JP2009118890A - 内視鏡用高周波処置具 - Google Patents

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Katsuzo Iyama
勝蔵 井山
Katsuaki Ohashi
克章 大橋
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Abstract

【課題】内視鏡の処置具挿通チャンネルを高周波処置具の挿入経路だけでなく、吸引用の通路としても利用することができ、しかも粘膜の切開や剥離等の処置を行う際に、高周波ナイフの部位を安定的に保持できるようにする。
【解決手段】高周波処置具1は、内部に高周波電流が印加される電極部材13が出没可能となった可撓性シース2を有し、この可撓性シース2は内視鏡30の処置具挿通チャンネル34に挿通され、その間の径差により円環状の吸引用通路36が形成され、可撓性シース2の外周面には突出部17が円周方向に等しい間隔で4箇所設けられ、各突出部17が処置具挿通チャンネル34の内周面と摺接することになり、この部位では円弧状通路部18が形成され、可撓性シース2の処置具導出口34aから最長導出状態となっても、突出部17の一部が処置具挿通チャンネル34内に残る。
【選択図】図7

Description

本発明は、内視鏡の処置具挿通チャンネル内に挿通されて、病変粘膜部分を切開及び剥離して除去する等の処置を行うために用いられる内視鏡用高周波処置具に関するものである。
内視鏡検査によって、食道,胃,十二指腸,大腸等の体腔内壁における粘膜部分に腫瘍等といった病変部が発見されると、病変粘膜を切除する処置が施される。この処置のひとつとして、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic Submucosal Dissection)と呼ばれる処置がある。このESD処置は、まず粘膜のうち、切除しようとする部位をマーキングして、局注により病変粘膜の部位を膨隆させ、次いで高周波処置具を用いてマーキング領域に沿って粘膜を切開して、粘膜下層を構成する線維を切断して粘膜を筋層から剥離するようにして行われる。
以上のESD処置に用いられる高周波処置具は、棒状部を有する電極部材からなる高周波ナイフを可撓性シース内に装着する構成としたものである。可撓性シースの基端部には操作手段が連結されており、この操作手段によって高周波ナイフを可撓性シースの先端から突出させる。そして、高周波ナイフに通電することによって、粘膜の切開及び剥離を行うことができる。このESDに用いられる高周波処置具を構成する高周波ナイフとしては、電極部材を真っ直ぐ延在させた針状ナイフと、棒状の電極部材の先端に大径電極部を連設するかまたは先端を概略L字状に曲折することによりフック部を形成したフックナイフとがある。針状ナイフは、粘膜を突き刺すために使用するのに最適なものであり、また電極部材を水平移動させたり、スイング動作させたりすることによって粘膜等の切開や剥離を行うことができる。一方、フックナイフは粘膜等を先端のフック部で引っ掛けて、引き込むように動作させることにより、粘膜の切開や剥離を行うことになる。
例えば、特許文献1に、フックナイフ方式の高周波ナイフを有する高周波処置具を内視鏡の処置具挿通チャンネルを介して体腔内に挿入して、粘膜を切開したり、剥離したりする処置を行うようにしたものが開示されている。可撓性シースに装着される高周波ナイフは、棒状電極の先端にフック部として機能する円形若しくは三角形状の板状電極を連設して設けたものであり、棒状電極は可撓性シースの先端に設けた先端チップを貫通して延在されている。この高周波処置具は、内視鏡の処置具挿通チャンネルを介して体腔内に挿入されるものであり、この処置具挿通チャンネルの先端開口部から可撓性シースを突出させて、この可撓性シースに挿通されている高周波ナイフを押し引き操作することによって、粘膜等を高周波ナイフの先端部分に引っ掛けて、処置具挿通チャンネル内に引き込むように操作し、次いで通電することにより組織を切断し、もって粘膜の切開や剥離が行われる。また、この特許文献1の構成にあっては、可撓性シース内に給液路が形成されており、切開された部位から出血があると、給液路から可撓性シースの先端に装着した先端チップに設けた開口から生理食塩水を噴出させるようになし、もって出血部分を洗い流すことができるようにしており、またその後に先端の板状電極を出血部に押し当てて凝固させることによって、止血を行えるようにしている。
