JP2009155850A - プレキャスト床版と梁との接合構造 - Google Patents

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Abstract


【課題】 施工時の作業性を改善しつつ、プレキャスト床版と鉄骨梁とを品質管理が容易な状態で強固に接合する。
【解決手段】本発明に係る接合構造1は、プレキャスト床版3aに埋設されその縁部端面2aから延びる鉄筋6aの露出端部7aを接合具10を介してスタッド部材9aに連結するとともに、プレキャスト床版3bに埋設されその縁部端面2bから延びる鉄筋6bの露出端部7bを接合具10を介してスタッド部材9bに連結してある。スタッド部材9aは、2つの真直部41a,42aが形成された概ねL字状をなすスタッド部材として形成してあるとともに、真直部41aを鉄骨梁5の天端8に溶接で固定し、真直部42aを鉄筋6aの露出端部7aとともに筒体31に挿通できるように構成してある。同様にスタッド部材9bも、真直部41bを鉄骨梁5の天端8に溶接で固定し、真直部42bを鉄筋6bの露出端部7bとともに筒体31に挿通可能に構成してある。
【選択図】 図1

Description

本発明は、主として鉄骨構造物(S造)に採用されるプレキャスト床版と梁との接合構造に関する。
鉄骨構造物(S造)や鉄筋コンクリート構造物(RC造)を施工する場合、コンクリートを現場打ちで施工する方法と、プレキャストコンクリート部材を予め工場製作し、これらを現場に搬入して組み立てる方法とに概ね大別される。
プレキャスト工法は、柱、梁、床版といった主要構造部材を上述したように工場で製作し、これらを現場に搬入し組み立てることにより、施工能率を大幅に改善することができるため、急速施工が要求される場合には、後者のプレキャスト工法が数多く採用されているとともに、最近では、30階を超える高層集合住宅にも数多く採用されるようになってきた。
プレキャスト工法を採用する場合、中実断面としてプレキャスト部材を製作するいわゆるフルプレキャスト工法と、梁であればコの字状に製作しておき現場でその内側に鉄筋を配筋してコンクリートを充填するハーフプレキャスト工法とがあり、実際にはこれらの長所短所を考慮しながら、使い分けされているのが現状であるが、いずれにしろ、現場で組み上げる以上、プレキャスト部材同士の接合は避けられない。
ここで、主要構造部材同士の接合部には、特に地震時において大きな曲げモーメントが発生するため、かかる接合部をいかに施工するかが、プレキャスト工法において耐震性を確保するための最大の課題といっても過言ではなく、従来から数多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、「対面する各PC床板の辺部Bの端面間に打設用空間Sp1 が形成されるように、対のPC床板の端縁よりの部分を鉄骨梁4上に載置し、各PC床板中に間隔をおいて埋め込まれた多数の接合鉄筋12aの接合用部分12a1 を辺部Bの波型の端面から前記空間Sp1 中に突出させ、一方のPC床板10の接合用部分12a1と他方のPC床板の接合用部分12a1 とが接近して略平行になるようにし、略平行された接合用部分12a1を互いに接合し、鉄骨梁の上面に頭部のあるスタッドSd1 を間隔をおいて多数植設しておき、打設空間内にコンクリートを打設して鉄骨梁と各PC床板とを接合する」PC床板の固着方法が開示されている。
また、特許文献2には、「対のフルPC床板10をそれらの辺部間に打設用空間Sp1 ができるように梁2上に載置し、空間Sp1 内において、一方の床板10の鉄筋の接続用部分12b1 と他方の床板10の鉄筋の接続用部分12b1とが接近して平行になるようにし、平行にされた2本の鉄筋の接続用部分に一個の鋼製スリーブSvを嵌め、鋼製スリーブの中央の孔にウェッジWgを圧入して2本の鉄筋を接続し、空間Sp1 内の梁2に頭付きスタッドSdを固着し、空間Sp1 内にコンクリートを打設して、フルPC床板を梁に固着しかつフルPC床板同士を固着する」フルPC床板の固着方法が開示されている。
