JP2002315574A - 組織細胞の体外培養用材料 - Google Patents

組織細胞の体外培養用材料

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JP2002315574A JP2001118838A JP2001118838A JP2002315574A JP 2002315574 A JP2002315574 A JP 2002315574A JP 2001118838 A JP2001118838 A JP 2001118838A JP 2001118838 A JP2001118838 A JP 2001118838A JP 2002315574 A JP2002315574 A JP 2002315574A
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Hiroo Iwata
博夫 岩田
Tatsuya Osumi
辰也 大隅
Sukehito Kurokawa
祐人 黒川
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Sanyo Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 体外で再生組織を作成するにあたり、組織細
胞が良く接着できるような材料を提供すること。 【解決手段】 遺伝子組換微生物によって合成され、細
胞接着シグナルを現わす最小アミノ酸配列を1分子中に
少なくとも1個有するポリペプチド(A)と、生体吸収
性物質(B)とからなることを特徴とする組織細胞の体
外培養用材料を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、組織細胞の体外培
養用材料に関する。さらに詳しくは、外傷や外科手術等
による血管や筋肉及び脂肪等の組織の欠損部位に適応さ
れる組織を、組織細胞を用いて体外で培養するための基
材として使用される材料に関する。
【0002】
【従来の技術】体外において、組織細胞を生体吸収性物
質の上で培養した組織として、人工血管として用いるこ
とのできる強度を有する生体吸収材料(例えば、ポリ乳
酸及びキトサン等)の表面にコラーゲンをコートして培
養した人工血管(特開昭60−203264号公報)
や、人工血管として用いることのできる強度を有する多
孔質生体吸収材料の表面にコラーゲンスポンジ層を形成
したものに細胞を導入し増殖させた後、さらにフィブリ
ン層を設けた人工血管(特開平8−89569号公報)
等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】生体吸収材料表面にコ
ラーゲン等の細胞外マトリックスを単純にコートして
も、組織細胞と生体吸収性材料との接着性は不十分であ
り、十分に組織細胞が増殖しないという問題がある。ま
た、コラーゲンスポンジ層を形成したものでは組織細胞
は一時的に固定化され増殖するが、連続層になっていな
いため組織細胞が生体吸収材料から脱離しやすく、さら
に自己組織に置き換わりにくいという問題がある。さら
にコラーゲンスポンジ層及びフィブリン層を形成させる
ことは非常に面倒であり、簡便な方法が強く要望されて
いる。すなわち、本発明の目的は、体外で再生組織を作
成するにあたり、組織細胞が良く接着できるような材料
を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、鋭意研究を
重ねてきた結果、特定のポリペプチドと特定の材料とを
用いることにより上記の目的を達成し得ることを見いだ
し本発明に到達した。すなわち、本発明の組織細胞の体
外培養用材料の特徴は、遺伝子組換微生物によって合成
され、細胞接着シグナルを現わす最小アミノ酸配列を1
分子中に少なくとも1個有するポリペプチド(A)と、
生体吸収性物質(B)とからなる点にある。
【0005】
【発明の実施の形態】まず、ポリペプチド(A)につい
て説明する。本発明において、細胞接着シグナルを現わ
す最小アミノ酸配列としては、接着シグナルとして働く
ものであればいずれも使用でき、例えば、株式会社永井
出版発行「病態生理」Vol.9、No.7(1990
年)527頁に記載されているもの等が挙げられる。
【0006】この中で好ましいものは、接着する細胞が
多いという点で、アミノ酸一文字表記で現わされるRG