一方、針状乃至棒状の高周波ナイフ(以下、針状高周波ナイフという)は、特許文献2及び特許文献3に示したようなものが従来から知られている。この種の針状高周波ナイフは可撓性シース内に挿通され、内視鏡の処置具挿通チャンネル内に挿通される可撓性シースの内部で押し引き操作できる構成としている点では、前述したフックナイフ構造のものと同様である。ただし、針状高周波ナイフの場合には、先端に膨出部が存在しないことから、可撓性シースを処置具挿通チャンネル内に通す際等においては、針状ナイフの全体を可撓性シースの内部に完全に引き込んだ状態とすることができる。そして、特許文献2にあっては、針状ナイフの周囲から給液を行うことができるようになっており、特許文献3では、可撓性シースに針状ナイフを挿通させる通路と、給液用の通路とを別個に設ける構成としている。
特開2004−313537号公報 特開2006−325785号公報 特開2006−187474号公報
ところで、粘膜剥離を正確に行うには、処置の対象となる病変粘膜の部位を内視鏡観察手段の視野内に鮮明に捉える必要がある。この粘膜に体液の付着等による汚れがあると、例えば生理食塩水を用いた灌流を行うことによって、処置対象とする粘膜を洗浄するのが望ましい。また、処置を行う際に発生する出血部分を洗い流すためにも、生理食塩水を供給することも必要となる。さらに、可撓性シースの先端から給水を行うだけでなく、体内からの吸引も必要となる。内視鏡において、吸引は処置具挿通チャンネルを介して行われるのが通常である。例えば挿入部に2つの処置具挿通チャンネルを形成する構成としたものもあるが、2チャンネル方式とすると、挿入部がその分だけ太径化することになる。
以上のことから、単一の処置具挿通チャンネルにより、高周波処置具の挿通経路としてだけでなく、吸引用の通路としても機能させるのが望ましい。ここで、処置用の内視鏡にあっては、処置具挿通チャンネルの内径は、通常、3.8mm程度であり、また汎用内視鏡の場合には、処置具挿通チャンネルは約2.8mmの内径を有するものが用いられる。そして、フックナイフ方式の高周波処置具でも、また針状ナイフ方式の高周波処置具でも、その可撓性シースの外径寸法は、通常2.4mm〜2.6mm程度であり、この高周波処置具の外径と処置具挿通チャンネルの内径との径差による隙間を吸引用の通路として利用することができる。そして、高周波処置具の外径をさらに小さくすれば、吸引経路をさらに拡大することができ、吸引作業をより効率的に行うことができる。
ただし、高周波処置具と処置具挿通チャンネルとの間に大きな径差を持たせると、処置の実行時に、径差を持たせた分だけ高周波処置具の位置及び作動が不安定になる。通常、高周波処置具における高周波ナイフは、内視鏡の挿入部を押し引き操作し、また挿入部における湾曲部を湾曲操作することにより制御するが、処置具挿通チャンネルと可撓性シースとの径差分だけ任意の方向に動き得る状態となる。従って、挿入部を所定の方向に向けたときにも、高周波ナイフの位置が安定せず、その結果、処置すべき箇所への狙撃性が悪くなり、正確な処置を行うことができないことがある。
特許文献1のように、フック部を構成する板状電極で病変粘膜乃至その近傍の部位を引っ掛ける動作や、引っ掛けた粘膜を引き込む動作を行うに当って、これらの動作が正確に行われないと、処置に多大の時間を要することになり、また必要以上の広い範囲の粘膜が切開されたり、本来切開して除去すべき部位を取り残したりする可能性も否定できない。また、特許文献2及び特許文献3の針状ナイフ方式においては、針状乃至棒状の電極部材で粘膜を突き刺すように操作され、また粘膜剥離は電極部材を水平移動させたり、スイング動作させたりすることにより行われるので、内視鏡の処置具挿通チャンネル内での電極部材の位置の安定性はさらに強く求められる。
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、内視鏡の処置具挿通チャンネルを高周波処置具の挿入経路だけでなく、吸引用の通路としても利用することができ、しかも粘膜の切開や剥離等の処置を行う際に、高周波ナイフの部位を安定的に保持できるようにすることにある。
前述した目的を達成するために、本発明は、本体操作部に設けた処置具導入部に一端が接続され、他端は挿入部の先端に開口した処置具導出口に接続され、また前記本体操作部内で吸引路に連通した内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通され、可撓性シースの内部に高周波電流が印加される電極部材が設けられ、この電極部材は前記可撓性シースの先端から出没可能となった高周波処置具であって、前記可撓性シースと前記処置具挿通チャンネルとの間に径差を持たせることにより、前記可撓性シースを前記処置具挿通チャンネル内に挿通させて、前記吸引路に負圧吸引力を作用させたときに、これら可撓性シースと処置具挿通チャンネルとの間に円環状の吸引用通路が形成される構成となし、前記可撓性シースの先端側外周面に軸線方向に向けて前記処置具挿通チャンネルの内周面と摺動する複数個所の突出部を形成することによって、前記吸引用通路の先端側部位が円弧状通路部に分割され、前記突出部は、前記可撓性シースが前記処置具導出口から最長導出状態になったときにも、その一部が前記処置具挿通チャンネル内に位置する軸線方向の長さを持たせる構成としたことをその特徴とするものである。
