JP2004276200A - マイクロ構造体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリコン基板50上に設けられ、少なくとも1組の櫛歯状の固定電極22、32と櫛歯状の可動電極24、34の櫛歯同士を噛み合わせて平面的に振動させるマイクロ構造体10において、前記固定電極24、34と可動電極24、34の下方における前記シリコン基板50に実質的に空間となる部分53を設ける。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン基板上に形成され、該基板面に平行な方向に振動するマイクロ構造体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる平面的な振動をするマイクロ構造体は、例えば時計、携帯電話機等において、マイクロレゾネータ(共振子)やマイクロフィルタなどとして使用される。その構造は、特許文献1、2に開示されているように、シリコン基板上に形成された固定電極と可動電極の櫛歯同士を該基板面に平行に噛み合わせ、櫛歯部を有する可動電極はシリコン基板上に支持されたバネ性を有する梁部に結合されており、このような、互いに噛み合う櫛歯状固定電極と櫛歯状可動電極を1組ずつ中間の梁部の両側に配置する構成となっている。そして、櫛歯状の固定電極、可動電極、および梁部はシリコン基板上に形成したポリシリコン膜を利用して形成されている。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第5025346号明細書(第3欄第37行−第6欄第2行、第6欄第55行−第7欄第52行、図1−図4)
【特許文献2】
米国特許第5537083号明細書(第4欄第43行−第10欄第33行、図4−図8)
【0004】
このようなマイクロ構造体は、一方の櫛歯状の固定電極と接地電極との間に交流電圧を印加することにより、その櫛歯状の固定電極と可動電極との間に静電引力を発生させ、この静電引力により櫛歯状の可動電極を櫛歯の噛み合い方向(櫛歯の長さ方向)に平面的に引き押しすることによって振動させる。この振動は可動電極と一体化されたバネ性を持つ梁部すなわち共振部に伝達され、他方の同様に噛み合い状態にある櫛歯状の可動電極を平面的に振動させる。
入力側である一方の櫛歯状の固定電極と可動電極間で発生した振動が、両側の可動電極を含む共振部(梁部)に伝わることにより、共振部は共振現象を生じ、この共振周波数が出力側である他方の櫛歯状固定電極から取り出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来のマイクロ構造体は、図3について後述するように櫛歯状の固定電極と可動電極の下方にシリコン基板のような大きな導体が存在するため、櫛歯状の電極の上面と下面には異なった電位分布(電気力線分布)が生じ電界分布が不均一になりやすい。その結果、櫛歯状の電極同士に働く静電引力は、本来的には櫛歯の噛み合い方向にのみ働くはずのものがそれ以外に櫛歯状可動電極を持ち上げるような力も発生し、シーソーのごとき振動現象を生起して所望の共振特性が得られなくなるなどの問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、櫛歯状の固定電極と可動電極の上下に発生する電界の不均一な分布を極力低減するように構成することにより、所望の振動周波数特性を安定して得ることができるマイクロ構造体およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るマイクロ構造体は、シリコン基板上に設けられ、少なくとも1組の櫛歯状の固定電極と櫛歯状の可動電極の櫛歯同士を噛み合わせて平面的に振動させるマイクロ構造体において、
前記固定電極と可動電極の下方における前記シリコン基板に実質的に空間となる部分を設けたことを特徴としている。
【0008】
このように構成することにより、櫛歯状の固定電極と可動電極の上下の空間はいずれも自由空間となる(上方はもともと自由空間である)。そのため、上下の電荷分布はほぼ均一となり、可動電極を持ち上げるような力は発生しない。
