以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1A乃至図1Uは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
まず、図1Aに示す断面構造を形成するまでの工程を説明する。
図1Aにおいて、p型又はn型のシリコン(半導体)基板1のメモリセル領域Aと周辺回路領域Bにおける所定の活性領域にp型不純物とn型不純物のいずれかを選択して導入することにより、メモリセル領域Aの活性領域に第1のウェル2aを形成し、周辺回路領域Bの活性領域には第2のウェル2bを形成する。
また、シリコン基板1のうち活性領域の周囲には素子分離絶縁膜3としてシャロートレンチアイソレーション(STI)が形成されている。STIは、シリコン基板1に形成された溝に例えばシリコン酸化膜を埋め込んだ構造を有している。なお、素子分離絶縁膜3として、LOCOS(local oxidation of silicon)法によりシリコン基板1の表面に形成したシリコン酸化膜を採用してもよい。
シリコン基板1の表面上には、ゲート絶縁膜4として例えばシリコン酸化膜が熱酸化法により形成されている。さらに、第1のウェル2aの上には、間隔をおいて第1、第2のゲート電極5a,5bが形成されている。ゲート電極5a,5bは例えば次のような工程により形成される。
即ち、素子分離絶縁膜3及びゲート絶縁膜4の上に、導電膜として、例えば多結晶又は非晶質のドープトシリコン膜を形成する。そして、導電膜をフォトリソグラフィー法により所定の形状にパターニングすることにより、第1のウェル2aの上で間隔をおいて導電膜からなるゲート電極5a、5bを形成する。
メモリセル領域Aでは、第1のウェル2aの上方に形成された複数のゲート電極5a、5bがほぼ平行に間隔をおいて形成され、これらのゲート電極5a、5bは素子分離絶縁膜3の上に延在してワード線となる。
第1のウェル2aの上にゲート絶縁膜4を介して形成された2つのゲート電極5a、5bの両側では、第1のウェル2aと逆導電型の不純物をシリコン基板1にイオン注入することによりエクステンション領域7a、7b、7cを形成する。
その後に、図1Bに示すように、シリコン酸化膜の形成とその後のエッチバックにより、ゲート電極5a,5bの側面に絶縁性のサイドウォール10を形成する。
続いて、ゲート電極5a,5b及びサイドウォール10をマスクにして、エクステンション領域7a,7b,7cと同じ導電型の不純物を第1のウェル2aにイオン注入することにより、エクステンション領域7a,7b,7cのそれぞれの一部に重なる第1、第2及び第3の高濃度不純物拡散領域8a,8b,8cを形成する。第1、第2及び第3の高濃度不純物拡散領域8a,8b,8cは、それぞれエクステンション領域7a、7b、7cとともに第1、第2及び第3のソース/ドレイン領域9a,9b,9cを構成する。
続いて、全面に、例えばスパッタリング法により、例えばCo膜を堆積する。その後、温度400℃乃至900℃の熱処理を行うことによって、ゲート電極5a,5bの多結晶シリコン膜とCo膜がシリサイド反応し、ゲート電極5a,5bの上面にシリサイド層6が形成される。また、図示はしないが、高濃度拡散領域8a,8b,8cの上面においてもシリサイド層が形成される。その後、フッ酸等を用いて、未反応のCo膜を除去する。
これにより、第1のウェル2a、ゲート絶縁膜4、第1のゲート電極5a、第1、第2のソース/ドレイン領域9a、9b等により第1のMOSトランジスタT1が構成され、また、第1のウェル2a、ゲート絶縁膜4、第2のゲート電極5b、第2、第3のソース/ドレイン領域9b、9c等により第2のMOSトランジスタT2が構成される。
続いて、図1Cに示すように、MOSトランジスタT1,T2をカバー絶縁膜11、第1の層間絶縁膜12で覆い、さらに、第1、第2及び第3の高濃度不純物拡散領域8a,8b,8cのそれぞれの上に第1、第2及び第3のプラグ電極15a,15b,15cを形成する。第1、第2及び第3のプラグ電極15a,15b,15cは、次のような工程により形成される。
まず、第1、第2のMOSトランジスタT1 、T2を覆う例えば酸窒化シリコン(SiON)のカバー絶縁膜11をプラズマ化学気相成長(P−CVD)法によりシリコン基板1の上に形成する。
次に、TEOS(テトラエトキシシラン)ガスを用いるP−CVD法により、カバー膜11上にシリコン酸化膜(SiO2膜)を成長し、このシリコン酸化膜を第1の層間絶縁膜12とする。なお、第1の層間絶縁膜12の途中に窒化シリコンの中間絶縁層を形成してもよい。
続いて、第1の層間絶縁膜12の緻密化処理として、常圧の窒素雰囲気中で第1の層間絶縁膜12を所定温度、所定時間で熱処理する。その後に、第1の層間絶縁膜12の上面を化学機械研磨(CMP)法により研磨して平坦化する。
その後に、カバー絶縁膜11及び第1の層間絶縁膜12をフォトリソグラフィー法によりパターニングすることにより、第1、第2及び第3のソース/ドレイン領域9a,9b,9cのそれぞれの上に、第1、第2及び第3のコンタクトホール12a,12b,12cを形成する。さらに、第1、第2及び第3のコンタクトホール12a,12b,12cの内壁及び底面に、グルー(密着)膜13として厚さ30nmのTi膜、厚さ50nmのTiN膜をスパッタリング法により順に形成する。
さらに、第1、第2及び第3のコンタクトホール12a,12b,12cを埋め込む厚さのタングステン(W)膜14をCVD法によりグルー膜13上に形成する。W膜14を形成する反応ガスとして例えば六フッ化タングステン(WF6)ガスを使用する。その後に、W膜14とグルー膜13をCMP法により研磨して第1の層間絶縁膜12の上面を露出させる。
これにより、第1、第2及び第3のコンタクトホール12a、12b、12c内に残されたW膜14及びグルー膜13は、それぞれ第1、第2及び第3のプラグ電極15a,15b,15cとなる。
第1、第2及び第3のプラグ電極15a,15b,15cにタングステンが用いられる理由は、タングステンがドープトシリコンに比べて低抵抗で且つ耐熱性を有するからである。しかし、タングステンは酸化されると非常に高抵抗の酸化物となるので、一部が酸化しただけでも抵抗が高くなりコンタクトの確保が難しくなる。
そこで、第1、第2及び第3のプラグ電極15a,15b,15cの酸化を防止するために、次のような工程により第1、第2及び第3のプラグ電極15a,15b,15cを酸化防止膜によって覆う。
まず、図1Dに示すように、第1の層間絶縁膜12と第1、第2及び第3のプラグ電極15a,15b,15cの上に、チタン(Ti)膜16aをスパッタリング法により20nmの厚さに形成する。Ti膜16aは、自己配向性の強い性質を有する金属膜の1つであり、c軸に配向する良好な結晶性を有する。
次に、図1Eに示すように、Ti膜16aを窒素(N2)雰囲気中で高速熱アニール(RTA)処理を行って窒化することにより窒化チタン(TiN)膜16を形成する。TiN膜16は、Ti膜16aの結晶性を受け継ぐために、強く<111>に配向した良好な結晶性を有する。
TiN膜16は、第1の層間絶縁膜12及びプラグ電極15a,15b,15cを覆うとともに、次の工程で形成され膜の結晶性を向上させる配向性向上膜として機能する。なお、Ti膜16aを窒化させるのはTiが酸化し易いからであり、窒化により耐酸化性が向上する。なお、TiN膜16は、導電性の酸素バリア膜として機能する。
次に、図1Fに示すように、TiN膜16の上に導電性酸素バリア膜17、下部電極膜18を順に形成する。導電性酸素バリア膜17は、後述する酸素含有雰囲気での熱処理においてプラグ電極15a,15b,15cの酸化を防止する役割と、後述するキャパシタ一括エッチング時のストッパ膜としての役割がある。
下部電極膜18の構成材料として、酸化を防止可能な材料、例えばプラチナ(Pt)、イリジウム(Ir)等の貴金属、又は、酸化されても導電性を維持することができる導電性酸化物、例えばIrO2、SrRuO3等の貴金属酸化物やLa0.5Sr0.5CoO3等を使用する。
