JP2009161448A - 麦芽根抽出物、その製造方法、およびそれを含んでなる微生物の発酵促進剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】各種微生物の発酵能力および菌体増殖率を高める麦芽根由来の抽出物およびその製造方法ならびにその用途を提供する。
【解決手段】麦芽根をタンパク質分解酵素により処理して得られた、水可溶性でありかつ分子量10,000以下の成分は、微生物の発酵促進作用を有する。この成分の存在下に微生物を培養することにより、効率の良い微生物の培養および食品をはじめとした発酵品の製造が可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】麦芽根をタンパク質分解酵素により処理して得られた、水可溶性でありかつ分子量10,000以下の成分は、微生物の発酵促進作用を有する。この成分の存在下に微生物を培養することにより、効率の良い微生物の培養および食品をはじめとした発酵品の製造が可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、麦芽根をタンパク質分解酵素により処理して得られた抽出物、その製造方法およびそれを含んでなる微生物の発酵促進剤並びに当該発酵促進剤を用いた発酵食品の製造方法に関する。
麦芽根そのもの、または麦芽根から抽出した産物について、食品のみならず化粧品、化成品などの分野において利用が提案されている。
一般食品としては、特開平3−49662号公報(特許文献1)において、麦芽根などの植物繊維質原料をアルカリ抽出し、酵素処理して得られるヘミセルロースの部分分解物を含有することを特徴とする水溶性食物繊維の製造方法および当該物質を含有した飲食物が提案されている。
また、特開平9−84540号公報(特許文献2)において、大麦の製麦副産物である穀皮、穂軸等を含む麦芽根を粉砕後、篩がけして得られた麦芽根よりなることを特徴とする食品素材が提案されている。
食品分野以外の用途としては、特開昭63−301828号公報(特許文献3)において、化粧品用途として、麦芽根を水で浸漬した後、熱水で抽出することにより得られた成分を用いた外用物質が開示されている。
しかし、これらの例はいずれも、発酵生産物や培養菌体に関するものではなく、発酵性、菌体培養を促進するものでもない。
化成品としては、特公平5−65201号公報(特許文献4)において、ロードコッカス属の培養により得られる凝集剤の培地成分として麦芽根の添加することが開示されている。ここでは、麦芽根そのものが直接培地に添加されて利用されている。
また、特開2007−215428号公報(特許文献5)において、乳酸製造を助長する物質として麦芽根が開示されている。ここでは、麦芽根は加工されることなく、乾燥酵母と共に培地に添加されている。
さらに、ビールや発泡酒などの酒類に麦芽根を用いた例としては、WO2004/091318号公報(特許文献6)において、150μm以上の粉砕度の麦芽根を液体抽出することによりビールなどに適用した場合に雑味を抑えた麦芽根抽出液およびその製造方法が開示されている。また、WO2004/002978号公報(特許文献7)において、麦芽根を水あるいは有機溶媒により抽出した物質に含まれる消化管ぜん動運動促進物質と、当該物質を含んだ食品とが開示されている。これらの例にあっては、本発明者らの知る限りでは、添加量を増加させた場合、発酵中の浮遊酵母数が減少し、発酵が不良となるケースが見られた。さらに、ビール等の仕込み工程で添加した場合においては、麦汁煮沸後のトリューブ除去において清澄化せず、最終的な製品も濁らせてしまうことが観察された。
さらに、特開2002−105092号公報(特許文献8)は、麦芽根を酸処理し、酸処理後の上澄液を分離し、中和処理して得た、液状の酵母活性物質が開示されている。また、当該物質を含む麦芽飲料が開示されている。ここで、酸処理を行い抽出される物質は、不溶性の塩をつくる陽イオン物質を用いない場合、中和過程などにより多量の可溶性の塩物質が発生し発酵促進物質中の塩含量が高まり、それにより、酒類の味や物性特性を変化させてしまうおそれがある。また、発酵促進物質の収率も4%程度と低い。
本発明者らは、今般、麦芽根をタンパク質分解酵素により処理して得られた特定の抽出物が、微生物の発酵促進作用を有することを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
従って、本発明の一つの態様によれば、微生物の発酵促進の作用を有する、新規な麦芽根由来の抽出物が提供される。
さらに、本発明の別の態様によれば、上記の麦芽根由来の抽出物の製造方法が提供される。
さらにまた、本発明の別の態様によれば、上記麦芽根由来の抽出物を有効成分とした微生物の発酵促進剤およびそれを用いた微生物の培養方法および発酵品の製造方法が提供される。
そして、本発明による麦芽根由来の抽出物は、麦芽根をタンパク質分解酵素によって処理して得られた、水可溶性であり、かつ分子量10,000以下の成分を含んでなる、微生物の発酵促進作用を有するものである。
また、本発明による麦芽根由来の抽出物の製造方法は、麦芽根をタンパク質分解酵素によって処理し、得られた被処理物の水可溶成分から分子量10,000以下の成分を含んでなる、微生物の発酵促進作用を有する画分を得ることを含んでなるものである。
