JP2009139959A - カラー画像表示装置及び色変換装置 - Google Patents

カラー画像表示装置及び色変換装置 Download PDF

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Abstract

【課題】入力映像信号から決まる色を、自然な色相でかつ表示装置の広い色再現域を生かしながら、表示装置の色空間で再現するとともに、所望の階調特性に変更することも可能なカラー画像表示装置を提供する。
【解決手段】色変換部は、第1の色範囲では入力信号本来の色相及び彩度であり、第2以降の色範囲では色再現範囲を広げる方向へと少しずつ色相を変化させながら彩度を上げた色となるような仮想の色空間を想定し、入力映像信号がこの仮想色空間で表す三刺激値をカラー画像表示部で再現させるように映像信号を変換し、カラー画像表示部で表示させることで、違和感を覚えさせることなく、カラー画像表示装置の広い色再現域を生かした鮮やかな映像の再現を行う。
【選択図】図4

Description

本発明は、カラー画像表示装置及び色変換装置、より詳細には、映像信号の色変換を行うカラー画像表示装置及び色変換装置に関する。
近年、水銀レスなどの環境問題や、長寿命などの観点からカラー画像表示装置の光源としてLED(Light Emitting Diode)やレーザといった半導体光源を用いる動きが活発化している。また、半導体光源を用いる大きなメリットとして、広い色再現域のディスプレイが実現できることがあげられる。これは、半導体光源が鋭いスペクトルを持つことによるもので、赤・緑・青の三原色に半導体光源を用いたカラー画像表示装置は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや冷陰極管を用いた液晶ディスプレイなどの従来のカラー画像表示装置に比べて広い色再現域を持つことが可能である。しかしながら、広い色再現域のために、全体の彩度が高く表示されてしまうので、薄い青空が濃い青になったり、肌色が黄色になったり、不自然な色再現となってしまう。
また、半導体光源の赤・緑・青の色相は、入力映像信号が意図する各原色の色相とは異なっているため、そのまま半導体光源を光源としたカラー画像表示装置で表示した場合には、不自然な色合いの映像が再現されてしまう。例えば、緑は短波長の青味がかった緑のため、芝が青味がかった緑になったり、赤は長波長の深紅の赤のため、肌色が赤味がかった肌色になったり、不自然な色再現となってしまう。半導体光源による色相の違いを解決するために、例えば特許文献1によるカラーマネージメント技術が提案されている。
この特許文献1に記載の発明は、所望の色相と異なった色相の三原色を持つカラー画像表示装置において、RGB映像信号[R,G,B]を次のように原色成分ごとに三つの行列に分解し、
分解された成分をa〜iの定数を用いて以下のように変換し、
次のようにそれぞれの行列を再び足し合わせて、変換後のRGB映像信号[R’,G’,B’]を合成する。
このことは例えば赤を表示させる際に、赤だけでなく緑と青も一定の割合で発光させることで表示される赤の色相を変化させ、所望の色相を得ることを意味する。
図14は、従来の色変換装置を用いて色空間を変換した様子を示す色度図である。これは、u’v’色度図(CIE1976UCS色度図)であって、上記特許文献1に開示された方法を用いて、IEC61933−2−1で制定されているsRGB標準色空間に合わせて色相の補正を行った例である。白色の色度座標000から色度図上の任意の色の色度座標に向かって半直線を引くと、その半直線上の二点の色は色相が同じであり、白色の色度座標000からの距離がその点の色の彩度に概ね対応することは周知のことである。
カラー画像表示装置の色再現域010の三原色の色度座標は、白色の色度座標000とsRGB標準色空間(映像信号の色再現域)020の三原色の色度座標とを結んだ半直線上にはないため、sRGB標準色空間020の原色とは色相が異なっている。特許文献1に開示された方法で映像信号を変換することにより、色再現域030として再現することができる。色再現域030の三原色の色度座標は、白色の色度座標000とsRGB標準色空間020の三原色の色度座標とを結んだ半直線上に移されるため、変換後の三原色の色相がsRGB標準色空間020の三原色の色相と一致することになる。
特開2000−278705号公報
しかしながら、特許文献1に開示された方法では図14に示されるようにカラー画像表示装置の色再現域を狭くすることで色相を合わせているため、広い色再現域を持つカラー画像表示装置を用いても、利用されるのは色再現域の一部だけであり、カラー画像表示装置の色再現域を色純度の高い領域まで広く利用することはできなかった。すなわち、色相を保持しながらカラー画像表示装置の色再現域を色純度の高い領域まで広く利用する、という要求を両立させることはできなかった。
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、入力映像信号から決まる色を、自然な色相でかつ表示装置の広い色再現域を生かしながら、表示装置の色空間で再現するカラー画像表示装置及び色変換装置を提供すること、を目的とする。
上記課題を解決するために、第1の技術手段は、少なくとも3つの原色を用いて画像を表示するカラー画像表示装置であって、該カラー画像表示装置で表示される色範囲は、白色を含む第1の色範囲と、該第1の色範囲より彩度の高い第2の色範囲との少なくとも2つの色範囲を含み、前記第1の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相と彩度とを保持した色を表示し、前記第2の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相とは異なる色相の色を表示することを特徴としたものである。
第2の技術手段は、少なくとも3つの原色を用いた入力映像信号を、特定のカラー画像表示装置に適した出力映像信号へと変換する色変換装置であって、前記カラー画像表示装置で再現される色範囲は、白色を含む第1の色範囲と、該第1の色範囲より彩度の高い第2の色範囲との少なくとも2つの色範囲を含み、前記第1の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相と彩度とを保持した色を表示し、前記第2の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相とは異なる色相の色を表示するような出力映像信号へと変換することを特徴としたものである。
