JP2009131189A - 付着性細胞の培養方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は、複雑な形に従った付着性細胞の増殖を可能とする付着性細胞の培養方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明は、水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を用いた付着性細胞の培養方法であって、(i)培養容器に水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を充填する工程、(ii)前記水難溶性の生分解性高分子からなる粉末に付着性細胞を播種する工程、(iii)前記付着性細胞を培養する工程を含む付着性細胞の培養方法を提供する。尚、本発明の付着性細胞の培養方法は、付着性細胞と水難溶性の生分解性高分子からなる粉末とを液体中で混合することにより前記工程(ii)を実施した後に、工程(i)を実施することもできる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、付着性細胞の培養方法に関する。
再生医療の分野では、全身のあらゆる組織や臓器を対象として、自己の細胞が増殖できる足場となる環境を与えることによって、組織や臓器が本来の構造及び機能を再生復元することが行われている。このような再生医療において、欠損した組織や臓器が再生する足場となる基材として生分解性高分子からなるものが着目されている。
このような基材としては、例えば、コラーゲン糸から形成された織物であることを特徴とする生体再形成コラーゲン立体織物が公知である(特許文献1)。また、コラーゲン超微細線維性不織布状多層体を非線維化コラーゲン層で挟んだ積層体からなるコラーゲン材も公知である(特許文献2)。
しかしながら、再生すべき臓器、組織及び器官の形状が複雑な形状である場合は、前者の基材は、基材自体の製造が煩雑となるという問題がある。また、後者の基材は、再生すべき臓器、組織及び器官の形状に変形させることが困難であるという問題がある。
特表平09−510639公報 国際公開98/022157号パンフレット
本発明は、複雑な形に従った付着性細胞の増殖を可能とする付着性細胞の培養方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、水難溶性の生分解性高分子が細胞培養の基材として利用できることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
[1] 水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を用いた付着性細胞の培養方法であって、下記(i)〜(iii)の工程を含む付着性細胞の培養方法、
(i)培養容器に水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を充填する工程
(ii)前記水難溶性の生分解性高分子からなる粉末に付着性細胞を播種する工程
(iii)前記付着性細胞を培養する工程。
[2] 前記培養容器の容器内壁の形状が、臓器、組織又は器官と同形状である[1]に記載の付着性細胞の培養方法、
[3] 水難溶性の生分解性高分子が、(a)又は(b)のいずれかである[1]に記載の付着性細胞の培養方法、
(a) ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ε−ポリカプロラクトン及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種類の重合体又は2種類以上の共重合体
(b) コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、セルロース及びこれらの架橋体からなる群より選択される少なくとも1種類の重合体、
及び、[4] 付着性細胞と水難溶性の生分解性高分子からなる粉末とを液体中で混合することにより前記工程(ii)を実施した後に、工程(i)を実施することを特徴とする[1]に記載の付着性細胞の培養方法に関する。
本発明の付着性細胞の培養方法は、複雑な形に従った付着性細胞の増殖を可能とする。
本発明における付着性細胞の培養方法とは、水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を用いた付着性細胞の培養方法であって、下記(i)〜(iii)の工程を含む。
(i)培養容器に水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を充填する工程
(ii)前記水難溶性の生分解性高分子からなる粉末に付着性細胞を播種する工程
(iii)前記付着性細胞を培養する工程。