また、特許文献3には、「PCa床板4と複合構造梁1における鉄骨造部分との接合状態は、図5及び図6に示す通りである。ここで図5の平面図は、図1において例えばBで示される箇所であり、この実施例では、PCa床板4内に埋め込まれた鉄筋11がスタット8間において相互に重なり合うようにしてPCa床板4を複合構造梁1の鉄骨造部分上に載置し、ワイヤメッシュ12を被せた状態で仮想線に示す位置までコンクリートを打設してなる構造としているが、この部分においても上記の如く、十字形部材7や垂直状のU型アンカー筋9を用いた接合を行っても良い」(段落番号24〜25)と記載されている。
また、特許文献4には、「プレキャスト床板端部の凸部11a及び凹部11bから構成され且つ隣接するプレキャスト床板端部のそれらと噛み合うように鉄骨梁15上に並べて設置されたコッター部11に少なくとも一つの穴12が形成され、この穴12にスタッドボルト16が配置されて鉄骨梁に溶接され、隣接するプレキャスト床板10との間隙部17及び穴12内に無収縮モルタルが打設されている。プレキャスト床板内部には穴の周囲に配置されたスパイラル筋13と穴12の周囲をめぐるように配置されたU型鉄筋部14aを有するスラブ筋14とが少なくとも配筋され、このU型鉄筋部14aに補強筋13が配筋されている」と記載されている。
また、特許文献5には、「2枚のプレキャストコンクリート造の床板3A、3Bの端部を鉄骨梁1上に載せて互いに端面4A、4Bを対向させると共に、端面4A、4B間の空間7に各床板3A、3Bの端面4A、4Bから鉄筋を張り出させて、空間7にコンクリート8を打設することにより床板3A、3Bを接合する。その際、鉄骨梁1の上面にスタッドピン10を列設し、鉄筋として、水平面内でU字状に湾曲し先端湾曲部15aを前記空間7内に張り出した水平なU形鉄筋15を設け、向かい合う床板3A、3Bからそれぞれ張り出した水平なU形鉄筋15の先端湾曲部15aを、互いに一つおきのスタッドピン10に嵌装した上で、空間7にコンクリート8を打設する」と記載されている。
また、特許文献6には、「梁の上面にプレキャストコンクリート床板2、3の接合端部が対向配置され、これらの接合端部から適宜間隔をもって水平状に突設されたループ状の接続筋4が対向する接続筋5間に挿入されて重ね配筋され、これらの接続筋4、5内に梁上面から突出した棒状筋6が挿入されるとともに、接続筋4、5の上面には補強筋7が直交配筋され、この接合端部間8に現場打ちコンクリート9が打設された」と記載されている。
特開2000−17764号公報 特開2002−161603号公報 特開平7−207795号公報 特開平9−32171号公報 特開平9−158377公報 特開平9−165860号公報
しかしながら、これらは、対向する二枚の床版の間隙にコンクリートを充填することによって、該各床版からそれぞれ露出している二組の鉄筋と鉄骨梁の天端に突設されたスタッドボルトとをコンクリートを介して接合しようとするものであって、本質的には接合部における強度をスタッドに対するコンクリートの支圧力、あるいはコンクリートと鉄筋との付着力に期待する構造ゆえ、どうしてもスタッドボルトや鉄筋が複雑に交錯し、作業性が低下するという問題や、現場打ちコンクリートを介した接合になるため、接合強度に関する品質の確保には多くの労力を必要とするという問題を生じていた。
ちなみに、特許文献4記載の発明は他の特許文献記載の発明とは異なり、PC床版に予め形成された穴の中心にスタッドボルトが位置するように該PC床版を配置し、しかる後、穴に無収縮モルタルを充填する工法を採用しているものの、PC床版と鉄骨梁との間にモルタルが介在することには違いはなく、接合強度面での品質管理の難しさは何ら改善されていない。
