以下に、本発明の実施形態である田植機について、図1〜図11を用いて説明する。なお、以下の説明では、田植機(走行機体1)の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。図1及び図2に示す如く、田植機は、走行機体1と、走行機体1の後部に昇降可能に連結された苗植付装置2とを有する。走行機体1には、左右一対の前輪3と、左右一対の後輪4と、運転者が座乗する運転座席5と、運転座席5の前方に配置された操縦ハンドル6と、操縦ハンドル6の下端側を覆うボンネット7が設けられている。
走行機体1の左右幅中央に配置された操縦ハンドル6の下端側には、前輪3を方向転換させる操舵用の操縦機構部8が配置されている。また、ボンネット7の左右両側方の走行機体1には、複数枚のマット状の予備苗を多段に載置させる左右の予備苗台9が設けられている。運転座席5の後方には、田面に植付けられた苗の側方の泥土中に粒状肥料を埋める施肥装置10が設けられている。
また、図1〜図3に示すように、走行機体1には、車体フレーム12と、エンジン21が設けられている。運転座席5の下方において、車体フレーム12にエンジン21が取付けられている。油圧無段変速機又は変速ギヤ群等を設けるミッションケース22がエンジン21の前方に配置されている。エンジン21は、走行機体1の前後方向中心線に沿った位置に配置されている。即ち、走行機体1の左右幅中央部にエンジン21を配置している。
図3に示すように、エンジン21は、クランク軸23が左右方向に延びる横向き姿勢で配置されている。クランク軸23の左端部にプーリ24が取付けられ、プーリ24に巻き掛けられたベルト25を介して、エンジン21の動力がミッションケース22に伝達される。ミッションケース22における後部の左側面にはHST(静油圧式無断変速機)26が取り付けられている。エンジン21からの動力がHST26の入力軸27にプーリ27aを介してベルト25で伝達される。ベルト25にはテンションプーリ28が当接している。
図3及び図11に示すように、ミッションケース22から後方へ突出するPTO軸22aの回転力は、植付ミッションケース76に入力される。植付ミッションケース76から後向きに突出する植付軸2aと上向きに突出する施肥駆動軸77とに、PTO軸22aを介して動力が伝達される。植付ミッションケース76では、走行速度と苗植付装置2の駆動速度(回転速度)との比率を変えることができ、外部から操作してPTO軸22aの回転数と出力軸(植付軸2a及び施肥駆動軸92)の回転数との関係を変えることにより、前後に隣り合った苗株の間隔(株間)を変えることができる。
ミッションケース22の前部の左右側面には、左右のフロントアクスルケース30が取り付けられている。左右のフロントアクスルケース30に設けられた左右の前輪車軸31に、左右の前輪3が回転自在に且つ操舵可能にそれぞれ支持されている。ミッションケース22からは、走行ドライブ軸32が後向きに延びている。ミッションケース22から出力される後輪4の駆動力は、走行ドライブ軸32を介してリヤアクスルケース33の内部に伝達される。リヤアクスルケース33には、走行ドライブ軸32に連動連結される後輪走行入力軸75が設けられている。
リヤアクスルケース33は、エンジン21の後側の斜め下方に配置されている。ミッションケース22とリヤアクスルケース33とは、走行機体1の中心軸状で、パイプ製の連結フレーム13で一体的に連結されている。リヤアクスルケース33から左右に後輪車軸34を突出している。左右の後輪車軸34に左右の後輪4を相対回転不能にそれぞれ軸支している。リヤアクスルケース33は、車体フレーム12に左右2本のリヤ支柱16で連結されている。リヤ支柱16は、側面視において、鉛直線に対してやや前傾した姿勢に上下方向に延長されている。
エンジン21、ミッションケース22等の上面側は、作業者が搭乗する車体カバー37で覆われている。車体カバー37は一体構造で、左右の前輪3等を目視可能に多数のスリットが形成されている。運転座席5は、車体カバー37の上面に設けられ、走行機体1のほぼ左右中央部の位置でかつ側面視では概ね車体フレーム12における傾斜部12aの前半部の上方に位置している。