高周波処置具としては、可撓性シースと電極部材からなる高周波ナイフとを有する構成としたものであり、電極部材は、針状乃至棒状のものからなる針状ナイフ方式のもの、板状または棒状の先端をL字状乃至U字状に曲成したフックナイフ方式のもののいずれにも適用可能である。また、可撓性シースに給液手段を設けたものであっても、また給液手段を備えていないものであっても良い。例えば、内視鏡にウォータジェット等の噴射手段からなる他の給液経路を有する構成としている場合には、高周波処置具側に給液手段を設けなくても良い。そして、給液手段としては、電極部材の導出部の周囲から液体を供給するもの、可撓性シースの内部において、電極部材の挿通経路とは別個の液体供給路を設けたもの等の構成とすることができる。
可撓性シースの外周面のうち、突出部を設けていない部位の直径と、処置具挿通チャンネルの内周面との径差はできるだけ大きくする。即ち、高周波処置具としての構造や機能上での制約及び操作性等を配慮した上で、できるだけ細径のものとする。これによって、円環状となった吸引用通路の通路断面積が大きくなる。そして、可撓性シースの先端側外周面に突出部を設けることによって、この吸引用通路が複数の円弧状に分割される。分割数は最低限2箇所とし、分割数に上限はないが、構成の簡略化及び通路断面積の確保等の点から、円周方向に等しい間隔で3〜8箇所程度の突出部を設けるのが望ましい。また、突出部の左右の壁は必ずしも半径方向に向けたものだけでなく、斜め方向の壁,曲面形状の壁等、任意の形状とすることができる。さらに、突出部の断面形状としては、概略三角形状とすることもできる。
突出部は処置具挿通チャンネルの内周面と当接するようになっており、可撓性シースを処置具挿通チャンネルから導出させたときに、その直進性を確保し、捩じれや振れ等が発生することなく、安定的に保持するためには、突出部の処置具挿通チャンネル内面への接触面をできるだけ広くする方が望ましい。ただし、吸引用通路の通路断面積が著しく制限される程度にまで突出部の幅を大きくしないようにする。また、突出部の軸線方向の長さは、可撓性シースが処置具導出口から最長導出状態になったときにも、なお処置具挿通チャンネル内に位置して、その内面と当接する長さとする。高周波処置具の安定性という観点からは、突出部を十分な長さ分だけ処置具挿通チャンネル内に位置させるようにするのが望ましいが、円弧状通路部をあまり長くすると、吸引効率が低下するので、突出部は、最長導出状態で高周波処置具の安定性が確保でき、かつ円弧状通路部をできるだけ短いものとする。
突出部は、可撓性シースと一体に形成することができ、また可撓性シースとは別部材で形成することもできる。可撓性シースとは別部材で形成する場合には、突出部には可撓性シースを構成する可撓性チューブとは異なる特性を持たせることができる。例えば、この突出部を低摩擦部材で形成すれば、可撓性シースを処置具挿通チャンネル内に挿通させる操作が良好となる。また、突出部は可撓性シースを構成する可撓性チューブより剛性の高い部材で形成することができ、この突出部を幅狭に形成しても、処置具導出口から導出された部位の安定性が確保され、また直進性及び保形性が良好になる。
高周波処置具を内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通させたときに、可撓性シース外面と処置具挿通チャンネル内面との間の隙間を吸引用の通路として機能させることができ、粘膜の切開や剥離等の処置を行う際に、可撓性シース及びそれに装着した電極部材からなる高周波ナイフを処置具挿通チャンネル内で安定的に保持させて、高周波ナイフの処置すべき箇所への狙撃性や操作の確実性,安定性が得られるようになる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に高周波処置具の全体構成を示し、図2にその要部拡大断面を示す。図中において、1は高周波処置具である。高周波処置具1は長尺の可撓性シース2を有し、この可撓性シース2の基端部には接続パイプ3が連結されており、この接続パイプ3の他端には操作手段4が連結されている。操作手段4は接続パイプ3に連結した本体軸4aと、この本体軸4aに嵌合させて軸線方向に摺動可能に設けたスライダ4bとから構成されている。スライダ4bには処置具本体10を構成する可撓性コード11の基端部が連結して設けられている。可撓性コード11は導電線の外周をフッ素樹脂でコーティングする等により電気絶縁部材で被覆したものから構成されており、その基端部はスライダ4bへの連結部から所定長さ突出して、接点部12が設けられている。従って、この接点部12は図示しない高周波電源装置に着脱可能に接続されることになる。