加えて、品質管理の難しさは、安定した接合強度を確保するという性能面にも少なからず影響を及ぼすこととなる。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、プレキャスト床版の縁部を鉄骨梁の天端に載せて該プレキャスト床版を接合する際、施工時の作業性を改善しつつ、プレキャスト床版と鉄骨梁とを品質管理が容易な状態で強固に接合することが可能なプレキャスト床版と梁との接合構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るプレキャスト床版と梁との接合構造は請求項1に記載したように、プレキャスト床版に埋設されその縁部端面から延びる鉄筋の露出端部と、前記プレキャスト床版の縁部が載せられる鉄骨梁の天端に立設されたスタッド部材と、前記鉄筋の露出端部及び前記スタッド部材を連結する連結手段とからなり、該連結手段を、前記鉄筋の露出端部及び前記スタッド部材が所定長だけ重なった状態で挿通される断面形状が長円状の筒体と、該筒体を構成する壁部のうち、対向する一対の平板状壁部にそれぞれ形成された楔挿通孔に挿通され前記鉄筋の露出端部及び前記スタッド部材との間に圧入される楔部材とで構成したものである。
また、本発明に係るプレキャスト床版と梁との接合構造は、前記スタッド部材を、互いに直交する2つの真直部が形成されたほぼL字状のスタッド部材として形成するとともに、該真直部のうち、一方の真直部を前記鉄骨梁に立設できるように、かつ他方の真直部を前記鉄筋の露出端部とともに前記筒体に挿通できるように構成したものである。
また、本発明に係るプレキャスト床版と梁との接合構造は請求項3に記載したように、プレキャスト床版に埋設されその縁部端面から延びる鉄筋の露出端部と、前記プレキャスト床版の縁部が載せられる鉄骨梁の天端に立設されたスタッド部材と、互いに直交する2つの真直部が形成されたほぼL字状の添え部材と、該添え部材を構成する2つの真直部のうち、一方の真直部及び前記鉄筋の露出端部を連結する第1の連結手段と、他方の真直部及び前記スタッド部材を連結する第2の連結手段とからなり、前記第1の連結手段を、前記一方の真直部及び前記鉄筋の露出端部が所定長だけ重なった状態で挿通される断面形状が長円状の筒体と、該筒体を構成する壁部のうち、対向する一対の平板状壁部にそれぞれ形成された楔挿通孔に挿通され前記一方の真直部及び前記鉄筋の露出端部との間に圧入される楔部材とで構成するとともに、前記第2の連結手段を、前記他方の真直部及び前記スタッド部材が所定長だけ重なった状態で挿通される断面形状が長円状の筒体と、該筒体を構成する壁部のうち、対向する一対の平板状壁部にそれぞれ形成された楔挿通孔に挿通され前記他方の真直部及び前記スタッド部材との間に圧入される楔部材とで構成したものである。
また、本発明に係るプレキャスト床版と梁との接合構造は、前記プレキャスト床版を、縁部端面が互いに対向するように前記鉄骨梁の天端に載せられた一対のプレキャスト床版で構成するとともに、該一対のプレキャスト床版のうち、一方のプレキャスト床版に埋設された鉄筋の露出端部に連結されるスタッド部材と、他方のプレキャスト床版に埋設された鉄筋の露出端部に連結されるスタッド部材とを、前記鉄骨梁の材軸に沿って交互に立設したものである。
第1の発明に係るプレキャスト床版と梁との接合構造においては、筒体及び楔部材で連結手段を構成するとともに、プレキャスト床版の縁部端面から延びる鉄筋の露出端部を、上述した連結手段を介して鉄骨梁の天端に立設されたスタッド部材に連結する。
また、第2の発明に係るプレキャスト床版と梁との接合構造においては、筒体及び楔部材で第1の連結手段及び第2の連結手段を構成するとともに、プレキャスト床版の縁部端面から延びる鉄筋の露出端部を、上述した第1の連結手段、第2の連結手段及び添え部材を介して鉄骨梁の天端に立設されたスタッド部材に連結する。
