[歩行型田植機の全体構成]
図1〜図4に基づいて歩行型田植機の全体構成について説明する。図1は、歩行型田植機の全体側面図であり、図2は、歩行型田植機の全体平面図である。図3は、歩行型田植機前部の側面図であり、図4は、歩行型田植機前部の平面図である。なお、図3及び図4においては、上部カバー24、下部カバー25等は省略する。
図1及び図2に示すように、走行機体1の前部に、歩行型田植機の動力源となるエンジンEが装備され、このエンジンEの左横外側にミッションケースMが連結されている。ミッションケースMはエンジンEの下側に延出され、この延出された部分の後部から走行伝動ケース2が延出されている。走行伝動ケース2には一つの車輪3が軸支され、エンジンEからの動力がミッションケースM及び走行伝動ケース2を介して車輪3に伝達されるように構成されている。
ミッションケースMの左右両側部から左右の伝動ケース4,5が後方に延出されており、この左の伝動ケース4の後端部に、左の横送り伝動ケース6を介して左の苗植付装置8が連動連結されており、右の伝動ケース5の後端部に、右の横送り伝動ケース7を介して右の苗植付装置9が連動連結されている。これにより、エンジンEからの動力がミッションケースM、左右の伝動ケース4,5、及び左右の横送り伝動ケース6,7を介して左右の苗植付け装置8,9に伝達されて、苗植付け装置8,9の回転により後述する苗載せ台18から所定量ずつ苗を圃場(田面)に植付けできるように構成されている。
図3及び図4に示すように、走行伝動ケース2には、走行伝動ケース2から上方に延出された前部ブラケット10が固定され、右の伝動ケース5には、右の伝動ケース5から左側方に延出された後部ブラケット11が固定されている。前部及び後部ブラケット10,11に亘って油圧単動式の昇降シリンダ12が装備されており、昇降シリンダ12におけるピストン部のチューブ側には、サスペンションバネとして機能する弾性バネ12aが内装されている。
昇降シリンダ12のロッド側の端部は、前部ブラケット10に左右方向の軸心周りで回動自在に支持され、昇降シリンダ12のチューブ側の端部が後部ブラケット11に左右方向に軸心周りで回動自在に支持されている。これにより、後述するミッションケースMに装備された油圧ポンプ162からの圧油を昇降シリンダ12に供給すると、走行伝動ケース2が左右方向の軸心P5周りに下方へ揺動して車輪3が走行機体1に対して下降し、走行機体1が上昇する。一方、昇降シリンダ12からの作動油を抜くと、走行伝動ケース2が左右方向の軸心P5周りに上方へ揺動して車輪3が走行機体1に対して上昇し、走行機体1が下降する。
図1及び図2に示すように、左の横送り伝動ケース6の後端部からパイプ状の左のハンドルフレーム13が延出されており、右の横送り伝動ケース7の後端部からパイプ状の右のハンドルフレーム14が延出されている。左右のハンドルフレーム13,14の後端部には、操縦ハンドル15が上下揺動可能に支持されている。操縦ハンドル15は、操縦ハンドル15の握り部15aが後方に向いた作業姿勢と、操縦ハンドル15の握り部15aが下方へ垂下し走行機体1側に格納された格納姿勢とに姿勢変更可能に構成されている。通常の苗植付け作業においては、操縦ハンドル15を作業姿勢に姿勢変更し、歩行型田植機の出荷時、運搬時、保管時等には、操縦ハンドル15を格納姿勢に姿勢変更することで、歩行型田植機の前後長を短縮して、操縦ハンドル15を走行機体1側にコンパクトに格納できる。
操縦ハンドル15の左右の握り部15aの近傍には、左右の操作レバー15bが左右に揺動操作可能に装備されている。左側の握り部15aには、油圧昇降用の操作レバー15bが装備されており、右側の握り部15aには、エンジンEのガバナ(図示せず)に連係されたエンジン回転数調整用の操作レバー15bが装備されている。
操縦ハンドル15の左右の握り部15aの下側には、左右のクラッチレバー15cが上下に揺動操作可能に装備されており、左側の握り部15aには、植付クラッチ64用のクラッチレバー15cが装備され、右側の握り部15aには、走行クラッチ137用のクラッチレバー15cが装備されている。左右のクラッチレバー15cには、クラッチレバー15cを上方に揺動操作した状態を保持する解除レバーが装備されている。
左右のハンドルフレーム13,14の前端部及び後端部には、スライドレール16及び案内ガイド17が支持されており、このスライドレール16及び案内ガイド17の上側に、側面視で左右のハンドルフレーム13,14に沿って配設された苗載せ台18が左右方向にスライド自在に装備されている。
左の横送り伝動ケース6の上部と右の横送り伝動ケース7の上部とに亘って横送り機構19が装備されており、この横送り機構19は、苗載せ台18に連係されている。これにより、エンジンEからの動力がミッションケースM、右の伝動ケース5、及び右の横送り伝動ケース7を介して右の苗植付け装置9に伝達されると共に、横送り機構19に伝達されて苗載せ台18が左右に往復横送り駆動される。
横送り機構19の左右両端部には、左右の縦送り駆動アーム126が装備されており(図4参照)、この縦送り駆動アーム126が苗載せ台18の背部に左右方向の軸心周りで支持された縦送り回転部材129に連係されて、縦送り機構20が構成されている。これにより、横送り機構19によって苗載せ台18が左右に往復横送り駆動されると、苗載せ台18に載置された苗が縦送り機構20により所定量ずつ下方側に縦送り駆動される。
左の横送り伝動ケース6の上部から上方にパイプ状の左のフレーム部材21が延出されており、右の横送り伝動ケース7の上部から上方にパイプ状の右のフレーム部材22が延出されている。左右のフレーム部材21,22に亘って、苗載せ台18に補給する予備苗を載置する予備苗載せ台23が固定されている。
エンジンEの上部には、燃料タンクEaが配設されており、エンジンE及び車輪3の上側を覆うように、樹脂製の上部カバー24がその後端部の左右向きの軸心周りで上下に揺動開閉可能に装着され、エンジンE及びミッションケースM等を下側から覆うように、畦等への接触によるエンジンE及びミッションケースM等の破損を防止する板金製の下部カバー25が装着されている。
左右のハンドルフレーム13,14の下部には、揺動アーム27が揺動自在に支持されており、この揺動アーム27の下端部に左右の整地フロート26がブラケット28aを介して左右向きの軸心周りに支持されている。整地フロート26の前端部は、ブラケット28bを介して伝動ケース4,5に支持されており、ブラケット28bに形成された長穴の範囲内で整地フロート26の前部の上下方向への移動が許容されるように構成されている。これにより、フロート高さ調節レバー29を前後方向に揺動操作することで、揺動アーム27及びブラケット28aを介して整地フロート26を昇降できる。
[歩行型田植機のミッションケース付近の構造]