そのような下部電極膜18は、600℃前後の温度の加熱により、酸素拡散抑制能力が低下する。このため、そのような高温の酸素雰囲気中で導電膜18をアニールすると、タングステンから構成された第1、第2及び第3のプラグ電極15a,15b,15cが下部電極膜18を通して酸化されるおそれがある。
このような酸化を防止するために、下部電極膜18とTiN膜16の間に導電性酸素バリア膜17を形成する。具体的には、導電性酸素バリア膜17として、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)膜をスパッタリング法により例えば約100nmの厚さに形成し、また、下部電極膜18として例えばIr膜をスパッタリング法により約100nmの厚さに成膜する。
TiAlN膜の酸化速度は、TiN膜16の酸化速度よりも2桁以上遅いために、その下方の第1、第2及び第3のプラグ電極15a,15b,15cの酸化を防止できる。
なお、導電性の酸素バリア膜(16)17は、上記した構成に限られるものではなく、チタン、アルミニウムの少なくとも一方の金属か、チタン、アルミニウムの少なくとも一方の窒化物、或いはアルミニウムの少なくとも一方の合金、その他の導電材から構成してもよい。
続いて、図1Gに示すように、下部電極膜18上に強誘電体膜19として例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)膜を2ステップで形成する。一層目のPZT膜19aはMOCVD法により5nmの厚さに形成され、さらにその上に、二層目のPZT膜19bがMOCVD法により115nmの厚さに形成され、これにより強誘電体膜19の総厚は120nmとなる。
一層目と二層目のPZT膜19a,19bの成膜時の基板温度は例えば620℃であり、成長雰囲気の圧力は例えば5Torrである。一層目と二層目のPZT膜19a,19bの構成元素は同じである。ただし、一層目のPZT膜19aの成長時に導入される酸素の分圧を二層目のPZT膜19bの成長時の酸素分圧よりも下げて成膜している。
これは、低酸素分圧で成膜した方がPZT膜自身の結晶性が良好で、<111>方向に優先配向するからである。しかし、二層目のPZT膜19bも同じように低い酸素分圧で成長すると、強誘電体膜19中の酸素欠損が多くなり、その中を通るリーク電流が増大する原因となる。そこで、本実施形態では、一層目と二層目のPZT膜19a,19bのそれぞれの成長条件を異ならせる2ステップ成長法を採用している。
強誘電体膜19の形成方法としては、スパッタリング法の他、ゾルゲル法、MOCVD法等がある。なお、強誘電体膜19として、PZT膜の他に、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)等のPZT系強誘電体材料や、SBT、SBTN、Bi層状構造化合物等のBi系強誘電体材料、その他の強誘電体材料を形成してもよい。
強誘電体膜19としてPZT膜を形成する場合には、その下地となる下部電極の材料としてIr等を用いている。これは、PZT膜の結晶の自発分極を大きくするためには、その下地となる下部電極の結晶が(111)面に強く配向している必要があるからであり、Ir、Pt等の貴金属は(111)面に強く配向し、PZT膜の下地として適している。
次に、図1Hに示すように、強誘電体膜19の上に、IrOx1から構成される第1の酸化イリジウム膜20をスパッタリング法により50nmの厚さに形成する。ただし、IrOx1におけるx1は組成比であり、x1<2の関係にある。
ここで、IrOx1の代わりにPt膜、SrRuO3(SRO)膜を用いることも可能である。しかし、Ptは水素分子に対して触媒作用があるために水素ラジカルを発生させ易く、水素ラジカルの還元により強誘電体膜19の膜質が劣化され易いのでPtの採用はあまり好ましくはない。
これに対して、IrOx1膜、SRO膜は触媒作用を持たないために水素ラジカルを発生しにくく、強誘電体膜19に対する水素劣化耐性が格段に向上する。従って、酸化イリジウムの代わりにSROを用いてもよい。
続いて、O2濃度を約1容量%としたArとO2の混合ガス雰囲気中にシリコン基板1を置いて、昇温速度125℃/secの条件で雰囲気温度を上昇させて、加熱温度を725℃として強誘電体膜19を60秒間でRTA処理する。
このように、結晶が<111>方向に優先配向した強誘電体膜19を微量の酸素雰囲気中において熱処理することにより、強誘電体膜19を構成する例えば酸化物の結晶格子中の酸素欠陥が補充されるだけでなく、強誘電体膜19が緻密化される。
ところで、第1の酸化イリジウム膜20の形成前に強誘電体膜19の緻密化処理を行えば、強誘電体膜19を構成する例えばPZT膜中に多く存在する気泡が一ヶ所に集まってしまい、強誘電体膜19内の結晶粒界にピンホールが開いた状態になってしまうので好ましくない。
これに対して、第1の酸化イリジウム膜20を形成した後に強誘電体膜19の緻密化の熱処理を行うと、強誘電体膜19の表面荒れが防止される。このことは、熱処理後に、例えばPZT\IrOx界面が非常にフラットになり、その界面での欠陥が少ないことからも容易に推察される。しかも、強誘電体膜19を構成するPZT膜からの蒸気圧の高いPb及びPbOの脱離は、第1の酸化イリジウム膜20によりブロックされる。
続いて、第1の酸化イリジウム膜20の上に、IrOx2(組成比:x2)から構成される第2の酸化イリジウム膜21をCVD法により100nmの厚さに形成する。ただし、IrOx2におけるx2は組成比であり、x2>x1の関係にある。
第2の酸化イリジウム膜21は、第1のイリジウム膜20の形成時よりも酸素分圧を上げて成膜される。これは、第2の酸化イリジウム膜21の組成をストイキオメトリ(化学量論的組成)であるIrO2にするかこれに近づけることにより、触媒作用を持つIrの成分を少なくして水素劣化耐性を向上させるためである。
次に、図1Iに示すように、第2の酸化イリジウム膜21の上に、貴金属膜22としてIr又はPtをスパッタリング法により100nmの厚さに形成する。貴金属膜22は、第1及び第2の酸化イリジウム膜20,21とともに上部電極膜24を構成する。
なお、上部電極膜24は、上記した構造に限られるものではなく、貴金属、貴金属酸化物、貴金属含有物のいずれかの導電膜か、或いはそのような導電膜を含む膜のいずれかから構成してもよい。
続いて、図1Jに示すように、貴金属膜22の上にTiN膜25aをスパッタリング法により例えば50nm〜300nmの厚さに形成し、続いて、TEOSガスを使用してプラズマCVD法によって厚さが例えば300nm〜1000nmのシリコン酸化膜25bをTiN膜25a上に形成する。
さらに、シリコン酸化膜25bの上にフォトレジストを塗布した後に、これを露光、現像することにより、第1のプラグ電極15aの上方及びその周辺の領域と、第3のプラグ電極15cの上方及びその周辺の領域にそれぞれキャパシタ平面形状のレジストパターン26を形成する。
その後に、図1Kに示すように、レジストパターン26をマスクに使用してTiN膜25a及びシリコン酸化膜25bをエッチングすることにより、レジストパターン26の下にハードマスク25を形成する。
シリコン酸化膜25bをエッチングする装置として、例えば高周波側電極と低周波側電極を対向させる平行平板型の2周波エッチング装置を用いる。そのエッチング条件として、例えば、真空度を35mTorr(約4.7Pa)に設定し、高周波電極に周波数27.12NHzで2500Wのパワーを印加し、低周波電極に周波数800kHzで1250Wのパワーを印加し、さらに、フロンガスの一種であるC4F8(オクタフルオロシクロブテン)ガスを15ml/分の流量で、Ar(アルゴン)ガスを370ml/分の流量で、CF4(四フッ化メタン)ガスを45ml/分の流量でそれぞれチャンバーに導入し、低周波電極側のウェーハステージ温度を20℃に設定する。
続いて、レジストパターン26をアッシング等により除去し、必要に応じてウェット処理を行った後に、パターニングされたシリコン酸化膜25bをマスクに使用してTiN膜25aをエッチングする。
