JP2009120692A - 樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

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崇 小田
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宏信 村松
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Abstract

【課題】実使用時において力学的バランスに優れた樹脂組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アミド基密度が38.0wt%以下の半芳香族若しくは芳香族ポリアミド樹脂、またはアミド基密度が30.0wt%未満の脂肪族ポリアミド樹脂と、有機酸と、を含む樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、高強度、低熱膨張性と成形自由度とを併せ持つ樹脂組成物、およびその製造方法に関するものである。特に、本発明は、ポリアミド樹脂に無機粒子を均一分散させることにより、耐熱性を維持しながら、機械物性に優れた樹脂組成物を得るものである。このような材料を使用することで、従来よりガラス繊維強化複合材料(GFRP; Glass Fiber Reinforced Polymer)、カーボン繊維強化複合材料(CFRP; Carbon Fiber Reinforced Polymer)、金属を用いていた自動車用部材に対し、低フィラー濃度で高度な熱寸法安定性、強度、成形自由度の向上、軽量化の新たな特性を付与することができる。
樹脂にナノサイズの無機フィラーを包含させたポリマーナノコンポジットは、樹脂に耐熱性、ガスシールド性、弾性率、表面平滑性、収縮等方性等、新たな物性を付与できるため、様々な工業分野からその技術が数多く報告されている。
例えば、粘土鉱物フィラーのモンモリロナイトの層間にナイロンの原料カプロラクタムを含浸させて重合させ、ナイロンと充填材(モンモリロナイト)のコンポジットを得る方法がある。このコンポジットは機械的物性の向上が見られ、特にガスシールド性において、工業的に有効な樹脂材料であるが、開示された方法では樹脂と無機フィラーの選択にかなりの限定があり、様々な樹脂に、無機粒子の特異な物性を付与できない。
そこで近年、粘土鉱物フィラーに代って、ナノサイズの無機フィラーとしてシリカ、チタニア、アルミナ等の金属酸化物粒子、金、銀等の金属微細粒子、カーボンナノチューブ、フラーレン、シルセスキオキサンなどの機能性ナノ有機材料が広く利用されるようになった。これらは無機フィラーがミクロンサイズの二次凝集体を形成することなく、均一に分散することで、ナノ領域となるとバルクとは異なった特異な物理、化学的性質を示すため、それらユニークな特性を材料に応用する研究が各方面にて行なわれている。例えば、ナノサイズの針状チタニア上を酸化スズと酸化アンチモンで被覆し、導電性を高めたナノ粒子を作製し、これを塩化ビニルに含有させたコンポジットを得ることによる帯電防止の樹脂材料がある。また、高アスペクト比のアルミナ粒子をナノオーダレベルで用いて、これをシランカップリング剤で表面処理し分散性を向上し、フィルム等コンポジット材の表面性や弾性率、軟化温度の向上を図る方法もある。しかしながら、シランカップリング剤処理ではその反応性の点から十分な分散性が期待できず、表面性の改善は期待できても力学物性は未だ不十分である。
以上のように様々な検討がなされているが、これらの無機微粒子を用いた樹脂組成物では、上述の用途に要求される機械物性を十分なレベルで実現することは未だできていない。
上記点を考慮して、アルミナ粒子と、このアルミナ粒子に化学結合を介して結合した有機酸とを含むアルミナ粒子複合体を、ポリカーボネート系、アクリル系やメタクリル系樹脂等の樹脂と組み合わせて使用した樹脂組成物が報告されている(例えば、特許文献1参照)。当該特許文献1では、無機ガラスの代替となるように、透明性を保持しつつ機械強度に優れる樹脂組成物を提供することを目的としている(段落「0008」)。
特開2006−193400号公報
GFRPやCFRPが持つ表面粗さや成形性の悪さ、コストといった課題を解決するために、ナノサイズの無機粒子を分散させた複合材料の使用が有効である。
しかしながら、ナノサイズの無機粒子が均一分散した樹脂組成物において、無機粒子の添加量の増加に伴う延性低下、耐衝撃性低下が課題となる。
したがって、実使用時において力学的バランスや成形性に優れた樹脂組成物及びその製造方法を提供することが本発明の目的である。
上記特許文献1をさらに改良することを目的として鋭意検討を行ない、加水分解が軽微であり、粒子表面との化学的マッチングが優れる樹脂の選択と最適な分散剤の選定を行なった。
具体的には、特定のアミド基密度のポリアミド樹脂と、有機酸と無機粒子とを含む樹脂組成物は、実使用時において力学的バランスや成形性に優れることを見出した。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
本発明によって得られる樹脂組成物を従来のGFRPやCFRPを用いた部材に用いれば、より低濃度の添加量で同等以上の強度が得られ、且つ表面平滑性や成形性に優れる。また、成形性の自由度が著しく向上するため、部材の新規な開発・設計が可能となる。
本発明の第一は、無機粒子と、アミド基密度が38.0wt%以下の半芳香族若しくは芳香族ポリアミド樹脂、またはアミド基密度が30.0wt%未満の脂肪族ポリアミド樹脂と、有機酸と、を含む樹脂組成物を提供する。従来は、ポリアミド樹脂やポリプロピレンにガラス繊維を混合してバンパー等の自動車部品に使用されていた。しかし、ガラス繊維を混合すると、成形性が低下したり、部品表面を平滑にするのが困難である、あるいは平滑にするのにコストがかかるという問題があった。また、ポリアミド樹脂は、従来、耐熱性に優れるなどの優れた特性を有するものの、成形性に劣るという問題があった。このため、ポリアミド樹脂は形状が複雑な部品の成形には不適切であったり、部品のデザインに制約があった。
また、上記特許文献1では、アルミナ粒子と、このアルミナ粒子に化学結合を介して結合した有機酸とを含むアルミナ粒子複合体と、樹脂とを含む樹脂組成物が記載されている。この文献の段落「0062」には、ナイロン6、ナイロン66やナイロン610等のポリアミド樹脂も使用できる樹脂として例示されている。しかし、上述したように、上記特許文献1は、主に無機ガラスの代替となるように、透明性を保持しつつ機械強度に優れる樹脂組成物を主な目的としている(段落「0008」など参照)。事実、請求項32や段落「0061」では、透明性等の観点から、ポリカーボネート系、アクリル系やメタクリル系樹脂が好ましいことが記載されている。また、実施例においても、ポリカーボネート樹脂(段落「0101」〜「0104」)やアクリル樹脂(段落「0110」〜「0111」)の透明な樹脂が使用されているのみである。
このため、本発明では、上記特許文献1に記載の発明のさらなる改良を目的として透明でない樹脂のうち特に耐熱性に優れたポリアミド樹脂について鋭意検討を行なった。その結果、それぞれ特定のアミド基密度を有する半芳香族、芳香族、及び脂肪族ポリアミド樹脂を、無機粒子及び有機酸と組み合わせて使用することによって、樹脂組成物の成形性が向上することが判明した。本発明の樹脂組成物の成形性が向上できるメカニズムは明らかではないが、無機粒子表面の官能基とポリアミド樹脂のアミド基とが化学結合するためであると考えられる。より詳細には、以下のように考えられる。例えば、無機粒子の好ましい一例であるベーマイト粒子の場合には、ベーマイト粒子表面の水酸基とポリアミド樹脂のアミド基とが水素結合する。このため、ポリアミド樹脂のアミド基密度を適度な化学結合が得られるように適当な範囲に調節することによって、無機粒子が混合時に相分離せずにポリアミド樹脂中に均一に分散できる。ゆえに、このような樹脂組成物は、優れた化学的マッチング(濡れ性)を発揮できる。また、当該効果は、特に無機粒子を有機酸にて表面処理を行なった場合に、より顕著に発揮されうる。これは、有機スルホン酸等の有機酸でベーマイト等の無機粒子の表面を改質すると、無機粒子のポリアミド樹脂における均一分散性がより改善されるためである。なお、上記メカニズムによって本発明が限定されるものではない。
上記利点に加えて、ポリアミド樹脂は、加水分解が軽微であるという特性がある。ここで、金属酸化物は吸着水や結晶水を極微量ではあるが含むため、加熱時に水蒸気を発生する。この水分は、通常の乾燥などの操作では外部に放出されず、混練や溶融工程などの高温時に初めて発生する。従来ポリカーボネート樹脂などでは、この水蒸気が、金属酸化物表面に存在する酸及び塩基点が樹脂の加水分解を触媒して、高分子鎖を切断する。このような高分子鎖の切断は、樹脂の分子量や分子鎖同士の絡み合い密度の低下、さらにはポリマーナノコンポジットの靱性や延性などの低下を引き起こす。しかし、本発明で使用されるポリアミド樹脂は、このような問題の原因となりうる加水分解を引き起こしにくい。このため、本発明の樹脂組成物は、靱性や延性の低下が起こらない。また、本発明の樹脂組成物を用いた成形物は、無機粒子が均一分散しうるため、表面平滑性、成形性や成形性の自由度などの種々の特性に優れ、かつ靭性、延性や耐衝撃性の低下を有意に抑制することができ、実使用時においても力学的バランスに優れる。
