JP6060013B2 - α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩水溶液の製造方法 - Google Patents
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Description
α−SF塩を液体洗剤に配合する場合には、配合のしやすさ、ハンドリングしやすさなどから、α−SF塩の水溶液を調製し、該水溶液を他の材料と混合する方法が一般的である。α−SF塩の水溶液を調製する場合には、例えば、脂肪酸メチルエステルを出発原料とし、スルホン化処理、エステル化処理、中和処理等を行って、α−SF塩を高濃度で含有するペースト得て、該ペーストを水に溶解する方法がある(例えば特許文献1参照。)。
すなわち、
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を含有する固形物を温度Ts(℃)の水に溶解させ、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩水溶液を製造する方法であって、前記固形物は、示差走査熱分析計で熱分析した際に観測される50〜130℃における熱吸収ピーク面積S1が、0〜130℃における熱吸収ピーク面積S2に対して50%以上であり、前記温度Ts(℃)は、前記固形物を示差走査熱分析計で熱分析した際に観測される熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度をTmax(℃)とした場合に、前記温度Tmax(℃)との間に下記の関係を有する、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩水溶液の製造方法。
Tmax−5≦Ts≦Tmax+5
以下、脂肪酸アルキルエステルを出発原料として、上述の安定状態にあるフレーク状等のα−SF塩含有固形物を得る工程(I)(以下、工程(I)ともいう。)と、該α−SF塩含有固形物を特定の温度の水に溶解させる工程(II)(以下、工程(II)ともいう。)とを有する製造方法を例示して、本発明について詳細に説明する。
工程(I)では、まず、準安定な結晶状態(以下、「準安定状態」ともいう。)にあるα−SF塩含有固形物(m)を調製し(工程(I−1))、ついで、該α−SF塩含有固形物(m)を結晶化して、安定状態にあるα−SF塩含有固形物(s)を得る(工程(I−2))。
以下、準安定状態にあるα−SF塩含有固形物(m)のことを準安定固体(m)と言う場合がある。また、安定状態にあるα−SF塩含有固形物(s)のことを安定固体(s)と言う場合がある。
工程(I−1)では、脂肪酸アルキルエステルをスルホン化ガスによりスルホン化するスルホン化処理と、スルホン化処理で得られたスルホン化物に低級アルコールを加えてエステル化するエステル化処理と、エステル化処理で得られたエステル化物を中和する中和処理と、必要に応じて実施される、中和処理で得られた中和物を漂白する漂白処理とを行うことにより、α−SF塩含有ペーストを得る。ついで、該ペーストを加熱、濃縮して濃縮品を得る濃縮処理と、濃縮品を冷却して固化し、板状等の冷却固化物を得る冷却固化処理と、冷却固化物を解砕する解砕処理とを行う。これにより、準安定状態にあるフレーク状のα−SF塩含有固形物(m)を得る。
スルホン化処理は、好ましくは、硫酸ナトリウムなどの着色抑制剤の存在下で、脂肪酸アルキルエステルとスルホン化ガスとを接触させて脂肪酸アルキルエステルをスルホン化する(ガス接触操作)ことにより、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル(以下、「α−SF酸」ともいう。)を含むスルホン化物を得る処理である。着色抑制剤は、スルホン化処理以外にも、エステル化処理で添加してもよい。
まず、反応槽内に脂肪酸アルキルエステルを仕込み、加熱し、原料液相とする。次いで、この原料液相に、スルホン化ガスを好ましくは一定流速で導入し、ガススパージャーから複数の気泡を発生させると共に、撹拌機の回転によって原料液相中に気泡を分散させる。スルホン化処理を着色抑制剤の存在下で行う場合には、この回転によって着色抑制剤の粒子が原料液相中に均一に分散する。
R1−CH2−COOR2・・・(1)
具体的には、脂肪酸アルキルエステルとして、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピルなどのラウリン酸アルキルエステル;ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸プロピルなどのミリスチン酸アルキルエステル;パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピルなどのパルミチン酸アルキルエステル;ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピルなどのステアリン酸アルキルエステル;硬化牛脂脂肪酸メチル、硬化牛脂脂肪酸エチル、硬化牛脂脂肪酸プロピルなどの硬化牛脂脂肪酸アルキルエステル;硬化魚油脂肪酸メチル、硬化魚油脂肪酸エチル、硬化魚油脂肪酸プロピルなどの硬化魚油脂肪酸アルキルエステル;ヤシ油脂肪酸メチル、ヤシ油脂肪酸エチル、ヤシ油脂肪酸プロピルなどのヤシ油脂肪酸アルキルエステル;パーム油脂肪酸メチル、パーム油脂肪酸エチル、パーム油脂肪酸プロピルなどのパーム油脂肪酸アルキルエステル;パーム核油脂肪酸メチル、パーム核油脂肪酸エチル、パーム核油脂肪酸プロピルなどのパーム核油脂肪酸アルキルエステル等を例示できる。