したがって、可動電極の上下方向の意図しない動きを防ぐことができ、所望の振動周波数特性を有するマイクロ構造体が得られる。
また、可動電極を駆動する静電引力は、本来の櫛歯の噛み合い方向にだけ働くので、駆動電力の無駄な消費が減少するため、効率が向上する。
なお、本発明のマイクロ構造体(MicroErectroMechanicalSystems:MEMS)は、平面的な振動を発生する構成であればよく、したがって、少なくとも1組の櫛歯状固定電極と櫛歯状可動電極を有する構成であればよい。
また、本発明におけるシリコン基板は、SOI(Silicon On Insulator)基板を含むものである。
【0009】
本発明において、前記実質的な空間部とは、前記シリコン基板の反電極面側に設けられた凹部、または前記シリコン基板を上下に貫通するように設けられた開口部である。
この部分的な凹部または開口部は、後述するようにドライエッチングにより形成される。
シリコン基板の反電極面側に凹部を設けることにより、櫛歯状の固定電極と可動電極の下方には薄い絶縁膜が介在するだけであるので、その下方部分は実質的に自由空間となる。
また、シリコン基板を上下に貫通する開口部を設けた場合には、ほぼ完全な自由空間が形成される。
したがって、この凹部または開口部により、実質的に自由空間が形成されるので、上下の電界分布は均一となり、可動電極の上下方向の意図しない動きを防止することができる。
【0010】
本発明の他の態様によるマイクロ構造体は、シリコン基板上に設けられ、少なくとも1組の櫛歯状の固定電極と櫛歯状の可動電極の櫛歯同士を噛み合わせて平面的に振動させるマイクロ構造体において、前記固定電極と可動電極の上下に対称に接地電極を設けたことを特徴とする。
固定電極と可動電極を間にして上下対称に接地電極を配設することにより、上下の力のバランスが常に保たれるので、可動電極の上下方向の意図しない動きを防止することができる。
また、外乱等により過大な駆動電圧や、外部からの過大な加速度が加わった場合でも、可動電極が接地電極に接触し櫛歯を破損するようなことは生じない。
【0011】
この場合、本発明のマイクロ構造体は、凹部を設けた基板(例えば、ガラス基板)を前記シリコン基板に接合し、前記基板の凹部底面に他方の接地電極を設けることにより構成される。
ベースとなるシリコン基板には、固定電極および可動電極をつくる際に、その下方に一方の接地電極が形成されている。これらの接地電極はポリシリコン膜で形成することが好ましいが、ガラス基板側の接地電極は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0012】
また、本発明のさらに他の態様によるマイクロ構造体は、シリコン基板上に設けられ、少なくとも1組の櫛歯状の固定電極と櫛歯状の可動電極の櫛歯同士を噛み合わせて平面的に振動させるマイクロ構造体において、前記可動電極を駆動する駆動信号に同期する制御電極を前記固定電極のそれぞれの下方に配設したことを特徴とする。
固定電極の下方に設けられた制御電極によって、可動電極を駆動する駆動信号に同期して、ある倍率α<1の電位を加えるようにする。これによって、櫛歯状電極(固定電極および可動電極)の下方における電界分布を制御することが可能になるので、可動電極の上下方向の意図しない動きを防止することができる。
【0013】
また、本発明のマイクロ構造体においては、フレーム状の梁部の両側に前記可動電極を設け、該可動電極のそれぞれに前記固定電極を平面的に噛み合わせてなるものである。
本発明をマイクロレゾネータ(共振子)やマイクロフィルタ(例えば、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ)等に適用する場合、2組の固定電極と可動電極を有する構成とされる。この場合、可動電極はフレーム状の梁部の両側に配置され、この2つの可動電極を含む梁部が共振部として構成される。したがって、梁部は共振部を構成するものであればよく、その形状は方形に限らず、円形や長円形、紡錘形等適宜の形状に構成することができる。
【0014】
また、本発明をマイクロアクチュエータに適用する場合、本発明のマイクロ構造体は、前記可動電極を両端支持の梁に設け、該可動電極の櫛歯部と反対側にロッドを突設した構成とするものである。