TiN膜25aをエッチングする装置として、例えば誘導結合型プラズマエッチング装置を用いる。そのエッチング条件として、BCl3(三塩化ホウ素)ガスを40ml/分の流量で、Cl2(塩素)ガスを60ml/分の流量でそれぞれチャンバーに導入し、さらに、プラズマ発生用ソースパワーを周波数13.56MHzで800Wに設定し、ウェーハ側のバイアスパワーを周波数400kHzで200Wに設定し、チャンバー内の真空度を0.7Paに設定し、ウェーハステージ温度を25℃に設定する。
なお、ハードマスク25は、上記の構造に限られるものではなく、チタン、アルミニウムの少なくとも一方の金属又は合金からなる膜を含んでもよく、さらに上記のようにシリコン酸化物を含む材料から構成してもよい。
次に、ハードマスク25に覆われない領域の多層膜をエッチングして強誘電体キャパシタを形成する。そのエッチングとして、例えば図3A、図3Bに示すような高温エッチング装置51を用いて図2に示すフローチャートに従って少なくとも2ステップでなされる。
高温エッチング装置51は、少なくとも天板52が絶縁材よりなるチャンバー53と、チャンバー53に接続されるガス導入管54と、チャンバー53内でウェーハ50を搭載するウェーハステージ55と、ウェーハステージ55内に配置された平板電極56と、平板電極56に接続されてバイアス電圧を印加するためのバイアス高周波電源57と、チャンバー53内でウェーハステージ55の周囲に配置される排気流路58と、チャンバー53の天井52の上方に配置されるコイル状の誘導結合アンテナ59と、誘導結合アンテナ59に接続される高周波電源60を有している。ウェーハステージ55は、温度調整が可能であり、例えば300℃〜500℃の範囲に調整される。
チャンバー53内において、外方に誘導結合アンテナ59が配置された領域はプラズマ生成領域となり、プラズマ生成領域とウェーハステージ55の間は処置領域となる。
ガス導入管54には、ガス供給装置(不図示)が接続され、また、排気流路58には、チャンバー53内を減圧するための排気装置(不図示)が接続される。
ウェーハ50は、例えば図1K〜図1Mに示すと同様な層構造を有するシリコン基板1であり、以下の実施形態でも同様である。
高温エッチング装置51を使用するパターニング方法として、まず、図1Kに示した構造のウェーハ50をチャンバー53内に搬送した後に(図2のI)、第1ステップとして、図1Lに示すように貴金属膜22から下部電極膜18までの膜をエッチングしてキャパシタ形状40を形成する(図2のII)。第1ステップのエッチングは、キャパシタ形状40の底面に対するその側壁の傾斜角θ1が例えば60度〜70度と比較的緩くなる条件とする。
第1ステップにおける上部電極膜24、強誘電体膜19及び下部電極膜18のそれぞれのエッチングは例えば次のような条件に設定される。
上部電極膜24のエッチング条件として、例えば、チャンバー53内の真空度を0.5Paに設定し、13.56MHzの高周波電源60から誘導結合アンテナ59に印加するパワーを1400Wに設定し、400kHzのバイアス高周波電源57から平板電極56に印加するパワーを1300Wに設定する。また、酸素(O2)とC4F8とHBr(臭化水素)をそれぞれ48ml/分、4ml/分、12ml/分の流量でガス導入管54を通してチャンバー53内に導入する。
この場合、光学的な終点検出器を使用して、強誘電体膜19が露出するジャストポイントに達するまで上部電極膜24をエッチングしてから、さらに同じ時間、即ち100%のオーバーエッチングをする。
強誘電体膜19のエッチング条件として、例えば、チャンバー53内の真空度を0.5Paに設定し、13.56MHzの高周波電源60から誘導結合アンテナ59に印加するパワーを1400Wに設定し、400kHzのバイアス高周波電源57から平板電極56に印加するパワーを1300Wに設定する。また、Cl2とArをそれぞれ40ml/分、10ml/分の流量でガス導入管54を通してチャンバー53内に導入する。
この場合、光学的な終点検出器を使用して下部電極膜18が露出するジャストポイントに達するまで強誘電体膜19をエッチングしてから、さらに時間的に10%余分にオーバーエッチングをする。
下部電極膜18のエッチング条件として、例えば、チャンバー53内の真空度を0.5Paに設定し、13.56MHzの高周波電源60から誘導結合アンテナ59に印加するパワーを1400Wに設定し、400kHzのバイアス高周波電源57から平板電極56に印加するパワーを1300Wに設定する。また、O2とC4F8とHBrをそれぞれ48ml/分、4ml/分、12ml/分の流量でガス導入管54を通してチャンバー53内に導入する。
この場合にも、光学的な終点検出器を使用して導電性酸素バリア膜17が露出するジャストポイントに達するまで下部電極膜18をジャストエッチングした時点で、原則的にエッチングを停止する。
なお、下部電極膜18のジャストエッチング状態からさらにオーバーエッチングを進めてもよい。そのオーバーエッチングの量は、キャパシタ材料膜の膜厚分布、エッチングレートの分布を考慮して決められ、その量は例えば下部電極膜18のエッチング時間の数十%以下のように最低限の水準とする。
そのような第1ステップのエッチングでは、貴金属を含む導電性の副生成物41が発生して図1Lに示すようにキャパシタ形状40の側壁に付着する。さらに、副生成物41がチャンバー53内壁とウェーハステージ55周縁に付着する一方で、チャンバー53内壁とウェーハステージ55上に付着した副生成物41がエッチングされてウェーハ50上に再付着する。これにより、キャパシタ形状40の側壁に付着する副生成物41は厚くなる。
この後に、ウェーハ50をチャンバー53の外部に一旦取り出す(図2のIII)。エッチング対象となるウェーハ50が例えばウェーハカセット(不図示)内に複数収納される場合には、複数のウェーハ50はそれぞれ同じチャンバー53内で連続して次々と第1ステップのエッチングが行われる。
第1ステップのエッチングの後には、図3Aに示すように、高温エッチング装置51のチャンバー53内面にはエッチングにより発生した導電性の副生成物41が多量に付着している。そこで、エッチングの第2ステップの前にチャンバー53内をクリーニングする(図2のIV)。
チャンバー53内のクリーニング方法として、チャンバー53内にウェーハ50を収納しない状態で、例えば、ガス導入管54からチャンバー53内にSF6(六フッ化硫黄)ガス、その他のフッ化物ガスを600ml/分の流量で導入するとともに、チャンバー53内の真空度を5Pa、13.56MHzの高周波電源60から誘導結合アンテナ59に印加するパワーを2500Wに設定し、バイアス高周波電源57から平板電極56に印加するパワーを0Wに設定し、この条件で約30分間のクリーニング処理を行う。
これにより、チャンバー53内の導電性の副生成物41は蒸気圧の高いフッ化物となってチャンバー53内壁及びウェーハステージ55周縁などから剥離し、さらに排気流路58を通してチャンバー53外部に排出される。これにより、チャンバー53、ウェーハステージ55等が清浄になる。
チャンバー53のクリーニングの際に、ウェーハ50は、キャパシタ形状40の構成元素やその側壁の副生成物41が反応しない雰囲気、例えば水、水素の含有量が極めて少ない雰囲気に一時的に保管される。ウェーハ50の保管場所としてロードロックチャンバーを用いてもよい。
次に、図3Bに示すようにクリーニングされたチャンバー53内のウェーハステージ55上にウェーハ50を戻し(図2のV)、その後にエッチングの第2ステップとしてキャパシタ形状40をオーバーエッチングする(図2のVI、VII)。なお、オーバーエッチング量の最適値については、図6を参照して後述する。
第2のステップでは、図1Mに示すように、キャパシタ形状40の底面に対するその側壁の傾斜角θ2がオーバーエッチング前の角度θ1より大きく、例えば70度以上、90度以下の範囲まで大きくなるエッチング条件に設定される。
第2ステップのエッチング条件は、例えば、チャンバー53内の真空度を0.5Paに設定し、13.56MHzの高周波電源60から誘導結合アンテナ59に印加するパワーを1400Wに設定し、400kHzのバイアス高周波電源57から平板電極56に印加するパワーを1300Wに設定する。また、O2ガスとC4F8ガスとHBrガスをそれぞれ48ml/分、4ml/分、12ml/分の流量でガス導入管54を通してチャンバー53内に導入する。そして、エッチング時間を例えば約120秒とする。