図2から明らかなように、処置具本体10を構成する可撓性コード11はスライダ4bへの接続部から、接続パイプ3の内部を通り、可撓性シース2内に延在されている。可撓性コード11の先端部からは導電線が直線状態で延在されており、この導電線の導出部分が針状の高周波ナイフを構成する電極部材13となっている。また、可撓性シース2の内部における先端部にはストッパ部材14が挿嵌されて、接着等の手段で固着されている。ここで、ストッパ部材14は電気絶縁性及び耐熱性の観点からセラミックから構成されている。このストッパ部材14の先端面は可撓性シース2の先端面と同じ位置に配設されており、従ってこれらストッパ部材14の先端面と可撓性シース2の先端面とによって先端基準面Fを形成している。ストッパ部材14の中心軸線の位置には、軸線方向に貫通するように挿通孔15が穿設されており、この挿通孔15の孔径は電極部材13の外径寸法より僅かに大きい寸法となっている。そして、ストッパ部材14の基端部は挿通孔15に向けた呼び込みテーパ部14aが形成されている。
処置具本体10における可撓性コード11から電極部材13への移行部または電極部材13の部位に規制部材16が取り付けられている。規制部材16は、少なくとも挿通孔15より大径の部材であり、従って処置具本体10を可撓性シース2内で前進させて、電極部材13が先端基準面Fから所定の長さ突出させた状態になると、規制部材16がストッパ部材14に当接して、電極部材13はそれ以上突出しないように規制されることになる。つまり、電極部材13の最突出位置が規定される。
図3には電極部材13を最も引き込んだ状態が、また図4には電極部材13が最も突出した状態が示されている。先端基準面Fからの電極部材13の最突出長さは処置の対象となる粘膜層の厚みに依存する。後述するように、粘膜層と筋層との間には粘膜下層が存在している。粘膜の切開及び剥離を行うのであるから、先端基準面Fを粘膜表面に当接させた状態で、電極部材13の突出長はこの粘膜層の厚み以上で、電極部材13の先端は筋層にまで到達しない長さ、即ち0.5mm〜4mm程度とされる。これにより、先端基準面Fを粘膜表面に当接させた状態で、電極部材13を最突出状態にまで突出させると、若しくは電極部材13を最突出状態にまで突出させた状態で、先端基準面Fを粘膜表面に当接させることによって、この電極部材13は確実に粘膜層を貫通し、しかも筋層までは届かないようになる。この電極部材13の押し引き操作は、操作手段4によって隔操作で行われる。なお、予め電極部材13を突出させている際には、この電極部材13が粘膜層に当接する際には、高周波電流を流すようにする。
さらに、この高周波処置具1には生体適合性のある液体、例えば生理食塩水,ヒアルロン酸ナトリウム等の供給手段を備えている。この供給手段は、図1から明らかなように、接続パイプ3に設けた接続口3aを有し、この接続口3aには送液タンク5からの送液配管6が着脱可能に接続される。そして、この送液配管6の途中には、フットスイッチ等の流路を開閉する切換手段7が設けられて、液体の供給制御が行われる。従って、接続パイプ3に連結されている可撓性シース2の内部が送液通路となる。ここで、処置具本体10を構成する可撓性コード11が可撓性シース2から接続パイプ3を経て操作手段4のスライダ4bに連結されているが、接続パイプ3内に可撓性コード11の周囲にシール部材20が装着されて、供給液体の逆流を防止している。
生理食塩水は可撓性シース2の先端から前方に向けて噴射される。このために、図5に示したように、可撓性シース2の内部に装着されているストッパ部材14の外周面には、円周方向に等間隔に複数箇所(図面においては3箇所)に溝が形成されており、これらの溝が生理食塩水の噴射通路21であり、噴射通路21はストッパ部材14の軸線方向における全長に及ぶ長さを有している。ここで、電極部材13を突出させると、規制部材16がストッパ部材14に当接することになるが、この規制部材16の外径寸法をストッパ部材14の外径寸法より小さくし、特に噴射通路21の溝底部を結ぶ円とほぼ同一の直径となるように設定すると、規制部材16がストッパ部材14に当接しても、噴射通路21を塞ぐことはない。
