JP2009161610A - 固体高分子電解質材料及び当該固体高分子電解質材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フルオレン構造を有する繰り返し単位(I)、並びに、フルオレン構造を有する繰り返し単位(IIa)、フルオレン構造を有する繰り返し単位(IIb)及びフルオレン構造を有する繰り返し単位(IIc)からなる群より選ばれる少なくとも1種のプロトン伝導性基含有繰り返し単位(II)が直接連結してなることを特徴とする、固体高分子電解質材料。
【選択図】図4
Description
H2 → 2H+ + 2e− …(1)
(1)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソード(酸化剤極)に到達する。そして、(1)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に、電気浸透により移動する。
2H+ + (1/2)O2 + 2e− → H2O …(2)
カソードで生成した水は、主としてガス拡散層を通り、外部へと排出される。このように、燃料電池では、水以外の排出物がなく、クリーンな発電装置である。
特に自動車に用いられる燃料電池は、当該燃料電池の多数回の起動・停止に対し上記ラジカルが発生しやすく、また、寒冷地・温暖地問わず安定した性能が要求されることから、よりラジカル耐性及び機械的特性に優れる固体高分子電解質材料が求められる。
本発明は、より強固な重合部位を有する高分子電解質材料であって、特に、ラジカル耐性及び機械的特性に優れる燃料電池の触媒層又は電解質膜として利用される新規高分子電解質材料を提供することを目的とする。
(上記式(1)〜式(4)中の符号R1〜R15cの意味は次の通りである:式(1)において、R1及びR2は互いに独立であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R3a〜R3c及びR4a〜R4cは互いに独立であり、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である;式(2)において、R5及びR6は互いに独立であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R7a〜R7c及びR8a〜R8cは互いに独立であり、これらR7a〜R7c及びR8a〜R8cのうち少なくとも1つは下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基であるが、他は水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である;式(3)において、R9は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R10a〜R10eは互いに独立であり、これらR10a〜R10eのうち少なくとも1つは下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基であるが、他は水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R11a〜R11c及びR12a〜R12cは互いに独立であり、これらR11a〜R11c及びR12a〜R12cは、下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である;式(4)において、R13a〜R13hは互いに独立であり、これらR13a〜R13hのうち少なくとも1つは下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基であるが、他は水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R14a〜R14c及びR15a〜R15cは互いに独立であり、これらR14a〜R14c及びR15a〜R15cは、下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。)
本発明の固体高分子電解質材料は、式(1)
(上記式(1)〜式(4)中の符号R1〜R15cの意味は次の通りである:式(1)において、R1及びR2は互いに独立であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R3a〜R3c及びR4a〜R4cは互いに独立であり、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である;式(2)において、R5及びR6は互いに独立であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R7a〜R7c及びR8a〜R8cは互いに独立であり、これらR7a〜R7c及びR8a〜R8cのうち少なくとも1つは下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基であるが、他は水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である;式(3)において、R9は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R10a〜R10eは互いに独立であり、これらR10a〜R10eのうち少なくとも1つは下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基であるが、他は水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R11a〜R11c及びR12a〜R12cは互いに独立であり、これらR11a〜R11c及びR12a〜R12cは、下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である;式(4)において、R13a〜R13hは互いに独立であり、これらR13a〜R13hのうち少なくとも1つは下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基であるが、他は水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R14a〜R14c及びR15a〜R15cは互いに独立であり、これらR14a〜R14c及びR15a〜R15cは、下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。)