以下、本発明その他の特徴及び利点について、発明を実施するための最良の形態に基づいて、発明の構成要件ごとに、詳細に説明する。
1.無機粒子
本発明では、所望の力学特性を得るために、マトリックスであるポリアミド樹脂に対するフィラーとして、無機粒子を用いる。無機粒子としては、特に限定されないが、有機酸と化学結合(例えば、水素結合)可能な官能基を粒子表面に有するものが好ましい。金属酸化物には活性な水酸基やルイス酸塩基活性を有する化学構造などの活性点が多く存在するため、金属酸化物粒子がより好ましい。
本発明において、無機粒子としては、構成する金属原子がアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、カルシウム(Ca)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)などを含有する金属酸化物の粒子;ならびにカーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、ナノダイヤ等の炭素粒子などが挙げられる。金属酸化物の粒子としては、より具体的には、酸化鉄(ヘマタイト)、酸化チタン(チタニア)、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化カルシウム(カルシア)、酸化アルミニウム(アルミナ、ベーマイト)、酸化イットリウム(イットリア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化ケイ素(シリカ)、層状ケイ酸塩(モンモリロナイト)、タルク、およびカオリナイト等の金属酸化物の粒子などが挙げられる。これらの金属酸化物粒子の中でも機械的特性を高い次元で両立させるには、金属酸化物の粒子が好ましく、シリカ、カルシア、アルミナ(ベーマイト)、酸化鉄(ヘマタイト)、チタニア、モンモリロナイトがより好ましい。また、中でも結晶性が良く、ナノサイズでありながら、アスペクト比の高い粒子を作ることができる点を考慮すると、構成する金属原子がAlを含有する金属酸化物粒子、特にアルミナ粒子がさらにより好ましい。この際、アルミナは、異なった結晶組成(α、γ、χ、η、δ、θ、κ、・・等)のいずれの組成のアルミナでもよく、また、ベーマイト等の水和物型(Al・nHO)のものも含むものとする。また、酸化鉄には、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(II,III)(Fe)、酸化鉄(III)(Fe)があるが、更にヘマタイト等の酸化鉄(III)(Fe)の鉱物形態やゲータイト、アカガネアイト、レピドクロサイト、フェリハイドライト等の鉄酸化・水酸化物(FeO(OH)等)の鉱物形態のものも含むものとする。同様に、他の無機粒子においても、異なった結晶組成のもの、水和物型のもの、鉱物形態のものなどを含むものとする。また、上記無機粒子は任意の割合で組み合わせて用いても良いし、また特にこれらに限定されるものではない。
上記無機粒子の製造方法は、特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは2種以上組合わせてあるいは適宜修飾して適用できる。特に無機粒子を、粒子同士の癒着、結合の起こらずに製造できる方法が好ましく、具体的には、形状の均質化などを考慮すると、水熱合成法、ゾルゲル法、逆ミセル法などの湿式合成法により得ることがより好ましい。一方、気相合成法、化学蒸着法、焼成処理により得られた粒子は粒子同士が癒着し、そのまま有機溶媒、樹脂に分散してしまうため所望の物性を得ることが難しくなる場合がある。
また、上記の無機粒子として好適な酸化アルミニウム粒子は、下記式(1)で表されるアルミナの粒子である。
Figure 2009120692
式中、nは、nは、0以上の整数である。この際、nが0のときは、酸化アルミニウムを示し、異なった結晶組成のα、γアルミナまたはβ、ρ、χ、ε、γ、κ、κ’、θ、η、δ、λ型のアルミナであり、好ましくは、α、γ、δ、θ型のアルミナである。なお、nが1のときは、ベーマイトを表す。さらに、nが1を越えて3未満である場合は、ベーマイトと非結晶構造のアルミナ水和物の混合物を示す。これは一般的に「疑ベーマイト」と呼ばれている。さらに、nが3以上では、非結晶構造のアルミナ水和物を示す。本発明のアルミナ粒子はこれらのうちから選ばれる少なくとも1つである。結晶性や粒子安定性の面や入手の容易さからベーマイト、αアルミナ、γアルミナのいずれかが好ましく、ベーマイトが特に好ましい。
また、無機粒子の形状は、特に制限されない。例えば、無機粒子は、球状のような等方性を示すものであってもよいが、繊維状、紡錘状、棒状、針状、筒状、柱状、板状などの異方性を示すことが好ましい。無機粒子が異方性を示す場合には、無機粒子は、短軸径(長さ)が好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜20nm、さらにより好ましくは1〜10nm、最も好ましくは2〜6nmであり、長軸径(長さ)が20〜700nm、好ましくは100〜500nmであり、アスペクト比が5〜200、好ましくは20〜150であるような高異方性を示すことが特に好ましい。透明性を有する樹脂組成物中での無機粒子の光の散乱を考慮に入れ、熱膨張抑制や弾性率向上といった特性を向上させる場合、特に粒子サイズは短軸径(長さ)が6nm以下、特に2〜5nmであり、長軸径(長さ)が50〜500nm、特に100〜400nmであることが好ましい。また、不定形粒子、たとえば粒子の前駆体となる水酸化物などのゲル状物質は、水を多量に含み、加水分解による自己縮合を招く場合がある。特に無機粒子がベーマイト粒子である場合には、ベーマイト(一次粒子)の短軸径(長さ)が1〜10nmであり、長軸径(長さ)が20〜700mmであり、かつアスペクト比が5〜200であることが好ましい。
本明細書において、無機粒子の短軸径(長さ)、長軸径(長さ)及びアスペクト比[長軸径(長さ)/短軸径(長さ)]は、いずれも後述の実施例で記載した方法で測定した100個の粒子の平均値を意味する。無機粒子が柱状である場合を例にとると、図1Aに示すように、無機粒子11の長軸径(長さ)は、Lとして求められる。無機粒子11の短軸径(長さ)は、短軸方向の断面の長径Lおよび短径Lの平均値L=(L+L)/2として求められる。ここで、L≧Lであり、短軸方向の断面形状が円形の場合には、L=Lである。また、L≧Lであり、球状粒子の場合には、L=L(=L=L=粒子径)である。アスペクト比は、無機粒子の長軸径(長さ)と短軸径(長さ)との比(L/L)として求められる。なお、無機粒子が中空形状や海島形状の場合でも、図1Aの柱状の無機粒子の場合と同様に、図1Bに示すようにして、無機粒子の短軸径(長さ)、長軸径(長さ)及びアスペクト比を求めることができる。また、後述する無機粒子が中空形状や海島形状の場合の中空円筒もしくは中空角柱のサイズに関しても、中空円筒もしくは中空角柱の短軸の径Lは、短軸方向の中空断面の長径Lおよび短径Lの平均値(L+L)/2として求められる。中空円筒もしくは中空角柱の長さは、Lとして求められる。このような場合のアスペクト比も、L/Lをいう。中空円筒もしくは中空角柱の両端は、図1Bに示すように開口していてもよいし、いずれか一端または両端が閉じていてもよい。また、無機粒子がアルミナ粒子等の金属酸化物の中空粒子である場合には、無機粒子は、図1Bに示すように、粒子短軸の径(短軸長さL)の大きさに応じて、0.5nm〜9.5nmの径L(=(L+L)/2)であり、また長さLが粒子長軸径(長軸長さL)以下の5〜700nmの中空円筒を粒子内に有した中空粒子であることが好ましい。これによって、前記アルミナ粒子等の無機粒子の比重を低減することができる。
なお、無機粒子のモル数は化学組成の一般式より求められる。例えば、アルミナ粒子を例にとれば、αアルミナ粒子は一般式:Alより式量は101.96となる。ベーマイト粒子の場合は例外的にAlO(OH)を式量に適用して59.99を式量とする。他の無機粒子のモル数に関しても同様に一般式より求めるものとし、ベーマイト粒子(AlO(OH))やゲータイト粒子(FeO(OH))のような金属の酸化・水酸化物の場合は、例外的に当該酸化・水酸化物の一般式を式量に適用して求めるものとする。
上述した無機粒子の製造方法は、上記結晶系、形状、サイズのものが得られれば特に限定されず、水熱合成法やゾルゲル法など一般的な方法を用いることができる。