これらは1種以上を使用できる。
(2)式中、R1は(1)式中のR1と同じであり、R2は(1)式中のR2と同じである。
スルホン化ガスの添加量は、脂肪酸アルキルエステルに対して、等倍モル以上であり、1.0〜2.0倍モルが好ましく、1.1〜1.5倍モルがより好ましい。
スルホン化処理におけるスルホン化ガスの導入時間は、10〜300分間程度とされ、60〜240分間程度が好ましい。
熟成操作は、ガス接触操作の後、所定の温度に維持して、ガス接触操作で生成した二分子付加体からのSO3の脱離を促進する工程である。
熟成操作は、例えば、ガス接触操作を行った反応槽内で、引き続き撹拌すること等により行える。ガス接触操作に、フィルム式反応、管型気液混相反応等を用いた場合には、スルホン化物を他の槽型反応器に移して熟成操作を行えばよい。
熟成操作における反応時間(熟成時間)は、例えば、1〜120分間の範囲で決定することが好ましい。
エステル化処理は、スルホン化処理(ガス接触操作および必要に応じて実施される熟成操作)の後、スルホン化処理で得られたスルホン化物(スルホン化処理の生成物)に低級アルコールを添加して、スルホン化物をエステル化し、α−SF酸を生成する反応(エステル反応)を進行させる処理である。
エステル化処理は、例えば、スルホン化物に低級アルコールを添加し、所定の温度に維持しながら撹拌する方法で行われる。
低級アルコールの添加量は、スルホン化物に含まれるSO3の二分子付加体に対して、0.5〜50倍モルであることが好ましく、より好ましくは0.8〜2倍モルである。当該添加量の下限値以上であれば、充分な添加効果が得られる。低級アルコールは、上限値を超えて添加しても、それ以上エステル反応は進行しない。
なお、スルホン化物に含まれるSO3の二分子付加体の量は、高速液体クロマトグラフ等により定量できる。
中和処理は、エステル化処理で得られたエステル化物に対して、アルカリ水溶液などのアルカリ物質により中和処理を行い、中和物を得る処理である。中和処理を行うことにより、エステル化物中のα−SF酸からα−SF塩が生成する。
R1−CH(CO−O−R2)−SO3 −
該水溶性の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、エタノールアミン塩等が挙げられる。
アルカリ水溶液としては、例えば上述の水溶性の塩を形成することができるもの、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アルカリ金属の炭酸塩;アルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エタノールアミン等が挙げられる。
このようなアニオン界面活性剤濃度としては、中和物100質量%中、好ましくは60〜80質量%、より好ましくは62〜75質量%である。ここで中和処理に用いるアルカリ水溶液の濃度が薄すぎると、中和のために必要となるアルカリ水溶液の量が増加し、その結果、得られる中和物中の水分量が増加し、アニオン界面活性剤濃度が低くなる。
アニオン界面活性剤濃度は、滴定法などにより求められる。
中和時間は、5〜60分間が好ましく、20〜60分間がより好ましい。
中和時のpHは、生成したS−SF塩の加水分解を防止するために、酸性あるいは弱いアルカリ性の範囲(pH4〜9)が好ましい。この範囲外では、α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩のエステル結合が切断されやすくなる可能性がある。
ループ中和方式において、中和は、例えば、リサイクル中和物と未中和の生成物との混合物に対してアルカリ水溶液を接触させて行っても、リサイクル中和物と未中和の生成物とアルカリ水溶液とを、強力なせん断力の元で瞬時に混合して行ってもよい。
特に固体の金属炭酸塩(濃厚ソーダ灰)による中和は、濃厚ソーダ灰が他のアルカリよりも安価であるため好ましい。また、固体の金属炭酸塩で中和を行うと、生成物と混合した際に、その混合物に含まれる水分量が少なく強アルカリ性になりにくく、また、中和時の中和熱が金属水酸化物の場合よりも低いため、α−SF塩の加水分解を抑制でき、有利である。
中和処理後には、必要に応じて漂白処理を行ってもよい。漂白処理を行うことにより、中和処理までに生じた着色物が漂白され、良好な色調のα−SF塩が得られる。
漂白剤としては、例えば過酸化水素の水溶液が好適に用いられる。
漂白剤中の過酸化水素の濃度は、漂白処理における水分量、反応時間(漂白時間)又は漂白処理における反応温度(漂白温度)を勘案して決定することができる。
漂白時間は、漂白剤中の過酸化水素の濃度、漂白剤の添加量、漂白温度を勘案して決定することができ、例えば、30〜600分間の範囲で決定することが好ましく、60〜480分間の範囲で決定することがより好ましい。
また、ループ方式の漂白も挙げられ、具体的には、循環ラインに、漂白剤と混合された中和物の一部を循環させながら、そこへ中和物と漂白剤をそれぞれ添加する方法が挙げられる。
さらに、漂白剤を添加・混合した後、流通管方式によって漂白反応を進行させてもよい。
