JP2009112081A - 永久磁石形同期電動機の制御装置 - Google Patents

永久磁石形同期電動機の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置において、電動機鉄芯が磁気飽和しにくく正確な磁極位置演算が困難な場合にも、電動機の始動時の安定性を向上させる。
【解決手段】磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置において、回転子の突極性を利用して第1の磁極位置θを演算するための電流座標変換器14、バンドパスフィルタ24、速度演算器25、電気角演算器26と、第1の磁極位置θに直交する位置を第2の磁極位置θとして演算する加算器30及びサンプル・ホールド回路31aとを備え、第2の磁極位置演算値を用いて永久磁石形同期電動機80を運転する。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置に関し、詳しくは、回転子に突極性がある埋込磁石構造永久磁石形同期電動機をスムースに始動するための制御装置に関するものである。
永久磁石形同期電動機(以下、PMSMともいう)の制御装置の低価格化や省スペース等の観点から、磁極位置検出器を用いずに磁極位置を推定して電動機を運転する、いわゆるセンサレス制御技術が実用化されている。
ところで、PMSMは、回転子の構造によって、表面磁石構造永久磁石形同期電動機(以下、SPMSMともいう)と埋込磁石構造永久磁石形同期電動機(以下、IPMSMともいう)との2種類に大別される。これらのうち、IPMSMについては、回転子の突極性(回転子の磁極方向であるd軸と、これに直交するq軸とでインダクタンスが異なる性質)を利用して磁極位置を演算する技術が実用化されている。
例えば、非特許文献1及び特許文献1には、回転子の磁極方向であるd軸と、制御装置側で推定したd軸(両文献ではdc軸と表記)との間に角度誤差がある場合に、推定のd軸とこれに直交する推定のq軸(両文献ではqc軸と表記)との間の角度誤差に依存して発生する相互インダクタンスを利用して磁極位置を演算する技術が開示されている。
具体的には、推定のd軸と平行方向に交番する高周波電圧を印加し、このときに推定のq軸に流れる高周波電流が零になるように磁極位置を演算している。
しかし、このようにして演算した磁極位置は、原理的に回転子のN極とS極とを判別することができないため、180[deg]の誤差を持つことがある。
そこで、非特許文献1では、N極方向とS極方向とで電動機鉄芯の磁気飽和特性によるインダクタンス値が異なることを利用して、N極とS極とを判別している。具体的には、推定のd軸のプラス方向、及び、推定のd軸のマイナス方向にパルス電圧を印加したときの電流応答を比較して磁極位置を補正するものである。
上記により補正した磁極位置を用いることで、磁極位置検出器を持たない電動機を安定して始動することができる。
Takashi Aihara, Akio Toba, Takao Yanase, Akihide Mashimo, Kenji Endo, 「Sensorless Torque Control of Salient-Pole Synchronous Motor at Zero-Speed Operation」, IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS, VOL. 14, NO.1, JANUARY 1999 特許第3312472号公報(段落[0014]〜[0044]、図1,図5,図6等)
非特許文献1では、回転子のN極とS極とを判別するために、電動機鉄芯の磁気飽和特性を利用している。しかしながら、電動機鉄芯が磁気飽和しにくい場合や回転子のN極方向とS極方向とで磁気飽和特性に顕著な相違がない場合には、N極とS極とを正確に判別することができず、磁極位置を正確に演算することができない。
このように磁極位置を正確に演算できない場合には、電動機のトルクを正確に制御することができず、トルクや速度に振動が発生し、場合によっては制御系が不安定になることがある。