本発明によれば、第1の色範囲では入力映像信号本来の色相で再現し、第2以降の色範囲では色再現範囲を広げる方向へと少しずつ色相を変化させながら彩度を強調して再現するため、違和感を覚えさせることなしに表示装置の広い色再現域を生かした、鮮やかな映像の再現を行うことができる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るカラー画像表示装置及び色変換装置の好適な実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の構成例を示すブロック図で、図中、10は入力映像信号、11はカラー画像表示装置、12は色変換部、13はカラー画像表示部を示す。入力映像信号10は色変換部12により色変換され、カラー画像表示部13で表示される。
色変換部12は、本発明の色変換装置に相当し、入力映像信号10に対してガンマ変換を行うガンマ変換部12aと、ガンマ変換されたRGB信号の変換処理を行う映像信号変換部12bと、カラー画像表示部13のガンマ特性の逆関数を用いて逆ガンマ変換を行う逆ガンマ変換部12cと、を備えて構成される。これら各部の詳細は後述する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示部13の構成例を示す図である。本実施形態で用いたカラー画像表示部13の一例として、LED(Light Emitting Diode)を光源に用いたDLP(Digital Light Processing、登録商標)プロジェクタを示す。
図2において、赤色LED20、緑色LED21、青色LED22からの光が、ミラー23と、緑反射・青透過のダイクロイックミラー24と、青緑反射・赤透過のダイクロイックミラー25とを用いて合成され、レンズ26を用いて集光された後にミラー27を経て空間光変調器28へ至る。このように空間光変調器28が一枚であるいわゆる単板の場合、LEDからの光を時分割し、空間光変調器28で各画素を赤・緑・青の発光の期間に合わせて光空間変調することにより、時間平均の光強度が各画素の入力映像信号に応じた値となって投射レンズ29へと反射される。投射レンズ29を通った光はスクリーン30に結像される。
図1に示す入力映像信号10は、sRGB標準色空間内の色を、下記の表1に表される色度座標を持つ赤・緑・青の標準原色成分に分解し、赤・緑・青の各成分の数値で表す標準RGB信号である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示装置の色再現域と映像信号の色再現域とを示す色度図である。これは、u’v’色度図(CIE1976UCS色度図)であり、カラー画像表示部13の色再現域100と、sRGB標準色空間をu’v’色度図上に投影した色再現域110を示している。
色度座標と三刺激値との関係を説明する。表1におけるxおよびyという値はxy色度図(CIE1931色度図)上の座標であり、CIE1931XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zとは次の関係がある。
u’v’色度図(CIE1976UCS色度図)での色度座標u’,v’とCIE1931XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zとは次の関係がある。
したがって式(1)と式(2)より、sRGB標準色空間の標準原色と白色のu’v’色度座標が容易に計算できる。また、標準RGB信号のRGB値とCIE1931XYZ表色系の三刺激値には次の関係がある。ただし式(3)および式(4)でのRGB信号値の範囲は0−255ではなく0−100となるように各RGB値に100/255を乗算しておく必要がある。
ここで、入力映像信号によって定まり、入力映像信号が表すことのできる色全体を表した空間を第1色空間とする。例えば入力映像信号10が有する第1色空間はsRGB標準色空間であり、図3に示すu’v’色度図において色再現域110内の色を表わすことができる。また、カラー画像表示部13が再現可能な色空間を第2色空間とする。例えばカラー画像表示部13の第2色空間は、図3に示すu’v’色度図上において色再現域100を持つ。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る色変換部12における色変換手順の一例を説明するためのフロー図である。まず映像信号の色再現域を取得する(ステップS1)。映像信号によって表される色は全て赤・緑・青の標準原色の足し合わせで表されるため、映像信号の色再現域は赤・緑・青の標準原色を表す映像信号に対応する三刺激値X,Y,Zの値からなる3×3行列によって特定される。本実施形態における映像信号はsRGB標準色空間であるため、表1と式(1)よりCIE1931XYZ表色系の三刺激値X、Y、Zを計算することができる。また計算を行わずに、あらかじめ映像信号の種類に応じた色再現域の情報を持たせておいて、これを参照してもよい。また、映像信号のガンマ特性も取得しておく(ステップS2)。
次に、カラー画像表示部13の色再現域と、カラー画像表示部13の伝達関数を取得する(ステップS3)。RGB標準信号の標準原色に当たるRGB信号[255,0,0]、[0,255,0]、[0,0,255]および黒に当たる[0,0,0]に対するカラー画像表示部13での三刺激値X、Y、Zを測定する。
下記の式(5)のように各信号での三刺激値を表す行列を順にR,G,BおよびKとする。映像信号[0,0,0]に対して測定される三刺激値Kは、すべての入力映像信号に対して等しく上乗せされる外部光のような雑音成分であるため、式(6)に示すように各測定値から差し引く。なお、Kの値がR,G,Bに比べて十分小さい場合は、簡易化のためにKを差し引く処理は省略してもよい。
こうして赤・緑・青の標準原色を表す標準RGB信号に対してカラー画像表示部13で表示される色の三刺激値の行列R’、G’、B’が得られる。各R’、G’、B’行列を0〜1の範囲で実数倍して足し合わせることで取りうる三刺激値にKを加えた範囲が、本実施形態のカラー画像表示部13が持つ第2色空間となっている。本実施形態のカラー画像表示部13における入力映像信号とカラー画像表示部13で表示される色との関係は、伝達関数Tにて一意に結び付けることが可能である。
伝達関数Tは、下記の式(7)のように、赤・緑・青の原色に対応する標準RGB信号の値を並べた3×3行列の逆行列と、これらのRGB信号を入力した際の測色値から黒に対応するRGB信号を入力した際の測色値を引いた値を並べた3×3行列との行列演算によって求められる。求めた伝達関数Tを用いると式(8)のように、任意の標準RGB信号[R、G、B]を入力したときにカラー画像表示部13で表示される色の三刺激値[X、Y、Z]を計算することが可能となる。
次に、この伝達関数の逆の関係(RGB値算出関数S)を求める(ステップS4)。
式(8)は式(9)のように変形することができる。
ここで行列T−1の成分を式(10)のように置くと、式(9)は式(11)と書き直すことができ、表示させたい三刺激値に対して4行3列の行列を掛けることで、カラー画像表示部13に入力すべきRGB信号値を算出できることがわかる。この三刺激値からRGB信号値を求めるための行列をRGB値算出関数Sとする。