前記無機粒子の樹脂組成物に対する配合量は、要求特性(例えば、剛性、耐熱性及び耐熱膨張性など)が得られるような量であれば特に制限されないが、得られる樹脂組成物に対し、無機粒子の総配合量が、0.1〜80wt%、より好ましくは1〜60wt%であることが好ましい。特に無機粒子がベーマイト粒子である場合には、ベーマイト粒子の配合量は、得られる樹脂組成物に対して、1〜60wt%、より好ましくは5〜30wt%であることが好ましい。また、以下に詳述するが、無機粒子表面に有機酸が結合した無機粒子複合体の形態である場合もあるが、このような場合には、無機粒子複合体の配合量は、得られる樹脂組成物に対して、1.2〜78wt%、より好ましくは6〜39wt%であることが好ましい。ここで、前記無機粒子/無機粒子複合体の配合量が下限を下回ると、無機粒子/無機粒子複合体を配合することにより奏される効果が少なく、得られる樹脂組成物の剛性、耐熱性及び耐熱膨張性などの物性の向上がほとんど認められない場合がある。また、前記無機粒子/無機粒子複合体の配合量が上限を超えると、比重の増加が無視できなくなるばかりでなく、コスト面でも不利となり、樹脂組成物のコスト及び比重が増大してしまうという問題が生じる。また、前記無機粒子/無機粒子複合体の含有量の増大に伴い、得られる樹脂組成物の粘度が増大し、成形性が悪くなる場合がある。
2.ポリアミド樹脂
本発明のマトリクスとして用いるポリアミド樹脂は、半芳香族ポリアミド若しくは芳香族ポリアミドの場合、アミド基密度が38.0wt%以下であり、脂肪族ポリアミドの場合はアミド基密度が30.0wt%未満である。本明細書において、「アミド基密度」とは、ポリアミド樹脂の単位構造(繰り返し単位)中に占めるアミド基の濃度を質量パーセント(wt%)で表す値である。例えば、PA6(単位構造:−NH(CHCO−を有するホモポリマー)の場合には、単位構造の分子量は113g/molで、そのうちのアミド基の分子量は43g/molである。このため、アミド基密度は、約38.1(=(43/113)×100)wt%となり、本発明の範囲には含まれない。
アミド基密度が上述の上限値を持つ理由として、ポリアミド樹脂同士の化学結合(例えば、水素結合)が推測される。無機粒子を後述のドライブレンド法によってポリアミド樹脂中に均一に分散させるには、ポリアミド樹脂と無機粒子表面が適度に化学結合する必要がある。仮にアミド基密度が上限値よりも高い場合は、分散剤を用いても、ポリアミド樹脂同士のアミド基による自己凝集力が強固なため、無機粒子を分散させることが非常に困難となる。これに対して、アミド基密度が上記したような上限値以下(未満)であれば、分散剤によって適度に疎水化された無機粒子表面上にある水酸基と、ポリアミド樹脂のアミド基が化学結合し、優れた分散効果を期待できる。なお、本発明は、上記推測に限定されるものではない。
ポリアミド樹脂は、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体/共重合体である。本明細書において、「脂肪族ポリアミド樹脂」とは、主鎖が、アミド結合(−NHCO−)および脂肪族鎖(脂肪族基(アルキレン基))から構成される重合体/共重合体を意味する。また、「芳香族ポリアミド樹脂」は、全芳香族ポリアミド樹脂とも称され、主鎖が、アミド結合(−NHCO−)および芳香族鎖(芳香族基)から構成される重合体/共重合体を意味する。「半芳香族ポリアミド樹脂」とは、主鎖としての脂肪族ポリアミド分子骨格中に一部芳香族基(芳香族ポリアミド)が導入された重合体/共重合体を意味する。
本発明において、ポリアミド樹脂としては、具体的には、重合可能なアミノ酸、重合可能なラクタム、あるいは重合可能なジアミンと重合可能なジカルボン酸との塩あるいは混合物、および重合可能な前記化合物のオリゴマーが使用される。この際、重合可能なアミノ酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。重合可能なラクタムとしては、例えば、ブチルラクタム、ピバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム等が挙げられる。重合可能なジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナンメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5,−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等が挙げられる。重合可能なジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ジグリコール酸等が挙げられる。この際、重合可能なアミノ酸、重合可能なラクタム、重合可能なジアミン、および重合可能なジカルボン酸は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもあるいは1種若しくは2種以上を組合わせて使用されてもよい。
上記した種々の単量体からなるポリアミド樹脂のうち、脂肪族ポリアミド樹脂は、PA612、PA12及びPA11からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。また、芳香族ポリアミド樹脂は、MPIAおよびPPTAの少なくとも一方であることが好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂は、PA6T、PA6I、PA6T/6I、PA6T/6I/66、PA6T/66、PAMXD6、PA9T、PA6T/M−5T、PA6T/6、PA PACM10及びPA PACM12からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、主鎖がアミド結合(−NHCO−)及び脂肪族鎖から構成されかつアミド基密度が30.0wt%未満のものであれば特に制限されず、上記から適宜選択された成分から構成されうる。無機粒子の均一分散性、ポリアミドの結晶化度、成形性などを考慮すると、脂肪族ポリアミド樹脂のアミド基密度は、好ましくは20.0wt%以上30.0wt%未満であり、より好ましくは21.8〜27.7wt%である。このような脂肪族ポリアミド樹脂の具体例としては、PA612(アミド基密度:27.7wt%)、ポリドデカラクタム(本明細書中では、「PA12」とも称する)(アミド基密度:21.8wt%)、ポリウンデカラクタム(本明細書中では、「PA11」とも称する)(アミド基密度:23.5wt%)等が好ましく挙げられる。また、これらの脂肪族ポリアミド樹脂は、合成によって得られてもあるいは市販品を使用してもよい。市販品としては、下記実施例で使用されるものが使用できる。また、上記に加えて、PA612では、ザイテル(デュポンジャパン製)がある。PA12では、UBESTA(UBE製)がある。PA11では、リルサン(アルケマ製)がある。なお、上述したように、脂肪族ポリアミド樹脂がすべて本発明に係るアミド基密度を有するものではないことはいうまでもない。例えば、PA6及びPA66のアミド基密度は38.1wt%であり、PA46のアミド基密度は43.4wt%であり、PA610のアミド基密度は30.5wt%である。
本発明において、芳香族ポリアミド樹脂としては、主鎖がアミド結合(−NHCO−)及び芳香環鎖(芳香族基)から構成されかつアミド基密度が38.0wt%以下のものであれば特に制限されず、上記から適宜選択された成分から構成されうる。無機粒子の均一分散性、ポリアミドの結晶化度、成形性などを考慮すると、芳香族ポリアミド樹脂のアミド基密度は、好ましくは20.0wt%以上38.0wt%以下であり、より好ましくは30.0〜36.1wt%である。このような芳香族ポリアミド樹脂の具体例としては、ポリメタフェニレンアミド(MPIA)(アミド基密度:36.1wt%)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)(アミド基密度:36.1wt%)等が好ましく挙げられる。また、これらの脂肪族ポリアミド樹脂は、合成によって得られてもあるいは市販品を使用してもよい。市販品としては、MPIAでは、コーネックス(帝人製)がある。また、PPTAでは、Twaron(帝人製)がある。
また、半芳香族ポリアミド樹脂としては、主鎖としての脂肪族ポリアミド分子骨格中に一部芳香族基(芳香族ポリアミド)が導入されかつアミド基密度が38.0wt%以下のものであれば特に制限されず、上記から適宜選択された成分から構成されうる。無機粒子の均一分散性、ポリアミドの結晶化度、成形性などを考慮すると、半芳香族ポリアミド樹脂のアミド基密度は、好ましくは20.0wt%以上38.0wt%以下であり、より好ましくは21.5〜38.1wt%である。このような半芳香族ポリアミド樹脂の具体例としては、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との共重合体;本明細書中では、「PA6T」とも称する)(アミド基密度:35.0wt%)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との共重合体;本明細書中では、「PA6I」とも称する)(アミド基密度:35.0wt%)ポリヘキサメチレンテレフタルアミドとポリヘキサメチレンイソフタルアミドとの共重合体(本明細書中では、「PA6T/6I」とも称する)(アミド基密度:35.0wt%)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミドとポリヘキサメチレンイソフタルアミドとポリヘキサメチレンアジパミドの共重合体(本明細書中では、「PA6T/6I/66」とも称する)(アミド基密度:35.0wt%を超えて38.0wt%以下)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミドとポリヘキサメチレンアジパミドの共重合体(本明細書中では、「PA6T/66」とも称する)(アミド基密度:35.0wt%を超えて38.0wt%以下)、PAMXD6(アミド基密度:35.0wt%)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ノナンジアミンとテレフタル酸との共重合体;本明細書中では、「PA9T」とも称する)(アミド基密度:30wt%)、PA6TとM−5Tとの共重合体であるPA6T/M−5T(アミド基密度:35.0wt%)、PA6T/6(アミド基密度:35.0wt%を超えて38.0wt%以下)、等モルのPACMとセバシン酸との共重合体であるPA PACM10(アミド基密度:23.1wt%)、等モルのPACMとドデカンジオン酸との共重合体であるPA PACM12(アミド基密度:21.5wt%)等が好ましく挙げられる。