以上の構成を有する高周波処置具1は、図6に示したように、内視鏡30により例えば食道,胃,十二指腸,大腸等といった体腔内に導入されて、この体腔内壁を構成する粘膜部分に病変の有無を検査し、病変部と判断されたときには、病変粘膜部分に限定して、切開,剥離して取り出す処置、つまりESDの処置が行われる。
ここで、内視鏡30は、本体操作部31に体腔内への挿入部32を連結して設けたものであり、挿入部32は本体操作部31への連結部から所定の長さ分は軟性部32aで、この軟性部32aの先端には湾曲部32b、湾曲部32bの先端には先端硬質部32cとなっており、先端硬質部32cには、照明部及び観察部からなる内視鏡観察手段が装着されている。
図7に挿入部32の先端部分の断面を示す。この断面位置では観察部の構成が示されており、照明部は、通常、この観察部の左右両側に設けられる。観察部33は、周知のように、対物光学系33a、プリズム33b及び固体撮像素子33cから大略構成される。また、図7には処置具挿通チャンネル34も示されている。処置具挿通チャンネル34は、その先端部が先端硬質部32cの先端面に処置具導出口34aとして開口しており、また図6に示したように、処置具挿通チャンネル34の基端部は本体操作部31に設けた処置具導入部34bに通じている。さらに、本体操作部31内において、処置具挿通チャンネル34には分岐部が形成されており、この分岐部から処置具導入部34bに向かう通路の部分と、吸引源に接続した吸引路35に向かう通路の部分とに分岐している。
高周波処置具1を構成する可撓性シース2は処置具導入部34bから処置具挿通チャンネル34内に挿入されて、処置具導出口34aから所定長さ突出させて、各種の処置が行われる。ここで、高周波処置具1の可撓性シース2は処置具挿通チャンネル34内に挿入されて、処置具導出口34aから所定長さ導出させて、処置が行われることになる。図7には可撓性シース2の最長導出状態が示されている。処置を正確に、しかも安全に行うためには、この最長導出状態にしても、導出された可撓性シース2に振れや曲り等が発生することがなく、確実に処置具挿通チャンネル34の軸線方向に向けるようにしなければならない。
そして、可撓性シース2を挿通させた状態でも、体内からの吸引用の経路を確保するために、可撓性シース2と処置具挿通チャンネル34との間に形成される隙間を利用している。このために、可撓性シース2の外径と処置具挿通チャンネル34の内径との径差に基づいて円環状の吸引用通路36が形成される。
図8では、突出部17は可撓性シース2の外周面に、円周方向に等しい間隔で、つまり90度毎に4箇所設けられており、処置具挿通チャンネル34内に挿通された可撓性シース2は、それに設けた4箇所の突出部17が処置具挿通チャンネル34の内周面と当接している。その結果、処置具導出口34aから導出させたときにも、可撓性シース2は処置具挿通チャンネル34に規制されて、軸線と直交する方向や傾き方向に位置ずれすることはない。そして、相隣接する突出部17,17間には円弧状通路部18が4箇所形成されており、これら円弧状通路部18は、可撓性シース2の外周面と処置具挿通チャンネル34の内周面との間に形成されている円環状の吸引通路36と連通しており、従って円弧状通路部18も吸引用経路の一部として機能する。
前述したように、突出部17は、高周波処置具1の可撓性シース2を処置具挿通チャンネル34から処置具導出口34a内に挿通させたときに、吸引用経路を確保すると共に、可撓性シース2の姿勢を安定させる機能を発揮する。ここで、高周波処置具1や他の処置具は、処置具挿通チャンネル34の処置具導出口34aから導出させて、必要な処置を行うに当っては、処置の安全性を図り、被検者を保護するために、あまり長く導出させることはなく、最長導出長さが規制される。図7に示したのは、高周波処置具1における可撓性シース2の最長導出状態である。この最長導出状態でも、突出部17の一部が処置具挿通チャンネル34内に残るようになっている。従って、高周波処置具1の操作時に、つまり可撓性シース2を押し出したり、挿入部32の先端を振動乃至揺動させたりしても、可撓性シース2の処置具導出口34aから導出された部位の直進性が確保される。
ここで、突出部17は、処置具挿通チャンネル34内面と摺動するものであって、可撓性シース2と一体成形により形成するか、または別部材で形成して、接着剤等を用いて固着する。例えば、可撓性シース2を構成する可撓性チューブの材質が処置具挿通チャンネル34の内面に対して、滑りが悪いような場合には、突出部17を低摩擦部材で形成するか、または突出部17の表面に低摩擦材のコーティングを施すこともできる。さらに、突出部17を弾性部材で構成すれば、例えば内視鏡30の挿入部32における湾曲部32bが湾曲している状態となっているときには、突出部17が弾性変形しながらこの湾曲部32bを通過し、その後に速やかに直線状態に復元する。