図3及び図4に基づいて歩行型田植機のミッションケースM付近の構造について説明する。図3及び図4に示すように、走行機体1に装備されたエンジンEの左横外側に、ミッションケースMが連結され、エンジンEからの動力がミッションケースM内の伝動経路を介して車輪3、左右の苗植付装置8,9、横送り機構19、及び縦送り機構20に伝達されて、これらの機器が駆動するように構成されている。
ミッションケースMは、エンジンEの左横外側に固定された第1ケースM1と、この第1ケースM1の左横外側に固定された第2ケースM2とを備えて、2分割式に構成されている。ミッションケースMの左側端部には、後述する左側の植付駆動軸73を内装するパイプ状の左の伝動ケース4がフランジ構造により連結されて、ミッションケースMから左斜め後方外方に延出されている。ミッションケースMの右側端部には、後述する右側の植付駆動軸93を内装するパイプ状の右の伝動ケース5がフランジ構造により連結されて、ミッションケースMから右斜め後方外方に延出されている。
ミッションケースMの右側部には、後述する走行伝動軸151を内装するパイプ状の走行伝動ケース2がフランジ構造により連結されて、ミッションケースMから後方に延出されている。
[歩行型田植機の伝動構造(走行伝動系)]
図5〜図10に基づいて歩行型田植機の伝動構造(走行伝動系)について説明する。図5は、歩行型田植機の伝動系統図であり、図6は、ミッションケースMの全体側面図である。図7は、ミッションケースMの縦断側面図である。図8は、エンジンEの出力軸30付近及び走行伝動系の伝動構造を示す断面図であり、図6のP1、P2、P5を通る位置での断面を展開した図である。図9は、後述する植付伝動系の伝動構造を示す断面図であり、図6のP2、P3、P4を通る位置での断面を展開した図である。図10は、車輪支持ケース153付近の横断平面図である。
図5及び図8に示すように、エンジンEから左横外側に出力軸30が延出されており、エンジンEを始動すると、出力軸30が左右向きの軸心P1周りで回転するように構成されている(図6参照)。エンジンEの出力軸30には、円錐状のテーパ部が形成されており、このテーパ部に、エンジンEの出力軸30と同心状に第1伝動軸33が外嵌されている。第1伝動軸33は、円筒状に構成されており、キー構造によりエンジンEの出力軸30に外嵌されて、後述するポンプ入力軸35を介してミッションケースMの第2ケースM2に回動自在に支持されている。
第1伝動軸33の右側端部は、エンジンEの出力軸30と重なるように配設されているので、例えばエンジンEの出力軸30と第1伝動軸33とを軸心P1の方向に重ならないように並べて直列的に接続する場合に比べ、エンジンEの出力軸30に対して左右にコンパクトに第1伝動軸33を配設でき、ミッションケースMを左右にコンパクトに構成できる。
第1伝動軸33の右側部には、第1入力ギア33Aが一体成形されており、第1伝動軸33の左側部には第2入力ギア33Bが一体成形されている。第1伝動軸33の左側端部における内周面には、スプライン溝が形成されており、このスプライン溝に、スプライン溝加工の施されたポンプ入力軸35が内嵌されて、第2ケースM2に回動自在に支持されている。これにより、エンジンEの出力軸30が回転すると、第1伝動軸33を介してポンプ入力軸35が回転するように構成されている。
エンジンEの出力軸30の下側後方に、ミッションケースMの第1ケースM1と第2ケースM2とに亘って、第2伝動軸37が左右向きの軸心P2周りで回動自在に支持されている(図6参照)。第1伝動軸33と第2伝動軸37とに亘って、高速位置及び低速位置の高低2段に変速可能な変速部39が装備されており、この変速部39は、第1入力ギア33Aに咬合する第1分配ギア40と、第2入力ギア33Bに咬合する第2分配ギア41と、シフト部材42とを備えて構成されている。
第2伝動軸37の右側部には、第1分配ギア40が回動自在に支持されており、第2伝動軸37の左側部には、第2分配ギア41が回動自在に支持されている。第1分配ギア40は、エンジンEの出力軸30に連動連結された第1入力ギア33Aに咬合されており、第2分配ギア41は、エンジンEの出力軸30に連動連結された第2入力ギア33Bに咬合されている。
第2伝動軸37における第1分配ギア40を設けた位置と第2分配ギア41を設けた位置の間には、スプライン溝加工が形成されており、この第1及び第2分配ギア40,41の間のスプライン溝に、シフト部材42が第2伝動軸37と一体回動可能でかつ第2伝動軸37の軸方向にスライド自在に外嵌されている。
図7及び図8に示すように、シフト部材42の外周部には、シフト溝42aが形成され、このシフト溝42aに、操作軸43に連結された操作部材43aが係合されており、操作部材43aを回動操作するとシフト部材42が左右方向にスライド移動して、シフト部材42の係合部が第1分配ギア40の係入部又は第2分配ギア41の係入部に噛合するように構成されている。これにより、シフト部材42を右側にスライド移動させてシフト部材42を第1分配ギア40に噛合すると、シフト部材42と第1分配ギア40が一体回動して、第1分配ギア40からの動力がシフト部材42を介して第2伝動軸37に伝達される。一方、シフト部材42を左側にスライド移動させてシフト部材42を第2分配ギア41に噛合すると、シフト部材42と第2分配ギア41が一体回動して、第2分配ギア41からの動力がシフト部材42を介して第2伝動軸37に伝達される。
第1入力ギア33Aの歯数は、第2入力ギア33Bの歯数と異なる歯数に設定され、第1分配ギア40の歯数は、第2分配ギア41の歯数と異なる歯数に設定されている(この実施形態では、第1入力ギア33Aの歯数が第2入力ギア33Bの歯数より少なく設定され、第1分配ギア40の歯数が第2分配ギア41の歯数より多く設定されている)ので、出力軸30からの動力が第1入力ギア33A及び第1分配ギア40を介して伝達される場合と、出力軸30からの動力が第2入力ギア33B及び第2分配ギア41を介して伝達される場合とで、出力軸30から第2伝動軸37に伝達される動力の回転数を変速できる。
従って、シフト部材42を第1分配ギア40側の低速位置に操作すると、第2伝動軸37の回転数を下げることができ、走行伝動系及び植付伝動系に入力される動力の回転を減速できる。一方、シフト部材42を第2分配ギア41側の高速位置に操作すると、第2伝動軸37の回転数を上げることができ、走行伝動系及び植付伝動系に入力される動力の回転を増速できる。
なお、この実施形態では、変速部39により高速位置及び低速位置の高低2段に変速可能に構成した例を示したが、高速位置と低速位置の中間に位置する中立位置を設定し、この中間位置にシフト部材42を操作することで、走行伝動系及び植付伝動系への動力の伝達を遮断することも可能である。これにより、変速部39をエンジンEから走行伝動系及び植付伝動系への動力の伝達を遮断する主クラッチとして機能させることができる。