なお、前記固体高分子電解質材料の原料となる、9位無置換又は9位に置換基を有し、且つ、2位と7位にハロゲン原子を有するフルオレン誘導体はいずれも市販されており、したがって、当該フルオレン誘導体を用いて合成される、2位及び7位において他のフルオレンモノマーと炭素‐炭素結合を有する前記固体高分子電解質材料は、比較的安価に合成できるという利点がある。
式(5)中のZが単結合でない場合は、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であるのが最も好ましい。この場合には、溶解性とイオン交換容量の向上という理由から、Zが単結合である以外に最適なプロトン伝導性基含有基を構成することができる。
なお、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基は、直鎖・分枝鎖・環状を問わないが、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を含まないものとし、好ましくはブチル基、オクチル基、2‐エチルヘキシル基である。また、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基は、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を含まないものとし、好ましくはフェニル基、トルイル基、ナフチル基である。
さらに、式(5)に示すZは、単結合、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基のうち、単結合であるのが最も好ましい。
なお、式(3)の繰り返し単位に関しては、R10a〜R10eの他に、R11a〜R11c及びR12a〜R12cがプロトン伝導性基含有基であってもよい。ただしこの場合は、式(3)の繰り返し単位に関して、前記重合位置とは異なる位置にプロトン伝導性基含有基が結合していなければならない。
また、式(4)の繰り返し単位に関しては、R13a〜R13hの他に、R14a〜R14c及びR15a〜R15cがプロトン伝導性基含有基であってもよい。ただしこの場合は、式(4)の繰り返し単位に関して、前記重合位置とは異なる位置にプロトン伝導性基含有基が結合していなければならない。
R1及びR2、R5及びR6、並びに上記式(3)に示される繰り返し単位中のR9は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。
R1及びR2、R5及びR6、並びにR9は、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であるのが最も好ましい。この場合は、溶解性とイオン交換容量の向上という理由から、最適なフルオレン構造を有する繰り返し単位を構成することができる。
なお、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基は、直鎖・分枝鎖・環状を問わないが、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を含まないものとし、好ましくはブチル基、オクチル基、2‐エチルヘキシル基である。また、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基は、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を含まないものとし、好ましくはフェニル基、トルイル基、ナフチル基である。
R3a〜R3c及びR4a〜R4cは、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。
R3a〜R3c及びR4a〜R4cは、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であるのが最も好ましい。この場合は、溶解性とイオン交換容量の向上という理由から、R3a〜R3c及びR4a〜R4cが水素原子である以外に最適なフルオレン構造を有する繰り返し単位を構成することができる。
なお、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基は、直鎖・分枝鎖・環状を問わないが、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を含まないものとし、好ましくはブチル基、オクチル基、2‐エチルヘキシル基である。また、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基は、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を含まないものとし、好ましくはフェニル基、トルイル基、ナフチル基である。
