JP2009158546A - 電解コンデンサ用陰極箔の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、電解コンデンサ用陰極箔の製造方法に関するものであり、特に、駆動用電解液(以下、電解液と称す)中で陰極箔に水和皮膜が形成され、陰極箔が劣化するのを抑制する方法に関するものである。
電解コンデンサ用アルミニウム箔は、表面積を拡大して高い静電容量を得るために、一般に塩素イオンを含む溶液中でエッチング処理を行っている。その後、陽極箔は誘電体となるバリヤー型酸化皮膜を表面に形成させるため、化成処理が行われる。
一方、陰極箔はエッチング後に誘電体を形成する必要がないため、残留塩素イオンの除去のみ、またはその後耐水和処理を行って、電解コンデンサに使用される。
一方、陰極箔はエッチング後に誘電体を形成する必要がないため、残留塩素イオンの除去のみ、またはその後耐水和処理を行って、電解コンデンサに使用される。
昨今、製品特性改善、特にインピーダンス特性の面から、含水量の大きい電解液が使用されてきており、それに伴い電極箔に対しては、水和反応が起きにくく、電解液中で劣化しにくい電極箔が必然的に求められる。しかしながら、陰極箔は、陽極箔のようにバリヤー型酸化皮膜で覆われていないので電解液中で水和反応が起こりやすく、水和に対する安定性が強く求められている。
水和に対する安定性向上のために、リン酸若しくはリン酸塩の水溶液に浸漬後、乾燥若しくは加熱処理を行う方法、またはリン酸塩水溶液中で低圧化成を行う方法があり、さらには、エッチング箔にチタンを蒸着させる方法も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、前者の方法では、水和に対する安定性向上を十分に図ることができず、また、後者の方法では、静電容量が低下する、製造装置が複雑化する等の問題があった。
水和に対する安定性向上のために、リン酸若しくはリン酸塩の水溶液に浸漬後、乾燥若しくは加熱処理を行う方法、またはリン酸塩水溶液中で低圧化成を行う方法があり、さらには、エッチング箔にチタンを蒸着させる方法も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、前者の方法では、水和に対する安定性向上を十分に図ることができず、また、後者の方法では、静電容量が低下する、製造装置が複雑化する等の問題があった。
永田伊佐也、「電解液陰極アルミニウム電解コンデンサ」、日本蓄電器工業株式会社、平成9年2月24日、第2版第1刷、P338〜344
よって、水和に対する安定性が十分な電解コンデンサ用陰極箔を、簡易に製造できる方法が求められていた。
本発明は、陰極箔をヒドロキシエタンジホスホン酸系キレート剤を含む水溶液に浸漬し、熱処理をすることにより上記の問題点を解決し、陰極箔の水和に対する安定性を向上させるものである。
すなわち、本発明による電解コンデンサ用陰極箔の製造方法は、アルミニウム箔をエッチングしてエッチング箔を得るエッチング工程と、該エッチング箔を洗浄液で洗浄する洗浄工程と、洗浄後の前記エッチング箔に対して水和処理と熱処理とを行う後処理工程とを有する電解コンデンサ用陰極箔の製造方法において、前記水和処理を下記の化学式で表されるヒドロキシエタンジホスホン酸系キレート剤を含む水溶液への浸漬により行うことにより耐水性の良好な電解コンデンサ用陰極箔を提供しようとするものである。
ただし、M、M’は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属を表す。
また、前記ヒドロキシエタンジホスホン酸系キレート剤の濃度が0.3〜12.0g/Lであることを特徴とする、電解コンデンサ用陰極箔の製造方法である。
本発明は、エッチング箔を脱塩素イオン処理した後、ヒドロキシエタンジホスホン酸系キレート剤を含む水溶液に浸漬させ、熱処理を行うことで、キレート剤が陰極箔表面のアルミニウムと反応し、有機質の皮膜を形成し、水和に対する陰極箔の劣化を抑制することができ、静電容量をはじめとする電気特性の安定化を図ることができると考えられる。
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
[実施例1〜7]ヒドロキシエタンジホスホン酸濃度の比較
アルミニウム純度99.9%、厚さ50μmのアルミニウム箔を、7wt%塩酸/0.1wt%硫酸からなる溶液(液温28℃)を用いて、周波数14Hz、電気量20クーロン/cm2で交流エッチング処理を行った。