図5及び図8に示すように、第2伝動軸37の右側端部には、スプライン溝加工が形成されており、このスプライン溝に、スプライン溝加工が施された走行側入力ギア44(走行側入力部材に相当)が外嵌されて、第2伝動軸37が回転すると走行側入力ギア44が第2伝動軸37と一体回動するように構成されている。第2伝動軸37の左側端部には、スプライン溝加工が形成されており、このスプライン溝に、スプライン溝加工が施された植付側入力ギア45(植付側入力部材に相当)が外嵌されて、第2伝動軸37が回転すると植付側入力ギア45が第2伝動軸37と一体回動するように構成されている。
第2伝動軸37の下側(エンジンEの出力軸30の下側後方)に、ミッションケースMの第1ケースM1と第2ケースM2とに亘って第2中間軸133が回動自在に支持されている(図6参照)。第2中間軸133の左側部には、第2伝動ギア136が回動自在に外嵌されており、この第2伝動ギア136が第2伝動軸37に装着された走行側入力ギア44に咬合されている。これにより、第2伝動軸37が回転すると、走行側入力ギア44を介して第2伝動ギア136が回転する。
第2中間軸133の伝動上手側の端部には、走行クラッチ137が装備されており、この走行クラッチ137は、シフト部材138と弾性バネ139とを備えて構成されている。第2中間軸133における第2伝動ギア136の伝動下手側には、スプライン溝加工が形成されており、このスプライン溝に、シフト部材138が第2中間軸133と一体回動可能でかつ第2中間軸133の軸方向にスライド自在に外嵌されている。
図7及び図8に示すように、シフト部材138の外周部には、シフト溝138aが形成され、このシフト溝138aに、第1ケースM1に軸支された操作軸141の操作部材141aが係合されており、操作軸141を回動操作するとシフト部材138が左右方向にスライド移動して、シフト部材138の係合部が第2伝動ギア136の係入部に噛合するように構成されている。
第2中間軸133には段部が一体形成されており、この段部とシフト部材138の右側面とに亘って、シフト部材138を左側(走行クラッチ137の入り側)に付勢する弾性バネ139が装着されている。これにより、弾性バネ139の付勢力に抗してシフト部材138を右側(走行クラッチ137の切り側)にスライド移動させると、シフト部材138と第2伝動ギア136との噛合が外れて、第2伝動ギア136からシフト部材138への動力の伝達が遮断され、第2伝動ギア136から第2中間軸133への動力の伝達が遮断される。一方、弾性バネ139の付勢力によって(弾性バネ139の付勢力に補助されて)シフト部材138を左側(走行クラッチ137の入り側)にスライド移動させてシフト部材138を第2伝動ギア136に噛合すると、シフト部材138と第2伝動ギア136が一体回動して、第2伝動ギア136からの動力がシフト部材138を介して第2中間軸133に伝達される。
操作軸141の操作部材141aは、操縦ハンドル15に装備された走行クラッチ用のクラッチレバー15cに連係されており、走行クラッチ用のクラッチレバー15cの握り操作すると、走行クラッチ137が切り側に操作され、解除レバーを操作してクラッチレバー15cが上方に揺動操作した状態を解除すると、走行クラッチ137が入り側に操作される。
図5及び図8に示すように、第1ケースM1の右側には、走行回動ケース143が左右方向の軸心P5周りで回動自在に支持されており、この走行回動ケース143の内部に第2中間軸133が延出され、第2中間軸133の右側端部が走行回動ケース143に回動自在に支持されている。走行回動ケース143の右側端部は、中間ケース87から上方に延出された軸受フレーム部材147に回動自在に支持されている(図4参照)。
走行回動ケース143の後端部には、筒状の走行伝動ケース2が締め付け固定されており、この走行伝動ケース2に、ベベル伝達機構148を介して第2中間軸133に連動連結された走行伝動軸151が内装されている。走行伝動軸151の走行回動ケース143側の端部には、ベベルギア150が一体回動可能に固定されており、このベベルギア150が走行回動ケース143に回動自在に支持されている。
第2中間軸133の右側端部には、ベベルギア149がスプライン構造により第2中間軸133と一体回動可能に装着されており、このベベルギア149が走行伝動軸151に一体回動可能に固定されたベベルギア150と咬合されている。これにより、第2中間軸133が回転すると、ベベル伝達機構148を介して走行伝動軸151が回転する。
図5及び図10に示すように、走行伝動ケース2の後端部には、車輪支持ケース153が締め付け固定されている。走行伝動軸151の車輪支持ケース153側の端部は、筒状の連結部材154を介して支軸155が連動連結されており、この支軸155が車輪支持ケース153に回動自在に支持されている。
車輪支持ケース153には、車軸157が左右方向の軸心周りに支持されており、この車軸157の右側端部にベベルギア161が一体回動可能に装着され、このベベルギア161が支軸155に一体成形されたベベルギア155aに咬合されている。これにより、走行伝動軸151からの動力がベベル伝達機構160を介して車軸157に伝達されて、車軸157に装着された車輪3が回転駆動するように構成されている。
[歩行型田植機の伝動構造(植付伝動系)]
図5〜図15に基づいて歩行型田植機の伝動構造(植付伝動系)について説明する。
図11は、株間ギアカバー60付近の断面図である。図12は、左の横送り伝動ケース6付近の断面図であり、図13は、右の横送り伝動ケース7付近の断面図である。図14は、横送りギアカバー115付近の断面図であり、図15は、横送りギアカバー115付近の右側面図である。
図5及び図9に示すように、第2伝動軸37の下側前方(エンジンEの出力軸30の下側前方)に、ミッションケースMの第1ケースM1と第2ケースM2とに亘って第1中間軸46が左右向きの軸心P3周りで回動自在に支持されている(図6参照)。第1中間軸46の右側部には、第1伝動ギア49が回動自在に外嵌されており、この第1伝動ギア49が第2伝動軸37に装着した植付側入力ギア45に咬合されている。これにより、第2伝動軸37が回転すると、植付側入力ギア45を介して第1伝動ギア49が回転する。
第1伝動ギア49の伝動下手側には、安全クラッチ50が装備されている。安全クラッチ50は、クラッチ体51と、板状部材52と、弾性バネ53とを備えて構成されている。第1中間軸46には、スプライン溝が形成されており、このスプライン溝に、クラッチ体51が第1中間軸46と一体回動可能でかつ第1中間軸46の軸方向にスライド自在に外嵌されている。
