JP4526810B2 - スルホン化反応方法及びα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造方法 - Google Patents
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この脂肪酸アルキルエステルスルホン化反応は反応時に着色しやすいため、スルホン化反応のマイルド化の点から、バッチ式の槽型反応器で行なうことが適している。
この槽反応につき、本出願人は先に、スパージャー孔径 、孔の面積の和、ガス吹き込み速度、気液混合相のガス濃度を設定することにより反応効率を向上する提案を行った(例えば、特許文献1参照。)。
また、スルホン化反応時の着色を防止するため、着色剤存在下でスルホン化を行うα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造方法も提案した(例えば、特許文献2参照。)。
また、この槽反応では反応温度の過度の上昇を防止するため、原料液の一部を抜き出し、熱交換器で冷却して反応槽に戻すリサイクルラインが設けられるが、このリサイクルラインへの原料液の抜き出し速度を1.5m/s以下にすることによりリサイクルラインのガス濃度を1/10以下にして安定な外部循環を行う提案も行った(例えば、特許文献3参照。)。
上記の特許文献1〜3を含め、従来の槽型スルホン化反応器においては、原料液相とスルホン化ガスの気液接触効率を高めることを目的として、スルホン化ガスの原料液相中の滞在時間を極力長くするため、ガス導入管と撹拌翼を槽底近傍に設置していた。
また、反応初期にフラッディングが発生していない場合でも、反応進行とともに気液分散状態が悪くなり、反応後期にフラッディングが発生することが多々あり、問題となった。例えば、特許文献2記載の事例では、パイロットスケール(80kg仕込み)では良好な品質は得られているものの、スルホン化反応後半にわずかなフラッディング現象が確認されている。更にスケールが大きくなり、工業化スケールになると品質・運転面で問題となる可能性がある。
また、反応槽底部に原料液の一部を抜き出すリサイクルラインを設けた場合、特許文献1〜3に記載した方法では、リサイクルラインへの多量のガス巻き込み(外部循環におけるキャビテーション)が発生し、安定な外部循環が困難となる。特許文献3のように抜き出し速度を小さくすると、スケールが大きい場合には原料液の冷却が不十分となり、これを避けるために抜き出し速度を大きくするとキャビテーションが生じ、その結果、冷却効率が低下する。
すなわち、本発明のスルホン化反応方法は、攪拌機を備えたバッチ式撹拌混合型反応槽を用いて、原料液相とスルホン化ガスを接触させるスルホン化反応方法において、反応槽底部の高さを0、原料液面の高さをHとした時、攪拌機の攪拌翼の位置を0.40H〜0.80Hとし、攪拌翼と、スルホン化ガスを槽内に導入するガス導入ノズルの高さ方向の間隔が0.10H以内になるように設置して、脂肪酸アルキルエステル、アルキルベンゼン、α−オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又は高級アルコールのスルホン化を行うことを特徴とする。
また、本発明のα−スルホ脂肪酸アルキルエステルの製造方法は、脂肪酸アルキルエステルを上記スルホン化反応方法でスルホン化した後、低級アルコールによってエステル化することを特徴とする。
また、本発明のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造方法は、脂肪酸アルキルエステルを上記スルホン化反応方法でスルホン化し、さらに上記製造方法でエステル化した後、アルカリ水溶液又はアルカリ性粉体で中和することを特徴とする。
まず、本発明のスルホン化反応方法につき説明する。
本発明のスルホン化反応方法は、例えば、原料液相中にスルホン化ガスを吹き込むなど、攪拌機を備えたバッチ式撹拌混合槽を用いて、原料液相とスルホン化ガスを接触させることによりスルホン化する方法である。
スルホン化の対象となる有機化合物原料は、目的とするスルホン化物によって適宜選択されるが、例えばアニオン界面活性剤を製造するにおいては、脂肪酸アルキルエステル、アルキルベンゼン、α−オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、高級アルコールなどが用いられる。その他、スルホン化の対象となる有機化合物原料としては、スルホン化可能なものであれば限定されるものではない。
特に脂肪酸アルキルエステルのスルホン化物(α−スルホ脂肪酸アルキルエステル)をアルカリ中和して得られるα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩はスルホン化の反応条件によって着色しやすい。しかし、脂肪酸アルキルエステルのスルホン化に本発明を適用すると、バッチ反応方式の操作性・生産性の向上効果のみならず、反応促進・着色抑制効果が得られる。