なお、式(12)に示すRGB値算出関数Sは、演算を簡略化するために式(8)の左辺で雑音成分の影響を無視した式(13)から算出してもよく、あるいは精度を上げるために二次項を追加して伝達関数を10行3列に拡張した式(14)から算出しても構わない。また表示装置の入出力特性が大きな非線形性を持つ場合は、実際の入出力特性に即したルックアップテーブル(LUT)をRGB値算出関数として用いることで、精度をさらに向上することができる。なおLUTとは、入力に対する出力の対をあらかじめ求め、表としてまとめたものをいう。
なおここで三刺激値を求める際に用いるRGB値は実際の輝度と線形な関係を持った値でなければならない。標準RGB信号はCRTの特性に合わせて映像信号に逆ガンマ変換がなされているため、先に取得した映像信号のガンマ特性に基づき、ガンマ変換を行う必要がある。本実施形態のガンマ変換はITU−R BT.709に基づき次のように行った。
とした場合に、
以上のようにして、入力映像信号のRGB信号値R’signal、G’signal、B’signalから標準ディスプレイで表示される輝度と線形な関係を持った真の値であるR’value、G’value、B’valueにすることができる。
ここでは各入力映像信号に対して測定を行ったが、カラー画像表示部13の標準原色の座標と白色座標がわかっている場合は、測定を行わずに色度座標からX,Y,Zを逆算により求めてもよい。
次に、色温度の変更を行わない場合(ステップS5でNOの場合)、第1色空間と第2色空間から新たに第3色空間を定義する(ステップS7)。本実施形態の色変換部12は、所望の色がカラー画像表示部13で再現されるように映像信号を変換するが、変換によって再現しようとするのは、入力映像信号が表す第1色空間の色そのものではなく、第1色空間の色を第3色空間に変換した色である。そのため第1色空間と第3色空間の関係をどのように定義するかで、色変換部12で変換された映像によってどのように映像が再現されるかが決まる。第1色空間から第3色空間への変換は、第1色空間を複数の色範囲に分けた上で行い、各々の色範囲で第1色空間と第3色空間は異なる関係を持つ。また、色範囲のうち特に白色を含む色範囲を、変換前および変換後でそれぞれ第1色空間第1色範囲および第3色空間第1色範囲と呼ぶこととする。第1色空間第1色範囲の外側にあり、第1色空間の少なくとも一つの原色と同じ色相の色を含んだ色範囲の一つを、第1色空間第2色範囲と呼ぶこととする。第1色空間第2色範囲の色は、第3色空間第2色範囲へと変換される。
第3色空間を定義するに際し、まず、第1色空間の白色の三刺激値を求める。本実施形態の入力映像信号が従うsRGB規格では、白色の三刺激値が定められているので定義されている値を用いればよいが、表示装置で異なった色温度の映像を再現したいときなど、第3色空間で再現したい白色座標が第1色空間の白色座標と異なる場合(ステップS5でYESの場合)、前もって第1色空間の再定義を行う(ステップS6)。白色座標において三刺激値のうち輝度を表すYの値を100と決めると、第1色空間の赤・緑・青の色度座標は既知であるため、本来の第1色空間と異なった白色座標に対応する赤・緑・青の三刺激値が計算により得られる。
また、あらかじめ代表的な白色の色温度に対してこれらの三刺激値の値を計算したテーブルを用意しておき、参照してもよい。なお色温度を変更する場合には、視覚機能の順応効果を考慮して、白色座標だけでなく赤・緑・青の原色座標の再定義を行ってもよい。再定義を行った場合には、再定義された赤・緑・青の原色座標および白色座標によって決まる色空間を、改めて第1色空間とする。
続いて、第1色空間の赤・緑・青および白の座標を元に、色相を保持したまま第1色空間を拡大、すなわち彩度を強調した第3色空間第1色範囲を定義する。なお、本明細書においては、二次元平面である色度図を用いて色相を考える場合、基準とする白色座標からある色Aの座標へ向かって伸ばした半直線上を伸ばし、色Aがこの半直線上の別の色に変換された場合に、色相が保持されているものとする。また、三次元空間である均等色空間で色相を考える場合には、基準とした白色座標から色Aの座標へ向かって半直線を引き、この半直線を含み輝度(明度)軸に水平な平面を考え、色Aがこの平面上の色へと変換された場合に、色相が保持されているものとする。
本実施形態では色度図上で第3色空間を定義する。色度図上で第1色空間の白色座標から第1色空間の各原色の色度座標へ伸ばした半直線上に新しい原色点の色度座標を定めると、全体の色相を保持したまま彩度を強調することができる。ただし、これだけでは第3色空間第1色範囲の三原色の色相が第1色空間の三原色と色相が同じであることは保証されるが、それぞれの原色を足し合わせた任意の中間色に対しても色相が保持されるとは限らない。
第3色空間第1色範囲の中間色の色相についても第1色空間の色相を保持させるためには、第3色空間第1色範囲の三原色を足し合わせて決まる白色座標が、第1色空間の白色座標と同じになるように、第3色空間第1色範囲の三原色の輝度の比率を定めればよい。
図5に第1色空間の三原色と色相が同じになるように第3色空間第1色範囲の三原色の色度座標を定め、三原色間の輝度の比を第1色空間の三原色間の輝度比と同じにした場合の例を、図6に三原色の色度座標は前者と同じであるが第3色空間第1色範囲の白色の色度座標が第1色空間の白色の色度座標と同じになるように第3色空間第1色範囲の三原色間の輝度の比を定めた場合の例を示す。
色度点210〜213は図5と図6で同一の色度座標となっており、色度点210は第1色空間の白色座標を表し、色度点211〜213は適当な異なるRGB信号が第1色空間にて示す色を表している。色度点210〜213の色を第3色空間第1色範囲に変換した色がそれぞれ図5の色度点230〜233と図6の色度点250〜253である。なお、図6において、色度点250は白色座標である色度点210と一致している。
白色座標を考慮しない図5の場合には、四点全ての色で、変換によって色相が変化してしまっているのに対し、図6では第3色空間第1色範囲の色は、第1色空間における色と同じ色相となっていることがわかる。図5,図6に示したのはいくつかの色の場合の例だけであるが、この関係は白色の座標を第1色空間と同じになるように定める限り、全ての色に関して成り立つ。
続いて、白色の座標を変化させずに三原色の色相を保持したまま彩度を強調する具体的な方法の一例を示す。第1色空間の三原色の三刺激値をそれぞれ[XAr,YAr,ZAr]、[XAg,YAg,ZAg]、[XAb,YAb,ZAb]とし、これら三原色の三刺激値の和である第1色空間の白色の三刺激値を[XAw,YAw,ZAw]とする。また第3色空間の三原色の三刺激値をそれぞれ[XBr,YBr,ZBr]、[XBg,YBg,ZBg]、[XBb,YBb,ZBb]とする。ここで次の式(15)のように第1色空間の三原色の三刺激値に対して同一の定数を乗算し、第1色空間の白色と同じ比率の三刺激値を加算して、第3色空間第1色範囲の三刺激値を決定する。