第1中間軸46には、段部が形成されており、この段部に円板状の板状部材52が外嵌されている。クラッチ体51と、板状部材52とに亘って弾性バネ53が装着されており、弾性バネ53によりクラッチ体51が第1伝動ギア49側に付勢されている。
第1伝動ギア49には、クラッチ体51の係入部に係合する係合部が一体成形されており、第1伝動ギア49が回転すると、第1伝動ギア49の係合部がクラッチ体51の係入部に係合して、クラッチ体51が第1伝動ギア49と一体回動し、第1伝動ギア49の回転がクラッチ体51を介して第1中間軸46に伝達される。これにより、第2伝動軸37が回転すると、植付側入力ギア45、第1伝動ギア49、及びクラッチ体51を介して第1中間軸46が回転する。この場合、第1伝動ギア49の歯数は、植付側入力ギア45の歯数より多く設定されているので、第2伝動軸37からの動力が減速されて第1中間軸46に伝達される。
第1中間軸46の下側で少し前方(エンジンEの出力軸30の下側前方)に、ミッションケースMの第1ケースM1と第2ケースM2とに亘って連結軸54及び植付伝動軸55が左右向きの軸心P4周りで回動自在に支持されている(図6参照)。植付伝動軸55の左側端部には、連結軸54が回動自在に内嵌支持されており、この連結軸54を介して植付伝動軸55の左側端部が第2ケースM2に回動自在に支持されている。
第1中間軸46の左側端部には、第1株間ギア58が第1中間軸46と一体回動可能でかつ第1中間軸46に着脱可能に装着されており、連結軸54の左側端部には、第2株間ギア59が連結軸54と一体回動可能でかつ連結軸54に着脱可能に装着されている。第1及び第2株間ギア58,59は咬合されており、これにより、第1中間軸46からの動力が第1及び第2株間ギア58,59により変速されて植付伝動軸55に伝達される。なお、この実施形態では、第1株間ギア58の歯数が第2株間ギア59の歯数よりも多く設定されており、第1中間軸46からの動力が増速されて連結軸54及び植付伝動軸55に伝達される。また、第1及び第2株間ギア58,59の歯数の比を変更することで、第1中間軸46から連結軸54及び植付伝動軸55に伝達される動力の変速比を変更調節して、走行速度に対する苗植付装置8,9の駆動速度を変更でき、圃場に植え付ける苗の株間を変更できる。
図6及び図11に示すように、第1及び第2株間ギア58,59は、第2ケースM2の左側面から第2ケースM2の左側面の全面に亘って所定の隙間Aを開けて、第2ケースM2の左横外側に配設されている。これにより、第1及び第2株間ギア58,59の外周部及び横外面側が開放されるように、第1及び第2株間ギア58,59がミッションケースMの外側に配設されている。
第2ケースM2の内方側には、コ字状に凹入したカバー取付部Maが、第1及び第2株間ギア58,59の外周部の全域に亘って一体成形されており、このカバー取付部Maに、第1及び第2株間ギア58,59の外周部及び横外側を覆う株間ギアカバー60が装着されている。
株間ギアカバー60は、側面視での形状が長円形に成形され、その縁部が全周に亘って第2ケースM2側にプレス成形された形状に成形されている。株間ギアカバー60の縁部における先端部には、折り曲げ部60aが形成されており、株間ギアカバー60の上下中央部には、前後の取り付け穴60bが形成されている。これにより、第2ケースM2のカバー取付部Maに嵌め込み装着したゴム製の弾性部材61に、株間ギアカバー60の折り曲げ部60aを接当させて、前後の取り付け穴60bにそれぞれ蝶ボルト62を挿入して、第2ケースM2の前後のネジ部Mbに蝶ボルト62を締め付けることで、株間ギアカバー60を第2ケースM2に装着できる。この場合、弾性部材61の弾性変形により株間ギアカバー60の縁部が右横外側に少し押されるので、株間ギアカバー60の縁部が浮くことなく、株間ギアカバー60を2つの蝶ボルト62で確実に第2ケースM2に装着できる。
第1及び第2株間ギア58,59の外周部における第2ケースM2の左側面Fの横外側には、第1中間軸46、連結軸54、並びに第1及び第2株間ギア58,59以外の突出物がないため、第2ケースM2の左側面Fと第1及び第2株間ギア58,59の右側面との間に形成された隙間Aに、例えばマイナスのドライバーの先端等を挿入して、第1株間ギア58を第1中間軸46から容易に取り外すことができ、第2株間ギア59を連結軸54から容易に取り外すことができる。これにより、ミッションケースMの側壁が邪魔になって第1及び第2株間ギア58,59が交換し難くなるようなことが無くなって、第1及び第2株間ギア58,59の交換作業の作業性を向上できる。
なお、この実施形態では、第1及び第2株間ギア58,59の外周部が略全域に亘って開放されるように、ミッションケースMの形状及び株間ギアカバー60の形状等を構成した例を示したが、第1及び第2株間ギア58,59の外周部の一部が部分的に開放されるように、ミッションケースMの形状及び株間ギアカバー60の形状等を構成してもよい。具体的には、例えばマイナスのドライバーの先端等を挿入できる程度に、第1及び第2株間ギア58,59の外周部の一部を開放し、この開放したミッションケースMの部分及び第1及び第2株間ギア58,59の横側面を覆うように株間ギアカバー60を装着する。
図5及び図9に示すように、連結軸54と植付伝動軸55の左側端部とに亘って植付クラッチ64が装備されている。植付伝動軸55の左側端部には、スプライン溝加工が形成されており、このスプライン溝に、シフト部材65が植付伝動軸55と一体回動可能でかつ植付伝動軸55の軸方向にスライド自在に外嵌されている。
植付クラッチ64は、第1中間軸46に設けられた安全クラッチ50と左右方向に位置をずらして配設されているので、ミッションケースM内の空間を有効に活用して植付クラッチ64及び安全クラッチ50を配設することができ、ミッションケースMをコンパクトに構成できる。
連結軸54には、円板状のクラッチ体54aが一体成形されている。クラッチ体54aの植付伝動軸55側の面には、左側に凹入した係入部が一体形成されており、シフト部材65の連結軸54側には、左側に突出した係合部が一体成形されている。シフト部材65と植付伝動軸55の段部とに亘って弾性バネ66が装着されて、シフト部材65が連結軸54側に付勢されている。
第2ケースM2には、操作軸67が押し引き操作可能に装着されており、この操作軸67に連係された操作具68を操作すると操作軸67が押し引き操作されるように構成されている。シフト部材65の外周部には、シフト溝65aが形成され、このシフト溝65aが操作軸67の先端部に形成された傾斜面に接当するように構成されている。