また、本発明による微生物の発酵促進剤は、上記麦芽根由来の抽出物を有効成分とするものである。
さらに、本発明による微生物の培養方法および発酵品の製造方法は、上記の微生物発酵促進剤の存在下に、微生物を培養することを含んでなる方法である。
麦芽根由来の抽出物
本発明による麦芽根由来の抽出物は、麦芽根をタンパク質分解酵素によって処理して得られた、水可溶性であり、かつ分子量10,000以下であるものである。本発明による麦芽根由来の抽出物は、微生物の発酵促進の作用を有する。ここで、微生物の発酵促進作用とは、微生物の発酵能力または菌体増殖率をいずれかまたはともに促進することを意味する。
本発明による麦芽根由来の抽出物は、麦芽根をタンパク質分解酵素によって処理して得られた、水可溶性であり、かつ分子量10,000以下であるものである。本発明による麦芽根由来の抽出物は、微生物の発酵促進の作用を有する。ここで、微生物の発酵促進作用とは、微生物の発酵能力または菌体増殖率をいずれかまたはともに促進することを意味する。
麦芽根
本発明において麦芽根は、麦芽を発芽、発根したものを意味し、麦粒から分離しての利用が好ましい。麦の種類は特に限定されないが、好ましくは大麦である。また、麦芽根は乾燥前の状態でも乾燥したものでもよい。入手のしやすさの観点からは、乾燥したものが好ましい。但し、麦芽根の乾燥は、麦芽製造過程のキルニング程度の加熱温度までの温度で行われることが好ましく、具体的には150℃以下とされることが好ましい。過度の加熱による、麦芽根が含有するタンパク質成分の変性や組成変化を回避するためである。
本発明において麦芽根は、麦芽を発芽、発根したものを意味し、麦粒から分離しての利用が好ましい。麦の種類は特に限定されないが、好ましくは大麦である。また、麦芽根は乾燥前の状態でも乾燥したものでもよい。入手のしやすさの観点からは、乾燥したものが好ましい。但し、麦芽根の乾燥は、麦芽製造過程のキルニング程度の加熱温度までの温度で行われることが好ましく、具体的には150℃以下とされることが好ましい。過度の加熱による、麦芽根が含有するタンパク質成分の変性や組成変化を回避するためである。
また、麦芽根は、除根されたそのまま形態で使用することが出来るが、ミル等の粉砕機で適度に粉砕などを行い、表面積の大きい形状としたものを使用することが好ましい。また、ペレット化された麦芽根の利用も場合によっては可能であるが、エクストルーダー等の過度な圧力によりタンパク質が変性してしまうことのないよう留意が必要である。
また、麦芽根には土壌菌由来の芽胞菌など様々な微生物が付着してことがあり、本発明の好ましい態様によれば、使用の前に、殺菌を行うことが好ましい。具体的には、加熱による殺菌、エタノール等の殺菌効果の有する物質に浸漬して殺菌を行う。加熱殺菌にあたり、タンパク質の変性等を避けるため、120℃未満の温度が好ましく、90℃以下がさらに好ましく、さらに好ましくは70〜85℃が好ましい。さらに、上記殺菌に加えて、または変えて、低pHによる殺菌が行われてもよく、設備の腐食等や食品としての安全性を考慮すると、pH2以上が一般的には好ましく、より好ましくはpH3以上が好ましい。
酵素処理
本発明において麦芽根は、タンパク質分解酵素による処理に付される。
本発明において麦芽根は、タンパク質分解酵素による処理に付される。
タンパク質分解酵素の由来は特に限定されないが、動植物由来、微生物由来のいずれであってもよく、例えばトリコデルマ属、テルモミセス属、オウレオバシヂウム属、ストレプトミセス属、アスペルギルス属、クロストリジウム属、バチルス属、テルモトガ属、テルモアスクス属、カルドセラム属、テルモモノスポラ属、フミコーラ属、リゾップス属、ペニシリウム属、テルモトガ属、テルモアスクス属、カルドセラム属、テルモモノスポラ属、フミコーラ属、リゾップス属、ペニシリウム属、ホウロクタケ属に属する担子菌などのカビやキノコ、細菌由来の酵素やパパイン等の植物由来の酵素、動物由来の酵素等が挙げられる。
また、タンパク質分解酵素の具体例としては、プロテアーゼA,プロテアーゼM, プロテアーゼP、ウマミザイム、ペプチダーゼR、ニューラーゼA、ニューラーゼF(以上、アマノエンザイム社製の麹菌由来プロテアーゼ)、スミチームAP, スミチームLP, スミチームMP, スミチームFP, スミチームLPL(以上、新日本化学工業社製の麹菌由来プロテアーゼ)、プロチンFN(大和化成社製の麹菌由来プロテアーゼ)、デナプシン2P、デナチームAP、XP-415(以上、ナガセケムテックス社製麹菌由来プロテアーゼ)、オリエンターゼ20A、オリエンターゼONS、テトラーゼS(以上、阪急バイオインダストリー社製の麹菌由来プロテアーゼ)、モルシンF、PD酵素、IP酵素、AO-プロテアーゼ(以上、キッコーマン社製の麹菌由来プロテアーゼ)、サカナーゼ(科研製薬社製の麹菌由来プロテアーゼ)、パンチダーゼYP-SS、パンチダーゼNP-2、パンチダーゼP(以上、ヤクルト本社製の麹菌由来プロテアーゼ)、フレーバザイム(ノボノルディスクバイオインダストリー社製の麹菌由来プロテアーゼ)、コクラーゼSS、コクラーゼP(以上、三共社製の麹菌由来プロテアーゼ)、VERON PS、COROLASE