図2に示すように、ミッションケース22の上方の走行機体1の右側寄りの箇所、換言するとボンネット7の右側の車体カバー37上であって、左側にプレーキペダル38が、右側にアクセルペダル39がそれぞれ配置されている。また、走行機体1のボンネット7周辺等には、各種のレバー類(主変速レバー、アクセルレバー、植付昇降レバー113等)、スイッチ(整地ロータ昇降スイッチ等)類、ダイアル類を備えている。ボンネット7上のフロントパネル(図示せず)には、計器やディスプレイ等を設けている。
苗植付装置2の左右にはサイドマーカ71が設けられている。サイドマーカ71は、未植田面に次行程の植付け軌跡を形成する筋引き用のマーカ輪体72と、マーカ輪体72を先端側に回転自在に軸支した棒状のマーカアーム73とを備えている。マーカアーム73は、植付機体50に回動可能に支持されている。マーカアーム73の回動(起伏動作)によって、マーカ輪体72は、田面に着地させた作業姿勢と、マーカ輪体72を地上に上昇させた収納姿勢とに移動可能に構成されている。
運転座席5の後方には施肥装置10が配置されている。施肥装置10は、粒状肥料を入れるホッパ40を備えている。施肥装置10の肥料繰出部を介して定量送出されるホッパ40内の粒状肥料は、送風機41の送風搬送作用により、フレキシブル型のホース42を介して、苗植付装置2によって植付けられた苗に隣接する田面の泥土中に投下される。
苗植付装置2は、ミッションケース22を介して入力されたエンジン21からの動力で駆動される6条分の植付爪機構45と、6条用の苗載台46と、各植付伝動ケース44の下面側に設置した田面均平用のフロート47とを備えている。
図1〜図4に示す如く、苗載台46は、前高後低に傾斜した姿勢に設けられている。上部ガイドレール48と下部レール49を介して、植付機体50のうち、植付フレーム51及び左右のサイドフレーム52に、苗載台46が左右往復動可能に支持されている。植付機体50は、苗載台46の前側下部に配置された左右に長い角筒状の植付フレーム51と、植付フレーム51の左右両端側から立設された左右のサイドフレーム52と、左右のサイドフレーム52の上端側を連結する上連結フレーム53と、左右のサイドフレーム52の上下中間部を連結するロ―タ昇降軸54とを備えている。上連結フレーム53は、サイドフレーム52に上ブラケット52aを介して溶接固着され、ロ―タ昇降軸54は、サイドフレーム52に中ブラケット52cを介して回動可能に設けられている。
図1に示すように、植付フレーム51の左右幅中央位置に、図示しないローリング支点軸を介して、ヒッチブラケット62を連結している。トップリンク63及びロワーリンク64を含む昇降リンク機構65を介して、ヒッチブラケット62を車体フレーム12(走行機体1)後側に連結している。車体フレーム12に取付けた油圧式の昇降シリンダ66がロワーリンク64に連結されている。昇降シリンダ66を駆動時に、昇降リンク機構65を介して、苗植付装置2が昇降する。なお、苗植付装置2は、前記ローリング支点軸回りに回動して左右方向の傾斜姿勢が変更される。
また、ミッションケース22から後側方に向けて植付軸2aを突出させている。植付フレーム51の左右中央に取付けられた植付入力ケース(図示せず)から前側方に向けて突出させた植付入力軸(図示せず)に、植付軸2aからの駆動力が、自在継手軸61を介して伝達される(図1参照)。前記植付入力軸に伝達された駆動力によって、苗載台46の左右方向の横送り動作と、苗載台46上のマット状苗の縦送り動作と、植付爪機構45の回転駆動を行わせるように構成している。
植付爪機構45として、植付フレーム51の後部に、ロータリケース55を支持する植付伝動ケース44が、後向き片持ち状に連結されている。植付フレーム51の左右側端部と中央部の計3箇所に植付伝動ケース44がそれぞれ取付けられている。植付伝動ケース44には、一方向に等速回転させる2条分のロータリケース55が軸支されている。ロータリケース55の回転軸芯を中心に対称位置に一対の爪ケース56を配設している。各爪ケース56に植付爪57を取付けている。すなわち、苗植付装置2の下降時には、左右に往復摺動させる苗載台46から、ロータリケース55の1回転で、2本の植付爪57によって2株分の苗が取出され、フロート47によって整地された田面に2本の植付爪57によって1条の苗が連続して植付けられ、6条の苗植え作業が連続的に行われるように構成している。