なお、漂白処理は、スルホン化物に対して行ってもよい。
該ペーストにおけるアニオン界面活性剤濃度およびα−SF塩の単独の濃度は、漂白剤の使用量にもよるが、それぞれ、中和物について記載した濃度範囲内であることが好ましい。
図1に示す製造システムは、反応槽1および撹拌機4を備えた槽型反応器と、反応槽1の出口1aにライン21を介して接続されたエステル化反応槽31と、エステル化反応槽31にライン23を介して接続されたリサイクルループ32とから概略構成されている。
エステル化反応槽31としては、3つの混合スペースを有する連続式多段撹拌槽31aおよびバッファ31bが用いられている。連続式多段撹拌槽31aには、アルコール供給ライン26が接続されており、連続式多段撹拌槽31aに低級アルコールを供給できるようになっている。
原料液相にスルホン化ガスを導入して撹拌した後、反応槽1内を所定温度に保持して、スルホン化ガス導入後の熟成を行うことが好ましい。
このようにしてスルホン化処理を行う。
このようにしてエステル化処理を行う。
このエステル化物を、アルカリ供給ライン27からアルカリ水溶液を供給して中和し、得られた中和物の一部を、循環ライン32bを通して循環させ、熱交換器32fで冷却した後、中和ライン32a内の未中和のエステル化物に添加する。これを、ミキサー32cで混合した後、上記と同様にして中和する。
このようにして中和処理を行う。
ついで、得られたα−SF塩含有ペーストを加熱、濃縮して濃縮品を得る濃縮処理を行う。濃縮処理では、例えば薄膜蒸発機(例えば、桜製作所製のエバオレータ、神鋼パンテック(株)製のエクセバ、(株)日立製作所製のコントロ、バレストラ社製のWiped Film Evaporator等。)等を使用して、α−SF塩含有ペーストを加熱する。濃縮品の水分量は、加熱温度および加熱時間を制御することで調節できる。
加熱温度は、ペーストに含まれるα−SF塩のアシル基の炭素数に主に依存するが、通常100〜150℃、好ましくは110〜140℃である。加熱時間は、通常0.15秒〜10分間、好ましくは0.3秒〜10分間である。α−SF塩含有ペーストの溶融、濃縮は、薄膜蒸発機等のジャケット部にスチーム等の熱媒を使用することで行える。
このようにして得られた濃縮品をそのまま次の冷却固化処理に供してもよいし、濃縮品を一旦冷却固化した後、再度加熱して溶融させ、これを次の冷却固化処理に供してもよい。
冷却固化処理において、例えばベルト型冷却機(例えば、日本ベルティング株式会社製のダブル・ベルト・クーラー、NR型ダブル・ベルト・クーラー、サンドビック株式会社製ダブルベルト冷却システム等。)や、ドラム型冷却機(例えば、カツラギ工業株式会社製のドラムフレーカー、三菱マテリアルテクノ株式会社製のドラムフレーカーFL等。)を使用し、板状に成形しながら冷却することにより、板状の冷却固化物が得られる。なかでも、ハンドリングの観点からベルト型冷却機が好ましく、さらに、冷却効率の観点から、上下に二枚の金属板が備えられており、下側の金属板上に濃縮品を広げて冷却するタイプのベルト型冷却機が好ましい。
こうして得られる準安定固体(m)は、液晶状態が過冷却して固体になったものと考えられる。α−SF塩の準安定固体(m)をX線回折に供すると、図2に示すように、20−30Å、10−15Å、3−5Åの各面間隔にピークトップが認められる、図2のような3本の回折ピークを有するX線回折チャートが得られる。
なお、図2は、後述の実施例1で製造した準安定固体(m)のX線回折チャートである。
具体的には、板状固形物の厚さは、解砕棒の長さの0.30倍以下であることが好ましく、0.28倍以下であることがより好ましい。かつ、板状固形物の厚みが1〜3mmの場合、解砕棒の長さは10mm以上であることが好ましく、15mm〜100mmであることがより好ましい。解砕棒の長さが上記範囲の下限値以上であると、充分な解砕力が得られ、流動性などに優れるフレーク状のα−SF塩含有固形物(m)が得られる。
板状固形物の厚さは、例えばベルト型冷却機の投入プーリー間のクリアランスを設定することで制御できる。
解砕処理は、冷却固化物を解砕機の解砕棒に接触させることで行える。解砕棒の先端周速度は、0.3〜3.5m/sが好ましく、1.0〜3.0m/sがより好ましい。上記範囲の下限値以上であると、充分な解砕力が得られ、その結果、流動性などに優れるフレーク状のα−SF塩含有固形物(m)が得られる。一方、上記範囲の上限値以下であると、解砕力が過度にならず。得られるα−SF塩含有固形物(m)は発塵しにくくなる。
回転軸の軸に対する解砕棒の軸の向きは、垂直であっても、垂直でなくてもよい。また、複数本の解砕棒が回転軸の軸方向に沿って並んで配置されていることが好ましい。
解砕棒の先端部は、平面状でも尖っていてもよい。解砕棒の断面形状に制限はなく、例えば円形、四角形、三角形が挙げられる。解砕棒も回転軸と同様に、腐食防止の観点から、SUS等の材料から形成されていることが好ましい。
更に、第一の解砕部が、直径50mm、長さ580mmの円柱回転軸1本と、その外周面上に備えられた解砕棒20本とからなり、解砕棒は、直径14mm、長さ60mmの円柱形状を有し、径方向外方に向かって延びるようにその一端が取付けられており、解砕棒は、回転軸の外周面上で回転方向に90°間隔で配置されて解砕棒列を構成している(すなわち、各解砕棒列は4本の解砕棒からなる)ことが好ましい。第一及び第五解砕棒列は、回転軸の一端から65mm付近に配置され、第一解砕棒列に隣接する第二解砕棒列、第二解砕棒列に隣接する第三解砕棒列、第三解砕棒列に隣接する第四解砕棒列はそれぞれ、第一解砕棒列と第五解砕棒列との間に、回転軸の長手方向に略等間隔に配置され、更に隣接する解砕棒列において各解砕棒は回転方向に45°ずれるように配置されているものが好ましい。