有機化合物原料が脂肪酸アルキルエステルの場合、SO3反応モル比は原料の1.0〜2.0倍モル、好ましくは1.0〜1.7倍モル、さらに好ましくは1.05〜1.5倍モル使用される。1.0倍モル未満ではスルホン化反応が十分に進行せず、2.0倍モルをこえると、スルホン化反応がより過激になるため、副生物や着色の原因となる場合がある。また、有機化合物原料がアルキルベンゼンの場合は、SO3反応モル比は原料の0.9〜1.3倍モル使用することが好ましい。
有機酸塩としては、例えば蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、酢酸ナトリウムなどを例示できる。無機硫酸塩は、一価の金属塩である粉末状の無水塩であれば特に限定されず、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウムなどが例示される。無機硫酸塩は着色抑制効果が高く、安価なものが多く、さらに洗浄剤に配合される成分なので、洗浄剤用途のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩製造の場合は、無機硫酸塩をα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩から除去する必要がないので好ましい。
また、着色抑制剤の平均粒径は250μm以下、好ましくは100μm以下とされる。例えば無機硫酸塩は、反応中、原料液相にはその表面がわずかに溶解する程度でほとんど溶解せず、原料液相中に分散している。したがって、上述のように粒径の小さい無機硫酸塩を用いることにより、原料液相との接触面積が大きくなり、分散性が向上し、より効果を高めることができる。着色抑制剤の添加量は、原料の脂肪酸アルキルエステルに対して0〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは3〜20質量%である。30質量%をこえる場合は効果が飽和するためである。
前記攪拌翼3bには、通常高さ方向に幅があるが、前記攪拌翼3bの高さAとは、攪拌翼3bの最も高い位置とする。間隔Bは、前記攪拌翼3bとガススパージャー5bとを対峙させたときの攪拌翼3bとガススパージャー5bとの間の長さのうち、最も小さい長さとする。
ここで、原料液面の高さとは、ガスを吹き込んでいない時の槽底面からの原料液面の高さである。
ガス導入ノズル(スパージャー5a)と撹拌翼3bの高さ方向の間隔Bが0.15Hを超えると吹き込んだガスが撹拌翼3bに到達できず分散されないまま気泡が合一してフラッディングが起こり易くなる。
また、撹拌翼3bの槽1内における設置高さAが0.20H未満(底面から液深の20%未満)のところに設置すると下部ゾーンでのガス比率が多くなり、外部循環でのキャビテーションの原因となる。また、攪拌翼3bの設置高さAを0.80Hより高いところに設置すると上部ゾーンのガス比率が高くなり、フラッディングの原因となる。
以下、本発明の一実施形態として、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造方法を用いて説明する。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、好ましくは以下の(A)〜(D)の工程で製造される。
(A)脂肪酸アルキルエステル中に、スルホン化ガスを導入するスルホン化ガス導入工程。
(B)熟成工程。
(C)低級アルコールでエステル化するエステル化工程。
(D)アルカリで中和してα−スルホ脂肪酸アルキルエステルからα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩のスラリーを得る中和工程。
前記(A)〜(C)工程は、脂肪酸アルキルエステルからα−スルホ脂肪酸アルキルエステル(スルホン化物)を製造する工程である。すなわち、脂肪酸アルキルエステルのスルホン化メカニズムについては、Smith and Stirton:JAOCS vol.44,P.405(1967)およびSchmid, Baumann, Stein, Dolhaine: Proceeding of the World Surfactants Congress Munchen, vol.2, P.105, Gelnhausen, Kurle(1984)およびH.Yoshimura:油化学(JJOCS),41巻,10頁 (1992)に示されるように、以下の反応スキ−ムによって進行する。
そして、次の段階で、さらにSO3と反応してα位にスルホン基が導入され、SO3二分子付加体が生成する。
そして、このSO3二分子付加体からアルコキシ基に挿入したSO3を脱離させれば、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルが得られる。
このSO3二分子付加体脱離の反応速度は全体としては遅いため、上述のように、脂肪酸アルキルエステルとSO3ガスなどのスルホン化ガスとを接触させる(A)スルホン化ガス導入工程の後に、所定の温度で保持する(B)熟成工程を設けるのが好ましい。
