JP2009117922A - データ伝送方法 - Google Patents

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Keiichiro Hayakawa
敬一郎 早川
Katsushi Mita
勝史 三田
Noburo Ito
修朗 伊藤
Yasunori Iwanami
保則 岩波
Eiji Okamoto
英二 岡本
Hirotake Ishigami
裕丈 石神
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Abstract

【課題】MIMOなどの空間多重伝送方式を移動体通信においても高品質で実現する。
【解決手段】第1パイロットデータにより求められる伝送路の伝達特性を第1初期特性として、時刻の進行する方向に、順次、伝送路の伝達特性を推定し、第2パイロットデータにより求められる伝送路の伝達特性を第2初期特性として、時刻の進行する方向とは逆方向に、順次、伝送路の伝達特性を推定し、これらの伝達特性のうちで、信頼度の高い方の伝達特性により、受信データを復号すると共に、誤り訂正符号により誤りを訂正して受信データを復号する方法である。この方法において、送信側においては、データを送信する第1データ時間区分と第2データ時間区分と、誤り訂正符号を送信する訂正符号時間区分とを、それぞれ、分離して、第1パイロットデータ、第1データ時間区分のデータ、訂正符号時間区分の誤り訂正符号、第2データ時間区分のデータ、第2パイロットデータの順に、送信するようにした。
【選択図】図8

Description

本発明は、無線によるデータ伝送方法に関する。本発明は、特に、MIMO(Multi-Input Multi-Output)伝送方法に用いることができ、伝送路特性が時間的に変動する移動体通信に有効である。また、MISO、STBC(:Space Time Block Code)通信方式においても有効である。
MIMOを用いた空間多重伝送方法に関しては、下記特許文献が知られている。受信装置において復調された受信データから、真の送信データを予測するには、送信アンテナと受信アンテナ間の伝達関数である伝送路行列が知られている必要がある。何れの特許文献においても、この伝送路行列を推定する方法として、必要なシンボル数の、受信装置において既知のパイロットデータを送信して、これを受信装置で復調して受信データを得て、その受信データとパイロットデータとの関係から、伝送路行列を推定する方式が採用されている。パイロットデータのシンボル数の期間は、伝送路行列が変化しないとすれば、パイロットデータを受信した時の伝送路行列は、正確に推定することが可能となる。また、パイロットデータの送信周期に比べて、伝送路行列の変動周期が長い場合には、次のパイロットデータが受信されるまでの間は、前のパイロットデータにより推定された伝送路行列を用いることで、可なり正確な受信データの復調が可能となる。
また、上記の伝送方法においては、データに対してLDPC(Low Dencity Parity Check)などのブロック符号化を行い、受信データの復調時には、誤り訂正符号を用いて誤り訂正をして復号することも行われている。
特開2006−222872号公報 特開2004−201296号公報 特開2005−223450号公報 特開2007−166194号公報
しかしながら、上記のMIMOを用いた空間多重伝送方式を移動体通信に用いる場合には、次の問題がある。パイロットデータの送信周期に比べて、伝送路行列の変動周期が短くなった場合において、隣接するパイロットデータの送信時刻間で、一定の伝送路行列を用いて復調をした場合には、復調誤差が大きくなり、ビットエラーが発生する。
この問題を解決するために、特許文献4に開示された技術が存在する。その技術は、受信データと、その受信データとその時の伝送路行列とを用いて、真の復号データを判定し、その判定誤差を求め、その判定誤差に基づいて、次の復調時の伝送路行列を、逐次、推定する方式である。これは、時間的に変動する伝送路行列を、判定誤差によって、逐次、推定することから、判定帰還方式と言われている。
しかしながら、特許文献4の方式は、伝送路行列を、受信データを用いて逐次、推定する方式であるために、真の判定誤差が、隣接する符号間距離の1/2よりも小さい間は、正確に、送信符号に復号できる。しかし、真の判定誤差が、隣接する符号間距離の1/2を越えると、見かけ上の判定誤差が隣接する符号間距離の1/2よりも小さくなる基準符号(送信符号の候補となる符号)を、復号データとして選択するために、復号誤りが発生する。なお、真の判定誤差は、検出できず、判定誤差として得られるのは、見かけ上の判定誤差である。このような復号誤りが発生しても、伝送路行列は、見かけ上の判定誤差に基づいて、更新せざるを得ないので、それ以後、復号誤りが発生し、次のパイロットデータを受信するまでは、この誤りを修復することができない。このような復号誤りは、周波数選択フェージングや受信信号にドップラーシフトが発生する場合には、発生する確率が高くなる。
しかも、誤り訂正符号を付加している場合には、所定のデータ長を単位としてブロック符号化している。このために、周波数フェージングやドップラーシフトにより、隣接するパイロットデータ間で、ブロック復号できない程度のバーストビットエラーが発生すると、その1 ブロック全体のデータを全く真の値に復号することができないという問題がある。すなわち、伝送路の伝達特性を推定して、受信データを復調する場合において、判定誤りが発生する前の受信データにも、誤りが伝搬し、結局、1 ブロックのデータの全ての受信データを誤りなく復号することができなくなる。
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、本発明の目的は、高速移動体通信においても正確な復調が可能なようにすることである。
また、高速移動体通信においてデータの正確な復号のできる確率を向上させることである。
上記課題を解決するための第1の発明は、受信側において既知のパイロットデータと、伝送すべき情報のデータと、誤り訂正符号とを無線により送信し、受信側では、受信した前記パイロットデータにより求められる伝送路の伝達特性を初期特性として、伝送路の伝達特性を順次推定して、受信データを復号すると共に、誤り訂正符号により、受信データの誤りを訂正して、受信データを復号するデータ伝送方法において、データを送信するデータ時間区分と、誤り訂正符号を送信する訂正符号時間区分とを分離して、パイロットデータの次にデータ時間区分を設けて、その区分においてデータを、その後に、訂正符号時間区分を設けて、その区分において誤り訂正符号を送信することを特徴とするデータ伝送方法である。
また、第2の発明は、受信側において既知のパイロットデータと、伝送すべき情報のデータと、誤り訂正符号とを無線により送信し、受信側では、伝送路の伝達特性を順次推定して、受信データを復号すると共に、誤り訂正符号により、受信データの誤りを訂正して、受信データを復号するデータ伝送方法において、受信側において、受信した隣接する第1パイロットデータと第2パイロットデータ及びそれらのパイロットデータ間に存在する受信データを記憶し、記憶された第1パイロットデータにより求められる伝送路の伝達特性を第1初期特性として、時刻の進行する方向に、順次、伝送路の伝達特性を推定し、記憶された第2パイロットデータにより求められる伝送路の伝達特性を第2初期特性として、時刻の進行する方向とは逆方向に、順次、伝送路の伝達特性を推定し、これらの伝達特性のうちで、信頼度の高い方の伝達特性により、記憶された受信データを復号すると共に、誤り訂正符号により誤りを訂正して受信データを復号し、送信側においては、データを送信する第1データ時間区分と第2データ時間区分と、誤り訂正符号を送信する訂正符号時間区分とを、それぞれ、分離して、第1パイロットデータ、第1データ時間区分のデータ、訂正符号時間区分の誤り訂正符号、第2データ時間区分のデータ、第2パイロットデータの順に、送信するようにしたことを特徴とするデータ伝送方法である。
本発明は、全てのディジタルの無線データ伝送方式に用いることができる。送信アンテナや受信アンテナの数には、限定されない。送信アンテナは、単数でも、複数でも良く、受信アンテナも、単数でも複数でも良い。送信アンテナと受信アンテナの数は同一であっても、異なっていても良い。また、複数の送信アンテナから送信される送信データの組(送信データベクトル)と、次のタイミングにおける送信データベクトルとが所定の関係にある時分割多重を行う方式、すなわち、STBC(Space Time Block Code) 通信方式にも適用できる。また、MISO、MIMO、MIMO−SDM(Space Division Multiplex)に、適用することができる。
伝送路の伝達特性は、単一の送信アンテナと、単一の受信アンテナとを用いる場合には、それらのアンテナ間の伝達関数を意味する。また、複数の送信アンテナが用いられる場合には、この伝達特性は、伝送路行列として表される。請求項における伝送路の伝達特性は、これらの両者を含む概念である。伝送路の伝達特性の更新タイミングは、各受信データの復調タイミングであっても良いし、この復調タイミングの周期よりは長い周期であっても良い。また、伝送路の伝達特性の推定誤差が、所定値以上となった時に、伝送路の伝達特性を更新するようにしても良い。推定誤差としては、現受信データが現送信伝送路の伝達特性により逆変換される送信データと、その送信データを判定した後に得られる真の送信データである真の復号データとの間の偏差を用いることがでできる。または、真の復号データが現送信伝送路の伝達特性により変換されるレプリカ受信データと現受信データとの間の偏差を用いることができる。
本発明での変調方式は、FSK、PSKなどのディジタル変調方式を用いることができるが、QPSK、QAM、64QAMなどのPSK変調方式が有効である。また、QPSKやQAMなどのPSKに、OFDM変調方式を組合せて周波数多重化した場合には、伝送路の伝達特性が、周波数特性を有するものとなり、伝送路行列の各成分が、周波数特性を有したものとなる。各サブキャリア毎に、MIMO、MISO、STBCを適用して、各サブキャリア毎に、伝送路行列を含む伝送路の伝達特性を考えればよい。
ディジタル変調方式であれば、送信データの値は、複素空間上の離散的な値として限定されているので、受信データを用いて、MLD(Maximum Likelihood Detection)等を用いて判定処理をして、真の送信データである真の復号データを推定することができる。判定処理をして、真の復号データを得る方法は、MLDの他、伝送行列の逆行列を用いるZF(Zero Forcing)法、MMSE(Minimum Mean Square Error) 法などの空間フィルタリング手法を用いることができる。
本発明では、符号語は、データ時間区分に配列されるデータと、その区分に続く訂正符号時間区分に配列される訂正符号(パリティチェックコード)とから成る。訂正符号は、たとえば、データの各ビットの線形結合で生成されるものを用いることができる。線形結合は、任意の線形結合を用いることができる。誤り訂正符号を用いたデータの復号には、受信符号語と、基準符号語(その種類は、予め、データのビット列の種類により、一意的に決定されている)とのハミング距離が最小の基準符号語を選択する最尤復号法を用いることができる。その他、受信符号語に対して、基準符号語の集合における最小ハミング距離の1/2以下の距離にある基準符号語を選択する最小距離復号法を用いることができる。
更新される伝送路の伝達特性の初期値である第1初期特性や第2初期特性は、受信装置において既知の第1及び第2パイロットデータと、それらのパイロットデータの受信データとから求めることができる。すなわち、伝送路の伝達特性を求めるのに必要なシンボル数で構成され、受信装置において既知のパイロットデータ組と、それを復調して得られる受信データ組とから、第1、第2初期特性を求めることができる。
