JP2009161434A - Iii族窒化物半導体結晶の製造方法及びiii族窒化物半導体結晶 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板11上に、少なくともIII族窒化物化合物からなる中間層12を積層し、該中間層12上に、III族窒化物半導体結晶を成膜する方法であり、基板11の温度を25℃〜1000℃の範囲とするとともに、処理時間を30秒〜3600秒の範囲として、基板11に対してプラズマ処理を行う前処理工程と、次いで、基板11上に中間層12をスパッタ法によって成膜するスパッタ工程が備えられている。
【選択図】図1
Description
また、電子デバイスに用いた場合でも、III族窒化物化合物半導体発光素子は、従来のIII−V族化合物半導体を用いた場合に比べ、優れた特性を有する電子デバイスが得られる。
一般に、上述のような大きな格子不整合が存在する場合、基板上に結晶を直接エピタキシャル成長させることが困難となり、また、成長させた場合であっても結晶性の良好な結晶が得られないという問題がある。
例えば、高周波スパッタで成膜したバッファ層上に、MOCVDによって同じ組成の結晶を成長させる方法が提案されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、特許文献3に記載の方法では、基板上に、安定して良好な結晶を積層することができないという問題がある。
しかしながら、特許文献6に記載の方法を基板の前処理に適用しても、基板と半導体層との間が格子整合せず、基板上に良好な結晶性を有する半導体層を形成することが出来ないという問題があった。
即ち、本発明は以下に関する。
[3] 前記前処理工程におけるプラズマ処理が、プラズマを前記基板の表面に作用させる処理であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
[4] 前記前処理工程におけるプラズマ処理が、窒素ガスを用いた窒素プラズマを発生させて前記基板の表面に作用させる処理であることを特徴とする上記[3]に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
[5] 前記前処理工程は、プラズマ処理を行なうための原料ガスの分圧を1×10−2〜10Paの範囲として行なうことを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
[7] 前記前処理工程は、前記基板の温度を300〜800℃の範囲として行なわれることを特徴とする上記[1]〜[6]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
[8] 前記前処理工程及び前記スパッタ工程を同一のチャンバ内で行うことを特徴とする上記[1]〜[7]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
[10] 前記中間層を、AlNから形成することを特徴とする上記[1]〜[9]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
従って、基板上に結晶性の良好なIII族窒化物半導体を効率良く成長させることができ、生産性に優れたIII族窒化物半導体結晶の製造方法が実現できる。また、このような製造方法でIII族窒化物半導体結晶を製造することにより、優れた結晶性を有するIII族窒化物半導体結晶が得られる。
本実施形態の前処理工程で行われるプラズマ処理は、窒素、酸素等、活性なプラズマ種を発生するガスを含むプラズマ中で行なうことが好ましい。中でも、窒素ガスが特に好適である。
また、本実施形態の前処理工程におけるプラズマ処理は、逆スパッタとすることが好適である。
本実施形態の前処理工程では、基板11とチャンバとの間に電圧を印加することにより、プラズマ粒子が効率的に基板11に作用する。
ここで、基板の表面からコンタミ等を除去する際、例えば、イオン成分等を単独で基板表面に供給した場合には、エネルギーが強すぎて基板表面にダメージを与えてしまい、基板上に成長させる結晶の品質を低下させてしまうという問題がある。
本実施形態の前処理工程では、上述のように、イオン成分とラジカル成分とが混合された雰囲気で行なわれるプラズマ処理を用いた方法とし、基板11に適度なエネルギーを持つ反応種を作用させることにより、基板11表面にダメージを与えずにコンタミ等の除去を行なうことが可能となる。このような効果が得られるメカニズムとしては、イオン成分の割合が少ないプラズマを用いることで基板表面に与えるダメージが抑制されることと、基板表面にプラズマを作用させることによって効果的にコンタミを除去できること等が考えられる。
本実施形態のスパッタ工程は、スパッタ法を用いて基板11上に中間層12を成膜する工程であり、例えば、金属原料とV族元素を含んだガスとをプラズマで活性化して反応させることにより、中間層12が成膜される。
このように、カソードのマグネットを揺動、又は回転等の方法で移動させつつ成膜するRFスパッタ法は、詳細を後述する、基板11側面に中間層12を成膜する際の成膜効率に優れる点で好適である。
