外は、実施例6と同様に重合反応を行った。得られたペレットの酸化チタン含有量は、4.7重量%であり、酸化チタンを含有させることによって、結晶化度が17.4%に上昇した。一方、酸化チタンを含有しない実施例6のペレットの結晶化度が9.9%であった。
(酸化チタンスラリーの調製方法)
PDOに、平均粒径0.5μmのアナターゼ型酸化チタンを、21重量%で加え、1000rpmで10時間攪拌した。その後、500メッシュのフィルターを1回通し、更に6000rpmの遠心分離を25分行い、上澄み液のみ単離した。処理液中の酸化チタンの含量は20重量%であった。
実施例12〜実施例14、及び比較例6、比較例7
実施例2、6、及び8で得られたペレット、並びに比較例1、及び4で得られたペレット5kgを、エパポレータ様式の容器に投入し、回転させながら酸素含有量1ppm以下の窒素雰囲気下、ポリマー温度を160℃にコントロールして12時間固相重合を行った。導入窒素は160℃に加熱し、流量は、ペレット1g当り130ml/minに調整した。
実施例12〜14のペレットは、原料のポリエーテルエステルが有する全ての特徴を保有していた。一方、比較例7のペレットは、重合速度が非常に遅いうえに、5%減量温度と粘度保持率がさらにに低下していた。また固相重合過程で激しい着色が起こっていた。得られたペレットのポリマー物性を以下の表5に示す。
Figure 0005346207
実施例15〜実施例17、及び比較例8、比較例9
実施例12〜実施例14、及び比較例6、比較例7で得られたペレットを、前記(10)紡糸・延伸条件に記載された条件下で、紡糸、延伸を行った。
実施例15〜17で得られた繊維は、原料のポリエーテルエステルが有する末端カルボキシル基量、BPE量、還元粘度、5%減量温度、及び粘度保持率を保有していた。また、これら繊維は十分な引張強伸度を有し、熱処理前後の弾性特性も優れていた。これに反し、本発明の組成範囲を外れる比較例6のペレットを原料とした比較例8で得られた繊維は、弾性特性評価で実施する300%伸長で切断し、評価できなかった。また、比較例9で得られた繊維は、延伸過程で糸切れが起こり、採取できなかった。得られたポリエーテルエステル繊維の物性を以下の表6に示す。
Figure 0005346207
実施例18〜20
ナイロン66繊維13dtex/5fを被覆用糸とし、実施例15〜17で作成したポリエーテルエステル繊維(18dtex/3f)のフルカバリング糸(下撚りZ方向2400T/m、上撚りS方向2200T/m)を作成した。次いで、該糸を用いて3.5インチ径360本針の靴下編機で靴下地を編成し、常法により染色仕上げを行った。得られた靴下の風合いはいずれもソフトで、外観は、針筋、表面凹凸、ループの乱れがほとんどなく著しく高品位なものであった。
実施例21、及び実施例22
ナイロン6繊維(44dtex/34f)をフロントおよびバックに、実施例15、及び実施例17の方法で得たポリエーテルエステル繊維310dtexをミドルに配置し、下記条件にてラッセル編地を編成した。なお、弾性糸は100%伸張して整経した。
(ラッセル編成条件)
編機 カールマイヤー社製 ラッセル編機、56ゲージ/2インチ、組織フロント20/02/20/24/42/24、ミドル00/44/22/66/22/44、バック00/22/00/22/00/22、ランナー長フロント122cm/480コース、ミドル 11.4cm/480コース、バック16.0cm/480コース、機上コース75コース/インチで、得られた編地を90℃の温水中でリラックスし、190℃でプレセット後、染色を95℃で30分行い、170℃仕上げセットを行って、表7に示すC/W(編密度)に仕上げた。得られた編地の物性を以下の表7に示す。
Figure 0005346207
得られた生地を用いてロングガードルを作製し、パネラー3名にて着用した。太腿のずれは、直立して所定の位置に太腿ラインを決め、かがむ動作を10回繰り返した後のずりあがりを測定し、3名の平均値で示した。着用感は、着脱および着用感のアンケート調査の結果を示したものであり、以下のように評価した:
◎◎:とても良好で風合いがソフト;
◎:とても良好;
○:良好;
×:フィット感が足りない。
表7に示すように、本発明に係るポリエーテルエステル繊維を用いたラッセルは、伸縮性に優れ、衣料にした場合の着用感にも優れる。