伝送路の伝達特性の推定は、第1パイロットデータとその受信データとを用いて求められた第1初期特性から、時刻の経過方向に、順次、逐次演算で推定することができる。また、第2パイロットデータとその受信データとを用いて求められた第2初期特性とから、時刻の経過方向と逆方向に、順次、逐次演算で推定することができる。復調タイミングにおける伝達特性と、その時の受信データとから、基準送信データに対する判定処理の後、真の復号データが求められる。この復号データと受信データとから、伝送路の伝達特性が推定されて、更新される。
第1初期特性から、逐次、推定した伝達特性と、第2初期特性から、逐次、推定した伝達特性のうちで、信頼度の高い伝達特性を得る方法は、以下の方法を用いることができる。判定誤差に基づいて、その判定の信頼度を表す第1信頼度が求められる。この第1信頼度は、たとえば、判定誤差の正規分布を確率として、前回の信頼度にその確率を乗算した値を、新しい信頼度としても良い。又は、たとえば、判定誤差の正規分布による確率が、所定値以上であれば、第1信頼度を更新せずに同一値とし、確率が所定値よりも小さい場合には、前回の第1信頼度に1より小さい所定値を乗算して、新しい第1信頼度としても良い。伝送路の伝達特性の信頼度は、判定誤差が大きくなる程、小さくなり、伝達特性を更新するに連れて、信頼度は低下して行くと考えられる。上記のように、信頼度を更新すれば、伝達特性の更新が進行するに連れて、信頼度を低下させることができる。
このような処理が、第2パイロットデータとその受信データによって決定される伝達特性の第2初期特性から、時刻の経過方向と逆方向にそって、同様に実行されて、第2信頼度が、順次、更新される。そして、同一の復調タイミングにおける第1信頼度と第2信頼度とが比較されて、第1信頼度が第2信頼度以上の場合には、第1伝達特性によって演算された真の第1復号データが、求める復号データとされ、第1信頼度が第2信頼度よりも小さい場合には、第2伝達特性によって演算された真の第2復号データが、求める復号データとされる。これより、信頼度の高い方の復号データを、復号データとして採用することにより、復号誤りを低減させることができる。
上記の伝達特性の更新において、伝送路の伝達特性の推定に用いられた受信データの受信時刻と、その伝送路の伝達特性を用いて、受信データを復号化する時刻とは異なる。したがって、復調タイミングにおいて、真の復号データを求めるのに用いられる伝送路の伝達特性は、過去の復調タイミングにおいて求められた伝送路の伝達特性の時間変化特性を、その復調タイミングまで外挿して得られる伝達特性に補正することが望ましい。このようにすれば、さらに、復調時刻における伝送路の伝達特性を反映した伝達特性を求めることができる。
また、求められる伝送路の伝達特性は、復号データベクトルの組と受信データベクトルの組とが用いられるために、誤差を含む。推定された伝送路の伝達特性に高周波的に変動する誤差が含まれる場合には、正確な復調が妨げられる。よって、伝送路の伝達特性から高周波変動成分を除去するような各種のフィルタリングを行うことが望ましい。例えば、更新タイミングにおいて更新される伝送路の伝達特性は、更新タイミングにおいて新たに求められた伝送路の伝達特性と過去に更新された所定回数の伝送路の伝達特性とを平均した平均伝達特性を、次の更新された伝送路の伝達特性とするようにしても良い。また、更新タイミングにおいて新たに求められた伝送路の伝達特性と、前回に更新された伝送路の伝達特性又は過去に更新された所定回数の伝達特性を平均した平均伝達特性との加重平均された伝達特性を、次の更新された伝送路の伝達特性としても良い。このような処理をした伝送路の伝達特性を用いると、高周波的変動誤差が除去され、復号精度を向上させることができる。
上記のようにして、真の復号データの各シンボルをビット列に変換して、ある符号語の復号が行われる。そして、復号された符号語から、上記したように、最尤復号法や最小距離復号法を用いて、基準符号が決定されて、真のデータ語が決定される。
第1発明においては、データは、重要度の高いシンボルから、順に、パイロットデータに続いて配列されることが望ましい。また、第2発明においては、データは、重要度の高いシンボルほど、第1パイロットデータと第2パイロットデータの近くに配列することが望ましい。すなわち、重要度の高いシンボルから順に、第1パイロットデータ又は第2パイロットデータに近い側、次に、第2パイロットデータ又は第1パイロットデータに近い側と、交互に、重要度の高い順にシンボルを配置することが望ましい。
そして、誤り訂正符号を用いた誤り訂正復号においては、復号できない場合又は復号の結果、誤りが存在する場合には、データ時間区分のデータだけを用いて、復号する。符号語を全て用いて復号する場合に、送信時の真の符号語に復号できない場合には、ブロック符号化していないデータだけを用いる。ドップラー効果や周波数選択フェージングにより、バーストビットエラーが発生したような場合に、誤り訂正符号による復号が不可能となっても、そのブロックを全て捨てることなく、データだけを抽出して、復号できることになる。伝送路の伝達特性の推定の信頼度は、パイロットデータから遠ざかるにつれて、低下する。したがって、パイロットデータに近い所に、データを配置すれば、このデータを復調する時の伝送路の伝達特性の信頼度を高くすることができる。誤り訂正符号を復調する時の伝送路の伝達特性の信頼度は低く、この誤り訂正符号の復号において多くのビットエラーが発生した場合に、符号語全体が復調できないことになる。しかし、このような場合であっても、誤り訂正符号を用いずに、伝達特性の推定精度の高い区間のデータだけを抽出すれば、正確に、データを復号することができる。
パイロットデータを送信するサブキャリアを用いたマルチキャリア伝送方式においては、次のようにすることが望ましい。送信側においては、周波数軸方向において、データを送信するデータ周波数区分と、誤り訂正符号を送信する訂正符号周波数区分とに分離して、データ周波数区分のデータを、パイロットデータを送信するサブキャリアの近くの周波数領域に配列し、訂正符号周波数区分の誤り訂正符号を、パイロットデータを送信するサブキャリアに対して、遠い側に配列する。
すなわち、これは、時間軸方向と周波数軸方向に配列されているデータを1ブロックとして、これらのデータを構成するビットの線形結合により、誤り訂正符号を発生させる方法に、本発明を用いたものである。パイロットデータを送信するサブキャリアを用いると、その周波数での伝送路の伝達特性は、パイロットデータが送信されている限り、正確に求めることができる。したがって、正確に求められる周波数の伝達特性を用いて、その周波数間の任意の周波数の伝達特性は、補間演算により、求めることができる。一方、時間軸方向には、上記したように、伝送路の伝達特性か、逐次、推定される。周波数方向においては、パイロットデータを送信するサブキャリアからの周波数差が大きいほど、推定される伝達特性の信頼度は低く、時間軸方向には、パイロットデータ(第2発明の場合には、第1パイロットデータ、第2パイロットデータ)から、遠ざかるほど、推定される伝達特性の信頼度は低い。したがって、周波数軸方向に推定された伝達特性と、時間軸方向に推定された伝達特性とを、周波数軸と時間軸方向の推定の信頼度により重み付け加算して、任意周波数と任意時刻での伝送路の伝達特性を推定することができる。
このような方式においては、データは、重要度の高いシンボルほど、パイロットデータを送信するサブキャリアに近く、配列することが望ましい。また、誤り訂正符号を用いた誤り訂正復号において、ブロック復号できない場合やブロック復号した結果に誤りが存在する場合には、データ周波数区分のデータだけを用いて、復号することが望ましい。すなわち、上述したように、周波数−時間座標において、伝達特性の推定信頼度の低い領域に、誤り訂正符号を配列し、信頼度の高い領域にデータを配列することになる。そして、誤り訂正符号を用いた復号ができない場合や、復号結果に誤りがある場合には、ブロック復号をするのではなく、データだけを抽出して、復号することで、正確な復号が実現できる。なお、パイロットデータを送信するサブキャリアの周波数は、時刻の経過に沿って、一定の固定周波数であっても、周波数が変化(ホッピング)するものであっても良い。
伝送路の推定される伝達特性は、時間軸に沿って、パイロットデータから遠ざかるほど、信頼度が低下するので、パイロットデータから遠ざかるほど、ブロック復号に誤りが発生する可能性が大きくなり、1ブロック内の全データが復号できなくなる。ところが、第1発明では、ブロック符号化を、データを送信するデータ時間区分と、誤り訂正符号を送信する訂正符号時間区分とに分離して、データ時間区分のデータを、パイロットデータの近くに配置して、符号語を送信するようにしている。したがって、ブロック復号に誤りが発生した場合には、推定される伝達特性の信頼度が高い時間区間に配列されているデータだけを用いて復号することで、より正確に復号できる確率が高くなる。
受信データのシンボルを復調するとき、複素平面上において、最も距離の近い可能性のある真の送信データである復号データのシンボルを得る。この復号データを得るのに、復調時の予測される伝送路の伝達特性と、受信データが用いられる。この伝達特性は、順次、更新される。第1発明は、時間の経過方向に沿って更新される系統だけを有し、第2発明は、時間の経過方向に沿って更新される系統と、時間の経過方向とは逆方向に更新される系統とを有する。第1パイロットデータから求められた第1初期特性から、時刻の経過方向に沿って、伝達特性が、順次更新される。また、第2パイロットデータから求められた第2初期特性から、時刻の経過方向とは逆方向に沿って、伝達特性が、順次、更新される。そして、推定信頼度の高い方の伝達特性によって演算された真の復号データが、求める復号データとされる。
これにより、時刻の経過方向に伝達特性を推定する場合には、信頼度は、時刻の経過方向に沿って、徐々に、小さくなり、時刻の経過方向とは逆方向に伝達特性を推定する場合には、信頼度は、時刻の経過方向に沿って、徐々に、大きくなる。この信頼度が大きい方の復号データが、真の復号データとして、採用されるので、パイロットデータ間に存在するデータの復号誤りを防止することができる。すなわち、時刻の経過方向に沿って、伝達特性を更新して、復号データを求める方式では、一旦、復号誤りが発生すると、その後、次のパイロットデータまでの受信データの復号データは誤りとなる。しかし、復号誤りが発生する時刻において、時刻の経過方向とは逆方向に、伝達特性を順次更新して、求めた復号データに誤りがなければ、復号誤りが発生した後の時刻の復号データは、時刻の経過方向とは逆方向に求めた、復号データを採用することができる。これにより、復号誤りの発生を抑制することができる。
ところが、この方式においても、誤り訂正符号を用いたブロック復号ができない場合も存在する。ブロック復号ができない場合には、全ブロックのデータを捨てることになる。しかし、第2発明では、データを送信する第1データ時間区分と第2データ時間区分と、誤り訂正符号を送信する訂正符号時間区分とを、それぞれ、分離して、第1パイロットデータ、第1データ時間区分のデータ、訂正符号時間区分の誤り訂正符号、第2データ時間区分のデータ、第2パイロットデータの順に、送信するようにしている。したがって、誤り訂正符号を用いたブロック復号に誤りがあった場合には、推定される伝達特性の信頼度が高い時間区間に配列されているデータだけを用いて、復号することにより、より正確に復号できる確率が高くなる。
上記方式に、パイロットデータをサブキャリアで送信する方式を採用した場合においては、このサブキャリアに近い周波数領域にデータを配置し、このサブキャリアから遠い位置に誤り訂正符号を配置している。このことにより、ブロック復号に誤りが発生しても、伝送路の伝達特性の推定信頼度が高い周波数領域に配列されたデータだけを抽出して、復号することで、正確に復号できる確率が高くなる。