このようにすると、プレキャスト床版に埋設された鉄筋の露出端部は、鉄骨梁に立設されたスタッド部材に強固に連結されることとなり、かくしてプレキャスト床版及び鉄骨梁は、コンクリートやモルタルの付着強度に依存していた従来の接合構造に比べて、より安定した接合強度を確保することが可能となるとともに、鉄筋同士の重ね継手が不要になるため、配筋やコンクリート打ちを行う際の作業性が格段に向上する。
第1の発明におけるスタッド部材は、上述した連結手段を介してプレキャスト床版から延びる鉄筋の露出端部に連結できる限り、その形状や仕様は任意であり、特に、プレキャスト床版から延びる鉄筋の露出端部の折曲げ形状に合わせてスタッド部材を構成すればよい。
例えば、鉄筋の露出端部がプレキャスト床版から水平に延びている場合には、スタッド部材を、互いに直交する2つの真直部が形成されたほぼL字状のスタッド部材として形成し、該真直部のうち、一方の真直部を前記鉄骨梁に立設できるように、かつ他方の真直部を前記鉄筋の露出端部とともに前記筒体に挿通できるように構成すればよい。これとは逆に、プレキャスト床版を水平に載置したときに鉄筋の露出端部が下方を向くように該露出端部をL字状に折曲げ加工してある場合には、スタッド部材を直棒状に形成すれば足りる。
一方、プレキャスト床版を水平に載置したときに鉄筋の露出端部が斜め下方、例えば45゜方向を向くように折曲げ加工してある場合には、スタッド部材を、135゜をなす2つの真直部が形成されたほぼ折曲げ状のスタッド部材として形成するとともに、該真直部のうち、一方の真直部を前記鉄骨梁に立設できるように、かつ他方の真直部を前記鉄筋の露出端部とともに前記筒体に挿通できるように構成すればよい。
上述した各発明におけるプレキャスト床版は、例えば構造物の外壁に沿って架設された鉄骨梁に接合する場合、単体で該鉄骨梁に接合されることとなるが、構造物中央などの一般箇所では、一対のプレキャスト床版をそれらの縁部端面が互いに対向するように鉄骨梁の天端に載せて組み立てることが多い。
かかる場合においても、上述した各発明を適用できることは言うまでもなく、その場合の構成としては例えば、該一対のプレキャスト床版のうち、一方のプレキャスト床版に埋設された鉄筋の露出端部に連結されるスタッド部材と、他方のプレキャスト床版に埋設された鉄筋の露出端部に連結されるスタッド部材とを、鉄骨梁の材軸に沿って交互に立設する構成が考えられる。また、かかる場合におけるスタッド部材の平面配置を、例えば千鳥配置とすることができる。
以下、本発明に係るプレキャスト床版と梁との接合構造の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るプレキャスト床版と梁との接合構造を示した斜視図、図2は同じく平面図及び側面図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係るプレキャスト床版と梁との接合構造1は、プレキャスト床版3a,3bの縁部端面2a,2bが対向するように該プレキャスト床版の縁部4a,4bを鉄骨梁5の天端8に載置するとともに該天端にスタッド部材9a,9bを立設し、プレキャスト床版3aに埋設されその縁部端面2aから延びる鉄筋6aの露出端部7aを連結手段である接合具10を介してスタッド部材9aに連結するとともに、プレキャスト床版3bに埋設されその縁部端面2bから延びる鉄筋6bの露出端部7bを接合具10を介してスタッド部材9bに連結してある。
接合具10は図3に示すように、断面形状が長円状の筒体31と、該筒体を構成する壁部のうち、対向する一対の平板状壁部32,32にそれぞれ形成された楔挿通孔33,33に挿通される楔部材34とで構成してある。
ここで、筒体31は、鉄筋6aの露出端部7a及びスタッド部材9aが所定長だけ重なった状態で挿通されるように構成してあるとともに、鉄筋6bの露出端部7b及びスタッド部材9bが所定長だけ重なった状態で挿通されるように構成してある。また、楔部材34は、鉄筋6aの露出端部7a及びスタッド部材9aとの間に圧入されるように構成してあるとともに、鉄筋6bの露出端部7b及びスタッド部材9bとの間に圧入されるように構成してある。