比較例10
ポリエーテルエステル繊維を比較例8の方法で作成し、実施例21と同様にラッセルを得た。得られたラッセルは弾性特性が低く、着用感も不十分であった(表7参照)。
実施例23
実施例20の繊維を用いて、カバーファクター2000の平織を作成した。得られた織物は、優れた伸縮特性を示し、また布帛の黄色度と白色度を表す(YI値/WI値)は、2.2/88と良好であった。一方、比較例4と5のポリエーテルエステル繊維を用いて同様の加工糸を作成し同様の平織物を作成したが、伸縮性、弾性回復性は明らかに劣るものであった。
実施例24〜25、及び比較例11
実施例13、14、及び比較例7のポリマーを245℃で溶融し、ポリマー重量に対して20重量%に相当する二酸化炭素を圧縮機を通じて18MPaに加圧して、ポリマーが完全溶融したところに供給した。均一になった溶融樹脂は、50mm×50mmの金型に押し出した。その後、110℃で加熱後、発泡体を取り出した。
実施例13、及び14のポリエーテルエステルから得られた発泡体は、原料のポリエーテルエステルが有する末端カルボキシル基量、BPE量、還元粘度、5%減量温度、及び粘度保持率を保有していた。またいずれも、クッション性に富み、表面が美麗で均一かつ微細な気泡が存在する良質の発泡体であった。
比較例7のポリエーテルエステルから得られた発泡体は、熱分解によるガスの影響か、巨大気泡が多数存在し、クッション性、表面の美麗性に欠けるものであった。
結果を表8に示す。
Figure 0005346207
実施例26、及び比較例12〜比較例14
実施例14、及び下記参考例1で得られたPBT系エラストマーとアクルロニトリルブタジエンゴムを、以下の表9に記載する割合で二軸混練押出機(機種:KZW15 TW−45/60MG−NH(−700) テクノベル社製)を用いて245℃にて回転数200rpmで混錬しながら、ポリエーテルエステル組成物重量に対して0.3wt%の1,3−ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンを架橋剤として添加し、動的架橋を行うことで組成物ペレットを調製した。得られたペレットを十分に乾燥した後、245℃で射出成形機にて厚さ2mmのシートに成形した。実施例14のペレットから得られた成形体(比較例12)の表面硬度(タイプD)及び圧縮永久歪は、PBT系エラストマー100%の成形体(比較例13)及びPBT系エラストマーにゴムを配合した組成物の成形体(比較例14)よりも優れていたが、実施例14のペレットにゴムを配合した実施例24のペレットから得られた成形体は、表面硬度(タイプD)及び圧縮永久歪が更に向上し、柔軟性及び耐久性に優れたものであった。結果を以下の表9に示す。
Figure 0005346207
参考例1
テレフタル酸ジメチル332.9g、数平均分子量1800を有し、ネオペンチレンオキシドが10%共重合されたPTMG640.8g、1,4−ブタンジオール122.4g添加した以外は、実施例8と全く同一条件(表3参照)下で、溶融重合反応を行い、さらに実施例12〜14に記載した条件下で固相重合反応を行った。
実施例27、実施例28、及び参考例15
実施例14のペレットに単繊維長3mmのチョップドストランド型ガラス繊維、平均粒径約100μmのマスコパイト系マイカを以下の表9に記載する割合で予め均一に混合した後、245℃にて回転数200rpmで混錬しながら組成物ペレットを調製した。得られたペレットを十分に乾燥した後、245℃で射出成形機にて厚さ2mmのシートに成形し、成形体の収縮率を測定した。無機フィラーを配合することで寸法安定性が向上した)。結果を以下の表10に示す。
Figure 0005346207
実施例29、及び参考例16
実施例14と実施例7のペレットのそれぞれに、平均粒径約1μmの酸化チタン10wt%を予め均一に混合した後、245℃にて回転数200rpmで混錬しながら組成物ペレットを調製した。実施例29のペレットは、明度を示すL*値が向上した。一方、比較例15のペレットは白色顔料の酸化チタンを含有しても黄色く着色しており、くすみも見られた(L*値が低い)。得られたペレットの物性を以下の表11に示す。
Figure 0005346207