PN-L(以上、レーム・エンザイム社製の麹菌由来プロテアーゼ)、プロテアーゼN、プロテアーゼNL、プロテアーゼS、プロレザーFG-F(以上、アマノエンザイム社製の細菌由来プロテアーゼ)、プロチンP、デスキン、デピレイス、プロチンA、サモアーゼ(以上、大和化成社製の細菌由来プロテアーゼ)、ビオプラーゼ XL-416F、ビオプラーゼSP-4FG、ビオプラーゼSP-15FG(以上、ナガセケムテックス社製細菌由来プロテアーゼ)、オリエンターゼ 90N、ヌクレイシン、オリエンターゼ 10NL、オリエンターゼ22BF(以上、阪急バイオインダストリー社製の細菌由来プロテアーゼ)、アロアーゼ AP-10(ヤクルト本社製の細菌由来プロテアーゼ)、プロタメックス、ニュートラーゼ、アルカラーゼ(以上、ノボノルディスクバイオインダストリー社製の細菌由来プロテアーゼ)、COROLASE N、COROLASE 7089、VERON W、VERON P(以上、レーム・エンザイム社製の細菌由来プロテアーゼ)、エンチロンNBS(洛東化成工業社製細菌由来プロテアーゼ)、アルカリプロテアーゼGL440、ピュラフェクト4000L、プロテアーゼ899、プロテックス6L(以上、協和エンザイム社製細菌由来プロテアーゼ)、アクチナーゼAS、アクチナーゼAF(以上、科研製薬社製の放線菌由来プロテアーゼ)、タシナーゼ(協和エンザイム社製の放線菌由来プロテアーゼ)、パパイン W-40(アマノエンザイム社製植物由来プロテアーゼ)、食品用精製パパイン(ナガセケムテックス社製植物由来プロテアーゼ)、その他動物由来のペプシン、トリプシンなどが挙げられる。
酵素処理に用いられる酵素の使用量は、反応条件、酵素の力価等を考慮して適宜決定されてよいが、麦芽根の重量基準で0.01〜100mg/gの範囲が一般的であろう。また、反応条件は、使用する酵素の至適条件または推奨される条件におかれることが無論好ましいが、一般的には、温度は10〜90℃程度 、好ましくは30〜60℃の範囲である。また、溶液pHも適宜決定されてよいが、一般的には3〜10の範囲、好ましくは5〜9の範囲である。
酵素は単独でも、複数混合して用いられても良い。また、複数の酵素による酵素処理は、順次おこなわれてもよい。
なお、本発明にあっては、何らかの必要により酸またはアルカリ処理がなされることを排除するものではないが、この酵素処理にあたり、酸またはアルカリによる処理は必須とされない。従って、本発明による抽出物を、後記する用途に用いる際、酸またはアルカリ処理による最終製品への影響、例えば味や物性への影響を考慮しなくともよいとの利点が得られる。
水可溶性であり、かつ分子量10,000以下の成分を含む画分
本発明にあっては、酵素処理により得られた被処理物の水可溶成分から分子量10,000以下の成分を含んでなる画分を得る。具体的には、まず、酵素処理により得られた被処理物を固液分離する。固液分離の方法は特に限定されないが、例えば、遠心分離、濾過、およびデカンテーションなどが挙げられる。
本発明にあっては、酵素処理により得られた被処理物の水可溶成分から分子量10,000以下の成分を含んでなる画分を得る。具体的には、まず、酵素処理により得られた被処理物を固液分離する。固液分離の方法は特に限定されないが、例えば、遠心分離、濾過、およびデカンテーションなどが挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、被処理物の水可溶性成分から、分子量10,000を超える成分を除く。この操作は、好ましくは限外ろ過により行われる。このような分子量10,000を超える成分の分離は、例えば、以下のような利点をもたらす。本発明による抽出物を、ビール等の酵母を利用した酒類の発酵促進に用いた場合、発酵の初期では発酵促進効果が見られるが、中期以降で酵母が凝集沈降し、麦汁中の糖をアルコールに変換する浮遊酵母数が極端に減少し十分な発酵が行えない状態に陥る現象、いわゆる早凝現象が生じることがある。この早凝現象は、分子量10,000を超える成分を除くことで効率よく解消されるとの利点が得られる。
本発明の好ましい態様によれば、タンパク質分解酵素の処理の後、分子量10,000以下の成分を得る前または後に、水可溶性成分を濃縮してもよい。濃縮の方法は特に限定されないが、減圧濃縮が好ましく採用される。濃縮に際し、フロックやゲルが発生する場合があり、とりわけBrix20以上まで濃縮することでフロックが発生しやすくなる。フロック類は固液分離で除去することが好ましい。濃縮の程度は、抽出物の用途等を勘案して適宜決定されよいが、一般的には高いことが好ましく、また水分活性を低下させることで微生物耐性を持たせることができるとの利点も得られる。
また、濃縮された本発明による抽出物は、冷却するとゲルが発生し粘度が急激に上昇することがあるが、このゲルは排除されてよい。このゲルを排除することで、低温でも流動性ある抽出物とすることができる。
また、本発明による抽出物は、上記のように濃縮されて液状として提供されてよく、また粉末状とされて提供されてもよい。粉末の形態は、スプレードライ、凍結乾燥等により提供されてよい。
発酵促進剤
上記の通り、本発明による麦芽根由来の抽出物は、微生物の発酵促進の作用を有する。従って、本発明の別の態様によれば、上記の麦芽根由来の抽出物を有効成分とする、微生物の発酵促進剤が提供される。本発明による微生物の発酵促進剤は、その微生物の発酵促進の作用において優れることに加え、安全であり食品等への応用においても有利なものである。