操作具68を操作して操作軸67が第2ケースM2側に押し込まれると、操作軸67の傾斜面がシフト部材65のシフト溝65aに係合し、弾性バネ66の付勢力に抗してシフト部材65を右側(植付クラッチ64の切り側)に移動させる。これにより、シフト部材65の係合部のクラッチ体54aの係入部への係合が解除され、連結軸54から植付伝動軸55への動力の伝達が遮断される。一方、操作具68を操作して操作軸67が第2ケースM2側から引き出されると、弾性バネ66の付勢力によりシフト部材65が左側(植付クラッチ64の入り側)に移動する。これにより、シフト部材65の係合部がクラッチ体54aの係入部に係合し、連結軸54から植付伝動軸55へ動力が伝達される。
操作軸67の操作具68は、操縦ハンドル15に装備された植付クラッチ用のクラッチレバー15cにワイヤ連係されており、植付クラッチ用のクラッチレバー15cの握り操作すると植付クラッチ64が入り側に操作され、解除レバーを操作してクラッチレバー15cが上方に揺動操作した状態を解除すると、植付クラッチ64が切り側に操作される。
植付クラッチ64の伝動下手側には、ベベル伝達機構70を介して左側の植付駆動軸73が連動連結されている。左側の植付駆動軸73は、パイプ状の伝動軸74と、このパイプ状の伝動軸74の両端部に固定された軸部材75とを備えて構成されており、伝動軸74の一端部に固定した軸部材75を第2ケースM2に回動自在に支持することで、植付駆動軸73の一端部が第2ケースM2に回動自在に支持される。
伝動軸74の両端部に固定された軸部材75には、ベベルギア75aが一体形成されており、植付伝動軸55における植付クラッチ64の伝動下手側には、ベベルギア71がスプライン構造により一体回動可能に外嵌されている。左側の植付け伝動軸73の第2ケースM2側の端部に形成されたベベルギア75aは、植付クラッチ64の伝動下手側のベベルギア71と咬合されている。これにより、植付クラッチ64を入り側に操作し、エンジンEからの動力が第2伝動軸37、第1中間軸46、及び連結軸54を介して植付伝動軸55に伝達されると、植付伝動軸55からの動力がベベル伝達機構70を介して左側の植付駆動軸73に伝達されるように構成されている。
左側の植付駆動軸73は、第2ケースM2から斜め左方後方に延出されている。第2ケースM2には、斜め左方後方に延出された円筒状の左側の伝動ケース4が締め付け固定されており、この左側の伝動ケース4に、左側の植付駆動軸73が内装され、左側の伝動ケース4の後端部に、左側の横送り伝動ケース6が締め付け固定されている。
図5及び図12に示すように、左側の植付駆動軸73の他端部(後端部)側の軸部材75は、左側の横送り伝動ケース6に回動自在に支持されており、左側の横送り伝動ケース6には、回転軸78が左右向きの軸心P6周りで回動自在に支持されている。回転軸78には、ベベルギア82がスプライン構造により一体回動可能に外嵌されており、このベベルギア82が植付駆動軸73のベベルギア75aと咬合されている。これにより、左側の植付駆動軸73からの動力がベベル伝達機構81を介して回転軸78に伝達されるように構成されている。
回転軸78には、苗植付装置8のクランクアーム83が回転駆動自在に支持されており、このクランクアーム83に苗植付装置8の植付アーム84が連動連結されている。これにより、苗載せ台18が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、クランクアーム83が回転駆動され、苗載せ台18の下部から植付アーム84が苗を取り出して圃場に植え付ける。
図5及び図9に示すように、植付伝動軸55は、第1及び第2ケースM1,M2に内装された円柱状の第1駆動軸55aと、この第1駆動軸55aの右側端部に固定された円筒状の筒軸55bと、この筒軸55bの右側端部に固定された円柱状の第2駆動軸55cとを備えて構成されており、この植付伝動軸55は、第1ケースM1から右外側に延出されている。第1ケースM1には、右横外側に延出された筒状部材86が締め付け固定されており、この筒状部材86に苗植付伝動軸55の一部が内装され、この筒状部材86の右側端部に中間ケース87が締め付け固定されている。
植付伝動軸55の第2駆動軸55cは、中間ケース87に回動自在に支持されており、これにより、植付伝動軸55の右側端部が中間ケース87に回動自在に支持されている。
第2駆動軸55cの右側端部には、ベベル伝達機構90を介して右側の植付駆動軸93が連動連結されている。右側の植付駆動軸93は、パイプ状の伝動軸94と、この伝動軸94の両端部に固定された軸部材95とを備えて構成されており、伝動軸94の一端部に固定した軸部材95を中間ケース87に回動自在に支持することで、植付駆動軸93の一端部が中間ケース87に回動自在に支持される。
伝動軸94の両端部に固定された軸部材95には、ベベルギア95aが一体形成されており、第2駆動軸55cにはベベルギア91がスプライン構造により一体回動可能に外嵌されている。伝動軸94の筒状部材86側の端部に形成されたベベルギア95aは、第2駆動軸55cに一体回動可能に外嵌されたベベルギア91と咬合されている。これにより、植付クラッチ64を入り側に操作し、エンジンEからの動力が第2伝動軸37、第1中間軸46、及び連結軸54を介して植付伝動軸55に伝達されると、植付伝動軸55からの動力がベベル伝達機構90を介して右側の植付駆動軸93に伝達されるように構成されている。
図5及び図13に示すように、右側の植付駆動軸93は、中間ケース87から斜め右方後方に延出されている。中間ケース87には、斜め右方後方に延出された円筒状の右側の伝動ケース5が締め付け固定されており、この右側の伝動ケース5に、右側の植付駆動軸93が内装され、右側の伝動ケース5の後端部に、右側の横送り伝動ケース7が締め付け固定されている。
右側の植付駆動軸93の他端部(後端部)側の軸部材95は、右側の横送り伝動ケース7に回動自在に支持されており、右側の横送り伝動ケース7には、回転軸98が左右向きの軸心P6周りで回動自在に支持されている。回転軸98には、ベベルギア102がスプライン構造により一体回動可能に外嵌されており、このベベルギア102が軸部材95のベベルギア95aと咬合されている。これにより、右側の植付駆動軸93からの動力がベベル伝達機構101を介して回転軸98に伝達されるように構成されている。
回転軸98には、苗植付装置9のクランクアーム103が回転駆動自在に支持されており、このクランクアーム103に苗植付装置9の植付アーム104が連動連結されている。これにより、苗載せ台18が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、クランクアーム103が回転駆動され、苗載せ台18の下部から植付アーム104が苗を取り出して圃場に植え付ける。この場合、右側の植付アーム104は、左側の植付アーム84と同じタイミングで回転駆動する。
横送り伝動ケース7は、機体内側に位置する伝動ケース5の後端部に連結された第1伝動ケース7Aと、この第1伝動ケース7Aの機体外側に締め付け固定された第2伝動ケース7Bとを備えて、2分割式に構成されており、第1伝動ケース7Aに対して第2伝動ケース7Bを横外側に取り外すことができるように構成されている。