さらに、R3a〜R3c及びR4a〜R4cは、水素原子、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基のうち、水素原子であるのが最も好ましい。
R7a〜R7c及びR8a〜R8cのうち少なくとも1つ、又はR10a〜R10eのうち少なくとも1つ、又はR13a〜R13hのうち少なくとも1つは上記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基であるが、他は水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。
R11a〜R11c及びR12a〜R12c、並びにR14a〜R14c及びR15a〜R15cは、上記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。
R7a〜R7c及びR8a〜R8c、R10a〜R10e、R11a〜R11c及びR12a〜R12c、R13a〜R13h並びにR14a〜R14c及びR15a〜R15cは、水素原子又はプロトン伝導性基含有基でない場合には、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であるのが最も好ましい。この場合は、溶解性とイオン交換容量の向上という理由から、R7a〜R7c及びR8a〜R8c、R10a〜R10e、R11a〜R11c及びR12a〜R12c、R13a〜R13h並びにR14a〜R14c及びR15a〜R15cが水素原子又はプロトン伝導性基含有基である以外に最適なフルオレン構造を有する繰り返し単位を構成することができる。
なお、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基は、直鎖・分枝鎖・環状を問わないが、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を含まないものとし、好ましくはブチル基、オクチル基、2‐エチルヘキシル基である。また、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基は、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を含まないものとし、好ましくはフェニル基、トルイル基、ナフチル基である。
さらに、R7a〜R7c及びR8a〜R8c、R10a〜R10e、R11a〜R11c及びR12a〜R12c並びにR14a〜R14c及びR15a〜R15cは、水素原子、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基のうち、水素原子であるのが最も好ましい。
なお、R7a〜R7c及びR8a〜R8c、R10a〜R10e、R11a〜R11c及びR12a〜R12c、R13a〜R13h並びにR14a〜R14c及びR15a〜R15cは、そのうち上述した好ましい数だけ、プロトン伝導性基含有基であればよい。
また、本発明の固体高分子電解質材料の連結において、上記式(1)乃至(4)に示される繰り返し単位は直接炭素‐炭素結合で連結することとし、繰り返し単位の間にはいずれの原子も介在させないこととする。
なお、本発明の固体高分子電解質材料であるポリマーの末端基は、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であるのが好ましいが、両末端基が異なる基であってもよい。化学的安定性の観点から、両末端基がフェニル基であるのが最も好ましい。
さらに、前記末端基以外はすべて上記式(1)乃至(4)に示される繰り返し単位で構成されることが必要である。
上記式(1)及び(2)中のR1、R2、R5、R6はそれぞれ上記式(6)中のR1、R2、R5、R6に対応し、式(2)中のR7a〜R7c及びR8a〜R8cのいずれか1つが、上記式(6)中のプロトン伝導性基含有基Xに対応し、式(2)中のR7a〜R7c及びR8a〜R8cの残りと式(1)中のR3a〜R3c及びR4a〜R4cが、上記式(6)中で記述が省略された水素原子に対応している。
さらに、上記式(6)中のXはプロトン伝導性基であり、これは、上記式(5)中においてZが単結合であるプロトン伝導性基含有基である場合に対応している。
共重合体の末端基であるR21〜R22は、上述のように、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であるのが好ましいが、R21〜R22のどちらもフェニル基であるのが最も好ましい。
上記式(1)及び(3)中のR1、R2、R9はそれぞれ上記式(7)中のR1、R2、R9に対応し、式(3)中のR10a〜R10eのいずれか1つが、上記式(7)中のプロトン伝導性基含有基‐Z‐Xに対応し、式(3)中のR10a〜R10eの残りとR11a〜R11c及びR12a〜R12c、及び式(1)中のR3a〜R3c及びR4a〜R4cが、上記式(7)中で記述が省略された水素原子に対応している。
さらに、上記式(7)中のZは炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基若しくは炭素数6〜15の芳香族炭化水素基であり、上記式(7)中のXはプロトン伝導性基である。
共重合体の末端基であるR23〜R24は、上述のように、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であるのが好ましいが、R23〜R24のどちらもフェニル基であるのが最も好ましい。