エッチング処理後、45℃、0.5wt%のリン酸水溶液に浸漬して残留塩素イオンを除去し水洗した後、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液(温度60℃)を各々、濃度0.12、0.30、0.60、3.0、6.0、12.0、18.0g/Lの7種類中で、1分間浸漬を行った後、300℃の熱処理を施した。なお、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液のpHは6.0に調整した。
これらのエッチング箔試料を、エチレングリコール40wt%、水50wt%、アジピン酸アンモニウム10wt%を配合した電解液中にて、105℃、8時間の浸漬を行い、浸漬前と浸漬後の静電容量の変化率を調べ、表1の結果を得た。
アルミニウム純度99.9%、厚さ50μmのアルミニウム箔を、7wt%塩酸/0.1wt%硫酸からなる溶液(液温28℃)を用いて、周波数14Hz、電気量20クーロン/cm2で交流エッチング処理を行った。
エッチング処理後、45℃、0.5wt%のリン酸水溶液に浸漬して残留塩素イオンを除去し水洗した後、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液(温度60℃)を各々、濃度0.12、0.30、0.60、3.0、6.0、12.0、18.0g/Lの7種類中で、1分間浸漬を行った後、300℃の熱処理を施した。なお、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液のpHは6.0に調整した。
これらのエッチング箔試料を、エチレングリコール40wt%、水50wt%、アジピン酸アンモニウム10wt%を配合した電解液中にて、105℃、8時間の浸漬を行い、浸漬前と浸漬後の静電容量の変化率を調べ、表1の結果を得た。
(比較例1)ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液浸漬無し、熱処理有り
実施例と同仕様のアルミニウム箔を実施例1〜7と同様の条件でエッチング処理し、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液中への浸漬は行わず、熱処理のみ行って、エッチング箔試料を作製し、実施例1〜7と同様の条件で電解液中に浸漬し、浸漬前後の静電容量の変化率を調べ、表1の結果を得た。
実施例と同仕様のアルミニウム箔を実施例1〜7と同様の条件でエッチング処理し、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液中への浸漬は行わず、熱処理のみ行って、エッチング箔試料を作製し、実施例1〜7と同様の条件で電解液中に浸漬し、浸漬前後の静電容量の変化率を調べ、表1の結果を得た。
(比較例2)ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液浸漬無し、熱処理無し
実施例と同仕様のアルミニウム箔を実施例1〜7と同様の条件でエッチング処理し、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液中への浸漬、および熱処理を行わずに、エッチング箔試料を作製し、実施例1〜7と同様の条件で電解液中に浸漬し、浸漬前後の静電容量の変化率を調べ、表1の結果を得た。
実施例と同仕様のアルミニウム箔を実施例1〜7と同様の条件でエッチング処理し、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液中への浸漬、および熱処理を行わずに、エッチング箔試料を作製し、実施例1〜7と同様の条件で電解液中に浸漬し、浸漬前後の静電容量の変化率を調べ、表1の結果を得た。
(比較例3)ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液浸漬有り、熱処理無し
実施例と同仕様のアルミニウム箔を実施例1〜7と同様の条件でエッチング処理し、ヒドロキシエタンジホスホン酸濃度6.0g/L水溶液中への浸漬のみ行い、熱処理を行わずに、エッチング箔試料を作製し、実施例1〜7と同様の条件で電解液中に浸漬し、浸漬前後の静電容量の変化率を調べ、表1の結果を得た。
実施例と同仕様のアルミニウム箔を実施例1〜7と同様の条件でエッチング処理し、ヒドロキシエタンジホスホン酸濃度6.0g/L水溶液中への浸漬のみ行い、熱処理を行わずに、エッチング箔試料を作製し、実施例1〜7と同様の条件で電解液中に浸漬し、浸漬前後の静電容量の変化率を調べ、表1の結果を得た。
(比較例4)リン酸水溶液浸漬有り、熱処理有り