このように、O2が適度に添加されたガスを使用する第2ステップのエッチングによれば、窒化チタン膜及び窒化チタンアルミニウム膜等のエッチング速度を極めて低くするか或いはエッチングを停止することができる。例えば、Ir膜のエッチングレートが約320nm/分であるのに対して、窒化チタンアルミニウムのエッチングレートは約50nm/分と小さい。
従って、TiNから構成されるハードマスク25と、その下方のTiAlNの酸素バリア膜17とTiN膜16のオーバーエッチングの時間が長くなっても膜厚の減量は小さく、それらの間に挟まれる強誘電体膜19等のサイドエッチングレートも比較的小さくなる。これにより、キャパシタ形状40の側壁のエッチング制御は容易になる。
そのようなオーバーエッチングの前と後で生じる大きな変化は、キャパシタ形状40の側壁の裾部が低エッチングレートで削ぎ落とされて急峻な角度θ2、例えば70度〜90度、好ましくは75度〜90度に大きくなる。この場合、ハードマスク25のエッチングレートは小さいが、キャパシタ形状40の側壁に付着した副生成物41のイオン照射による削ぎ落とし効果は良好に現れる。
しかも、エッチングの第2ステップにおいて、チャンバー53の内部全体もイオン照射を受けるが、既にチャンバー53内壁やウェーハステージ55の周縁部などは既に清浄化されているので、キャパシタ形状40への副生成物の再付着は殆ど生じないし、再付着が生じてもオーバーエッチングにより容易に削ぎ落とされる程度の量である。
また、キャパシタ形状40の側面に副生成物が再付着するとしても、上記したようにその量は極めて微量であるので、その副生成物によるリーク電流への影響は少ない。しかし、同じチャンバー53内での第2ステップのエッチングの処理枚数が加算されるにつれて副生成物の再付着がリーク電流に影響を及ぼすような場合には、チャンバー53内を再びクリーニング処理してもよい。
なお、上部電極膜24、下部電極膜18のエッチングの際とキャパシタ形状40の側壁のオーバーエッチングの際には、C4F8を使用したが、その他のフッ化物ガス、例えばフロンガスを使用してもよい。
以上のようなエッチングの第2ステップを終えた後に、ウェーハ50をチャンバー53から外部に取り出す(図2のVIII)。
次に、パターニングされた下部電極膜18から露出した領域の導電性酸素バリア膜17及びTiN膜16とともにハードマスク25を同時にエッチングして除去する。そのエッチングは、例えば高温エッチング装置内において行われ、キャパシタQの側壁での生成物の付着を抑制する条件で行われる。
エッチング条件として、例えば、真空度を0.5Pa、ICPコイルパワーを1400W、バイアスパワーを300W、ウェーハステージ温度を400℃に設定するとともに、Cl2を40ml/分、Alを10ml/分の流量で導入する。
なお、キャパシタQの側壁での生成物付着を制御できれば、常温エッチング装置を用いてハードマスク25等をエッチングしてもよい。また、ハードマスク25をドライエッチングした後に、過酸化水素水とアンモニア水との混合液を用いて完全に除去してもよい。
これにより、キャパシタ形状40は、図1Nに示すようなスタック型の強誘電体キャパシタQとなる。
ここで、TiN膜16、酸素バリア膜17及び下部電極膜18は、強誘電体キャパシタQの下部電極27を構成し、強誘電体膜19は強誘電体キャパシタQのキャパシタ誘電体膜となり、また、第1及び第2の酸化イリジウム膜20,21及び貴金属膜22は強誘電体キャパシタQの上部電極28を構成する。そして、第1の層間絶縁膜12内の第1のプラグ電極15aと第3のプラグ電極15cの上端にはそれぞれ強誘電体キャパシタQの下部電極27が接続される。
なお、TiN膜16、酸素バリア膜17はプラグ電極15a,15cの酸化を防止するための膜であり、強誘電体キャパシタは、貴金属膜22から下部電極膜18までの多層構造によって実質的に構成される。
次に、図1Oに示すように、強誘電体キャパシタQの表面と第1の層間絶縁膜12の上に、ステップカバレッジが良好な条件でキャパシタ絶縁性保護膜29としてアルミニウム酸化物(ALO)膜を形成する。続いて、酸素雰囲気内でキャパシタ絶縁性保護膜29をアニールする。なお、ALO膜は二層で構成してもよい。
次に、図1Pに示すように、キャパシタ絶縁性保護膜29上に第2の層間絶縁膜30を順に形成する。
第2の層間絶縁膜30として、例えばTEOSを用いたプラズマCVD法によりシリコン酸化膜を1500nm〜2500nm程度の厚さに成長した後に、第2の層間絶縁膜30の上面をCMP法により研磨する。第2の層間絶縁膜30におけるCMP処理後の残存膜厚は、上部電極28の上で例えば300nm程度にされる。CMP処理の後には、第2の層間絶縁膜30の脱水を目的として、例えば、N2Oプラズマ雰囲気内で第2の層間絶縁膜30にアニール処理を施す。
その後に、図1Qに示すように、フォトリソグラフィー法によって第2の層間絶縁膜30及びキャパシタ絶縁性保護膜29をパターニングして、強誘電体キャパシタQの上部電極28の上面を露出させるビアホール30a、30cを形成する。
続いて、酸素雰囲気の炉内にシリコン基板1を置いて強誘電体キャパシタQの最後の回復アニールを行う。回復アニールの条件として、例えば、炉内温度を500℃程度に設定して、酸素雰囲気の炉内でのアニール時間を60分間程度とする。
次に、図1Rに示すように、フォトリソグラフィー法によって第2の層間絶縁膜30及びキャパシタ絶縁性保護膜29をパターニングして、第1のウェル2aの中央にある第2のプラグ電極15bの上面を露出させる第4のコンタクトホール30bを形成する。
さらに、図1Sに示すように、ビアホール30a、33c及び第4のコンタクトホール30bのそれぞれの内壁及び底面に、例えば、グルー膜31としてスパッタリング法により厚さ100nm程度のTiN膜を形成し、さらに、グルー膜31上には、ビアホール30a、30cと第4のコンタクトホール30bを埋め込む厚さのW膜32をCVD法により形成する。
その後に、W膜32とグルー膜31をCMP法により研磨して第2の層間絶縁膜30の上面を露出させる。これにより、ビアホール30a、30c内に残されたW膜32及びグルー膜31はビアプラグ電極33a、33cとなり、また、第4のコンタクトホール30b内に残されたW膜32及びグルー膜31は第4のプラグ電極33bとなる。
この段階で、第2のプラグ電極15bと第4のプラグ電極33bとによってvia−to−viaコンタクトが実現でき、それより上層に形成されるメタル配線からシリコン基板1へのコンタクトが達成される。
次に、図1Tに示すように、ビアプラグ電極33a、33cに接続される金属配線35a、35c、および第4のプラグ電極33bに接続される金属パッド35bを第2の層間絶縁膜30上に形成する。金属配線35a、35c及び金属パッド35bは、次の方法により形成される。
まず、ビアプラグ電極33a、33c、第4のプラグ電極33b及び第3の層間絶縁膜30の上に、例えばスパッタリング法により、厚さ60nm程度のTi膜と、厚さ30nm程度のTiN膜と、厚さ400nm程度のAlCu合金膜と、厚さ5nm程度のTi膜と、厚さ70nm程度のTiN膜を順に形成する。下側のTiN膜及びTi膜は下側グルー膜34aとなり、AlCu合金膜は主導電膜34bとなり、上側のTiN膜及びTi膜は上側グルー膜34cとなる。
続いて、フォトリソグラフィー技術を用いて、下側グルー膜34a、主導電膜34b及び上側グルー膜34cの積層膜を所定形状にパターニングすることにより、第2の層間絶縁膜30上に金属配線35a、35cと金属パッド35bを形成する。
次に、図1Uに示すように、第3の層間絶縁膜37として、金属配線35a、35c、金属パッド35b及び第2の層間絶縁膜30の上に、例えばTEOSを用いたプラズマCVD法によりシリコン酸化膜を成膜する。さらに、第3の層間絶縁膜37の上面をCMP法により平坦にする。