上記式(1)及び(3)中のR1、R2、R9はそれぞれ上記式(8)中のR1、R2、R9に対応し、式(3)中のR10a〜R10eのいずれか1つが、上記式(7)中のプロトン伝導性基含有基‐Z‐X2に対応し、式(4)中のR13a〜R13hのいずれか1つが、上記式(8)中のプロトン伝導性基含有基‐X1に対応し、式(3)中のR10a〜R10eの残り及びR11a〜R11c及びR12a〜R12c、式(4)中のR13a〜R13hの残り及びR14a〜R14c及びR15a〜R15c、並びに式(1)中のR3a〜R3c及びR4a〜R4cが、上記式(8)中で記述が省略された水素原子に対応している。
さらに、上記式(8)中のZは炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基若しくは炭素数6〜15の芳香族炭化水素基であり、上記式(8)中のX1、X2はプロトン伝導性基である。なお、X1、X2は同じプロトン伝導性基であってもよいし、異なるプロトン伝導性基であってもよい。
共重合体の末端基であるR25〜R26は、上述のように、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であるのが好ましいが、R25〜R26のどちらもフェニル基であるのが最も好ましい。
また、プロトン伝導性基としてスルホン酸基を含むことにより、より高いプロトン伝導性を達成することができる。
さらに、プロトン伝導性基を含む前記繰り返し単位を10モル%以上の割合で含むことにより、高いプロトン伝導性を達成することができる。また、プロトン伝導性基を含む前記繰り返し単位を50モル%以下の割合で含むことにより、吸水した際に溶解せず、安定した形状保持性を保つことができる。
また、このような構成の固体高分子電解質材料は、市販されている2位及び7位にハロゲン原子を有するフルオレンから合成することも可能なため、比較的安いコストで入手することができる。
さらに、本発明の固体高分子電解質材料は、上述の重量平均分子量を有するため、ポリマーとして機械的特性に優れた燃料電池用材料を構成することができる。
本発明の固体高分子電解質材料の製造方法は、フルオレン構造上の1位乃至4位の水素原子の内いずれか1つ、及び当該フルオレン構造上の5位乃至8位の水素原子の内いずれか1つが、それぞれハロゲン原子1つに置換されている第1のフルオレン誘導体モノマーと、フルオレン構造上の1位乃至4位の水素原子の内いずれか1つ、及び当該フルオレン構造上の5位乃至8位の水素原子の内いずれか1つが、それぞれホウ素含有基1つに置換されている第2のフルオレン誘導体モノマーとを重合してフルオレンポリマーを合成する工程と、重合前の第1及び/又は第2のフルオレン誘導体モノマー、又は重合後のフルオレンポリマーにプロトン伝導性基を導入する工程と、を有することを特徴とする。
下記式(9)は、フルオレン化合物2及びフルオレン化合物3の合成方法を示した式である。なお当該合成方法は、例えば、Reynolds,J.R. et al. Macromolecules 2005,38,7636に記載された手法を用いることができる。
反応工程Aでは、第1のフルオレン誘導体モノマー1の2つのハロゲン原子を、それぞれホウ酸エステル基に置換し、フルオレンモノマー2を合成する。まず、反応物であるハロゲン化物に、副反応を避けるためごく低温でアルキルリチウムを反応させる。顕著な副反応がなければ、室温での反応も差し支えない。アルキルリチウムとしては、n‐ブチルリチウム、iso‐ブチルリチウム、tert‐ブチルリチウム等が挙げられる。続いてホウ酸エステルをごく低温で加えることで、反応物のハロゲン基に代えてホウ酸エステルを導入することができる。顕著な副反応がなければ室温または還流での反応も差し支えない。ホウ酸エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、及びブチルエステル等のアルキルホウ酸エステル、フェニルホウ酸エステル等のアリールホウ酸エステル、さらに両者が混合されたアルキルアリールホウ酸エステルといった様々なホウ酸エステルを用いることができる。反応液を濃縮・乾燥後、得られた粗生成物を再結晶することで精製できる。ホウ酸エステルを導入できる他の手法として、グリニャール試薬を用いる方法を挙げることができるが、精製が煩雑なグリニャール試薬を用いる手法に比較して本明細書記載の手法が簡便で優れている。
反応工程Bでは、前記モノマー2の2つのホウ酸エステル基を、それぞれ環状のアルキルホウ酸エステルへと変換し、環状のアルキルホウ酸エステルが2つ導入されたフルオレン化合物3を合成する。まず、アルキルホウ酸エステルを適切な溶媒、例えばTHFに溶解し、続いてグリコールを添加する。グリコールとしては、エチレングリコール、1,2‐プロピレングリコール、1,3‐プロピレングリコール等を挙げることができる。反応の進行には触媒量の酸を添加することが適切で、例えば、塩酸や硝酸の共存下で加熱する。不都合な副反応が起きなければ、温和な加熱であっても還流であっても差し支えない。反応液を濃縮・乾燥後、得られた粗生成物を再結晶することで精製できる。環状のアルキルホウ酸エステルに変換する理由は、このモノマー重合反応中の良好な安定性にある。例えば、フルオレンに導入されたホウ酸エステルがジメチルホウ酸エステルである場合に比較してエチレンホウ酸エステルである場合の方が、重合反応中の不都合な副反応が起きにくい。
なお、本発明に係るポリマー合成反応においては、2つのホウ素含有基を有する前記第2のフルオレン誘導体モノマーとして、前記モノマー2及び前記モノマー3のいずれも用いることができ、また、前記モノマー2及び前記モノマー3を混合して用いることもできる。この内、前記モノマー3を単独で前記第2のフルオレン誘導体モノマーとして用いるのが好ましい。