スタッド部材9aは図4(a),(b)に示すように、互いに直交する2つの真直部41a,42aが形成された概ねL字状をなすスタッド部材として形成してあるとともに、真直部41aを鉄骨梁5の天端8に溶接で固定し、真直部42aを鉄筋6aの露出端部7aとともに筒体31に挿通できるように構成してある。
同様に、スタッド部材9bは図4(c),(d)に示すように、互いに直交する2つの真直部41b,42bが形成された概ねL字状をなすスタッド部材として形成してあるとともに、真直部41bを鉄骨梁5の天端8に溶接で固定し、真直部42bを鉄筋6bの露出端部7bとともに筒体31に挿通できるように構成してある。
これらのスタッド部材9a,9bは、鉄筋7a,7bと同径の異形鉄筋で構成してあるとともに、図2(a)でよくわかるように鉄骨梁5の材軸方向に沿って千鳥配置してある。すなわち、スタッド部材9a,9bは、プレキャスト床版3aに埋設された鉄筋6aの露出端部7aに連結されるスタッド部材9aと、プレキャスト床版3bに埋設された鉄筋6bの露出端部7bに連結されるスタッド部材9bとを、鉄骨梁5の材軸に沿って交互に立設してある。
なお、スタッド部材9a,9bは、現場溶接で鉄骨梁5に固定するようにしてもよいし、予め工場で溶接しておき、鉄骨梁5に固定された状態で現場に搬入するようにしてもかまわない。
本実施形態に係るプレキャスト床版と梁との接合構造1を施工するには、プレキャスト床版3aを鉄骨梁5の天端8に載置するとともに、該天端に溶接固定されたスタッド部材9aの真直部42aを、プレキャスト床版3aから延びる鉄筋6aの露出端部7aとともに筒体31に挿通する。
なお、接合具10を取り付ける手順については、現場の状況に応じて適宜選択決定すればよく、例えば、スタッド部材9aを鉄骨梁5に先付けすると後工程での接合具10の取付け作業に困難が予想される場合には、工場溶接ではなく現場溶接とするのがよい。この場合には、スタッド部材9aの真直部42aと鉄筋6aの露出端部7aとを予め筒体31に挿通しておき、プレキャスト床版3aの載置及び位置決めを行った後、スタッド部材9aの真直部41aを鉄骨梁5の天端8に溶接すればよい。
プレキャスト床版3bについても同様であり、これを鉄骨梁5の天端8に載置するとともに、該天端に溶接固定されたスタッド部材9bの真直部42bを、プレキャスト床版3bから延びる鉄筋6bの露出端部7bとともに筒体31に挿通する。スタッド部材9bを鉄骨梁5に先付けすると後工程での接合具10の取付け作業に困難が予想される場合には、上述したと同様に現場溶接とすればよい。
プレキャスト床版3a,3bの設置及び筒体31への挿通作業が終了したならば、楔部材34を楔挿通孔33,33に打ち込んで、スタッド部材9aの真直部42aとプレキャスト床版3aから延びる鉄筋6aの露出端部7aとを連結するとともに、スタッド部材9bの真直部42bとプレキャスト床版3bから延びる鉄筋6bの露出端部7bとを連結する。楔部材34を楔挿通孔33,33に通して圧入するにあたっては、従来公知の楔打込み機を適宜選択して用いればよい。
次に、プレキャスト床版3a,3bの縁部端面2a,2bに挟まれた空間に必要に応じて補強筋を配筋した後、コンクリートを充填して接合作業を完了する。
以上説明したように、本実施形態に係るプレキャスト床版と梁との接合構造1によれば、筒体31及び楔部材34で接合具10を構成し、プレキャスト床版3a,3bの縁部端面2a,2bから延びる鉄筋6a,6bの露出端部7a,7bを接合具10を介して鉄骨梁5の天端に立設されたスタッド部材9a,9bに連結するようにしたので、プレキャスト床版3a,3bに埋設された鉄筋6a,6bの露出端部7a,7bを、鉄骨梁5に立設されたスタッド部材9a,9bに強固に連結することが可能となる。