第二の解砕部は、直径110mm、長さ580mmの円柱状回転軸1本と、その外周面上に備えられた解砕棒81本とからなり、解砕棒は、直径9mm、長さ20mmの円柱形状を有し、径方向外方に向かって延びるようにその一端が回転軸に取付けられており、解砕棒は、回転軸の外周面上で回転方向に120°間隔で配置されて解砕棒列を構成している(すなわち、各解砕棒列は3本の解砕棒からなる)ことが好ましい。回転軸の一端から30mm付近に配置された第一解砕棒列と、それに隣接する第二解砕棒列とから構成される第一の対において、第一解砕棒列と第二解砕棒列とが回転方向に60°ずつ解砕棒がずれて配置されており、第二解砕棒列に隣接する第三解砕棒列と、それに隣接する第四解砕棒列とから構成される第二の対においても、第一の対と同様に、第三解砕棒列と第四解砕棒列とが回転方向に60°ずつ解砕棒列がずれて配置されており、第一解砕棒列の解砕棒と第三解砕棒列の解砕棒とは回転方向に5°ずつずれて配置されており、第五解砕棒列から第27解砕棒列についても同様に、奇数列と偶数列とで対を形成し、各対における奇数列は、隣接する対の奇数列と5°ずつずれるように回転方向に配置されているものが好ましい。
このような、第一の解砕部と第二の解砕部とを備えた解砕機としては、例えば日本ベルティング社製クラッシャーが挙げられる。
工程(I−2)では、上述の工程(I−1)で得られた準安定状態にあるα−SF塩含有固形物(m)を結晶化する。これにより、安定状態にあるα−SF塩含有固形物(s)が得られる。
結晶化する方法としては、例えば下記(i)〜(iii)の方法が挙げられる。
(i)準安定固体(m)を、30℃以上、20000Pa以下の圧力において、少なくとも48時間維持する方法(以下、方法(i)という場合がある。)。
(ii)準安定固体(m)を溶融して得られた溶融物を、準安定固体(m)の融点以上で、かつ、安定固体(s)の融点以下の温度で、5分間以上維持する方法(以下、方法(ii)という場合がある。)。
(iii)準安定固体(m)を溶融して得られた溶融物に対して、準安定固体(m)の融点以上、かつ、80℃以下の温度において、100(1/s)以上の剪断速度で剪断力を与える方法(以下、方法(iii)という場合がある。)。
(方法(i))
方法(i)では、準安定固体(m)を30℃以上、20000Pa以下の圧力において、少なくとも48時間維持する。
温度を30℃未満とすると、結晶化は進行するが、その速度は極めて遅い。よって、30℃以上、40℃以下の温度で維持することが好ましい。この範囲であると、準安定固体(m)が融解して融着することがないため、48時間以上維持している最中での固化を抑制できる。
維持温度は、30℃以上であれば一定温度である必要はなく、例えば断続的に加熱し、冷却しても良い。温度を維持する方法は特に限定されず、例えば準安定固体(m)を容器に入れ、その外部環境を条件温度に調整したり、容器そのものを条件温度に調整したりする方法が挙げられる。また、容器の内部に条件温度の気流を流す方法でもよい。
容器としては、サイロ、フレキシブルコンテナバッグ、ドラム缶、クラフト袋、ポリエチレンバッグ等を使用できる。
なお、ここでいう圧力とは、容器の底面での圧力であり、以下の式により定義される。
圧力[Pa]=容器への充填質量[kg]×g[m/s2]/容器底面積[m2]
式において、gは重力加速度である。
準安定固体(m)を容器に充填した場合、自重により容器底部へ圧力がかかることは当然ながら避けられない。よって、容器の形状、充填量などを調整し、圧力を上記範囲とすることが好ましい。
準安定固体(m)を上記条件にて維持する間、準安定固体(m)を容器に入れて密閉状態としてもよいし、開放状態としてもよいが、開放状態とすると吸湿の可能性があるため、湿潤した空気との接触は避けた方がよい。
方法(ii)では、準安定固体(m)を溶融して得られた溶融物を、準安定固体(m)の融点以上、かつ、安定固体(s)の融点以下の温度で、5分間以上維持する。
上記式(1)の脂肪酸アルキルエステルから得られるα−SF塩の場合、具体的には40℃以上、90℃未満の温度で維持することが好ましく、50℃以上、80℃未満の温度で維持することがより好ましい。温度が上記範囲内であると、短時間で準安定固体(m)から安定固体(s)に転換されやすい。また、維持時間が上記範囲内であると、準安定固体(m)が確実に安定固体(s)に転換する。
最も好ましい方法(ii)の条件は、55〜75℃の温度で、10〜500分間、維持する条件である。
方法(iii)では、準安定固体(m)を溶融して得られた溶融物に対して、準安定固体(m)の融点以上、かつ、80℃以下の温度において、100(1/s)以上の剪断速度で剪断力を与える。
上記方法(ii)では、準安定固体(m)の溶融物を所定温度で所定時間維持することにより、安定状態へと転換させたが、方法(iii)では、所定時間維持する代わりに剪断力を与える。剪断力を与えることにより、安定状態への転換が早くなる。