よって、本発明は、受信装置が停止しているが、送信装置が移動している場合、送信装置が停止しているが、受信装置が移動している場合、その両者が移動している場合などの、空間多重伝送方式を移動体通信に用いた場合に有効である。
データと誤り訂正符号の配列は、図8に示すようになっている。図8(a)に示されているように、隣接する2つのパイロットデータ間に、データ時間区分Dと、それに続いて、訂正符号時間区分Eとが設けられている。図8の例は、パイロットデータ間に存在するデータをブロック符号化した例であるが、ブロック符号化のブロックの取り方は、任意であり、他のパイロットデータ間に存在するデータも合わせてブロック符号化するようにしても良い。しかし、符号語を構成するデータと誤り訂正符号との配置は、図8(a)に示すように、時刻の経過方向に見て、パイロットデータに近い側にデータが、遠い側に誤り訂正符号が配列される。さらに、データを構成するシンボルは、時刻の経過方向に見て、重要度の高い順に、データ時間区分Dの中において、パイロットデータに近い側から順に配列されている。なお、誤り訂正符号は、データを構成するビットの線形結合で生成される。たとえば、あるデータのビット列と変換ベクトル(0,1の羅列)の成分同士の掛け算の排他的論理和により、一つの誤り訂正符号を発生させ、生成する誤り訂正符号の数だけ、変換ベクトルを変化させて、同様な演算を行って、誤り訂正符号を発生させる方法(系統符号化)を用いることができる。符号語の集合における最小符号距離が大きい程、誤り訂正できる確率が高くなる。これらのブロック符号については、良く知られているので、説明を省略する。
また、時刻の経過方向に対して、双方向に伝送路の伝達特性を推定する場合には、データと誤り訂正符号の配列は、図8(b)に示すようになっている。すなわち、時刻の経過方向に見て、第1パイロットデータに近い側に、第1データ時間区分D1、時刻の経過方向とは反対方向に見て、第2パイロットデータに近い側に第2データ時間区分D2が配置され、それらの区間D1,D2の間に、訂正符号時間区分Eは配置される。そして、データは、これらの第1データ時間区分D1と第2データ時間区分D2とに、配列される。誤り訂正符号は、訂正符号時間区分Eに配列される。さらに、データを構成するシンボルは、重要度の高い順に、第1データ時間区分D1と第2データ時間区分D2の中において、第1又は第2のパイロットデータに近い側から順に、交互に、配列されている。
まず、伝送路の伝達特性を、逐次、推定して、受信信号を復号する原理について説明する。説明を簡単にするために、単一搬送波を用いたQPSK変調方式で、送信アンテナ数が2、受信アンテナ数が2の2×2のMIMO−SDM方式に本発明を用いた場合について説明する。また、伝送路の伝達特性は、伝送路行列として表される。
なお、以下の説明で、送信データベクトルや送信データ行列の成分、受信データベクトルや受信データ行列の成分は、データに誤り訂正符号を付加した符号語を構成する1シンボルを意味する。したがって、データを構成するシンボルだけではなく、誤り訂正符号を構成するシンボルをも意味する。また、本実施例では、1シンボルは4値の位相をとるが、これは2ビットの符号に相当する。データを構成する各シンボルを2ビットの符号に展開して得られる符号列が、ブロック符号、ブロック復号に関与するデータとなる。
1.時刻の経過方向に沿った伝送路行列の推定
〔初期伝送路行列の推定〕
伝送路の第1初期特性である初期伝送路行列が、次のように、推定される。
まず、伝送路行列Hは、2行2列であり、時刻tにおける伝送路行列H(t)を(1)式のように定義する。ただし、hijは、図2に示すように、送信アンテナjから受信アンテナiへの伝送路の伝達関数である。
Figure 2009117922
次に、各送信アンテナから送信される送信データの組を考える。すなわち、各送信アンテナの送信データを成分とするベクトルsを、時刻tにおける送信データベクトルs(t)として、(2)式のように定義する。ただし、s1 、s2 は、それぞれ、送信アンテナ1、2から送信される送信データである。s1 、s2 は、exp(π/4) 、exp(3 π/4) 、exp(5 π/4) 、exp(7 π/4) の4値の何れかをとる値である。
Figure 2009117922
同様に、各受信アンテナにより受信される受信データの組を考える。すなわち、各受信アンテナにより受信される受信データを成分とするベクトルrを、時刻tにおける受信データベクトルr(t)として、(3)式のように定義する。ただし、r1 、r2 は、それぞれ、受信アンテナ1、2により受信される受信データである。
Figure 2009117922
送信データベクトルs(t)と受信データベクトルr(t)と、伝送路行列H(t)とは、(4)、(5)式の関係が成立する。
Figure 2009117922
Figure 2009117922
送信データベクトルs(t)と、それに対応する受信データベクトルr(t)を、与えても、(4)又は(5)式では、4要素を有する伝送路行列H(t)を求めることができない。そこで、Δt時刻前、すなわち、時刻、t−Δtにおける送信データベクトルs(t−Δt))と、それに対応する受信データベクトルr(t−Δt)を考える。そして、2つの送信データベクトル(s(t) s(t−Δt))から成る送信データ行列S(t)を、(6)式で定義する。
Figure 2009117922
同様に、2つの受信データベクトル(r(t) r(t−Δt))から成る受信データ行列R(t)を、(7)式で定義する。
Figure 2009117922
以上の定義のように、行列は英文字の大文字、ベクトルは同一文字の小文字、行列、ベクトルの要素は、添字付きの小文字で表す。
受信データ行列R(t)、送信データ行列S(t)、伝送路行列H(t)との間には、(8)、(9)式の関係が成立する。
Figure 2009117922
Figure 2009117922
以下、説明を簡単にするために、送信タイミングを0,Δt、2Δt、…、nΔtとし、それぞれの時刻を、Δtを1単位として、単に、0、1、2、…nで表す。そして、時刻0、1で送信される2シンボルの送信データをパイロットデータ(第1パイロットデータ)と定義する。すると、上記の送信データに関する定義から、各送信アンテナから送信される第1シンボルのパイロットデータは、s1 (0)、s2 (0)、第1シンボルのパイロットデータベクトルは、s(0)、第2シンボルのパイロットデータは、s1 (1)、s2 (1)、第2シンボルのパイロットデータベクトルは、s(1)、2シンボルで構成されるパイロットデータ行列は、S(1)で定義される。
同様に、時刻0、1で受信される2シンボルの受信データを受信パイロットデータと定義する。すると、上記の受信データに関する定義から、各受信アンテナから出力される第1シンボルの受信パイロットデータは、r1 (0)、r2 (0)、第1シンボルの受信パイロットデータベクトルは、r(0)、第2シンボルの受信パイロットデータは、r1 (1)、r2 (1)、第2シンボルの受信パイロットデータベクトルは、r(1)、2シンボルで構成される受信パイロットデータ行列は、R(1)で定義される。
このように定義すれば、パイロットデータ行列S(1)、受信パイロットデータ行列R(1)、伝送路行列H(1)には、(10)、(11)式の関係が成立する。
Figure 2009117922
Figure 2009117922
ここで、パイロットデータ行列S(1)の逆行列が存在するようにパイロットデータを選択する。すると、(12)式により、伝送路行列H(1)を求めることができる。
Figure 2009117922
この伝送路行列H(1)が、初期値を与える初期伝送路行列となる。ただし、(11)式から明らかなように、時刻0、1での送信データと受信データとから、伝送路行列を求めているので、時刻0と、時刻1とで、伝送路行列が不変であれば、(11)式から、伝送路行列は正確に求まる。しかし、この時刻間で、伝送路行列が変動していると、(12)式で求められる伝送路行列H(1)は、近似値となる。
今、受信装置が電波の進行方向に平行に直線的に等速運動をしているとする。搬送波の伝搬定数γ( ただし、γ=α+jβ、αは減衰定数、βは位相定数である)として、送信データの周期Δt間での受信装置の移動距離(送信装置から遠ざかる方向を正とする)Δxで、搬送波はexp(- γΔx) だけ、振幅と位相が変化する。以下、γΔxを、時間Δt又は距離Δx当たりの伝送量Δγ=(α+jβ)Δxとする。伝送路行列Hは、Δtの間に、exp(- γΔx) =exp(- Δγ) 倍の値に変化する。したがって、受信データベクトルは、伝送量Δγだけ、減算された値となる。例えば、減衰定数を0とすれば、受信データの位相は、伝送路がΔxだけ長くなったことによる遅延作用により、βΔxだけ遅れる。また、伝送路行列H(1)を受信データの復調に用いる時刻は時刻2であるから、伝送路行列は時刻2における値が必要となる。一般的に、時刻m−1における伝送路行列H(m−1)と、Δt後の時刻mにおける伝送路行列H(m)との間には、(13)式が成立する。
Figure 2009117922
ただし、Eは単位行列である。
このような伝送路行列の時間変化を考慮すると、(12)式で求められた伝送路行列H(1)は、時刻0と時刻1との中点時刻における伝送路行列と考えることができる。したがって、時刻2における補正された正確な伝送路行列G(2)は、H(1)のexp(- 3Δγ/2) 倍の値となる。すなわち、G(2)とH(1)との間には、(14)式による関係が成立する。
Figure 2009117922
この補正された時刻2における伝送路行列G(2)を、初期伝送路行列とすると、より正確な復調が可能となる。なお、復調時刻2において、伝送路行列H(1)を用いた場合には、伝送路行列H(1)は、(15)式に示す誤差ΔH(1)を有する。
Figure 2009117922
ΔH(1)が存在しても、受信データを判定して、MLD法などにより、真の送信データを求める場合に、ビットエラーが発生しない程度であれば、伝送路行列を補正することなく、H(1)を初期伝送路行列とすることも可能である。
以下の説明では、より正確な復調を実現するために、時刻2におけるより正確な伝送路行列である補正された初期伝送路行列G(2)を用いる。
〔受信データの復調〕
時刻2以後、次のパイロットデータが受信されるまでの期間において、Δt間隔で、データの復調が行われるものとする。
時刻2での復調においては、時刻1において推定された時刻2での伝送路行列G(2)を用いる。すると、時刻2で受信された受信データベクトルr(2)、送信データベクトルs(2)、初期伝送路行列G(2)との間には、(16)式が成立する。
Figure 2009117922
したがって、受信装置において、推定される送信データベクトルs(2)は、伝送路行列G(2)の逆行列が存在すれば、(17)式で、一意に、符号間干渉なく求められる。しかし、伝送路行列G(2)の逆行列が存在しない場合には、各送受信アンテナ間の伝送路の独立性がなく、一意的には、送信データベクトルを決定することはできない。すなわち、符号間干渉が発生する。
Figure 2009117922
