JP2009147878A - 可変フィルタ - Google Patents

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淳一 早坂
Toru Miura
融 三浦
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一美 田中
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【課題】 表面弾性波を用いたフィルタにおいて、簡単な構造で周波数特性を任意に制御できる可変フィルタを提供すること。
【解決手段】 圧電材料からなる基板1の一端を固定した片持ち梁構造体と、基板1に形成された表面弾性波を励振するための周期的に配置された電極指からなる櫛歯電極2と、基板1を変形させるための機構とを具備し、櫛歯電極2に隣接して表面弾性波の反射器3を設置して表面弾性波共振子を構成している。片持ち梁構造体を支持する基台4を有し、基板1の裏面に形成された基板電極5と空隙7を介して対向する基台4上に形成された基台電極6とからなるキャパシタ構造を具備し、基板電極5と基台電極6間に制御電圧を印加することにより静電力によって基板1の変形を生じさせ、電極指間の周期が変化することまたは表面弾性波の音速が変化することにより共振周波数が変化する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、表面弾性波を用いたフィルタに関し、特にGHz帯の携帯電話機器等の無線通信回路などに好適な通過周波数特性を調整可能な可変フィルタに関する。
表面弾性波を用いたフィルタは無線通信や光通信、放送など様々な分野で使用されており、特にGHz帯の携帯電話機器等の無線通信回路などでは小型、軽量化のために不可欠な部品となっている。通常、その周波数特性は予め設定されている通過特性を有するように設計、製造され、固定された周波数特性により使用される場合が多いが、使用環境などに応じて周波数特性を調整できた方がシステムへ適用する上での柔軟性が得られる。また、製造条件による制御が難しいような高精度のフィルタの場合にも製造による周波数特性のばらつきを補償するために製造後に微調整できる方が望ましい。しかし、一般的に表面弾性波を用いたフィルタの周波数特性は電極構造や基板材料などで決定されるので部品として完成後の動作状態においては調整ができない。
このような動作状態においてフィルタの周波数特性の調整が必要となる場合に対応できるように構成した表面弾性波デバイスが特許文献1に記載されている。この可変フィルタは、基板と、圧電性を有する半導体材料からなる伝搬層と、当該伝搬層表面に局所的に形成された一組の櫛形電極と、前記伝搬層表面に局所的に形成されたゲート電極から構成されており、前記ゲート電極が、櫛形電極から放射され伝搬層を伝搬する表面弾性波の伝搬領域の外部に形成された表面弾性波デバイスである。ゲート電極に正あるいは負のバイアス電圧を印加することで、櫛形電極直下の伝搬層における空乏層厚を調整し、残留キャリア(電子)濃度を制御する。残留キャリア濃度が減少すると、表面弾性波の変換効率が増加し、一方、残留キャリア濃度が増加すると、変換効率は減少する。この効果を利用すれば、バイアス電圧を変化させることによって、トランスバーサルフィルタとしての伝搬特性を変化させることができ、可変フィルタを実現することができる。
また、特許文献2には複数のマイクロエレクトロメカニカルRFスイッチと複数の櫛形電極とを有する弾性表面波素子から構成された周波数可変フィルタが記載されている。上記RFスイッチをオン/オフすることにより弾性表面波共振器を構成する櫛形電極を選択して周波数特性を変化させるものである。
また、表面弾性波フィルタに使用する圧電基板とシリコン基板を直接接合して複合圧電基板を実現する方法が特許文献3に記載されており、表面弾性波フィルタに新たな機能を付加できる手段として期待される。
特開2006−121372号公報 特開2004−72549号公報 特開2006−303940号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている従来の技術では、原理的に、伝搬効率を制御することは可能であるが、共振、反共振周波数などの周波数特性自体を任意に制御することは不可能である。また、特許文献2に開示されている方法では周波数特性を選択し制御することが可能であるが、連続的な調整が難しく、多数のRFスイッチ素子と多数の櫛形電極が必要であり、構造が複雑となり、表面弾性波フィルタの利点である小型、軽量化という特長も失われてしまう。