とすると、任意のRGB信号[R,G,B]に対する、第3色空間での三刺激値[XB1,YB1,ZB1]との関係が以下のように書ける。
となる。なおRGB信号[R,G,B]に対する、第1色空間での三刺激値[XA1,YA1,ZA1]との関係は次式である。
ここで白色を表すRGB信号[255,255,255]に対する第3色空間の三刺激値[XBw,YBw,ZBw]は式(16)より
となるため第1色空間の白色と色度座標が変化しない。なお
と置いた。
また、三刺激値に定数を乗算しても色度座標が変化しないことは明らかであり、ある二色を加法混色してできた色の色度座標は、足し合わせた二色の色度座標を結んだ線分上の点にくるという周知の事実から、白色の比で三刺激値を加減算すると色相を変化させずに彩度が変化することが容易に理解できる。ここで白色の三刺激値は第3色空間第1色範囲への変換後も代わらないとすると、式(18)から
が求められる。
上記式(20)を満たす任意のb、b、bに対して、三原色の色相が変わらないという関係と、白色の色度座標が変化しないという関係が成立するため、b、b、bは式(20)を満たす任意の値を選んでよい。例えば三原色それぞれに同一の三刺激値を加えるという意味で、b=b=bとすることができる。また別の一例としてb、b、bの比が第1色空間の三原色の輝度の比と同じになるように、b:b:b=YAr:YAg:YAbと定めることもできる。このことはすなわち、
を意味する。すると式(15)は
となるため、任意のaの値に対して
が成り立ち、三原色の輝度が第1色空間と第3色空間第1色範囲で等しくなる。さらに式(16)の一行目と式(17)から、YAr=YBr、YAg=YBg、YAb=YBbであれば任意のRGB信号[R,G,B]に対してY=Yとなることは明らかである。すなわち、任意のaに対し式(21)のようにb、b、bを定めると、第3色空間第1色範囲は第1色空間と全ての色に関して色相が保持されるだけでなく、輝度も保持されることになる。
図7は、第1色空間をsRGBとしてaを変化させた場合の第3色空間第1色範囲の変化を示す図である。b、b、bの関係を定めると、aだけで第3色空間が定義されることになる。図中、300は白色座標であり、310はa=0.8のときの第3色空間第1色範囲を、320はa=1.0のときの第3色空間第1色範囲を、330はa=1.2のときの第3色空間第1色範囲をそれぞれ示している。
これより、a=1.0では第3色空間第1色範囲は第1色空間と一致し、a<1では第3色空間第1色範囲は第1色空間と色相が同じで全体に彩度が低くなり、a>1では第3色空間第1色範囲は第1色空間と色相が同じで全体に彩度が高くなることがわかる。したがってaが彩度の強調度合いを表している。aの値は、aを変化させたときの第3色空間第1色範囲とカラー画像表示部13の第2色空間を色度図上で比較し、第3色空間第1色範囲が第2色空間の広い領域を含むように決めることができる。
以上で述べた第3色空間第1色範囲の定義の方法では、aという一つのパラメータの調整だけで第3色空間第1色範囲を定義できるようにしたため、簡単に彩度の強調度合いを変えることができる。また、このように三刺激値XYZの計算のみで第3色空間第1色範囲を定義するほかにも、u’v’色度図やxy色度図(CIE1931色度図)、あるいは均等色空間であるCIE1976L*a*b*色空間やCIE1976L*u*v*色空間において第1色空間の白色座標と第1色空間の三原色の色度座標とを結んだ半直線上で自由に三原色の色度座標を定めてから、第3色空間第1色範囲の白色の色度座標が第1色空間の白色の色度座標と同じになるように第3色空間第1色範囲の三原色の輝度比を決めるという定義の仕方をすることもできる。
また、白色の色度座標と三原色の色度座標とを結んだ半直線上から外れた色度座標の色を第3色空間第1色範囲の原色に取ることもできるが、この場合には原色の色相の変化によって第3色空間第1色範囲における色全体の色相の変化を抑えるために、第1色空間の三原色の主波長と第3色空間の三原色の主波長との差が±2nm以内となる範囲であることが望ましい。人間は一般的に最も感度のよい波長帯では2nm主波長の異なった光を区別することができるためである。
第3色空間第2色範囲では、第3色空間第1色範囲との境界における色の連続性を保ちつつ、色相の変化の方向を第3色空間第1色範囲と異なる方向へと変化させる。この色相の変化は第3色空間が第2色空間のより大きな範囲を含むように行い、本実施形態のような三原色表示装置の場合では、原色を表す入力映像信号に対して表示される色がより表示装置本来の原色に近づく方向となる。このように第3色空間を定義することによって、変換前の第1色空間において連続な色の変化は第3色空間においても連続となり、変換を行ったことによって突然色のジャンプが起こってしまうことなく、自然により広い色再現範囲を実現することができる。
ここで具体的な第3色空間の取り方について述べる。第3色空間第1色範囲での彩度の強調度合いをあまり大きく設定すると、主に肌色などで違和感を覚えやすくなる。そのため、第3色空間第1色範囲には彩度の変化に対して敏感な色を含み、彩度の強調度合いを控えることが望ましい。被験者10人の主観評価実験の結果、好ましい第3色空間第1色範囲は、白色の他に肌色や青空や緑葉の色を含む範囲とし、第3色空間第1色範囲の彩度強調度合いは先に述べたaが1.0〜1.2程度と、わずかな強調あるいは全く強調しないことが望ましいことが明らかになった。
なお第3色空間第1色範囲を定義する際には、肌色の彩度を押さえて明度を上げるといった記憶色の再現を考慮した補正を行っても良い。この場合は行列演算では値の連続性などの問題が発生するため、数点の座標を定義し、それらの点から他の色を補間したLUTを作成することが適している。
第3色空間第2色範囲の定義においては、彩度の強調度合いを第3色空間第1色範囲に比べて大きく変化させても違和感を覚えにくく、また色相を少しずつ変化させても大きな違和感を与えることはないことが、主観評価実験の結果明らかになった。元々彩度が高い色ほどこの傾向が強くみられたため、第3色空間の外側の色範囲ほど彩度の強調度合いを大きくし、色相の変化を大きくしても構わない。第3色空間第1色範囲の定義は一定のまま第3色空間第2色範囲の定義を変更させたLUTを作成し、主観評価実験を行った結果、彩度に関しては最終的に表示装置の色再現域ぎりぎりまで使用することが好ましいが、彩度が高い領域では明度を少し下げた方が良い結果が得られること、色相に関しては原色の色相は主波長で10nm程度変化させても問題は起こりにくいこと、補色では原色に比べて色相の変化の許容値が小さいこと、が明らかになった。