植付フレーム51の下側には、左右方向に延びる植付深さ調節用の支点軸67が回動自在に取付けられている。図5に示すように、各フロート47の上面に取付けたブラケット68が、調節リンク69を介して、支点軸67に連結されている。支点軸67に基端を固設する植深調節レバー67aを操作して、苗の基準植付深さの調節が行われる(図1参照)。なお、中央位置のフロート47に連結された図示しない昇降リンクによって、フロート47の傾斜角度の変化を検出して、苗の植付け深さ自動制御を可能にしている。
苗植付装置2の前方には、整地装置35が設けられている。整地装置35は、フロート47の前方に設けられた整地ロータ80と、整地ロータ80を植付機体50に支持させるロータ支持縦フレーム130と、リヤアクスルケース33に設けた整地ロータ駆動ユニット82と、整地ロータ駆動ユニット82の動力を整地ロータ80に伝達する自在継手軸36とを備えている。
整地ロータ80は、左右に延びる1本のロータ軸81と、ロータ軸81上に配置された複数の羽根状のロータ片83と、ロータ軸81の左右方向の略中央に配置された整地ロータ伝動ケース84と、ロータ片83の上方を覆うロータカバー140とを備えている。自在継手軸36を介して、整地ロータ駆動ユニット82から伝達された動力は、ロータ軸81に伝達されて、ロータ軸81及びロータ片83を回転させる。即ち、苗植付装置2の左右幅の田面(6条分の植付幅の田面)が、ロータ片83によって均されるように構成している。
整地ロータ80は苗植付装置2とは非連動で昇降させるロータ昇降機構141を備えている。ロータ昇降機構141は、後述するロータ昇降ハンドル133の操作で昇降動する。ロータ昇降機構141は、植付機体50の左右のサイドフレーム52から、下方に延長されたパイプ状のロータ支持縦フレーム130を有する。ロータ支持縦フレーム130の下端側に、ロータ軸81が回動可能に連結されている。
ロータ支持縦フレーム130は、平行リンク機構を形成する上リンク131と下リンク132を介して、サイドフレーム52に連結されている。サイドフレーム52には、中ブラケット52bを介してロ―タ昇降軸54が回動可能に取付けられている。また、ロ―タ昇降軸54に上リンク131の一端側が固着され、ロータ支持縦フレーム130に上リンク131の他端側が回動可能に連結されている。サイドフレーム52の下端側に下ブラケット52cを介して下リンク132の一端側が回動可能に連結され、ロータ支持縦フレーム130に下リンク132の他端側が回動可能に連結されている。
ロ―タ昇降軸54のうち右側のサイドフレーム52に近い位置には、整地ロータ80を昇降させるロータ昇降ハンドル133の基端側が溶接固着されている。ロータ昇降ハンドル133の操作部が前方に向かって延長されている。右側のサイドフレーム52には、ロータ昇降ハンドル133の中間を係脱可能に係合させる位置保持体134が設けられている。位置保持体134によって、ロータ昇降ハンドル133が操作位置に保持される。なお、位置保持体134には、ロータ昇降ハンドル133を係脱可能に係合させる複数のノッチ(図示せず)が形成されている。
上記の構成により、作業者がロータ昇降ハンドル133を把持して上方または下方へ回動させた場合、ロ―タ昇降軸54回りに上リンク131が回動する。上リンク131の回動に伴い、上リンク131に連結されたロータ支持縦フレーム130を介して、平行リンク動作によって略垂直方向に整地ロータ80が上昇動または下降動する。整地ロータ80が上昇位置(非作業位置)または下降位置(着地作業位置)に移動する。ロータ昇降ハンドル133を位置保持体134の受部に係合させることによって、整地ロータ80が所定高さに保持される。この整地ロータ80の上下動は、苗植付装置2とは非連動で行われるため、苗植付装置2が下降位置(着地作業位置)に支持されている場合でも、整地ロータ80を上昇位置(非作業位置)に支持できる。