D配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、
PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配
列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LR
E配列、DGEA配列及びHAV配列であり、さらに好
ましいものはRGD配列、YIGSR配列、PDSGR
配列、LGTIPG配列、IKVAV配列及びHAV配
列、最も好ましいものはRGD配列、IKVAV配列及
びHAV配列である。最小アミノ酸配列は、1種又は2
種以上が用いられ、好ましくは1〜5種、さらに好まし
くは1〜3種である。
【0007】ポリペプチド(A)中には最小アミノ酸配
列が1分子中に少なくとも1個含有される必要がある。
最小アミノ酸配列が含有されない場合、細胞接着性が低
下する結果、本発明の材料表面又は材料内部での細胞の
増殖が不十分になる。この最小アミノ酸配列の含有量
は、細胞接着・増殖性の観点から、ポリペプチド(A)
1分子中3〜50個が好ましく、さらに好ましくは4〜
30個、特に好ましくは5〜20個である。
【0008】ポリペプチド(A)の数平均分子量は、細
胞に対する毒性が低く、接着性能が高いという点で、
5,000〜5,000,000が好ましく、さらに好
ましくは10,000〜1,000,000、特に好ま
しくは50,000〜500,000である。なお、ポ
リペプチド(A)の数平均分子量は、SDS−PAGE
法(Naドデシルスルフェイト−ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動法)で、(A)を水中で展開し、泳動距離を
標準物質と比較することによって求められる。
【0009】ポリペプチド(A)には、細胞接着シグナ
ルを現わす最小アミノ酸配列以外に、(A)の熱安定
性、構造安定性を向上させるアミノ酸配列、例えば、シ
ルクフィブロイン由来のGAGAGSのアミノ酸配列を
有することが好ましく、さらに好ましくは該アミノ酸配
列を少なくとも2個有すること、特に好ましくは該アミ
ノ酸配列を2〜50個を有すること、最も好ましくは該
アミノ酸配列を5〜30個有することである。
【0010】ポリペプチド(A)の好ましい具体例とし
ては、三洋化成工業(株)製プロネクチンF(遺伝子組
換大腸菌により製造され、細胞接着シグナルRGD配列
とGAGAGS配列を1分子中に各々約13個有する数
平均分子量約11万のポリペプチド)、同プロネクチン
Fプラス(プロネクチンFをジメルアミノエチルクロラ
イドと反応させて水溶性にしたもの)、同プロネクチン
L(遺伝子組換大腸菌により製造され、細胞接着シグナ
ルIKVAV配列とGAGAGS配列を1分子中に各々
約7個有する数平均分子量約9万のポリペプチド)等が
挙げられる。ポリペプチド(A)は、遺伝子組換微生物
(例えば、酵母、細菌及び大腸菌等)によって生産さ
れ、例えば、特表平3−502935号公報等に記載さ
れている方法により、容易に得られる。なお、化学合成
でも生産可能であるが、微生物によって合成されるもの
が均一であり、細胞増殖性に優れているので好ましい。
【0011】次に、生体吸収性物質(B)について説明
する。(B)は、欠損組織に埋め込まれて周りの組織細
胞が増殖する足場となるもので、欠損組織の再生ととも
に生体内に吸収されていくものであれば、制限なく使用
でき、例えば、天然高分子、合成高分子及びこれらの複
合体が用いられる。
【0012】天然高分子としては、例えば、コラーゲ
ン、ゼラチン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、
キチン、キトサン、フィブリン、デンプン、デキストラ
ン及びこれらの架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド
等)による架橋体等が挙げられる。合成高分子として
は、例えば、乳酸、グリコール酸及び/又はε−カプロ
ラクトンを必須単量体としてなる(共)重合体(ポリグ
リコール酸)、細胞接着シグナルを現わす最小アミノ酸
配列を含まない合成ポリペプチド((A)以外の合成ポ
リペプチド)及びポリシアノアクリレート等が挙げられ
る。
【0013】これら合成高分子の数平均分子量(ゲルパ
ーミエションクロマトグラフィーによるものであり、以
下Mnと略記する。)は、1,000〜5,000,0