このようにして、(17)式で得られた送信データベクトルs(2)は、推定された伝送路行列G(2)が時刻2における現実の伝送路の正確な伝送路行列であれば、理論値である(exp((2i−1)π/4) 、exp((2j−1)π/4) )の16通りの何れかになる。ただし、i,j=1、2、3、4である。ところが、伝送路行列G(2)は、時刻2における真の伝送路行列に対して、一般的には、推定誤差(第1判定誤差)を有する。したがって、(17)式で求められた送信データベクトルs(2)に最も近い理論値(exp((2i−1)π/4) 、exp((2j−1)π/4) )を決定する必要がある。これが受信データの判定処理である。この16通りの理論値だけをとる送信データベクトルを候補送信データベクトルuとする。(18)式で定義されるように、(17)式で求められた送信データベクトルs(2)と、候補送信データベクトルuの差ベクトルのノルムLs が最小となる候補送信データベクトルuを真の復号データベクトルqとして決定することで、受信データの判定が完了する。このときの送信データベクトルs(2)と真の復号データベクトルqの差ベクトルのノルムが、第1判定誤差Γ(2)となる。
Figure 2009117922
また、上記の判定は、受信データベクトルの次元で行っても良い。候補送信データベクトルの任意の一つのベクトルuに対して、その受信データベクトルをレプリカ受信データベクトルvとすると、候補送信データベクトルuと、時刻2でのレプリカ受信データベクトルv(2)との間には、(19)式の関係が成立する。
Figure 2009117922
Figure 2009117922
そして、現実の受信データベクトルr(2)と、レプリカ受信データベクトルv(2)との差のベクトルのノルムLr が最小となる候補送信ベクトルuを真の復号データベクトルqとして決定する。このようにしても、受信データベクトルr(2)に対応した最も確からしい復号データベクトルqを決定することができる。このときの受信データベクトルr(2)とレプリカ受信データベクトルv(2)の差ベクトルのノルムが、第1判定誤差Γ(2)となる。
なお、伝送路行列G(2)の逆行列が存在しない場合にも、この方法で、復号データベクトルqを決定することができるが、符号間干渉によりその復号データベクトルは複数となり、受信データベクトルから復号データベクトルを一意的に決定することができないことに変わりはない。この方法は、MLD(Maximum Likelihood Detection)と言われる方法である。
〔伝送路行列の更新〕
次に、伝送路行列の更新方法について説明する。上記の(18)式、又は、(20)式のノルムを最小とする確定された一つの候補送信データベクトルuを、時刻2における復号データベクトルq(2)として定義する。また、Δt前の時刻1における復号データベクトルq(1)は、第2シンボルのパイロットデータs(1)として知られている。よって、この時刻1、2における復号データベクトル(q(1) q(2))の行列を復号データ行列Q(2)として定義する。この時の受信データ行列はR(2)となり、受信装置におて、既に、受信されているデータで構成される。
受信装置において真の送信データと考えられる復号データ行列Q(2)を受信データ行列R(2)に変換する伝送路行列H(2)が、最も新しい受信データ情報により得られる伝送路行列である。この時刻2における推定すべき伝送路行列H(2)、復号データ行列Q(2)、受信データ行列R(2)には、(21)式の関係式が成立する。
よって、復号データ行列Q(2)の逆行列が存在すれば、(22)式により、時刻2における伝送路行列H(2)が求められる。
Figure 2009117922
Figure 2009117922
求めるべきは、次の受信データの復調タイミングである時刻3における予測される伝送路行列である。前述したように、この伝送路行列H(2)は、時刻1と時刻2との中点時刻1.5における伝送路行列である。中点時刻1.5と次の時刻3間における伝送路の伝達関数の変化を(14)式と同様に考慮して、補正された時刻3における正確な伝送路行列G(3)を求める。(14)式におけるΔrは、パイロットデータとパイロットデータの間のデータを送信するデータブロックにおいては、一定と見做す。受信装置の移動の様子(加速度などを)を知ることができるのであれば、それを考慮して、各時刻におけるΔrを求めることは可能である。
このようにして、次の復調時刻3において、用いられる補正された伝送路行列G(3)を求めることができる。
〔逐次演算の一般化〕
時刻mにおける受信データの復調は、次のようにして行われる。Δt時間前の時刻m−1において、時刻mにおける補正された正確な伝送路行列G(m)は、既に、求められている。したがって、時刻mでの受信データベクトルr(m)と送信データベクトルs(m)と伝送路行列G(m)との間には、(23)式の関係式が成立する。
Figure 2009117922
次に、(24)式により、受信データベクトルr(m)と候補送信データベクトルuのレプリカ受信データベクトルG(m)uとの差ベクトルのノルムLr (m)が最小となる候補送信データベクトルを復号データベクトルq(m)として決定する。これにより、時刻mにおいて、受信データベクトルr(m)から、正確な復号データベクトルq(m)が決定される。このとき、受信データベクトルr(m)と正確な復号データベクトルq(m)のレプリカ受信データベクトルG(m)q(m)との差ベクトルのノルムが第1判定誤差Γ(m)として演算される。
Figure 2009117922
次に、次の復調タイミングである時刻m+1における伝送路行列G(m+1)を求める処理が、以下のようになされる。時刻m−1での復号データベクトルq(m−1)は、時刻m−1における復調処理によって決定されているので、ベクトルq(m−1)、q(m)からなる復号データ行列Q(m)を生成することができる。時刻mにおては、時刻m−1における受信データベクトルr(m−1)及びr(m)は既知であるので、受信データ行列R(m)を求めることができる。復号データ行列Q(m)が真の値であれば、復号データ行列Q(m)と、受信データ行列R(m)との間の関係が、その時の伝送路行列H(m)となる。Q(m)、R(m)、H(m)には、(25)、(26)式の関係が成立する。
Figure 2009117922
Figure 2009117922
そして、復号データ行列Q(m)の逆行列Q-1(m)が存在する場合には、(27)により、伝送路行列H(m)を求めることができる。Q-1(m)が存在する場合とは、行列式a=q1 (m−1)q2 (m)−q1 (m)q2 (m−1)≠0の場合である。
具体的には、伝送路行列H(m)の各成分hij(m)は、(28)式により求められる。
Figure 2009117922
Figure 2009117922
次に、この伝送路行列H(m)は、時刻m−1と時刻mの中点時刻(2m−1)/2における伝送路行列である。ところが、この推定された伝送路行列H(m)が復調に使用されるのは、次の復調時刻であるm+1である。したがって、中点時刻(2m−1)/2から時刻m+1までの伝送路の変動に基づく、補正された正確な伝送路行列G(m+1)を求める必要がある。補正は、(29)式による。
Figure 2009117922
ただし、Δγ(m)は、前述したように、時刻mにおいて予測される時刻m+1と時刻m間における伝送量の変化分、又は、伝送路がその時間においてΔxだけ長くなったことによるその長さΔxの伝送路における伝送量である。このような補正は、伝送路行列の時間変化特性の外挿による補正である。
このようにして、時刻mでの全ての処理は完了する。時刻m+1では、伝送路行列G(m+1)を用いて、時刻m+1での受信データの復調処理と次の復調時刻m+2における伝送路行列の更新処理とが実行される。このような逐次演算が、次のパイロットデータ(第2パイロットデータ)が受信されるまで実行される。次のパイロットデータが受信された時には、伝送路行列をリセットして、2シンボルから成るパイロットデータにより正確な初期伝送路行列H(1)、G(2)が演算されて、上記の処理が繰り返される。
復号データ行列Q(m)の逆行列Q-1(m)が存在しない場合には、伝送路行列H(m)の更新は、行わずに、直近に求められている伝送路行列H、Gを用いる。ただし、その求められた時刻と、次に復調に使用する時刻との差に応じた時間差又は距離差に対応する伝送量の補正を(29)式と同様な式で補正しても良い。ただし、(29)式の3/2が、時刻差又は距離差に対応した時間単位となる。
この復調の様子を図に示すと図1のようになる。時刻mにおける受信データベクトルr(m)と、伝送路行列G(m)とを用いて、復号データベクトルq(m)と第1判定誤差Γ(m)とを求める。復号データベクトルq(m−1)、q(m)と、受信データベクトルr(m−1)、r(m)とを用いて、伝送路行列H(m)を求める。その伝送路行列H(m)から、伝送路の変動を考慮し、時刻m+1における補正された伝送路行列G(m+1)を求める。これの繰り返し演算となる。初期値は、パイロットデータベクトルs(0)、s(1)と、その受信データベクトルr(0)、r(1)とから、伝送路行列H(1)を求める。その伝送路行列H(1)を、伝送路の変動を考慮して、最初にデータを復調する時刻2における補正された伝送路行列G(2)を求める。この逐次演算により伝送路行列が更新されて、正確な受信データの復調が可能となる。
このようにして、受信データの復調、すなわち、送信した符号語を構成する各シンボルが復号されたことになる。以下、この各シンボルを符号列に変換して得られる符号の集合を、受信符号語という。この受信符号語から、誤り訂正符号を用いた復号により、データだけを復号することになる。このブロック復号には、送信符号語の候補(以下、基準符号語という)の集合の中から、受信符号に対して、その集合の最小符号距離の1/2以下の距離にある基準符号を決定する最小距離復号法を用いる。最小符号距離の1/2以下の距離にある基準符号が、存在するとすると、その基準符号は、必ず1となる。その他、この復号には、受信符号語とのハミング距離が最も小さい基準符号語を選択する最尤復号法を用いることができる。
最小距離復号法で基準符号を決定できない場合(受信符号に対して、最小符号距離の1/2以下の距離にある基準符号が存在しない場合)には、受信符号が、ブロック復号できない程に、ビットエラーを起こしているので、この場合には、データ時間区分Dに存在するデータを、真の復号データとする。すなわち、このデータ時間区分Dは、パイロットデータに近いので、推定される伝送路の伝達特性の信頼度は高いと考えられるので、そのデータを真の復号データとしても、誤りが存在する確率は低いと考えられる。ブロック復号できない原因は、訂正符号時間区分Eにおける伝送路の伝達関数の信頼度が低く、その伝達関数を用いて、復号した誤り訂正符号に、最小符号距離の1/2以上のビットエラーが発生したためであると考えられる。よって、この場合には、誤り訂正符号を用いたブロック復号を行うよりは、データ時間区分Dのデータをそのまま採用した方が、正確な復号データが得られる。
また、ブロック復号した符号に誤りが存在するか否かは、送信時に、データに対してCRC符号を付加したデータを、上記のブロック符号化して、符号語を生成すれば良い。この場合には、受信符号語をブロック復号して得られる符号語からデータを抽出して、CRC符号が、正しいか否かを判定すれば良い。また、データに対して、パリティチェックビットを付加したデータを、ブロック符号化して送信符号語を生成しても良い。この場合には、同様にブロック復号した符号語からデータを抽出して、パリティチェックが満たされているか否かを判定すれば良い。この判定を行って、誤りが存在すれば、ブロック復号することなく、データ時間区分のデータだけを抽出して、そのデータを真の復号データとする。
2.時刻の経過方向とは逆方向に沿った伝送路行列の推定
上記の処理は、時刻の経過方向に沿って伝送路行列を推定するものである。これとは逆方向に、同様な手法で、伝送路行列を推定することができる。この逆方向に伝送路行列を推定する場合には、受信データは、一旦、記憶装置に記憶しておいて、その記憶装置からデータを読み出して、処理する必要がある。時刻の経過方向に沿って伝送路行列を推定する上記の場合には、受信データは、記憶装置に、必ずしも記憶しておく必要はなく、データの受信毎に、上記の処理を行っても良い。