後方に向けて突出させるワイヤ連結アーム138の前端側がロ―タ昇降軸54に溶接固着されている。ワイヤ連結アーム138の後端側には、ワイヤ連結片135を介してクラッチ連動ワイヤ136の一端側が連結されている。クラッチ連動ワイヤ136の他端側は、左側のリヤ支柱16の左外側面に設けられたクラッチ入切アーム137の後端側に連結されている。クラッチ入切アーム137は、前後方向に延長させた長手方向の中央部でリヤ支柱16に回動可能に軸支されている。
クラッチ入切アーム137の前端側は、連結ロッド139を介して、リヤアクスルケース33の駆動クラッチ作動アーム106に連結されている。整地ロータ80が上昇位置(非作業位置)または下降位置(着地作業位置)に移動した場合、それと連動して、クラッチ連動ワイヤ136を介してクラッチ入切アーム137が回動することによって、連結ロッド139を介して、駆動クラッチ作動アーム106が回動して、整地ロータ80への動力伝達を入り切りする整地ロータクラッチ89が入り切り操作されるように構成している。
例えば、作業者が、ロータ昇降ハンドル133を上方へ回動操作して、整地ロータ80を所定高さ位置まで上昇移動させることによって、クラッチ連動ワイヤ136を介して、整地ロータクラッチ89が切り作動するように構成している。一方、ロータ昇降ハンドル133を下方へ回動操作して、整地ロータ80を所定高さ位置まで下降移動させることによって、クラッチ連動ワイヤ136を介して、整地ロータクラッチ89が入り作動するように構成している。
リヤアクスルケース33には、走行ドライブ軸32に連結される後輪走行入力軸75等を含む後輪走行入力ユニット90と、後輪走行入力軸75に連動して左右の後輪4へ動力を伝達する分配軸91と、分配軸91の左右端側にそれぞれ配置されたサイドクラッチ93と、後輪走行入力軸75に連動する整地ロータ駆動軸85を備えた整地ロータ駆動ユニット82とが配置されている。整地ロータ駆動軸85は自在継手軸36を介して、整地ロータ80のロータ軸81に連結されている。リヤアクスルケース33の左右両側には、後輪車軸34が配置されるファイナルケース蓋体94が設けられ、ファイナルケース蓋体94内には、分配軸91の動力を後輪車軸34に伝達するファイナルギヤ機構95が配置されている。
前後方向に延びる後輪走行入力軸75は、リヤアクスルケース33のうち連結フレーム13の左側に設けられている。左右方向に延びる分配軸91は、後輪走行入力軸75の後方に設けられている。分配軸91は、分配軸用軸受91a、91bを介してリヤアクスルケース33に支持されている。前後方向に延びる整地ロータ駆動軸85は、後輪走行入力軸75の下方で、後輪走行入力軸75の左側にオフセットして設けられている。
リヤアクスルケース33には、後輪走行入力軸75を設ける入力軸ケース部43aと、左右の車軸を設ける左右のファイナルギヤケース部43bと、分配軸91を設けるサイドクラッチケース部43cとを形成している。また、整地ロータ80に整地ロータ駆動軸85を介して動力を伝達する構造であって、リヤアクスルケース33に駆動軸ケース部43dを形成している。駆動軸ケース部43dに整地ロータ駆動軸85を設け、入力軸ケース部43aの下側に駆動軸ケース部43dを二層状に設けている。
入力軸ケース部43aには、リヤアクスルケース33の前側壁33cに開口する前向き軸孔33aが設けられ、前向き軸孔33aを介して、前記後輪走行入力ユニット90がリヤアクスルケース33内に着脱可能に形成されている。後輪走行入力ユニット90は、前向き軸孔33aから前方に突出する後輪走行入力軸75と、後輪走行入力軸75を支持する前後の入力軸用軸受96、97と、分配軸91及び整地ロータ駆動軸85へ動力を伝達するための後述する伝動ギヤ体100とを備えている。
後輪走行入力軸75の後端側に伝動ギヤ体100が設けられている。伝動ギヤ体100に、分配軸用ベベルギヤ100aと、駆動軸用平ギヤ100bが一体的に形成されている。分配軸用ベベルギヤ100aに、分配軸91に設けた連動用ベベルギヤ107が噛合されている。駆動軸用平ギヤ100bに、整地ロータ駆動軸85に設けた連動用平ギヤ88が噛合されている。
