JP2009126847A - 脂肪酸アルキルエステル中の微量グリセリンの除去方法 - Google Patents

脂肪酸アルキルエステル中の微量グリセリンの除去方法 Download PDF

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Abstract

【課題】脂肪酸アルキルエステル中に含まれる微量のグリセリンを除去できる除去方法を提供する。
【解決手段】脂肪酸アルキルエステル中に含まれるグリセリンを除去する除去方法であって、脂肪酸アルキルエステルを、水素もしくは窒素またはそれらの混合ガス雰囲気下にて、100℃以上の温度とする処理を行うことを特徴とするグリセリンの除去方法。本発明においては、前記処理をニッケル、パラジウムおよびプラチナからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属触媒の存在下で行うことが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪酸アルキルエステルに含まれる微量のグリセリンを除去する除去方法に関する。
脂肪酸アルキルエステルのスルホン化物の中和塩は、一般にα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩とも呼ばれ、耐硬水性、生分解性が良好であるうえ、洗浄力に優れ、皮膚にマイルドな界面活性剤であり、資源面からも再生可能な天然原料系でコスト的にも有利であり、地球環境保護の面からも重要視されている。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造方法としては、脂肪酸アルキルエステルを、SOガス等を用いてスルホン化してα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを得、該α−スルホ脂肪酸アルキルエステルをアルカリによって中和する方法が一般的である。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造に原料として用いられる脂肪酸アルキルエステルの製造には、一般的に、油脂類(脂肪酸トリグリセライド等)をメタノール等の低級アルコールでエステル交換する方法が用いられている(たとえば特許文献1〜2参照。)。
かかる製造方法においては、エステル交換時に、脂肪酸アルキルエステルとともにグリセリンが副生するため、エステル交換後、生成したグリセリンを除去することが行われている。グリセリンの除去方法としては、静置分離、遠心分離等により反応生成物を2層(脂肪酸アルキルエステルを含む油相とグリセリンを含むグリセリン相)に分離し、グリセリン相を排出する方法が一般的である。
特許第3046999号公報 特表2003−521440号公報
しかし、上述のような分離方法では、油相中にグリセリンが完全には除去されずに残っている。そのため、従来の脂肪酸アルキルエステルには微量のグリセリンが含まれている。
本発明者らの検討によれば、脂肪酸アルキルエステル中のグリセリンは、当該脂肪酸アルキルエステルを原料とするα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造プロセスや、得られる製品の品質(色調、臭気等)に悪影響を与えることがわかっている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、脂肪酸アルキルエステル中に含まれる微量のグリセリンを除去できる除去方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、脂肪酸アルキルエステル中に含まれるグリセリンを除去する除去方法であって、脂肪酸アルキルエステルを、水素もしくは窒素またはそれらの混合ガス雰囲気下にて、100℃以上の温度とする処理を行うことを特徴とするグリセリンの除去方法である。
本発明においては、前記処理をニッケル、パラジウムおよびプラチナからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属触媒の存在下で行うことが好ましい。
本発明の除去方法によれば、脂肪酸アルキルエステル中に含まれる微量のグリセリンを除去できる。たとえば200ppm程度のグリセリンを、150ppm以下に低減することが可能である。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明によりグリセリンを除去する脂肪酸アルキルエステルとしては、動植物油脂を原料として製造されたものが挙げられる。このような脂肪酸アルキルエステルは、その製造プロセス上、グリセリンを必ず含んでおり、通常、少なくとも200ppm程度は含まれている。そのため、本発明の除去方法の有用性が高い。
脂肪酸アルキルエステル中のグリセリン含量は、たとえば、ガスクロマトグラフィーを用いて、「脂質分析法入門」学会出版センター、第226−228頁に記載の方法に基づいて測定することができる。
脂肪酸アルキルエステルの原料として使用される動植物油脂は、動物(微生物を含む)や、植物に由来し、油脂(脂肪酸トリグリセライド)を主成分とするものである。動物由来のものとしては、牛脂、豚脂などが挙げられ、植物由来のものとしては、ヤシ油、パーム核油、パーム油、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、コーン油などが挙げられる。これらの中でも、菜種油、大豆油、パーム油、パーム核油などの、炭素数10〜22の脂肪酸の油脂を有する植物油が好ましい。該脂肪酸は飽和であってもよく、不飽和であってもよい。
このような動植物油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルは、市販のものを用いても良く、製造してもよい。
該脂肪酸アルキルエステルは、一般的に、上記原料と低級アルキルアルコールとを反応させることにより製造される。低級アルキルアルコールは、炭素数1〜4のアルキルアルコールであり、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。これらの中でもメタノールが特に好ましい。