図8と図9に、第1色空間と第3色空間における各色範囲の例を示す。400および500が第1色範囲であり、この色範囲では第1色空間の色相を保持したまま彩度をわずかに強調し、第3色空間へ変換される。401および501は第2色範囲であり、この色範囲では先の第1色範囲との境界での色の連続性を保ちつつ、色相を少しずつ変化させながら彩度を強調して、第1色空間から第3色空間へと変換する。
第3色空間第2色範囲については、隣接する第3色空間第1色範囲との色の連続性が必要であるため、基本的に第3色空間第1色範囲のように一つの線形行列演算で映像信号の変換を行うことはできない。第3色空間の第2色範囲での原色座標と原色の輝度比によって、第3色空間第1色範囲と第3色空間第2色範囲とで原色信号は連続であっても、それらの原色信号を足し合わせた色では不連続になってしまうことがあるためである。これは白色から原色へ向かって色が変化する軌跡は、第1色空間では当然直線であるが、第3色空間では各色範囲の境界の度に折れ曲がっているため、第1色空間と第3色空間の第2色範囲では原色を足し合わせる際の重み付けが変化してしまうためである。この重み付けを補正すれば、第3色空間第2色範囲においても行列演算で変換を行うこともできる。
また、カラー画像表示部13のガンマ特性を補正するため、赤・緑・青それぞれについてガンマ特性を取得(測定)する(ステップS8)。なお、赤・緑・青でガンマ特性に大きな違いがないことがわかっている場合は赤・緑・青の全てのガンマ特性を測定する必要はなく、白色のガンマ特性の測定のみで代用することもできる。また、測定を行わずカラー画像表示部13の設定されたガンマの設定値から逆ガンマ変換を行ってもよい。
図1の色変換部12ではここまでのステップで求めた情報に基づいて、映像信号を変換する(ステップS9)。まずガンマ変換部12aでは、映像信号に付加されているガンマ特性の影響を排除する。続いて映像信号変換部12bにおいて、映像信号のRGB値を第1色空間のXYZ値へと変換し、さらにそのXYZ値を第3色空間のXYZ値へ変換し、そして表示装置用のRGB値へと変換する。その後逆ガンマ変換部12cにてカラー画像表示部13が持つ特性の逆のガンマ特性を付加し、カラー画像表示部へと出力される。なお、映像信号変換部12bの内部処理をまとめて、直接RGB値からRGB値を求めるようにしても構わないし、色変換部の入出力特性にガンマ変換部12aと逆ガンマ変換部12cの特性を加えたLUTを作成しても構わない。
以上、本実施形態による色変換を行うと、第3色空間第1色範囲へ変換される色は映像信号の色空間での色相を維持して再現され、第3色空間第2色範囲の色は、カラー画像表示部13の色再現域に応じて、色相を連続的に変化させながら彩度を強調した鮮やかな映像をカラー画像表示部13にて再現可能となる。なお第3色空間の色範囲の分け方は、ここで述べた分け方に限られるものではなく、また色範囲の境界線(境界面)は曲線(曲面)であってもよい。
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。第1の実施形態では、図8と図9のように色範囲を第1色範囲と第2色範囲に分けていたが、さらに多くの色範囲に分けて変換しても構わない。図10と図11に、第1色空間および第3色空間をより多くの色範囲に分けた場合の例を示す。第1色範囲は白色を含んだ色範囲である。第2色範囲は第1色範囲の一部に隣接し、各原色と同じ色相の色の一部を含んだ色範囲である。第3色範囲は第2色範囲と隣接した第2色範囲よりもさらに彩度の高い色を含む色範囲であり、第3色範囲も各原色と同じ色相の色の一部を含む。第4色範囲は第2色範囲と同じく第1色範囲に隣接するが、原色と同じ色相の色を含まない色範囲である。また第1色範囲のうち特に一部の色範囲を第5色範囲として、第1色範囲とは別に分けた。変換後の色範囲と色範囲の境界で色の変化が不連続な部分があると、本来あるべきでない色のジャンプが生じてしまうことを防ぐため、隣接した色範囲同士の境界では色の変化が連続となるようにする。
図10及び図11において、410および510が第1色範囲であり、この色範囲では第1色空間の色相を保持したまま彩度をわずかに強調して、第3色空間へと変換する。411〜413および511〜513は第2色範囲であり、色相を少しずつ変化させながら彩度を強調して、第1色空間から第3色空間へと変換する。414〜416および514〜516は第3色範囲であり、第2色範囲よりも色相をさらに表示装置本来の色相に向かって変化させながら彩度を強調して、第1色空間から第3色空間へと変換する。417〜419および517〜519は第4色範囲であり、本実施形態では特に各原色の補色の色相を保持するようにしながら彩度を強調して、第1色空間から第3色空間へと変換する。また第1色範囲のうち、特に420および520で示した第5色範囲では、周囲の色範囲との色の連続性を保ちつつ、より記憶色に近い色になるようにして、第1色空間から第3色空間へと変換する。本実施形態では一例として第5色範囲を特に肌色の範囲として、この色範囲の明度を相対的に上げることで、より記憶色に近い肌色を再現できるようにした。第3色空間定義後の処理は上述した処理と同様である。
第3色範囲では第2色範囲よりも彩度の強調度合いを大きくしたため、結果的に第2色範囲の彩度の強調度合いは第1の実施形態の場合に比べて緩やかになる。すると第1色範囲と第2色範囲での彩度変化の差が緩やかになり、より自然に感じられるようになる。第4色範囲では、原色色相に比べて原色に対する補色の色相はあまり変化しないため、鮮やかな黄色などでの色相の不自然さを軽減することができる。第5色範囲では記憶色に近い再現を行うことにより、より好ましい肌色を再現できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態は、表示装置の色再現域が第1色空間に対してそれほど大きくなく、また表示装置の伝達関数が行列で表せる場合などに、第1の実施形態で触れたLUTや重み付けの補正を行わずに、第3色空間を定義する方法の例である。
第1の実施形態では、第1色空間を複数の色範囲に分け、それぞれの色範囲ごとに第3色空間へと変換したが、本実施形態ではまず第1色空間全体を、一度表示装置の第2色空間よりも大きな仮想的な色空間(以降、第4色空間と称す)へと変換し、その後第2色空間の範囲内に収めるよう第4色空間を変換した色空間を、第3色空間とする。
以下に第3色空間を定義する具体的な方法を示す。
第1の実施形態において第3色空間第1色範囲を定義した際の計算において、b=b=bおよびa=1.18として第4色空間を定義した。図12に示すu’v’色度図において、600は白色座標、610は第1色空間であるsRGB空間を、620はカラー画像表示部13の第2色空間を、630はsRGB空間の色相を保持したまま彩度が強調された第4色空間を示す。第4色空間の原色の三刺激値をそれぞれ[X’、Y’、Z’]、[X’、Y’、Z’]、[X’、Y’、Z’]とする。また表示装置の伝達関数は、雑音成分を無視した式(13)で表されるとする。すると任意の三刺激値を表示するために必要なRGB値算出関数Sは、3行3列の伝達関数Tの逆行列となり、入力された映像信号を、カラー画像表示部13で第4色空間の三刺激値を再現するための映像信号へと変換する変換行列Cは式(24)で与えられる。