剪断速度は、剪断速度=羽先端速度/クリアランスで規定され、100(1/s)以上であり、150(1/s)以上が好ましい。100(1/s)以上とすると、撹拌処理が充分となり、準安定固体(m)が確実に安定固体(s)に転換する。
剪断力を与える時間は、5秒以上であって5分間未満の時間であることが好ましい。上記範囲の下限値以上であると、準安定固体(m)が充分に安定固体(s)に転換し、上記範囲の上限値以下であると、大型の装置(混練装置、押出造粒装置等)を用いる必要がない。
最も好ましい方法(iii)の条件は、55〜75℃の温度で、200〜5000(1/s)の剪断速度で剪断力を与える条件である。
例えば、上記式(1)におけるR1の炭素数が14と16との混合物から製造されるα−スルホ脂肪酸メチルエステル塩(MES)の場合、その準安定固体(m)を熱分析すると、例えば図3に示すように、ピークトップを約40〜50℃に有する、約35〜55℃の温度帯に発現する熱吸収(融解)ピークが観察される。この場合、50℃以上の領域における熱吸収は少ないため、50〜130℃における熱吸収ピーク面積は、0〜130℃における熱吸収ピーク面積に対して50%未満となる。
これに対し、結晶化後の安定固体(s)を熱分析すると、例えば図4や図5に示すように、約40〜50℃付近のピークが低減し、約50℃以上(約50〜70℃と、約70〜90℃付近)の領域に複数のピークが観察されるようになる。この場合、50〜130℃における熱吸収ピーク面積S1が、0〜130℃における熱吸収ピーク面積S2に対して50%以上となる。
このように安定固体(s)は、より高温で熱吸収ピークが発現するものであり、準安定固体(m)よりも高温領域で安定であると理解できる。
なお、図3は、後述の実施例1で得られた準安定固体(m)の熱分析結果であり、図5は、実施例1の準安定固体(m)を結晶化して得られた安定固体(s)の熱分析結果である。
なお、MESの安定固体(s)の場合、水分率が低いと、約70〜90℃付近の熱吸熱ピークの絶対値が大きくなる傾向にある。
また、50〜130℃において発熱ピークが認められた場合には、該発熱ピーク面積の絶対値を50〜130℃における熱吸収ピーク面積から差し引いた値をS1とする。同様に、0〜130℃において発熱ピークが認められた場合には、該発熱ピーク面積の絶対値を0〜130℃における熱吸収ピーク面積から差し引いた値をS2とする。
工程(II)では、工程(I)で得られた安定固体(s)を水に溶解させ、α−SF塩水溶液を製造する。
ここで、安定固体(s)を溶解する水の温度をTs(℃)とし、該安定固体(s)を示差走査熱分析計で熱分析した際に観測される熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度をTmax(℃)とした場合、温度Ts(℃)と温度Tmax(℃)とが、下記の関係を有するように、水の温度Ts(℃)を決定する。
例えば、図4に示したDSCチャートにおいては、熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度Tmax(℃)は88℃であるため、水の温度Ts(℃)を83〜93℃の範囲に調整してから、水に安定固体(s)を加えて溶解させる。図5に示したDSCチャートにおいては、熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度Tmax(℃)は60℃であるため、水の温度Ts(℃)を55〜65℃の範囲に調整してから、水に安定固体(s)を加えて溶解させる。
低温安定性の向上効果は、広い範囲のα−SF塩水溶液濃度において得られるが、α−SF塩水溶液のアニオン界面活性剤濃度が、好ましくは3〜25質量%で、より好ましくは5〜20質量%の範囲であると、低温安定性の向上効果が顕著に得られる。
特に安定固体(s)が、副生物である硫酸メチル金属塩や脂肪酸スルホナート金属塩を含有する場合や、アシル基の炭素数に分布を持っている場合(アシル基の炭素数が異なるα−SF塩の混合物である場合)には、安定固体(s)の結晶構造が複雑である。その場合、溶解時の結晶状態によって、水溶液中におけるα−SF塩の構造も複雑に変化すると考えられるが、特に熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度Tmax(℃)から±5℃の範囲の水に溶解させることにより、安定固体(s)の水溶液中での構造を安定化させる効果が顕著となると考えられる。
(1)脂肪酸メチルエステル
脂肪酸メチルエステル(A−1)〜(A−4)を用いた。これらのアシル基の炭素数分布を表1に示す。
(A−2):「パステルM16(ライオン株式会社製の脂肪酸メチルエステル)」と、「パステルM18(ライオン株式会社製の脂肪酸メチルエステル)」とを、表1に示すアシル基の炭素数となるように、混合した混合物。
(A−3):「パステルM16(ライオン株式会社製の脂肪酸メチルエステル)」と、「パステルM18(ライオン株式会社製の脂肪酸メチルエステル)」とを、表1に示すアシル基の炭素数となるように、混合した混合物。
(A−4): エメリー社製の商品名「Edenor ME C16−60 MY」。パーム油を起源とし、エステル化を行い、アシル基の炭素数16のメチルエステルを所定比率になるように添加・混合した後、水添し、全蒸留(ボトムカット)を行ったもの。