ここで、本発明の付着性細胞の培養方法は、(i)〜(iii)と数字で書かれている工程により行われるものの、その数字の順番通りの工程により製造されるものに限定されるものではない。後述するが、(i)と(ii)の工程に関しては、逆転していても本発明の付着性細胞の培養方法を実施することはできる。
「(i)培養容器に水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を充填する工程」は、主に少なくとも培養容器の底面が水難溶性の生分解性高分子からなる粉末により埋め尽くされるように配置することにより実施される。水難溶性の生分解性高分子からなる粉末は、容器内全てに充填してもよいが、付着性細胞を播種するためのスペース及び培養液を充填するためのスペースが確保できる観点から、容器内の容積を100%した場合、20〜60%の体積分だけ充填することが好ましい。尚、本発明における粉末は、見た目が社会通念的に粉末であると認識されうるものであれば、その形状は球形に限定されるものではない。
また、水難溶性の生分解性高分子とは、水には溶解しにくいが、生体体内に埋植すると、当該生分解性高分子が、生体内に分解又は吸収される高分子をいう。本発明における水難解溶性とは、大気圧、室温条件下における水への溶解時間が3日以上、好ましくは7日以上のものをいう。このような生分解性高分子としては、例えば、(a)又は(b)のいずれかが挙げられる。
(a) ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ε−ポリカプロラクトン及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種類の重合体又は2種類以上の共重合体
(b) コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、セルロース及びこれらの架橋体からなる群より選択される少なくとも1種類の重合体
特に、細胞接着性が高い観点から、コラーゲンが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、本発明におけるコラーゲンは、後述する架橋処理により水難溶性を獲得できるため、原材料の段階においては水に溶解するものも含むものとする。
コラーゲンとは、動物の結合組織を構成する主要タンパク質成分をいい、分子の主鎖構造が、(Gly−X−Y)、(Gly−Pro−X)及び(Gly−Pro−Hyp)で構成されるものをいう。ここで、X及びYは、グリシン、プロリン及びヒドロキシプロリン以外の天然及び非天然アミノ酸である。
コラーゲンのタイプについては、I型、II型及びIII型などが挙げられる。特に取り扱いが容易である観点から、I型及びIII型が好ましいが、これに限定されるものではない。また、本発明におけるコラーゲンは、熱変性コラーゲンであるゼラチンも含むが、付着性細胞の付着性が高い観点から、コラーゲンであることが好ましい。
コラーゲンは、生体組織からの抽出、化学的ポリペプチド合成及び組み替えDNA法などにより製造される。本発明出願当時では、製造コストが安価である観点から、生体組織からの抽出により得られたものが好ましい。また、生体組織の由来は、例えば、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ネズミ、鳥類、魚類及びヒトなどが挙げられる。また、前記生体組織としては、これらの皮膚、腱、骨、軟骨及び臓器などが挙げられる。これらの選択は当業者が適宜行うことができるものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、原材料の段階では水に溶解できるよう処理が施されたコラーゲンであっても、後述する架橋処理により、最終的には水難溶性を取得することができることは、上述した通りである。このような水に溶解できるよう処理が施されたコラーゲンは、溶液として取り扱うことができるので、後述する成形物の工業的な製造が容易となる。このようなコラーゲンとしては、例えば、酵素可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン及び中性可溶化コラーゲンなどの可溶化コラーゲンが挙げられる。特に、使用できる溶媒の種類が多い観点から、酸可溶化コラーゲンが好ましい。なお、生体内埋殖時の安全性の観点から、コラーゲンは、抗原決定基であるテロペプチドの除去処理が施されているアテロコラーゲンであることが望ましい。
尚、架橋処理の方法としては、架橋剤による化学的架橋、γ線照射、紫外線照射、電子線照射、プラズマ照射及び熱脱水架橋などが挙げられる。特に、生体内埋殖後における安全性が高い観点から、熱脱水架橋が好ましい。熱脱水架橋の条件は、架橋温度が約110〜150度、架橋時間が6〜72時間である。特に架橋効率及び熱分解を抑える観点から、好ましくは架橋温度が約120〜140度、架橋時間が12〜48時間である。