脂肪酸アルキルエステルの製造方法として、より具体的には、原料中の脂肪酸を低級アルキルアルコールでエステル化して、エステル混合油を含む反応混合物を得るエステル化工程と、該エステル混合油中の油脂を、アルカリ触媒を使用し、低級アルキルアルコールでエステル交換するエステル交換工程と、該エステル交換工程で得た油相の減圧蒸留を行い、脂肪酸低級アルキルエステルを留出させる蒸留工程と、を含む方法が挙げられる。また、原料として未精製油脂を用いる場合は、エステル化工程の前に、原料からガム質を除去する脱ガム工程を行ってもよい。
アルカリ触媒として、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートなどが挙げられ、水酸化ナトリウムが最も好ましい。
かかる製造方法は、たとえば特開2007−176973号公報に記載の製造方法に従って実施できる。
本発明において処理する脂肪酸アルキルエステルは、1種であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
本発明において処理する脂肪酸アルキルエステルとしては、ヨウ素価が0.5以下のものが好ましく、0.2以下のものがより好ましい。ヨウ素価が低いほど、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造に際して、スルホン化工程での着色を効果的に低減することができ、得られるα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の色調が良好となる。また、臭気も抑制される。特にヨウ素価が0.2以下のものは、0.2を越えるものと比較して色調が特に良好となる。
脂肪酸アルキルエステルの処理は、脂肪酸アルキルエステルを、水素もしくは窒素またはそれらの混合ガス雰囲気下にて、100℃以上の温度とすることにより行う。
該処理は、具体的には、たとえば、脂肪酸アルキルエステルを、オートクレーブ等の反応器に収容し、該反応器内のトップスペースの空気を所定のガスで置換し、所定の処理温度にまで加熱して、該処理温度を所定の時間保持することにより実施できる。
ここで、所定のガスとは、水素ガス、窒素ガスまたはそれらの混合ガスである。
本発明においては、脂肪酸アルキルエステルを所定の処理温度にまで加熱した後、処理温度を所定の時間保持する間、脂肪酸アルキルエステル中に、上記所定のガスを吹き込んでもよい。
ガスの置換や吹き込みは、従来公知の方法により実施できる。たとえば吹き込みは、反応装置内に脂肪酸メチルエステルと、必要に応じて金属触媒とを入れた状態で、所定ガスを反応器下方に供給し、液内を浮上流通させて行うことができ、また必要に応じ、攪拌によって気液接触を促進することもできる。
吹き込み時に反応器内に流通させるガス(流通ガス)の流量は、特に限定されないが、脂肪酸メチルエステル1kgに対し、1時間あたり1L〜1000L(以下、1〜1000L/kg/hと表す)を流通させることが好ましく、1〜100L/kg/hがより好ましく、10〜80L/kg/hがさらに好ましい。
処理温度は、100℃以上であり、120℃以上が好ましく、160℃以上がさらに好ましい。また、処理温度は、脂肪酸アルキルエステル製造上、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、215℃以下がさらに好ましい。
前記の処理において、脂肪酸アルキルエステルの加熱は1段階で行ってもよく、2段階以上に分けて加熱してもよい。
たとえば加熱を2段階で行う例としては、空気雰囲気下で70℃程度の温度に加熱した後、前記所定のガス雰囲気とし、その後所定の処理温度とする方法が挙げられる。かかる方法は、金属触媒を均一に分散できるという利点を有することから好ましい。
前記処理温度を保持する時間(処理時間)は、目標グリセリン含量(処理後の脂肪酸アルキルエステル中のグリセリン含量)、処理温度等によっても異なるが、グリセリン除去のためには、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。また、処理時間の上限は、特に限定されないが、脂肪酸アルキルエステル製造上、3時間以下が好ましく、2.5時間以下がより好ましく、2時間以下がさらに好ましい。
処理を行う圧力は、特に限定されないが、常圧〜10MPaが好ましく、常圧〜1MPaがより好ましく、0.5〜1MPaがさらに好ましい。
本発明においては、前記処理を、ニッケル、パラジウムおよびプラチナからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属触媒の存在下で行うことが好ましい。これにより、グリセリンの除去効果がさらに向上する。
金属触媒としては、ニッケル、パラジウムおよびプラチナからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むものであればよく、特に限定されない。たとえば、これまで、水添処理、還元処理等に使用される金属触媒として提案されているもののなかから、前記金属を含むものを適宜選択して用いればよい。
このような金属触媒として、具体的には、該金属の単体、金属塩、有機化合物との錯体等が挙げられる。
本発明においては、金属触媒として、担体に担持されたもの(以下、担持金属触媒という。)を用いることが好ましい。担持金属触媒を用いることにより、触媒活性が増強され、より少ない触媒金属量で効率よく反応を行う事ができる。
担体としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、シリカアルミナなどの金属酸化物及びこれらの複合酸化物、ケイソウ土、活性炭、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、セラミック等が挙げられる。
金属触媒は、市販のものを利用できる。
金属触媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
金属触媒の使用量(総質量(担持金属触媒の場合は金属触媒と担体との合計量)は、脂肪酸アルキルエステルに対し、0.01質量%以上が好ましく、0.035質量%以上がより好ましい。
金属触媒の使用量の上限は特に限定されないが、経済的合理性を考慮すると、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
本発明においては、グリセリンの除去効果に優れることから、前記処理を行う際に、反応系内に、上述した金属触媒以外の触媒は存在しないことが好ましい。