00が好ましく、さらに好ましくは5,000〜1,0
00,000、特に好ましくは10,00〜500,0
00である。また、ガラス転移温度は、−50〜150
℃が好ましく、さらに好ましくは−20〜100℃、特
に好ましくは−10〜80℃である。
【0014】また、これらの合成高分子は、通常の方法
で容易に得ることができ、例えば、ポリグリコール酸
は、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトン等の単量体
を酸性白土等の無機固体酸触媒存在下に150〜250
℃に加熱し、10〜150時間減圧下で脱水反応を行う
ことで得られる。また、合成ポリペプチドは、アミノ酸
単量体を酸性白土等の無機固体酸触媒存在下に50〜2
50℃に加熱し、1〜150時間減圧下で脱水反応を行
うことで得られる。ポリシアノアクリレートは、シアノ
アクリレート単量体を空気中で10〜100℃の温度で
1〜150時間常圧で反応させることで得られる。
【0015】また、天然高分子と合成高分子の複合体と
しては、天然高分子に合成高分子をブロック及び/又は
グラフト化させたものが挙げられる。天然高分子と合成
高分子の重量比については、複合体の重量100重量部
に対する天然高分子の重量として、1〜90重量部が好
ましく、さらに好ましくは5〜70重量部、特に好まし
くは10〜50重量部である。天然高分子と合成高分子
の複合体は、合成高分子を合成する系内で天然高分子の
存在下に単量体を重合反応させることにより、また、合
成高分子を合成する系内で天然高分子の存在下で合成高
分子を反応させることにより、ブロック及び/又はグラ
フト体として得ることができる。
【0016】これら生体吸収性物質(B)のうち、本発
明の材料の取扱性の観点から、天然高分子及び合成高分
子が好ましく、さらに好ましくは乳酸、グリコール酸及
び/又はε−カプロラクトンを必須構成単量体とする
(共)重合体、並びにコラーゲン、ゼラチン、グリコサ
ミノグリカン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フ
ィブリン、キチン、キトサン、フィブロイン、デンプ
ン、細胞接着シグナルを現わす最小アミノ酸配列を含ま
ない合成ポリペプチド((A)以外の合成ポリペプチ
ド)及びこれらの架橋体、特に好ましくは乳酸、グリコ
ール酸及び/又はε−カプロラクトンを必須単量体とし
てなる(共)重合体、並びにキチン及びキトサンであ
る。
【0017】生体吸収性物質(B)の形状は、粉末状、
繊維状、布帛状、管状、フィルム状、ゲル状、スポンジ
状、ブロック状及びペースト状が好ましく、さらに好ま
しくは繊維状、布帛状、管状、フィルム状、ゲル状及び
スポンジ状、特に好ましくは管状及びフィルム状、特に
好ましくは管状である。
【0018】なお、粉末状とは平均粒子径(例えば、顕
微鏡下で10個好ましくは50個の粒子の直径を測定し
た平均値で示される値。以下同じである。)0.001
μm〜1cm(好ましくは0.1〜1,000μm)のも
のを意味する。また、繊維状とは平均直径(例えば、断
面をノギス又は顕微鏡を用いて10ケ所好ましくは50
ケ所の直径を測定した平均値で示される値。以下同じで
ある。)0.001μm〜1cm(好ましくは1μm〜5
mm)で長さ1cm〜1m(好ましくは1cm〜10c
m)のものを意味する。
【0019】また、布帛状とは厚さ(例えば、ノギス又
は顕微鏡を用いて10ケ所好ましくは50ケ所の厚さを
測定した平均値で示される値。以下同じである。)0.
1μm〜10cm(好ましくは1μm〜5cm)で面積
0.1〜1000cm2(好ましくは1〜100cm2
のものを意味する。また、管状とは内径(例えば、断面
をノギス又は顕微鏡を用いて10ケ所好ましくは50ケ
所の内径を測定した平均値で示される値。以下同じであ
る。)0.005〜5cm(好ましくは0.01cm〜
1cm)、外径(例えば、断面をノギス又は顕微鏡を用
いて10ケ所好ましくは50ケ所の外形を測定した平均
値で示される値。以下同じである。)0.01〜10c
m(好ましくは0.05〜2cm)、長さ0.1〜50
cm(好ましくは0.5〜10cm)のものを意味す
る。
【0020】また、フィルム状とは厚さ0.1μm〜1
0cm(好ましくは1μm〜5cm)で面積0.1〜1
000cm2(好ましくは1〜100cm2)のものを意
味する。また、ゲル状とは大きさ0.001〜100c