本発明は、上記の問題点を解決し、表面弾性波を用いたフィルタにおいて、簡単な構造で周波数特性を任意に制御できる可変フィルタを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明による可変フィルタは、圧電材料からなる基板の一端または両端を固定した片持ち梁構造体または両持ち梁構造体と、前記基板に形成された表面弾性波を励振するための周期的に配置された電極指からなる櫛歯電極と、前記基板を変形させるための機構とを具備し、前記変形または前記変形によって前記基板に歪が加わることにより前記電極指間の周期と前記表面弾性波の音速の少なくとも一方が変化することを特徴とする。
ここで、前記櫛歯電極に隣接して表面弾性波の反射器を設置して表面弾性波共振子を構成し、前記変形によって該表面弾性波共振子の共振周波数が変化するように構成してもよい。
また、前記櫛歯電極は互いに対向した2つの櫛歯電極からなり、該2つの櫛歯電極間を表面弾性波を伝搬させ、前記変形によって該伝搬する表面弾性波の周波数または伝搬時間の少なくとも一方が変化するように構成してもよい。
また、前記表面弾性波共振子は共振周波数が互いに異なる複数個の表面弾性波共振子から構成されてもよい。
具体的には、前記片持ち梁構造体または両持ち梁構造体を支持する基台を有し、前記基板の一面に形成された基板電極と該基板電極と空隙を介して対向する前記基台上に形成された基台電極とからなるキャパシタ構造を具備し、前記基板電極と前記基台電極間に制御電圧を印加することにより静電力によって前記変形を生じさせてもよい。
また、前記片持ち梁構造体または両持ち梁構造体を支持する基台を有し、前記基板の両面に形成された基板電極と該両面の基板電極とそれぞれ空隙を介して対向する前記基台上に形成された2つの基台電極とからなる2つのキャパシタ構造を具備し、前記基板電極と前記基台電極間に制御電圧を印加することにより静電力によって前記変形を生じさせてもよい。
また、前記基台として、前記基板に一体として接合されたシリコン基板を用いてもよい。
本発明では片持ち梁構造体または両持ち梁構造体を構成する基板に櫛歯電極を形成し、その基板を変形させることによって櫛歯電極により励振される表面弾性波の周波数またはその音速を変化させ、フィルタの周波数特性を変化させている。また、上記変形を生じさせる手段の具体例として基板上の基板電極と空隙を介して配置された基台上の基台電極間への制御電圧の印加による静電気力を用いることができる。この制御電圧の大きさによって変形量を制御し、フィルタの周波数特性を制御するものである。
以上のように、本発明により、表面弾性波を用いたフィルタにおいて、簡単な構造で周波数特性を任意に制御できる可変フィルタが得られる。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明による可変フィルタの第一の実施の形態である表面弾性波共振器可変フィルタを示す斜視図である。図1において、圧電材料からなる基板1の一端を固定した片持ち梁構造体と、基板1に形成された表面弾性波を励振するための周期的に配置された電極指からなる櫛歯電極2と、基板1を変形させるための機構とを具備している。本実施の形態では櫛歯電極2に隣接して表面弾性波の反射器3を設置して表面弾性波共振子を構成している。また、片持ち梁構造体を支持する基台4を有し、基板1の裏面に形成された基板電極5と基板電極5と空隙7を介して対向する基台4上に形成された基台電極6とからなるキャパシタ構造を具備し、このキャパシタ構造の基板電極5と基台電極6間に制御電圧を印加することにより静電力によって基板1の変形を生じさせる構成となっている。
本実施の形態の具体的構造の一例として、下記の構造の表面弾性波共振器可変フィルタを試作し評価した。基台4の材料としては面方位(100)、厚さ400μmのシリコン単結晶基板を用い、基板1としては厚さ250μmの38.7°Yカットタンタル酸リチウム(LT)結晶基板を用いた。櫛歯電極2および反射器3としてはアルミニウムをスパッタリング法により70nm程度の厚さに成膜し、フォトリソグラフィ工程により電極指間隔0.35μmのパターンを作成して、中心周波数帯2.4GHzでの共振周波数を得た。基板1の下面の先端部分および基台4の上面の先端部分に同様なアルミニウムのスパッタリングとフォトリソグラフィ工程によりそれぞれ基板電極5および基台電極6を形成した。