なお、上記例示のうち、「PACM」は、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルアミン)またはp−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンを意味し、シス−シス、シス−トランスおよびトランス−トランス異性体の混合物から構成される。また、上記半芳香族ポリアミド樹脂が共重合体である場合には、ポリアミド樹脂のアミド基密度が範囲で記載されているものがある。これは、各単位構造(繰り返し単位)中に占めるアミド基の濃度(wt%)にしたがって、得られるポリアミド樹脂のアミド基密度が変化するためである。例えば、PA6T/66は、PA6T(アミド基密度:35.0wt%)とPA66(アミド基密度:38.1wt%)との共重合体である。このため、これら2種の単量体から得られるポリアミド樹脂のアミド基密度は、各単量体の組成(導入比率)によって35.0wt%を超えて38.0wt%以下となる。これに対して、PA6T/6Iは、PA6T(アミド基密度:35.0wt%)とPA6I(アミド基密度:35.0wt%)との共重合体である。このため、これら2種の単量体から得られるポリアミド樹脂のアミド基密度は、各単量体の組成(導入比率)にかかわらず、35.0wt%となる。なお、このことは、他のポリアミド樹脂についても同様である。
また、これらの半芳香族ポリアミド樹脂は、合成によって得られてもあるいは市販品を使用してもよい。市販品としては、下記実施例で使用されるものが使用できる。また、上記に加えて、PA6T/6Iでは、Arlen(三井化学製)がある。PA6T/6I/66では、Amodel(アモコエンジニアリングポリマーズ製)がある。PA6T/66では、HT nylon(東レ製)がある。PAMXD6では、レニー(三菱ガス化学製)がある。PA9Tでは、Genestar(クラレ製)がある。PA6T/M−5Tでは、ZytelHTN(DuPont製)がある。PA6T/6では、UltramidT(BASF製)がある。PA PACM12では、Trogamid CX(Degussa AG製)がある。なお、上記半芳香族ポリアミド樹脂の一部の分子構造を以下の表1に示す。
Figure 2009120692
本発明において、上記した芳香族ポリアミド樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、および半芳香族ポリアミド樹脂は、それぞれ、単独で使用されても若しくは2種以上の混合物の形態で使用されても、または各ポリアミド樹脂の1種若しくは2種以上を組合わせて使用されても、いずれでもよい。
原料ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、本発明においては、好ましくは20,000以上、より好ましくは20,000〜150,000、さらにより好ましくは25,000〜60,000の範囲である。原料ポリアミド樹脂のMwが20,000未満であると強度などが低下し、更に得られる樹脂組成物の熱安定性が低下する場合がある。一方、原料ポリアミド樹脂のMwの上限値は特に制限されないが、150,000を超えると成形時に粘度が高く、成形自由度が損なわれるため、これ以下が好ましい。なお、原料ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、樹脂組成物の代わりに原料ポリアミド樹脂を使用する以外は、後述する実施例の測定方法と同様の方法を用いて算出する。
前記ポリアミド樹脂の樹脂組成物に対する配合量は、要求特性(例えば、剛性、耐熱性及び耐熱膨張性など)が得られるような量であれば特に制限されないが、得られる樹脂組成物に対し、ポリアミド樹脂の総配合量が、22〜98.8wt%、より好ましくは61〜94wt%であることが好ましい。ここで、前記ポリアミド樹脂の配合量が下限を下回ると、ポリアミド樹脂を配合することにより奏される効果が少なく、得られる樹脂組成物の延性、耐衝撃性などの物性の向上がほとんど認められない場合がある。また、前記ポリアミド樹脂の含有量の増大に伴い、得られる樹脂組成物の粘度が増大し、成形性が悪くなる場合がある。逆に、前記ポリアミド樹脂の配合量が上限を超えると、無機粒子の配合量が相対的に減少し、得られる樹脂組成物の剛性、耐熱性及び耐熱膨張性などの物性の向上がほとんど認められない場合がある。
3.有機酸(表面処理剤)
本発明において、無機粒子は、そのままの形態でポリアミド樹脂中に分散させてもよいが、無機粒子をポリアミド樹脂中に均一分散させるためには、有機酸(表面処理剤)が無機粒子表面に結合した無機粒子複合体の形態をとることが好ましい。すなわち、無機粒子の少なくとも一部、好ましくは、全部は、有機酸で表面処理されてなることが好ましい。
有機酸(表面処理剤)としての有機酸の例としては、特に限定されないが、ポリアミド樹脂との親和性を向上できるものが好ましい。有機スルホン酸、有機リン酸、有機カルボン酸は、無機粒子表面に化学的に結合して分散効果(効率)を高めるため、好ましい。
本発明において、有機酸としての有機スルホン酸は、特に制限されず、公知の有機スルホン酸が使用できる。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸が好ましく、以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。例えば、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチル、CH(CHCHSOH(nは、0〜10の整数である)で表されるエチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、3置換体のp−トルエンスルホン酸ドデシル、ニトロ基を有するo−ニトロベンゼンスルホン酸、m−ニトロベンゼンスルホン酸、アリール基を有するp−フェノールスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフトールスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、o−クレゾールスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸スチレン共重合体)PCオリゴマーの末端にスルホン酸基のついた化合物などが挙げられる。これらのうち、無機粒子に対する解膠能力、無機粒子表面への反応性、化合物としての安定性、入手の容易などを考慮すると、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。
また、有機酸としての有機リン酸は、特に制限されず、公知の有機リン酸が使用できる。具体的には、モノフェニルアシッドホスフェート(フェニルホウ酸)、モノメチルアシッドホスフェート(メチルホウ酸)、モノエチルアシッドホスフェート(エチルホウ酸)、モノブチルアシッドホスフェート(ブチルホウ酸)、モノイソプロピルアシッドホスフェート(イソプロピルホウ酸)、モノブトキシエチルアシッドホスフェート、モノベンジルアシッドホスフェート、4−クロロフェニルホウ酸、4−ヒドロフェニルホウ酸、1,4−フェニレンビスホウ酸、4−カルボキシルフェニルホウ酸などが挙げられる。これらのうち、無機粒子表面への反応性、化合物としての安定性、入手の容易さなどの理由から、モノフェニルアシッドホスフェート、モノエチルアシッドホスフェート、モノブチルアシッドホスフェート、モノブトキシエチルアシッドホスフェート、モノベンジルアシッドホスフェートが好ましい。
有機酸としての有機カルボン酸は、特に制限されず、公知の有機カルボン酸が使用できる。具体的には、式:(C(2n+1))Ph(COOH)(nは、1〜20の整数である)で表されるアルキルベンゾイックアシッドなどが挙げられる。より具体的には、パラ−n−ブチル−ベンゾイックアシッド、パラ−n−オクチルベンゾイックアシッド、パラトルエン酸、パラ−n−ドデシルベンゾイックアシッドなどがより好ましく使用される。
上記有機酸のうち、無機粒子に対する解膠能力を考慮すると、有機スルホン酸が高く、特にp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が最も高いため、好ましい。このような有機スルホン酸は、無機粒子が構成する金属原子がAlを含有する金属酸化物粒子である場合に、特に好ましく使用される。