そこで本発明の解決課題は、電動機鉄芯が磁気飽和しにくいような場合でも磁極位置を正確に演算可能として始動時の安定性を向上させた永久磁石形同期電動機の制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置において、回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、を備え、前記第2の磁極位置演算値を用いて電動機を運転するものである。
第1の磁極位置演算値の演算誤差が最大180[deg]であるのに対し、本発明における第2の磁極位置演算値の演算誤差は±90[deg]となり、誤差が1/2に低減される。このため、第2の磁極位置演算値を利用して電動機を運転することで、始動時の安定性を従来よりも改善することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の制御装置に加えて、回転子の突極性を利用して求めた第1の回転子速度を第2の磁極位置演算値と共に用いて電動機を運転することにより、電動機が回転している場合にも安定した始動を可能にする。
請求項3に係る発明は、回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、電動機の電流をベクトルとしてとらえ、電流ベクトルの初期位置を前記第2の磁極位置演算値とすると共に、前記電流ベクトルの振幅を、所定期間、零でない任意の値に制御して磁極位置を前記電流ベクトルの位置に一致させる磁極位置合わせ手段と、を備え、前記磁極位置合わせ手段の動作により前記磁極位置に一致した後の前記電流ベクトルの位置を用いて電動機を運転するものである。
本発明によれば、磁極位置合わせを実行した後の電流ベクトルの位置と磁極位置とが等しくなるため、その電流ベクトルの位置を利用して電動機を運転することにより、始動時の安定性を更に向上させることができる。
請求項4に係る発明は、回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、回転子の突極性を利用して第1の回転子速度を演算する手段と、電動機の電流をベクトルとしてとらえ、電流ベクトルの初期位置を前記第2の磁極位置演算値とすると共に、前記電流ベクトルの振幅を、所定期間、零でない任意の値に制御し、かつ、前記電流ベクトルの速度を前記第1の回転子速度演算値に制御して磁極位置を電流ベクトルの位置に一致させる磁極位置合わせ手段と、を備え、前記磁極位置合わせ手段の動作により前記磁極位置に一致した後の前記電流ベクトルの位置及び速度を用いて電動機を運転するものである。
すなわち本発明は、請求項3記載の制御装置に、第1の回転子速度を演算する手段を加え、磁極位置合わせ手段における電流ベクトルの速度を第1の回転子速度演算値に制御することにより、電動機が回転している状態でも電流ベクトルに回転子を安定に引き込めるようにしたものである。
本発明において、磁極位置合わせを行った後の磁極位置及び回転子速度は、それぞれ電流ベクトルの位置及び速度に等しいことから、これらを利用して電動機を運転することで、電動機が回転している状態から始動する時の安定性を更に向上させることができる。
請求項5に係る発明は、請求項3における磁極位置合わせ手段を簡略化したものである。
すなわち、本発明は、回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、前記電動機の端子電圧をベクトルとしてとらえ、端子電圧ベクトルの初期位置を前記第2の磁極位置演算値とすると共に、前記端子電圧ベクトルの振幅を、所定期間、零でない任意の値に制御して磁極位置を前記端子電圧ベクトルの位置に一致させる磁極位置合わせ手段と、を備え、前記磁極位置合わせ手段の動作により前記磁極位置に一致した後の端子電圧ベクトルの位置を用いて電動機を運転するものである。
本発明において、磁極位置合わせを行った後の端子電圧ベクトルの位置は磁極位置と等しくなるため、その端子電圧ベクトルの位置を利用して電動機を運転することができる。
請求項6に係る発明は、回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、回転子の突極性を利用して第1の回転子速度を演算する手段と、前記電動機の端子電圧をベクトルとしてとらえ、端子電圧ベクトルの初期位置を前記第2の磁極位置演算値とすると共に、前記端子電圧ベクトルの振幅を、所定期間、零でない任意の値に制御し、かつ、前記端子電圧ベクトルの速度を前記第1の回転子速度演算値に制御して磁極位置を前記端子電圧ベクトルの位置に一致させる磁極位置合わせ手段と、を備え、前記磁極位置合わせ手段の動作により前記磁極位置に一致した後の前記端子電圧ベクトルの位置及び速度を用いて前記電動機を運転するものである。