スパッタ法を用いて中間層12を成膜する際の炉内の圧力は、0.3Pa以上であることが好ましい。この炉内の圧力が0.3Pa未満だと、窒素の存在量が小さく、スパッタされた金属が窒化物とならずに基板11に付着する虞がある。この炉内の圧力の上限は特に限定されないが、プラズマを発生させることができる程度の圧力に抑制することが必要である。
一般に、スパッタ法においては、ターゲット材料の純度が高い程、成膜後の薄膜の結晶性等の膜質が良好となる。中間層12をスパッタ法によって成膜する場合、原料となるターゲット材料としてIII族窒化物化合物半導体を用い、Arガス等の不活性ガスのプラズマによるスパッタを行なうことも可能であるが、リアクティブスパッタ法においてターゲット材料に用いるIII族金属単体並びにその混合物は、III族窒化物化合物半導体と比較して高純度化が可能である。このため、リアクティブスパッタ法では、成膜される中間層12の結晶性をより向上させることが可能となる。
アンモニアは分解効率が良好であり、高い成長速度で成膜することが可能であるが、反応性や毒性が高いため、除害設備やガス検知器が必要となり、また、反応装置に使用する部材の材料を化学的に安定性の高いものにする必要がある。
また、窒素(N2)を原料として用いた場合には、装置としては簡便なものを用いることができるが、高い反応速度は得られない。しかしながら、窒素を電界や熱等により分解してから装置に導入する方法とすれば、アンモニアよりは低いものの工業生産的に利用可能な程度の成膜速度を得ることができるため、装置コストとの兼ね合いを考えると、最も好適な窒素源である。
本実施形態において、III族窒化物半導体結晶が表面上にエピタキシャル成長される基板11としては、特に限定されず、各種材料を選択して用いることができ、例えば、サファイア、SiC、シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン等が挙げられ、特にサファイアが好ましい。
本実施形態の積層半導体10は、基板11上に、スパッタ法によってIII族窒化物化合物からなる単結晶の中間層12が成膜されている。中間層12は、スパッタ法により、例えば、金属原料とV族元素を含んだガスとがプラズマで活性化されて反応することで成膜される。
中間層12が基板11を覆っておらず、基板11の表面が露出していると、中間層12上に成膜される下地層14aと基板11上に直接成膜される下地層14aとでは格子定数が異なるため、均一な結晶とならず、ヒロックやピットを生じてしまう。
上述したように、MOCVD法では、原料ガスが基板の側面、もしくは裏面にまで回りこむことがあることから、後述のIII族窒化物化合物半導体結晶からなる各層の何れかをMOCVD法で成膜する場合、原料ガスと基板との反応を回避するためには、基板側面、もしくは裏面をも保護できるように、中間層を、図7(c)に示す中間層12cのように構成することが好ましい。
また、中間層を多結晶として形成した場合には、結晶のグレインが、上述したような略柱状の形状とされていることが望ましく、中間層が、柱状のグレインが集合して層を成していることが望ましい。
ここで、本発明で説明するグレインの幅とは、中間層が柱状グレインの集合体である場合は、結晶の界面と界面の距離のことをいう。一方、グレインが島状に点在する場合には、グレインの幅とは、結晶グレインが基板面に接する面の最も大きい、さし渡しの長さを言う。
中間層12の膜厚が10nm未満だと、バッファ層としての機能が充分でなくなる。また、500nmを超える膜厚で中間層12を形成し場合、バッファ層としての機能には変化が無いのにも関わらず、成膜処理時間が長くなり、生産性が低下する虞がある。
中間層12を構成する材料としては、一般式AlGaInNで表されるIII族窒化物化合物半導体であれば、どのような材料でも用いることができる。さらに、V族として、AsやPが含有される構成としても良い。
中間層12を、Alを含んだ組成とした場合、中でも、GaAlNとすることが好ましく、この際、Alの組成が50%以上とされていることが好ましい。
また、中間層を柱状結晶の集合体として形成する場合には、AlNからなる組成とすることにより、効率的に柱状結晶集合体とすることができる。
図1に示すように、本実施形態の積層半導体10は、基板11上に、上述のような中間層12を介して、窒化物系化合物半導体からなり、n型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16から構成される半導体層(III族窒化物半導体結晶)が積層されている。
そして、n型半導体層14は、少なくともIII族窒化物化合物半導体からなる下地層14aを有しており、中間層12上に下地層14aが積層されている。
以下に、積層半導体10について詳述する。
n型半導体層14は、通常、前記中間層12上に積層され、下地層14a、n型コンタクト層14b及びn型クラッド層14cから構成される。なお、n型コンタクト層は、下地層、及び/又は、n型クラッド層を兼ねることが可能であるが、下地層が、n型コンタクト層、及び/又は、n型クラッド層を兼ねることも可能である。
下地層14aは、III族窒化物化合物半導体からなり、基板11上に積層して成膜される。