図1には、時刻の経過方向とは逆方向に、伝送路行列を推定する様子が示されている。時刻0、1は、第2パイロットデータの第1シンボル、第2シンボルの送信タイミングを表す。また、時刻の経過の逆方向に、時刻0のΔt時間前の時刻をnとして、順次、n−1,n−2,…n−k+1,n−k,n−k−1,…2とする。時刻0のkΔt時間前の時刻が、n−k+1である。m+k=nを満たすとき、時刻の経過方向にとった第m時刻と、反対方向にとった第n−k時刻とは、同一時刻となる。
第2パイロットデータの時刻0、時刻1での第1シンボルと第2シンボルと、それらの受信データとを用いて、(12)式により、伝送路行列H’(1)が求められる。逆方向に推定された伝送路行列には’を付す。次に、時刻nでの正確な伝送路行列’G(n)が、G(2)をG’(n)とおいた(14)式により求められる。この時刻nにおける正確な伝送路行列G’(n)を用いて、G(2)をG’(n)とおき、2をnとおいた(17)、(18)式、又は、(19)、(20)式を用いて、正確な復号データベクトルq(n)を求める。次に、復号データベクトルq(n)と、第2パイロットデータの第1シンボルの送信ベクトルs(0)とを用いて、H(2)をH’(n−1)とおき、2をnとおいた(22)式により、伝送路行列H’(n−1)を求める。これを繰り返すことになる。
逐次演算の一般化としては、次のようになる。時刻n−k+1において、伝送路行列G’(n−k)は、既に、求められている。したがって、mを、n−kとおいた、(23)式、(24)式により、時刻n−kにおける真の復号データベクトルq(n−k)を求めることができる。次に、復号データベクトルq(n−k)、q(n−k+1)からなる、復号データ行列Q(n−k)を用いて、すなわち、m=n−kとおいた(25)−(28)により、伝送路行列H’(n−k)を求める。
次に、G(m+1)をG’(n−k−1)、H(m)をH’(n−k)、Δγ(m)をΔγ(n−k)とおいた(29)式により、時刻n−k−1における正確な伝送路行列G’(n−k−1)を求める。伝送路行列G’(n−k−1)が求まれば、(23)、(24)式により、時刻n−k−1での真の復号データベクトルq(n−k−1)を求める。これを第1パイロットデータの後の時刻2まで、繰り返す。これにより、時刻の経過方向とは逆方向に伝送路行列を逐次、推定して、真の復号データを得ることができる。
3.判定誤差に基づく事後確率の演算
時刻の経過方向に推定した時刻mにおける復号データの判定誤差をΓ(m)、逆方向に推定した時刻n−kにおける復号データの判定誤差をΓ’(n−k)で表す。判定誤差Γ(m)は、求められた送信データベクトルG-1(m)・r(m)と、復号データベクトルq(m)との差ベクトルのノルム、または、受信データベクトルr(m)と、復号データベクトルq(m)のレプリカ受信データベクトルG(m)・q(m)との差ベクトルのノルムで表される。同様に、判定誤差Γ’(n−k)は、求められた送信データベクトルG-1(n−k)・r(n−k)と、復号データベクトルq(n−k)との差ベクトルのノルム、または、受信データベクトルr(n−k)と、復号データベクトルq(n−k)のレプリカ受信データベクトルG(n−k)・q(n−k)との差ベクトルのノルムで表される。
次に、この判定誤差を、隣接する復号データベクトル間距離の1/2で正規化し、正規化された判定誤差を、Γ(m)、Γ’(n−k)と、再定義する。次に、事後確率P(m)、P’(n−k)を、exp(−Γ(m)2 /2)、exp(−Γ(n−k)2 /2)でも求める。この事後確率は、復号に用いられたそのときの伝送路行列Gが正しいとした場合の復号データが真理である確率を表している。
今、推定された伝送路行列G(m)、G’(n−k)の絶対的な第1信頼度、第2信頼度を、W(m)、W’(n−k)とする。第1信頼度W(m)の初期値はW(1)であり、第2信頼度W’(n−k)の初期値はW’(0)である。これらの初期値は、それぞれ、第1パイロットデータ、第2パイロットデータにより推定されているので、それらの初期値を1とする。
次に、この事後確率を、しきい値、たとえば、0.7と比較して、0.7以上であれば、復号誤差の伝搬はなく、正確に伝送路行列を推定し直すことができると見做せる。したがって、この場合には、信頼度の変更はなく、それぞれ、今回の信頼度を前回の復調時の信頼度と等しくする。すなわち、W(m)=W(m−1)、W’(n−k)= W’(n−k+1)とする。また、事後確率が、しきい値よりも小さい場合には、誤差が累積されるとして、今回の信頼度を前回の信頼度の所定値ε倍に低下させる。ただし、0<ε<1である。すなわち、W(m)=ε・W(m−1)、W’(n−k)=ε・ W’(n−k+1)とする。この演算を、パイロットデータ間の全ての時刻について、行う。これにより、第1信頼度は、時刻が経過するにつれて、信頼度が低下する傾向を示す。また、第2信頼度は、時刻の経過方向とは逆方向に、信頼度が低下する傾向を示す。
次に、同一時刻、すなわち、m+k=nを満たす、時刻m、n−kに関して、第1信頼度W(m)と第2信頼度W’(n−k)との大小比較を行う。そして、既に得られている復号データベクトルq(m)、q(n−k)のうちで、信頼度の高い方向の復号データベクトルを、復号すべきデータとする。
時刻の経過方向に沿ってのみ伝送路行列を推定していた従来方法の場合には、復号誤りが発生すると、その後の受信データの全てに復号誤りが発生したり、誤り訂正符号を用いている場合には、復号誤りが発生した前の受信データに関しても復号誤りが発生することになり、結局、全受信データの復号ができなくなる。たとえば、2つのパイロットデータの間のある時刻で、受信電力の一時的な低下などにより復号誤りが発生した場合に、その時刻より後の期間は、第2パイロットデータにより得られた初期伝送路特性から、時刻の経過方向とは逆方向に順次、推定した伝送路行列を用いた復号では、誤りが発生しないことが多いと考えられる。したがって、この方法を採用することにより、パイロットデータ間の全ての受信データを、正確に復号できることになる。
なお、事後確率Γ(m)、Γ’(n−k)が、所定値よりも大きい場合には、伝送路行列の推定誤差を補正して、伝送路行列を正確に推定できると考えられる。この場合には、復号誤りが発生せずに、誤差が伝搬することはない。したがって、この事後確率Γ(m)、Γ’(n−k)の大小を比較して、事後確率の大きい方の復号データベトルを採用するようにしても良い。
このようにして、推定信頼度の高い方の伝達特性を用いて、受信データの復調、すなわち、送信した符号語を構成する各シンボルが復号されて、その各シンボルを符号列に変化して受信符号語が得られたことになる。その後に、受信符号語から、誤り訂正符号を用いた復号により、データだけを復号することになる。上記したように、最小距離復号法や、最尤復号法を用いて、ブロック復号が行われる。そして、データが抽出される。最小距離復号法で基準符号を決定できない場合(受信符号に対して、最小符号距離の1/2以下の距離にある基準符号が存在しない場合)には、受信符号が、ブロック復号できない程に、ビットエラーを起こしているので、この場合には、第1データ時間区分D1及び第2データ時間区分D2に存在するデータを、真の復号データとする。すなわち、この第1データ時間区分D1及び第2データ時間区分D2は、第1パイロットデータ及び第2パイロットデータに、それぞれ、近いので、推定される伝送路の伝達特性の信頼度は高いと考えられる。したがって、そのデータを真の復号データとしても、誤りが存在する確率は低いと考えられる。ブロック復号できない原因は、訂正符号時間区分Eにおける伝送路の推定された伝達関数の信頼度が低く、その伝達関数を用いて、復号した誤り訂正符号に、最小符号距離の1/2以上のビットエラーが発生したためであると考えられる。よって、この場合には、誤り訂正符号を用いたブロック復号を行うよりは、第1データ時間区分D1及び第2データ時間区分D2のデータをそのまま採用した方が、正確な復号データが得られる。
また、ブロック復号した符号に誤りが存在するか否かの判定は、上記したようにデータに対してCRC符号を付加したデータや、パリティチェックビットを付加したデータを用いることでも実行できる。ブロック復号した後の符号語において、CRC符号が満たされているか、パリティチェックが満たされているか否かを判定すれば良い。この判定を行って、誤りが存在すれば、ブロック復号することなく、第1及び第2データ時間区分D1及びD2のデータだけを抽出して、そのデータを真の復号データとする。
〔実施態様の各種の変形〕
(1)伝送量Δγの推定
パイロットデータのシンボル数を多くすれば、隣接するシンボルの各中点時刻における伝送路行列Hを複数求めることができる。この伝送路行列Hの時間変化特性を測定して、データの送信周期Δt当たりの伝送量の変化を測定すれば、Δγを得ることができる。パイロットデータブロックを受信する毎に、この伝送量Δγは、更新することができる。パイロットデータブロック間のデータブロックにおいては、伝送量Δγは一定と見做すか、受信装置の移動速度をリアルタイムに検出してΔt時間毎の移動距離Δxを求めて、そのΔxに応じて、伝送量Δγを補正するようにしても良い。
受信装置の移動速度が速くなく、パイロットデータブロックの送信周期が長い場合には、次のようにして求めても良い。一つのパイロットデータブロックを受信して、これから求められる伝送路行列Hの平均値HE を求めて、1周期前のパイロットデータブロックで求められている平均された伝送路行列Hの平均値HS を求め、それらの値HE 、HS から、隣接するパイロットデータブロック間のΔt当たりの平均された伝送量Δγを求める。この値を次のパイロットデータブロックが受信されるまでの伝送量Δγとする。多数シンボルで構成されるパイロットデータを用いる場合の上述の手法も含めて、これらは、直線外挿補間の手法であるが、受信装置の移動態様が測定でき、伝送量の曲線的変化が予測できるのであれば、曲線による外挿補間の手法を用いても良い。
(2)補正された伝送路行列Gの必要性
上記したように、伝送路行列を求めた時刻と、それを用いて復調する復調時刻のずれを、伝送量Δγにより補正することで、より、正確な受信データの復調が可能となる。上記したように、この補正は、1.5Δtの時間差に基づく伝送量の変化を補正するものであるが、この期間の伝送量の変動が小さい場合には、1.5Δt時間前の伝送路を反映している伝送路行列Hを用いても良い。伝送路行列Hを用いた時の誤差は、(24)式においてG(m)をH(m−1)として求められた復号データベクトルq(m)のレプリカ受信ベクトルH(m−1)q(m)と、受信データベクトルr(m)との差ベクトルのノルムとなる。したがって、ビットエラーが発生する確率は、G(m)を用いた場合に比べて高くなるが、ビットエラーが発生しない余裕がある範囲の誤差であれば、伝送路行列Hを用いることも十分に可能である。
また、上記の説明では、(29)式のように、伝送路行列H(m)の全ての要素について、同一の補正係数exp (−3Δγ/2)を掛けているが、各要素毎に補正係数が異なるのであれば、補正係数を各要素毎に変えても良い。
(3)送信アンテナと受信アンテナの数について
上記の説明では、送信アンテナと受信アンテナとを同数の2本とした。上記の説明が、3以上のn×nのMIMOにおいても、成立することは明らかである。全ての行列がn×nの正方行列となるからである。
送信アンテナの数が、受信アンテナの数よりも多い場合にも、上記した説明は成立する。例えば、送信アンテナの数をn本、受信アンテナの数をm本(1≦m<n)とした場合を考える。送信データ行列Sをn×nの正方行列(データ数を増加するだけであるので、このように設定できる)とすれば、受信データ行列Rはm×n、伝送路行列Hは、m×n行となる。送信データ行列の逆行列が存在する限り、伝送路行列Hを求めることができる。伝送路行列Hが求まれば、受信データベクトルとレプリカ受信データベクトルの差ベクトルのノルムが最小な復号データベクトルを求めることができる。