本発明において、上記した有機酸としての、有機スルホン酸、有機リン酸、有機カルボン酸は、それぞれ、単独で使用されても若しくは2種以上の混合物の形態で使用されても、または各有機酸の1種若しくは2種以上を組合わせて使用されても、いずれでもよい。なお、ここでいう「2種以上」とは、例えば、ブトキシエチルアシッドホスフェートとp−トルエンスルホン酸のように化学種の異なるものを組み合わせてもよいし、また例えば、下記式(2):
Figure 2009120692
式中、mは1または2である、
で表されるブチルアシッドホスフェートにおいて、式中のmが1のものと2のものを混合して用いてもよいことを意味する。
本発明の樹脂組成物において、有機酸は、無機粒子と混合物の形態で存在しても、あるいは無機粒子の表面に化学結合した形態で存在してもいずれでもよい。後者の場合、有機酸の、無機粒子への化学結合の形態は、本発明の目的を達成することが出来る限り特に制限されない。例えば、有機酸は、無機粒子に対して、共有結合、配位縮合、水素結合、静電気的な結合などのいずれの態様で結合していてもよい。また、有機酸の総てがこのような形態で結合している必要はなく、少なくとも一部が結合していればよい。
本発明の樹脂組成物における有機酸の含有量は特に制限されない。しかしながら、無機粒子(特にベーマイト粒子の場合には、ベーマイト粒子表面の水酸基)に対して、10〜50mol%であることが好ましく、さらに好ましくは15〜30mol%、特に好ましくは15〜25mol%の範囲である。または、有機酸の含有量は、無機粒子の質量に対して、1〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは10〜35質量%、特に好ましくは20〜30質量%の範囲である。有機酸の含有量が下限を下回る場合には、疎水化が足りない可能性がある。逆に、有機酸の含有量が上限を超えると、アミド基と結合可能な官能基(例えば、水酸基)が減少するため、ポリアミド樹脂中に無機粒子が十分均一に分散しきれない可能性がある。なお、上記に規定する有機酸の含有量は、これらを単独で用いる場合には、当該化合物の含有量を表わし、2種以上を併用して用いる場合には、それらすべての化合物の合計含有量を言うものとする。また、有機酸の含有量は、TG−DTA、IR、NMR、GC−MSなどの装置を組み合わせて定性、定量することができる。
4.その他の成分
本発明の樹脂組成物は、上記したように、無機粒子、ポリアミド樹脂及び有機酸を必須に含む。本発明の樹脂組成物は、上記に加えて、必要に応じて、例えば、相溶化剤、酸化防止剤及び熱安定剤(例えばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、チオエーテル、及びこれらの置換体及びその組み合わせを含む)、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、べンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等)、滑剤、離型剤(例えばシリコン樹脂、モンタン酸及びその塩、ステアリン酸及びその塩、ステアリルアルコール、ステアリルアミド等)、染料(例えばニトロシン等)、顔科(例えば硫化カドミウム、フタロシアニン等)を含む着色剤、添加剤添着液(例えばシリコンオイル等)、結晶核剤(例えばタルク、カオリン等)、及び触媒(例えば金属、有機金属錯体)などを単独又は適宜組み合わせて添加することができ、さらに他の樹脂と任意の比率でブレンドしてもよい。
5.樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記したような3成分を含む以外は、特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは適宜組合わせてあるいは適宜修飾して同様にして適用できる。したがって、本発明の第二は、無機粒子と、アミド基密度が38.0wt%以下の半芳香族若しくは芳香族ポリアミド樹脂、またはアミド基密度が30.0wt%未満の脂肪族ポリアミド樹脂と、有機酸と、混合することを有する、本発明の樹脂組成物の製造方法を提供するものである。本発明の方法は、特に制限されない。例えば、上記3成分を単に混合する(すなわち、上記3成分が混合物の形態で存在する)方法であってもよい。あるいは、有機酸が表面に化学結合した形態の無機粒子とポリアミド樹脂とを混合する(即ち、ポリアミド樹脂と有機酸が表面に化学結合した形態の無機粒子との2成分が混合物の形態で存在する)方法であってもよい。これらの方法のうち、後者の方法が好ましい。より具体的には、以下の(i)または(ii)の方法が好ましく使用される。
(i)無機粒子を適当な溶媒に分散させてゾル1を作製する(第1工程)。次に、このようにして得られたゾル1に有機酸を加え、乾燥して、無機粒子/有機酸混合粉末を得る(第2工程)。さらに、得られた混合粉末とポリアミド樹脂とを溶融混練によりドライブレンドする(第3工程)。
(ii)無機粒子を溶媒に分散させてゾル1を作製する(第1工程)。次に、このようにして得られたゾル1を乾燥して粉末化した後、得られた粉末に有機酸を加えて、無機粒子/有機酸混合粉末を得る(第2’工程)。さらに、得られた混合粉末とポリアミド樹脂とを溶融混練によりドライブレンドする(第3工程)。
以下、本発明の樹脂組成物の製造方法の上記好ましい実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本発明の方法は、下記方法に制限されるものではない。
(i)および(ii)の第1工程では、無機粒子を適当な溶媒中に分散させてゾル1を調製する。このようなゾルを経ることで、無機粒子が均一に分散するため、次の第2工程での有機酸(表面改質剤)による改質効果を向上させることができる。ここで、溶媒としては、特に制限されないが、無機粒子表面の改質を阻害しないものが好ましい。具体的には、純水、水道水、イオン交換水等の水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の、低級アルコール;テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、メチレンクロライドなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらのうち、水および低級アルコールが好ましく、水および低級アルコールの水溶液がより好ましく、水、特に純水が特に好ましく使用される。または、第1工程において、溶媒として水を使用する(すなわち、水ゾルを作製する)場合には、無機粒子の水ゾルは、市販品を使用してもよく、例えば、触媒化成工業株式会社製の水分散ベーマイト(商品名:Cataloid−AS−3;ベーマイトの長軸長さ100nm、短軸長さ10nm、水分散ベーマイト中の固形分7wt%、比重1.05)などが好ましく使用できる。また、上記第1工程において、無機粒子のゾル1中の含有量は、特に制限されないが、好ましくは、無機粒子が溶媒中に1〜10質量%、より好ましくは5〜10質量%程度の濃度になるように分散されることが好ましい。
なお、第1工程において、ゾル1中の無機粒子の均一性を向上させるために、ゾル1を攪拌および/または超音波分散することが好ましい。
(i)の第2工程では、上記第1工程で得られたゾル1に、有機酸を加え、攪拌後、乾燥して、無機粒子/有機酸混合粉末を得る。当該工程では、有機酸をゾル1に添加して、無機粒子の表面を有機酸で改質する。これにより、次の第3工程でポリアミド樹脂と混合する際の、無機粒子表面とポリアミド樹脂との濡れ性(化学的マッチング)が向上し、溶融混練時の無機粒子の分散性を向上させることができる。
ここで、有機酸の添加形態は、特に制限されず、有機酸を固体の状態であるいは液体の状態のいずれの状態で添加してもよいが、好ましくは固体の状態で添加する。後者の場合には、有機酸は、上記第1工程で使用される溶媒に、溶解、分散、または懸濁されうる。この際の有機酸の濃度は、特に制限されず、上記したような無機粒子との割合になるように適宜選択される。また、上記第2工程において、有機酸のゾル1への添加量は、特に制限されず、上記したような無機粒子との割合になるように適宜選択されうる。好ましくは、有機酸を、無機粒子の質量に対して、5〜50質量%、より好ましくは20〜30質量%程度の濃度になるように添加することが好ましい。なお、この際、有機酸がゾル1中で均一に存在できるように、有機酸をゾル1に添加しながらあるいは添加した後に、攪拌および/または超音波分散することが好ましい。
次に、有機酸をゾル1に添加し、攪拌した後、得られた混合物を乾燥して、無機粒子/有機酸混合粉末を得る。これにより、少なくとも一部の無機粒子の表面が有機酸で改質されるが、得られた無機粒子改質産物は粉末の形態となる。このように粉体を経ることで溶剤の使用量を低減でき、工業生産性を向上することができる。ここで、乾燥方法は、ゾル1由来の溶媒を除去できる方法であれば特に制限されず、第1工程で使用される溶媒の種類によって適宜選択されうる。例えば、第1工程で水を溶媒として使用する場合には、フリーズドライ、スプレードライなどの方法によって、水分を除去して、粉末状の改質粒子を得ることが好ましい。また、第1工程で低級アルコールなどの他の溶媒を使用する場合には、スプレードライ、加熱乾燥などの方法によって、溶媒を除去して、粉末状の改質粒子を得ることが好ましい。