このように構成することにより、平面的な振動を駆動源として、ロッドを作動させることができる。したがって、様々なマイクロマシンを構成することが可能となる。
【0015】
本発明のマイクロ構造体の製造方法は、シリコン基板上に設けられ、少なくとも1組の櫛歯状の固定電極と櫛歯状の可動電極の櫛歯同士を噛み合わせて平面的に振動させるマイクロ構造体の製造方法において、
前記シリコン基板上にポリシリコン膜を形成する工程と、
前記固定電極と可動電極の下方における前記シリコン基板の反電極面側に凹部を形成する工程と
その後、前記ポリシリコン膜を所要数に分割することにより、前記固定電極と可動電極の各櫛歯を形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
前述したように本発明のマイクロ構造体は、櫛歯状電極の下方のシリコン基板に実質的な空間部を形成するものである。この空間部を構成する凹部を形成する場合において、該凹部をシリコン基板の反電極面側に形成してから、ポリシリコン膜を所要数に分割することにより、固定電極と可動電極の各櫛歯を形成することとするものである。
これは、先に櫛歯状電極の各櫛歯を形成してから凹部を形成すると、シリコン基板を裏返しにセットしなければならないので、櫛歯状電極を損傷するおそれが大きいからである。
【0017】
また、開口部を設ける場合も同様の理由から、シリコン基板の部分を貫通する開口部を形成してから、ポリシリコン膜を所要数に分割することにより、固定電極と可動電極の各櫛歯を形成する。
また、凹部、開口部は、ドライエッチングにより形成される。ウェットエッチングでは櫛歯状電極を破壊することになるからである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1によるマイクロ構造体の平面図、図2は図1のA−A線における断面図である。
このマイクロ構造体10は、トランスバーサル型のSAW(Surface Acoustic Wave:弾性表面波素子)フィルタと同様な働きをするフィルタとして構成されている。
シリコン基板50の表面に形成された酸化膜からなる絶縁膜51上において、送信側IDT(Interdigital Transducer)20と受信側IDT30を両側に配置し、両者の中間部に共振部40を配置している。送信側IDT20、受信側IDT30および共振部40は、シリコン基板50上に形成されたポリシリコン(p−SiO)膜を利用して形成される。
【0019】
送信側IDT20および受信側IDT30はいずれも、それぞれ櫛歯部を有する固定電極22、32と可動電極24、34とからなっている。送信側IDT20の固定電極22および受信側IDT30の固定電極32は、それぞれ複数の櫛歯からなる櫛歯部21、31を有し、リード部25、35を介して入力端子電極26、出力端子電極36に接続されている。
共振部40は、方形状のフレームからなる梁部42と、この梁部42の両側に櫛歯が外向きになるように一体的に形成され、固定電極22、32の櫛歯部21、31とそれぞれ噛み合うように設けられた櫛歯部23、33を有する可動電極24、34とから構成されている。
【0020】
固定電極の櫛歯部21、31と可動電極の櫛歯部23、33とは、それぞれ複数の櫛歯が所定の平面上の隙間(櫛歯ギャップ)でもってシリコン基板50の表面に平行に噛み合っている。
可動電極24、34が一体的に形成されたフレーム状の梁部42は、このフレームに結合された片持ち梁44を介して、支持部46がシリコン基板50上に固定される構造となっている。梁部42の外形形状は前述のとおり、特に方形状に限定されるものではない。
【0021】
そして、図2に示すように、梁部42はシリコン基板50の絶縁膜(酸化膜)51上より基板面に平行に浮き上がった状態で支持されており、したがって、櫛歯状の固定電極22、32と可動電極24、34も同様に基板面に平行に浮き上がった状態で噛み合っている。櫛歯状電極の浮上高さすなわち、シリコン基板の絶縁膜31との電極ギャップは2〜3μm程度である。なお、図1において、52は入力端子電極26と出力端子電極36に共通の接地電極である。