そのため、プレキャスト床版3a、プレキャスト床版3b及び鉄骨梁5は、接合具10及びスタッド部材9a,9bを介して一体化されることとなり、かくしてコンクリートやモルタルの付着強度に依存していた従来の接合構造に比べて、より安定した接合強度を確保することが可能となるとともに、鉄筋同士の重ね継手が不要になるため、配筋やコンクリート打設を行う際の作業性が格段に向上する。
本実施形態では、一対のプレキャスト床版3a,3bをそれらの縁部端面が対向するように鉄骨梁5の上に載置する場合について説明したが、構造物の外壁に沿った鉄骨梁にプレキャスト床版を載置する場合についても、本発明を適用できることは言うまでもない。
かかる変形例においては、上述した実施形態において、プレキャスト床版3b、スタッド部材9b及びそれらに関連した部材が省略されるだけでその他の構成は同様であるので、ここではその説明を省略する。
また、本実施形態では、スタッド部材を、互いに直交する2つの真直部41a,42aが形成された概ねL字状をなすスタッド部材9a,9bとして構成したが、本発明に係るスタッド部材は、このような形態に限定されるものではない。
図5は、変形例に係るスタッド部材を示したものであって、同図(a)に係るスタッド部材43は、プレキャスト床版3aから延びる鉄筋6aの露出端部7aが斜め下方を向くように折曲げ加工してある場合の変形例である。かかる場合のスタッド部材43は、90゜よりも大きな鈍角をなす2つの真直部が形成された折曲げ状のスタッド部材として形成するとともに、該真直部のうち、一方の真直部を鉄骨梁5に立設し、他方の真直部を鉄筋6aの露出端部7aとともに接合具10の筒体31に挿通するようにすればよい。また、同図(b)に係るスタッド部材44は、プレキャスト床版3aから延びる鉄筋6aの露出端部7aが下方を向くようにほぼ直角に折曲げ加工してある場合の変形例である。かかる場合のスタッド部材44は直棒状に形成して鉄骨梁5の天端に溶接固定し、鉄筋6aの露出端部7aとともに接合具10の筒体31に挿通するようにすればよい。
また、本実施形態では、本発明のスタッド部材を異形鉄筋で構成したスタッド部材9a,9bとしたが、これに代えて、円形断面からなる棒鋼で本発明のスタッド部材を構成してもよい。
また、本実施形態又は上記変形例では、スタッド部材9a,9bやスタッド部材43,44を溶接によって鉄骨梁5の天端8に固定するようにしたが、鉄骨梁5に強固に固定できるのであれば、溶接以外の公知の固定方法を適宜採用することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図6は、本実施形態に係るプレキャスト床版と梁との接合構造を示した斜視図、図7は同じく平面図及び側面図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係るプレキャスト床版と梁との接合構造51は、プレキャスト床版3a,3bの縁部端面2a,2bが対向するように該プレキャスト床版の縁部4a,4bを鉄骨梁5の天端8に載置するとともに、該天端に立設されたスタッド部材58を、プレキャスト床版3a,3bに埋設されそれらの縁部端面2a,2bから延びる鉄筋6a,6bの露出端部7a,7bに添え部材59及び2つの接合具10を介してそれぞれ連結してある。
すなわち、添え部材59は図8に示すように、互いに直交する2つの真直部61,62が形成されたほぼL字状の部材として構成してあり、その一方の真直部61を第2の連結手段である接合具10を介して鉄骨梁5の天端8に溶接固定されたスタッド部材58に連結してあるとともに、他方の真直部62を第1の連結手段である接合具10を介してプレキャスト床版3aに埋設されその縁部端面2aから延びる鉄筋6aの露出端部7aに連結してある。
プレキャスト床版3bについても添え部材59の配置方向が逆向きになる以外はプレキャスト床版3aのときと同様であり、添え部材59は、その真直部61を接合具10を介してスタッド部材58に連結してあるとともに、その真直部62を接合具10を介してプレキャスト床版3bに埋設されその縁部端面2bから延びる鉄筋6bの露出端部7bに連結してある。