次いで、(C)エステル化工程において、残存するSO3二分子付加体を低級アルコールでエステル化することにより、アルコキシ基に挿入しているSO3の脱離を促進してα−スルホ脂肪酸アルキルエステルとする。
次いでスルホン酸基をアルキルで中和する(D)中和工程を設ける。
脂肪酸アルキルエステルとしては、特に限定されるものではないが、得られる生成物が界面活性剤として有用であるので、下記の一般式(I)で示されるものが好ましい。
R1CH2COOR2 …(I)
(式中、R1は炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐アルキル基またはアルケニル基を表し、R2は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。)
脂肪酸アルキルエステルは、牛脂、魚油ラノリンなどから誘導される動物系油脂;ヤシ油、パ−ム油、大豆油などから誘導される植物系油脂;α−オレフィンのオキソ法から誘導される合成脂肪酸アルキルエステルなどのいずれでもよく、特に限定はされない。具体的には、ラウリン酸メチル、エチルまたはプロピル;;ミリスチン酸メチル、エチルまたはプロピル;パルミチン酸メチル、エチルまたはプロピル;ステアリン酸メチル、エチルまたはプロピル;硬化牛脂脂肪酸メチル、エチルまたはプロピル;硬化魚油脂肪酸メチル、エチルまたはプロピル;ヤシ油脂肪酸メチル、エチルまたはプロピル;パ−ム油脂肪酸メチル、エチルまたはプロピル;パ−ム核油脂肪酸メチル、エチルまたはプロピルなどを例示することができ、これらは単独、あるいは2種以上混合して用いることができる。また、ヨウ素価は好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.1以下とされる。
スルホン化ガス導入工程においては、まず反応槽1内に脂肪酸アルキルエステルと着色抑制剤を仕込み、加熱し、原料液相2とする。反応温度は脂肪酸アルキルエステルが流動性を有する温度とされる。一般に、脂肪酸アルキルエステルの融点以上、好ましくは融点から融点より70℃高い温度までである。
ついで、この原料液相2に、スルホン化ガス導入口4からスルホン化ガスを導入し、ガス導入管5のガススパージャー5aから複数の気泡を発生させ、同時に撹拌機3の回転によって原料液相2中に分散させる。これと同時に、この回転によって着色抑制剤の粒子が原料液相2中に均一に分散する。
撹拌機3の撹拌羽根3bの先端の周速は0.5〜6.0m/秒が好ましく、2.0〜5.0m/秒がより好ましい。0.5m/秒未満の場合は気泡の分散効果が不十分で、反応率が低下する場合がある。
また、着色抑制剤の分散も不十分となるため、その着色抑制効果が低下する場合がある。6.0m/秒をこえると効果が飽和し、消費動力が増大する。
また、この工程において、スルホン化ガスの導入時間は、製造効率の観点から、通常10〜180分程度とされる。製造効率よりも着色の抑制を重視する場合は180分以上とする。このように導入時間を長くして徐々にスルホン化ガスと原料液相2とを接触させることにより、さらにα−スルホ脂肪酸アルキルエステルの着色を抑制することができる。
上述のようにして原料液相にスルホン化ガスを導入した後、反応槽1内を所定温度に保持して熟成工程を行う。熟成工程の温度は70〜100℃が好ましい。70℃より低いと反応が速やかに進行せず、100℃をこえると着色が著しくなる。
熟成反応時間は1〜120分が好ましい。このとき、撹拌翼3bを上述の好ましい周速の数値範囲に保ちつつ回転させることによって、熟成工程においても着色抑制剤を十分に分散させつつ、反応させることができる。
エステル化工程は、副生物を抑制し、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の純度を向上させる工程であり、(A)スルホン化ガス導入工程、(B)熟成工程で十分な純度のα−スルホ脂肪酸アルキルエステルが得られれば、(反応液中の二分子付加体が十分少なければ)このエステル化工程を行わなくてもよいが、通常はエステル化工程を行うことが好ましい。
エステル化工程に用いる低級アルコールは、原料の脂肪酸アルキルエステルのアルコール残基の炭素数と等しい炭素数1〜6のものが好ましいが、特に限定されるものではない。 低級アルコールは、反応液中の二分子付加体に対して0.5〜5.0倍モル用いるのが好ましく、0.8〜2.0倍モル用いるのがより好ましい。反応温度は50〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。反応時間は通常、5〜120分とされる。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの中和工程においては、アルカリとしてアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、エタノールアミンの水溶液等が用いられる。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は強アルカリ性でエステル結合が切断されやすくなる可能性があるため、スルホン化物とアルカリとの中和液のpHは、酸性あるいは弱いアルカリ性の範囲(pH4〜9)で行うのが好ましい。