本発明は、以上に説明した水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を、付着性細胞の培養基材として取り扱う。水難溶性の生分解性高分子からなる粉末の成形方法は、ドライスプレー法、各種造粒法、又は、上記水難溶性の生分解性高分子の成型物を製造した後、当該成型物を細断若しくは粉砕する方法が挙げられる。もちろん、市販のものが存在するのであれば、それを入手してもよい。これらの方法は、用いる水難溶性の生分解性高分子により、当業者が適宜選択することができるため、特に限定されるものではない。例えば、生分解性高分子の溶液の粘度が高い場合は、水難溶性の生分解性高分子の成型物を製造した後、当該成型物を細断若しくは粉砕する方法を選択することができる。
上記成型物としては、例えば、乾燥物(フィルムを含む)、凍結乾燥物、圧縮成形物及び押出成型物(紡糸した糸を含む)等が挙げられる。これら成型物の選択は、当業者が後述する細断若しくは粉砕する方法が実施しやすいか否かを考慮して行うことができるので、特に限定されるものではない。例えば、水難溶性の生分解性高分子がコラーゲンである場合は、製造方法が確立している観点から、押出成形物の一態様である湿式紡糸した糸が好ましい。コラーゲンの湿式紡糸法に関しては、例えば、特開2003−193328号公報を参考にすることができる。
粉砕する方法としては、ジェットミルを用いる方法、ハンマーミルを用いる方法及びポールミルを用いる方法が挙げられる。一方、細断する方法としては、切断器具を用いて手作業で切断する方法、ミクロカッター及びサイレントカッターなどにより切断する方法が挙げられる。
図1は、後述する参考例1で製造したコラーゲン粉末の外観写真である。その見た目は、社会通念的に粉末であると十分に認識することができる。
また、後述する参考例1で製造されたコラーゲン粉末は、水溶液中において、周囲に粘着部を形成する。粘着部とは、コラーゲンが水により溶解又はゲル化した部分をいい、隣接するものがコラーゲンと相溶性が高い材料からなる場合は、この隣接するものに粘着する機能を有する部分をいう。つまり、粘着部が形成することにより隣接するコラーゲン粉末同士が粘着することができ、一種の流動物として取り扱うことができる。粘着部が形成される理由は、本発明に係るコラーゲン基材が、水可溶化コラーゲンを原材料とし、架橋処理により水難溶化しているものの、若干量は水に溶解するためである。
「(ii)前記水難溶性の生分解性高分子からなる粉末に付着性細胞を播種する工程」は、主に培養容器に充填された水難溶性の生分解性高分子からなる粉末に付着性細胞を播種することにより実施される。播種の方法は、付着性細胞を培地等に懸濁した液を、培養容器に充填された水難溶性の生分解性高分子からなる粉末上に滴下すればよい。
付着性細胞は、特に限定されるものではないが、例えば、骨膜細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、上皮細胞及び繊維芽細胞などが挙げられる。
また、付着性細胞を懸濁する培地としては、例えば、DMEM培地、RPMI−1640培地、HamF10培地、HamF12培地、MCBD131培地、MCBD151培地、MCBD152培地、MCBD153培地、MCBD201培地、MCBD302培地、199培地等が挙げられる。この他にも、生理食塩水及びPBS等も使用できる。
また、本発明の水難溶性の生分解性高分子からなる粉末及び培養する付着性細胞を培地等に懸濁することにより、「(ii)前記水難溶性の生分解性高分子からなる粉末に付着性細胞を播種する工程」を実施することもできる。その後、これらを沈降させることにより、付着性細胞と水難溶性の生分解性高分子からなる粉末の混合物ができる。沈降は、作業時間を短縮できる観点から、好ましくは遠心分離により行うことができる。そして、当該混合物を培養容器に流し込むことにより、「(i)培養容器に水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を充填する工程」を実施する。つまり、この場合は、「(ii)前記水難溶性の生分解性高分子からなる粉末に付着性細胞を播種する工程」が、「(i)培養容器に水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を充填する工程」よりも先に行われる。この方法は、付着性細胞を水難溶性の生分解性高分子からなる粉末に均一に播種できるというメリットがある。
「(iii)前記付着性細胞を培養する工程」は、主に培養容器に培地を添加し、一定の培養条件下におくことで実施される。添加する培地は、上述したものが利用できる。培養条件としては、特段の事情がない限りにおいては、37℃、5%CO環境下が通常である。
このようにして実施される付着性細胞の培養方法において、付着性細胞は、水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を足場にして増殖する。最終的に形成される付着性細胞の塊の形状は、容器内壁の形状に従う。このため、容器内壁の形状を臓器、組織又は器官と同形状にすることにより、所望の付着性細胞の塊を得ることができる。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[参考例1]