(3)メタノール(エステル化処理において使用):工業グレード(水分1000ppm以下)。
(4)苛性ソーダ(中和処理において使用):工業グレードの製品(48質量%濃度)を上水で希釈したもの。
(5)過酸化水素水(漂白処理において使用):工業グレードの過酸化水素水(35質量%濃度:純正化学株式会社)。
〔工程(I−1)〕
(スルホン化処理)
槽型スルホン化反応器に、脂肪酸メチルエステル(A−1)の100質量部を投入し、スルホン化ガスを反応モル比(SO3/脂肪酸メチルエステル)=1.2で添加し、スルホン化(ガス接触操作)(80℃、240分間)を行った。その後、エステル化槽に移送し、熟成操作(80℃、20分間)を行った後、脂肪酸メチルエステル(A−1)の100質量部に対して硫酸ナトリウムの5質量部を15分間かけて添加し、硫酸ナトリウムの添加開始から20分間撹拌した。このようにしてスルホン化物を得た。
なお、エステル化槽は、内径600mm、容器深さ816mmのジャケット付撹拌槽(10%皿型鏡板、邪魔板4枚)であり、傾斜タービン翼6枚からなる撹拌翼を用い、下向き流れとなるよう据付けた。撹拌回転数は277rpmとした。
スルホン化処理で得られたスルホン化物の100質量部に対してメタノール3質量部(SO3の二分子付加体に対して1.5倍モル)を添加し、エステル化(80℃、75分)を行い、エステル化物を得た。
ついで、エステル化処理で得られた生成物を、30質量%水酸化ナトリウム水溶液と共に、ミキサーの撹拌羽根近傍に同時かつ連続的に投入し、撹拌混合することにより、中和反応を行い、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩(中和物)を製造した。得られた中和物の温度が80℃、pH6.0付近になるように中和物を調製した。pH測定は、中和ラインに設置したpH計(SHDM−135:東亜ディーケーケー(株)製)により、中和ラインを流れる中和物(原液、80℃)に対して直接行った。
ついで、熱交換器を有する循環ラインを備えた循環ループ方式の漂白剤混合ラインに、この中和物を180〜200kg/hrの供給速度で供給するとともに、35%過酸化水素水をスルホン化物の色調に応じて3.5〜11.5kg/hr(AI(有効成分:α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩)に対して純分で1〜3質量%)で供給し、循環ラインからの漂白混合済み中和物(予備漂白物)と過酸化水素水とが充分に混合するようにした。(500(5%KLETT)以下であれば1質量%、500から1000(5%KLETT)であれば2質量%、1000から1500(5%KLETT)であれば3質量%)
ループ循環量は、予備漂白物に新たに加えられる中和物の15倍量であり、循環ループ管内圧力は4kg/cm2であった。また、循環ループの温度は、熱交換器によって80℃に調節し、循環ループの滞留時間は10分間とした。
ついで、これを図示略の流通管方式の漂白ラインに導入して漂白を進行させた。なお、漂白ラインとしては、ジャケット付き二重管で、温度、圧力調節が可能なものを採用した。漂白剤混合物の流れはピストンフローで、圧力4kg/cm2、最高温度が80℃以上になるよう調節し、滞留時間は180分間とした。
こうしてα−SF塩含有固体ペーストを得た。
ついで、得られたα−SF塩含有固体ペーストを真空薄膜蒸発機(伝熱面:4m2、Ballestra社製)に200kg/hrで導入し、内壁加熱温度100〜160℃、真空度0.01〜0.03MPaにて濃縮し、温度100〜130℃の濃縮物(溶融物)として取り出した。
なお、ここで得られた濃縮品の一部を冷却し、濃縮品に含まれるα−SF塩濃度については、後述するように、JIS K3362に記載されているメチレンブルー(MB)逆滴定法で測定した。また、α−スルホ脂肪酸ジナトリウム塩(Di−Na)、メチル硫酸ナトリウム(MeSO4Na)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)の各濃度については、後述するように、液体クロマトグラフ法により測定した。
得られた濃縮品をベルトクーラー((株)日本ベルティング製)を用いて、100〜130℃から20〜30℃まで0.5分間で冷却し、準安定固体(m)の板状固形物を得た。
その後、解砕機((株)日本ベルティング製)を用いて板状固形物を解砕し、フレーク状のMESの準安定固体(m)を得た。
上述の方法(i)を採用し、準安定固体(m)を安定固体(s)に変換した。具体的には、フレキシブルコンテナバックを用いる試験に基づき、430Lのポリプロピレン製フレキシブルコンテナバッグ((有)古田商店製)にポリエチレン製の内袋を入れ、そこに、工程(I−1)で得られたフレーク状のMESの準安定固体(m)の200kgを入れ、表2に示した温度、圧力において、表2に示した期間に亘って放置した。このようにして安定固体(s)であるα−SF塩含有固形物(B−1)を得た。得られたα−SF塩含有固形物(B−1)の分析結果を表2に示す。
また、該α−SF塩含有固形物(B−1)について、後述するようにして示差走査熱分析計で熱分析を行い、0〜130℃における熱吸収ピーク面積S2に対する、50〜130℃における熱吸収ピーク面積S1の割合;観測された熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度Tmax(℃)を求めた。結果を表3に示す。