3(好ましくは0.1〜10cm3)で含水率5〜99
重量%(好ましくは20〜95重量%)の非流動性のも
のを意味する。また、スポンジ状とは大きさ0.001
〜100cm3(好ましくは0.1〜10cm3)で平均
空隙径(例えば、断面を顕微鏡を用いて10ケ所好まし
くは50ケ所の空隙径を測定した平均値で示される値。
以下同じである。)0.01〜1000μm(好ましく
は0.1〜100μm)のものを意味する。また、ブロ
ック状とは大きさ0.001〜100cm3(好ましく
は0.1〜10cm3)で上記以外のものを意味する
(以下、同じである)。
【0021】ポリペプチド(A)の含有量は、生体吸収
性物質(B)100重量部に対して、0.00001〜
500重量部が好ましく、さらに好ましくは0.000
1〜50重量部、特に好ましくは0.1〜20重量部で
ある。(A)の含有量がこの範囲であると、細胞の接着
増殖性と本発明の材料の物理的特性(強度,柔軟性等)
が両立しやすくなり、組織欠損の治癒促進効果がより十
分に発揮できる傾向にある。
【0022】本発明の材料には、ポリペプチド(A)及
び生体吸収性物質(B)以外に、溶媒(C)を含有させ
ることができる。溶媒(C)としては、ポリペプチド
(A)及び/又は生体吸収性物質(B)を溶解又は分散
できるものであれば特に制限はないが、無機塩、アミノ
酸、ビタミン、有機酸塩、アルコール、酸及び/又は塩
基を0.1〜50重量%(好ましくは1〜30重量%)
含有する水溶液、並びに水等が使用できる。
【0023】無機塩としては、ハロゲン化アルカリ金
属、ハロゲン化アルカリ土類金属、炭酸アルカリ金属、
硫酸アルカリ金属、硫酸アルカリ土類金属、硫酸遷移金
属、硝酸アルカリ金属、硝酸遷移金属、リン酸アルカリ
金属及び過塩素酸アルカリ金属等が使用でき、例えば、
塩化リチウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カ
リウム、臭化リチウム、塩化カルシウム、臭化カルシウ
ム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、硫酸ナトリウ
ム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、硫酸マグネシウ
ム、硫酸カルシウム、硫酸銅、硫酸鉄、硝酸ナトリウ
ム、硝酸カリウム、硝酸鉄、リン酸ナトリウム、リン酸
水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリ
ウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム及び過塩
素酸カリウム等が挙げられる。
【0024】アミノ酸としては、炭素数2〜11のアミ
ノ酸等が使用でき、例えば、アルギニン、ヒスチジン、
イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニ
ン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、
アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン
酸、プロリン、セリン及びグリシン等が挙げられる。ビ
タミンとしては、例えば、コリン、イノシトール、ニコ
チンアミド、グルタミン、ビタミンA及びビタミンB1
2等が挙げられる。
【0025】有機酸塩としては、炭素数1〜6の有機酸
塩等が使用でき、例えば、シュウ酸カリウム及び酢酸ナ
トリウム等が挙げられる。アルコールとしては、炭素数
1〜4のアルコール等が使用でき、例えば、メタノー
ル、エタノール、イソプロピルアルコール及びブタノー
ル等が挙げられる。酸としては、無機酸及び炭素数1〜
6の有機酸等が使用でき、例えば、塩酸、燐酸、硫酸、
酢酸、蟻酸、フェノール及びヘキサン二酸等が挙げられ
る。塩基としては、無機塩基及び炭素数2〜6の有機塩
基等が使用でき、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カ
リウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、エチルアミ
ン、エチレンジアミン、ピリジン及びトリエチルアミン
等が挙げられる。水としては、蒸留水、イオン交換水、
水道水及びイオン交換蒸留水等が挙げられる。
【0026】これらの溶媒(C)の中で、無機塩、酸及