上記の通り、本発明による麦芽根由来の抽出物は、微生物の発酵促進の作用を有する。従って、本発明の別の態様によれば、上記の麦芽根由来の抽出物を有効成分とする、微生物の発酵促進剤が提供される。本発明による微生物の発酵促進剤は、その微生物の発酵促進の作用において優れることに加え、安全であり食品等への応用においても有利なものである。
本発明において、微生物の発酵促進の作用とは、微生物の発酵能力または菌体増殖率を高める事を意味するから、本発明による微生物の発酵促進剤は、微生物の発酵能力または菌体増殖率を高めるために用いることが出来る。具体的には、発酵食品の製造、発酵によって得られる医薬品原体製造、発酵による不要物除去、酵素生産、食品用菌体培養、医薬品用菌体培養、工業用菌体培養、バイオマス、化学品原体製造、アルコール類の製造等において使用できる。
従って、本発明の別の態様によれば、上記の微生物発酵促進剤の存在下に、微生物を培養することを含んでなる微生物の培養方法および発酵品の製造方法が提供されることとなる。
本発明による微生物の発酵促進剤が適用可能な微生物は特に限定されないが、その例としては酵母または乳酸菌が挙げられ、それらの例としてはSaccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Candida属、Zygosaccharomyces属、Aspergillus属、Acetobacter属、Lactobacillus属、Bifidobacterium属、Enterococcus属、Lactococcus属、Pediococcus属、 およびLeuconostoc属に属する微生物が挙げられる。上記の本発明による微生物の発酵促進剤が適用可能な微生物は、単独であっても複数であっても良い。
また、微生物の培養によって得られる発酵品としては、例えば食品が上げられ、その具体例としては、Saccharomyces属、Schizosaccharomyces属等の酵母を主として用いたビール、発泡酒、その他の醸造酒、日本酒、ワイン等の醸造酒、ウィスキー、ウォッカ、焼酎等の蒸留酒といった酒類やパン、例えばAspergillus属などを用いた味噌類、醤油のもろみ製造、例えばCandida属やZygosaccharomyces属等を用いて味噌、醤油の発酵、例えばBacillus属などを用いた納豆、例えば、Lactbatillus属、Lactococcus属、Pediococcus属、Leuconostoc属、Bifidobacterium属、Streptcoccus等の乳酸菌を用いた漬物類、ヨーグルト、チーズ、バター等の発酵乳製品、発酵果汁、発酵野菜汁、例えばAcetobacter属を用いた酢やセルロース、その他の微生物を用いたケフィア食品、が挙げられる。また例えば、Corynebacterium属、Brevibacterium属等を用いたアミノ酸、Brevibacterium属、Bacillus属等を用いたヌクレオチド類、医薬品の例としては、放線菌等によるペニシリン等や、組み換え操作を行った大腸菌や酵母などによる抗生物質等が挙げられる。
微生物の培養にあたり、本発明による微生物の発酵促進剤の添加量は適宜決定されてよいが、例えば、液体状態の発酵対象では対象物に対して、重量比で0.001%〜5%が一般的であり、好ましくは0.01%〜2%である。また、固体発酵では0.01%〜20%が一般的であり、好ましくは0.1%〜10%、さらに好ましくは0.1%〜5%である。
本発明による微生物の発酵促進剤の添加により、例えば、発酵期間を大幅に短縮することができる。具体的には、発泡酒では発酵期間が20〜40%短縮される。発酵の促進の確認は、例えばアルコール発酵の場合は代謝として糖質がアルコールに変換されるので、基質である糖質・糖度の変化を確認することにより行うことができる。また、例えば乳酸発酵であれば生産物である乳酸のため被発酵対象物のpHが変化することを確認することにより行うことができる。
また、本発明による微生物の発酵促進剤の添加により、培養菌体量の向上や培養期間の短縮を可能とすることができる。ここで、培養菌体とは、例えば、トルラ酵母、乳酸菌等が挙げられる。菌体培養では、RNA生産用のトルラ酵母の菌体培養、健康食品用の乳酸菌培養、アミノ酸や核酸類の微生物生産、またはカードランやプルラン等の多糖類生産等が挙げられる。また、酵素生産では菌体内、菌体外に生産する酵素生産菌体数の増加にも使用でき、液体培養だけでなく、固体培養においても使用可能である。さらに、工業的には、エタノールやブタノール等のアルコール生産やポリ乳酸等の化学品にも使用可能である。
また、本発明による発酵促進剤は、遺伝子組換え体を用いた菌体培養や各種動物細胞を用いた培養による医薬品原体の生産にも使用可能である。さらに、植物の組織培養や人工種子の培地成分の一部などにおいても使用可能である。また、各種培地成分の不足窒素源としても使用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において行われた各種実験条件等は以下の記載の通りである。
実験方法
発泡酒麦汁の発酵試験
1)原料