【0022】
この実施形態ではさらに、図2に示すように、櫛歯状の固定電極22、32と可動電極24、34の下方において、シリコン基板50上の酸化膜である絶縁膜51を残してシリコン基板50の裏面側(反電極側)より基板部分を除去し、凹部53を設けてなるものである。したがって、固定電極22、32と可動電極24、34の下方部分は、薄い絶縁膜51が介在するだけで空間の凹部53が設けられているため、実質的に自由空間に開放されている。これら両電極の上部空間はもともと自由空間であるから、これにより両電極は上下共に実質的に自由空間の中に置かれることになる。
【0023】
図3(a)は図2のB−B線における拡大断面図であり、例示的に送信側の1つの櫛歯状可動電極24とその両側に噛み合い状態に配置される2つの櫛歯状固定電極22を取り上げ、両電極間に生じる電界の分布状態を模式的に示したものである。
受信側の櫛歯状可動電極34と櫛歯状固定電極32との関係も図3(a)と同様の電界分布状態にある。したがって、以降の説明では一方の固定電極22と可動電極24との関係について説明する。
図3(b)は、比較のため、従来例の場合における櫛歯状可動電極24と櫛歯状固定電極22間の電界分布状態を模式的に示したものである。
【0024】
一般的に、例えばマイクロレゾネータを設計する場合、櫛歯状固定電極22の入力端子電極26と接地電極52間に交流電圧を印加することにより、櫛歯状の固定電極22と可動電極24の櫛歯相互間に静電引力を発生させ、これによって可動電極24を櫛歯の噛み合い方向(櫛歯の長さ方向、すなわち図3の紙面の表裏方向)にバネ性を持つ梁部42を介して引き押しさせることで振動させるように設計する。共振周波数あるいは発振周波数は、可動電極24を含む共振部40の質量と梁部42のバネ定数で定まる変位に対する復元力(梁部42の弾性力)によって定まる。発振周波数は、例えば、16kHz、32kHz、72kHzなどが設計目標値としてあげられる。
【0025】
しかしながら、従来例の場合、これら両方の電極22、24の下方には実質的に接地されているシリコン基板50が存在するため、図3(b)に示すように、大きな導体であるシリコン基板50の影響を受けて電極上下の電気力線の密度が異なってくる。そのため、電界の分布が電極の上下の空間で不均一になる。したがってこの場合、可動電極24に働く静電引力が本来必要な方向(この場合、図3の紙面の表裏方向)よりも可動電極24をシリコン基板50から離れる方向に持ち上げる力Pが支配的になる。こうなると、本来の共振子としての有効な駆動力が得られなくなり、寄生振動が生じたり、場合によっては動作不能になる。
【0026】
一方、この実施形態では、電極22、24の下方にシリコン基板部分を除去して形成された凹部53を設けているため、図3(a)に示すように、電極22、24の上下には実質的に自由空間が形成されている。そのため、電極22、24の上下の空間に上下対称な電界分布が形成されることになる。
したがって、可動電極24を持ち上げる力がなくなるため、設計目標通りの共振周波数特性をもつマイクロ構造体を得ることができる。また、可動電極24を上方向に持ち上げる力を生じないので、駆動電力の無駄な消費を低減することができるため、駆動効率が向上する。
【0027】
実施の形態2.
図4は本発明の実施の形態2によるマイクロ構造体の断面図で、図2に対応するものである。図5は図4のC−C線における拡大断面図である。
この実施形態は、図2に示した凹部53をさらに深くし、その部分の絶縁膜51を部分的に除去して上下に貫通する開口部54としたものである。
このような、シリコン基板50を上下に貫通する開口部54を、噛み合い状態にある固定電極22と可動電極24の下方に設けることによって、両電極22、24の下方部分に実質的に完全な自由空間を形成する。そのため、両電極22、24は上下共にほぼ完全な自由空間の中に置かれることになるため、図5に示すように、両電極22、24間の電界分布は、前記第1の実施形態に比べて、より均一なものとなる。
したがって、この実施形態によれば、第1の実施形態よりも優れた共振周波数特性をもち、かつより効率的なマイクロ構造体を得ることができる。
【0028】
実施の形態3.