回転軸98の右側端部は、第2伝動ケース7Bに回動自在に支持されており、回転軸98の前方上方には、第1伝動ケース7Aと第2伝動ケース7Bとに亘って中間支軸109が左右方向の軸心P7周りで回動自在に支持されている。回転軸98の上方には、第1伝動ケース7Aと第2伝動ケース7Bとに亘って横送り駆動軸112の右側端部が左右方向の軸心P8周りで回動自在に支持されている。なお、横送り駆動軸112の左側端部は、左側の横送り伝動ケース6における上方に延出された上端部に回動自在に支持されている(図12参照)。
回転軸98の右側端部には、第1横送りギア113が回転軸98と一体回動可能でかつ回転軸98に着脱可能に装着されており、中間支軸109の右側端部には、第2横送りギア114が中間支軸109と一体回動可能でかつ中間支軸109に着脱可能に装着されている。第1及び第2横送りギア113,114は咬合されており、これにより、回転軸98からの動力が第1及び第2横送りギア113,114により変速されて中間支軸109(横送り駆動軸112)に伝達される。
なお、この実施形態では、第2横送りギア114の歯数が第1横送りギア113の歯数よりも多く設定されており、回転軸98からの動力が減速されて中間支軸109(横送り駆動軸112)に伝達される。第1及び第2横送りギア113,114の歯数の比を変更することで、回転軸98から中間支軸109(横送り駆動軸112)に伝達される動力の変速比を変更調節して、苗植付装置8,9の駆動速度に対する苗載せ台18の横送り駆動速度を変更できる(苗植付装置8,9により圃場に植え付ける苗の量を変更できる)。
図14及び図15に示すように、第2伝動ケース7Bの右側面から右横外側に、第2伝動ケース7Bの右側面から突出した複数の突条7aが、第1及び第2横送りギア113,114の外周部内側の略全域に亘って一体成形されており、この突条7aにより横送りギアカバー115を装着するカバー取付部が形成されている。第1及び第2横送りギア113,114は、第2伝動ケース7Bの突条7aの右外端と所定の隙間Bを開けて、第2伝動ケース7Bの右横外側に配設されている。これにより、第1及び第2横送りギア113,114の外周部及び横外面側が開放されるように、第1及び第2横送りギア113,114が横送り伝動ケース7の外側に配設されている。
横送りギアカバー115は、側面視での形状が長円形に成形され、その縁部が全周に亘って第2伝動ケース7B側にプレス成形された形状に成形されている。横送りギアカバー115の縁部における先端部には、折り曲げ部115aが形成されており、横送りギアカバー115の上下中央部には、前後の取り付け穴115bが形成されている。これにより、第2伝動ケース7Bの突条7aの間に嵌め込み装着したゴム製の弾性部材116に、横送りギアカバー115の折り曲げ部115aを接当させて、前後の取り付け穴115bにそれぞれ蝶ボルト117を挿入して、第2伝動ケース7Bの前後のネジ部7bに蝶ボルト117を締め付けることで、横送りギアカバー115を第2伝動ケース7Bに装着できる。この場合、弾性部材116の弾性変形により横送りギアカバー115の縁部が右側に少し押されるので、横送りギアカバー115の縁部が浮くことなく、横送りギアカバー115を2つの蝶ボルト117で確実に第2伝動ケース7Bに装着できる。
第1及び第2横送りギア113,114の外周部における突条7aの右横外側には、回転軸98、中間支軸109、並びに、第1及び第2横送りギア113,114以外の突出物がないため、突条7aと第1及び第2横送りギア113,114の左側面との間に形成された隙間Bに、例えばマイナスのドライバーの先端等を挿入して、第1横送りギア113を回転軸98から容易に取り外すことができ、第2横送りギア114を中間支軸109から容易に取り外すことができる。これにより、横送り伝動ケース7の側壁が邪魔になって第1及び第2横送りギア113,114が交換し難くなるようなことが無くなって、第1及び第2横送りギア113,114の交換作業の作業性を向上できる。
なお、この実施形態では、第1及び第2横送りギア113,114の外周部が略全域に亘って開放されるように、横送り伝動ケース7の形状及び横送りギアカバー115の形状等を構成した例を示したが、第1及び第2横送りギア113,114の外周部の一部が部分的に開放されるように、横送り伝動ケース7の形状及び横送りギアカバー115の形状等を構成してもよい。具体的には、例えばマイナスのドライバーの先端等を挿入できる程度に、第1及び第2横送りギア113,114の外周部の一部を開放し、この開放した横送り伝動ケース7の部分及び第1及び第2横送りギア113,114の横側面を覆うように横送りギアカバー115を装着する。
図5及び図13に示すように、中間支軸109と横送り駆動軸112とに亘ってチェーン伝動機構120が装着されている。チェーン伝動機構120は、中間支軸109と一体回動可能に外嵌された第1スプロケット121と、横送り駆動軸112と一体回動可能に外嵌された第2スプロケット122と、第1及び第2スプロケット121,122に亘って巻回された伝動チェーン123とを備えて構成されている。これにより、回転軸98からの動力により第1及び第2横送りギア113,114を介して中間支軸109が回転すると、チェーン伝動機構120を介して横送り駆動軸112が回転駆動するように構成されている。
図3,図4及び図13に示すように、横送り駆動軸112には、往復螺旋溝112aが形成されており、この往復螺旋溝112aに係入する係合部材124aを自転可能に備えたスライダ124が、左右方向にスライド可能に横送り駆動軸112に外嵌装着されている。スライダ124には、苗載せ台18が連係部材125を介して連結されており、横送り駆動軸112が一定方向に回転することでスライダ124が横送り駆動軸112に沿って一定のストロークで往復移動し、これに連れて苗載せ台18が往復横移動するように構成されている。
横送り駆動軸112の左右両端部に、縦送り駆動アーム126が一体回動可能に外嵌されており、この縦送り駆動アーム126の先端部に先端ローラー126aが回動自在に支持されている。スライダ124には、アーム部材127が揺動自在に支持されており、このアーム部材127から左右両外側に棒状部材127aが延出されている。苗載せ台18の背部には、支軸128が左右方向の軸心周りで回動自在に支持されており、この支軸128に複数の縦送り回転部材129が一体回動可能に連結されている。支軸128の一端部には、アーム130が固定されており、このアーム130がロッド131を介して第1伝動ケース7A側のアーム部材127に連係されている。