麦芽、大麦、副原料(米、コーングリッツ、コーンスターチ)、液糖、および酵素剤(βグルカナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ)を用いる。
2)N源原料
麦芽根エキスの比較対照として、リン安、酵母エキス、 またはカザミノ酸(試薬:DIFCO)を用いる。
3)糖化
糖化プログラムを用い、大麦と麦芽等の原料の糖化を行う。
4)麦汁濾過
糖化もろみを濾紙により濾過し、適度に湯洗いを行い、残存する麦汁を回収
する。
5)ホップ煮沸
濾過麦汁に液糖とホップを加え、ホットプレートにて60分間煮沸し、煮沸終
了後濾紙でホップ等を濾別し、糖度を10〜15°Pに調整する。
6)酵母
添加する酵母は圧搾された新鮮なビール発酵用の酵母を用いる。
7)発酵方法
1Lで液深が約1mとなるサイズのガラス管で発酵試験を行う。発酵条件は、
発酵日数を7日、発酵温度を7〜12℃として行う。
8)後発酵方法
1Lで液深が約1mとなるサイズのガラス管で発酵試験を行う。発酵条件は、
発酵日数を21日、発酵温度を−2〜3℃として行う。
発泡酒麦汁の発酵試験
1)原料
麦芽、大麦、副原料(米、コーングリッツ、コーンスターチ)、液糖、および酵素剤(βグルカナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ)を用いる。
2)N源原料
麦芽根エキスの比較対照として、リン安、酵母エキス、 またはカザミノ酸(試薬:DIFCO)を用いる。
3)糖化
糖化プログラムを用い、大麦と麦芽等の原料の糖化を行う。
4)麦汁濾過
糖化もろみを濾紙により濾過し、適度に湯洗いを行い、残存する麦汁を回収
する。
5)ホップ煮沸
濾過麦汁に液糖とホップを加え、ホットプレートにて60分間煮沸し、煮沸終
了後濾紙でホップ等を濾別し、糖度を10〜15°Pに調整する。
6)酵母
添加する酵母は圧搾された新鮮なビール発酵用の酵母を用いる。
7)発酵方法
1Lで液深が約1mとなるサイズのガラス管で発酵試験を行う。発酵条件は、
発酵日数を7日、発酵温度を7〜12℃として行う。
8)後発酵方法
1Lで液深が約1mとなるサイズのガラス管で発酵試験を行う。発酵条件は、
発酵日数を21日、発酵温度を−2〜3℃として行う。
ヨーグルト発酵試験
1)原料
牛乳、水、脱脂粉乳、砂糖、および各種発酵促進剤を用いる。
2)使用乳酸菌
Lactobacillus paracasei、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus rahmnosus、Lactobacillus johnsonii、およびPediococcus acidiacticiを用いる。
3)種菌培養
MRS培地において培養した乳酸菌培養液を、牛乳+乳ペプチドFE135(商品名)に添加し、30℃において一晩培養を行う。
4)発酵
上記原料に種菌を加え、43℃において発酵を行う。
5)解析
発酵物のpHを測定する。
1)原料
牛乳、水、脱脂粉乳、砂糖、および各種発酵促進剤を用いる。
2)使用乳酸菌
Lactobacillus paracasei、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus rahmnosus、Lactobacillus johnsonii、およびPediococcus acidiacticiを用いる。
3)種菌培養
MRS培地において培養した乳酸菌培養液を、牛乳+乳ペプチドFE135(商品名)に添加し、30℃において一晩培養を行う。
4)発酵
上記原料に種菌を加え、43℃において発酵を行う。
5)解析
発酵物のpHを測定する。
乳酸菌培養試験方法
1)原料
グルコース、硫酸マグネシウム、Tween 80、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、酵母エキス、麦根エキス、およびシリコンを用いる。
2)使用乳酸菌
Lactobacillus paracaseiを用いる。
3)種菌培養
MRS培地において30℃で、40時間培養を行う。
4)培養
上記原料を培地とし、3)において作製した種菌を添加し、32℃において静置培養を行う。
5)解析
濁度と生成乳酸量とを測定する。
1)原料
グルコース、硫酸マグネシウム、Tween 80、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、酵母エキス、麦根エキス、およびシリコンを用いる。
2)使用乳酸菌
Lactobacillus paracaseiを用いる。
3)種菌培養
MRS培地において30℃で、40時間培養を行う。
4)培養
上記原料を培地とし、3)において作製した種菌を添加し、32℃において静置培養を行う。
5)解析
濁度と生成乳酸量とを測定する。
実施例1:麦芽根由来の抽出物1
アマギ二条由来の麦芽根200gをハンマーミルにより、粉状あるいは顆粒状に粉砕した。粉砕後、2Lの水を加え十分に分散後、80〜90℃に加熱し、冷却した。その後、25%NaOH溶液によってpH を7.2に調整し、温度を50℃に調整した。この麦芽根分散液に、ノボザイム社のアルカラーゼおよびフレーバーザイムをそれぞれ1mL添加し、50℃において5時間酵素反応を行った。酵素反応後、80℃において10分間、酵素の加熱失活を行い、その後遠心分離により固液分離を行った。そして、その遠心上清を採取した。これを抽出物1とした。