また、(ii)の第2’工程では、上記第1工程で得られたゾル1を乾燥して粉末化した後、得られた粉末に有機酸を加えて、無機粒子/有機酸混合粉末を得る。当該工程では、ゾル1を粉末化した後、有機酸を添加して、無機粒子の表面を有機酸で改質する。これにより、第2’工程は、ほとんど固体(粉体)状態で操作が行われるため、溶剤の使用量を低減でき、工業生産性を向上することができる。また、次の第3工程でポリアミド樹脂と混合する際の、無機粒子表面とポリアミド樹脂との濡れ性(化学的マッチング)が向上し、溶融混練時の無機粒子の分散性を向上させることができる。
ここで、ゾル1の乾燥方法は、ゾル1から溶媒が除去できる方法であれば特に制限されず、例えば、フリーズドライ、スプレードライ、加熱乾燥などの公知の方法が、第1工程で使用される溶媒の種類によって、適宜選択されうる。例えば、第1工程で水を溶媒として使用する場合には、フリーズドライ、スプレードライなどの方法によって、水分を除去して、粉末状の粒子を得ることが好ましい。また、第1工程で低級アルコールなどの他の溶媒を使用する場合には、スプレードライ、加熱乾燥などの方法によって、溶媒を除去して、粉末状の粒子を得ることが好ましい。これらのうち、スプレードライが好ましい。この方法によると、無機粒子を細かい粉末として得られるため、これに有機酸を添加すると、無機粒子の表面が効率よく有機酸で改質できる。
次にこのようにして粉末化されたものに有機酸を添加して、無機粒子/有機酸混合粉末を得る。これにより、少なくとも一部の無機粒子の表面が有機酸で改質される。
ここで、有機酸の添加形態は、特に制限されず、有機酸を固体の状態であるいは液体の状態のいずれの状態で添加してもよいが、得られた無機粒子改質産物をそのまま粉末の形態とするためには、固体の状態で添加することが好ましい。後者の場合には、有機酸は、上記第1工程で使用される溶媒に、溶解、分散、または懸濁されうる。この際の有機酸の濃度は、特に制限されず、上記したような無機粒子との割合になるように適宜選択される。この場合には、溶媒の除去操作を行う必要があるが、この溶媒の除去操作には、上記第1工程で記載したのと同様の方法が使用できる。また、有機酸の添加方法は、特に制限されないが、有機酸を無機粒子に噴霧する方法、有機酸と粉末化物を攪拌などによってよく混合するなどの方法が使用できる。これらの方法のうち、粉末化したものの表面に均一に添加できることを考慮すると、有機酸を無機粒子に噴霧することが好ましい。
上記第2’工程において、有機酸の粉末化したものへの添加量は、特に制限されず、上記したような無機粒子との割合になるように適宜選択されうる。好ましくは、有機酸を、無機粒子の質量に対して、5〜50質量%、より好ましくは20〜30質量%程度の量となるように添加することが好ましい。
次に、第3工程において、上記(i)の第2工程または(ii)の第2’工程によって得られた無機粒子/有機酸混合粉末とポリアミド樹脂とを溶融混練によりドライブレンドする。ここでは、無機粒子/有機酸混合粉末とポリアミド樹脂のペレット若しくは顆粒状粉を任意の配合量にて、二軸押出機により溶融混練し、ペレット状樹脂組成物を得る。尚、ここでいう二軸押出機は通常のものの他に深溝型のスクリュを用いた高トルク、高速成形タイプの二軸混練機を適宜選択できる。このような方法によれば、ポリアミド樹脂と無機粒子/有機酸混合粉末とをせん断応力によって均一にブレンドすることができ、また、脱泡やポリアミド樹脂の分子配向を抑制することができる。
第3工程において、無機粒子/有機酸混合粉末とポリアミド樹脂との混合比は、上記したような組成になるような割合であれば特に制限されない。好ましくは、無機粒子/有機酸混合粉末とポリアミド樹脂との混合比(質量比)は、ポリアミド樹脂を、無機粒子/有機酸混合粉末 100質量部に対して、28〜8233質量部の量、混合するような割合である。より好ましくは、ポリアミド樹脂を、無機粒子/有機酸混合粉末 100質量部に対して、156〜1567質量部の量、混合する。
上記方法によって本発明の樹脂組成物が製造できる。本発明の樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましくは10000〜30000g/mol、より好ましくは12000〜25000g/molの範囲である。このような範囲であれば、ポリアミド樹脂の加水分解が有意に抑制される。このため、樹脂組成物から製造される製品は、十分な強度、熱安定性に加えて、優れた表面平滑性、成形性、成形自由度などを発揮できる。なお、樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、後述する実施例の測定方法と同様の方法を用いて算出する。
このようにして得られた樹脂組成物は、射出成形機若しくはインジェクションプレス機などを用いて任意の形状に成形することにより、所望の形状の製品が得られる。ここで、本発明の樹脂組成物は、上述したように、従来のポリアミド樹脂に比して、より低濃度で同等以上の強度が得られ、表面平滑性や成形性に優れる。また、本発明の樹脂組成物は、成形性の自由度が著しく向上できる。このため、本発明の樹脂組成物を用いることによって、従来のポリアミド樹脂を使用した場合に比して、より自由な部品の設計が可能であるため、部材の新規な開発が可能となる。本発明の樹脂組成物の用途としては、特に制限されないが、例えば、自動車用部材についてはエンジンフードとバンパーの一体部材、若しくはエンジンフード/バンパー/フェンダーの一体部材などが挙げられる。また、従来では異なる材料、複数の部材によって構成されているこれらの部材を一体部材化することができる。ゆえに、本発明の樹脂組成物を用いることにより、製造コストの低減とこれまでにない斬新なデザインを付与することが可能となる。
また、本発明の樹脂組成物を使用して所望の形状の製品を得ようとする場合には、製品の寸法精度に優れた成形を行なうことができる。特に、大型製品の場合には、成形品の厚み誤差が生じ易いため、4軸の圧力制御の可能なインジェクションプレス成形機を用いた成形を行なう。このような場合にあっても、寸法精度の優れた製品が製造できる。その他にも、本発明の樹脂組成物は、得たい成形体に応じて、真空微量混練押出機、ラボプラストミル等の方法をも適宜適用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、成形性に優れるため、成形法も、特に限定されることなく、目的とする部品形状や求められる性能によって、様々な方法から適宜選択することができる。例えば、このような成形法としては、以下に制限されるものではないが、例えば、射出成形、押出成形、インジェクションプレス、熱プレス、ブロー成形などが挙げられる。
以下、実施例および比較例により本発明の実施の形態をより詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明において採用した分析方法および分析機器は下記の通りである。
(1) 粒子形状、粒子径
透過型電子顕微鏡(TEM)にて、粒子形状を観察した。
<観察方法1(粒子形状)>
試料を純水(2段蒸留水)にて希釈後、超音波洗浄器にて15分間かけた。その後銅メッシュ上の親水処理済カーボン被覆コロジオン膜に試料を塗布し、乾燥させ観察試料を準備した。透過型電子顕微鏡にてその試料の電子顕微鏡像を120KV、70mA、10万倍にて撮影して、観察した。
<観察方法2(樹脂組成物中の二次凝集)>
成形後の試験片の一部から、ウルトラミクロトームを用い超薄切片を作製した。透過型電子顕微鏡にて、その試料の電子顕微鏡像を200kV、10万倍にて撮影して、観察した。
<観察方法1、2の共通の条件>
・TEM用銅メッシュ:マイクログリット150−Bメッシュ、カーボン補強済み 応研商事株式会社
・透過型電子顕徹鏡:JEOLJEM−1200EXII 日本電子株式会社
<観察方法1(粒子形状)>
透過型電子顕微鏡にて撮影した写真を市販のスキャナーで電子データとして取り込み、市販のパソコン上で長さを測るソフトを用いて粒子径を測定した。短軸径、長軸径、厚さ、一辺の長さ共にそれぞれ無作為に100個体選び、測定しその平均値とした。尚、粒子の長軸に垂直方向の断面形状に関する寸法は、10万倍拡大のTEM画像中にて画像面に対して長軸が垂直の位置関係にある粒子を無作為に10個体選び、測定し、その平均値とした。なお、上記において、粒子は、前処理のミクロトームにより、粒子が切断されて断面構造がわかるものを使用した。
ソフト名:Scion Image for Whindows(登録商標)Scion corp.
<観察方法2(樹脂組成物中の二次凝集)>
透過型電子顕微鏡にて撮影した写真を市販のスキャナーで電子データとして取り込み、市販のパソコン上で長さを測るソフトを用いて二次凝集径を測定した。1.5μm四方の範囲内にて短軸方向に100nm以上の凝集径を持つものの有無を測定した。
ソフト名:Scion Image for Whindows(登録商標) Scion corp.