苗載せ台18が左右のストロークエンドに到達するたびに、縦送り駆動アーム126の先端ローラー126aがアーム部材127の棒状部材127aに接当してロッド131を押し引き操作し、縦送り回転部材129を所定量ずつ所定の回転方向に回動して、苗載せ台18に載置された苗を所定量ずつ下方へ移動できるよう構成されている。
[油圧ポンプ付近の詳細構造]
図2,図3,図6,図8,図16,図17に基づいてミッションケースMに装備されている油圧ポンプ162付近の詳細構造について説明する。図16は、油圧ポンプ162付近の縦断正面図であり、図17は、油圧ポンプ162付近の縦断側面図である。
図6及び図8に示すように、エンジンEの出力軸30に、出力軸30と同心状にポンプ入力軸35が連動連結されており、このポンプ入力軸35の左側端部に、トロコイド式の油圧ポンプ162がスプライン構造により一体回動可能に連結されている。なお、油圧ポンプ162として、ギアポンプ、プランジャポンプ、ベーンポンプ等の異なる構造の油圧ポンプ(図示せず)で構成し、この実施形態と同様の連結構造を採用してもよい。
図16及び図17に示すように、バルブブロック164の右側面には、左側に円柱状に凹入したポンプケース部164aが一体成形されており、このポンプケース部164aに油圧ポンプ162の回転部材163を内装し、ミッションケースMの第2ケースM2の左横外側の面に、Oリング165を介してバルブブロック164を連結する。これにより、ポンプケース部164aと回転部材163により油圧ポンプ162が構成される。
第2ケースM2には、吸い込み油路166、及び吸込ポート167が一体形成されており、吸い込み油路166から吸い込みポート167を介して油圧ポンプ162に吸い込んだ作動油を、バルブブロック164に形成されたポンプポートPに吐出できるように構成されている(図6参照)。
バルブブロック164には、リリーフバルブ168と、スプール169と、接続ポートCと、タンクポートTが形成されており、タンクポートTは、ミッションケースMに連通され、油圧ポンプ162及びスプール169からの作動油がミッションケースM内に戻されるように構成されている。
油圧ポンプ162のポンプポートPはリリーフバルブ168を介してスプール169に接続されており、スプール169は、左右方向の軸心周りで回動自在に支持されている。これにより、スプール169を回動操作することによって、スプール169に形成された油路の方向を変更して、接続ポートCに圧油を供給する上昇位置、接続ポートCへの圧油の供給を遮断する停止位置、及び接続ポートCをタンクポートTに接続する下降位置の3つの操作位置に切り換えできるように、3位置切り換え式に構成されている。
これにより、出力軸30の回転により油圧ポンプ162が回転すると油圧ポンプ162からの圧油がリリーフバルブ168に供給され、油圧ポンプ162からの圧油がリリーフバルブ168の設定圧力に達すると、油圧ポンプ162からの圧油の一部又は全部がタンクポートTからリリーフされる。リリーフバルブ168により設定圧力に制御された圧油は、スプール169に供給され、スプール169の操作位置により接続ポートCに供給される。
図2及び図3に示すように、接続ポートCは、金属製の油圧配管170を介して昇降シリンダ12のロッド側に接続されており、スプール169は、操縦ハンドル15に装備した油圧昇降用の操作レバー15bに連係されている。これにより、油圧昇降用の操作レバー15bを左右に揺動操作してスプール169を上昇位置、停止位置、又は下降位置に回動操作することで、昇降シリンダ12を短縮させて走行機体1を上昇させることができ、昇降シリンダ12を停止させて走行機体1の高さを維持でき、昇降シリンダ12を伸長させて走行機体1を下降させることができる。
図8,図16,図17に示すように、油圧ポンプ162の吸込ポート167には、第2ケースM2に形成された吸い込み油路166が接続されており、この吸い込み油路166がミッションケースMの第1ケースM1と第2ケースM2との割り面MAに一体成形された配管路173と接続されている。配管路173は、吸い込み油路166に接続された位置から、ミッションケースMの内部における作動油の液面から所定高さ低い位置(例えばミッションケースMの底部)に連通されており、これにより、ミッションケースM内の作動油を、配管路173、及び吸い込み油路166を介して油圧ポンプ162の吸込ポート167に吸い込むことができる。
ミッションケースMの割り面MAの位置は、油圧ポンプ162に近い位置に設定されているので、油圧ポンプ162の吸込ポート167の位置と、割り面MAに形成された配管路173の位置とを左右方向及び前後方向で近い位置に配設することができる。これにより、配管路173と吸込ポート167との間の配管経路を短く設定することができ、第2ケースM2における吸い込み油路166の加工等が容易になるだけでなく、油圧ポンプ162の吸い込み側の圧力損失を低減できる。
また、例えば油圧ポンプ162の吸込ポート167と、ミッションケースMの底部等とを、ミッションケースMの外部で配管接続する場合に比べ、ミッションケースMの内部で配管接続することができ、コンパクトで低コストなポンプ吸い込み構造を実現できる。
[ブリーザの詳細構造]
図4,図6,図18に基づいてミッションケースMに装着されているブリーザ178の詳細構造について説明する。図18は、歩行型田植機の前部が下側になり歩行型田植機の後部が上側になるように、歩行型田植機を倒立姿勢に姿勢変更した状態でのブリーザ178付近の縦断側面図である。
図4及び図6に示すように、ミッションケースMの第1ケースM1の後部上部に、ミッションケースM内の作動油の油量を確認するレベルゲージ175がゴム製のゲージ取付部材176を介して着脱可能に装着されており、このレベルゲージ175の後側にブリーザ178が装着されている。
図6に示すように、第1ケースM1の後部上部には、ミッションケースM内に連通されたブリーザ取付部177が一体成形されており、このブリーザ取付部177には、ブリーザ178が内嵌挿入されて固定されている。
ブリーザ178は、丸パイプ材に構成されており、ブリーザ取付部177から上方に延出された基部178aと、この基部178aの上端部から後方に延出された第1延出部178bと、この第1延出部178bの後端部から下方に延出された第2延出部178cとを備えて、側面視での形状が下向き開口したコ字状に成形されている。
ブリーザ178は、エンジンEの出力軸30の左右方向の軸心P1より高い位置に位置するように配設されており、これにより、ブリーザ178における基部178aの上端の高さ(第1延出部178bの高さ)を作動油の液面から遠い位置に配設することができる。
ブリーザ178の第2延出部178cは、ミッションケースMの後面より後側で、ミッションケースMの後端より後側に位置するように配設されており、ブリーザ178の第2延出部178cの下端は、ブリーザ取付部177の上面(ミッションケースMの上面)より下側に位置するように配設されている。