つまり、本発明においては、前記処理を、無触媒下で行うか、または触媒として前記特定の金属触媒のみが存在する条件下で行うことが好ましい。
上記の処理により、脂肪酸アルキルエステルに不純物として含まれるグリセリンを除去でき、たとえば200ppm程度のグリセリンを、150ppm〜検出限界未満程度にまで低減することが可能である。
したがって、本発明の除去方法によれば、グリセリン含量の低減された脂肪酸アルキルエステルが得られる。
かかる脂肪酸アルキルエステルは、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造原料として有用である。
すなわち、上述したように、本発明者らの検討によれば、脂肪酸アルキルエステル中のグリセリンは、当該脂肪酸アルキルエステルを原料とするα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造プロセスや、得られる製品の品質(色調、反応率等)に悪影響を与えることがわかっており、グリセリン含量の低減された脂肪酸アルキルエステルを用いることにより、これらの悪影響を防止できる。
脂肪酸アルキルエステルを用いたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造方法としては、脂肪酸アルキルエステルを、SOガス等を用いてスルホン化してα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを得、該α−スルホ脂肪酸アルキルエステルをアルカリによって中和する方法が一般的である。
以下、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造方法として、本発明の除去方法によりグリセリンが除去された脂肪酸アルキルエステルが好ましく使用される製造方法の一例を示す。
本例のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造方法は、以下の(A)〜(D)の工程を有する。
(A)脂肪酸アルキルエステルをスルホン化してα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを得るスルホン化工程。
(B)スルホン化工程で得られる生成物に対して、低級アルキルアルコールを用いてエステル化処理を行うエステル化工程。
(C)エステル化工程で得られる生成物に対して中和処理を行う中和工程。
(D)中和工程で得られる生成物(中和物)を漂白する漂白工程。
<(A)スルホン化工程>
(A)スルホン化工程においては、脂肪酸アルキルエステルをスルホン化してα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを得る。
本工程で用いられる脂肪酸アルキルエステルとしては、前記本発明のグリセリン除去方法で挙げた脂肪酸アルキルエステルと同様のものが挙げられる。
スルホン化工程は、脂肪酸アルキルエステルとスルホン化ガスとを接触させる(A−1)スルホン化反応工程と、更に、反応を促進させる(A−2)熟成工程とからなることが好ましい。
・・(A−1)スルホン化反応工程
スルホン化反応方式としては、槽型反応方式、フィルム型反応方式、管型気液混相流反応方式等が用いられ、特に限定するものではない。
スルホン化に用いるスルホン化ガスとしては、SOガスの他に発煙硫酸等が用いられるが、好ましくはSOであり、通常、脱湿空気又は窒素などの不活性ガスでSO濃度3〜30容量%に希釈したSOガスが使用される。
SOは、脂肪酸アルキルエステルの1.0モルに対して1.0〜2.0モルの割合で使用される。1.0倍モル未満ではスルホン化反応が十分に進行せず、2.0倍モルを越えると、スルホン化反応がより過激になるため局所熱に起因する着色が著しくなり、淡色の目的物を得難いことがある。
なお、スルホン化反応時の着色を抑制するための添加剤として、一価の金属塩を有する無機化合物を添加することがより好ましい。一価の金属塩としては、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム等の無機硫酸塩が挙げられる。
(A−1)スルホン化反応工程における反応温度は、脂肪酸アルキルエステルが流動性を有する温度であればよく、一般に融点から融点より70℃高い温度までが適用される。
反応時間は、薄膜式スルホン化法では5〜120秒、回分式スルホン化法では10〜180分程度である。
・・(A−2)熟成工程
(A−2)熟成工程は、(A−1)スルホン化反応後、所定の温度条件で保持し、反応を促進させる。熟成温度は50〜100℃が好ましく、熟成時間は1〜120分であることが好ましい。
脂肪酸アルキルエステルをSOによりスルホン化してα−スルホ脂肪酸アルキルエステルとする機構は、Smith and Stirton:JAOCS vol.44, P.405(1967)およびSchmid, Baumann,Stein, Dolhaine:Proceeding of the World Surfactants Congress Munchen, vol.2, P.105, Gelnhausen, Kurle(1984)およびH.Yoshimura:油化学(JJOCS),41巻,10頁(1992)に記載されており、ここに前記2分子付加体についての説明が記載されている。
ここで記載されている機構は、上述の(A)スルホン化工程を行うと、脂肪酸アルキルエステルの1分子にSOが1分子付加した1分子付加体が生成し、更にこの1分子付加体にSOが1分子付加して2分子付加体が生成し、2分子付加体からSOが1分子脱離してα−スルホ脂肪酸アルキルエステルが生じるというものである。
たとえば下記一般式(I)で表される脂肪酸アルキルエステル(I)を例に挙げてより具体的に説明すると、以下に示すように、脂肪酸アルキルエステル(I)から下記一般式(I’)で表されるSO一分子付加体(I’)が生成し、該SO一分子付加体(I’)から下記一般式(I”)で表されるSO二分子付加体(I”)が生成し、該SO二分子付加体(I”)から下記一般式(II)で表されるα−スルホ脂肪酸アルキルエステルが生成する。
Figure 2009126847
[式中、Rは炭素数9〜21の直鎖または分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基を表し、Rは炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を表す。]