下地層14aの材料としては、基板11上に成膜された中間層12と異なる材料を用いても構わないが、AlXGa1―XN層(0≦x≦1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。
また、中間層12を、AlNからなる柱状結晶の集合体として形成した場合には、下地層14aが中間層12の結晶性をそのまま引き継がないように、マイグレーションによって転位をループ化させる必要があるが、このような材料としても上記Gaを含むGaN系化合物半導体が挙げられ、特に、AlGaN、又はGaNが好適である。
また、基板11に絶縁性の基板を用いる場合には、発光素子のチップの同じ面に電極が形成されるチップ構造を採用することになるので、基板11上に中間層12を介して積層される下地層14aはドープしない結晶とした方が、結晶性が良好となる。
本実施形態の下地層の成膜方法について、以下に説明する。
本実施形態では、上述した方法で基板11に中間層12を成膜した後、III族窒化物化合物半導体からなる下地層14aを成膜することができるが、該下地層14aを成膜する前に、アニール処理を行うことは特段に必要ではない。しかしながら、一般に、III族窒化物化合物半導体の成膜をMOCVD、MBE、VPE等の気相化学成膜方法で行なう場合、成膜を伴わない昇温過程及び温度の安定化過程を経て処理されるが、これらの過程においてV族の原料ガスをチャンバ内に流通させることが多いので、結果としてアニール効果が生じることがある。
上述したように、一般に、スパッタ法においては、ターゲット材料の純度が高い程、成膜後の薄膜の結晶性等の膜質が良好となる。下地層14aをスパッタ法によって成膜する場合、原料となるターゲット材料としてIII族窒化物半導体を用い、Arガス等の不活性ガスのプラズマによるスパッタを行なうことも可能であるが、リアクティブスパッタ法においてターゲット材料に用いるIII族金属単体並びにその混合物は、III族窒化物化合物半導体と比較して高純度化が可能である。このため、リアクティブスパッタ法では、成膜される下地層14aの結晶性をより向上させることが可能となる。
また、MOCVD成長炉内の圧力は15〜40kPaに調整することが好ましい。
n型コンタクト層14bとしては、下地層14aと同様にAlXGa1―XN層(0≦x≦1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。また、n型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017〜1×1019/cm3、好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、負極との良好なオーミック接触の維持、クラック発生の抑制、良好な結晶性の維持の点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeである。成長温度は下地層と同様である。
n型クラッド層14cの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5〜500nmの範囲であり、より好ましくは5〜100nmの範囲である。
また、n型クラッド層14cのn型ドープ濃度は1×1017〜1×1020/cm3の範囲が好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の範囲である。ドープ濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および発光素子の動作電圧低減の点で好ましい。
p型半導体層16は、通常、p型クラッド層16a及びp型コンタクト層16bから構成される。しかし、p型コンタクト層がp型クラッド層を兼ねてもよい。
p型クラッド層16aとしては、発光層15のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層15へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AldGa1−dN(0<d≦0.4、好ましくは0.1≦d≦0.3)のものが挙げられる。p型クラッド層16aが、このようなAlGaNからなると、発光層15へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。p型クラッド層16aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。p型クラッド層16aのp型ドープ濃度は、1×1018〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019〜1×1020/cm3である。p型ドープ濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
p型コンタクト層16bとしては、少なくともAleGa1−eN(0≦e<0.5、好ましくは0≦e≦0.2、より好ましくは0≦e≦0.1)を含んでなる窒化ガリウム系化合物半導体層である。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持およびpオーミック電極(後述の透光性電極17を参照)との良好なオーミック接触の点で好ましい。