以上の構成を有する高周波処置具1は内視鏡30の処置具挿通チャンネル34を介して体腔内に挿入される。そして、食道,胃,十二指腸,大腸等の体腔内壁に病変粘膜が存在する際に、この病変粘膜部を剥離して除去する処置を施すために用いられる。そこで、以下においては、この病変粘膜を切除するESD処置について説明する。この処置は、内視鏡で体腔内を検査した結果、粘膜の色調や形状の変化が存在して、この粘膜に病変部が存在していることが確認されたとき等において行われる。
まず、図9に示したように、切除すべき病変部Wが存在している粘膜に対して、その病変粘膜領域Rを囲むようにマーキングする。このマーキングする領域は、病変部を完全に取り除くことができ、しかも健康な粘膜部分に対してはダメージを最小限なものとするように設定される。そして、マーキングは、例えば、病変粘膜領域Rの周囲の所要箇所に焼灼スポットSを施すことにより行われるものであり、この焼灼スポットSを形成するために、高周波処置具1を用いることができる。高周波処置具1を用いてマーキングを行う際には、可撓性シース2からの電極部材13は、可撓性シース2の先端面と同じ位置か、若しくは僅かに突出する位置、例えば0.1mm以下という程度突出する位置とすることができる。
挿入部32の先端硬質部32cを病変粘膜領域Rの外縁部に対して所定の距離を隔てて対面させ、この状態で処置具挿通チャンネル34に、処置具導入部34bから高周波処置具1を挿入する。高周波処置具1の可撓性シース2は、外周面に複数箇所形成した突出部17のみが摺接し、可撓性シース2そのものは処置具挿通チャンネル34の内周面とは摺接することはない。従って、可撓性シース2を処置具挿通チャンネル34内に押し込むに当っては、その間に最小限の摺動抵抗しか生じず、挿入操作性が良好となる。なお、突出部17は可撓性シース2とは別部材で形成して、突出部17の部位を低摩擦部材で形成すれば、高周波処置具1の挿入操作をさらに容易に行うことができる。高周波処置具1は、その可撓性シース2の先端部を処置具導出口34aから所定長さ導出させて、先端基準面Fを粘膜表面に対して面接触させる。このときには、電極部材13は挿通孔15の内部に引き込んだ状態に保持しておくか、若しくは電極部材13を先端基準面Fから突出させておいても良い。
ここで、高周波処置具1の可撓性シース2の外周面には円周方向に等ピッチ間隔で4箇所の突出部17が設けられ、これらの突出部17が処置具挿通チャンネル34の内周面に当接しているので、処置具挿通チャンネル34から導出されている部位は直進性を保ち、振れたり、曲ったりすることはない。従って、粘膜への狙撃性が高くなり、粘膜における意図した位置に確実に当接させることができる。特に、可撓性シース2の外面に、その軸線方向に突出部17を設けられているので、この可撓性シース2の曲げ方向における強度が向上し、また長期間繰り返し使用しても、曲げ癖等が生じることはない。
この状態から、高周波処置具1の操作手段4を操作して、高周波ナイフを構成する電極部材13を突出させて、電極部材13に高周波電流を印加する。その結果、粘膜における電極部材13が接触している部位が焼灼されて、マーキングが施される。マーキングを行う際には、電極部材13は粘膜層を貫通させる必要はなく、挿入部32に設けた観察部33から得られる画像により認識できる程度にまで粘膜表面が焼灼させれば良く、最低限、電極部材13の先端部が粘膜表面と接触しておればマーキングが形成される。勿論、操作手段4をフルストロークさせて、電極部材13が可撓性シース2から最も突出した位置になっていても、この電極部材13が筋層と接触するおそれはない。なお、マーキングは他の処置具を用いて行うことができ、また粘膜における切除すべき領域が観察部33により認識できるようになっておれば、前述のように焼灼という手法を採らなくても良い。
次に、図10に示したように、病変粘膜領域Rの内部に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウム等の局注を行う。このためには、処置具挿通チャンネルから一度高周波処置具1を引き出し、これに代えて可撓性チューブの先端に注射針Nを設けた局注手段を処置具挿通チャンネルC内に挿通させる。ここで、筋層LBと粘膜層LUとの間には粘膜下層LMが存在しており、注射針Nは粘膜層LUを貫通して粘膜下層LMにまで刺入して生理食塩水を注入する。その結果、粘膜下層LMが膨出・隆起する。このように、粘膜下層LMを膨隆させるのは、粘膜層LUを筋層LBから離間させて、円滑かつ安全に処置を行うためである。