また、上記式(10)のRa〜Rb、Rc1〜Rc3及びRd1〜Rd3は式(9)のRa〜Rb、Rc1〜Rc3及びRd1〜Rd3にそれぞれ対応している。また、Re〜Rfは互いに独立であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。さらに、Rg1〜Rg3及びRh1〜Rh3は互いに独立であり、プロトン伝導性基含有基、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。
なお、Ri1〜Ri2は、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、Riは、Ri1〜Ri2の内いずれか1つから選択される基である。
また、遷移金属を触媒として用いる場合、遷移金属の炭素原子‐ハロゲン原子間結合への酸化的付加、及び生成物であるカップリング体からの遷移金属の還元的脱離を効率よく行うために、当該遷移金属を配位子で修飾するのが好ましい。当該配位子としてはトリフェニルホスフィン、ジベンジリデンアセトン、アセテート、BINAP、シクロオクタジエン等を用いることができる。酸化状態の遷移金属、及び還元状態の遷移金属のどちらも安定に保ち、効率のよい触媒サイクルを設計するという観点から、配位子としてはトリフェニルホスフィンを用いるのが好ましい。
以上のことから、遷移金属触媒としては、遷移金属としてパラジウム、配位子としてトリフェニルホスフィンを用いた、テトラキス(トリストリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を用いるのが最も好ましい。
また、クロスカップリング反応において、ホウ素含有基の活性化に塩基又は塩基性塩を用いることが好ましく、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の塩基性塩を用いることができる。この内、塩基性塩である炭酸ナトリウムを用いるのが最も好ましい。
またこの反応において、有機溶媒と水の混合溶媒を用いる場合、有機溶媒と水を混合し易くし、有機層中の分子と水層中の分子との相互作用を起こし易くするために、添加剤として界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の例としては、Aliquat336(商品名。ヘンケル社(独)製)またはトリカプリルアンモニウムクロリド、トリドデシルアンモニウムクロリド、TritonX‐100(商品名。ユニオンカーバイド社(米)製)またはポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル、TritonX‐114(商品名。ユニオンカーバイド社(米)製)またはポリオキシエチレンイソオクチルシクロヘキシルエーテルを挙げることができ、この内Aliquat336を用いるのが好ましい。
このように反応終了時における後処理の結果、フルオレンポリマー5が合成される。
また、Rj〜Rkは互いに独立であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。さらに、Rl1〜Rl3及びRm1〜Rm3は互いに独立であり、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。さらに、Rl4〜Rl6及びRm4〜Rm6は互いに独立であり、Rl4〜Rl6及びRm4〜Rm6の内いくつかの基がプロトン伝導性基含有基である他は、Rl1〜Rl3及びRm1〜Rm3に対応している。
また、プロトン伝導性基導入反応において、スルホン酸基を導入する場合は、クロロスルホン酸、発煙硫酸、濃硫酸を用いることができ、リン酸基を導入する場合は、臭素で臭素化後、グリニャール試薬を加え、その後リン酸エステルを加えてさらに加水分解する手法や、臭素で臭素化後、グリニャール試薬を加え、その後オキシ塩化リンを加えてさらに加水分解する手法を用いることができ、カルボキシル基を導入する場合は、フリーデル‐クラフツ反応で塩化アルミニウムを触媒としてアセチルクロリドを加えた後、次亜塩素酸を加える手法や、フリーデル‐クラフツ反応で塩化アルミニウムを触媒としてクロロ炭酸エチルを加えた後、加水分解する手法や、臭素で臭素化後、グリニャール試薬を加え、その後二酸化炭素を導入する手法を用いることができる。
ポリマー9は、同一の繰り返し単位が重合してできていてもよいし、異なる繰り返し単位が重合していてもよい。また、ポリマー10は、プロトン伝導性基導入反応において置換されたプロトン伝導性基の他は、全ての基がポリマー9に対応するものとする。
プロトン導入反応は、上述したものを用いることができる。
上記式(10)中のRa、Rb、Re、Rfはそれぞれ上記式(17)中のRa、Rb、Re、Rfに対応し、式(10)中のRc1〜Rc3及びRd1〜Rd3、Rg1〜Rg3及びRh1〜Rh3が、上記式(17)中で記述が省略された水素原子に対応している。
なお、前記ポリマー20の重合度nは、1〜5であるのが好ましい。
上記式(13)中のRn、Roはそれぞれ上記式(18)中のRn、Roに対応し、式(13)中のRp4〜Rp6及びRq4〜Rq6のうち1つがスルホン酸基であり、式(13)中の残りのRp4〜Rp6及びRq4〜Rq6、並びにRp1〜Rp3及びRq1〜Rq3が、上記式(18)中で記述が省略された水素原子に対応している。なお、ポリマー21及びポリマー22は、Rn、Roに関して異なる繰り返し単位が重合していてもよい。
なお、前記ポリマー22の重合度x、y、zは、x=1〜5、y=1〜5、z=1〜5であるのが好ましい。
また、本発明の固体高分子電解質材料は、バインダーと混合して製膜し、電解質膜として用いることもできる。
さらに、他の電解質樹脂と混合して、電極中又は電解質膜中に用いることもできる。