即ち、分配軸用ベベルギヤ100aと駆動軸用平ギヤ100bは、鍛造加工等によって伝動ギヤ体100として一体的に形成されている。分配軸用ベベルギヤ100aと駆動軸用平ギヤ100bとを一体形成しているから、リヤアクスルケース33内で、後輪走行入力軸75を、駆動軸用平ギヤ100bの設置寸法分(ギヤ100bの厚み分)後方へ延長するだけで、後輪走行入力軸75上に伝動ギヤ体100を設けることができる。
後輪走行入力軸75の後端側に駆動軸用平ギヤ100b(伝動ギヤ体100)を配置しているから、後輪走行入力軸75の後端側に整地ロータ駆動軸85の中間を連結できる。リヤアクスルケース33の前後幅内に整地ロータ駆動軸85を配置できる。また、伝動ギヤ体100では、駆動軸用平ギヤ100bの歯底径を、分配軸用ベベルギヤ100aの歯先径以上の寸法に設定している。
後輪走行入力軸75に、前後の入力軸用軸受96、97と、伝動ギヤ体100とを配置して、後輪走行入力ユニット90を構成しているから、リヤアクスルケース33の前側方から前向き軸孔33aに後輪走行入力ユニット90を挿入でき、リヤアクスルケース33に後輪走行入力ユニット90を装着できる。
後輪走行入力軸75が、前後方向の機体中心線に対してリヤアクスルケース33の左側寄りの位置に配置されているから、後輪走行入力軸75から分配軸91へ動力を分岐する分配軸用ベベルギヤ100aや連動用ベベルギヤ107)も、分配軸91の左側寄りの位置に配置されている。分配軸91の左右端部には、左右のサイドクラッチ92が配置され、各サイドクラッチ92の内方側に、サイドクラッチ92を入り切り作動させるサイドクラッチ用カム軸124が設けられている。
図6に示す如く、サイドクラッチ92は、多板式構造で、操縦ハンドル6の操作と連動して、所定以上の操舵角になったときに、切り作動するように構成されている。操縦ハンドル6は、操縦機構部8、車体フレーム12の下方に前後に長く設けられた中間ロッド112、及び終端ロッド112aを介して、リヤアクスルケース33の下方に配置された回動アーム120の一端側に連結されている(図1及び図10参照)。操縦ハンドル6の回転操作によって、中間ロッド112が前後方向に押し引きされて、回動アーム120を左右方向に回動させる。
図6に示す如く、回動アーム120の他端側は、リヤアクスルケース33を上下に貫通して延びる支点軸121を介して、リヤアクスルケース33の上方に配置された作動アーム122の中央部に連結される。回動アーム120と支点軸121と作動アーム122とは、一体的に回動する。作動アーム122の左右の端部は、左右一対の中間アーム123の一端に接離可能に設けられている。作動アーム122は、ロッド112の移動によって、左右いずれの中間アーム123にも接触しない位置か、あるいは、左右いずれか一方の中間アーム123を押圧する位置に変位する。
図6に示す如く、左右の中間アーム123の他端には、一体回転可能にサイドクラッチ用カム軸124が設けられ、サイドクラッチ用カム軸124の下端側は、下方へ延長されてリヤアクスルケース33に挿入される。サイドクラッチ用カム軸124の下端側カム側面が、サイドクラッチ92の内方側に当接している。サイドクラッチ用カム軸124の回転によって、サイドクラッチ92は入り切りされる。
即ち、圃場の枕地で次行程位置に方向転換させるときに、操縦ハンドル6を所定操舵角以上に旋回操作することによって、ロッド112が押されるか又は引かれて、回動アーム120及び支点軸121を介して作動アーム122が回転し、旋回内側のサイドクラッチ92に対応する中間アーム123を押圧する。中間アーム123が押圧されると、サイドクラッチ用カム軸124が回転し、旋回方向内側のサイドクラッチ92を切り作動させる。このように、所定操舵角以上の旋回操作時に、旋回内側の後輪4への動力伝達を、操縦ハンドル6の回動操作に連動させて遮断することで、旋回半径が小さくなる。走行機体1の旋回性能の向上を図っている。なお、操縦ハンドル6を所定操舵角以下に旋回操作したときは、旋回内側と旋回外側の両方のサイドクラッチ92が継続維持され、操縦ハンドル6操作によって大きく蛇行走行するのを防止でき、条合わせ操縦性能(直進走行性能)を向上できる。