また、送信アンテナの数が、受信アンテナの数よりも少ない場合にも、上記した説明は成立する。例えば、送信アンテナの数をn本、受信アンテナの数をm本(2≦n<m)とした場合を考える。送信データ行列Sをn×nの正方行列とすれば、受信データ行列Rはm×n、伝送路行列Hは、m×n行となる。送信データ行列の逆行列が存在する限り、伝送路行列Hを求めることができる。伝送路行列Hが求まれば、受信データベクトルとレプリカ受信データベクトルの差ベクトルのノルムが最小な復号データベクトルを求めることができる。
したがって、本発明は、送信アンテナが1本又は2本以上存在した空間多重伝送方式において適用することができる。
また、STBC方式は、上述した方式の特別な場合であるから、送信データ行列Sを正方行列として、送信データ行列に逆行列が存在する限り、伝送路行列Hを推定することができる。よって、本発明は、STBC方式にも適用可能である。
(4)伝送路行列の更新時期について
上記の説明では、Δt毎の毎回の復調時刻において、伝送路行列の更新を実行している。伝送路行列が大きく変化しないのであれば、この更新周期は、復調周期Δtよりも長くすることができる。また、(24)式におけるノルムLr (m)の最小値が所定値を越える毎に、伝送路行列の更新を実行し、越えない場合には、その更新を実行しないような不定期な更新であっても良い。さらに、更新周期が復調周期よりも長い場合において、更新後、kだけ経過した復調時刻における補正された伝送路行列を、直近に更新された伝送路行列を、kΔγで補正した伝送路行列を受信データの復調に用いても良い。そして、この補正された伝送路行列に対して、(24)式におけるノルムLr (m)の最小値が所定値を越える毎に、伝送路行列を更新するようにしても良い。
(5)伝送路行列H,Gのフィルタリングについて
上記の説明では、最も新しい受信データ行列R、復号データ行列Qとから、最新の伝送路行列H,Gを求めている。この場合には、推定された伝送路行列の高周波的変動が、そのまま、復号に反映される。高周波成分が雑音成分であることも考えられるので、この伝送路行列H,Gに関して、良く知られている比例、積分演算や、所定期間における各種の平均、加重平均などにより、更新されるべき伝送路行列を求めても良い。
例えば、(30)式に示されるように、受信データ行列R、復号データ行列Qとから求められる各復調時刻毎の伝送路行列H(t)、G(t)の過去の一定期間(k+1の復調時刻数)における平均行列H1 (m)、G1 (m)を、更新行列としても良い。
Figure 2009117922
また、最新の時刻mにおいて推定された伝送路行列H(m)、G(m)と、それらのΔt時刻前の時刻m−1での補正伝送路行列H2 (m−1)、G2 (m−1)との、加重平均値を、新たに更新された補正伝送路行列H2 (m)、G2 (m)として、この伝送路行列に基づいて復調する方法がある。すなわち、(31)式により、補正伝送路行列H2 (m)、G2 (m)を求める方法がある。係数αを大きくすれば、過去の履歴に重きを置いて補正伝送路行列が演算されることになる。比例、積分演算で、積分係数を大きくしたのと透過である。
Figure 2009117922
また、上記の第1の方法と第2の方法とを組合せた方法も考えられる。受信データ行列R、復号データ行列Qとから求められた各復調時刻毎の伝送路行列H(t)、G(t)の過去の一定期間(k+1の復調時刻数)における平均行列H1 (m)、G1 (m)と、最新の時刻mにおいて求められた伝送路行列H(m)、G(m)との加重平均を、時刻mでの更新された伝送路行列H3 (m)、G3 (m)とする方法である。すなわち、(32)式により、更新された伝送路行列H3 (m)、G3 (m)を求める方法である。
Figure 2009117922
(6)伝送路行列の更新の意味
復調時刻mにおける伝送路行列H(m)、G(m)は、それらの初期伝送路行列H(1)、G(2)を用いて、(33)式のように表現することができる。ただし、B(m)は、初期伝送路行列に対する変位を表しているので、変位行列と呼ぶ。
Figure 2009117922
また、送信データベクトルs(m)は、受信データベクトルr(m)を用いて、(34)式で表現される。したがって、B-1(m)r(m)を補正された受信データベクトルr' (m)とすれば、この補正された受信データベクトルr' (m)を用いるのであれば、変動しない初期伝送路行列H(1)、G(2)を用いて、復号できる。したがって、伝送路行列の更新と、受信データベクトルのB-1(m)r(m)による補正は、等価となる。よって、本件発明の伝送路行列の更新は、このような伝送路行列の変動により、受信データベクトルを補正することも含むものである。逆方向に推定するH’(n−k)、G’(n−k)についても同様である。
Figure 2009117922
以下、本発明の具体的な実施例として、本発明を実現する復調装置を示す。本実施例は、時刻の経過方向と、時刻の経過方向とは逆方向に、逐次、伝送路の伝達特性を推定する場合の例である。本実施例は図2に示すように、送信アンテナが2本、受信アンテナが2本の2×2のMIMO伝送方式によるものである。送信装置10は送信アンテナ11、12を有し、受信装置20は受信アンテナ21、22を有する。送信装置10はシリアルな送信データを、2系統に分離して、変調して、各送信アンテナ11、12から送信する多重化装置15を有している。また、受信装置20は、受信アンテナ21、22から受信された高周波変調信号を受信して、送信時のベースバンドデータに復号化する復調装置25を有している。
送信アンテナ11、12から受信アンテナ21、22への伝達関数が伝送路行列である。伝送路行列の各要素は、図示されているように、h11は、送信アンテナ1から受信アンテナ1への伝達関数、h12は、送信アンテナ2から受信アンテナ1への伝達関数、h21は、送信アンテナ1から受信アンテナ2への伝達関数、h22は、送信アンテナ2から受信アンテナ2への伝達関数である。送信データs1 、s2 、受信データr1 、r2 、時刻mにおける送信データベクトル、受信データベクトル、送信データ行列、受信データ行列の定義は前述した通りである。
次に、受信装置20の復調装置25の構成について説明する。復調装置25は、受信アンテナ21、22で受信された高周波変調信号から搬送波を再生して、その搬送波を用いて高周波変調信号を同期復調して受信データを得るQPSK復調装置50を有している。このQPSK復調装置50から、受信データr1 、r2 が得られる。これらの受信データr1 、r2 は、一旦、受信データ記憶装置55に記憶される。この受信データ記憶装置は、2つのパイロットデータ間の受信データ(両側のパイロットデータも含めて)を、少なくとも、2区間記憶するものである。すなわち、1区間の受信データを受信して、順次、記憶している間に、前区間の受信データの復号処理を行うように構成されている。受信データr1 、r2 は複素空間にけおる任意の値exp(j θ) であり、まだ、exp(j (2k−1)π/4)(ただし、k=1,2,3,4)の離散値には判定されて復号されていない値である。本明細書では、この離散的な真の送信データを求めることを復号と言い、誤り訂正符号を用いたブロック復号も、復号という。
また、復調装置25は、受信データ判定部51と初期伝送路行列演算部52とMIMOデコード部53と伝送路行列更新部54、信頼度更新部56、復号データ選択部57などから主に構成されている。これらは、アナログ回路、デジタル回路、コンピュータ・ハードウェア、またはコンピュータ・ソフトウェアなどによって実現することができ、それらの実現方式は任意でよく、特段限定されるものではない。
そして、この復調装置25の最も大きな特徴は、信頼度更新部56により第1信頼度W(m)と第2信頼度W’(n−k)とを、復号データベクトルと受信データベクトルと伝送路行列G(m)、G’(n−k)とから求められる判定誤差Γ(m)、Γ’(n−k)により、順次更新し、復号データ選択部57により、両方向から順次伝送路行列を推定して得られた2種類の復号データベクトルから、一方の復号データベクトルを復号すべきデータとする点に大きな特徴がある。
受信データ判定部51は、受信データr1 ,r2 がパイロットデータであるか否かを判定し、これらがパイロットデータである場合には、受信データr1 ,r2 を初期伝送路行列演算部52へ、そうでなければ受信データr1 ,r2 をMIMOデコード部53へ送出する。また、同時に、受信データr1 ,r2 がパイロットデータである場合には、スイッチsw1を接点aに接続し、そうでなければスイッチsw1を接点bに接続する。
初期伝送路行列演算部52は、入力されたパイロットデータに基づいて、送信局と当該受信局との間のマルチパスの各伝搬路特性を推定する。即ち、(10)、(11)、(12)式にしたがって、初期伝送路行列H(1)を演算する。その後、(14)式に従って、次の復調時刻2における補正された初期伝送路行列G(2)を求め、接点aに出力する。
MIMOデコード部53は、スイッチsw1から初期伝送路行列G(2)を入力する。次に、MIMOデコード部53は、パイロットデータではない復号されるべき受信データr1 ,r2 を受信データ判定部51から入力する。そして、(16)〜(20)式に従って、最初のデータの復号データq(2)を得る。
また、一般に、データの復調時刻mにおいては、受信データ判定部51から受信データベクトルr(m)を入力して、伝送路行列更新部54からその時刻における伝送路行列G(m)を入力して、(24)式によるノルムLr (m)が最小となる候補送信データベクトルuを真の復号データベクトルq(m)として求める。
伝送路行列更新部54は、受信データ判定部51から既に入力されているパイロットデータブロックではない復調時刻m−1、mにおける受信データベクトルr(m−1)、r(m)から、受信データ行列R(m)を生成する。また、伝送路行列更新部54は、MIMOデコード部53から、既に、入力されている復号データベクトルq(m)、q(m−1)から復号データ行列Q(m)を生成し、(27)式により伝送路行列H(m)を求め、(29)式により時刻m+1における補正された伝送路行列G(m+1)を求める。そして、伝送路行列G(m+1)をMIMOデコード部53に出力する。MIMOデコード部53は、次の復調時刻m+1において、入力した受信データベクトルr(m+1)と、伝送路行列G(m+1)から、復号データベクトルq(m+1)を求める。
また、時刻の経過方向とは逆方向に、伝送路行列G’(n−k)を推定し、復号データベクトルq(n−k)を求める方法は、図1に示すように、受信データを、第2パイロットデータの第2シンボルから順に、第1パイロットデータに向けて、受信データ記憶装置55から読み出して、実行するだけで、上記と異なるところはない。また、その方法は、既に、説明した。
信頼度更新部56は、次のように動作する。上述したように、(24)式により、判定誤差Γ(m)、Γ’(n−k)を求め、隣接する復号データベクトル間距離の1/2で正規化する。次に、事後確率P(m)、P’(n−k)を、正規化された判定誤差Γ(m)、Γ’(n−k)を用いて、exp(−Γ(m)2 /2)、exp(−Γ(n−k)2 /2)でも求める。第1信頼度W(m)、第2信頼度W’(n−k)の初期値を、それぞれ、1とする。この事後確率をしきい値0.7と比較して、0.7以上であれば、W(m)=W(m−1)、W’(n−k)= W’(n−k+1)とする。また、事後確率が、しきい値よりも小さい場合には、W(m)=ε・W(m−1)、W’(n−k)=ε・ W’(n−k+1)とする。
復号データ選択部57は、次のように動作する。m+k=nを満たす、時刻m、n−kに関して、第1信頼度W(m)と第2信頼度W’(n−k)との大小比較を行う。そして、既に得られている復号データベクトルq(m)、q(n−k)のうちで、信頼度の高い方向の復号データベクトルを、復号すべきデータとする。