また、p型ドーパントを1×1018〜1×1021/cm3の範囲の濃度で含有していると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましく、より好ましくは5×1019〜5×1020/cm3の範囲である。
p型不純物としては、特に限定されないが、例えば、好ましくはMgが挙げられる。
p型コンタクト層16bの膜厚は、特に限定されないが、10〜500nmが好ましく、より好ましくは50〜200nmである。膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
発光層15は、n型半導体層14上に積層されるとともにp型半導体層16がその上に積層される層であり、図1に示すように、窒化ガリウム系化合物半導体からなる障壁層15aと、インジウムを含有する窒化ガリウム系化合物半導体からなる井戸層15bとが交互に繰り返して積層され、且つ、n型半導体層14側及びp型半導体層16側に障壁層15aが配される順で積層して形成される。
また、図1に示す例では、発光層15は、6層の障壁層15aと5層の井戸層15bとが交互に繰り返して積層され、発光層15の最上層及び最下層に障壁層15aが配され、各障壁層15a間に井戸層15bが配される構成とされている。
また、井戸層15bには、インジウムを含有する窒化ガリウム系化合物半導体として、例えば、Ga1−sInsN(0<s<0.4)等の窒化ガリウムインジウムを用いることができる。
本実施形態における一例として説明する発光素子1は、上記構成とされたn型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16からなるIII族窒化物半導体結晶の上に、さらに、透光性正極17と、後述の正極ボンディングパッド18及び負極19が形成される。
ここで、透光性正極17は、上述のようにして作製される積層半導体10のp型半導体層16上に形成される透光性の電極である。
透光性正極17の材質としては、特に限定されず、ITO(In2O3−SnO2)、AZO(ZnO−Al2O3)、IZO(In2O3−ZnO)、GZO(ZnO−Ga2O3)等の材料を、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることができる。また、その構造も、従来公知の構造を含めて如何なる構造のものも何ら制限なく用いることができる。
正極ボンディングパッド18は、上述の透光性正極17上に形成される電極である。
正極ボンディングパッド18の材料としては、Au、Al、NiおよびCu等を用いた各種構造が周知であり、これら周知の材料、構造のものを何ら制限無く用いることができる。
正極ボンディングパッド18の厚さは、100〜1000nmの範囲内であることが好ましい。また、ボンディングパッドの特性上、厚さが大きい方が、ボンダビリティーが高くなるため、正極ボンディングパッド18の厚さは300nm以上とすることがより好ましい。さらに、製造コストの観点から500nm以下とすることが好ましい。
このため、負極ボンディングパッド17を形成する際は、発光層15、p型半導体層16、及びn型半導体層14の一部を除去してn型コンタクト層14bの露出領域14dを形成し、この上に負極19を形成する。
負極19の材料としては、各種組成および構造の負極が周知であり、これら周知の負極を何ら制限無く用いることができ、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることができる。
またさらに、本実施形態の製造方法で得られるIII族窒化物半導体結晶を用いて発光素子1を構成した場合には、優れた発光特性を有する発光素子1を実現することができる。
以上説明したような、本発明に係るIII族窒化物半導体結晶を用いて構成した発光素子と蛍光体とを組み合わせることにより、当業者周知の手段によってランプを構成することができる。従来より、発光素子と蛍光体と組み合わせることによって発光色を変える技術が知られており、このような技術を何ら制限されることなく採用することが可能である。
例えば、蛍光体を適正に選定することにより、発光素子より長波長の発光を得ることも可能となり、また、発光素子自体の発光波長と蛍光体によって変換された波長とを混ぜることにより、白色発光を呈するランプとすることもできる。
また、ランプとしては、一般用途の砲弾型、携帯のバックライト用途のサイドビュー型、表示器に用いられるトップビュー型等、何れの用途にも用いることができる。
本発明によって得られるIII族窒化物半導体結晶の積層構造(図1に示す積層半導体10を参照)は、上述の発光素子の他、レーザ素子や受光素子等の光電気変換素子、又は、HBTやHEMT等の電子デバイス等にも適用することが可能である。
また、これらの半導体素子は各種構造のものが知られており、本発明に係るIII族窒化物半導体結晶の半導体素子構造は、これら周知の素子構造を含めて何ら制限されない。