さらに、図10に示す如く、整地ロータ駆動軸85は、後輪走行入力軸75の鉛直下方に配置されるのではなく、後輪走行入力軸75に対してオフセットして設けられている。従って、リヤアクスルケース33内での、後輪走行入力軸75と分配軸91との連結部分と、後輪走行入力軸75と整地ロータ駆動軸85との連結部分との干渉を軽減できる。後輪走行入力軸75から整地ロータ駆動軸85へ動力を分岐する構造(整地ロータ駆動ユニット82)をリヤアクスルケース内に設けても、リヤアクスルケース33の上下寸法の増加(下方への突出量)を軽減できる。
図10に示す如く、後輪走行入力軸75に対する整地ロータ駆動軸85のオフセット量Lは、整地ロータ駆動軸85と後輪走行入力軸75とが平面視で重なる(ラップする)程度に設定している。従って、サイドクラッチ92の配置に制限を与えることなく、リヤアクスルケース33内に、後輪走行入力軸75から整地ロータ駆動軸85へ動力を分岐する構造(整地ロータ駆動ユニット82)を設けることができる。
リヤアクスルケース33の後面に後向き軸孔33aが後向きに開口され、リヤアクスルケース33の後面(後向き軸孔33a)から、整地ロータ駆動軸85の後端側が後方へ突出して、自在継手軸36に連結されている。整地ロータ駆動ユニット82は、整地ロータ駆動軸85と、リヤアクスルケース33に整地ロータ駆動軸88を支持する前後の駆動軸用軸受86、87と、後輪走行入力軸75の駆動軸平ギヤ100bに噛合する連動用平ギヤ88と、後輪走行入力軸75から整地ロータ駆動軸85への動力伝達を入り切りする整地ロータクラッチ89とを備えている。
図8に示す如く、駆動軸用軸受86、87は、整地ロータ駆動軸88の前端側と後端側に配置されている。連動用平ギヤ88は、整地ロータ駆動軸85の中間に配置されている。整地ロータクラッチ89は、整地ロータ駆動軸88の前端側に配置されている。
図7、図8に示す如く、整地ロータ駆動ユニット82は、整地ロータ駆動軸85上に、駆動軸用軸受86、87と、連動用平ギヤ88と、整地ロータクラッチ89とを配置して構成されている。整地ロータ駆動ユニット82は、整地ロータ駆動軸85を後向きに突出させる後向き軸孔33bを利用して、リヤアクスルケース33に着脱可能に設けられている。リヤアクスルケース33に整地ロータ駆動ユニット82を設けているから、従来のように整地ロータ駆動ユニット82を収納するための特別なケースが不要になる。構成部品数を削減でき、製造コストを低減できる。
図7、図8に示す如く、後向き軸孔33bの前端側が駆動軸ケース部43dの前側壁33cによって閉塞され、後向き軸孔33bの後面開口縁33dから整地ロータ駆動軸85の後端側が後向きに突出されている。後向き軸孔33bの内周のうち、リヤアクスルケース33の前側壁33cの内側の軸受嵌合前部115に駆動軸用軸受86を後向きに抜き出し可能に嵌合させる。後向き軸孔33bの内周のうち、リヤアクスルケース33の後面開口縁33dの内側には、駆動軸用軸受87を後向きに抜き出し可能に嵌合させる。従って、軸受嵌合前部115に駆動軸用軸受86を嵌合させるように、リヤアクスルケース33の後側方から整地ロータ駆動ユニット82を後向き軸孔33bの後面開口に挿入することによって、整地ロータ駆動ユニット82(後輪走行入力軸75から整地ロータ駆動軸85へ動力を分岐する構造一式)が、リヤアクスルケース33の駆動軸ケース部43dに装着される。
図7、図8に示す如く、後輪走行入力ユニット90を支持する前向き軸孔33aは、リヤアクスルケース33の入力軸ケース部43aに形成されている。整地ロータ駆動ユニット82を支持する後向き軸孔33bは、リヤアクスルケース33の駆動軸ケース部43dに形成されている。前記サイドクラッチケース部43c及び入力軸ケース部43aの前後方向幅寸法と、駆動軸ケース部43dの前後方向幅寸法を略等しく形成する。入力軸ケース部43a及びサイドクラッチケース部43cの下側に、駆動軸ケース部43dを二層状に設ける。即ち、後輪走行入力軸75及び分配軸91の下方側に整地ロータ駆動軸85を配置する。後輪走行入力軸75と平行に、分配軸91と交叉するように、整地ロータ駆動軸85が前後方向に延長される。
図7、図8に示す如く、後輪走行入力軸75の下方に整地ロータ駆動軸85が配置され、自在継手軸36に連結される整地ロータ駆動軸85の後端は、後輪車軸34と略同一高さ位置に設けられているから、自在継手軸36の傾斜角度を過大にすることなく、苗植付装置2の昇降動に伴う整地ロータ80の昇降範囲を確保できる。