この機構においては、2分子付加体からSOが1分子脱離する反応が律速である。そのため、(A)スルホン化工程を経た脂肪酸アルキルエステルをスルホン化した反応生成物には、通常、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルとともに2分子付加体が含まれている。そこで、この2分子付加体を、(B)エステル化工程を行って、低級アルコ−ルによりエステル化すると、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルとすることができる。
よって、(B)エステル化工程は必須ではないが、これを行うと副生物を低減することができるため、行うことが好ましい。
(A)スルホン化工程は、より淡色なα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを得るためには、着色抑制剤の存在下にて行うことが好ましい。
着色抑制剤としては、一価の金属塩である有機酸塩、無機硫酸塩等が用いられ、好ましくは無機硫酸塩が用いられる。有機酸塩としては、例えば蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、酢酸ナトリウム等を例示できる。無機硫酸塩は、一価の金属塩である粉末状の無水塩であれば特に限定されず、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム等が挙げられる。無機硫酸塩は着色抑制効果が高く、安価なものが多く、さらに洗浄剤に配合される成分なので、洗浄剤用途のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩製造の場合は、無機硫酸塩をα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩から除去する必要がないので好ましい。
また、着色抑制剤の平均粒子径は250μm以下が好ましく、特に100μm以下が好ましい。このような粒径にする理由は、例えば無機硫酸塩は反応中原料液相にはその表面がわずかに溶解する程度でほとんど溶解せず、原料液相中に分散している。従って、上述のように粒径の小さい無機硫酸塩を用いることにより、原料液相との接触面積が大きくなり、分散性が向上し、より効果を高めることができる。
着色抑制剤の添加量は、原料脂肪酸アルキルエステルに対して0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは3〜20質量%である。添加量が30質量%を超える場合は効果が飽和する場合がある。
<(B)エステル化工程>
次に、前記(A)スルホン化工程で得られる生成物(スルホン化物)に対して、低級アルキルアルコールを用いてエステル化処理を行う。これにより、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの収率が向上し、副生物の生成も抑制される。
このエステル化工程においては、スルホン化物中に、中間体であるSO二分子付加体が残留している場合に、該SO二分子付加体のアルコキシ基部分のエステル化が進行する。
すなわち、下記のように、アルコール(R−OH)により、SO二分子付加体(I”)のアルコキシ基部分に挿入されていたSOの脱離とエステル交換とが進行し、下記一般式(II’)で表されるα−スルホ脂肪酸アルキルエステル(II’)が生成する。したがって、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの収率が向上する。
Figure 2009126847
[式中、RおよびRは、それぞれ、上記式(I)中のRおよびRと同じであり、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。]
また、スルホン化物中にSO二分子付加体が残存している場合、該スルホン化物を、エステル化工程を行わずにそのまま中和すると、下記一般式(III)に示すようなα−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩が生成しやすい。該α−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩は、界面活性剤としての機能は有しているものの、その性能はα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩に比べて低く、最終生成物(製品)中に多量に存在すると、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の洗浄力、水溶性等を低下させ、ひいては、当該製品が用いられる洗浄剤等の性能の低下を引き起こすおそれがある。
本製造方法においては、エステル化工程を行うことにより、副生物の一つであるα−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩の生成を抑制することができる。このように、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの収率が向上し、また副生物の生成が抑制されることにより、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の収率が向上する。
Figure 2009126847
[式中、Rは、上記式(I)中のRと同じである。]
エステル化処理は、たとえば、スルホン化物に低級アルキルアルコールを添加し、これを、所定の反応温度で所定の反応時間保持することにより行うことができる。
反応温度は50〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。
反応時間は5〜180分が好ましく、10〜60分がより好ましい。
エステル化処理は、一般的な撹拌槽あるいは流通管を用いて行うことができ、滞留時間分布を狭くするために、2個以上の仕切られた混合スペースを有する連続式多段撹拌槽を用いることが好ましい。
低級アルキルアルコールは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、1価アルコールが好ましい。特に、原料の脂肪酸アルキルエステルのアルコール残基の炭素数(たとえば式(I)中のRの炭素数)と等しい炭素数の低級アルキルアルコールが好ましく、該アルコール残基におけるアルキル基と同じアルキル基を有する低級アルキルアルコールがより好ましい。