さらに好ましくはアルカリ性でのエステル結合切断を避けるため、予め得られた中和物とスルホン化物をプレミックスした後、酸性サイドからアルカリにより中和を行なうとα−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩の副生を抑えることができるので好ましい。アルカリ水溶液の濃度は2〜50質量%、中和温度は30〜140℃、中和時間は10〜60分間とされる。上記アルカリの水溶液を用いて中和すると、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩のペーストが得られる。
そして、この後、必要に応じて常法によってα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩のペーストから、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩をフレーク状、ヌードル状、粉状、粒子状などに成形してもよい。
特に固体の炭酸塩(濃厚ソーダ灰)による中和は、他の塩基よりも安価であり、好ましい。また、固体の炭酸塩で中和を行うと、反応混合物中の水分が少なくなり、強アルカリとならない。また、中和時の中和熱が金属水酸化物の場合よりも低いため、有利である。 炭酸塩または炭酸水素塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムなどを例示することができ、無水塩、水和塩、またはこれらの混合物などを用いることができる。固体アルカリで中和したα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩についても必要に応じて過酸化水素などの漂白剤を用いた漂白処理を行なうことができる。
色調を改善する処理とは、例えば過酸化水素などの漂白剤を用いた漂白処理などがあげられ、好ましくは(D)中和工程後に行われる。この漂白処理は、過酸化水素水などの漂白剤を分割して添加することにより、より効率良く漂白を行うことができる。また、分割して添加することにより漂白時の発泡抑制に対しても効果的である。
α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩ペースト、その成形物、または固体アルカリの中和で得られたα-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は洗浄剤組成物に用いることができる。
次に、本発明で用いるスルホン化反応装置につき図1を用いて説明する。
図中、符号1はジャケット1a付きの反応槽である。この反応槽1には、攪拌機3が設けられている。
この攪拌機3は、回転軸3aと、この回転軸3aの先端に設けられた攪拌翼3bとからなるものである。攪拌翼3bは、吹き込まれたガスを過度に下方に送り込まず、もっぱら攪拌翼3bより上の上部ゾーンで気液分散を行いうるものであれば特に限定されないが、例えばディスクタービン、傾斜パドル型、ベインド翼、プロペラ翼、アンカー翼、傾斜タービン翼、ファンタービンなどが好適である。
一般に、ガススパージャーは単孔やリングスパージャーが多く、図1に示したガススパージャー5aはリングスパージャーで、その下面に複数の孔5bが設けられている。そしてこのガススパージャー5aは、その下面が原料液相2の液面に対して平行になるように置かれている。
また、攪拌機3の攪拌翼3bの設置高さ及び攪拌翼3bと、スルホン化ガスを槽内に導入するガススパージャー5aの高さ方向の間隔は、前述のスルホン化反応方法の項で述べたとおりである。攪拌翼3bと、ガススパージャー5aの高さ方向の間隔が上記の間隔になっていれば、攪拌翼3bとガススパージャー5aの位置関係はどちらが上になってもよい。図1の例では、攪拌翼3bはガススパージャー5aの下方に設置されている。
この結果、ガス導入管5に導入されたスルホン化ガスは、前記複数の孔5bから複数の気泡となって撹拌翼3bに向かって吹き出すようになっている。そこで撹拌翼からの液流動と吹き出した気泡が衝突し、気泡が微細化・分散して撹拌翼3bより上の上部ゾーン2aにて気液分散される。一方、撹拌翼3bより下の下部ゾーン2bは全体の液流動により少量の気泡の巻き込みはあるもののガスの存在量は上部ゾーンと比較してわずかである。
ガススパージャー5aの孔5bは、ガススパージャー5aの上面に設けられていてもよい。
つまり、ガススパージャー5aと攪拌翼3bとは、どちらが上でもよいが、ガススパージャー5aが上にある方が好ましい。
また、ガススパージャー5aの孔5bは必ずしも攪拌翼3bと対峙するように配置されていなくてもよいが、ガススパージャー5aの孔5bが攪拌翼3bと対峙するように配置されていることが好ましい。