アマギ二条由来の麦芽根200gをハンマーミルにより、粉状あるいは顆粒状に粉砕した。粉砕後、2Lの水を加え十分に分散後、80〜90℃に加熱し、冷却した。その後、25%NaOH溶液によってpH を7.2に調整し、温度を50℃に調整した。この麦芽根分散液に、ノボザイム社のアルカラーゼおよびフレーバーザイムをそれぞれ1mL添加し、50℃において5時間酵素反応を行った。酵素反応後、80℃において10分間、酵素の加熱失活を行い、その後遠心分離により固液分離を行った。そして、その遠心上清を採取した。これを抽出物1とした。
実施例2:麦芽根由来の抽出物2
得られた抽出物1を4N塩酸によりpH4に調整後、中空糸膜による限外ろ過により分子量10,000以上の画分と分子量10,000以下の画分とに分画した。分子量10,000以下の分画を減圧濃縮し、Brix30まで濃縮を行った。その後、遠心分離でフロック状の物質を除去して、抽出物を得て、これを抽出物2とした。また、分子量10000以上の画分は凍結乾燥を行い、比較抽出物1とした。
得られた抽出物1を4N塩酸によりpH4に調整後、中空糸膜による限外ろ過により分子量10,000以上の画分と分子量10,000以下の画分とに分画した。分子量10,000以下の分画を減圧濃縮し、Brix30まで濃縮を行った。その後、遠心分離でフロック状の物質を除去して、抽出物を得て、これを抽出物2とした。また、分子量10000以上の画分は凍結乾燥を行い、比較抽出物1とした。
実施例3:麦芽根由来の抽出物3
抽出物2をBrix60まで濃縮し、遠心分離を行い、上層に浮かぶゲル状の部分を除去した。得られたペースト状物を抽出物3とした。
抽出物2をBrix60まで濃縮し、遠心分離を行い、上層に浮かぶゲル状の部分を除去した。得られたペースト状物を抽出物3とした。
実施例4
主原料として麦芽、副原料として大麦を配合した原料を用いて、市販の糖質分解酵素を常法により添加し、通常の発泡酒製造用の麦汁を調製した。この麦汁を麦汁Aとした。実施例1で得た抽出物1を、麦汁A1Lに、αアミノ態窒素として3mg/100g分を添加した。その結果、抽出物1を添加したもの(麦汁A +抽出物1)は、無添加の麦汁A(麦汁A)よりも糖消費による糖度の低下速度は速い結果となった(図1)。
主原料として麦芽、副原料として大麦を配合した原料を用いて、市販の糖質分解酵素を常法により添加し、通常の発泡酒製造用の麦汁を調製した。この麦汁を麦汁Aとした。実施例1で得た抽出物1を、麦汁A1Lに、αアミノ態窒素として3mg/100g分を添加した。その結果、抽出物1を添加したもの(麦汁A +抽出物1)は、無添加の麦汁A(麦汁A)よりも糖消費による糖度の低下速度は速い結果となった(図1)。
実施例5
1Lの麦汁Aに、実施例2で得られた抽出物を3.1g添加し、実施例2で得られた比較抽出物1を3.9g添加して発酵試験を行った。一方、比較抽出物1では発酵期間5日目以降、糖消費が進まず(糖度の低下速度が遅く)無添加のもの(麦汁A)より発酵が進まなかった。抽出物2を添加した系では、無添加のものより速い糖消費速度を示した。以上の結果は図2に示される通りであった。
1Lの麦汁Aに、実施例2で得られた抽出物を3.1g添加し、実施例2で得られた比較抽出物1を3.9g添加して発酵試験を行った。一方、比較抽出物1では発酵期間5日目以降、糖消費が進まず(糖度の低下速度が遅く)無添加のもの(麦汁A)より発酵が進まなかった。抽出物2を添加した系では、無添加のものより速い糖消費速度を示した。以上の結果は図2に示される通りであった。
実施例6
実施例5と同様に、麦汁Aに実施例3で得られた抽出物3を抽出物2と同容量添加し、麦汁A(麦汁A)と発酵促進の効果を比較した。発酵速度を示す糖消費は、抽出物3では抽出物2以上の効果を示した(図3)。
実施例5と同様に、麦汁Aに実施例3で得られた抽出物3を抽出物2と同容量添加し、麦汁A(麦汁A)と発酵促進の効果を比較した。発酵速度を示す糖消費は、抽出物3では抽出物2以上の効果を示した(図3)。
実施例7
抽出物1〜3をそれぞれ4℃の温度において、その状態を観察した。抽出物1および2においては、4℃での保存状態では固結し、流動性を維持することが出来なかったが、抽出物3は粘調な液体で流動性が認められた。
抽出物1〜3をそれぞれ4℃の温度において、その状態を観察した。抽出物1および2においては、4℃での保存状態では固結し、流動性を維持することが出来なかったが、抽出物3は粘調な液体で流動性が認められた。
実施例8
抽出物3を上記ペースト状物のうち固形分(乾燥重量基準)として、培地に対して0%、0.05%、0.10%、0.20%、および0.50%の添加率によりヨーグルト原液に加え、Lactobacillus paracasei KW3110による発酵試験を行い、pH低下経過を観察した。0.05%まで麦芽根エキスの添加率依存的にpHの低下が速く、発酵促進効果が見られた(図4)。
抽出物3を上記ペースト状物のうち固形分(乾燥重量基準)として、培地に対して0%、0.05%、0.10%、0.20%、および0.50%の添加率によりヨーグルト原液に加え、Lactobacillus paracasei KW3110による発酵試験を行い、pH低下経過を観察した。0.05%まで麦芽根エキスの添加率依存的にpHの低下が速く、発酵促進効果が見られた(図4)。