復号データ選択部57により選択された信頼度の高い方向の復号データベクトルは、ブロック復号部58に入力される。ブロック復号部58は、1ブロック(本実施例では、第1パイロットデータと第2パイロットデータ間に存在する復号データベクトル)の復号データベクトルの入力が完了する毎に、復号データベクトル列をビット列に変換して、受信符号語を得た上で、上記した最小距離復号法又は最尤復号法により、受信符号語を、復号する。その復号された符号語は、データ決定部59に入力する。データ決定部59では、ブロック復号部58により、基準符号語が見つからなたった場合、CRC符号やパリティチェックビットを有する場合には、ブロック復号した結果のCRCチェックや、パリティチェックにより、データに誤りが有るか否かが判定される。その結果、ブロック復号できなかった場合や、ブロック復号した符号語に誤りが存在する場合には、ブロック復号する前の受信符号語のうちで、データのみを抽出して、これを真のデータとする。ブロック復号が正しく完了した場合や、復号結果に誤りが存在しない場合には、そのブロック復号した結果の符号語から、データを抽出して、これを最終的に、真のデータとする。
次に、復調装置25の動作手順について、図4に基づいて説明する。本実施例では、図3の装置は、コンピュータ装置で実現したもので、受信された高周波変調信号をサンプリングして、ディジタルデータにしてから、QPSK復調以下の処理を行うものである。受信データ記憶装置55は、FIFO構造のバッファメモリを構成しており、QPSK復調された受信データをリアルタイムで、2つのパイロットデータ間(両パイロットデータを含む)のデータを、少なくとも2区間分だけ記憶している。図4のプログラムは、受信データ記憶装置55に記憶されいる上記の1区間分だけ前の受信データを読み出して、処理するプログラムである。
複素空間のベースバンドの受信データrに変換されたデータに関して、以下の処理が実行される。図4の手順は、復調装置25が受信モードになった時に実行される。まず、ステップ100において、受信データベクトルrが、受信データ記憶装置5から読み取られ、ステップ102で、装置が受信モードに設定されてから、初めて入力するデータがパイロットデータか否かが判定される。パイロットデータが入力されていない場合には、伝送路行列が、全く求まっていないので、受信データの復調処理をすることなく、ステップ100に戻る。このステップ100、102のループにより、最初のパイロットデータが入力されるまで、CPUは、待機することになる。
次に、初めてのパイロットデータが入力されると、初めて、受信データの処理が可能となる。パイロットデータであれば、ステップ104において、受信データベクトルr(m)として記憶し、時刻変数mを1だけ更新する。次に、ステップ106において、次の受信データベクトルrが読み込まれ、次のステップ106において、パイロットデータか否かが判定される。パイロットデータであれば、次のステップ110において、パイロットデータの先頭か否かが判定れる。先頭でない場合には、次のステップ112で、受信データベクトルr(m)を、他の記憶領域に記憶し、復調時刻変数mを1だけ更新し、ステップ114へ移行して、パイロットデータの終了か否かが判定される。受信データがパイロットデータの最終でない場合には、ステップ106へ移行して、受信データの記憶を繰り返す。受信データがパイロットデータの最終である場合には、本実施例では、2シンボルの受信パイロットデータr(0)、r(1)の入力が完了したことになるので、ステップ116に移行して、初期伝送路行列H(1)が、(12)式により演算される。ここで、送信データ行列S(1)は、パイロットデータs(0)、s(1)で構成されるので、受信装置において既知の値である。次に、ステップ118において、(14)式により、初期伝送路行列H(1)の補正演算を行って、次の復調時刻2における補正された初期伝送路行列G(2)が求められる。そして、次の受信データを読み取るべく、ステップ106に戻る。
ステップ108で、受信データがパイロットデータでないと判定された場合には、復号すべきデータであるから、ステップ120に移行して、受信データベクトルr(m)を、他の領域に記憶して、時刻変数mを1だけ更新して、ステップ122に移行する。ステップ122では、時刻mにおける補正された伝送路行列(m)、既に得られている受信データ行列R(m)とから、(23)、(24)式により、候補送信データベクトルuの中から、ノルムLr (m)を最小とする復号データベクトルq(m)を求める。また、判定誤差W(m)を、求められた送信データベクトルG-1(m)・r(m)と、復号データベクトルq(m)との差ベクトルのノルム、または、受信データベクトルr(m)と、復号データベクトルq(m)のレプリカ受信データベクトルG(m)・q(m)との差ベクトルのノルム、すなわち、(24)式のuを、復号データベクトルq(m)として得られるノルムにより、求める。そして、この判定誤差Γ(m)を別の領域に記憶する。
次に、ステップ124において、復号データ行列Q(m)、受信データ行列R(m)とから、伝送路行列(m)を(26)、(27)式により求める。次に、次の復調時刻m+1での補正された正確な伝送路行列G(m+1)を(29)式により求める。そして、ステップ106に戻る。この処理の繰り返しにより、受信データベクトルr(m)から、精度高く、復号データベクトルq(m)を得ることができる。
また、このデータの復号の後に、次のパイロットデータが受信されると、ステップ108の判断がYes となるので、ステップ110で、パイロットデータの先頭か否かが判定されて、判定がYes であれば、ステップ128において、時刻変数mが0に初期設定され、次のステップ112で、受信データベクトルr(m)は、受信パイロットデータr(0)として、別の領域に記憶される。このような処理により、パイロットデータが受信される毎に、伝送路行列H、Gは、初期値にリセットされることになり、伝送路の推定誤差が伝搬することを防止することができる。
一方、時刻の経過方向とは逆方向に伝送路行列G’(n−k)を推定する処理は、図5に示すものとなる。時刻は、図1に示すように、第2パイロットデータから第1パイロットデータの逆方向に向けて、時刻1、0、n、n−1,…n−k,2ととられる。時刻のとり方、すなわち、受信データの入力の仕方が逆方向であるだけで、処理手順は、図4と全く同一である。また、処理手順は、詳しく説明しているので、説明を省略する。
このような、図4の処理と、図5の処理とが、1受信データ単位で、交互に、実行される。したがって、この処理により、図1に示すように、時刻の経過方向と、その逆方向に沿って、順次、復号データベクトルq(m)と、q(n−k)と、判定誤差Γ(m)、Γ’(n−k)が、記憶装置に記憶されることになる。
次に、1パイロットデータ区間の上記の処理が完了すると、図6Aのプログラムが実行される。ステップ300では、記憶されている全ての判定誤差Γ(m)、Γ’(n−k)について、隣接する基準符号ベクトル間距離の1/2で、正規化する。そして、exp(−Γ(m)2 /2)、exp(−Γ(n−k)2 /2)で、事後確率P(m)、P’(n−k)を求める。次に、ステップ304で、信頼度の初期値W(1)を1、W’(0)を1に設定し、ステップ306で、変数m、kを初期値の2、0に、それぞれ、初期設定する。
次に、ステップ308において、事後確率P(m)が、しきい値(0.7)と比較され、0.7以上であれば、ステップ310で、第1信頼度W(m)の値は、前回の第1信頼度W(m−1)に等しくし、0.7よりも小さい場合には、ステップ312において、第1信頼度W(m)の値は、前回の第1信頼度W(m−1)に定数ε(0<ε<1)を掛けた値とする。同様に、ステップ314において、事後確率P’(m)が、しきい値(0.7)と比較され、0.7以上であれば、ステップ316で、第2信頼度W’(n−k)の値は、前回の第2信頼度W’(n−k+1)に等しくし、0.7よりも小さい場合には、ステップ318において、第2信頼度W’(n−k)の値は、前回の第2信頼度W’(n−k+1)に定数ε(0<ε<1)を掛けた値とする。この処理を、ステップ320で、mの値がnを越えるまで、ステップ322で、変数m、kを1だけ更新して、ステップ308に戻り、繰り返す。これらの処理により、第1信頼度、第2信頼度が演算されたことになる。
次に、ステップ324で、変数mを2に初期設定し、ステップ326で、第1信頼度W(m)が、第2信頼度W’(m)以上か否かが判定される。判定結果が、yes であれば、ステップ328において、時刻の経過方向に推定した時の復号データベクトルq(m)を、正規の復号データベクトルとする。また、ステップ326の判定結果がnoであれば、ステップ330において、時刻の経過方向と逆方向に推定した時の復号データベクトルq(n−k)を、正規の復号データベクトルとする。
第1、第2信頼度W(m)、W’(n−k)が、時刻と共に変化する様子を図1に破線で示す。時刻m−1において、第2信頼度W’(n−k)が、第1信頼度W(m)よりも大きくなっていることが分かる。この場合には、時刻0〜時刻m−2までは、時刻の経過方向に推定した復号データベクトルq(m)が、正規の復号データベクトルとされ、時刻m−1から時刻nまでは、時刻の経過方向とは逆方向に推定した復号データベクトルq(n−k)を、正規の復号データベクトルとする。
上記のように、時刻の経過方向だけで伝送路行列を推定した場合には、たとえば、時刻mより後では、全て、復号誤りが発生する場合であっても、本発明により、時刻の経過方向と逆方向に伝送路行列を推定することにより、全区間において、復号誤りを発生させないことが可能となる。
このようにして、第1パイロットデータと第2パイロットデータとの間に存在する1ブロックにおける、推定信頼度の高い方の伝達特性に基づいて得られた復号データベクトルq(m)、復号データベクトルq(n−k)が得られると、次に、図6Bの処理手順にしたがって、ブロック復号が実行される。ステップ400では、上記の復号データベクトルを構成する各シンボルがビット列に符号化されて、1ブロックの受信符号語が得られる。次に、この受信符号語が、ステップ402でブロック復号されて、次のステップ404で、ブロック復号で基準符号語が見つからなかったか否か、データにCRC符号やパリティチェックビットが付加されている場合には、ブロック復号の結果、CRC符号判定やパリティチェック判定により、データに誤りが有るか否かが判定される。次に、基準符号語が見つかった場合やブロック復号結果のデータに誤りがない場合には、ステップ408で、ブロック復号された結果の符号語から、第1データ時間区分D1、第2データ時間区分D2に配列されているデータが抽出される。また、基準符号語が見つからなかった場合やブロック復号結果のデータに誤りがある場合には、ステップ406において、ブロック復号する前の受信符号語において、第1データ時間区分D1、第2データ時間区分D2に配列されているデータが抽出される。
上記のような時刻の両方向から伝達特性を逐次、推定しても、復号誤りがある場合がある場合が有り得る。すなわち、隣接するパイロットデータの中間部で、伝送路の伝達特性の推定精度が低下した結果、ブロック復号した場合に、バーストビットエラーが発生して、誤り訂正符号を用いても、正確に復号できない場合がある。このような場合でも、ブロック復号する前の受信符号語において、伝送路の伝達特性の推定精度が高い第1データ時間区分D1、第2データ時間区分D2に配列されているデータの符号を抽出することで、正確なデータの復号が可能となる。したがって、さらに、復号誤りの存在する確率が低下する。