低級アルキルアルコールの添加量は、熟成後の生成物100質量%に対して1〜10質量%が好ましく、2〜5質量%がより好ましい。低級アルキルアルコールの添加量が1質量%以上であると、エステル化処理の効果が充分に得られ、10質量%以下であると、過剰分の低級アルキルアルコールを回収する工程を行う必要がなく、効率的である。
<(C)中和工程>
次に、前記エステル化工程で得られる生成物(エステル化物)に対して中和処理を行う。これにより、エステル化物中のα−スルホ脂肪酸アルキルエステルから、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩が生成する。たとえば原料として上記脂肪酸アルキルエステル(I)を用いた場合は、主に、下記一般式(IV)で表されるα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩(IV)が生成する。
Figure 2009126847
[式中、RおよびRは、それぞれ、上記式(I)中のRおよびRと同じであり、Mは対イオンを示す。]
Mの対イオンとしては、R−CH(CO−O−R)−SO とともに水溶性の塩を形成するものであればよい。該水溶性の塩としては、たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;エタノールアミン塩等が挙げられる。
中和は、たとえば、エステル化物と、アルカリ水溶液とを接触させることにより実施できる。
アルカリ水溶液としては、目的とする塩を形成することができるもの、たとえば上述した一般式(I)中のMを形成するものであればよく、たとえば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、エタノールアミン等が挙げられる。
アルカリ水溶液の濃度は、下記中和物のAI濃度となるように調整する。
ここで、「AI」とは、生成物中に含まれる、界面活性剤としての機能を有する化合物である。本発明の製造方法により得られる生成物中には、通常、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩のほか、副生物としてα−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩が含まれる。α−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩も、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩と同様、界面活性剤としての機能を有している。したがって、本発明において、AI濃度は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩と、副生物の1つであるα−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩との合計の濃度として求められる。
中和物中のAI濃度は、10〜80質量%が好ましい。10質量%以上であると製造効率が向上し、80質量%以下であるとハンドリング性に優れる。特に、粘度が適度に低く、製造効率、ハンドリング性ともに優れることから、AI濃度は、60〜80質量%がより好ましく、62〜75質量%がさらに好ましい。
中和温度は、30〜140℃が好ましく、50〜140℃がより好ましく、30〜80℃がさらに好ましい。
中和時間は、5〜60分間が好ましく、20〜60分間がより好ましい。
中和時のpHは、生成したα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の加水分解を防止するために、酸性あるいは弱いアルカリ性の範囲(pH4〜9)が好ましい。この範囲外では、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩のエステル結合が切断されやすくなる可能性がある。
また、中和工程においては、生成したα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の加水分解とそれに伴う副生物の生成を防止するために、過激な中和操作を避け、極力マイルドな中和処理を行うことが好ましい。
かかる中和処理としては、ループ中和方式が挙げられる。この方式は、ループ状の配管(リサイクルループ)内で、中和処理した中和物の一部(リサイクル中和物)を循環させ、該リサイクル中和物を、エステル化工程後の未中和の生成物に添加して中和を行う方式である。
ループ中和方式において、中和は、たとえばリサイクル中和物と未中和の生成物との混合物に対してアルカリ水溶液を接触させて行ってもよく、また、前記リサイクル中和物と、未中和の生成物と、アルカリ水溶液とを、強力なせん断力の元で瞬時に混合して行ってもよい。
リサイクル中和物の添加量は、未中和の生成物とアルカリ水溶液との合計量の5〜25質量倍が好ましく、10〜20質量倍がより好ましい。未中和の生成物とアルカリ水溶液との合計量に対するリサイクル中和物の添加量の比、すなわちリサイクル比が5以上であると副生物の生成抑制効果に優れ、25以下であると製造効率が向上する。
中和工程は、アルカリ水溶液を用いる以外に、固体の金属炭酸塩または炭酸水素塩を用いることによっても行うことができる。特に固体の金属炭酸塩(濃厚ソーダ灰)による中和は、濃厚ソーダ灰が他のアルカリよりも安価であるため好ましい。また、固体の金属炭酸塩で中和を行うと、生成物と混合した際に、その混合物に含まれる水分量が少なく強アルカリ性になりにくく、また、中和時の中和熱が金属水酸化物の場合よりも低いため、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の加水分解を抑制でき、有利である。
金属炭酸塩または炭酸水素塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムなどの無水塩、水和塩、またはこれらの混合物などが挙げられる。
<(D)漂白工程>
次に、前記中和工程で得られる生成物(中和物)を漂白する。
(D)漂白工程は、常法により行うことができ、たとえば中和物と漂白剤を混合し、該混合物を、所定の漂白温度で、所定の漂白時間維持する方法により行われる。