式(25)は実際に変換行列Cを求めた例である。
ただしこの行列用いてRGB信号を変換しても、変換後の信号がRGB信号として有効な範囲内に収まっていない可能性もある。実際[R,G,B]=[255,255,255]というRGB信号を変換すると、変換後のRGB信号は[R’,G’,B’]=[248,256,289]となり、255を超える数値が現れてしまう。これは第4色空間と第2色空間の間で輝度の正規化を行っていないことが原因であり、色変換後の輝度の飽和を避けるために正規化を行うのが望ましい。正規化は以下のようにして行う。変換行列Cにおいて、各行の正の要素の合計のうち最大の数値が1以下となるように変換行列全体に同一の定数(1/C)を乗算することにより、先の変換行列Cは式(26)の変換行列Cnormalizedへと正規化される。なお、各行の正の要素の合計値のうち最大の数値が1となるときが、輝度が飽和しない範囲でもっとも輝度が高いので、この数値が1となるように定数(1/C)を定めるのが望ましい。
これにより入力映像信号として有効な範囲内、すなわち0−255の範囲のいかなるRGB値に対しても変換後のRGB値が255を超えることがなくなり、輝度の飽和を避けられる。
なお、色変換後の輝度の飽和を避けるための他の方法として、変換後のRGB信号の少なくとも1つの値が255を超えた場合、その値を255に置き換えるようにしてもよい。
また、第4色空間を第2色空間よりも大きく取ったため、行列の要素には一つ以上の負の値が含まれており、例えば[R,G,B]=[0,0,255]というRGB信号を変換すると、[R’,G’,B’]=[−11,−2,255]となり負の値が現れ、標準RGB信号の仕様を満たさなくなってしまう。変換後の映像信号に負の値が含まれる場合は、カラー画像表示部13の色再現域の外の色を表示しようとしていることに相当しており、表示不可能な色である。この表示不可能な色範囲は図12の640である。
このような負の値の処理には、例えば以下の方法がある。
負の値の処理として最も簡易的なのは、変換後に負の値が生じた場合はその値を0とすることである。これにより本来色再現域の外へ変換されるべき色が色再現域の境界面上に張り付いた形で変換されることになる。この処理によりカラー画像表示部13の再現域外の領域では色の情報の一部が失われ、異なった色を表示させることになるが、大まかな色相は合っておりRGB信号値の変化に対して連続的に変化するため、簡易的な処置として有効である。
本実施形態では、第4色空間のうち第2色空間に含まれる範囲が第3色空間第1色範囲に相当し、第4色空間のうち第2色空間を越えてしまう範囲の色を第2色空間内に補正したものが、第3色空間第2色範囲となる。最終的に第3色空間での各原色色相の変化は図13のようになり、第3色空間第1色範囲では色相を保持したまま彩度を強調し、第3色空間第2色範囲では連続的に色相を変化させており、表示装置の色再現範囲の全てではないものの、650に示されるようにより広い範囲を利用できるようになっていることがわかる。
ここまで説明した本実施形態は、以下のような特徴を持っている。
第1の特徴は、入力映像信号が有する第1色空間の色再現域と、カラー画像表示装置が有する第2色空間の色再現域の情報とから、前記第1色空間の色を該第1色空間の色相を保持しながら該第1色空間とは異なる第3色空間に変換する色変換装置であって、前記第1色空間の少なくとも1つの色を、前記第2色空間の外側にある前記第3色空間内の色へ変換することである。
第2の特徴は、第1の特徴において、前記第3色空間を構成する三原色の色度座標は、白色の色度座標と前記第1色空間の三原色の色度座標とを結ぶ半直線上にあることである。
第3の特徴は、第1又は第2の特徴において、前記第3色空間の三原色の輝度の比率は、前記第3色空間の白色座標が前記第1色空間の白色座標と同じになるように定められていることである。
第4の特徴は、第1乃至第3のいずれか1の特徴において、前記第3色空間の色再現域は、彩度の強調度合いを表すパラメータを変化させることにより定義されることである。
第5の特徴は、第1乃至第4のいずれか1の特徴において、入力映像信号が有する前記第1色空間の色を前記第3色空間へ変換するとともに、前記入力映像信号を前記カラー画像表示装置で前記第3色空間の色を再現するための出力映像信号に変換する映像信号変換部を備えていることである。
第6の特徴は、第5の特徴において、前記映像信号変換部は、前記入力映像信号を前記出力映像信号に変換するために、少なくとも一つの変換行列による演算を行うものであって、前記変換行列を、前記カラー画像表示装置固有の伝達関数と前記第3色空間の三原色が持つ三刺激値とから算出し、前記出力映像信号が映像信号として有効な最大値を超えることがないように、前記変換行列に定数を乗算することである。
第7の特徴は、第6の特徴において、前記出力映像信号の少なくとも1つの値が負の値になってしまう場合、該負の値を0に置き換える処理を行うことで、第3色空間が表示装置が再現可能な範囲内に収まるように、第3色空間を補正することである。
第8の特徴は、第5の特徴において、前記出力映像信号の少なくとも1つの値が映像信号として有効な最大値を超えた場合、該値を最大値に置き換えることで、第3色空間が表示装置が再現可能な範囲内に収まるように、第3色空間を補正することである。
第9の特徴は、第8の特徴において、前記出力映像信号の少なくとも1つの値が負の値になった場合、該負の値を0に置き換えることで、第3色空間が表示装置が再現可能な範囲内に収まるように、第3色空間を補正することである。
第10の特徴は、第5の特徴において、前記入力映像信号に応じたガンマ変換を行うガンマ変換部と、前記カラー画像表示装置のガンマ特性に応じた逆ガンマ変換を行う逆ガンマ変換部とを備え、前記ガンマ変換部、前記映像信号変換部、前記逆ガンマ変換部の順番で処理を実行することである。
第11の特徴は、第1乃至第10のいずれか1の特徴を持つ色変換装置を備えたカラー画像表示装置であること、である。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第2の実施形態において、式(26)の各行の正の要素の合計は、変換後の赤・青・緑のLEDが最大に発光するとき変換前の何倍に当たるかを示している。したがって全てのLEDについて1となっていることが望ましい。式(26)で赤に対応する一行目では合計が0.828であるため、この例での赤と緑はいかなる入力映像信号に対しても0.828×255より大きな値が変換後に現れることはなく、カラー画像表示部13のダイナミックレンジが狭くなってしまう。各LEDの最大発光量を個別に変更することで、各行の正の要素の合計を1に近づけ、ダイナミックレンジを拡げることができる。