Claims (10)

  1. 主たるジカルボン酸成分としてのテレフタル酸、主たるジオール成分としての1,3−プロピレングリコール、及び共重合比率が35〜80重量%である数平均分子量500〜20000のポリアルキレンエーテルグリコールから構成されるポリエーテルエステルであって、下記(1)〜(6):
    (1)1.0dl/g≦還元粘度(ηsp/c)≦5.0dl/g;
    (2)末端カルボキシル基量≦20ミリ当量/kg樹脂;
    (3)ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルの共重合比率≦1.8重量%;
    (4)L*値≧70、−5≦b*値≦20、−5≦a*値≦5;
    (5)熱重量測定における5%減量温度≧300℃;及び
    (6)融点よりも20℃高い温度で10分間保持した前後の還元粘度保持率≧80%;
    を満たすことを特徴とするポリエーテルエステル。
  2. 前記ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、及びポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールから成る群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のポリエーテルエステル。
  3. 前記ポリアルキレンエーテルグリコールの繰り返し単位の3〜30%が、下記式(1):又は式(2):
    Figure 0005346207
    Figure 0005346207
    で表される、請求項2に記載のポリエーテルエステル。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエーテルエステルから構成される繊維、不織布、フィルム、成型体又は発泡体。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエーテルエステル20〜99重量%にゴム80〜1重量%を配合してなるポリエーテルエステル組成物。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエーテルエステル50〜99.9重量%に無機物フィラー0.01〜50重量%を配合してなるポリエーテルエステル組成物。
  7. 前記無機物フィラーが、マイカ、ガラス、シリカ、タルク、シリカ・アルミナ、ジルコニア、窒化硼素、窒化珪素、硼素、チタンカリ、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、銅、及び真鍮から成る群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載のポリエーテルエステル組成物。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエーテルエステル50〜99.9重量%に顔料0.01〜50重量%を配合してなるポリエーテルエステル組成物。
  9. 前記顔料が、亜鉛華、鉛白、リトポン、酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛・クロム黄、亜鉛黄、ウルトラマリン青、フェロシアン化鉄カリ、及びカーボンブラックから成る群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載のポリエーテルエステル組成物。
  10. 請求項5〜9のいずれか1項に記載のポリエーテルエステル組成物から構成されるフィルム、成型体又は発泡体。
JP2008311038A 2008-12-05 2008-12-05 ポリエーテルエステル及びポリエーテルエステル組成物 Active JP5346207B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008311038A JP5346207B2 (ja) 2008-12-05 2008-12-05 ポリエーテルエステル及びポリエーテルエステル組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008311038A JP5346207B2 (ja) 2008-12-05 2008-12-05 ポリエーテルエステル及びポリエーテルエステル組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010132802A JP2010132802A (ja) 2010-06-17
JP5346207B2 true JP5346207B2 (ja) 2013-11-20