漂白剤としては、例えば過酸化水素、次亜塩素酸塩などの水溶液が好ましく用いられる。
漂白剤の使用量は、AIに対して純分で0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
漂白温度は、使用する漂白剤に適した温度とすればよい。たとえば過酸化水素を用いる場合は50〜140℃が好ましく、80〜140℃がより好ましい。また、次亜塩素塩酸を用いる場合は30〜80℃が好ましい。
漂白時間は、所望の色調に漂白されるまで行えばよく、実用上は30分〜7日程度が実用的である。
(D)漂白工程は、pHは4〜9の条件下で行うことが好ましい。これにより、優れた漂白効果が発揮され、良好な色調のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩が得られる。
<他の任意の工程>
上記(C)中和工程後、(D)漂白工程を行う前に、中和物を加熱処理する加熱工程を行ってもよい。該加熱工程を行うと、さらに、得られる製品の色調が向上する。
加熱処理は、中和物を所定の温度に加熱し、該温度を所定時間保持することによって行うことができ、加熱温度は、70℃以上が好ましく、70〜120℃がより好ましい。また、加熱時間は、0.5時間〜7日間が好ましく、1時間〜5日間がより好ましく、2〜24時間がさらに好ましい。
以下、図面を用いて上記製造方法の好ましい態様を説明する。
図1は、本態様において好適に用いられる製造装置の概略構成図である。
図1に示す製造装置は、反応槽1および撹拌機4を備えた槽型反応器と、反応槽1の出口1aにライン21を介して接続されたエステル化反応槽31と、該エステル化反応槽31にライン23を介して接続されたリサイクルループ32と、該リサイクルループ32に、ライン24を介して接続されたリサイクルループ33と、該リサイクルループ33に、ライン25を介して接続された漂白管34とから概略構成される。
反応槽1の上部には、SOガス導入ライン8が接続されており、SOガスを反応槽1内に供給できるようになっている。
エステル化反応槽31としては、3つの混合スペースを有する連続式多段撹拌槽31aおよびバッファ31bが用いられている。連続式多段撹拌槽31aには、アルコール供給ライン26が接続されており、連続式多段撹拌槽31aに低級アルコールを供給できるようになっている。
リサイクルループ32は、ライン23およびライン24にその端部が連結された中和ライン32aと、中和ライン32aの両端から分岐する循環ライン32bとから構成されている。中和ライン32a上には、2つのミキサー32c、32dが設けられており、中和ライン32aの、ミキサー32cとミキサー32dとの間の部分には、アルカリ水溶液供給ライン27が接続されており、中和ライン32a内にアルカリ水溶液を供給できるようになっている。また、循環ライン32b上にはポンプ32eおよび熱交換器32fが設けられており、中和物を冷却できるようになっている。
リサイクルループ33は、ライン24およびライン25その端部が連結されたライン33aと、ライン33aの両端から分岐する循環ライン33bとから構成されている。ライン33a上には、ミキサー33cが設けられている。ミキサー33cの上流側には、漂白剤供給ライン28が接続されており、ライン33a内に漂白剤を供給できるようになっている。
図2に、槽型反応器の一例を示す。図2には、反応槽1の内部に反応液2が仕込まれた状態が示されている。
本例の槽型反応器は、反応槽1、反応液2を撹拌する撹拌機4、SOガスを導入するためのSOガス導入ライン8、ガススパージャー9、及び排ガスを排出するための排ガスライン10から概略構成されている。なお、反応槽1には撹拌効率向上の点から邪魔板11が設けられている。
撹拌機4は、回転自在な撹拌軸5と、この撹拌軸5の先端付近に設けられた撹拌翼6とを有している。
一方、ガススパージャー9の先端部9aは、例えば平らなリング状に形成されており、その下面には複数の孔が設けられている。そして、このリング状の先端部9aは、反応液2の液面3下、撹拌翼6の上方に近接して設置されている。よって、SOガス導入ライン8から、これに接続されたガススパージャー9にSOガスが導入されると、先端部9aに設けられた複数の孔からから下方に向かってSOガスが吹き出し、ガススパージャー9の下に配置された撹拌翼6の回転によって瞬時に撹拌され、反応液2と混合される。
図1に示す製造装置を用いたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造は、たとえば以下のようにして行うことができる。
まず、反応槽1に原料である脂肪酸アルキルエステルと着色抑制剤を仕込む。撹拌機4で撹拌しながら反応槽1の内温を所定の反応温度まで上昇させ、液状の原料中に着色抑制剤粒子が分散した原料液相とする。
ついで、この原料液相に、SOガス導入ライン8からスルホン化ガスを導入する。スルホン化ガスは、SOガス導入ライン8からガススパージャー9を経て反応槽1内に導入され、撹拌機4によって原料液相中に分散する。これと同時に、着色抑制剤粒子も原料液相中に均一に分散する。
撹拌翼6の撹拌羽根先端の周速は0.5〜6.0m/secが好ましく、2.0〜5.0m/secがより好ましい。周速が0.5m/sec未満の場合は気泡の分散効果が不十分で、反応率が低下する場合がある。また、着色抑制剤の分散も不十分となるため、その着色抑制効果が低下する場合がある。一方、周速が6.0m/secを超えると着色抑制効果が飽和するが、消費動力が増大する場合がある。
上述のようにして原料液相にスルホン化ガスを導入した後、反応槽1内を所定温度に保持して、スルホン化ガス導入後の熟成を行うことが好ましい。
熟成の温度は70〜100℃が好ましい。70℃より低いと反応が速やかに進行せず、100℃を超えると着色が著しくなる場合がある。
熟成時間は1〜120分が好ましい。このとき、撹拌羽根を上述の好ましい周速の数値範囲に保ちつつ回転させることによって、熟成においても着色抑制剤を十分に分散させつつ反応させることができる。
次に、スルホン化物を連続式多段撹拌槽31aに導入するとともに、アルコール供給ライン26から低級アルコールを供給し、それらを混合する。得られた混合物を、所定の温度で、所定の時間、連続式多段撹拌槽31aおよびバッファ31bにて保持した後、得られた生成物(エステル化物)を、ライン23を通じてリサイクルループ32の中和ライン32aに供給する。