LEDの駆動電流を増やし発光量を増加させると、ある色を表示する際にそのLEDに対応する色の信号値は小さくて済むことになる。したがってLED発光量の増大はそのLEDの色に対応する行全体を減少させ、逆にLED発光量の減少はそのLEDの色に対応する行全体を増加させることになる。LEDの色度座標の変化は駆動電流がしきい値電流より十分大きい領域では小さいために色度座標の変化をほぼ無視することができ、赤・緑・青のそれぞれの原色に関して、個別にLED発光量と変換行列の対応する行の要素を変化させても同一の結果をもたらすことができる。なお同一の結果を得るために必要なLED発光量と、変換行列のうちそのLEDに対応する行の要素とが反比例することは容易に理解できる。そのため三刺激値の再測定や第2色空間、第3色空間の定義を再び行うことなしに、全ての要素が1を超えない範囲で各行の合計を1に近づけることが容易に可能である。赤・緑・青のうち明るさに最も寄与するのは緑であるため、緑の行の要素あるいは行の合計の値を最大値として、この値以下で赤と青の行の要素および行の合計を大きくなるように赤と青のLED発光量を調整すればよい。
以上のようにしてカラー画像表示部13のLEDの駆動電流を最適化した上で、正規化を行った変換行列は次の式(27)となる。このとき緑のLEDの発光量は変化させず、赤のLEDの発光量を1.015倍、青のLEDの発光量を1.204倍としている。
すると赤は入力映像信号[R,G,B]=[255,255,0]のときに最大の255に、緑は入力映像信号[R,G,B]=[255,255,0]のときに最大の255に、青は入力映像信号[R,G,B]=[0,0,255]のときに最大の255になり、ダイナミックレンジを広く使えるようになったことがわかる。ここでは緑のLEDの発光量を変化させなかったが、固定するLEDは他の色でも構わないし、全てのLEDの発光量を変化させても当然構わない。
このようにすることで、第2の実施形態の効果が有効なままカラー画像表示部13のダイナミックレンジを広く用い、階調性を向上させることができる。
図1に示したカラー画像表示部13は、本実施形態では図2における空間光変調器28としてDMD(Digital Micromirror Device、登録商標)を用いた単板式DLPプロジェクタであったが、DMDを各LEDにつき一つ用いた3板式DLPプロジェクタ、あるいは三原色毎に複数のLEDとDMDを設けた構成のDLPプロジェクタでもよいし、空間光変調器28として液晶デバイスを用いてもよい。また、光源としてLEDではなくレーザを用いてもよいし、色純度の高いカラーホイールを用いた高圧水銀ランプを用いてもよい。また、色純度の高いカラーフィルタを用いた液晶ディスプレイやレーザの発光強度を変調しながらスクリーンを走査することで映像を形成するレーザプロジェクタや、ホログラムによる回折を利用して映像を形成するプロジェクタの場合であっても、映像の色情報を特定の三原色成分に分解した映像信号を入力に用い、映像信号の各三原色成分の信号値に応じてカラー画像表示装置の各三原色を発光させるカラー画像表示装置であれば本発明を適用可能であることは明らかである。
また、四原色以上の多原色映像信号や、四原色以上の多原色カラー画像表示装置の場合に対しても、入力映像信号が表すXYZなどの表色値を求める手順と、第3色空間での表色値を表示させるための映像信号を求める手順が変わるだけであり、本発明の効果はそのまま適用可能である。
また、ここまでに述べた実施形態では全てRGB信号値を0−255で8bit量子化した例について述べているが、8bitをnbitに拡張した場合にも本発明の全ての効果が有効であることはいうまでもない。
また、以上では入力映像信号をRGB信号としていたが、色差信号など、適切な演算によってRGB信号へ変換できる映像信号であれば、本発明の全ての効果が有効であることは明らかである。
また、第1色空間および第3色空間における色範囲の数や分け方は、本明細書の実施形態として述べたものに限られるものではなく、異なる色範囲へ分けても構わないし、さらに多くの色範囲に分けて異なる処理を行っても構わなく、また実施形態の例で述べた色空間と色空間の間に、別の色空間を挟んでいても構わない。色範囲の数を増やし、結果として色相を曲線的に変化するようにしてもよい。
なお、本発明によれば以下に示す他の技術手段を構成することもできる。
他の技術手段は、少なくとも3つの原色を用いて画像を表示するカラー画像表示装置であって、該カラー画像表示装置で表示される色範囲は、白色を含む第1の色範囲と、該第1の色範囲より彩度の高い第2の色範囲との少なくとも2つの色範囲を含み、前記第1の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相を保持しながら該入力映像信号によって定まる彩度より高い彩度の色を表示し、前記第2の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相とは異なる色相の色を表示することを特徴としたものである。
他の技術手段は、前記第2の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相に比べて前記カラー画像表示装置の原色の色相に近い色を表示することを特徴としたものである。
他の技術手段は、前記カラー画像表示装置で表示される色範囲は、さらに前記第2の色範囲より彩度の高い第3の色範囲を含み、該第3の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相とは異なる色であり、前記第2の色範囲において表示される色より更に前記カラー画像表示装置の原色の色相に近い色を表示することを特徴としたものである。
他の技術手段は、前記第2の色範囲においては、入力映像信号によって定まる彩度より高い彩度の色を表示し、該彩度の強調度合いは、前記第1の色範囲における彩度の強調度合いと異なることを特徴としたものである。
他の技術手段は、前記カラー画像表示装置で表示される色範囲は、さらに前記第2の色範囲より彩度の高い第4の色範囲を含み、該第4の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相を保持しながら該入力映像信号によって定まる彩度より高い彩度の色を表示し、該彩度の強調度合いは、前記第1の色範囲における彩度の強調度合いよりも大きく、前記第2の色範囲における彩度の強調度合いと異なることを特徴としたものである。