脂肪酸メチルエステル(A−1)の代わりに、脂肪酸メチルエステル(A−2)を使用した以外は、製造例1と同様にして各工程を行い、α−SF塩含有固形物(B−2)を得た。得られたα−SF塩含有固形物(B−2)の分析結果を表2に示す。また、該α−SF塩含有固形物(B−2)について、製造例1と同様にして、示差走査熱分析計で熱分析を行い、0〜130℃における熱吸収ピーク面積S2に対する、50〜130℃における熱吸収ピーク面積S1の割合;観測された熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度Tmax(℃)を求めた。結果を表3に示す。
脂肪酸メチルエステル(A−1)の代わりに、脂肪酸メチルエステル(A−3)を使用した以外は、製造例1と同様にして各工程を行い、α−SF塩含有固形物(B−3)を得た。得られたα−SF塩含有固形物(B−3)の分析結果を表2に示す。また、該α−SF塩含有固形物(B−3)について、製造例1と同様にして、示差走査熱分析計で熱分析を行い、0〜130℃における熱吸収ピーク面積S2に対する、50〜130℃における熱吸収ピーク面積S1の割合;観測された熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度Tmax(℃)を求めた。結果を表3に示す。
脂肪酸メチルエステル(A−1)の代わりに、脂肪酸メチルエステル(A−4)を使用した以外は、製造例1と同様にして各工程を行い、α−SF塩含有固形物(B−4)を得た。得られたα−SF塩含有固形物(B−4)の分析結果を表2に示す。また、該α−SF塩含有固形物(B−4)について、製造例1と同様にして、示差走査熱分析計で熱分析を行い、0〜130℃における熱吸収ピーク面積S2に対する、50〜130℃における熱吸収ピーク面積S1の割合;観測された熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度Tmax(℃)を求めた。結果を表3に示す。
製造例1と同様にして各工程を行い、α−SF塩含有固形物(B−5)を得た。ただし、濃縮処理まで行い、工程(I−2)を実施しなかった。得られたα−SF塩含有固形物(B−5)の分析結果を表2に示す。また、該α−SF塩含有固形物(B−5)について、製造例1と同様にして、示差走査熱分析計で熱分析を行い、0〜130℃における熱吸収ピーク面積S2に対する、50〜130℃における熱吸収ピーク面積S1の割合;観測された熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度Tmax(℃)を求めた。結果を表3に示す。
(1)水分測定
カールフィッシャー水分計(京都電子工業(株)製、「MKC−210」)を用いて測定した。具体的には、15〜25℃でサンプル10〜100mgをカールフィッシャー試薬に完全溶解させて、測定を開始した。電極反応の終了に伴い、測定を自動的に停止した。投入サンプル量をカールフィッシャー水分計のタッチパネルに入力して水分量を算出した。
試料0.3gを200mLメスフラスコに正確に量り取り、イオン交換水(蒸留水)を標線まで加えて超音波で溶解させた。溶解後、約25℃まで冷却し、この中から5mLをホールピペットで滴定瓶にとり、MB(メチレンブルー)指示薬25mLとクロロホルム15mLを加え、さらに0.004mol/L塩化ベンゼトニウム溶液5mLを加えた後、0.002mol/Lアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液で滴定した。滴定は、その都度、滴定瓶に栓をして激しく振とうした後、静置し、白色板を背景として両層が同一色調になった点を終点とした。同様に空試験(試料を使用しない以外は上記と同じ試験)を行い、滴定量の差からアニオン界面活性剤濃度を算出した。なお、ここでアニオン界面活性剤濃度とは、上述のとおり、洗浄有効成分であるα−SF塩と、副生物の1つであるα−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩(ジ塩)との合計の濃度である。
α−スルホ脂肪酸ジナトリウム塩(以下、「Di−Na」ともいう。)の標準品0.02,0.05,0.1gを200mLメスフラスコに正確に量りとり、水約50mLとエタノール約50mLを加えて超音波を用いて溶解させた。溶解後、約25℃まで冷却し、メタノールを標線まで正確に加え、これを標準液とした。
この標準液約2mLを、0.45μmのクロマトディスクを用いて濾過後、下記測定条件の高速液体クロマトグラフ分析を行い、ピーク面積から検量線を作成した。
試験溶液約2mLを、0.45μmのクロマトディスクを用いて濾過後、上記と同じ測定条件の高速液体クロマトグラフィーで分析し、上記で作成した検量線を用いて、試料溶液中のDi−Na濃度を求めた。
表2中には、アニオン界面活性剤濃度を100質量%とした時のDi−Naの濃度を「アニオン界面活性剤100質量%中のDi−Na量」として記載した。
・装置:LC−6A(島津製作所製)
・カラム:Nucleosil 5SB(ジーエルサイエンス社製)
・カラム温度:40℃
・検出器:示差屈折率検出器RID−6A(島津製作所製)
・移動相:0.7%過塩素酸ナトリウムのH2O/CH3OH=1/4(体積比)溶液
・流量:1.0mL/min.