基台4のシリコン基板は基台電極6の形成前に公知のMEMS加工技術によって基板1との空隙7を形成するための加工を行い、基台電極6の形成後に基板1との直接接合により基板1の一端を固定して片持ち梁構造を形成した。ここで、上記直接接合の方法としては特許文献3に記載されているような圧電基板とシリコン基板間に電圧を印加しながら熱処理を行う方法を用いることにより強固な接合が得られる。空隙7の間隔はここでは1μm程度としたが、0.3μm〜数十μm程度とすることができる。
図2は本実施の形態の表面弾性波共振器可変フィルタの特性を示す図であり、櫛歯電極2の入出力端子8の反射損失S11の周波数特性を示す。共振周波数において反射が減少する特性となる。基板電極5と基台電極6間に制御電圧を印加しない場合は実線の特性であり、制御電圧を印加したときには静電引力または斥力によって基板1が変形し、それによって櫛歯電極2の電極指間の周期が変化することまたは表面弾性波の音速が変化することにより共振周波数が変化し、破線に示す特性となる。
上記試作例では1V程度の制御電圧の印加により共振周波数の変化Δfは数百kHz程度が確認された。
図3は本発明による可変フィルタの第二の実施の形態である表面弾性波透過型可変フィルタを示す斜視図である。図3において、圧電材料からなる基板11の両端を固定した両持ち梁構造体と、基板11に形成された表面弾性波を励振し受信するための互いに対向した2つの櫛歯電極12および13と、基板11を変形させるための機構とを具備している。本実施の形態では2つの櫛歯電極間を表面弾性波を伝搬させる構成である。また、両持ち梁構造体を支持する基台14を有し、基板11の裏面に形成された基板電極15と基板電極15と空隙17を介して対向する基台14上に形成された基台電極16とからなるキャパシタ構造を具備し、このキャパシタ構造の基板電極15と基台電極16間に制御電圧を印加することにより静電力によって基板11の変形を生じさせる構成となっている。
本実施の形態の具体的構造の一例としては、第一の実施の形態と同様に、基台14の材料としてはシリコン単結晶基板を、基板11としてはタンタル酸リチウム結晶基板を用いることができ、櫛歯電極12および13としては櫛歯電極2と同様な電極構造および同様な製造方法を用いることができる。また、基台14の加工、基板電極15と基台電極16の作製、基台14と基板11の接合方法なども上述の方法を用いることができる。基板11と基台14間の空隙17の大きさも0.3μm〜数十μm程度とすることができる。
図4は本実施の形態の表面弾性波透過型可変フィルタの特性を示す図であり、櫛歯電極12の入力端子18と櫛歯電極13の出力端子19間の挿入損失S21の周波数特性を示す。櫛歯電極12において表面弾性波が励振され、基板11上を伝搬後に櫛歯電極13により受信される。その表面弾性波の励振周波数において挿入損失が減少する特性となる。基板電極15と基台電極16間に制御電圧を印加しない場合は実線の特性であり、制御電圧を印加したときには静電引力または斥力によって基板11が変形し、それによって櫛歯電極12および13の電極指間の周期が変化することまたは表面弾性波の音速が変化することにより励振周波数が変化し、破線に示す特性となる。また、基板11の変形によって送受信号間の遅延時間も変化する。
図5は本発明による可変フィルタの第三の実施の形態である表面弾性波共振器可変フィルタを示す斜視図である。図5において、圧電材料からなる基板21の一端を固定した片持ち梁構造体と、基板21に形成された表面弾性波を励振するための周期的に配置された電極指からなる櫛歯電極22と、基板21を変形させるための機構とを具備している。本実施の形態では櫛歯電極22に隣接して表面弾性波の反射器23を設置して表面弾性波共振子を構成している。また、片持ち梁構造体を支持する基台24を有し、基板21の端部の上面および下面にそれぞれ形成された基板電極25aおよび基板電極25b、基板電極25a、25bとそれぞれ空隙を介して対向する基台24上に形成された2つの基台電極26a、26bとからなる2つのキャパシタ構造を具備している。
この2つのキャパシタ構造の基板電極25aと基台電極26a間および基板電極25bと基台電極26b間に制御電圧を印加することにより静電力によって基板1の変形を生じさせる構成となっている。
本実施の形態では2組の制御電極を設け、それぞれに極性が反転した制御電圧を印加して静電引力と静電斥力を同時に与えることにより、図1の構成の表面弾性波共振器可変フィルタに比べて半分の制御電圧で周波数特性を制御することができる。