また、図1の例では、反応槽1の側面内側には邪魔板10が設けられており、これにより分散効果が増大せしめられるようになっている。
また、下部ゾーン2bでの着色抑制剤の沈降を避けるために撹拌翼3bの下に補助翼として着色抑制剤分散用の羽根を設けることが好ましい。
熱交換器9としてはスパイラルタイプ、二重管タイプ、シェルアンドチューブタイプ、プレートタイプなどが用いられる。このリサイクルの戻し位置は反応槽上部ゾーン2aでも下部ゾーン2bでもよいが、槽内全体混合の観点から上部に戻すことが好ましい。このリサイクルライン7で気泡が多量に巻き込まれるとキャビテーションを起し、循環量の大幅な低下につながる。本発明のスルホン化反応装置の上部ゾーン2aで気液分散を行ない、下部ゾーン2bでは気泡の巻き込みを極力少なくすることにより、外部循環を安定に行うことが可能となる。
すなわち、本発明においては、必ずしもガス導入管と撹拌翼を槽底近傍に設置する必要がないという知見により、気液分散を反応槽の上部ゾーン2aで行っても十分なスルホン化反応が可能であり、また、反応槽の下部ゾーン2bでは気泡を極力存在させないようにすれば安定な外部循環を確保できることを見出したのである。よって、上部ゾーン2aでは気液分散を行い、下部ゾーン2bでは気泡を極力存在させないという2つの気液分散状態を形成させることにより解決の糸口を見出すことができたものである。
(実施例1)
図1に示した反応器(槽径600mmφ、高さ700mm、容量200l)に撹拌翼として6枚羽根傾斜パドル(up-pumping、羽根径240mmφ)を取り付けたものを用いてα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを製造した。
図1に示した槽型反応器は、ジャケット冷却、攪拌機3付きのSUS316L製であって、外部循環ライン7によって反応温度をコントロールするようになっているものを用いた。撹拌翼3bとスパージャー5bの間隔はメチルエステルを仕込む前に19mmに調整し、撹拌翼の設置位置は底面から150mmの位置になるように調整後、セッティングを行なった。
外部循環にはバイキングポンプ(東興産業社製)、プレート型熱交換器(日阪製作所製)を用いた。
原料は、パーム核油、ヤシ油をそれぞれエステル化して蒸留した2種の脂肪酸メチルエステル(商品名:パステルM−14(C=14)とパステルM−16(C=16)、いずれもライオンオレオケミカル社製)を、質量比2:8の比率に混合した後、さらに水添処理することにより、ヨウ素価を低減して精製したものを用いた。
水添処理は常法に従い、水添触媒として、商品名SO−850(堺化学社製)を、脂肪酸メチルエステルに対して0.1質量%添加し、170℃、1時間の条件で行った。なお水添処理の後、濾過により触媒を除去した。
スルホン化ガスは、乾燥空気(露点−55℃)を用いてSO2を触媒酸化して生成したSO3ガスを用いた。着色抑制剤は、工業グレードの微粉芒硝(四国化成社製;粒径40〜50μm)を使用した。
外部循環は90l/分の循環量で行なった。撹拌翼の撹拌回転数は239rpm(周速:3m/秒)で行なった。
メチルエステルを仕込んだ後、攪拌を続けながら着色抑制剤として微粉芒硝を、メチルエステルに対して5質量%添加した。更に攪拌を続けながら、反応温度80℃で、窒素ガスで8容量%に希釈したSO3ガス1.2倍モル(対メチルエステル)を、リングスパージャー(リング径200mmφ、孔径3mmφ、孔数40個)にて、ガス吹き出し速度120m/秒の速度で180分間かけて吹き込んだ(空塔速度≒0.12m/秒)。さらに80℃に保ちながら、30分間かけて熟成を行って、α−スルホ脂肪酸メチルエステルを製造した。
得られたα−スルホ脂肪酸メチルエステルの5質量%エタノール溶液を、40mm光路長、No.42ブルーフィルターを用いてクレット光電光度計で色調を測定した。また反応率は液体クロマトグラフィーにより未反応メチルエステルを分析し、計算により求めた。
また、フラッディングの有無、外部循環におけるキャビテーションの有無に関しては、反応槽上部に取り付けられた覗き窓及び外部循環ラインに取り付けられたサイドグラスからの目視により判断した。
測定結果を表1に示す。
表1〜2に示したように、撹拌翼とスパージャーの間隔、撹拌翼の設置位置の条件を変化させた以外は実施例1と同様にして実験を行った。
その結果を表1、表2に示す。
また、攪拌翼の反応槽内の高さが本願の規定からはずれて上の方にある比較例2はフラッディングが生じ、色調も劣り、反応率も低いことがわかる。
また、攪拌翼の反応槽内の高さが本願の規定からはずれて反応槽底面に近い比較例3では外部循環におけるキャビテーションがあり、フラッディングも生じ、色調に劣ることがわかる。
これに対して、ガス導入ノズルと攪拌翼の高さ方向の間隔を液深の15%以下に接近させ、攪拌翼を槽内液高さの20〜80%の位置に設置した実施例1〜5のいずれもフラッディングも外部循環におけるキャビテーションもなく、色調の良好なα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを高反応率で得られることがわかる。