(2) 無機粒子及び粒子表面改質量の定性、定量
TG−DTA、NMRを用いて行なった。
<分析条件>
TG−DTA:TG−DTA20(セイコーインスツルメンツ(株)製)にて、室温〜900℃、昇温速度10℃/分の条件で灰分を測定した。
NMR:日本電子(株)製JNMLA−400にて、H、13Cスペクトルを測定し、定性した。測定溶媒として重クロロホルムを用いた。
(3) ベーマイト表面の水酸基量の測定
ベーマイト表面の水酸基量を正確に測定する分析技術は未だ開発されていないが、水酸基密度に関しては、文献によると結晶工学的にC軸のAl−O−Alの間隔(3.69Å)から、約7個/nmと見積もられる。そこで、以下の窒素吸着法によって測定される比表面積の値と、上述の水酸基密度の積により、粒子の単位重量あたりの水酸基量が算出され、これに対して上述の有機酸の添加量を決定する。
<分析条件>
窒素吸着法による吸着等温線の測定を行い、これからBET法によって比表面積を求めた。窒素吸着測定:カンタークローム社製 オートソーブ3Bにて、試料を120℃×6時間、真空下(約1.3Pa以下)で保持した後、吸着ガスとして窒素をフローし、吸着等温線を得た。
(4)重量平均分子量測定
得られた樹脂組成物を乾燥して粒状にし、加熱プレス成形したものを測定試料とした。この測定試料を20℃のヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、0.25wt%の溶液を作製した。本溶液を0.5μmフィルターでろ過した溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPC)に供試し、分子量を測定した。測定条件は、以下のとおりであった。重量平均分子量の算出は、標準ポリスチレンの検量線から行なった。
<測定条件>
装置:TOSOシステム8000(トーソー(株)製)
カラム:GPC HFIP−806M(昭和電工(株)製)×2本
流速:1ml/min
検出:UV(254nm)検出
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール
注入量:200μl。
(5) 機械的物性(力学試験)
得られた樹脂組成物のペレットを、射出成形してダンベル試験片を得る。試験片はISO TYPE A(多目的試験片)である。得られた試験片について、曲げ試験、引張試験、熱線膨張係数、Izod衝撃試験を、以下のようにして行なった。
・曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠し、オートグラフ(島津製作所(株)製、DSC−10T)で計測した。
・引張試験は、JIS K7161に準拠し、引張試験機(インストロン(株)製、デジタル材料試験機5881型)を用いて、試験速度1mm/min(±20%)にて測定した。
・熱線膨張係数は、JIS K7197に準拠し、ダンベル試験片の中央部(ストレート)をMD方向に切り出し、熱機械測定装置(セイコー電子工業(株)製、TMA120C)で計測した。
・IZOD衝撃強度は、JIS K7110に準拠し、IZOD衝撃試験装置(安田精機社製 95−LFR)で切欠き入り、23℃にて測定した。
(6) 粒子の合成
針状ベーマイト粒子の合成
機械攪拌機を備えたテフロン製ビーカーに、塩化アルミニウム六水和物(2.0M,40ml,25℃)を入れ、恒温槽で10℃に保ちつつ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(5.10M,40ml,25℃)を約6分かけて滴下した。滴下終了後、さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH=7.08)。溶液をテフロンライナーを備えたオートクレーブに代え、密栓し、オーブンで120℃、24時間経時させた(第1の熱処理)。第1の熱処理の終了後、前記オートクレーブをオイルバスヘ移し、180℃、30分間加熱した(第2の熱処理)。第2の熱処理終了後、前記オートクレーブを流水へ入れ、急速冷却(約10℃)をした(第3の熱処理)。第3の熱処理終了後、前記オートクレーブを再びオーブンヘ入れ150℃で、1日加熱を続けた(第4の熱処理)。その後、前記オートクレーブを流水で冷やし、遠心分離(30000rpm,30min)で上澄み除去後、遠心水洗3回、水メタノール混合溶液(体積比 水:メタノール、0.5:9.5)遠心洗浄を1回行なった。その後、凍結乾燥機を用いて乾燥させることにより、無色結晶(A)を得た。この無色結晶(A)は、X線回折の結果、針状ベーマイトであることが判明した。また、TEMを用いて粒子のサイズを調べたところ、平均長軸長さが199nm、平均短軸長さ(径)が4.8nm、アスペクト比が約41.5の針状であることが判明した。
(7)実施例の製造方法
実施例1
上記(6)の操作にて得た無色結晶(A)1kgを純水19kgに添加し、粒子5wt%の分散ゾルとしたものをよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけることで、水に分散した針状ベーマイト粒子水ゾル20kgを得た。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子水ゾルに、ドデシルベンゼンスルホン酸(東京化成株式会社製)を190g(粒子重量(TG−DTA分析によるアルミナ換算重量)に対して19wt%の割合)添加し、よく攪拌した。その後、超音波分散機に90分間かけた。この処理を行うことにより、純水に分散した針状ベーマイト粒子改質水ゾルを得た。また、前記分散溶液を濃縮、乾燥し、TG−DTAを用いて粒子上に吸着している改質剤量を確認すると、粒子重量に対して19.0wt%であった。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子改質水ゾルについて、液体窒素により凍結させた後、フリーズドライ装置(東洋技研株式会社製、TFD−250LF2)にて−60℃、12時間の条件で乾燥を行なった。この処理を行うことにより、針状ベーマイト粒子改質粉末1.19kgを得た。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子改質粉末1.19kgと、半芳香族ポリアミド樹脂としてのPA 6T/6I 8.81kgを真空乾燥機にて、0.01MPa、100℃、4時間乾燥した。その後、得られた混合物を、同方向回転二軸混練機(日本製鋼所製、深溝、ダイス6穴、メッシュなし)を用いて溶融混練した。これにより混練済み樹脂組成物を約7kg得た。なお、半芳香族ポリアミド樹脂としてのPA 6T/6Iとしては、エムスケミー・ジャパン株式会社製、ノバミットX21)(アミド基密度:35.0wt%)を使用した。
上記操作にて得られた混練済み樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、FN2000、射出型式25A、スクリュー径40mm)を用いて、射出成形し、ダンベル試験片を得た。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。なお、下記表2において、「DR法」は、ドライブレンド法を意味する。
実施例2
実施例1において、溶融混練の工程でノバミットX21の代わりに、脂肪族ポリアミド樹脂としてのPA 12(エムスケミー・ジャパン株式会社製、GRILAMID TR 55)(アミド基密度:21.8wt%)を用いた点以外は、同じ方法で作製した。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。
実施例3
実施例1において、溶融混練の工程でノバミットX21の代わりに、脂肪族ポリアミド樹脂としてのPA 12(エムスケミー・ジャパン株式会社製、GRILAMID L20G)(アミド基密度:21.8wt%)を用いた点以外は、同じ方法で作製した。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。
実施例4
上記操作(6)の操作にて得た無色結晶(A)2kgを純水38kgに添加し、粒子5wt%の分散ゾルとしたものをよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけることで、水に分散した針状ベーマイト粒子水ゾル40kgを得た。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子水ゾルに、ドデシルベンゼンスルホン酸(東京化成株式会社製)を380g(粒子重量(TG−DTA分析によるアルミナ換算重量)に対して19wt%の割合)添加し、よく攪拌した。その後、超音波分散機に90分間かけた。この処理を行うことにより、純水に分散した針状ベーマイト粒子改質水ゾルを得た。また、前記分散溶液を濃縮、乾燥し、TG−DTAを用いて粒子上に吸着している改質剤量を確認すると、粒子重量に対して19.0wt%であった。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子改質水ゾルについて、液体窒素により凍結させた後、フリーズドライ装置(東洋技研株式会社製、TFD−250LF2)にて−60℃、12時間の条件で乾燥を行なった。この処理を行なうことにより、針状ベーマイト粒子改質粉末2.38kgを得た。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子改質粉末2.38kgと、半芳香族ポリアミド樹脂としてのPA 6T/6I(エムスケミー・ジャパン株式会社製、ノバミットX21)(アミド基密度:35.0wt%)7.62kgを真空乾燥機にて、0.01MPa、100℃、4時間乾燥した。その後、得られた混合物を、同方向回転二軸混練機(日本製鋼所製、深溝、ダイス6穴、メッシュなし)を用いて、溶融混練した。これにより混練済み樹脂組成物を約7kg得た。なお、半芳香族ポリアミド樹脂としてのPA 6T/6Iとしては、エムスケミー・ジャパン株式会社製、ノバミットX21)(アミド基密度:35.0wt%)を使用した。
上記操作にて得られた混練済み樹脂組成物を射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、FN2000、射出型式25A、スクリュー径40mm)を用いて、射出成形し、ダンベル試験片を得た。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。
実施例5
実施例4において、溶融混練の工程でノバミットX21の代わりに、脂肪族ポリアミド樹脂としてのPA 12(エムスケミー・ジャパン株式会社製、GRILAMID TR 55)(アミド基密度:21.8wt%)を用いた点以外は、同じ方法で作製した。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。
実施例6
実施例4において、溶融混練の工程でノバミットX21の代わりに、脂肪族ポリアミド樹脂としてのPA 12(エムスケミー・ジャパン株式会社製、GRILAMID L20G)(アミド基密度:21.8wt%)を用いた点以外は、同じ方法で作製した。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。
比較例1
半芳香族ポリアミド樹脂としてのPA 6T/6I(エムスケミー・ジャパン株式会社製、ノバミットX21)(アミド基密度:35.0wt%) 7.62kgを真空乾燥機にて、0.01MPa、100℃、4時間乾燥後、同方向回転二軸混練機(日本製鋼所製、深溝、ダイス6穴、メッシュなし)を用いて、溶融混練した。これにより混練済み樹脂組成物を約8kg得た。
上記操作にて得られた混練済み樹脂組成物を射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、FN2000、射出型式25A、スクリュー径40mm)を用いて、射出成形し、ダンベル試験片を得た。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。
比較例2
比較例1において、溶融混練の工程でノバミットX21の代わりに、脂肪族ポリアミド樹脂としてのPA 12(エムスケミー・ジャパン株式会社製、GRILAMID TR 55)(アミド基密度:21.8wt%)を用いた点以外は、同じ方法で作製した。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。
比較例3