び/又は塩基を含有する水溶液、並びに水が好ましく、
さらに好ましくは無機塩を含有する水溶液及び水、特に
好ましくはハロゲン化アルカリ金属、炭酸アルカリ金
属、リン酸アルカリ金属を含有する水溶液である。溶媒
(C)を使用する場合、溶媒(C)の含有量は、ポリペ
プチド(A)及び生体吸収性物質(B)の合計重量10
0重量部に対して、0.1〜100000重量部が好ま
しく、さらに好ましくは1〜10000重量部、特に好
ましくは10〜5000重量部である。
【0027】溶媒(C)を含有しない場合、ポリペプチ
ド(A)は、生体吸収性物質(B)の表面に及び/又は
内部に固体状態で分布しており、溶媒(C)を含有する
場合、(A)は、(B)の溶液の中に固体状態で分散し
ているか、又は(B)と共に溶媒(C)に溶解してい
る。また、(A)及び(B)が溶けない溶媒(C)の場
合、溶媒(C)中に(A)及び(B)は分散したペース
ト状になっているか、溶媒(C)を含有した膨潤状態に
なっている。
【0028】本発明の材料の製造方法は、特に制限はな
く、例えば、ポリペプチド(A)の溶液に生体吸収性
物質(B)を浸漬する方法、(A)の溶液に(B)を
浸漬した後に脱溶媒する方法、(A)の溶液と(B)
の溶液とを混合する方法、(A)の溶液と(B)の溶
液とを混合した後に脱溶媒する方法、(A)の粉末と
(B)の溶液とを混合する方法、(A)の粉末と
(B)の溶液とを混合した後に脱溶媒する方法、
(A)と(B)とをトリチルクロライド等のカップリン
グ剤を用いて化学結合させる方法等が挙げられる。
【0029】ポリペプチド(A)の粉末は、固体状の
(A)を乳鉢等で磨り潰すか、溶液状の(A)を減圧状
態の容器の中に霧状に噴霧する、いわゆるスプレードラ
イ方式によって得られる。粉末状のポリペプチド(A)
の粒子径は特に制限はないが、0.001μm〜1cm
が好ましく、さらに好ましくは0.001〜100μm
である。ポリペプチド(A)の溶液又は生体吸収性物質
(B)の溶液は、通常の方法で容易に得ることができ、
例えば、(A)又は(B)を溶媒に加え、攪拌機等で均
一攪拌する方法等が適用できる。
【0030】、及びの方法を用いた場合、本発明
の材料は、溶媒を含有したゲル状又は溶液状になる。こ
れらの方法で用いられる溶媒としては、前記で例示した
溶媒(C)等が使用できる。溶媒の使用量としては、本
発明の材料と溶媒の合計重量100重量部に対して、5
〜99重量部が好ましく、20〜95重量部がさらに好
ましい。
【0031】、、及びの方法を用いた場合、本
発明の材料は溶媒を含まない粉末状、繊維状、布帛状、
フィルム状、スポンジ状又はブロック状とな。の方法
の場合、本発明の材料は、(B)の形状と同じ形状であ
り、(B)の形状に応じて、粉末状、繊維状、布帛状、
フィルム状、スポンジ状又はブロック状となる。これら
の方法で用いられる溶媒としては、前記で例示した溶媒
(C)等が使用できる。溶媒を使用する場合、溶媒の使
用量としては、本発明の材料と溶媒の合計重量100重
量部に対して、5〜99重量部が好ましく、20〜95
重量部がさらに好ましい。
【0032】又はの方法を用いた場合、脱溶媒の仕
方によって、例えば、スプレードライすれば粉末状とな
り、平面状に溶液を広げて脱溶媒すればフィルム状とな
り、溶液を泡立てた後凍結乾燥し必要に応じて架橋処理
するればスポンジ状となる。これらの方法で用いられる
溶媒としては、(A)及び/又は(B)が溶解するもの
であれば特に制限はなく、前記で例示した溶媒(C)に
加え、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル及びハロ
ゲン化炭化水素等が使用できる。
【0033】溶媒を使用する場合、溶媒の使用量は用い
る(B)の種類によって異なるが、(B)1重量部に対
して、0.1〜1000重量部が好ましく、さらに好ま
しくは0.5〜100重量部、特に好ましくは1〜50
重量部である。炭化水素としては、炭素数6〜7の炭化
水素等が使用でき、例えば、ヘキサン、シクロヘキサ
ン、ヘプタン、ベンゼン及びトルエン等が挙げられる。
ケトンとしては、炭素数3〜6のケトン等が使用でき、
例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソ
ブチルケトン等が挙げられる。エステルとしては、炭素
数4〜6のエステル等が使用でき、例えば、酢酸エチル
及び酢酸ブチル等が挙げられる。