また、図8に示すように、リヤアクスルケース33から整地ロータ駆動ユニット82を取外した整地装置35を備えない仕様に構成した場合、後向き軸孔33bの開口を封止用の蓋である蓋体108で閉塞する。即ち、リヤアクスルケース33に蓋体108を着脱するだけで、整地装置35を備えた仕様、又は整地装置35を備えない仕様に、リヤアクスルケース33の構成を変更できる。リヤアクスルケース33を交換して前記仕様を変更する必要がない。整地装置35を備えない仕様で田植機を出荷した後でも、蓋体108を外して、後向き軸孔33bに整地ロータ駆動ユニット82を挿入できるから、リヤアクスルケース33を交換することなく、整地装置35を装着できる。
図7、図8、図9に示す如く、後輪走行入力軸75の駆動軸用平ギヤ100bに連動用平ギヤ88を噛合させる。連動用平ギヤ88は、整地ロータ駆動軸85上に回転自在で且つ摺動不能に配置されている。連動用平ギヤ88の前方の整地ロータ駆動軸85上にロータ駆動用クラッチ89を設ける。ロータ駆動用クラッチ89は、整地ロータ駆動軸85に摺動可能に被嵌されたクラッチシフタ102と、クラッチシフタ102に形成されたクラッチ爪101と、クラッチシフタ102を連動用平ギヤ88に向けて弾圧するクラッチバネ103と、クラッチバネ103に抗して軸線方向に沿ってクラッチシフタ102を摺動させる駆動クラッチ用カム軸105を備える。
クラッチバネ103は、整地ロータ駆動軸85の前端側に巻装され、クラッチシフタ102の前端側と駆動軸用軸受86間に配置される。クラッチシフタ102の前端部の外周には、鍔状にカム係合片104が形成されている。カム係合片104に駆動クラッチ用カム軸105の一端側カムを係止している。リヤアクスルケース33(駆動軸ケース部43d)の左側面から外方に向けて駆動クラッチ用カム軸105を突出して、駆動クラッチ用カム軸105の突出端部に駆動クラッチ作動アーム106を連結している。
整地ロータ駆動軸85にクラッチシフタ102を係合軸支する。クラッチシフタ102は、整地ロータ駆動軸85にキー嵌合させ、且つ整地ロータ駆動軸85の軸線方向に摺動自在に設けている。駆動クラッチ作動アーム106がクラッチ連動ワイヤ136を介して操作され、駆動クラッチ用カム軸105が回動し、クラッチシフタ102が整地ロータ駆動軸85上を前後方向に摺動するように構成している。
上記の構成により、整地ロータ80の下降動によってクラッチシフタ102が連動用平ギヤ88に接近し、整地ロータ駆動軸85に伝達される動力が継続され、クラッチシフタ102が連動用平ギヤ88と連動して回転し、整地ロータ駆動軸85が駆動される。即ち、クラッチシフタ102が、クラッチバネ103によって連動用平ギヤ88側へ摺動させられて、クラッチシフタ102のクラッチ爪101が連動用平ギヤ88に係合したときには、連動用平ギヤ88の回転が、クラッチシフタ102を介して、整地ロータ駆動軸85に伝達され、後輪走行入力軸75に整地ロータ駆動軸85が連動して、整地ロータ80に動力が伝達される。
一方、整地ロータ80の上昇動によってクラッチシフタ102が連動用平ギヤ88から離反し、整地ロータ駆動軸85に伝達される動力が切断される。即ち、駆動クラッチ作動アーム106の作動によって、駆動クラッチ用カム軸105が回転し、クラッチバネ103に抗してクラッチシフタ102を連動用平ギヤ88から離間する方向に摺動させたときには、連動用平ギヤ88の回転が整地ロータ駆動軸85に伝達されない。後輪走行入力軸75が回転しても、整地ロータ駆動軸85が回転しないから、整地ロータ80は停止する。
例えば、水張り植付けや、中割植付け、枕地植付け等の苗植付作業において、整地ロータ80による代かき作業を行わない場合に、作業者がロータ昇降ハンドル133を上方へ回動操作すると、前述したように、整地ロータ80の上昇に伴って整地ロータクラッチ89が切り操作される。