Family

ID=42344400

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008311038A Active JP5346207B2 (ja) 2008-12-05 2008-12-05 ポリエーテルエステル及びポリエーテルエステル組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5346207B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107109040B (zh) 2015-01-19 2019-06-28 帝人富瑞特株式会社 聚对苯二甲酸丙二酯组合物、聚酯纤维及其制造方法
CN113235201B (zh) * 2021-05-15 2022-09-30 浙江世纪晨星纤维科技有限公司 一种超细锦纶6dty有色丝及其制备方法
TWI783864B (zh) 2022-01-27 2022-11-11 合泰材料科技股份有限公司 低永久壓縮形變的減震墊

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5796037A (en) * 1980-12-05 1982-06-15 Toray Ind Inc Thermoplastic resin composition
CA2376435C (en) * 1999-08-25 2010-01-26 E.I. Du Pont De Nemours And Company Preparation of poly(trimethylene terephthalate)
DE10297202T5 (de) * 2001-09-11 2004-08-12 Asahi Kasei Chemicals Corporation Harzartige Kraftfahrzeug-Aussenkomponente
US6599625B2 (en) * 2001-10-31 2003-07-29 E. I. Du Pont De Nemours And Company Polyether ester elastomer comprising polytrimethylene ether ester soft segment and trimethylene ester hard segment
JP2006316262A (ja) * 2005-04-15 2006-11-24 Mitsubishi Chemicals Corp ポリエーテルエステルブロック共重合体
JP2007146156A (ja) * 2005-11-02 2007-06-14 Mitsubishi Chemicals Corp ポリエーテルエステルブロック共重合体の製造方法
US7531593B2 (en) * 2006-10-31 2009-05-12 E.I. Du Pont De Nemours And Company Thermoplastic elastomer blend composition
JP2009091445A (ja) * 2007-10-09 2009-04-30 Asahi Kasei Fibers Corp ポリエーテルエステル及びその繊維、加工糸、織編物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010132802A (ja) 2010-06-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100364302B1 (ko) 가공성이 우수한 폴리에스테르 섬유 및 그의 제조방법
MXPA01004195A (es) Composicion de resina poliester y fibra.
JP2014080718A (ja) 常圧カチオン染色性ポリエステル繊維およびその製造方法
TWI531694B (zh) 陽離子可染聚酯纖維及複合纖維
TW200306365A (en) Stretchable core in sheath type composite yarn and stretchable woven or knitted fabric
JP5346207B2 (ja) ポリエーテルエステル及びポリエーテルエステル組成物
JP4942667B2 (ja) ポリエーテルエステル繊維、加工糸、織編物
JP6582980B2 (ja) 相分離構造を有する繊維およびその製造方法
WO1992000408A1 (en) Composite elastic filament with rough surface, production thereof, and fibrous structure comprising the same
MXPA02004584A (es) Hilado o hilo de filamentos multiples de poliester grueso y delgado.
JP2009091445A (ja) ポリエーテルエステル及びその繊維、加工糸、織編物
JP2010007191A (ja) 制電性及び常圧カチオン可染性を有する極細延伸糸とその製造方法
JP2010018927A (ja) ポリエステルナノファイバー
WO2007105494A1 (ja) 導電性複合繊維及びその製造方法
JP4100206B2 (ja) 軽量性に優れた複合繊維の製造方法
JP2008174871A (ja) カチオン可染性極細混繊糸
JP5319075B2 (ja) ポリプロピレン系繊維及び織編物
JP2004183196A (ja) 軽量性に優れたポリエステル複合繊維
JP2005281907A (ja) 原着繊維と吸放湿性ポリエーテルエステル原着弾性繊維とを含む繊維製品
JP2017043860A (ja) 芯部が相分離構造を有する芯鞘型複合繊維
JP2010018926A (ja) ポリエステルナノファイバーの製造方法
JP2007177346A (ja) カチオン可染性ポリエステル繊維
JPH043446B2 (ja)
JP2009287128A (ja) 撥水性ポリエステル混繊糸
JP3670974B2 (ja) ハイマルチポリエステルフィラメントとその製造方法、及びハイマルチポリエステルフィラメントよりなる水着

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20111122

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121016

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121030

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121225

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130813

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130816

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5346207

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350