比較例1において、溶融混練の工程でノバミットX21の代わりに、脂肪族ポリアミド樹脂としてのPA 12(エムスケミー・ジャパン株式会社製、GRILAMID L20G)(アミド基密度:21.8wt%)を用いた点以外は、同じ方法で作製した。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。
比較例4
PCの樹脂組成物は上記のドライブレンドとは異なり、以下の溶剤法で作製した。
上記(6)の操作にて得た無色結晶(A)1kgを純水19kgに添加し、粒子5wt%の分散ゾルとしたものをよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけることで、水に分散した針状ベーマイト粒子水ゾル20kgを得た。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子水ゾルに、ドデシルベンゼンスルホン酸(東京化成株式会社製)を190g(粒子重量(TG−DTA分析によるアルミナ換算重量)に対して19wt%の割合)添加し、よく攪拌した後、超音波分散機に90分間かけた。この処理を行うことにより、純水に分散した針状ベーマイト粒子改質水ゾルを得た。また、前記分散溶液を濃縮、乾燥し、TG−DTAを用いて粒子上に吸着している改質剤量を確認すると、粒子重量に対して19.0wt%であった。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子改質水ゾルについて、液体窒素により凍結させた後、フリーズドライ装置(東洋技研株式会社製、TFD−250LF2)にて−60℃、12時間の条件で乾燥を行なった。この処理を行うことにより、針状ベーマイト粒子改質粉末1.19kgを得た。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子改質粉末1.19kgとTHF18.81kgをよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけることで、THFに分散した粒子分散液20kgを作製した。その後、この粒子分散液にポリカーボネート(株式会社三菱エンジニアリングプラスチックス製ノバレックス7030A)8.81kgを加え、エバポレータにて、1.3×10−3MPa、60℃、2.5時間減圧することで、THFを留去し、粗樹脂組成物10kgを得た。
上記操作にて得た粗樹脂組成物10kgを真空乾燥機にて、0.01MPa、120℃、4時間乾燥後、同方向回転二軸混練機(日本製鋼所製、深溝、ダイス6穴、メッシュなし)を用いて溶融混練した。これにより混練済み樹脂組成物を約8kg得た。
上記操作にて得られた混練済み樹脂組成物を射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、FN2000、射出型式25A、スクリュー径40mm)を用いて、射出成形し、ダンベル試験片を得た。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。
比較例5
PCの樹脂組成物は上記のドライブレンドとは異なり、以下の溶剤法で作製した。
上記(6)の操作にて得た無色結晶(A)2kgを純水38kgに添加し、粒子5wt%の分散ゾルとしたものをよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけることで、水に分散した針状ベーマイト粒子水ゾル40kgを得た。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子水ゾルに、ドデシルベンゼンスルホン酸(東京化成株式会社製)を380g(粒子重量(TG−DTA分析によるアルミナ換算重量)に対して19wt%の割合)添加し、よく攪拌した後、超音波分散機に90分間かけた。この処理を行うことにより、純水に分散した針状ベーマイト粒子改質水ゾルを得た。また、前記分散溶液を濃縮、乾燥し、TG−DTAを用いて粒子上に吸着している改質剤量を確認すると、粒子重量に対して19.0wt%であった。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子改質水ゾルについて、液体窒素により凍結させた後、フリーズドライ装置(東洋技研株式会社製、TFD−250LF2)にて−60℃、12時間の条件で乾燥を行なった。この処理を行うことにより、針状ベーマイト粒子改質粉末2.38kgを得た。
上記操作にて得た針状ベーマイト粒子改質粉末2.38kgとTHF37.62kgをよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけることで、THFに分散した粒子分散液40kgを作成した。その後、この粒子分散液にポリカーボネート(株式会社三菱エンジニアリングプラスチックス製ノバレックス7030A)7.62kgを加え、エバポレータにて、1.3×10−3MPa、60℃、2.5時間減圧することで、THFを留去し、粗樹脂組成物10kgを得た。
上記操作にて得た粗樹脂組成物10kgを真空乾燥機にて、0.01MPa、120℃、4時間乾燥後、同方向回転二軸混練機(日本製鋼所製、深溝、ダイス6穴、メッシュなし)を用いて溶融混練した。これにより混練済み樹脂組成物を約7kg得た。
上記操作にて得られた混練済み樹脂組成物を射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、FN2000、射出型式25A、スクリュー径40mm)を用いて、射出成形し、ダンベル試験片を得た。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。
比較例6
サンゴバン・セラミック・マテリアルズ株式会社製 ガラス繊維サーフェストランドREV4(直径13μm、長さ70μm)1kgと、半芳香族ポリアミド樹脂としてのPA 6T/6I(エムスケミー・ジャパン株式会社製、ノバミットX21)(アミド基密度:35.0wt%) 9kgを真空乾燥機にて、0.01MPa、100℃、4時間乾燥後、同方向回転二軸混練機(日本製鋼所製、深溝、ダイス6穴、メッシュなし)を用いて溶融混練した。これにより混練済み樹脂組成物を約8.5kg得た。
上記操作にて得られた混練済み樹脂組成物を射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、FN2000、射出型式25A、スクリュー径40mm)を用いて、射出成形し、ダンベル試験片を得た。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。なお、下記表2において、「GF」は、ガラス繊維を意味する。
比較例7
サンゴバン・セラミック・マテリアルズ株式会社製 ガラス繊維サーフェストランドREV4(直径13μm、長さ70μm)2kgと、半芳香族ポリアミド樹脂としてのPA 6T/6I(エムスケミー・ジャパン株式会社製、ノバミットX21)(アミド基密度:35.0wt%) 8kgを真空乾燥機にて、0.01MPa、100℃、4時間乾燥後、同方向回転二軸混練機(日本製鋼所製、深溝、ダイス6穴、メッシュなし)を用いて溶融混練した。これにより混練済み樹脂組成物を約8kg得た。
上記操作にて得られた混練済み樹脂組成物を射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、FN2000、射出型式25A、スクリュー径40mm)を用いて、射出成形し、ダンベル試験片を得た。この試料を用いて上記の方法にて、各種機械的物性の測定を行なった。結果を下記表2に示す。
Figure 2009120692
上記表2から、実施例1〜6の本発明の樹脂組成物は、比較例1〜7の樹脂組成物に比して、引張強度、引張破断点伸び、曲げ弾性率、IZOD衝撃値及び熱線膨脹係数の力学的バランスに優れることが分かる。
本発明の無機粒子の短軸径(長さ)及び短軸径(長さ)の取り方を模式的に表した概略図である。このうち、図1Aは、異方性を示す中実粒子の短軸径(長さ)及び短軸径(長さ)の取り方を模式的に表した概略図である。図1Bは、異方性を示す中空粒子の短軸径(長さ)及び短軸径(長さ)、中空円筒もしくは中空角柱の長さ及び短軸の径の取り方を模式的に表した概略図である。
符号の説明
11 無機粒子、
L1 無機粒子の長軸径(長さ)、
L2 無機粒子の短軸径(長さ)、
L3 無機粒子の中空円筒もしくは中空角柱の長さ、
L4 無機粒子の中空円筒もしくは中空角柱の短軸の径、
La 無機粒子の短軸方向の断面の長径、
Lb 無機粒子の短軸方向の断面の短径、
La 無機粒子の中空円筒もしくは中空角柱の短軸方向の中空断面の長径、
Lb 無機粒子の中空円筒もしくは中空角柱の短軸方向の中空断面の短径。

Claims (12)

  1. 無機粒子と、アミド基密度が38.0wt%以下の半芳香族若しくは芳香族ポリアミド樹脂、またはアミド基密度が30.0wt%未満の脂肪族ポリアミド樹脂と、有機酸と、を含む樹脂組成物。
  2. 前記脂肪族ポリアミド樹脂は、PA612、PA12及びPA11からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
    前記芳香族ポリアミド樹脂は、MPIAおよび/またはPPTAであり、または
    前記半芳香族ポリアミド樹脂は、PA6T、PA6I、PA6T/6I、PA6T/6I/66、PA6T/66、PAMXD6、PA9T、PA6T/M−5T、PA6T/6、PA PACM10及びPA PACM12からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記有機酸は、有機スルホン酸、有機リン酸及び有機カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記無機粒子は、構成する金属原子がAlを含有する金属酸化物粒子から選ばれる少なくとも一種の粒子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記無機粒子は、下記式(1):
    Figure 2009120692
    ただし、nは、0以上の整数である、
    で表される酸化アルミニウムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記酸化アルミニウムは、ベーマイト、α−アルミナ及びγ−アルミナから選ばれる少なくとも一種のアルミナである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記有機酸は、有機スルホン酸である、請求項4〜6いずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 前記有機スルホン酸は、ドデシルベンゼンスルホン酸および/またはp−トルエンスルホン酸である、請求項7に記載の樹脂組成物。
  9. 無機粒子と、アミド基密度が38.0wt%以下の半芳香族若しくは芳香族ポリアミド樹脂、またはアミド基密度が30.0wt%未満の脂肪族ポリアミド樹脂と、有機酸と、混合することを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
  10. 前記混合は、
    (i)無機粒子を溶媒に分散させてゾル1を作製し、前記ゾル1に有機酸を加え、乾燥して、無機粒子/有機酸混合粉末を得、さらに前記混合粉末とポリアミド樹脂とを溶融混練によりドライブレンドすることによって、
    または
    (ii)無機粒子を溶媒に分散させてゾル1を作製し、前記ゾル1を乾燥して粉末化した後、得られた粉末に有機酸を加えて、無機粒子/有機酸混合粉末を得、さらに前記混合粉末とポリアミド樹脂とを溶融混練によりドライブレンドすることによって、
    行なわれる、請求項9に記載の樹脂組成物の製造方法。
  11. 前記ゾル1を作製する工程において、前記溶媒は、水および/または低級アルコールであり、かつ前記乾燥は、フリーズドライまたはスプレードライによって行なわれる、請求項10に記載の樹脂組成物の製造方法。
  12. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物または請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法によって製造される樹脂組成物を用いてなる自動車用部品。
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