その後に、フォトリソグラフィー法により第3の層間絶縁膜37をパターニングして金属パッド35bの上に第5のコンタクトホール37aを形成する。その後に、第4のプラグ電極33bの形成と同様な方法により、第5のコンタクトホール37a内に第5のプラグ電極38を形成する。
さらに、第5のプラグ電極38の上端に接続されるビット線39を第3の層間絶縁膜36の上に形成する。ビット線39は、次の方法により形成される。
まず、第5のプラグ電極38及び第3の層間絶縁膜37の上に、例えばスパッタリング法により、Ti膜、TiN膜、AlCu合金膜、Ti膜、TiN膜を順に形成する。下側のTiN膜及びTi膜は下側グルー膜39aとなり、AlCu合金膜は主導電膜39bとなり、上側のTiN膜及びTi膜は上側グルー膜39cとなる。その後、上側グルー膜39c、主導電膜39b及び下側グルー膜39aをパターニングしてビット線39を形成する。
その後に、特に図示しないが、層間絶縁膜の形成、配線の形成等の諸工程を経て、本実施形態に係る強誘電体メモリが完成される。
上述した実施形態によれば、1つのチャンバー53内でのエッチングにより強誘電体キャパシタQを形成する工程において、第1ステップで、ハードマスク25を使用して貴金属膜22からTiN膜16までの複数の膜をその場で連続的にエッチングしてキャパシタ形状40を形成し、ついでチャンバー53内を清浄化した後に、第2ステップで、ハードマスク25に覆われているキャパシタ形状40をオーバーエッチングしている。
これにより、第1ステップにおいてキャパシタ形状40の側壁に付着した副生成物41は、第2ステップのオーバーエッチングにより除去される。しかも、第2ステップのエッチングにおいて副生成物の発生が抑制されるので、強誘電体キャパシタQの側壁において副生成物を介したリーク電流の流れが防止される。
次に、本発明の実施形態による強誘電体キャパシタのパターニング方法と、リファレンスのパターニング方法を比較して説明する。
リファレンスのパターニング方法は、図4Aに示すように、ハードマスク25から露出した領域の上部電極膜24から下部電極膜18までをエッチングしてキャパシタ形状40Aを形成した後に、その場所で連続してキャパシタ形状40Aをオーバーエッチングする方法である。この場合、シリコン基板1(ウェーハ50)をチャンバー53から取り出さず且つ下部電極膜18のエッチング後にチャンバー53内をクリーニング処理しないこと以外は、本実施形態と同じエッチング条件となっている。
そのようなリファレンスのパターニング方法により第1、第2の試料を形成し、また、本発明の実施形態のパターニング方法によって第3及び第4の試料を形成した。
第1、第3の試料は、周辺長が300μmに形成された1つの強誘電体キャパシタを有している。また、第2、第4の試料は、総周辺長が7400μmとされる複数の強誘電体キャパシタを電気的に並列に接続して構成されている。また、第1、第3の試料における強誘電体キャパシタの平面の面積と、第2、第4の試料における複数の強誘電体キャパシタの平面の総面積は、実質的に同じである。
これにより、第1、第2、第3及び第4の試料のそれぞれの設計上のキャパシタ総容量は実質的に同一になるが、第2、第4の試料は、第1、第3試料に比べて、強誘電体キャパシタ側壁上の副生成物の影響を敏感に受けることになる。
なお、第1、第2の試料をそれぞれ構成する強誘電体キャパシタは同じシリコン基板1の上に同時に形成され、また、第3、第4の試料は、同じシリコン基板1の上に同時に形成されている。ただし、本発明の実施形態とリファレンス方法では異なるシリコン基板が使用される。
第1、第2、第3及び第4の試料をそれぞれ複数個形成し、各試料について強誘電体キャパシタのリーク電流の大きさを測定したところ以下のような結果が得られた。
リファレンスのパターニング方法において、図4Bに示すように、オーバーエッチングされた強誘電体キャパシタの側壁の傾斜角θは、図4Aに示すオーバーエッチング前の傾斜角度θ1よりも増し、さらに75度〜80度を超えた状態からキャパシタ形状40Aの側壁にイオンが照射され難くなり、側壁での副生成物41の削ぎ落とし効果が弱くなる。
しかも、図3Aに示したようにチャンバー53内壁に付着した副生成物41は、オーバーエッチング用に発生させるプラズマによって剥離し、さらに強誘電体キャパシタQ1の側壁に再付着する。副生成物41の多くは導電性である。
特に、ICP型の高温エッチング装置51においては、誘導結合アンテナ59とプラズマとの容量結合成分により、誘導結合アンテナ59直下にあるウェーハステージ55の周縁部上の副生成物41がスパッタエッチングされて強誘電体キャパシタQ1の側壁に再付着し易くなる。
従って、チャンバー53内壁に多くの副生成物41が付着した状態のままでオーバーエッチングを続けると、図4Bに示すように、強誘電体キャパシタQ1の側壁から副生成物41が除去されにくくなる。副生成物41の再付着量が多くなると、強誘電体キャパシタQ1のリーク電流が大きくなる原因となる。
そのようなリファレンスのパターニング方法により形成された第1の試料内と第2の試料内のそれぞれの強誘電体キャパシタについて、キャパシタリーク電流とオーバーエッチング量の関係について本発明者が調査したところ図5に示す結果が得られた。
図5において、横軸はオーバーエッチング量を比例目盛で示し、縦軸はリーク電流を対数目盛で示している。オーバーエッチング量は、実際にはエッチング時間で管理され、下部電極膜18をパターニングするためのエッチング時間を基準として百分率で示されている。また、キャパシタリーク電流は、第1、第2の試料における強誘電体キャパシタの上部電極膜と下部電極膜の間に3Vを印加した場合の値である。
図5によれば、オーバーエッチング量を100%とした場合のリーク電流は、1A/cm2以上のオーバーレンジとなった。この場合、第1の試料、第2の試料のそれぞれの強誘電体キャパシタの側壁で導電性の副生成物が殆ど削ぎ落とされず、この状態でのリーク電流は非常に大きいことを示している。
また、図5において、オーバーエッチング量を100%から300%まで増加させるにつれて、第1の試料では、リーク電流が10-3A/cm2以下まで減少し、300%又はその付近でキャパシタリーク電流が極小値、又は最小領域となり。また、第2の試料では、オーバーエッチング量を100%から300%まで増加させるにつれてリーク電流が10-3A/cm2台以下まで減少し、300%又はその付近でキャパシタリーク電流が極小値又は最小値領域となる。
リーク電流の減少は、オーバーエッチングによる強誘電体キャパシタ側壁上の副生成物の削ぎ落とし効果によるものであると考えられる。
さらに、オーバーエッチング量を300%から増加させるにつれて、第1、第2の試料の双方ともにリーク電流が増加し始める。これは、強誘電体キャパシタの側壁の角度が大きくなってエッチングによる副生成物の削ぎ落とし効果が低下する一方、それらの側壁に副生成物が再付着するからである。
また、図5によれば、オーバーエッチング量とリーク電流の関係を示す曲線は略V字状又は逆放物線状となり、リーク電流に最小値又は最小値領域が存在することから、予め調査しておいたデータに基づいて、最もリーク電流が最小となるエッチング量を設定することが好ましいことがわかる。しかし、最適なオーバーエッチング量は極めて狭い範囲にある。
これに対し、本実施形態のパターニング方法より形成された第3及び第4の試料のキャパシタリーク電流とオーバーエッチング量の関係を調べたところ、図6に示すような結果となった。
図6において、横軸はオーバーエッチングを比例目盛で示し、縦軸はキャパシタリーク電流を対数目盛で示している。オーバーエッチングは、図5と同様に、下部電極膜18のエッチング時間を基準とした百分率の時間で示されている。また、キャパシタリーク電流は、第3、第4の試料のそれぞれの強誘電体キャパシタの上部電極と下部電極の間に3Vを印加した場合の値である。
図6によれば、周辺長300μmの第3の試料については、オーバーエッチング量とキャパシタリーク電流の関係を示す特性は略V字状には変化せず、オーバーエッチング量を増やすにつれてキャパシタリーク電流が減少し、400%以上ではリーク電流はほぼ一定となった。また、総周辺長7400μmの第4の試料については、オーバーエッチング量を増やすにつれてリーク電流が減少し、600%以上ではキャパシタリーク電流はほぼ一定となった。