また、図2に示すように、前記モノマー25のプロトン核磁気共鳴スペクトル(以下、1HNMRと略す)測定(CDCl3中)を行ったところ、1.51ppmにフルオレン構造の9位に付加した2つのメチル基上の6つの水素を示すシグナルが、4.42ppmにボロン酸エステルを形成するエチレングリコール上の8つの水素を示すシグナルが、7.81ppm及び7.92ppmにフルオレンの芳香環上の6つの水素を示すシグナルが、それぞれ観測された。
また、図4に示すように、前記ポリマー26の1HNMR測定(THF‐d8中)を行ったところ、1.30ppm及び1.41ppmにそれぞれ現れた2つのピークの積分の合計と、7.71ppm及び7.90ppmにそれぞれ現れた2つのピークの積分の合計との比が、1:1となったことから、これらのピークはそれぞれ、フルオレン構造の9位に付加した2つのメチル基上の6つの水素と、フルオレンの芳香環上の6つの水素であると帰属できた。
上記イオン交換容量より、分子量1355につき1個スルホン酸基が導入されていることになる。一方、スルホン化前の前記ポリマー26の数平均分子量MNは1220、重量平均分子量MWは1263、スルホン酸基‐SO3Hの分子量は81.1であることから、ポリマー1分子につきスルホン酸基1個が導入されていると考えて差し支えない。したがって、重合度x=([ポリマーの数平均分子量]−[ポリマーの両末端のフェニル基の分子量]−[スルホン酸基が1個導入された本ポリマーの繰り返し単位の分子量])/[本ポリマーの繰り返し単位の分子量]=(1220−77×2−270)/190=4.90となり、前記ポリマー27において、x=4.90、y=1.00、z=1.00であることが分かった。
Claims (6)
- 式(1)
(上記式(1)〜式(4)中の符号R1〜R15cの意味は次の通りである:式(1)において、R1及びR2は互いに独立であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R3a〜R3c及びR4a〜R4cは互いに独立であり、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である;式(2)において、R5及びR6は互いに独立であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R7a〜R7c及びR8a〜R8cは互いに独立であり、これらR7a〜R7c及びR8a〜R8cのうち少なくとも1つは下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基であるが、他は水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である;式(3)において、R9は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R10a〜R10eは互いに独立であり、これらR10a〜R10eのうち少なくとも1つは下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基であるが、他は水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R11a〜R11c及びR12a〜R12cは互いに独立であり、これらR11a〜R11c及びR12a〜R12cは、下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である;式(4)において、R13a〜R13hは互いに独立であり、これらR13a〜R13hのうち少なくとも1つは下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基であるが、他は水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基であり、R14a〜R14c及びR15a〜R15cは互いに独立であり、これらR14a〜R14c及びR15a〜R15cは、下記式(5)で表されるプロトン伝導性基含有基、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。)
- 前記式(5)中の‐Xが‐SO3Hである、請求項1に記載の固体高分子電解質材料。
- 前記繰り返し単位(II)の含有量の、前記繰り返し単位(I)と当該繰り返し単位(II)との含有量の合計に対する含有割合が、モル百分率で表した時に、10〜50モル%である、請求項1又は2に記載の固体高分子電解質材料。
- 前記式(1)乃至(4)で表される繰り返し単位が、当該繰り返し単位に含まれるフルオレン構造の、2位及び7位において隣り合う繰り返し単位との間に炭素‐炭素結合を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の固体高分子電解質材料。
- 重量平均分子量が1000以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の固体高分子電解質材料。
- フルオレン構造上の1位乃至4位の水素原子の内いずれか1つ、及び当該フルオレン構造上の5位乃至8位の水素原子の内いずれか1つが、それぞれハロゲン原子1つに置換されている第1のフルオレン誘導体モノマーと、フルオレン構造上の1位乃至4位の水素原子の内いずれか1つ、及び当該フルオレン構造上の5位乃至8位の水素原子の内いずれか1つが、それぞれホウ素含有基1つに置換されている第2のフルオレン誘導体モノマーとを重合してフルオレンポリマーを合成する工程と、
重合前の第1及び/又は第2のフルオレン誘導体モノマー、又は重合後のフルオレンポリマーにプロトン伝導性基を導入する工程と、を有することを特徴とする、固体高分子電解質材料の製造方法。
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