実施例1は、時刻の経過方向と、これとは逆方向の双方向に沿って、伝送路の伝達特性を、順次、推定するようにしている。本実施例は時刻の経過方向に沿ってのみ、伝送路の伝達特性を推定するようにしたものである。実施例1と構成が特に変わるものではなく、図3において、信頼度更新部56、復号データ選択部57が不要となり、時刻の経過方向に沿って推定された伝達特性を用いて、MIMOデコード部53により復号化された復号データベクトルq(m)が、ブロック復号部58に出力される。図4の処理では、ステップ123の判定誤差を求める手順が不要であるが、特に、変更は不要である。図5、図6Aの処理は不要である。図6Bの処理手順は、図4の処理により求められた復号ベクトルq(m)の1ブロック分のデータに対して実行される。そして、図6Bのステップ406、408で抽出されるデータが、図8(a)のデータ時間区分Dに配列されているデータである点において異なる。データ時間区分Dにおける伝送路の伝達特性の推定精度は、訂正符号時間区分Eの伝達特性の推定精度よりも高いので、訂正符号時間区分Eで、誤り訂正できないビットエラーが発生した場合であっても、データをより正確に復元できる。
実施例1、2は、データの復調時刻毎に伝送路行列を推定する方法を採用している。本実施例では、(24)式により、受信データベクトルr(m)と、レプリカ受信データベクトルG(m)uとの差ベクトルのノルムLr (m)の最小値、すなわち、受信データベクトルr(m)とレプリカ復号データベクトルG(m)q(m)のノルムLq (m)が所定値Th以上である場合に、伝送路行列を更新するようにしたことが特徴である。図7に示すように、図4のステップ122と123との間に、ステップ500の判定ステップを挿入している。ステップ500で、上記のノルムLq (m)が所定値Th以上と判定された場合には、図4のステップ123以下の判定誤差Γ(m)の演算、送路行列H、Gの更新処理が実行され、そうでない場合には、図4のステップ123以下の更新処理をすることなく、図4のステップ106に戻り、次の復調時刻m+1での受信データベクトルr(m+1)の読取が実行される。
また、高周波変動誤差があることを考慮して、ノルムLq (m)が所定回数(例えば、3、4回)連続して、所定値Th以上となった場合に、伝送路行列の更新を行うようにしても良い。さらに、ノルムLq (m)の過去の所定回数分の平均値が、所定値Th以上となった場合に、伝送路行列の更新を行うようにしても良い。
実施例1、2、3は、時刻m−1、mの2時刻における2シンボル分の復号データベクトルq(m−1)、q(m)と、受信データベクトルr(m−1)、r(m)から、伝送路行列H(m)、補正された伝送路行列G(m+1)を求める方式である。したがって、伝送路の高周波的変動が直ちにデータの復号に反映されることになる。これも一つの利点ではあるが、この高周波変動を除去して、ある時間範囲での平均された値で伝送路行列を求めるのも効果がある。このために、実施例1、2における図4のステップ126の後に、その意味を上述したように、高周波成分を除去する(31)、(32)式で示すH2 (m)、G2 (m+1)、H3 (m)、G3 (m+1)を、データの復号に用いる伝送路行列としている。
本実施例は、パイロットデータをサブキャリアで送信するマルチキャリア方式に、本発明を用いたものである。
あるサブキャリアでの符号語は、図8(a)、(b)に示すように構成されている。この構成の符号語が、図9に示すように、各サブキャリ毎に、周波数軸方向に配列されている。そして、パイロットデータを送信するサブキャリアf1,f2間に存在する時間−周波数空間のデータの集合に対して、それらのデータのビット列の線形結合により、誤り訂正符号が発生される。そして、時刻の経過方向に沿ってのみ伝達関数を推定する場合には、図9(a)に示すように、時間軸方向に対しては、パイロットデータに近い領域で、周波数軸方向に対しては、パイロットデータを送信しているサブキャリアf1,f2に近い領域に、データが配列される。誤り訂正符号は、パイロットデータから遠く、且つ、パイロットデータを送信しているサブキャリアからも遠い領域に、配列される。
時刻の経過方向と、これとは逆方向との双方向に沿って伝送路の伝達関数を推定する場合には、図9(b)に示すように、時間軸方向に対しては、第1及び第2パイロットデータに近い領域と、周波数軸方向に対しては、パイロットデータを送信しているサブキャリアに近い領域とを合成したデータ区分Bに、データが配列される。誤り訂正符号は、第1及び第2パイロットデータから遠く、且つ、パイロットデータを送信しているサブキャリアf1,f2からも遠い領域に、すなわち、時間−周波数座標において、1ブロックの中央部の訂正符号区分Aに、配列される。データ区分Bは、第1パイロットデータ、第2パイロットデータ、パイロットデータを送信するサブキャリア周波数f1,f2で囲まれた長方形の領域から、中心部の長方形の領域である訂正符号区分Aを除いた領域である。 ブロック復号できない場合やブロック復号の結果に誤りがある場合には、ブロック復号することなく、受信符号語の中から、これらのデータ区分Bのデータを真の復号データとして採用する。
本実施例は、パイロットデータを送信するサブキャリアf1,f2の間のサブキャリア毎のデータを1ブロックにまとめて、ブロック符号化するものである。実施例1、2において、復号データベクトルq(m)と、復号受信データベクトルq(n−k)を、サブキャリア毎に、復号して、サブキャリア毎の受信符号語を求め、これらの符号語を時間−周波数座標系における1ブロックで、ブロック復号する点のみが異なる。したがって、装置構成や処理手順は、実施例1、2と同様となる。なお、1ブロックの採りかたは任意であり、周波数軸方向に関して、パイロットデータを送信するサブキャリアf1,f2の間に設定する必要はない。
〔変形例〕
全実施例において、補正された伝送路行列Gを用いることなく、伝送路行列H(m)を次の復調時刻m+1でのデータの復号に用いる伝送路行列としても良い。また、パイロットデータは、2×2のMIMOの場合には、少なくとも2シンボルあれば良い。パイロットデータは、送信データ行列を正方行列とするために、少なくとも送信アンテナの数だけのシンボルを有すれば良い。パイロットデータを最低限のシンボル数以上とした場合には、複数の初期伝送路行列を求めることができるので、それらの平均値などを用いることで、さらに、正確な初期伝送路行列を得ることができると共に、伝送路の変化特性を予測することができる。
本発明は、高品質の移動体通信に用いることができる。
本発明に係る伝送路行列の逐次更新を示した説明図。 本発明の具体的な一実施例に係るMIMO伝送方式を示した説明図。 本発明の実施例1に係る装置の構成を示したブロック図。 本発明の実施例1に係る装置のCPUの動作手順を示したフローチャート。 本発明の実施例1に係る装置のCPUの動作手順を示したフローチャート。 本発明の実施例1に係る装置のCPUの動作手順を示したフローチャート。 本発明の実施例1に係る装置のCPUの動作手順を示したフローチャート。 本発明の実施例3に係る装置のCPUの動作手順の特徴部を示したフローチャート。 実施例2及び実施例1のブロック符号化における符号語の構成を示した構成図。 実施例5のブロック符号化における符号語の構成を示した構成図。
符号の説明
10…送信装置
15…多重化装置
20…受信装置
25…復調装置
50…QPSK復調装置
51…受信データ判定部
52…初期伝送路行列演算部
53…MIMOデコード部
54…伝送路行列更新部
57…復号データ選択部
58…ブロック復号部
59…データ決定部

Claims (9)

  1. 受信側において既知のパイロットデータと、伝送すべき情報のデータと、誤り訂正符号とを無線により送信し、受信側では、受信した前記パイロットデータにより求められる伝送路の伝達特性を初期特性として、伝送路の伝達特性を順次推定して、受信データを復号すると共に、誤り訂正符号により、受信データの誤りを訂正して、前記受信データを復号するデータ伝送方法において、
    前記データを送信するデータ時間区分と、前記誤り訂正符号を送信する訂正符号時間区分とを分離して、前記パイロットデータの次にデータ時間区分を設けて、その区分において前記データを、その後に、訂正符号時間区分を設けて、その区分において前記誤り訂正符号を送信することを特徴とするデータ伝送方法。
  2. 受信側において既知のパイロットデータと、伝送すべき情報のデータと、誤り訂正符号とを無線により送信し、受信側では、伝送路の伝達特性を順次推定して、受信データを復号すると共に、誤り訂正符号により、受信データの誤りを訂正して、前記受信データを復号するデータ伝送方法において、
    受信側において、受信した隣接する第1パイロットデータと第2パイロットデータ及びそれらのパイロットデータ間に存在する受信データを記憶し、
    記憶された前記第1パイロットデータにより求められる伝送路の伝達特性を第1初期特性として、時刻の進行する方向に、順次、伝送路の伝達特性を推定し、
    記憶された前記第2パイロットデータにより求められる伝送路の伝達特性を第2初期特性として、時刻の進行する方向とは逆方向に、順次、伝送路の伝達特性を推定し、
    これらの伝達特性のうちで、信頼度の高い方の伝達特性により、記憶された前記受信データを復号すると共に、誤り訂正符号により誤りを訂正して受信データを復号し、
    送信側においては、前記データを送信する第1データ時間区分と第2データ時間区分と、前記誤り訂正符号を送信する訂正符号時間区分とを、それぞれ、分離して、前記第1パイロットデータ、前記第1データ時間区分のデータ、訂正符号時間区分の誤り訂正符号、前記第2データ時間区分のデータ、前記第2パイロットデータの順に、送信するようにしたことを特徴とするデータ伝送方法。
  3. 前記データは、重要度の高いシンボルから、順に、前記パイロットデータに続いて配列されることを特徴とする請求項1に記載のデータ伝送方法。
  4. 前記データは、重要度の高いシンボルほど、前記第1パイロットデータと前記第2パイロットデータの近くに配列することを特徴とする請求項2に記載のデータ伝送方法。
  5. 前記誤り訂正符号を用いた誤り訂正復号において、復号できない場合又は誤りが存在する場合には、前記データ時間区分のデータだけを用いて、復号することを特徴とする請求項1又は請求項3に記載のデータ伝送方法。
  6. 前記誤り訂正符号を用いた誤り訂正復号において、復号できない場合又は誤りが存在する場合には、前記データ時間区分のデータだけを用いて、復号することを特徴とする請求項2又は請求項4に記載のデータ伝送方法。
  7. パイロットデータを送信するサブキャリアを用いたマルチキャリア伝送方式であって、 送信側においては、周波数軸方向において、前記データを送信するデータ周波数区分と、前記誤り訂正符号を送信する訂正符号周波数区分とに分離して、前記データ周波数区分のデータを、前記パイロットデータを送信するサブキャリアの近くの周波数領域に配列し、前記訂正符号周波数区分の誤り訂正符号を、前記パイロットデータを送信するサブキャリアに対して、遠い側に配列したことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のデータ伝送方法。
  8. 前記データは、重要度の高いシンボルほど、パイロットデータを送信するサブキャリアに近く、配列することを特徴とする請求項7に記載のデータ伝送方法。
  9. 前記誤り訂正符号を用いた誤り訂正復号において、復号できない場合又は誤りが存在する場合には、前記データ周波数区分のデータだけを用いて、復号することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のデータ伝送方法。
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JP2019047182A (ja) * 2017-08-30 2019-03-22 ホーチキ株式会社 受信機

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