本例では、サファイアからなる基板11のc面上に、中間層12としてRFスパッタ法を用いてAlNからなる柱状結晶の集合体を形成し、その上に、下地層14aとして、MOCVD法を用いてアンドープのGaN系半導体からなる層を形成し、実施例1のサンプルを作成した。
そして、スパッタ装置内で基板11を750℃まで加熱し、窒素ガスのみを30sccmの流量で導入した後、チャンバ内の圧力を0.08Paに保持し、基板11側に50Wの高周波バイアスを印加し、基板11を窒素プラズマに曝した(逆スパッタ)。この際の基板11の温度は500℃とし、処理時間は200秒とした。
なお、ターゲット内のマグネットは、基板11の逆スパッタ時、及び成膜時の何れにおいても揺動させた。
そして、予め測定した成膜速度に従い、規定した時間の処理を行い、50nmのAlN(中間層12)を成膜後、プラズマ動作を停止し、基板11の温度を低下させた。
まず、基板11を反応炉中に導入した。基板11は、窒素ガス置換されたグローブボックスの中で、加熱用のカーボン製のサセプタ上に載置した。そして、窒素ガスを炉内に流通させた後、ヒータによって基板11の温度を1150℃に昇温させた。基板11が1150℃の温度で安定したことを確認した後、アンモニア配管のバルブを開き、アンモニアの炉内への流通を開始した。次いで、TMGaの蒸気を含む水素を炉内へ供給し、基板11上に成膜された中間層12の上に、下地層14aをなすGaN系半導体を付着させる処理を行った。アンモニアの量は、V/III比が6000となるように調節した。約1時間に渡って上記GaN系半導体の成長を行った後、TMGaの配管のバルブを切り替え、原料の反応炉内への供給を停止して成長を停止させた。そして、GaN系半導体の成長を終了させた後、ヒータへの通電を停止して、基板11の温度を室温まで降温した。
本例では、実施例1と同様の条件で成膜した6μmのアンドープGaN結晶(下地層14a)上に、Geをドーパントとしたn型コンタクト層14bを成膜し、さらに各半導体層を積層することにより、最終的に、図1に示すようなIII族窒化物化合物半導体発光素子用のエピタキシャル層構造を有するエピタキシャルウェーハ(積層半導体10)を作製した。
このエピタキシャルウェーハは、c面を有するサファイアからなる基板11上に、実施例1と同じ成長方法により、柱状結晶構造を有するAlNからなる中間層12を成膜した後、基板11側から順に、6μmのアンドープGaNからなる下地層14a、1×1019cm−3の電子濃度を持つ2μmのGeドープGaNからなるn型コンタクト層14b、1×1018cm−3の電子濃度を持つ20nmのIn0.1Ga0.9N型クラッド層(n型クラッド層14c)、GaN障壁層に始まりGaN障壁層に終わる積層構造であって、層厚を16nmとしたGaNからなる6層の障壁層15aと、層厚を3nmとしたノンドープのIn0.2Ga0.8Nからなる5層の井戸層15bとが交互に積層されてなる発光層(多重量子井戸構造)15、5nmのMgをドープしたAl0.1Ga0.9Nからなるp型クラッド層16a、及び膜厚200nmのMgドープAl0.02Ga0.98Nからなるp型コンタクト層16bとを具備したp型半導体層16を積層した構造を有する。
その後の半導体積層構造の積層も、同じMOCVD装置を用いて、下地層14aの成膜と同様にして行った。
まず、作製したウェーハについて、公知のフォトリソグラフィーによってMgドープAl0.02Ga0.98Nからなるp型コンタクト層16bの表面上に、ITOからなる透光性正極17と、その上に表面側から順にチタン、アルミニウム、金を積層した構造を有する正極ボンディングパッド18を形成した。また、ウェーハの一部にドライエッチングを施し、n型コンタクト層14b上の露出領域14dを露出させ、この部分にNi、Al、Ti、Auの4層よりなる負極19を作製した。これらの工程により、ウェーハ上に、図2及び3に示すような形状を持つ各電極を作製した。
前処理工程における逆スパッタ条件と、X線半値幅及び発光出力の測定結果を下記表1に示す。
本例では、サファイアからなる基板のc面上に、逆スパッタによる前処理工程を行なわずに、基板上にAlNからなる中間層を形成し、その上に、MOCVD法を用いてGaNからなる下地層14aを形成した点を除き、実施例2と同様にして発光素子を作製した。
また、比較例1の方法で成長させたGaNからなる下地層14aのX線ロッキングカーブ(XRC)を測定したところ、(0002)面の測定においては半値幅300秒、(10−10)面においては半値幅500秒を示し、結晶性が劣っていることが明らかとなった。
実施例3〜7、及び、比較例2〜3では、前処理工程における逆スパッタを下記表1に示す条件とした点を除き、実施例2と同様にして発光素子を作製した。
前処理工程における逆スパッタ条件と、X線半値幅及び発光出力の測定結果を下記表1に示す。
本例では、Si(111)からなる基板上への中間層の成膜前に、前処理工程としてArプラズマによる逆スパッタを基板に施し、中間層として、回転カソード式のRFスパッタ装置を用いてAlGaNからなる単結晶の層を形成した。ここで、スパッタ時の基板温度は500℃とした。