次に、図12を参照して、整地ロータ80を昇降させるロータ昇降モータ109を設けた第2実施形態を説明する。整地ロータ80を昇降させるロータ昇降モータ109を備える。ロータ昇降モータ109は電動モータである。サイドフレーム52の下端寄りの位置に、モータ用ブラケット52dを介して、ロータ昇降モータ109を設ける。ロータ昇降モータ109の出力軸であるロータ昇降軸109aにロータ昇降上アーム142を設ける。下リンク132にロータ昇降上アーム142を介してロータ昇降下アーム143を連結する。ロータ昇降モータ109の正転または逆転により、ロータ昇降軸109aが回転して、下リンク132を回動させ、ロータ支持縦フレーム130を上下動させ、整地ロータ80を昇降させる。
フロントパネルに設けられた整地ロータ昇降スイッチ114の操作によって、ロータ昇降モータ109が正転又は逆転する。作業者が、整地ロータ昇降スイッチ114を操作して、ロータ支持縦フレーム130を上昇動させることによって、整地ロータ80が植付田面から離間した上昇位置(非作業位置)に保持される。逆に、作業者が、整地ロータ昇降スイッチ114を操作して、ロータ支持縦フレーム130を下降動させることによって、整地ロータ80が植付田面に着地した下降位置(作業位置)に保持される。この整地ロータ80の上下動は、苗植付装置2の昇降動と非連動で行われる。苗植付装置2が下降位置(作業位置)にあっても、整地ロータ80を上昇位置(非作業位置)に支持できる。
ロータ昇降ハンドル133は、苗植付装置2を上昇位置(非作業位置)に上昇させなければ作業者が把持できない。そのため、苗植付装置2が下降位置(作業位置)にあって、整地ロータ80を上昇位置(非作業位置)から下降位置(作業位置)に下降させるときには、一旦、苗植付装置2を上昇させなければならない。第2実施形態のように、整地ロータ80を、ロータ昇降モータ109で昇降させるように構成すると、苗植付装置2の位置にかかわらず、整地ロータ昇降スイッチ114を操作することで、整地ロータ80を昇降させることができるから、作業性を向上できる。
上記実施形態では、図7及び図8に示すように、エンジン21を搭載した走行機体1と、苗載台46と複数の植付爪57を有する苗植付装置2と、左右の後輪4を配置するリヤアクスルケース33と、植付け田面を均す整地ロータ80とを備えた田植機において、リヤアクスルケース33に、エンジン21からの動力を伝達する後輪走行入力軸75と、後輪走行入力軸75の動力を分岐して整地ロータ80に伝達する整地ロータ駆動軸85を設ける構造であって、整地ロータ駆動軸85を内挿させる後向き軸孔33bがリヤアクスルケース33に形成され、リヤアクスルケース33の後面側に向けて開口された後向き軸孔33bから、リヤアクスルケース33の後側方に整地ロータ駆動軸85を抜出し可能に構成したものであるから、リヤアクスルケース33と別に、整地ロータ駆動ギヤ等を配置するケースを設ける必要がない。リヤアクスルケース33に整地ロータ駆動軸85を簡単に設置できる。整地ロータ駆動軸85が不要な仕様のときに、後向き軸孔33bを蓋体108で簡単に閉塞できる。例えば、田植機を出荷した後でも、整地ロータ80を備えない仕様、又は整地ロータ80を備えた仕様に、簡単に変更できる。
また、上記実施形態では、図8及び図9に示すように、後輪走行入力軸75からの伝達動力を入切する整地ロータクラッチ89を備え、後向き軸孔33b内に整地ロータクラッチ89を配置し、後向き軸孔33bから後側方へ向けて整地ロータ駆動軸85の後端側を突出させたものであるから、リヤアクスルケース33の後側からの操作によって、整地ロータ駆動軸85と整地ロータクラッチ89を一体に着脱でき、整地ロータ駆動軸85の組付け作業性を向上できる。
また、上記実施形態では、図7〜図8に示すように、前部駆動軸用軸受86と、後部駆動軸用軸受87と、後輪走行入力軸75に連動させる連動用平ギヤ88と、後輪走行入力軸75からの伝達動力を入切する整地ロータクラッチ89が配置された整地ロータ駆動軸85を、リヤアクスルケース33の後側方から後向き軸孔33bに挿入可能に構成したものであるから、駆動軸用軸受86、後部駆動軸用軸受87、連動用平ギヤ88、整地ロータクラッチ89を、整地ロータ駆動軸85に集中配置して、整地ロータ駆動ユニット82を構成できる。リヤアクスルケース33又は整地ロータ駆動軸85の組立作業性等を向上できる。