・注入量:100μL
硫酸ナトリウム及びメチル硫酸ナトリウムの標準品をそれぞれ0.02,0.04,0.1,0.2gずつ、200mLメスフラスコに正確に量りとり、イオン交換水(蒸留水)を標線まで加え、超音波を用いて溶解させた。溶解後、約25℃まで冷却し、これを標準液とした。この標準液約2mLを、0.45μmのクロマトディスクを用いて濾過後、下記測定条件のイオンクロマトグラフ分析を行い、硫酸ナトリウム及びメチル硫酸ナトリウム標準液のピーク面積から検量線を作成した。
次に、測定試料0.3gを200mLメスフラスコに正確に量り、イオン交換水(蒸留水)を標線まで加え、超音波を用いて溶解させる。溶解後、約25℃まで冷却し、これを試験溶液とした。試験溶液約2mLを、0.45μmのクロマトディスクを用いて濾過後、上記と同じ測定条件のイオンクロマトグラフで分析し、作成した検量線を用いて、試料溶液中のメチル硫酸ナトリウム濃度及び硫酸ナトリウム濃度を求め、試料中の硫酸ナトリウム及びメチル硫酸ナトリウム濃度(質量%)を算出した。
・装置:DX−500(日本ダイオネックス社製)
・検出器:電気伝導度検出器CD−20(日本ダイオネックス社製)
・ポンプ:IP−25(日本ダイオネックス社製)
・オーブン:LC−25(日本ダイオネックス社製)
・インテグレータ:C−R6A(島津製作所製)
・分離カラム:AS−12A(日本ダイオネックス社製)
・ガードカラム:AG−12A(日本ダイオネックス社製)
・溶離液:2.5mM Na2CO3/2.5mM NaOH/5%(体積)アセトニトリル水溶液
・溶離液流量:1.3mL/min.
・再生液:純水
・カラム温度:30℃
・ループ容量:25μL
示差走差熱分析計として、パーキンエルマー社Diamond DSCを用いた。トリオブレンダー(トリオサイエンス社製)で試料の20gを粉砕し、そのうちの5〜30mgをアルミニウム製のサンプルパンに入れ、0℃から130℃まで2℃/minの速度で昇温し、熱分析した。
この時の50〜130℃における熱吸収ピーク面積S1と、0〜130℃における熱吸収ピーク面積S2から、S1×100/S2を求めた。なお、面積S1と面積S2は、示差走査熱分析計に付属しているソフトウエアを用いて、「自動分割積分」処理を行うことにより、それぞれ求めた。また、50〜130℃において発熱ピークが認められた場合には、該発熱ピーク面積の絶対値を50〜130℃における熱吸収ピーク面積から差し引いた値をS1とし、0〜130℃において発熱ピークが認められた場合には、該発熱ピーク面積の絶対値を0〜130℃における熱吸収ピーク面積から差し引いた値をS2とした。
各実施例および各比較例において、表3に示すように、各製造例で得られたα−SF塩含有固形物(B−1)〜(B−5)を水に溶解させ、2.5kgのα−SF塩含有水溶液を調製した。ここでα−SF塩含有固形物(B−1)〜(B−5)を水に溶解させる量は、得られるα−SF塩含有水溶液中におけるアニオン界面活性剤濃度が表3に示す値となるように決定した。
なお、溶解には、5Lビーカー、撹拌モーター、45度傾斜パドル(9cm)、邪魔板(4枚)等を使用した。具体的には、ビーカーに水を入れて加温し、所定の温度(Ts(℃))に到達したのを確認してから、撹拌モーターの回転数を262rpmに設定し、α−SF塩含有固形物(B−1)〜(B−5)を水に添加した。完全に溶解したことを目視で確認できるまで撹拌し、各水溶液を得た。
溶解時の水の温度Ts(℃)、α−SF塩含有固形物(B−1)〜(B−5)の熱分析により観測された熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度Tmax(℃)、Tmax(℃)とTs(℃)との差(Tmax−Ts(℃))を表3に示す。
そして、得られたα−SF塩含有水溶液を容量200mlのガラス瓶にサンプリングし、18℃の恒温槽内に静置した。静置して24時間後の外観を確認し、以下の4段階で評価した。結果を表3に示す。
◎:透明
○:微白濁
△:析出が認められたが、水溶液の流動性はある。
×:析出が認められ、水溶液の流動性も無い。
Claims (1)
- メチル硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、α−スルホ脂肪酸ジナトリウム塩、及び脂肪酸のアシル基の炭素数が12〜20であるα−スルホ脂肪酸メチルエステルナトリウム塩を含有する固形物を温度Ts(℃)の水に溶解させ、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩水溶液を製造する方法であって、
前記固形物は、示差走査熱分析計で熱分析した際に観測される50〜130℃における熱吸収ピーク面積S1が、0〜130℃における熱吸収ピーク面積S2に対して50%以上であり、
前記温度Ts(℃)は、前記固形物を示差走査熱分析計で熱分析した際に観測される熱流量最大値の熱吸収ピークトップ温度をTmax(℃)とした場合に、前記温度Tmax(℃)との間に下記の関係を有する、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩水溶液の製造方法。
Tmax−5≦Ts≦Tmax+5
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