【0034】エーテルとしては、炭素数4〜6のエーテ
ルが使用でき、例えば、ジエチルエーテル、ジエチレン
グリコール及びトリエチレングリコール等が挙げられ
る。ハロゲン化炭化水素としては、ハロゲン原子を有す
る炭素数1〜6の炭化水素等が使用でき、例えば、クロ
ロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素及びパーフルオ
ロヘキサン等が挙げられる。
【0035】なお、スプレードライは、通常の方法が適
用でき、例えば、柴田科学器械工業(株)製のミニスプ
レードライヤーB−191型等を用いて、オーブン温度
50〜150℃、減圧度0.001Pa〜50kPaで
行うことができる。また、脱溶媒は、通常の方法が適用
でき、例えば、順風乾燥機、減圧乾燥機又は凍結乾燥器
で、−120〜200℃、0.001Pa〜大気圧の圧
力下で、1〜100時間乾燥することで行える。
【0036】スポンジ状とするには、通常の方法が適用
でき、例えば、ポリペプチド(A)と生体吸収性物質
(B)とを含有する溶液をポリトロン等の高速攪拌機を
用いて泡を噛み込ませながら攪拌し、1.5〜100倍
に泡立て、−120〜−10℃の冷凍庫中で10分〜5
0時間冷却し凍結したの後、0.01Pa〜50kPaの減
圧下、5〜100時間かけて0℃〜100℃に加熱する
ことで得られる。さらに必要に応じて行われる架橋処理
は、順風乾燥機又は減圧乾燥機中で、100〜250
℃、0.001Pa〜大気圧の圧力下で10分〜100時
間処理することで行われる。
【0037】本発明の材料の形状としては、体液又は組
織細胞との接触面積が高く、治癒期間が短くなるという
点で、粉末状、繊維状、布帛状、ゲル状及びスポンジ状
のものが好ましく、さらに好ましくはゲル状及びスポン
ジ状、特に好ましくはスポンジ状である。本発明の材料
は、必要に応じて滅菌処理を施してもよい。滅菌方法は
医療上許容される方法であればいずれでもよく、例え
ば、放射線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、オート
クレーブ殺菌及び乾熱滅菌等が挙げられる。
【0038】本発明の組織細胞の体外培養用材料は、体
外で該材料に組織細胞(D)を接着させてから使用され
る。組織細胞(D)としては、組織細胞であれば特に制
限はないが、血管を構成する細胞(例えば、血管内皮細
胞、平滑筋細胞及び線維芽細胞等)、筋肉を構成する細
胞(例えば、筋肉細胞等)、脂肪を構成する細胞(例え
ば、脂肪細胞等)、神経を構成する細胞(例えば、神経
細胞等)、肝臓を構成する細胞(例えば、肝実質細胞
等)及び膵臓を構成する細胞(例えば、膵ラ島細胞等)
等が挙げられる。これらのうち、血管を構成する細胞、
筋肉を構成する細胞、脂肪を構成する細胞及び神経を構
成する細胞が好ましく、さらに好ましくは、血管内皮細
胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、脂肪細胞及び
神経細胞であり、特に好ましくは血管内皮細胞、平滑筋
細胞及び線維芽細胞である。
【0039】本発明の材料に組織細胞(D)を体外で接
着させて再生組織を作製する方法としては、本発明の材
料に組織細胞(D)を接着させて必要に応じて組織細胞
を増殖させる方法等が適用できる。具体的には、適当な
容器(細胞培養用シャーレや細胞培養用マイクロプレー
ト、T−フラスコ及びビーカー等)に本発明の材料を入
れ、組織細胞(D)を縣濁させた培地を加えて所定時
間、所定の条件で培養する方法等が挙げられる。また、
一旦組織細胞(D)を接着させた後、組織細胞(D)が
接着した本発明の材料を別の容器に移して増殖させるこ
ともできる。
【0040】通常の培地としては、用いる組織細胞
(D)の種類に応じて、MEM培地、BME培地、DM
E培地、αMEM培地、IMEM培地、ES培地、DM
−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培
地及びRPMI培地等(例えば、朝倉書店発行、日本組
織培養学会編「組織培養の技術」第三版581頁に記載
の培地等)、並びにこれらの培地に血清成分(例えば、
ウシ胎児血清)等を添加したもの等が挙げられる。
【0041】組織細胞(D)の量としては、用いる容器
の種類や(D)の種類等によって異なるが、本発明の材
料の表面積1cm2当り、0.1個〜1000万個が好
ましく、さらに好ましくは1〜500万個、特に好まし