そして、上記中間層上に、下地層として、MOCVD法を用いてSiをドープしたAlGaNからなる層を形成し、更にその上に、実施例2と同様の発光素子半導体積層構造を成膜した。この際、中間層のAl組成は70%とし、下地層のAl組成は15%とした。
そして、MOCVD法による半導体積層構造の成長後、ウェーハを反応装置から取り出したところ、ウェーハの表面は鏡面であった。
そして、各電極間に順方向電流を流したところ、電流20mAにおける順方向電圧は2.9Vであった。また、p側の透光性正極を通して発光状態を観察したところ、発光波長は460nmであり、発光出力は10mWを示した。このような発光ダイオードの特性は、作製したウェーハのほぼ全面から作製された発光ダイオードについて、ばらつきなく得られた。
前処理工程における逆スパッタ条件、及び測定結果を下記表1に示す。
本例では、ZnO(0001)からなる基板上への中間層の成膜前に、前処理工程としてO2ガスのプラズマによる逆スパッタを施し、DCスパッタ装置を用いて柱状結晶のAlNからなる中間層を形成した。ここで、スパッタ時の基板温度は750℃とした。
そして、上記中間層上に、MOCVD法を用いてGeをドープしたAlGaNからなる下地層を形成し、更にその上に、実施例2と同様の半導体積層構造を成膜した。この際の下地層のAl組成は10%とした。また、本例では、発光波長が525nm付近の緑色LEDの作製を試み、発光層のIn原料の流量を増量した。
そして、MOCVD法による半導体積層構造の成長後、ウェーハを反応装置から取り出したところ、ウェーハの表面は鏡面であった。
そして、各電極間に順方向電流を流したところ、電流20mAにおける順方向電圧は3.3Vであった。また、p側の透光性正極を通して発光状態を観察したところ、発光波長は525nmであり、緑色発光を呈した。また、発光出力は10mWを示した。このような発光ダイオードの特性は、作製したウェーハのほぼ全面から作製された発光ダイオードについて、ばらつきなく得られた。
実施例2〜9、並びに、比較例1〜3における、前処理工程の逆スパッタ条件と、X線半値幅及び発光出力の測定結果を下記表1に示す。
このように、本発明に係るIII族窒化物半導体結晶は、生産性に優れるとともに、優れた結晶性を備えていることが明らかであり、また、本発明に係るIII族窒化物半導体結晶が用いられてなる発光素子が、優れた発光特性を備えていることが明らかである。
Claims (11)
- 基板上に、少なくともIII族窒化物化合物からなる中間層を積層し、該中間層上に、III族窒化物半導体結晶を成膜するIII族窒化物半導体結晶の製造方法であって、
前記基板の温度を25℃〜1000℃の範囲とするとともに、処理時間を30秒〜3600秒の範囲として、前記基板に対してプラズマ処理を行う前処理工程と、
次いで、前記基板上に前記中間層をスパッタ法によって成膜するスパッタ工程が備えられていることを特徴とするIII族窒化物半導体結晶の製造方法。 - さらに、前記中間層上に、MOCVD法によってIII族窒化物半導体結晶を成膜する工程が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
- 前記前処理工程におけるプラズマ処理が、プラズマを前記基板の表面に作用させる処理であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
- 前記前処理工程におけるプラズマ処理が、窒素ガスを用いた窒素プラズマを発生させて前記基板の表面に作用させる処理であることを特徴とする請求項3に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
- 前記前処理工程は、プラズマ処理を行なうための原料ガスの分圧を1×10−2〜10Paの範囲として行なうことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
- 前記前処理工程は、処理時間を60秒〜600秒の範囲として行なわれることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
- 前記前処理工程は、前記基板の温度を300〜800℃の範囲として行なわれることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
- 前記前処理工程及び前記スパッタ工程を同一のチャンバ内で行うことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
- 前記中間層を、単結晶又は柱状結晶として形成することを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
- 前記中間層を、AlNから形成することを特徴とする請求項1〜請求項9の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
- 請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の製造方法で得られるIII族窒化物半導体結晶。
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