実施例9
抽出物3と各種の発酵促進剤とを、上記各々ペースト状物のうち固形分(乾燥重量基準)として、培地に対して0.2%の添加率(ただし、2種類を混合したものはそれぞれ0.1%ずつの添加率)により、ヨーグルト原液に加え、Lactobacillus paracasei KW3110による発酵試験を行い、pH低下経過を観察した。用いた各種の発酵促進剤は、抽出物3(MRE)、乳ペプチドFE135(商品名)(FE)、乾燥ビール酵母(BY)、および大豆ペプチド ハイニュートSMS(商品名)(SMS)である。また、比較のため発酵促進剤無添加(W/O)も同時に試験した。抽出物3のみを添加した場合に、最もpHの低下が速く、既存の製品よりも高い発酵促進効果が見られた(図5)。
抽出物3と各種の発酵促進剤とを、上記各々ペースト状物のうち固形分(乾燥重量基準)として、培地に対して0.2%の添加率(ただし、2種類を混合したものはそれぞれ0.1%ずつの添加率)により、ヨーグルト原液に加え、Lactobacillus paracasei KW3110による発酵試験を行い、pH低下経過を観察した。用いた各種の発酵促進剤は、抽出物3(MRE)、乳ペプチドFE135(商品名)(FE)、乾燥ビール酵母(BY)、および大豆ペプチド ハイニュートSMS(商品名)(SMS)である。また、比較のため発酵促進剤無添加(W/O)も同時に試験した。抽出物3のみを添加した場合に、最もpHの低下が速く、既存の製品よりも高い発酵促進効果が見られた(図5)。
実施例10
抽出物3の上記ペースト状物のうち固形分(乾燥重量基準)として0.1%の添加率によりヨーグルト原液に加え、A〜Eの各種乳酸菌(AはLactobacillus paracasei、BはLactobacillus gasseri、CはLactobacillus rahmnosus、DはLactobacillus johnsonii、そしてEはPediococcus acidiacticiである)について発酵試験を行い、8時間目までpH低下経過を観察した。また、比較のため、市販の発酵促進剤(乳ペプチドFE135)を固形物として0.2%添加した系で発酵試験を行った。いずれの乳酸菌においても発酵促進剤であるFE135添加よりもpHの低下が速く、発酵促進効果が見られた(図6)。
抽出物3の上記ペースト状物のうち固形分(乾燥重量基準)として0.1%の添加率によりヨーグルト原液に加え、A〜Eの各種乳酸菌(AはLactobacillus paracasei、BはLactobacillus gasseri、CはLactobacillus rahmnosus、DはLactobacillus johnsonii、そしてEはPediococcus acidiacticiである)について発酵試験を行い、8時間目までpH低下経過を観察した。また、比較のため、市販の発酵促進剤(乳ペプチドFE135)を固形物として0.2%添加した系で発酵試験を行った。いずれの乳酸菌においても発酵促進剤であるFE135添加よりもpHの低下が速く、発酵促進効果が見られた(図6)。
実施例11
抽出物3の上記ペースト状物のうち固形分(乾燥重量基準)として1%の添加率により、先に示した乳酸菌培養培地に加え、Lactobacillus paracasei KW3110について培養試験を行い、48時間までの菌体増殖と生成乳酸濃度とを観察した。抽出物3無添加群と比較して、添加群においては菌体増殖および生成乳酸濃度のいずれも高く、乳酸菌の培養および発酵いずれにおいても促進効果が見られた(図7)。
抽出物3の上記ペースト状物のうち固形分(乾燥重量基準)として1%の添加率により、先に示した乳酸菌培養培地に加え、Lactobacillus paracasei KW3110について培養試験を行い、48時間までの菌体増殖と生成乳酸濃度とを観察した。抽出物3無添加群と比較して、添加群においては菌体増殖および生成乳酸濃度のいずれも高く、乳酸菌の培養および発酵いずれにおいても促進効果が見られた(図7)。
実施例12
実施例5および6の発酵過程における浮遊酵母の量を、発酵液の濁度(OD800)により測定し、評価した。結果は図8に示される通りであった。発酵を開始後4日目までの浮遊酵母数を示す濁度は抽出物2および抽出物3を添加した系は無添加のものより高い菌体増殖が観察された。一方、比較抽出物1においては濁度が低く菌体増殖の抑制が見られた。また、抽出物2および3においては発酵7日目においてもOD800は1.2以上あり、発酵後期の発酵を行う浮遊酵母量が十分存在した。一方、比較抽出物1を添加した系においては、発酵7日目においては過剰な凝集沈殿が発生することにより濁度が大きく低下し、浮遊酵母量が減少し、早凝現象が見られた。
実施例5および6の発酵過程における浮遊酵母の量を、発酵液の濁度(OD800)により測定し、評価した。結果は図8に示される通りであった。発酵を開始後4日目までの浮遊酵母数を示す濁度は抽出物2および抽出物3を添加した系は無添加のものより高い菌体増殖が観察された。一方、比較抽出物1においては濁度が低く菌体増殖の抑制が見られた。また、抽出物2および3においては発酵7日目においてもOD800は1.2以上あり、発酵後期の発酵を行う浮遊酵母量が十分存在した。一方、比較抽出物1を添加した系においては、発酵7日目においては過剰な凝集沈殿が発生することにより濁度が大きく低下し、浮遊酵母量が減少し、早凝現象が見られた。