原料としてパステルM−16(C16)とパーム油をエステル化して蒸留した脂肪酸メチルエステル(商品名:パステルM180(ライオンオレオケミカル社製、C=18)の質量比6:4混合物(ヨウ素価:0.02)、C16の脂肪酸メチルエステルとC18の脂肪酸メチルエステルの質量比45:55混合物(コグニス社製、ヨウ素価:0.01)、LAB(直鎖アルキルベンゼン、アルキル炭素数:11〜13の混合物)を用い、LABの場合は反応温度、熟成温度とも60℃で行なった以外は実施例1と同様にして実験を行なった。
その結果を表2に示す。
実施例1で得られたスルホン化物を図2に示したジャケット付3段撹拌反応槽10を用いて、スルホン化物に対してメタノールを3質量%添加して80℃で30分間エステル化反応を行なった。エステル化反応後のα−スルホ脂肪酸アルキルエステルの組成を表3に示す。
実施例9で得られたエステル化後のα-スルホ脂肪酸アルキルエステルを図2に示した製造装置を用いて31質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、その後35質量%過酸化水素水 1質量%対AIを一括で添加し、70℃、8時間漂白反応を行なう漂白操作の後、α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩のペーストを得た(実施例10)。このペーストを希釈して得られた5質量% AI水溶液を、40mm光路長、No.42ブルーフィルターを用いてクレット光電光度計で色調を測定したところ色調は45であった。なお、以下の色調の測定方法はいずれも5質量% AI水溶液を用いた同様の方法による。α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩ペーストの組成を表4に示す。
一方、前記漂白操作にかえて、最初に35質量%過酸化水素水を0.5質量%対AI添加し、ついでその1時間後に、更に35質量%過酸化水素水を0.5質量%対AI添加する分割添加方式を行った。その結果、漂白性が良好となり、5時間(第1回目の過酸化水素の添加後1時間保持、第2回目の過酸化水素添加後4時間保持で合計5時間)の漂白時間で、色調43のα-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩のペーストを得た(実施例11)。また、この分割添加方式により、発泡がほとんど無い状態で運転することができた。
また、実施例9で得られたエステル化後のα-スルホ脂肪酸アルキルエステルを、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム粉体を用いて固体アルカリによる中和を行ない、その後35質量%過酸化水素水を、4質量%対AI 添加し、20〜40℃で漂白を行ない、α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩粒子を得た(実施例12)。
ここでAIとは、有効成分すなわち活性剤を意味し、α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の場合は、α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩とα-スルホ脂肪酸ジアルカリ塩の合計を意味する。
Claims (5)
- 攪拌機を備えたバッチ式撹拌混合型反応槽を用いて、原料液相とスルホン化ガスを接触させるスルホン化反応方法において、
反応槽底部の高さを0、原料液面の高さをHとした時、攪拌機の攪拌翼の位置を0.40H〜0.80Hとし、攪拌翼と、スルホン化ガスを槽内に導入するガス導入ノズルの高さ方向の間隔が0.10H以内になるように設置して、脂肪酸アルキルエステル、アルキルベンゼン、α−オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又は高級アルコールのスルホン化を行うことを特徴とするスルホン化反応方法。 - 着色抑制剤の存在下で原料液相とスルホン化ガスを接触させることを特徴とする請求項1記載のスルホン化反応方法。
- スルホン化反応中に反応槽底部から原料液の一部を抜き出して熱交換器で冷却後反応槽に戻すリサイクルを行うことを特徴とする請求項1又は2記載のスルホン化反応方法。
- 脂肪酸アルキルエステルを請求項1または2記載のスルホン化反応方法でスルホン化した後、低級アルコールによってエステル化することを特徴とするα−スルホ脂肪酸アルキルエステルの製造方法。
- 請求項4に記載の製造方法でエステル化した後、アルカリ水溶液又はアルカリ性粉体で中和することを特徴とするα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造方法。
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