粘膜下層LMを十分膨隆させた後に、局注手段を処置具挿通チャンネルCから抜き出して、高周波処置具1を再び挿通させる。そして、高周波処置具1の可撓性シース2及びストッパ部材14の先端面で形成される先端基準面Fを病変粘膜領域Rの外縁部のいずれかに当接させる。ここで、先端基準面Fを粘膜層LMに正対させ、かつこの先端基準面Fを粘膜表面に軽く押し当て、極力押圧力を作用させないようにする。この先端基準面Fを粘膜層LMに当接する前の段階で、電極部材13を可撓性シース2の先端から突出させておいても良い。電極部材13を可撓性シース2から突出させた状態で、この電極部材13を粘膜層LMに当接させる場合には、電極部材13が粘膜層LMに接触するときには高周波電流が流れるようになし、電極部材13の粘膜層LMへの刺入動作はある程度時間をかけて行うようにする。
次に、電極部材13を可撓性シース2内に引き込んだ状態となっている場合には、操作手段4を操作して、電極部材13をストッパ部材14の先端から突出させ、かつこの間に電極部材13に高周波電流を流す。電極部材13が図11に示した最突出状態になると、電極部材13は粘膜層LUを貫通して、粘膜下層LMにまで導かれ、もって病変粘膜領域Rの切開が開始される。ここで、病変粘膜領域Rの切開は、電極部材13を観察部33による観察下で、内視鏡30の挿入部32を所望の方向に動かせて、高周波処置具1の先端を適宜動作させることによって、電極部材13により病変粘膜領域Rの外周側が切開される。つまり、挿入部32における湾曲部32bを遠隔操作により湾曲操作する等の操作によって、焼灼スポットSに沿うように切開される。
既に説明したように、高周波処置具1は挿入部32の延長線上に位置しており、軸線方向に向けた突出部17が処置具挿通チャンネル34の内面と4箇所で当接していることから、処置具導出口34a乃至その近傍位置で振れや曲げ等を起こすことはない。従って、可撓性シース2の先端から突出させた電極部材13からなる高周波ナイフを極めて正確に制御することができ、迅速かつ確実に粘膜の切開を行うことができる。また、この操作を行っている間に、筋層にダメージを与えることはない。その結果、図12に示したように、病変粘膜領域Rの外周では粘膜層LUが切開されて、粘膜下層LMが露出した状態となる。なお、図12においては、病変粘膜領域Rの全領域を一度に切開するようにしているが、病変粘膜領域Rが広い場合には、一部分を切開して、後述する剥離を行うようになし、この操作を複数回繰り返すようにするのが望ましい。
病変粘膜領域Rの全周を切開しても、それだけでは粘膜層LUを除去することはできない。即ち、粘膜層LUと筋層LBとの間は線維性の粘膜下層LMで繋がっているので、この線維を切断することにより筋層LBから剥離する必要がある。この粘膜剥離も高周波処置具1を用いて行うことができる。即ち、図13に示したように、高周波処置具1の可撓性シース2から突出する針状の高周波ナイフを構成する電極部材13を切開により生じた粘膜下層LMの露出部分に進入させて、この電極部材13を水平移動させたり、スイング動作させたりすることにより、粘膜下層LMを切断するように動作させる。この動作は、内視鏡30における挿入部32の湾曲部32bを湾曲させるように操作されるが、湾曲部32bの湾曲操作時に、高周波処置具1の可撓性シース2はこの動きに確実に追従することになり、その結果、迅速かつ効率的に粘膜剥離が行われることになる。
粘膜剥離や切開を行っている間に、この処置箇所等が出血する可能性がある。このように出血があると、その出血の度合いによっては、観察部33からの処置すべき箇所の観察像が不鮮明になってしまう。そこで、接続パイプ3の接続口3aから可撓性シース2内に高圧にて生理食塩水を供給する。ストッパ部材14の端面には接続口3aに通じる噴射通路21が開口しており、この噴射通路21は規制部材16がストッパ部材14に当接しても閉鎖されることがなく、しかもこの噴射通路21の前方には何等の部材も配置されていないので、出血箇所に向けて生理食塩水を噴射することによって、出血部分を迅速に、しかも効率的に洗い流すことができる。
また、内視鏡検査を行う際には、粘膜表面が汚損されていると、正確な内視鏡検査が行うことができず、粘膜に病変部が存在するか否かを正確に検出することはできない。さらに、切開時における焼灼により行ったマーキングを確認するためにも、粘膜表面が清浄な状態となっていなければならない。このためにも、生理食塩水の供給が行われることになる。