これは、オーバーエッチング量を増やしていくと、図1Mに示すように強誘電体キャパシタQ側壁の角度θ2が徐々に高くなってエッチングによる削ぎ落とし効果が現れるからである。しかも、クリーニングされたチャンバー53内において、オーバーエッチングにより強誘電体キャパシタQ側壁から発生する副生成物は少なく、その副生成物がチャンバー53内壁に付着したとしても極めて僅かであってウェーハ50上に再付着するまでには殆ど至らない。
図6に示すような結果により、最適なオーバーエッチング量(オーバーエッチング時間)は次のような方法により決定される。
まず、測定データに基づいてキャパシタのリーク電流とオーバーエッチング量の関係を示す特性を例えば図6の破線又は実線のように求める。その特性は、大きく分けて2つの範囲を有し、第1の領域は、オーバーエッチング量が0%から増加するにつれてリーク電流が大きく減少する範囲であり、第2の領域は、オーバーエッチング量の増加に対してリーク電流の変化が第1の領域の変化より小さい範囲である。
従って、オーバーエッチング量は、その特性における第2の範囲内で設定することが好ましいことになる。しかし、特性線の第1の範囲内において最大限許容できるリーク電流の望ましい所定値があれば、その所定値を得るオーバーエッチング量以上の量(時間)でキャパシタ形状40の側壁をオーバーエッチングしても、リーク電流が小さいキャパシタを形成することが可能である。
例えば、図6の実線で示す特性線において、最大限許容できるリーク電流を1×10-3A/cm2とし、そのリーク電流が得られるオーバーエッチング量を560%と判定した後に、560%以上でキャパシタ形状40の側壁をオーバーエッチングする。これにより強誘電体キャパシタQのリーク電流は、1×10-3A/cm2以下に抑制することができると推測できる。
従って、クリーニングされたチャンバー53内でキャパシタ形状40の側壁をオーバーエッチングすると、キャパシタ形状40側壁での副生成物の再付着を防止することができて、キャパシタ特性を良好にすることができる。
ところで、図6を図5と比較すると、同じ値のキャパシタリーク電流を得るためのオーバーエッチング量が相違している。これは、オーバーエッチング開始直前のキャパシタ形状の側壁での副生成物の厚みが異なっているからである。
強誘電体キャパシタ側壁での副生成物の付着量は、上部電極膜24から下部電極膜18をエッチングする際のチャンバー53内壁での副生成物41の付着量の違いによって異なり、また、チャンバー53内壁での副生成物41の付着量はその中で処理したウェーハ枚数の違いによっても異なる。
しかし、本実施形態におけるエッチングの第2ステップでは、副生成物がチャンバー53内壁に存在しないか、存在したとしても第1ステップのチャンバー53に比べて極めて少ないので、第2ステップでキャパシタ形状40側壁の副生成物を削ぎ落とした後のリーク電流はオーバーエッチング前の副生成物付着量の多少に関わらず殆ど同じになる。
ところで、図6によれば、第1ステップの終了時での強誘電体キャパシタ側壁上の副生成物の付着量と第2ステップにおけるオーバーエッチング量との関係、或いは、第1ステップ終了時での強誘電体キャパシタ内壁の傾斜角と第2ステップにおけるオーバーエッチング量との関係、或いは、第1ステップでのウェーハ処理枚数と強誘電体キャパシタ側壁上の副生成物の付着量の関係などを調査してデータとして蓄えることによって、オーバーエッチングの最適量を決定してもよい。
そのようなデータに基づいて必要以上のオーバーエッチングを抑制すれば、第2ステップのエッチングにおける新たな副生成物の発生が抑制されるので、チャンバー内壁の副生成物の付着量をさらに少なくすることができる。
なお、図6において第3の試料と第4の試料の特性を比較すると、キャパシタ周辺長が短いほどキャパシタリーク電流が小さくなるので、同じ面積であっても強誘電体キャパシタの周辺長が短くなるように設計することが好ましい。
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造工程のうち強誘電体キャパシタのパターニングに使用されるエッチング装置を示す構成図である。また、図8は、本発明の第2実施形態の半導体装置の製造工程のうち強誘電体キャパシタのパターニングを示すフローチャートである。
図7において、真空搬送装置61には、例えば図3A、図3Bに示したと同様な構造を有する第1、第2のエッチング装置62,63と、ウェーハ50を外部から搬入する第1のロードロック(L/L)チャンバー64と、ウェーハ50を外部に搬出する第2のロードロックチャンバー65とを有している。
真空搬送室61内には、ウェーハ50を搬送するロボット66が取り付けられ、さらに、第1、第2のロードロックチャンバー64,65の外側にはそれぞれシャッタ67a,67bが取り付けられている。また、真空搬送装置61のうち第1、第2のエッチング装置62,63、第1及び第2のロードロックチャンバー64,65との接続部分には、必要に応じて開閉されるシャッタ67c〜67fが取り付けられている。
さらに、第1のロードロックチャンバー64と第2のロードロックチャンバー65にはウェーハカセット68、69が配置されている。
第1、第2のエッチング装置62,63において、初期の状態では図3Bに示したと同様にチャンバー53内はクリーニング処理により清浄化されている。
第1のロードロックチャンバー64内に収納されたウェーハ50は、ロボット66の操作により第1のロードロックチャンバー64内から真空搬送装置61を介して第1のエッチング装置62に搬送される(図8のI)。
第1のエッチング装置62に搬送されるウェーハ50は、第1実施形態で示した方法により形成された図1Kに示すと同様な構造を有している。そして、第1のエッチング装置62では、図1Lに示したと同様に、ハードマスク25に覆われない領域の貴金属膜22からTiN膜16までを第1ステップの条件でエッチングすることによりキャパシタ形状40を形成する(図8のII)。この場所では、原則としてキャパシタ形状40をオーバーエッチングしないように制御される。
第1ステップのエッチング後の第1のエッチング装置62のチャンバーは、図3Aのチャンバー53と同様に内壁に副生成物が付着した状態となる。
第1ステップのエッチングを終えたウェーハ50は、ロボット66の操作によって第1のエッチング装置62から取り出され、真空搬送装置61を通して第2のエッチング装置63内に搬送される(図8のIII、IV)。そして、第2のエッチング装置63では、図1Mに示したと同様に、ハードマスク25が被覆されたキャパシタ形状40を第2ステップの条件でオーバーエッチングする(図8のV)。これにより、側壁から副生成物が除去された強誘電体キャパシタQが形成される。
第1、第2ステップの条件は、それぞれ第1実施形態と同様に設定される。
第1、第2のエッチング装置62,63のそれぞれのチャンバー内ではエッチングにより副生成物が発生するが、第2のエッチング装置63内で発生する副生成物の量は第1のエッチング装置62内で発生する量よりも極めて少ない。これにより、第2のエッチング装置63内でキャパシタ形状40の側壁に副生成物は付着せず、付着してもキャパシタ特性に殆ど影響を与えない程度である。
即ち、第2のエッチング装置63では、例えば第1実施形態において清浄化されたと同様の図3Bに示す状態のチャンバー53を有することになり、オーバーエッチング量とリーク電流の関係も図6とほぼ同様になる。
第2のエッチング装置63において第2ステップのエッチングを終えたウェーハ50は、ロボット66の操作によって第2のエッチング装置63から真空搬送装置51に取り出された後(図8のVI)、第2のロードロックチャンバー65内のウェーハカセット69に収納される。
以上のような一連の処理をウェーハ50毎に順次施し、最後のウェーハ50が収納されたウェーハカセット69を第2のロードロックチャンバー65から外部に搬出する。