図6は本発明の実施の形態3によるマイクロ構造体の断面図で、噛み合い状態にある櫛歯状の固定電極22と可動電極24の櫛歯部分の断面図である。
この実施形態は、櫛歯状の固定電極22と可動電極24の上下に対称に可動電極24と同電位の接地電極27、28を配設したものである。すなわち、櫛歯状電極22、24と下側の接地電極27間の間隙G1と櫛歯状電極22、24と上側の接地電極28間の間隙G2とがほぼ等しくなるように構成するものである。
ここでは、櫛歯状の固定電極22と可動電極24は、前述のようにベースとなるシリコン基板50上に浮いた状態で形成されており、このシリコン基板50の上面に、固定電極22と可動電極24の下方において櫛歯に直角の方向に延びる下側接地電極27を形成する。この下側接地電極27は、櫛歯状電極22、24と同様、ポリシリコン膜で形成される。
【0029】
一方、下側のシリコン基板50に対向する上側の蓋基板60は、例えばガラス基板、あるいはプラスチック基板等からなり、エッチングや成形等により凹部61を形成する。この凹部61の底面(図6では天井面)に、下側接地電極27と同様の上側接地電極28を上下対称に形成する。なお、上側接地電極28の材料は下側接地電極27と同じでなくてもよい。
そして、あらかじめ凹部51内に上側接地電極28を形成した上側の蓋基板60をシリコン基板50に接着や直接接合等により接合することにより、密封されたマイクロ構造体12がつくられる。このマイクロ構造体12の内部はレゾネータの動作安定のため真空にすることが好ましい。
【0030】
この実施形態によれば、固定電極22と可動電極24の上下に対称に配設した接地電極27、28によって、櫛歯状電極22、24の上下の空間で上下対称な電界分布が形成されるとともに、上下の力のバランスが保たれている。そのため、可動電極24は常に中立位置を保ちつつ櫛歯の噛み合い方向(図6の紙面の表裏方向)に振動する。
また、外乱等により過大な駆動電圧が固定電極22にかかった場合でも、可動電極24に働く静電引力は上下対称な接地電極27、28によって常に上下の力のバランスが保たれているため、可動電極24がいずれか一方の接地電極に接触しショートしてその櫛歯が破損するようなことは生じない。したがって、可動電極24の動作(振動)の安定性、信頼性が向上する。
また、前述のように凹部53や開口部54を基板部分に設ける構造ではないので、強度面でも心配のない構造である。
【0031】
実施の形態4.
図7は本発明の実施の形態4を示すマイクロ構造体の断面図で、同じく噛み合い状態にある櫛歯状の固定電極22と可動電極24の櫛歯部分の断面図である。前述したように、櫛歯状の固定電極22と可動電極24の上下における電界分布が等しくなるようにすれば、可動電極24の上下方向の意図しない(望ましくない)運動を防ぐことができる。
この目的を達成するために、このマイクロ構造体14は、櫛歯状の固定電極22と可動電極24の下方において、両電極22、24とほぼ同一の櫛歯パターンで、固定電極22の下には電位補償用の制御電極71を、可動電極24の下には接地電極72を、ポリシリコン膜により交互に絶縁膜51上に形成したものである。すなわち、図6に示した下側の接地電極27を櫛歯状電極22、24の櫛歯パターンに対応して分割し、固定電極22の下方の電極を制御電極71としたものである。
なお、制御電極71および接地電極72は、櫛歯状電極22、24とほぼ同一の幅bで形成されているが、これに限定されるものではない。制御電極71は多少幅広く形成してもよい。また、制御電極71および接地電極72の高さhは製造プロセス上、同じ高さとなっている。
【0032】
図8は実施の形態4における制御回路図である。固定電極22は可動電極24を駆動するための駆動電源73に接続されており、可動電極24および接地電極72はアースに接続し、さらに制御電極71は駆動電源73の信号と同期するように増幅器74を介して駆動電源73に接続されている。
この制御回路により、固定電極22の下方の制御電極71に、可動電極24の駆動電圧(固定電極22への印加電圧)と同期して、増幅器74により設定された、ある倍率α<1(例えば、駆動電圧の20%)の電位を与える。これによって、櫛歯状電極22、24の下方における電界分布を制御することができるので、可動電極24の上下方向の意図しない動きを防ぐことができる。
【0033】
実施の形態5.