このエステル化物を、アルカリ供給ライン27からアルカリ水溶液を供給して中和し、得られた中和物の一部を、循環ライン32bを通して循環させ、熱交換器32fで冷却した後、中和ライン32a内の未中和のエステル化物に添加する。これを、ミキサー32cで混合した後、上記と同様にして中和する。
中和後、得られた中和物を、ライン24を介してリサイクルループ33のライン33aに供給し、漂白剤供給ライン28から供給された漂白剤とミキサー33cで混合した後、該混合物を漂白管34に供給し、所定の漂白温度として漂白反応を進行させる。これにより、目的とするα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩(漂白品)が得られる。
本態様においては、さらに、上記のようにして得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を熟成する工程を行ってもよい。
この場合、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩含有ペーストは、漂白タンク35に移送され、さらに熟成工程を経ることにより色調の良好なペーストを得ることができる。熟成とは、所定温度で所定時間保持することをいう。熟成温度は好適には60〜90℃、好ましくは70〜80℃であり、熟成時間は好適には1〜48時間、好ましくは2〜24時間、より好ましくは2〜12時間である。熟成温度が60℃未満又は熟成時間が1時間未満であると、ペーストの色調が改善されない場合があり、熟成温度が90℃、熟成時間が48時間を超えると、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩が加水分解する場合がある。
図1の例においては、スルホン化反応器として槽型反応器を用いているが、反応方式は特に限定されず、この他、フィルム反応、管型気液混相流反応等の方式が適用される。また、スルホン化方法は特に限定されず、薄膜式スルホン化法、回分式スルホン化法等が適用される。また、スルホン化反応時に着色抑制剤を使用する場合は、原料中にできるだけ均一に分散させた状態でスルホン化ガスと接触させることが好ましいため、特に回分式スルホン化法においては、槽反応方式が好適である。
また、図1には示されていないが、中和工程と漂白剤による漂白工程との間に加熱処理を行うと、さらにパウダー等の色調を改善することができる。
上述のようにして製造されたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、そのまま製品としてもよく、液体洗浄剤組成物等の調製に用いてもよい。また、粉状、粒状、フレーク状、ヌードル状等の形状に成形し、粉末洗浄剤組成物、固体洗浄剤等の調製に用いてもよい。
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
下記の各例において、特に断りの限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
<実施例1〜9、比較例1〜2>
原料(脂肪酸メチルエステル)としては、表1に示す2種(ライオンケミカル株式会社製のパステルM16およびパステルM182)の混合物(パステルM16:パステルM182=60:40(質量比))を使用した。
Figure 2009126847
原料と、表2に示す種類と配合量の触媒とを、4Lオートクレーブに仕込んだ。そして、攪拌を開始すると共に、70℃にまで原料を昇温した。
次に、オートクレーブ中の空気を、表2の「雰囲気」欄に示すガスにて置換し、表2に示す処理温度にまで昇温した。また、実施例2〜3、8〜9および比較例1については、処理温度に昇温すると同時に、反応容器下方に挿入した管から、表2の「吹込み」欄に示すガスを70L/h/kgで吹き込んだ。反応器上部空隙に抜けた所定ガスは、容器内圧力が0.6MPaとなるように設定した背圧弁により、順次容器外に排出した。
所定の処理温度に到達後、該温度を、表2に示す処理時間保持した時点で処理を終了した。
処理後の脂肪酸メチルエステルについて、以下の評価を行った。
<グリセリン含量低減率(%)>
処理前の脂肪酸メチルエステル(原料ME)および処理後の脂肪酸メチルエステル(製品ME)について、下記の分析条件でガスクロマトグラフィーを行うことにより、グリセリン含量(ppm)を測定し、それぞれのグリセリン含量を求めた。
(分析条件)
・分離カラム:Agilent Technologies社製 DB−1HT(長さ15m,内径0.25mm,膜厚0.1μm).
・キャリアーガス:He.
・注入温度:320℃.
・検出温度:380℃.
・スプリット比:1/30.
・カラム温度:50℃(0min)→380℃(5min)、昇温10℃/min.
上記で求めたグリセリン含量から、下記式によりグリセリン含量低減率(%)を算出した。
グリセリン含量低減率(%)=(原料MEのグリセリン含量×100)/製品MEのグリセリン含量
<製品MEの色調>
「基準油脂分析試験法」(日本油化学会、1996年版)2.2.1.4(色(APHA法))に準拠して評価した。
<製品MEの臭気>
試料について、40℃でマヨネーズ瓶140(日本耐酸壜工業;容量140mL)の7割容量となる様に液を満たし、蓋をして15分室温に放置した後、蓋を開けた時の臭気を下記の判定基準で官能評価した。
(判定基準)
○:異臭がない。
×:異臭がある。
<α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造>
得られた脂肪酸メチルエステルを原料として用いて、図1に示す製造装置と同様の構成の製造装置を用いて下記の手順でα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を製造した。
(スルホン化工程)
スルホン化反応器としては、図2に示す槽型反応器を使用した。SOガスとしては、乾燥空気(露点−55℃)を用いてSOを触媒酸化してSOとしたものを用いた。
原料および着色抑制剤(硫酸ナトリウム、原料脂肪酸アルキルエステルに対して5質量%)を反応槽1内に仕込み、ここに、乾燥空気によりSO濃度が8%となるように希釈されたSOガスを、SOガス導入ライン8からガススパージャー9を経て反応槽1内に導入した。このとき、SOガスは、下記反応時間におけるSOの総供給量が原料の1.2モル倍量となるように供給した。反応槽1内における反応温度は80℃、反応時間は240分であった。また、このとき排出された排ガスは、排ガスライン10から取り出された後、電気集塵機(図示せず)でミスト捕集され、さらにアルカリスクラバー(図示せず)によりSOが除去された後、大気に放出された。