以上のように、出血箇所の洗い流しや、体内での灌流を行うために、体内に供給した生理食塩水を回収時等のために、体内からの吸引が行われる。周知のように、処置具挿通チャンネル34は体内からの吸引用経路としても利用されるものであり、内視鏡30においても、その処置具挿通チャンネル34内に高周波処置具1を装着した状態でも吸引が可能となっている。既に説明したように、高周波処置具1の電極部材13の処置すべき部位への狙撃性を向上させるために、可撓性シース2の外周面を処置具挿通チャンネル34の内周面に当接させるようにしているが、この可撓性シース2の外周面には複数の突出部17が形成されて、相隣接する突出部17,17間に円弧状通路部18が形成されている。処置具挿通チャンネル34内には、可撓性シース2の外周部における円環状の吸引用通路36が形成されており、吸引路35を負圧源と接続すると、この吸引用通路36内に吸引路35側に向けて負圧吸引力が作用することになる。この吸引用通路36は円弧状通路部18と連通しており、突出部17を設けた分だけ流路断面積は減少するが、体内からの吸引が行われる。しかも、この円弧状通路部18は、処置具挿通チャンネル34の全長に対して極めて短いものであることから、圧力損失はあまり大きくはならない。従って、吸引路35を負圧源と接続して、処置具挿通チャンネル34内に負圧吸引力を作用させると、体液等が円弧状通路部18から吸引用通路36に流れて、分岐部から吸引路35に取り込まれることになる。
その結果、被検者の体内に体液等が充満していたとしても、前述した吸引操作を行うことによって、体内に充満する液状の汚損物が円滑かつ効率的に吸引除去されるので、内視鏡30における観察視野を広く取ることができ、高周波処置具1を用いたESD処置を正確かつ安全に、しかも迅速かつ効率的に行うことができるようになる。
本発明の実施の一形態を示す高周波処置具の全体構成図である。 図1の要部拡大断面図である。 処置具本体の先端部分の拡大断面図である。 電極部材を突出させた状態にして示す図3と同様の断面図である。 図4のA−A断面図である。 本発明の実施の一形態を示す高周波処置具を内視鏡の処置具挿通チャンネルを挿通させた状態を示す外観図である。 図6の挿入部の先端部位置の断面図である。 図7のB−B断面図である。 病変粘膜領域にマーキングを施した状態を示す平面図である。 病変粘膜領域に対して局注を行っている状態を示す組織の断面図である。 高周波処置具を用いて切開を行っている状態を示す組織の断面図である。 高周波処置具による切開が終了した状態を示す病変粘膜領域を含む平面図である。 粘膜剥離を行っている状態を示す組織の断面図である。
符号の説明
1 高周波処置具 2 可撓性シース
3 接続パイプ 4 操作手段
10 処置具本体 11 可撓性コード
13 電極部材 14 ストッパ部材
15 挿通孔 16 規制部材
17 突出部 18 円弧状通路部
21 噴射通路 30 内視鏡
32 挿入部 34 処置具挿通チャンネル
34a 処置具導出口 34b 処置具導入部
35 吸引路 36 吸引用通路

Claims (3)

  1. 本体操作部に設けた処置具導入部に一端が接続され、他端は挿入部の先端に開口した処置具導出口に接続され、また前記本体操作部内で吸引路に連通した内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通され、可撓性シースの内部に高周波電流が印加される電極部材が設けられ、この電極部材は前記可撓性シースの先端から出没可能となった高周波処置具であって、
    前記可撓性シースと前記処置具挿通チャンネルとの間に径差を持たせることにより、前記可撓性シースを前記処置具挿通チャンネル内に挿通させて、前記吸引路に負圧吸引力を作用させたときに、これら可撓性シースと処置具挿通チャンネルとの間に円環状の吸引用通路が形成される構成となし、
    前記可撓性シースの先端側外周面に軸線方向に向けて前記処置具挿通チャンネルの内周面と摺動する複数個所の突出部を形成することによって、前記吸引用通路の先端側部位が円弧状通路部に分割され、
    前記突出部は、前記可撓性シースが前記処置具導出口から最長導出状態になったときにも、その一部が前記処置具挿通チャンネル内に位置する軸線方向の長さを持たせる
    構成としたことを特徴とする内視鏡用高周波処置具。
  2. 前記突出部は前記可撓性シースと一体に形成する構成としたことを特徴とする請求項1記載の内視鏡用高周波処置具。
  3. 前記突出部は、前記可撓性シースとは別部材で形成して、この可撓性シースの外周面に固着して設け、この突出部は前記可撓性シースより低摩擦材から構成したことを特徴とする請求項1記載の内視鏡用高周波処置具。
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