図9は本発明の実施の形態5を示すマイクロ構造体の平面図で、マイクロアクチュエータとして構成した例を示すものである。
このマイクロ構造体16は、1組の櫛歯状電極22、24を備えた構成となっている。すなわち、櫛歯状の固定電極22と可動電極24は、前述のように、シリコン基板50上より浮き上がった状態で櫛歯部21、23同士が平面的に噛み合っている。ここでは、櫛歯状可動電極24は、両端支持の梁47の中央部に一体的に形成されており、さらにロッド48が櫛歯部23と反対側に突設されている。
また、櫛歯状電極22、24の下方のシリコン基板50には、図2と同様に、反電極側(下面側)に凹部53が形成されている。また、図4に示したように、シリコン基板50を上下に貫通する開口部としてもよい。なお、図9において、25はリード部、26は入力端子電極、45は接地電極、49は梁47の支持部である。
【0034】
このマイクロ構造体16の動作は基本的に前述したとおりであり、櫛歯状の固定電極22に駆動電圧を印加することにより固定電極22と可動電極24間に静電引力を発生させ、この静電引力によって両持ち式の梁47に取り付けられた可動電極24を振動させる。可動電極24にはロッド48が取り付けられているので、ロッド48を往復運動させることができる。
したがって、このロッド48に直接、または適当なリンク等を介して機能素子あるいは受動素子を連結すれば、例えば反射ミラーやレバーを動かすようなマイクロマシンをつくることができる。
また、可動電極24の櫛歯の位置、すなわちロッド48の変位は、駆動電圧の2乗に比例するので、センサやスイッチ等の機能を持たせることも可能となる。
【0035】
実施の形態6.
次に、前述したマイクロ構造体の主に櫛歯状電極22、24の製造方法について図10乃至図13を参照しながら説明する。
まず、厚さ約500μm程度の両面研磨されたシリコン基板80の表面に、減圧気相成長(減圧CVD)法により、厚さ0.5μmの酸化膜(SiO2)81、およびその上に厚さ0.2μmの窒化膜(SiN4)82をこの順に形成する(図10(a))。なお、シリコン基板80の代わりに、SOI基板を用いてもよい。
【0036】
次に、上記窒化膜82の上に、減圧CVD法により導電体となる厚さ0.2μmのポリシリコン(p−SiO)膜83を形成し、そのポリシリコン膜83にフォトレジスト(図示せず)のパターニングを施した後、フレオンガス(CF4)などによるドライエッチングにより窓部84を開ける(図10(b))。
ついで、そのポリシリコン膜83上にリンガラス(PSG)の犠牲層85を2μmの厚さに減圧CVD法で形成する(図10(c))。
さらに、その犠牲層85にレジストパターニングおよびウェットエッチングを施し、上記ポリシリコン膜83の第1電極部83a上に窓部86を形成する(図10(d))。
ポリシリコン膜83の第2電極部83bは、図6に示した下側接地電極27、あるいは図7に示した制御電極71および接地電極72を形成するための電極となる。なお、図7の制御電極71および接地電極72を形成するためには、犠牲層85を施す前に、あらかじめレジストパターニングおよびウェットエッチングにより、ポリシリコン膜83を櫛歯状電極22、24の各櫛歯の数と同じに分割しておく。
【0037】
そして、この犠牲層85上に、減圧CVD法により櫛歯状電極22、24を構成することになる厚さ2μmのポリシリコン膜87を形成し、さらにそのポリシリコン膜87上に厚さ0.3μmのPSGの犠牲層88を形成する(図11(e))。
ついで、その犠牲層88およびシリコン基板80の下面にフォトレジスト89、90を施し(図11(f))、その後、このシリコン基板80を裏返しにして、フレオンガス(CF4)によるドライエッチングにより、図1および図2に示した凹部53をシリコン基板80の裏面側に形成する(図11(g))。
このドライエッチングにより、部分的に基板部分が除去され、櫛歯状電極22、24の下方には酸化膜81と窒化膜82の部分だけが残る。
【0038】