その後に、第1実施形態と同様な方法により、強誘電体キャパシタQからハードマスク25を除去した後に、図1Pに示したと同様にキャパシタ絶縁性保護膜29により強誘電体キャパシタQを覆い、さらにキャパシタ絶縁性保護膜29上に第2の層間絶縁膜を形成する。その後の工程は、第1実施形態と同様である。
以上のように、複数のエッチング装置62,63の使用により形成された強誘電体キャパシタQは、その側壁において副生成物を介したリーク電流が抑制され、良好なキャパシタ特性となる。
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造工程のうち強誘電体キャパシタのパターニングを示すフローチャートである。
まず、第1実施形態と同様に、図1Kに示すと同様な構造のウェーハ50を形成し、これを図3Aに示すエッチング装置51のチャンバー53内に入れる。そして、ハードマスク25に覆われない領域の貴金属膜22からTiN膜16までを第1ステップの条件でエッチングする(図9のI、II)。
エッチングの第1ステップにおける上部電極膜24、強誘電体膜19及び下部電極膜18のそれぞれのエッチング条件は例えば次のように設定される。
上部電極膜24のエッチング条件として、例えば、チャンバー53内の真空度を0.5Paに設定し、13.56MHzの高周波電源60から誘導結合アンテナ59に印加するパワーを1400Wに設定し、400kHzのバイアス高周波電源57から平板電極56に印加するパワーを1300Wに設定する。また、O2とC4F8とHBrをそれぞれ48ml/分、4ml/分、12ml/分の流量でガス導入管54を通してチャンバー53内に導入する。
この場合、光学的な終点検出器を使用し、上部電極膜24のエッチングが終了して強誘電体膜19が露出するジャストエッチングに達した時点から、さらに上部電極膜24のエッチング時間を基準にして100%の時間でオーバーエッチングをする。
強誘電体膜19のエッチング条件として、例えば、チャンバー53内の真空度を0.5Paに設定し、13.56MHzの高周波電源60から誘導結合アンテナ59に印加するパワーを1400Wに設定し、400kHzのバイアス高周波電源57から平板電極56に印加するパワーを1300Wに設定する。また、Cl2とArをそれぞれ40ml/分、10ml/分の流量でガス導入管54を通してチャンバー53内に導入する。
この場合、光学的な終点検出器を使用し、強誘電体膜19のエッチングが終了して下部電極膜18が露出するジャストエッチングに達した時点から、さらに下部電極膜18のエッチング時間を基準にして時間的に10%のオーバーエッチングをする。
下部電極膜18のエッチング条件として、例えば、チャンバー53内の真空度を0.5Paに設定し、13.56MHzの高周波電源60から誘導結合アンテナ59に印加するパワーを1400Wに設定し、400kHzのバイアス高周波電源57から平板電極56に印加するパワーを1300Wに設定する。また、O2とC4F8とHBrをそれぞれ48ml/分、4ml/分、12ml/分の流量でガス導入管54を通してチャンバー53内に導入する。
この場合、光学的な終点検出器を使用し、下部電極膜18のエッチングが終了して第1の層間絶縁膜12が露出するジャストエッチングに達した時点で、原則的にエッチングを停止する。これにより、上部電極膜24、強誘電体膜19及び下部電極膜18がパターニングされて図1Lに示したと同様なキャパシタ形状40が形成される。
なお、下部電極膜18をエッチングする際に、キャパシタ形状40を除く領域で下部電極膜18を第1の層間絶縁膜12からさらに除去する場合には、第1実施形態と同様に、ジャストエッチング状態からさらにオーバーエッチングを進めてもよい。
第1ステップのエッチングによれば、エッチング時に導電性の副生成物が発生し、その副生成物41がキャパシタ形状40の側壁とチャンバー53の内壁に多く付着する。
この後に、ウェーハ50をチャンバー53の外部に一旦取り出す(図9のIII)。
さらに、第1実施形態と同様な方法によりチャンバー53内を清浄化するか、又は、第2実施形態と同様に内部が清浄なチャンバーを有する別のエッチング装置を用意する。そして、そのように内部が清浄なチャンバー、例えば図3Bに示したチャンバー53内のウェーハステージ55上にウェーハ50を載置する(図9のIV)。
その後、エッチングの第2ステップとしてキャパシタ形状40をオーバーエッチングして副生成物41を除去し且つ最終的な形状にする(図9のV)。
第2ステップのエッチング条件は、例えば、チャンバー53内の真空度を0.5Paに設定し、13.56MHzの高周波電源60から誘導結合アンテナ59に印加するパワーを1400Wに設定し、400kHzのバイアス高周波電源57から平板電極56に印加するパワーを1300Wに設定する。また、O2とC4F8とHBrをそれぞれ48ml/分、2ml/分、12ml/分の流量でガス導入管24を通してチャンバー内に導入する。この場合のオーバーエッチング量は、図6に示すような特性に基づいた最適な時間とする。
第2ステップでは、チャンバー53内のC4F8の導入量は、第1のステップよりも少なくなるように調整される。
そのような第2ステップのエッチング条件によれば、キャパシタ形状40の側壁に付着した副生成物61は、図1Mに示すと同様にイオン照射により削ぎ落とされる。この場合、キャパシタ形状40の側面が僅かにエッチングされて副生成物が発生するが、その量は上部電極膜24から下部電極膜18までのエッチングにより生じる量に比べて極めて微量であるので、その副生成物がキャパシタ形状40の側壁に実質的に再付着しないか、付着しても許容できる程度の量であってキャパシタ特性に与える影響は少ない。
以上のような第2ステップのエッチングを終えた後に、チャンバー53からウェーハ50を取り出す(図9のVI)。その後に、第1実施形態と同様な条件によって、ハードマスク25等を除去する。
これにより露出したキャパシタ形状40は、図1Nに示したと同様にスタック型の強誘電体キャパシタQとなる。
その後に、第1実施形態と同様な条件により、図1Pに示したと同様にキャパシタ絶縁性保護膜29により強誘電体キャパシタQを覆い、さらにキャパシタ絶縁性保護膜29の上に第2の層間絶縁膜30を形成する。その後の工程は、第1実施形態と同様である。
ところで、本実施形態においては、第1ステップでの上部電極24及び下部電極膜18のエッチング時と第2ステップでのオーバーエッチング時には、いずれもチャンバー53内にC4F8を導入しているが、C4F8のガス流量は第1ステップより第2ステップの方が少なくなるように制御されている。これは、以下の理由によるものである。
第2ステップのオーバーエッチングの際にチャンバー53内に導入されるC4F8ガス流量と強誘電体キャパシタQのスイッチング容量Qswとの関係を調査したところ、図10に示すような相関があった。
C4F8は波長320.5nmのCF2の発光スペクトル強度で示されるので、CF2の発光スペクトル強度の測定によりチャンバー53内でのC4F8の量を知ることができ、図10では、CF2の発光スペクトル強度はチャンバー53内でのC4F8の量を示している。
図10において、CF2のピーク強度が例えば300カウントよりも大きくなるほどスイッチング容量Qswは小さくなり、300カウント以下の場合にはスイッチング容量Qswはほぼ同じになっている。
チャンバー53内のプラズマにフッ素を導入することにより金属の反応が促進されるが、C4F8を過剰に添加すれば金属酸化物である強誘電体膜19がフッ素と反応して劣化するから、と考えられる。
そこで、クリーニングされたチャンバー53内の第2ステップのエッチングで導入されるC4F8のガス流量を第1ステップと同じ4cc/分に設定して、第2ステップの発光スペクトル強度を測定したところ、図11の細い実線に示すような結果が得られ、CF2を示す320.5nmの波長にピークが存在した。
これに対して、第2ステップで導入するC4F8のガス流量を第1ステップよりも少ない2cc/分に設定して、第2ステップの発光スペクトル強度を測定したところ、図11の太い実線に示すような結果が得られ、図11の細い実線に比べてCF2の発光スペクトル強度が小さくなり且つピークも生じなかった。