上記のように本発明により、従来よりも簡単な構造で周波数特性を任意に制御できる表面弾性波による可変フィルタが得られる。
なお、本発明は上記の実施の形態に制限されるものではないことは言うまでもなく、用途や要求性能に応じて基板や基台、櫛歯電極、制御用の電極などの形状や寸法、材料、配置など設計変更可能である。電極指間周期が互いに異なり共振周波数が互いに異なる複数個の表面弾性波共振子を設けて複合的な周波数特性を有するフィルタを構成することも可能である。
また、上記の実施の形態では櫛歯電極を設置した基板の変形を生じさせる機構としてキャパシタ構造電極の静電力を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく他の機構を用いることができる。例えば基板として厚さ方向に分極方向が反転した2枚の圧電基板を張り合わせた基板、または片面が分極反転して形成された圧電結晶基板を用い、両面に電極を形成して制御電圧を印加することにより圧電効果によって基板の変形を与えることができる。また、基板に磁性体膜を形成し、対抗する基台の面にコイルからなる電磁石を構成して電流を流すことにより磁力により基板の変形を与えることも可能である。さらには、基台にねじ穴を設け、ねじで基板に押圧を加えることにより基板の変形を生じさせる機構も可能である。
本発明による可変フィルタの第一の実施の形態である表面弾性波共振器可変フィルタを示す斜視図。 第一の実施の形態の表面弾性波共振器可変フィルタの特性を示す図。 本発明による可変フィルタの第二の実施の形態である表面弾性波透過型可変フィルタを示す斜視図。 第二の実施の形態の表面弾性波共振器可変フィルタの特性を示す図。 本発明による可変フィルタの第三の実施の形態である表面弾性波共振器可変フィルタを示す斜視図。
符号の説明
1、11、21 基板
2、12、13、23 櫛歯電極
3、23 反射器
4、14、24 基台
5、15、25a、25b 基板電極
6、16、26a、26b 基台電極
7、17 空隙
8、28 入出力端子
18 入力端子
19 出力端子
22 櫛歯電極

Claims (7)

  1. 圧電材料からなる基板の一端または両端を固定した片持ち梁構造体または両持ち梁構造体と、前記基板に形成された表面弾性波を励振するための周期的に配置された電極指からなる櫛歯電極と、前記基板を変形させるための機構とを具備し、前記変形または前記変形によって前記基板に歪が加わることにより前記電極指間の周期と前記表面弾性波の音速の少なくとも一方が変化することを特徴とする可変フィルタ。
  2. 前記櫛歯電極に隣接して表面弾性波の反射器を設置して表面弾性波共振子を構成し、前記変形によって該表面弾性波共振子の共振周波数が変化することを特徴とする請求項1に記載の可変フィルタ。
  3. 前記櫛歯電極は互いに対向した2つの櫛歯電極からなり、該2つの櫛歯電極間を表面弾性波を伝搬させ、前記変形によって該伝搬する表面弾性波の周波数または伝搬時間の少なくとも一方が変化することを特徴とする請求項1に記載の可変フィルタ。
  4. 前記表面弾性波共振子は共振周波数が互いに異なる複数個の表面弾性波共振子からなることを特徴とする請求項2に記載の可変フィルタ。
  5. 前記片持ち梁構造体または両持ち梁構造体を支持する基台を有し、前記基板の一面に形成された基板電極と該基板電極と空隙を介して対向する前記基台上に形成された基台電極とからなるキャパシタ構造を具備し、前記基板電極と前記基台電極間に制御電圧を印加することにより静電力によって前記変形を生じさせることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の可変フィルタ。
  6. 前記片持ち梁構造体または両持ち梁構造体を支持する基台を有し、前記基板の両面に形成された基板電極と該両面の基板電極とそれぞれ空隙を介して対向する前記基台上に形成された2つの基台電極とからなる2つのキャパシタ構造を具備し、前記基板電極と前記基台電極間に制御電圧を印加することにより静電力によって前記変形を生じさせることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の可変フィルタ。
  7. 前記基台として、前記基板に一体として接合されたシリコン基板を用いたことを特徴とする請求項5または6に記載の可変フィルタ。
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