実施例13
麦汁Aに抽出物3を0.3%の割合で添加し、発酵および後発酵を行った。得られた発泡酒を発泡酒Aとした。一方、抽出物3を添加しなかったこと以外は同様の発酵および後発酵を行って得られた発泡酒を発泡酒Bとした。5人のパネラーにより試飲したところ、発泡酒Aではダイアセチル臭も無く、その他の異臭や異味もなく、良好な発泡酒に仕上がっていたが、発泡酒Bにおいてはダイアセチル臭残存との評価があり発泡酒として問題が残るものであった。
麦汁Aに抽出物3を0.3%の割合で添加し、発酵および後発酵を行った。得られた発泡酒を発泡酒Aとした。一方、抽出物3を添加しなかったこと以外は同様の発酵および後発酵を行って得られた発泡酒を発泡酒Bとした。5人のパネラーにより試飲したところ、発泡酒Aではダイアセチル臭も無く、その他の異臭や異味もなく、良好な発泡酒に仕上がっていたが、発泡酒Bにおいてはダイアセチル臭残存との評価があり発泡酒として問題が残るものであった。
実施例14
麦汁A(麦汁A)へ、リン安を150ppm(麦汁A +リン安)、酵母エキス(YE)(酵調88:コスモ食品社製)(麦汁A+YE)、または抽出物3をそれぞれ添加麦汁のαアミノ態窒素として約3mg/100g増加となるように添加した。そして、それぞれ発酵性の比較を行った。リン安(麦汁A +リン安)および酵母エキス(麦汁A+YE)と比較して、抽出物3(麦汁A +抽出物3)の方が、糖度低下が速く、発酵性は良好であった(図9)。
麦汁A(麦汁A)へ、リン安を150ppm(麦汁A +リン安)、酵母エキス(YE)(酵調88:コスモ食品社製)(麦汁A+YE)、または抽出物3をそれぞれ添加麦汁のαアミノ態窒素として約3mg/100g増加となるように添加した。そして、それぞれ発酵性の比較を行った。リン安(麦汁A +リン安)および酵母エキス(麦汁A+YE)と比較して、抽出物3(麦汁A +抽出物3)の方が、糖度低下が速く、発酵性は良好であった(図9)。
実施例15
麦汁Aの糖化過程で麦芽根を原料比2.5%の割合で添加し、麦汁Cを試作した。麦汁Cと麦汁Aとに抽出物2を2%添加した麦汁で糖度の低下速度を比較したところ、麦汁Cでは抽出物2の添加より糖度の低下速度は遅かった(図10)。
麦汁Aの糖化過程で麦芽根を原料比2.5%の割合で添加し、麦汁Cを試作した。麦汁Cと麦汁Aとに抽出物2を2%添加した麦汁で糖度の低下速度を比較したところ、麦汁Cでは抽出物2の添加より糖度の低下速度は遅かった(図10)。
Claims (12)
- 麦芽根をタンパク質分解酵素によって処理して得られた、水可溶性であり、かつ分子量10,000以下の成分を含んでなる、微生物の発酵促進作用を有する、麦芽根由来の抽出物。
- 限外ろ過膜によって分子量10,000以下とされた、請求項1に記載の麦芽根由来の抽出物。
- 麦芽根をタンパク質分解酵素によって処理し、得られた被処理物の水可溶成分から分子量10,000以下の成分を含んでなる、微生物の発酵促進作用を有する画分を得ることを含んでなる、麦芽根由来の抽出物の製造方法。
- 限外ろ過膜によって分子量10,000以下の成分を得る、請求項3に記載の麦芽根由来の抽出物の製造方法。
- タンパク質分解酵素の処理の後、分子量10,000以下の成分を得る前または後に、水可溶性成分を濃縮する工程をさらに含んでなる、請求項3または4に記載の麦芽根由来の抽出物の製造方法。
- 請求項1または2に記載の麦芽根由来の抽出物を有効成分とする、微生物の発酵促進剤。
- 微生物の発酵能力または菌体増殖率を高める、請求項6に記載の発酵促進剤。
- 請求項6に記載の微生物発酵促進剤の存在下に、微生物を培養することを含んでなる、微生物の培養方法。
- 請求項6に記載の微生物発酵促進剤の存在下に、微生物を培養することを含んでなる、発酵品の製造方法。
- 微生物が酵母または乳酸菌である、請求項9に記載の方法。
- 発酵品が、食品である、請求項9に記載の方法。
- 食品が、発酵アルコール飲料、ヨーグルト、パン、味噌、醤油、納豆、漬物類、酢、セルロース、ケフィア食品、チーズ、およびバターである、請求項11に記載の発酵品の製造方法。
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---|---|---|---|---|
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CN104470528A (zh) * | 2012-06-04 | 2015-03-25 | 达莫尔制药公司 | 来自小麦的糖级分、分离方法以及发明的应用领域 |
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WO2021235466A1 (ja) | 2020-05-22 | 2021-11-25 | アサヒグループホールディングス株式会社 | 酵母用培地添加剤 |
-
2007
- 2007-12-28 JP JP2007339730A patent/JP2009161448A/ja active Pending
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