以下の手順に従って本発明のコラーゲン粉末を得た。
(1)水可溶化コラーゲンを原材料とし、糸状物で構成された成形物を製造する工程
酸可溶化コラーゲンを水に溶解して5%水溶液を作製した。このコラーゲン溶液を、99.5容量%エタノール凝固浴槽中に吐出すことにより、直径約200μmのコラーゲン単糸を紡糸した。エタノール凝固浴槽から引き上げられたコラーゲン単糸を、温度約25度、湿度50%以下の条件で送風乾燥を行いながら、約150mm×150mmの長方形を有するフレームに巻き付けた。この時の紡糸速度は、約4,000mm/minとした。このようにして、水可溶化コラーゲンを原材料とし、糸状物で構成された成形物を得た。
(2)成型物を架橋処理する工程
次に、フレームに巻き付けた状態で、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃、24時間熱脱水架橋反応を施した。次に、単糸をフレームに巻き付けた状態のまま、7.5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液により中和処理を行った。中和後、蒸留水により洗浄し、クリーンベンチ内で風乾した。その後、得られたものを、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃、24時間で再度熱架橋処理を行った。
(3)成型物を粉末状に加工する工程
上記で得られたコラーゲン単糸を、糸軸方向に0.1〜5mmを空けて、当該糸軸と垂直をなす面で複数回メスにより粉末になるまで細断することにより、本発明のコラーゲン粉末を得た(図1)。
[実施例1]
参考例1のコラーゲン粉末を用いて本発明の付着性細胞の培養方法を実施した。
(i)培養容器に前記コラーゲン粉末を充填する工程
24ウェルのシャーレに、実施例1のコラーゲン粉末0.6gを充填した。これは、24ウェルのシャーレの内容積を100とした場合、実施例1のコラーゲン粉末が約30を占めることになる。
(ii)前記コラーゲン粉末に付着性細胞を播種する工程
まず、軟骨細胞の懸濁液を調製した。懸濁液の分散媒としては、軟骨細胞増殖培地(東洋紡績(株))を用いた。軟骨細胞の濃度は、4.0×10とした。この懸濁液を、実施例1のコラーゲン粉末及び比較例1のコラーゲン粉末それぞれに滴下することにより、播種を行った。この時、比較例1のコラーゲン粉末の一部は既に溶解し始めていた。
(iii)前記付着性細胞を培養する工程
次に、それぞれのシャーレに軟骨細胞増殖培地(東洋紡績社製)を注入した。そして、5%CO環境下で、約120日間培養を行った。
参考例1のコラーゲン粉末を用いた細胞培養の結果を、図2に示す。図2の写真から明らかなように軟骨細胞は24ウェルのシャーレの形状に従って軟骨細胞が増殖していた。
本発明のコラーゲン粉末及び当該コラーゲン粉末を用いた培養方法は、複雑な形に従った付着性細胞の増殖を可能とする。また、コラーゲン粉末は、生体組織の欠損部に充填するための移植材及び生体組織の損傷部に適用する止血材に用いることもできる。
本発明のコラーゲン粉末の外観写真である。 実施例1のコラーゲン粉末を用いた細胞培養の結果の写真である。

Claims (4)

  1. 水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を用いた付着性細胞の培養方法であって、下記(i)〜(iii)の工程を含む付着性細胞の培養方法。
    (i)培養容器に水難溶性の生分解性高分子からなる粉末を充填する工程
    (ii)前記水難溶性の生分解性高分子からなる粉末に付着性細胞を播種する工程
    (iii)前記付着性細胞を培養する工程。
  2. 前記培養容器の容器内壁の形状が、臓器、組織又は器官と同形状である請求項1に記載の付着性細胞の培養方法。
  3. 水難溶性の生分解性高分子が、(a)又は(b)のいずれかである請求項1に記載の付着性細胞の培養方法。
    (a) ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ε−ポリカプロラクトン及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種類の重合体又は2種類以上の共重合体
    (b) コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、セルロース及びこれらの架橋体からなる群より選択される少なくとも1種類の重合体
  4. 付着性細胞と水難溶性の生分解性高分子からなる粉末とを液体中で混合することにより前記工程(ii)を実施した後に、工程(i)を実施することを特徴とする請求項1に記載の付着性細胞の培養方法。
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