くは100〜100万個である。また、組織細胞(D)
の培地に分散させる濃度としては特に制限はないが、培
地1mL当たり、100〜1億個/mLが好ましく、さ
らに好ましくは1000〜1千万個/mL、特に好まし
くは1万〜100万個/mLである。
【0042】培養条件としては、特に制限は無く、CO
2濃度1〜20体積%、5〜45℃で12時間〜100
日間、必要に応じて1〜3日毎に培地交換しなら培養す
る条件等が挙げられる。好ましい条件としては、CO2
濃度5体積%、37℃1〜36日間、2〜3日毎に培地
交換しなら培養する条件である。培地中には、添加剤と
して、血清成分以外にさらに必要に応じて、細胞増殖因
子(E)を含有させることにより、さらに組織細胞
(D)の増殖速度を高めたり、細胞活性を高めたりする
ことができる。
【0043】細胞増殖因子(E)としては、例えば、線
維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、上
皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、血小板由来増殖因
子、インスリン様増殖因子、血管内皮増殖因子、神経成
長因子、幹細胞因子、白血病阻害因子、骨形成因子、ヘ
パリン結合上皮細胞増殖因子、神経栄養因子、結合組織
成長因子、アンジオポエチン、サイトカイン類、インタ
ーロイキン類、アドレナモジュリン及びナトリウム利尿
ペプチド等の生理活性ペプチド等が挙げられる。これら
の中で、適用できる組織細胞の範囲が広く、治癒期間が
より短縮できるという観点から、線維芽細胞増殖因子、
トランスフォーミング増殖因子、インシュリン様増殖因
子及び骨形成因子が好ましく、さらに好ましくは線維芽
細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子及びイン
シュリン様増殖因子である。
【0044】細胞増殖因子(E)を使用する場合、細胞
増殖因子(E)の含有量は、培地100重量部に対し
て、0.00001〜500重量部が好ましく、さらに
好ましくは0.0001〜50重量部、特に好ましくは
0.001〜10重量部である。細胞増殖因子(E)の
含有量がこの範囲であると、細胞増殖因子(E)の増殖
速度をさらに高める傾向や細胞活性をさらに高くなる傾
向がある。細胞増殖因子(E)を培地に添加する方法と
しては、培地に細胞増殖因子(E)を直接加える方法
や、予め細胞増殖因子(E)を溶媒(C)等に溶解又は
分散したものを加える方法等が挙げられる。
【0045】さらに培地には必要に応じて、他の成分
(F)として、安定化剤(例えば、酸化防止剤及び抗菌
剤等)及びpH調整剤(例えば、炭酸カルシウム及びリ
ン酸カルシウム等)等を含有させることができる。他の
成分(F)を使用する場合、他の成分の含有量は、培地
100重量部に対して、0.00001〜100重量部
が好ましく、さらに好ましくは0.0001〜50重量
部、特に好ましくは0.001〜10重量部である。
【0046】本発明の材料を用いて細胞を体外で培養し
た培養組織は、細胞が強く接着しており、例えば外傷に
よる血管、筋肉、神経及び脂肪等の組織の欠損部分に、
欠損部分の大きさの1〜1.5倍程度の大きさになる量
の本発明の再生組織を縫合する等して設置して当該組織
を再生治療するため等に有効に使用できるものである。
【0047】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるもの
ではない。 実施例1 三洋化成工業(株)製プロネクチンFを1mg/mLの
濃度で4.5規定の過塩素酸リチウム飽和溶液に溶解さ
せた溶液1mLと、pH7.3のリン酸バッファー液
(PBS)49mLとを混合し、プロネクチンFの濃度
20μg/mLの溶液(PnF溶液)を作製した。24
穴細胞培養プレート(IWAKI SCITECH DI
V)に、ポリ乳酸(Mn;45000)製中空糸(長さ
1cm、外径0.035cm、内径0.030cm)を
1穴当たり5個づつ入れ、さらにPnF溶液を0.5m
Lづつ加え、1時間、25℃で静置した。次いで、プレ
ート穴からPnF溶液を取り除き、PBS1mLで3回
洗浄することで、プロネクチンFを吸着させたポリ乳酸
中空糸1を得た。
【0048】<細胞培養>24穴細胞培養プレートに中
空糸1を入れ、ウシ冠状動脈平滑筋細胞の浮遊液(細胞
濃度;1千万個/mL、培地;D−MEM/F12)を0.