他の技術手段は、少なくとも3つの原色を用いた入力映像信号を、特定のカラー画像表示装置に適した出力映像信号へと変換する色変換装置であって、前記カラー画像表示装置で再現される色範囲は、白色を含む第1の色範囲と、該第1の色範囲より彩度の高い第2の色範囲との少なくとも2つの色範囲を含み、前記第1の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相を保持しながら該入力映像信号によって定まる彩度より高い彩度の色を表示し、前記第2の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相とは異なる色相の色を表示するような出力映像信号へと変換することを特徴としたものである。
他の技術手段は、前記第2の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相に比べて前記カラー画像表示装置の原色の色相に近い色を表示するような出力映像信号へと変換することを特徴としたものである。
他の技術手段は、前記カラー画像表示装置で表示される色範囲は、さらに前記第2の色範囲より彩度の高い第3の色範囲を含み、該第3の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相とは異なる色であり、前記第2の色範囲において表示される色より更に前記カラー画像表示装置の原色の色相に近い色を表示するような出力映像信号へと変換することを特徴としたものである。
他の技術手段は、前記第2の色範囲においては、入力映像信号によって定まる彩度より高い彩度の色を表示し、該彩度の強調度合いは、前記第1の色範囲における彩度の強調度合いと異なることを特徴としたものである。
他の技術手段は、前記カラー画像表示装置で表示される色範囲は、さらに前記第2の色範囲より彩度の高い第4の色範囲を含み、該第4の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相を保持しながら該入力映像信号によって定まる彩度より高い彩度の色を表示し、該彩度の強調度合いは、前記第1の色範囲における彩度の強調度合いよりも大きく、前記第2の色範囲における彩度の強調度合いと異なることを特徴としたものである。
以上説明したように、本発明によれば、映像信号の色空間を、色範囲に応じて色相と彩度の変化の度合いを連続的に変化させていくため、色相や彩度の変化に敏感な色範囲は映像信号本来の色再現に近く、そうでない色は彩度を増した鮮やかな映像として再現することができる。そのため広色域表示装置で生じていた不自然な色合いという問題を解決しながら、広い色再現域を活用することができる。
また、カラー画像表示装置が持つ固有の特性に対する補正を、ガンマ特性と伝達関数で表される信号伝達特性とに分けて行うため、カラー画像表示装置で意図した通りの色を再現することができる。また、映像信号に応じたガンマ変換と、カラー画像表示装置固有の伝達関数に対する補正と、カラー画像表示装置のガンマ特性に応じた逆ガンマ変換とをこの順番で行うため、カラー画像表示装置が、映像信号が意図するガンマ特性とは異なった特性を持っていても、高い精度で意図した通りの色を再現することができる。
また、映像信号の白色の色度座標と三原色の色度座標とを結んだ半直線上に新しい三原色の色度座標を定めることにより、色相を変化させずに色再現域を広げた第3色空間第1色範囲の定義が容易になる。
本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示装置の構成例を示すブロック図である。 本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示部の構成例を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係るカラー画像表示部の色再現域と映像信号の色再現域とを示す色度図である。 本発明の第1の実施形態に係る色変換部における色変換パラメータ算出処理の一例を説明するためのフロー図である。 本発明の第1の実施形態に係る第3色空間を、白色座標を考慮せずに定めた場合の例を示す色度図である。 本発明の第1の実施形態に係る第3色空間を、白色座標を考慮して定めた場合の例を示す色度図である。 第1色空間をsRGBとしてaを変化させた場合の第3色空間の変化を示す色度図である。 第1色空間における色範囲と、白色から原色および原色の補色へ向かう色相の軌跡を示した図である。 第3色空間における色範囲と、白色から原色および原色の補色へ向かう色相の軌跡を示した図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係る色変換部による第1色空間の変換例を示す色度図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係る色変換部による第3色空間の変換例を示す色度図である。 本発明の第2の実施形態に係る色変換部による第1色空間の変換例を示す色度図である。 本発明の第2の実施形態に係る色変換部による第3色空間の変換例を示す色度図である。 従来の色変換装置を用いて色空間を変換した様子を示す色度図である。
符号の説明
10…入力映像信号、11…カラー画像表示装置、12…色変換部、12a…ガンマ変換部、12b…映像信号変換部、12c…逆ガンマ変換部、13…カラー画像表示部、20…赤色LED、21…緑色LED、22…青色LED、23…ミラー、24…緑反射・青透過ダイクロイックミラー、25…青緑反射・赤透過ダイクロイックミラー、26…集光レンズ、27…ミラー、28…空間光変調器、29…投射レンズ、30…スクリーン。

Claims (2)

  1. 少なくとも3つの原色を用いて画像を表示するカラー画像表示装置であって、該カラー画像表示装置で表示される色範囲は、白色を含む第1の色範囲と、該第1の色範囲より彩度の高い第2の色範囲との少なくとも2つの色範囲を含み、前記第1の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相と彩度とを保持した色を表示し、前記第2の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相とは異なる色相の色を表示することを特徴としたカラー画像表示装置。
  2. 少なくとも3つの原色を用いた入力映像信号を、特定のカラー画像表示装置に適した出力映像信号へと変換する色変換装置であって、前記カラー画像表示装置で再現される色範囲は、白色を含む第1の色範囲と、該第1の色範囲より彩度の高い第2の色範囲との少なくとも2つの色範囲を含み、前記第1の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相と彩度とを保持した色を表示し、前記第2の色範囲においては、入力映像信号によって定まる色相とは異なる色相の色を表示するような出力映像信号へと変換することを特徴とした色変換装置。
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