さらに、図4に示したように、上下に貫通する開口部54とするためには、引き続きドライエッチングを行うことにより、まず酸化膜81を除去し(図13(g−1))、その後窒化膜82を除去する(図13(g−2))。
【0039】
そして、フッ酸水溶液のウェットエッチングにより、パターニングされたフォトレジスト89を通じて犠牲層88をエッチングし、さらに犠牲層88をマスクとしてポリシリコン膜87をドライエッチングしていき(図12(h))、その後、フォトレジスト89および90、犠牲層88および85を除去する(図12(i))。また、基板全体を適切な温度で熱処理(エージング)する。
このようにして、図12(i)においては、ポリシリコン膜87による櫛歯状電極22、24と、その電極下方における窒化膜82上のポリシリコン膜83による接地電極27(図6参照)、および酸化膜81下の凹部53(図2参照)が形成される。
【0040】
この製造方法によれば、凹部53(または開口部54)をシリコン基板80の反電極面側にドライエッチングで形成してから、ポリシリコン膜83を所要数に分割することにより、固定電極22と可動電極24の各櫛歯を形成するものであるので、櫛歯状電極22、24を損傷させることがない。
【0041】
以上の実施形態で示したマイクロ構造体10、12、14、16は、可動電極24の上下方向の意図しない(望ましくない)動きを防止し、本来の平面内の振動に規制する手段を設けたものである。したがって、本発明のマイクロ構造体は、かかる振動規制手段によって構成されているものと解すべきものである。
また、本発明のマイクロ構造体は、櫛歯状の固定電極と可動電極の平面的な振動を発生させるものであれば、その用途に限定されるものではない。例えば、時計、携帯電話機、パソコン、情報端末機器(PDA)、家電製品、音響機器、その他の電子機器等、多方面に利用することができる。
また、IC等の半導体素子と一体的に結合することによりモノリシック化された電子マイクロデバイス(RF回路、局部発振回路、フィルタ回路等)としても本発明のマイクロ構造体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1によるマイクロ構造体の平面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図2のB−B線断面図で、電界分布状態の従来例との比較図。
【図4】本発明の実施の形態2によるマイクロ構造体の断面図。
【図5】図4のC−C線断面図。
【図6】本発明の実施の形態3によるマイクロ構造体の断面図。
【図7】本発明の実施の形態4によるマイクロ構造体の断面図。
【図8】実施の形態4における制御回路図。
【図9】本発明の実施の形態5によるマイクロ構造体の平面図。
【図10】本発明のマイクロ構造体の製造方法を示す工程図。
【図11】図10に続く工程図。
【図12】図11に続く工程図。
【図13】図11(g)に続く工程図。
【符号の説明】
10、12、14、16 マイクロ構造体、20 送信側IDT、21 櫛歯部、22 櫛歯状固定電極、23 櫛歯部、24 櫛歯状可動電極、25 リード部、26 入力端子電極、27 下側接地電極、28 上側接地電極、30 受信側IDT、31 櫛歯部、32 櫛歯状固定電極、33 櫛歯部、34 櫛歯状可動電極、35 リード部、36 出力端子電極、40 共振部、42 梁部、44 片持ち梁、45 接地電極、46 支持部、47 梁、48 ロッド、49 支持部、50 シリコン基板、51 絶縁膜、52 接地電極、53 凹部、54 開口部、60 蓋基板、61 凹部、71 制御電極、72 接地電極、73 駆動電源、74 増幅器、80 シリコン基板、81 酸化膜、82 窒化膜、83 ポリシリコン膜、83a 第1電極部、83b 第2電極、84 窓部、85 犠牲層、86 窓部、87 ポリシリコン膜、88 犠牲層、89、90 フォトレジスト
Claims (11)
- シリコン基板上に設けられ、少なくとも1組の櫛歯状の固定電極と櫛歯状の可動電極の櫛歯同士を噛み合わせて平面的に振動させるマイクロ構造体において、