添え部材59は、その真直部61がスタッド部材58とともに筒体31に挿通できるように構成してあるとともに、その真直部62が鉄筋6aの露出端部7aとともに筒体31に挿通できるように構成してある。
添え部材59及びスタッド部材58は、鉄筋7a,7bと同径の異形鉄筋で構成してあるとともに、スタッド部材58は図7(a)でよくわかるように鉄骨梁5の材軸方向に沿って千鳥配置してある。なお、スタッド部材58は、現場溶接で鉄骨梁5に固定するようにしてもよいし、予め工場で溶接しておき、鉄骨梁5に固定された状態で現場に搬入するようにしてもかまわない。
本実施形態に係るプレキャスト床版と梁との接合構造51を施工するには、プレキャスト床版3aを鉄骨梁5の天端8に載置するとともに、添え部材59の真直部61をスタッド部材58とともに接合具10の筒体31に挿通し、真直部62を鉄筋6aの露出端部7aとともに接合具10の筒体31に挿通する。
なお、かかる挿通作業を行う手順にあたっては、現場の状況に応じて適宜選択決定すればよく、例えば、スタッド部材58を鉄骨梁5に先付けすると後工程での接合具10の取付け作業に困難が予想される場合には、工場溶接ではなく現場溶接とするのがよい。この場合には、添え部材59の真直部61をスタッド部材58とともに予め筒体31に挿通しておくとともに、真直部62を鉄筋6aの露出端部7aとともに予め筒体31に挿通しておき、プレキャスト床版3aの載置及び位置決めを行った後、スタッド部材58を鉄骨梁5の天端8に溶接すればよい。
プレキャスト床版3bについても同様の作業を行った後、楔部材34を楔挿通孔33,33に打ち込んで、添え部材59の真直部61とスタッド部材58とを連結するとともに、真直部62と鉄筋6aの露出端部7aとを連結する。
次に、プレキャスト床版3a,3bの縁部端面2a,2bに挟まれた空間に必要に応じて補強筋を配筋した後、コンクリートを充填して接合作業を完了する。
以上説明したように、本実施形態に係るプレキャスト床版と梁との接合構造51によれば、筒体31及び楔部材34で接合具10を構成し、鉄骨梁5の天端8に立設されたスタッド部材58を、プレキャスト床版3a,3bに埋設されそれらの縁部端面2a,2bから延びる鉄筋6a,6bの露出端部7a,7bに添え部材59及び2つの接合具10を介してそれぞれ連結するようにしたので、プレキャスト床版3a,3bに埋設された鉄筋6a,6bの露出端部7a,7bを、鉄骨梁5に立設されたスタッド部材58に強固に連結することが可能となる。
そのため、プレキャスト床版3a、プレキャスト床版3b及び鉄骨梁5は、2つの接合具10及び添え部材59を介して一体化されることとなり、かくして、コンクリートやモルタルの付着強度に依存していた従来の接合構造に比べて、より安定した接合強度を確保することが可能となるとともに、鉄筋同士の重ね継手が不要になるため、配筋やコンクリート打設を行う際の作業性が格段に向上する。
本実施形態では、本発明に係る添え部材を異形鉄筋で構成したが、これに代えて、円形断面からなる棒鋼で構成してもよい。
また、本実施形態では、一対のプレキャスト床版3a,3bをそれらの縁部端面が対向するように鉄骨梁5の上に載置する場合について説明したが、構造物の外壁に沿った鉄骨梁にプレキャスト床版を載置する場合についても、本発明を適用できることは言うまでもない。
かかる変形例においては、上述した実施形態において、プレキャスト床版3b、スタッド部材9b及びそれらに関連した部材が省略されるだけでその他の構成は同様であるので、ここではその説明を省略する。