反応後、熟成として、反応生成物を、温度80℃に保ったまま反応槽1内で60分間保持した。
反応生成物は、反応槽1下部の出口1aから排出した。排出された反応生成物について、スルホン化反応率を後述する評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
(エステル化工程)
次に、連続式多段撹拌槽31aに、熟成後の反応生成物を供給し、それと同時に、当該反応生成物に対して4質量%のメタノールを連続的に供給した。そして、連続式多段撹拌槽31aおよびバッファ31b内にて、温度80℃、平均滞留時間30分の条件にて保持することによりエステル化処理を行った。ここで、メタノールは、工業グレード(水分1000ppm以下)のものを使用した。
(中和工程)
次に、エステル化終了後の反応生成物(エステル化物)をリサイクルループ32に供給して中和を行った。
中和には、工業グレードの48質量%の苛性ソーダを上水で希釈したアルカリ水溶液を使用した。このとき、苛性ソーダの希釈は、アルカリ水溶液中の苛性ソーダ濃度が、当該アルカリ水溶液を用いて中和された中和物中のAI濃度が66〜70質量%となるように行った。
中和物の一部を、リサイクルループ32を循環させ、エステル化物と混合して再度中和を行った。このとき中和は、リサイクル中和物のpHを5〜7に維持しつつ、リサイクル比20で行った。中和温度は75〜80℃であり、リサイクルループ6の管内圧力は0.4MPaであった。
(漂白工程)
次に、中和に引き続き、純分35質量%の工業グレードの過酸化水素水を使用して漂白を行った。
漂白は、中和物をリサイクルループ33に供給し、該中和物に漂白剤として過酸化水素水を添加し、該過酸化水素水をミキサー33cで混合した後、温度80℃で漂白管34に導入し、これを同温度で3時間滞留させた後、漂白管34から排出した。
過酸化水素添加量は、中和物100質量%に対して過酸化水素純分1.0質量%で行った。
漂白管34から排出した後、漂白タンク35にて80℃、12時間保持した。これにより、ペースト状の生成物(漂白品)を得た。
[スルホン化反応率]
スルホン化に使用する原料(脂肪酸メチルエステル)の標準品0.02,0.1,0.2gを50mlのメスフラスコに正確に量りとり、メタノールを標線まで加え超音波を用いて溶解させた。溶解後、約25℃まで冷却し、これを標準液とした。この標準液約2mlを、0.45μmのクロマトディスクを用いて濾過後、下記測定条件の高速液体クロマトグラフィーを行い、ピーク面積から検量線を作成した。
(高速液体クロマトグラフィー測定条件)
・装置:LC−10AT(島津製作所製).
・カラム:Inertsil ODS−2(ジーエルサイエンス社製).
・カラム温度:40℃.
・検出器:示差屈折率検出器RID−6A(島津製作所製).
・移動相:HO/CHOH=5/95(体積比)混合溶液.
・流量:1.0mL/min.
・注入量:100μL.
試料5.0gを50mlのメスフラスコに正確に量りとり、メタノールを標線まで加え超音波を用いて溶解させた。溶解後、約25℃まで冷却し、これを試験溶液とした。この試験溶液約2mlを、0.45μmのクロマトディスクを用いて濾過後、上記と同じ測定条件の高速液体クロマトグラフィーで分析し、上記で作成した検量線を用いて、試料溶液中の未反応の原料の濃度を求めた。この未反応の原料の濃度から、反応した原料の濃度を求め、その値から、使用した原料中の、反応した原料の割合(スルホン化反応率(質量%))を算出した。
Figure 2009126847
表2中、Ni触媒、Pd触媒、Pt触媒はそれぞれ以下のものである。
Ni触媒:フレークニッケル触媒(SO−850)、堺化学工業(株)製(組成:ニッケル−ケイソウ土−硬化油、金属含有率20%)。
Pd触媒:20%パラジウムカーボン粉末(AC−2904)、エヌ・イー・ケムキャット(株)製(組成:パラジウム−炭素−水、金属含有率20%)。
Pt触媒:粉末型白金(N1063A3)、日揮化学(株)製(組成:白金−アルミナ、金属含有率3%)。
表2中の各触媒の配合量は、総質量である。
上記結果から明らかなように、実施例1〜9では脂肪酸メチルエステル中のグリセリン含量を大幅に低減できた。また、得られた脂肪酸メチルエステルは、着色および臭気が少なく、品質の良好なものであった。さらに、これらの実施例で処理した脂肪酸メチルエステルを用いてα−スルホ脂肪酸メチルエステルを製造した際のスルホン化反応率も高かった。
なかでも、同じ処理温度、処理時間で処理した実施例1〜3と、実施例4〜6、9とを比較すると、特定の触媒存在下で処理した実施例4〜6、9の方が、大幅にグリセリン含量が低減されており、特に実施例9ではグリセリン含量が検出限界未満(N.D.)となっていた。
一方、比較例1は、空気雰囲気下、空気を吹き込んだ以外は実施例1〜3と同じ条件で処理を行ったにもかかわらず、あまりグリセリン含量が低減されず、着色、臭気等の品質も悪かった。
また、90℃で処理した比較例2では、グリセリンが全く除去されなかった。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造装置の一例を示す概略構成図である。 槽型反応器の一例を示した模式図である。
符号の説明
1…反応槽、2…反応液、4…撹拌機、5…撹拌軸、6…撹拌翼、8…SOガス導入ライン、9…ガススパージャー、10…排ガスライン、11…邪魔板、31…エステル化反応槽、32…リサイクルループ、33…リサイクルループ、34…漂白管、35…漂白タンク。

Claims (2)

  1. 脂肪酸アルキルエステル中に含まれるグリセリンを除去する除去方法であって、脂肪酸アルキルエステルを、水素もしくは窒素またはそれらの混合ガス雰囲気下にて、100℃以上の温度とする処理を行うことを特徴とするグリセリンの除去方法。
  2. 前記処理をニッケル、パラジウムおよびプラチナからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属触媒の存在下で行う請求項1に記載の除去方法。
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