前記固定電極と可動電極の下方における前記シリコン基板に実質的に空間となる部分を設けたことを特徴とするマイクロ構造体。 - 前記空間部が、前記シリコン基板の反電極面側に設けられた凹部、または前記シリコン基板を上下に貫通するように設けられた開口部であることを特徴とする請求項1記載のマイクロ構造体。
- シリコン基板上に設けられ、少なくとも1組の櫛歯状の固定電極と櫛歯状の可動電極の櫛歯同士を噛み合わせて平面的に振動させるマイクロ構造体において、
前記固定電極と可動電極の上下に対称に接地電極を設けたことを特徴とするマイクロ構造体。 - 凹部を設けた基板を前記シリコン基板に接合し、前記基板の凹部底面に他方の接地電極を設けたことを特徴とする請求項3記載のマイクロ構造体。
- シリコン基板上に設けられ、少なくとも1組の櫛歯状の固定電極と櫛歯状の可動電極の櫛歯同士を噛み合わせて平面的に振動させるマイクロ構造体において、
前記可動電極を駆動する駆動信号に同期する制御電極を前記固定電極のそれぞれの下方に配設したことを特徴とするマイクロ構造体。 - フレーム状の梁部の両側に前記可動電極を設け、該可動電極のそれぞれに前記固定電極を平面的に噛み合わせてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のマイクロ構造体。
- 前記可動電極を両端支持の梁に設け、該可動電極の櫛歯部と反対側にロッドを突設したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のマイクロ構造体。
- シリコン基板上に設けられ、少なくとも1組の櫛歯状の固定電極と櫛歯状の可動電極の櫛歯同士を噛み合わせて平面的に振動させるマイクロ構造体の製造方法において、
前記シリコン基板上にポリシリコン膜を形成する工程と、
前記固定電極と可動電極の下方における前記シリコン基板の反電極面側に凹部を形成する工程と
その後、前記ポリシリコン膜を所要数に分割することにより、前記固定電極と可動電極の各櫛歯を形成する工程と、
を有することを特徴とするマイクロ構造体の製造方法。 - 前記凹部は、ドライエッチングにより形成されることを特徴とする請求項8記載のマイクロ構造体の製造方法。
- シリコン基板上に設けられ、少なくとも1組の櫛歯状の固定電極と櫛歯状の可動電極の櫛歯同士を噛み合わせて平面的に振動させるマイクロ構造体の製造方法において、
前記シリコン基板上にポリシリコン膜を形成する工程と、
前記固定電極と可動電極の下方における前記シリコン基板の部分を貫通する開口部を形成する工程と
その後、前記ポリシリコン膜を所要数に分割することにより、前記固定電極と可動電極の各櫛歯を形成する工程と、
を有することを特徴とするマイクロ構造体の製造方法。 - 前記開口部は、ドライエッチングにより形成されることを特徴とする請求項10記載のマイクロ構造体の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP1693339A1 (en) | 2005-02-16 | 2006-08-23 | Seiko Epson Corporation | MEMS device and manufacturing method of MEMS device |
JP2009085729A (ja) * | 2007-09-28 | 2009-04-23 | Aoi Electronics Co Ltd | センサ素子および物理センサ装置 |
JP2013021208A (ja) * | 2011-07-13 | 2013-01-31 | Dainippon Screen Mfg Co Ltd | 基板処理方法および基板処理装置 |
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2003
- 2003-03-18 JP JP2003073545A patent/JP2004276200A/ja not_active Withdrawn
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