すなわち、本発明は、請求項5記載の制御装置に第1の回転子速度を演算する手段を加え、磁極位置合わせ手段における端子電圧ベクトルの速度を第1の回転子速度演算値に制御することで、電動機が回転している場合にも端子電圧ベクトルに回転子を安定に引き込めるようにしたものである。
本発明において、磁極位置合わせを行った後の磁極位置及び回転子速度は、それぞれ端子電圧ベクトルの位置及び速度に等しいことから、これらを利用して電動機を運転することで、電動機が回転している場合にも安定に始動することができる。
請求項7記載の発明は、回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、回転子の突極性を利用して第1の回転子速度を演算する手段と、前記第2の磁極位置演算値と前記第1の回転子速度演算値とを、それぞれ第3の磁極位置演算値の初期値と第2の回転子速度演算値の初期値とし、少なくとも電動機の電気定数、電流及び端子電圧を用いて第3の磁極位置演算値と第2の回転子速度演算値とを演算する手段と、を備え、前記第3の磁極位置演算値と第2の回転子速度演算値とを用いて電動機を運転するものである。
上記第3の磁極位置演算値は原理的に演算誤差を持たないことから、この第3の磁極位置演算値と第2の速度演算値とを用いて電動機を運転することにより、始動時の安定性向上が可能である。
本発明によれば、電動機鉄芯が磁気飽和しにくい永久磁石形同期電動機、特にIPMSMの始動時における安定性を従来よりも向上させることができる。
以下、図に沿って本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、請求項1に相当する本発明の第1実施形態を示すブロック図である。まず、この実施形態の説明を行う前に、回転子の突極性を利用した磁極位置及び速度の演算原理について説明する。
PMSMは、回転子のd軸(回転子の磁極方向)とd軸から90度進んだq軸とで電流制御を行うことにより、高精度な制御を実現することができる。しかしながら、磁極位置検出器を持たない場合、d,q軸を直接検出することができない。
このため、d,q軸に対応した角速度ω(=速度演算値)で回転する直交回転座標系のγ,δ軸上で制御演算を行う。このγ,δ軸の定義を図9に示す。図9において、ωはd,q軸の回転角速度、θerrはd,q軸とγ,δ軸との角度誤差(位置演算誤差)である。
さて、γ軸方向に正弦波の高周波交番電圧Vsinωtを印加したときの高周波成分の状態方程式は、数式1によって表される。
Figure 2009112081
このときに流れる高周波電流は、数式1の状態方程式を積分することにより、数式2によって表される。
Figure 2009112081
数式2より、γ軸方向に高周波交番電圧を印加すると、δ軸高周波電流iδhは位置演算誤差θerrの2倍周期で変化することがわかる。なお、図10は、位置演算誤差θerrとγ,δ軸高周波電圧振幅Iγh,Iδhとの関係を示している。
図10によれば、δ軸高周波電圧振幅Iδhが零になる時に、d軸を基準とする位置演算誤差θerrは零または180[deg]に収束する。このため、回転子の突極性を利用し、高周波交番電圧を印加してδ軸高周波電圧振幅Iδhが零になるように求めた磁極位置演算値をそのまま使って電動機を運転すると、位置演算誤差θerrが180[deg]の場合には、始動時にトルクや速度が大きく振動したり制御系が不安定になることがある。
従って、突極性を利用して求めた磁極位置演算値(第1の磁極位置演算値という)θに90[deg]を加算したものを第2の磁極位置演算値とすれば、その演算値と実際値との磁極位置演算誤差θerrは+90[deg]または−90[deg]となり、誤差を従来の1/2に低減することができる。
このように第1の磁極位置演算値θを補正して得た第2の磁極位置演算値を利用して電動機の運転を開始すれば、始動時に発生するトルクや速度の振動を低減させて安定性を向上させることができる。勿論、第1の磁極位置演算値θから90[deg]を減算して得た第2の磁極位置演算値を用いても、同様の安定化効果が得られる。