第1実施形態に係るプレキャスト床版と梁との接合構造1を示した斜視図。 同じくプレキャスト床版と梁との接合構造1を示した図であり、(a)は平面図、(b)はA−A線方向の矢視図。 接合具10を示した図であり、(a)は鉄筋6aの露出端部7aとスタッド部材9aとを接合した様子を示した図、(b)は楔部材34を打ち込む様子を示した図。 鉄骨梁5へのスタッド部材9a,9bの取付け状況及び鉄筋との連結状況を示した詳細図であり、(a)及び(c)は側面図、(b)及び(d)は、それぞれB−B線方向、C−C線方向の矢視図。 変形例に係るスタッド部材の図。 第2実施形態に係るプレキャスト床版と梁との接合構造51を示した斜視図。 同じくプレキャスト床版と梁との接合構造51を示した図であり、(a)は平面図、(b)はD−D線方向の矢視図。 添え部材59とスタッド部材58及び鉄筋との連結状況を示した分解斜視図。
符号の説明
1,51 プレキャスト床版と梁との接合構造
2a,2b 縁部端面
3a,3b プレキャスト床版
4a,4b プレキャスト床版の縁部
5 鉄骨梁
6a,6b 鉄筋
7a,7b 露出端部
8 天端
9a,9b スタッド部材
10 接合具
31 筒体
33,33 楔挿通孔
34 楔部材
41a,41b 真直部
42a,42b 真直部
43,44 スタッド部材
58 スタッド部材
59 添え部材
61,62 真直部

Claims (4)

  1. プレキャスト床版に埋設されその縁部端面から延びる鉄筋の露出端部と、前記プレキャスト床版の縁部が載せられる鉄骨梁の天端に立設されたスタッド部材と、前記鉄筋の露出端部及び前記スタッド部材を連結する連結手段とからなり、該連結手段を、前記鉄筋の露出端部及び前記スタッド部材が所定長だけ重なった状態で挿通される断面形状が長円状の筒体と、該筒体を構成する壁部のうち、対向する一対の平板状壁部にそれぞれ形成された楔挿通孔に挿通され前記鉄筋の露出端部及び前記スタッド部材との間に圧入される楔部材とで構成したことを特徴とするプレキャスト床版と梁との接合構造。
  2. 前記スタッド部材を、互いに直交する2つの真直部が形成されたほぼL字状のスタッド部材として形成するとともに、該真直部のうち、一方の真直部を前記鉄骨梁に立設できるように、かつ他方の真直部を前記鉄筋の露出端部とともに前記筒体に挿通できるように構成した請求項1記載のプレキャスト床版と梁との接合構造。
  3. プレキャスト床版に埋設されその縁部端面から延びる鉄筋の露出端部と、前記プレキャスト床版の縁部が載せられる鉄骨梁の天端に立設されたスタッド部材と、互いに直交する2つの真直部が形成されたほぼL字状の添え部材と、該添え部材を構成する2つの真直部のうち、一方の真直部及び前記鉄筋の露出端部を連結する第1の連結手段と、他方の真直部及び前記スタッド部材を連結する第2の連結手段とからなり、前記第1の連結手段を、前記一方の真直部及び前記鉄筋の露出端部が所定長だけ重なった状態で挿通される断面形状が長円状の筒体と、該筒体を構成する壁部のうち、対向する一対の平板状壁部にそれぞれ形成された楔挿通孔に挿通され前記一方の真直部及び前記鉄筋の露出端部との間に圧入される楔部材とで構成するとともに、前記第2の連結手段を、前記他方の真直部及び前記スタッド部材が所定長だけ重なった状態で挿通される断面形状が長円状の筒体と、該筒体を構成する壁部のうち、対向する一対の平板状壁部にそれぞれ形成された楔挿通孔に挿通され前記他方の真直部及び前記スタッド部材との間に圧入される楔部材とで構成したことを特徴とするプレキャスト床版と梁との接合構造。
  4. 前記プレキャスト床版を、縁部端面が互いに対向するように前記鉄骨梁の天端に載せられた一対のプレキャスト床版で構成するとともに、該一対のプレキャスト床版のうち、一方のプレキャスト床版に埋設された鉄筋の露出端部に連結されるスタッド部材と、他方のプレキャスト床版に埋設された鉄筋の露出端部に連結されるスタッド部材とを、前記鉄骨梁の材軸に沿って交互に立設した請求項1乃至請求項3のいずれか一記載のプレキャスト床版と梁との接合構造。
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