比較のために実施例と同仕様のアルミニウム箔を実施例1〜7と同様の条件でエッチング処理し、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液の代わりにリン酸濃度6.0g/L水溶液中への浸漬、および熱処理を行い、エッチング箔試料を作製し、実施例1〜7と同様の条件で電解液中に浸漬し、浸漬前後の静電容量の変化率を調べ、表1の結果を得た。
比較のために実施例と同仕様のアルミニウム箔を実施例1〜7と同様の条件でエッチング処理し、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液の代わりにリン酸濃度6.0g/L水溶液中への浸漬、および熱処理を行い、エッチング箔試料を作製し、実施例1〜7と同様の条件で電解液中に浸漬し、浸漬前後の静電容量の変化率を調べ、表1の結果を得た。
表1から分かるように、ヒドロキシエタンジホスホン酸濃度0.3〜12.0g/Lとし、熱処理有りとした場合に、水和に対する陰極箔の劣化を抑制することができ、静電容量の安定化を図ることができる。
ヒドロキシエタンジホスホン酸濃度0.12g/Lの実施例1では、水和に対する陰極箔の劣化抑制効果が十分ではなく、18.0g/Lとした実施例7では、12.0g/Lの場合と比べて上記効果はほとんど変わらず、コスト面で不利となる。
なお、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液への浸漬のみで、熱処理を行わなかった比較例3では、上記効果がみられず、熱処理が必須であることが分かる。
ヒドロキシエタンジホスホン酸濃度0.12g/Lの実施例1では、水和に対する陰極箔の劣化抑制効果が十分ではなく、18.0g/Lとした実施例7では、12.0g/Lの場合と比べて上記効果はほとんど変わらず、コスト面で不利となる。
なお、ヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液への浸漬のみで、熱処理を行わなかった比較例3では、上記効果がみられず、熱処理が必須であることが分かる。
また、上記実施例ではpHを6に調整したが、4〜7が好ましい。pHが4未満では、有機質の皮膜が形成されず、箔表面が溶解しやすいという問題があり、7を超えると、有機質の皮膜が形成されにくいという問題がある。
そして、上記実施例ではヒドロキシエタンジホスホン酸を水和抑制剤として使用したが、これ以外にヒドロキシエタンジホスホン酸のアンモニウム塩、カリウム塩やナトリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩を用いても、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、エッチング箔のヒドロキシエタンジホスホン酸水溶液への浸漬による水和処理(後処理)を、公知の前処理工程、エッチング工程、洗浄工程と適宜組み合わせて行ってもよい。
Claims (2)
- 前記ヒドロキシエタンジホスホン酸系キレート剤の濃度が0.3〜12.0g/Lであることを特徴とする、請求項1記載の電解コンデンサ用陰極箔の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007332017A JP2009158546A (ja) | 2007-12-25 | 2007-12-25 | 電解コンデンサ用陰極箔の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007332017A JP2009158546A (ja) | 2007-12-25 | 2007-12-25 | 電解コンデンサ用陰極箔の製造方法 |
Publications (1)
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JP2009158546A true JP2009158546A (ja) | 2009-07-16 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2007332017A Pending JP2009158546A (ja) | 2007-12-25 | 2007-12-25 | 電解コンデンサ用陰極箔の製造方法 |
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2007
- 2007-12-25 JP JP2007332017A patent/JP2009158546A/ja active Pending
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