次に、上記の原理に基づく第1実施形態の構成及び動作を、図1のブロック図を参照しつつ説明する。
図1において、電流指令値iγ ,iδ は何れも零に制御される。電流座標変換器14は、u相電流検出器11u、w相電流検出器11wによりそれぞれ検出した相電流検出値i,iを第1の磁極位置演算値θに基づいてγ,δ軸電流検出値iγ,iδに座標変換する。ノッチフィルタ23は、γ,δ軸電流検出値iγ,iδから、磁極位置演算のためにγ軸方向に重畳する高周波交番電圧によって流れる高周波電流を除去し、γ,δ軸基本波電流iγf,iδfを検出する。
γ軸基本波電圧指令値vγf は、γ軸電流指令値iγ とγ軸基本波電流iγfとの偏差を減算器19aにより求め、この偏差をγ軸電流調節器20aにより増幅して演算する。また、δ軸基本波電圧指令値vδf は、δ軸電流指令値iδ とδ軸基本波電流iδとの偏差を減算器19bにより求め、この偏差をδ軸電流調節器20bにより増幅して演算する。
γ軸高周波電圧指令値vγh は、高周波電圧演算器21により生成する。γ軸電圧指令値vγ は、加算器22によってγ軸基本波電圧指令値vγf に正弦波の高周波交番電圧としてのγ軸高周波電圧指令値vγh を重畳して生成する。一方、δ軸電圧指令値vδ は、δ軸電流調節器20bから出力されるδ軸基本波電圧指令値vδf に制御する。
γ,δ軸電圧指令値vγ ,vδ は、電圧座標変換器15により、第1の磁極位置演算値θに基づき相電圧指令値v ,v ,v に変換される。
一方、整流回路60は、三相交流電源50の電圧を整流して得た直流電圧をインバータ等の電力変換器70に供給する。PWM回路13は、相電圧指令値v ,v ,v 、及び、入力電圧検出回路12により検出した電力変換器70の入力電圧Edcから、電力変換器70の出力電圧を前記相電圧指令値v ,v ,v に制御するためのゲート信号を生成する。電力変換器70は、ゲート信号に基づいて内部の半導体スイッチング素子を制御することで、永久磁石形同期電動機80の端子電圧を相電圧指令値v ,v ,v に制御する。
更に、バンドパスフィルタ24は、γ,δ軸電流検出値iγ,iδからγ軸高周波電圧指令値vγh と同じ周波数のγ,δ軸高周波電流振幅Iγh,Iδhを演算する。速度演算器25は、δ軸高周波電流振幅Iδhを比例積分演算して速度演算値ωを求める。電気角演算器26は、速度演算値ωを積分して磁極位置演算値θを求める。
これらの演算により、図10に示したように、δ軸高周波電流振幅Iδhひいては位置演算誤差θerrを零または180[deg]に収束させるPLL回路が構成され、第1の磁極位置演算値θを得ることができる。
処理開始から所定の時間が経過して、電気角演算器26から出力される磁極位置演算値θが真値に収束したら、サンプル・ホールド回路31aは、加算器30によって第1の磁極位置演算値θに90[deg]を加算した第2の磁極位置演算値を、初期磁極位置演算値θ10として保持する。この初期磁極位置演算値θ10を利用して回転子の位置を特定し、電動機80の運転を開始すれば、磁極位置演算誤差θerrを従来の1/2に低減して始動時の安定性を向上させることができる。
ここで、前述したように、第1の磁極位置演算値θから90[deg]を減算して初期磁極位置演算値θ10を求めても良い。
本実施形態における回転子の突極性を利用した磁極位置演算では、高周波電圧演算器21により正弦波の高周波交番電圧を重畳しているが、矩形波の高周波交番電圧を印加するなど、他の方式を採用してもよい。
なお、同期電動機80の運転方式としては、任意の方式を適用することができる。例えば、前述した非特許文献1に記載された高速域の位置・速度推定方式を適用したセンサレス制御が適用可能である。また、例えば特開2001−190093号公報に記載されている、電流ベクトルの振幅を零でない一定値に制御し、電流ベクトルの速度を速度指令値に制御して回転子を電流ベクトルに引き込んで運転する方式(以下、電流引き込み制御と呼ぶ)も適用可能である。更に、特開2000−236694号公報に記載されているようなV/f制御も適用可能である。
次に、請求項2に相当する本発明の第2実施形態を説明する。図2は、この実施形態の構成を示すブロック図である。