4mL加えて、37℃、5体積%CO2で2時間放置し
た。その後、細胞が接着した中空糸を同一プレートの他
の穴に移し、D−MEM/F12を90体積部に対し、
10体積部の牛胎児血清を混合した血清入り培地中で細
胞培養を継続した。細胞培養16時間後、中空糸表面の
細胞の接着状態を観察すると共に位相差顕微鏡を用いて
写真撮影を行った。この細胞の接着状態の観察結果を表
1に示し、写真を図1に示す。
【0049】比較例1 PnF溶液の代わりに1規定水酸化ナトリウム水溶液を
用いた以外は実施例1と同様にして中空糸2を得た。中
空糸1の代わりに中空糸2を用いた以外は実施例1と同
様にして細胞培養を行い、細胞培養16時間後の細胞の
接着状態を観察すると共に写真撮影を行った。この細胞
の接着状態の観察結果を表1に示し、写真を図2に示
す。
【0050】比較例2 ポリ乳酸(Mn4,500)製の中空糸(長さ1cm、
外径0.035cm、内径0.030cm)を未処理の
まま中空糸3とした。中空糸1の代わりに中空糸3を用
いた以外は実施例1と同様にして細胞培養を行い、細胞
培養16時間後の細胞の接着状態を観察すると共に写真
撮影を行った。この細胞の接着状態の観察結果を表1に
示し、写真を図3に示す。
【0051】
【表1】
【0052】○;指で細胞面を触っても、中空糸と細胞
面のずれは生じなかった。(細胞と中空糸が強く接着し
ている。) ×;指で細胞面を触った場合、中空糸と細胞面にずれが
生じた。(細胞と中空糸の接着が弱い。)
【0053】プロネクチンFで処理した中空糸1を用い
た場合、16時間でも細胞がよく付着/増殖していた。
一方、加水分解処理した中空糸2の場合、細胞付着/増
殖はあるものの、僅かな機械的刺激で中空糸表面から細
胞面がずれてしまい、強く接着していないことが判る。
また、未処理の中空糸3の場合、ある程度細胞は接着し
ているが、中空糸表面上で細胞は余り伸展せず、細胞付
着/増殖状態がよくなかった。なお、細胞付着性は評価
するに至らなかった。
【0054】
【発明の効果】本発明の組織細胞の体外培養用材料を用
いると、組織細胞が該材料に極めて強く接着し、組織細
胞の増殖が極めて活発となる。従って、生体組織により
近い再生組織が極めて簡便に得られる。特に、血管等の
軟組織の再生に極めて効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得た培養細胞表面の顕微鏡写真(倍
率100倍)である。
【図2】比較例1で得た培養細胞表面の顕微鏡写真(倍
率100倍)である。
【図3】比較例2で得た培養細胞表面の顕微鏡写真(倍
率100倍)である。
フロントページの続き Fターム(参考) 4B065 AA90X BB01 BC03 BC07 BC41 BC50 CA43 CA44 4C081 AB11 AB13 AB18 AB19 BA12 CD34 DA02 DB07 DC01 4C087 BB33 BB45 BB47 BB63 CA04 ZA89 ZA94 ZB21

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 遺伝子組換微生物によって合成され、細
    胞接着シグナルを現わす最小アミノ酸配列を1分子中に
    少なくとも1個有するポリペプチド(A)と、生体吸収
    性物質(B)とからなることを特徴とする組織細胞の体
    外培養用材料。
  2. 【請求項2】 (A)中の細胞接着シグナルを現わす最
    小アミノ酸配列の数が3〜50個である請求項1記載の
    材料。
  3. 【請求項3】 細胞接着シグナルを現わす最小アミノ酸
    配列が、アミノ酸一文字表記で現わされるRGD配列、
    LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSG
    R配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RN
    IAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、
    DGEA配列及びHAV配列からなる群より選ばれる少
    なくとも1種の配列である請求項1又は2記載の材料。
  4. 【請求項4】 (A)が、さらにGAGAGSのアミノ
    酸配列を少なくとも2個有してなる請求項1〜3のいず
    れか記載の材料。
  5. 【請求項5】 (B)が、乳酸、グリコール酸及び/又
    はε−カプロラクトンを必須単量体としてなる(共)重
    合体、キチン、並びにキトサンからなる群より選ばれる
    少なくとも1種の生体吸収性物質である請求項1〜4の
    いずれか記載の材料。
  6. 【請求項6】 (A)の量が、(B)100重量部に対
    して0.0001〜50重量部である請求項1〜5のい
    ずれか記載の材料。
  7. 【請求項7】 管状又はフィルム状である請求項1〜6
    のいずれか記載の材料。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか記載の材料と組
    織細胞(D)とを含有してなる培養組織。
  9. 【請求項9】 (D)が、血管内皮細胞、平滑筋細胞、
    線維芽細胞、筋肉細胞、脂肪細胞及び神経細胞からなる
    群より選ばれる少なくとも1種の組織細胞である請求項
    8記載の培養組織。
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JP2009131189A (ja) * 2007-11-29 2009-06-18 Nipro Corp 付着性細胞の培養方法

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