そのようなピークが現れる程度にC4F8をチャンバー53内に多く導入すると、強誘電体膜19を構成する金属酸化物、例えばPZTが側部からエッチングされて、図10に示したようにキャパシタ特性を劣化させる原因となる。
これに対して、ウェーハ50をクリーニングせずに、キャパシタ形状40のパターニングとその後のオーバーエッチングを連続させると、図11の破線に示すようにオーバーエッチングの前後でC4F8のガス流量を4cc/分と同じにしてもCF2の発光スペクトル強度は大きくならず、ピークも現れなかった。これは、図3Aに示したチャンバー53内壁の副生成物41がフッ素と反応することによりCF2が消費されるからであると考えられる。
以上のように、上部電極膜22から下部電極膜16までをエッチングする第1ステップと、清浄化されたチャンバー内でキャパシタ形状40をオーバーエッチングする第2ステップとにおいて、それぞれのエッチングガスにC4F8ガスを添加する場合に、第2ステップでのC4F8ガス流量を第1ステップのC4F8ガス流量よりも少なくすることによって強誘電体キャパシタQの特性劣化を防止することができる。
ところで、図10、図11におけるCF2の発光スペクトル強度は、エッチングガスにC4F8を添加する場合を示している。これと同じように、CF4、C5F8のような他のフロンガス、その他のフッ化物ガスをエッチングガスに添加する場合でも、フッ化物ガスについて第2ステップでの添加量を第1ステップでの添加量よりも少なくしてフロンによる強誘電体膜19への悪影響を低減することが可能である。換言すれば、エッチング雰囲気でのフッ素の導入量を第1ステップよりも第2ステップの方を少なくすることにより、強誘電体キャパシタの劣化が防止される。
なお、エッチングの第1ステップと第2ステップでそれぞれ使用するエッチング装置は、第2実施形態のように異なる装置であってもよい。
(第4の実施の形態)
図12A、図12Bは、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の製造工程のうちの強誘電体キャパシタの形成工程を示す断面図である。図13は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の製造工程のうち強誘電体キャパシタのパターニングを示すフローチャートである。なお、図12A、図12Bにおいて、図1A〜1Uと同じ符号は同じ要素を示している。
まず、キャパシタ形成のために、後述する方法によってキャパシタ形成時のオーバーエッチング量の最適値を予め求めておく(図13のI)。
そして、第1実施形態に示したと同じ方法によって図1Kに示したと同様な構造のウェーハ50を形成する。即ち、シリコン基板1の上方に第1の層間絶縁膜12を介してTiN膜16、導電性酸素バリア膜17、下部電極膜18、強誘電体膜19及び上部電極膜24を形成し、さらに上部電極膜24の上にハードマスク25を形成する。
さらに、ウェーハ50を例えば図14に示したエッチング装置51のチャンバー53内に入れる(図13のII)。その後に、チャンバー53内でハードマスク25に覆われない領域の上部電極膜24、強誘電体膜19及び下部電極膜18をエッチングすることにより、図12Aに示したように、ハードマスク25の下にキャパシタ形状40を形成する(図13のIII)。この場合、キャパシタ形状40の側壁には副生成物41が付着している。なお、図14において、図3A、図3Bと同じ符号は同じ要素を示している。
下部電極膜18をジャストエッチングした後に、ウェーハ50をチャンバー53から外部に取り出さずに、そのままの状態でキャパシタ形状40の側壁のオーバーエッチングを開始する(図13のIV)。
その後に、オーバーエッチング量が最適量(最適時間)に達した時点でオーバーエッチングを停止すると(図13のV)、図12Bに示すように、キャパシタ形状40の側壁では副生成物41を削ぎ落とした状態になり、側壁の角度θ2はオーバーエッチング前の角度θ1から大きくなる。
次にハードマスク25を除去すると、図1Nで示したと同様な構造の強誘電体キャパシタQが現れる。その後の半導体装置の製造工程は第1実施形態と同様である。
以上のようなキャパシタ形状40をパターニングするためのエッチングの条件は、例えば、第1実施形態に示したリファレンスのパターニング方法と同じ条件にしてもよい。
ところで、図13のIで示したオーバーエッチングの最適量は、次のような方法で決定される。
まず、強誘電体キャパシタについてのオーバーエッチング量とリーク電流の相関を示す図5に例示したような実験データを蓄積した後に、図15の実線又は一点鎖線に示すようなオーバーエッチング量とリーク電流の関係を示す特性線を求める。
図15の実線で例示した特性線は、オーバーエッチング量の増加にしたがってリーク電流の変化が略V字状になる。実線の特性線は、オーバーエッチング量の増加につれてリーク電流が急峻に減少する第1領域Iと、第1領域Iよりさらなるオーバーエッチング量の増加につれてリーク電流が急峻に増加する第2領域IIとに大きく分けられる。
第1領域Iでは、オーバーエッチングによるキャパシタの側壁の削ぎ落とし要素によりリーク電流が減少し、また、第2領域IIでは、チャンバー53からの副生成物の再付着によってリーク電流が増加すると考えられる。
ところで、第1実施形態で示した図5のリーク電流の極小値と図6のリーク電流の最小値を比較すると、リーク電流の極小値又は最小値は、1×10-3A/cm2以下とほぼ同程度になる。
従って、図15の実線の特性線においても、リーク電流が極小値又は最小値となるオーバーエッチング量をオーバーエッチングの最適量として求め、オーバーエッチングをその最適量で停止することにより、強誘電体キャパシタQの側壁での副生成物によるリーク電流を許容範囲に収めることが可能になる。実線の特性線に示したオーバーエッチング量の最適値を設定する場合には、設定誤差などを考慮して、許容範囲、例えば最適量に対して±50%の量の範囲を予め設定しておくことが好ましい。
図15の一転鎖線で示した特性線は、オーバーエッチング量の増加にしたがってリーク電流が略逆放物線状に変化している。一点鎖線の特性線は、実線の特性線と同様、オーバーエッチング量の増加につれてリーク電流が急峻に減少する第1領域IIIと、第1領域よりさらなるオーバーエッチング量の増加につれてリーク電流が急峻に増加する第2領域IVとに大きく分けられる。
図15の一点鎖線の特性線では、リーク電流が最小値又は最小領域となるオーバーエッチング量を最適値として求め、オーバーエッチングをその最適値で停止することにより、強誘電体キャパシタQの側壁での副生成物によるリーク電流を許容範囲に収めることが可能になる。
オーバーエッチング量の最適値は、破線の特性線において、リーク電流が最小値となるオーバーエッチング量に限定されるものではなく、設定誤差などを考慮した許容範囲、例えば最適量に対して±50%の量としてもよい。
以上のように本実施形態によれば、キャパシタのオーバーエッチング量とキャパシタのリーク電流の関係を示す特性線を実験データに基づいて作成し、リーク電流の最小値又は極小値となるオーバーエッチングの最適値を求めている。これにより、強誘電体キャパシタQのキャパシタ特性を良好にすることが可能になる。
ところで、初期状態でクリーニングされているチャンバー53内でのウェーハ50の処理順毎に図15に示すような特性線を予め調査し、その後に、チャンバー53の新たなクリーニング後の処理順に合わせてエッチング量の最適量を設定してもよい。
本発明は、上述の実施形態に詳細が記載されている。しかし、本発明の精神と範囲から逸脱しない様々な態様と変更があることは明らかである。例えば、ここに記載されているプロセスの詳細な順序や組み合わせは実例にすぎず、また、本発明は、異なる又は追加のプロセス、又は異なる組み合わせ若しくは順序で使用されてもよい。さらに、例えば、ある実施形態における各特徴は、他の実施形態における他の特徴と混合、適合させることもできる。特徴は、追加的に明白に、要求に応じて加えられたり或いは取り去られたりされるかもしれない。従って、本発明は、添付の特許請求項及びそれらの対応特許の観点を除いて限定されない。