ブリーザ178の第1延出部178bは、ブリーザ179の基部178aから後方に延出されている。これにより、図18に示すように、例えば歩行型田植機を倒立姿勢に姿勢変更した場合において、ブリーザ178の基部178aが前方に向き、基部178aがミッションケースM内の作動油の液面より上側に位置すると共に、ブリーザ178の第1延出部178bが上方に向き、第1延出部178bの上端が倒立姿勢でのミッションケースMの上面より上側に位置する状態になる。これにより、歩行型田植機を倒立姿勢で移動させる出荷時や運搬時等に、ミッションケースM内の作動油がブリーザ178から漏れ出すことを防止できる。
また、歩行型田植機を倒立姿勢に姿勢変更すると、ブリーザ178の第2延出部178cは後方に向く。これにより、第2延出部178bが、基部178a及び第1延出部178bを通って漏れようとする作動油の抵抗になって、作動油が更に漏れ難くなる。その結果、ミッションケースM内の作動油がブリーザ178から漏れ出すことを更に防止できる。
なお、この実施形態では、第1延出部178bに加えて第2延出部178cを備えて、ブリーザ178を構成した例を示したが、第2延出部178cを省略したブリーザ178を採用してもよい。また、ミッションケースMの後部上部であれば、異なる位置にブリーザ178を備えてもよく、例えば第2ケースM2側にブリーザ178を備えてもよい。
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、第1伝動軸33をエンジンEの出力軸30と重なるように配設した例を示したが、エンジンEの出力軸30と第1伝動軸33を軸心P1の方向に重ならないように並べて直列的に接続してもよい。この場合、例えば第1伝動軸33とエンジンEの出力軸30とを連結部材等(図示せず)を介して接続してもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、第1伝動軸33をエンジンEの出力軸30と同心状に配設した例を示したが、第1伝動軸33の軸心とエンジンEの出力軸30の軸心とを偏心させて並列的に接続してもよい。この場合、例えばエンジンEの出力軸30と第1伝動軸33とをギア伝動機構等(図示せず)を介して接続しても良い。
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、エンジンEの出力軸30とは別に第1伝動軸33を備えた例を示したが、エンジンEの出力軸30が第1伝動軸33として機能するように構成してもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、変速部39のシフト部材42を第2伝動軸37側に設けた例を示したが、変速部39のシフト部材42を第1伝動軸33側に設けてもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、シフト部材42の係合部が第1分配ギア40の係入部又は第2分配ギア41の係入部に噛合することで、第1伝動軸33からの動力が第1又は第2分配ギア40,41の伝達されるように、変速部39を噛合式の伝動構造で構成した例を示したが、変速部39を摩擦式の伝動構造(図示せず)で構成してもよい。
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、第2伝動軸37の右側端部に走行側入力ギア44を備え、第2伝動軸37の左側端部に植付側入力ギア45を備えた例を示したが、第2伝動軸37の左側端部に走行側入力ギア44を備え、第2伝動軸37の右側端部に植付側入力ギア45を備えてもよい。また、第2伝動軸37における変速部39の横外側の一方のみに、走行側入力ギア44及び植付側入力ギア45の双方を備える構成を採用してもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、走行側入力部材を走行側入力ギア44で構成し、植付側入力部材を植付側入力ギア45で構成した例を示したが、第2伝動軸37から第1及び第2中間軸46,133への伝動機構として異なる伝動機構を採用してもよく、例えばチェーン伝動機構等を採用してもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、植付クラッチ64を第1及び第2株間ギア58,59による変速後における植付伝動軸55の伝動上手側端部に備えた例を示したが、植付クラッチ64を第1及び第2株間ギア58,59による変速前における第1中間軸46に備えてもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、植付クラッチ64を噛合式のクラッチで構成した例を示したが、植付クラッチ64を摩擦式のクラッチ(図示せず)で構成してもよい。
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、及び[発明の実施の第2別形態]においては、エンジンEの左横外側にミッションケースMを連結した例を示したが、エンジンE、ミッションケースM等を上記実施形態と左右対称に構成し、エンジンEの右横外側にミッションケースMを連結する構成を採用してもよい。
また、エンジンEの前側又は後側にミッションケースMを連結する構成を採用してもよく、この場合、エンジンEから前側又は後側にエンジンEの出力軸30を延出してもよい。更には、エンジンEの上側又は下側にミッションケースMを連結する構成を採用してもよく、この場合、エンジンEから上側又は下側にエンジンEの出力軸30を延出してもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、及び[発明の実施の第2別形態]においては、第1及び第2伝動軸33,37の軸心P1,P2の方向を左右方向に設定した例を示したが、第1及び第2伝動軸33,37の軸心方向を前後方向又は上下方向に設定してもよい。この場合、第1伝動軸33の軸心方向と、第2伝動軸37の軸心方向を異なる方向に設定してもよい。
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、及び[発明の実施の第3別形態]においては、歩行型田植機に一つの車輪3を備えて一輪式に構成した例を示したが、二つ以上の車輪3を備えた歩行型田植機においても同様に適用でき、例えば二輪式の歩行型田植機においても同様に適用できる。また、苗植付装置8,9により、2条の苗を圃場に植え付けできるように構成した歩行型田植機を例に示したが、3条以上の苗を圃場に植え付けできるように構成した歩行型田植機においても同様に適用できる。
また、歩行型田植機に限らず、異なる歩行型作業機においても同様に適用でき、例えば歩行型移植機や歩行型管理機等においても同様に適用できる。