この実施形態は、第1実施形態に加えて、回転子の突極性を利用して演算した回転子速度を電動機の運転に利用するものであり、図1と同一の構成要素については同一の参照符号を付して説明を省略し、以下では異なる部分を中心に説明する。
すなわち、図2に示す如く、速度演算器25から出力される回転子速度演算値ωがサンプル・ホールド回路31bに入力されている。このサンプル・ホールド回路31bは、処理開始から所定の時間が経過して真値に収束した速度演算値ωを、第1の回転子速度演算値である初期速度演算値ω10として保持するものである。
この初期速度演算値ω10を速度指令値の初期値として運転を開始することにより、電動機80が回転している状態からでも安定して始動することができる。
次いで、請求項3に相当する本発明の第3実施形態を説明する。図3は、この実施形態の構成を示すブロック図である。
この実施形態では、第1実施形態により磁極位置を演算した後、電流の振幅を零ではない一定値に制御することで、電流ベクトルに回転子を引き込み、磁極位置を電流ベクトルの位置(方向)に一致させる(以下、磁極位置を電流ベクトルまたは端子電圧ベクトルの位置に一致させる処理を「磁極位置合わせ」と呼ぶ)。その後、電流ベクトルの位置から磁極位置を検出して運転を開始することにより、電動機の始動時における安定性を向上させるようにした。
図3は、後述する切換器40を始動速度ωstart側に切り換えて磁極位置合わせを行う時の構成を示しており、前述した各実施形態と同一の部分については同一の参照符号を付して説明を省略し、以下では異なる部分を中心に説明する。
図3において、41は速度指令値ω及び始動速度ωstartが入力される変化量制限器であり、40は、変化量制限器41から出力される速度指令値ω**または前記始動速度ωstartを切り換えて速度指令値ωとして電気角演算器26に入力するための切換器である。
この実施形態では、γ軸電流指令値iγ を零でない一定値Iγ に設定することで、γ軸電流iγの振幅をIγ に制御する。一方、δ軸電流指令値iδ を零に設定し、δ軸電流iδを零に制御する。
そして、電動機80の始動時には、切換器40を図3のように切り換えて速度指令値ωに始動速度ωstartを設定する。電気角演算器26は、図1のブロック図により演算した第2の磁極位置である初期磁極位置θ10を初期値として、速度指令値ωを積分することにより電流ベクトルの位置θを演算する。
ここで、図4は、磁極位置合わせの動作原理を示す図である。説明を簡単にするため、電動機の始動速度ωstartを零とする。図3の電気角演算器26から出力される電流ベクトルの位置θの初期値を、回転子81の突極性を利用して演算した第1の磁極位置演算値に90[deg]を加算した初期磁極位置θ10とし、δ軸電流指令値iδ を零に制御することから、磁極位置(d軸)に対して直交する方向に電流ベクトルが制御される。
このときに発生するトルクにより、回転子81が電流ベクトルに引き込まれ、最終的には、磁極位置を電流ベクトルの位置に一致させることができる。このことから、磁極位置合わせ完了時の電流ベクトルの位置から磁極位置を検出できることが明らかである。
所定の時間が経過して磁極位置合わせが完了したら、電動機80の運転を開始する。電動機80の運転方式としては任意の方式を適用することができるが、ここでは、一例として、電流引き込み制御により運転する場合の処理について、図3を用いて説明する。
磁極位置合わせが完了したら、切換器40により、速度指令値ωを変化量制限器41からの速度指令値ω**に制御する。この速度指令値ω**は、変化量制限器41によって速度指令値ωの単位時間あたりの変化率を制限して演算する。なお、速度指令値ω**の初期値は始動速度ωstartとする。
これらの処理により、電流ベクトルの速度がωstartからωまで所定の変化率で増加していき、回転子が電流ベクトルに引き込まれて加速され、電動機80の速度を速度指令値ωに制御することができる。
次に、請求項4に相当する本発明の第4実施形態を説明する。図5は、この実施形態の構成を示すブロック図である。
この実施形態は、第3実施形態において電動機80が回転している状態からでも安定に始動できるようにしたものである。図5は、切換器40を初期速度演算値ω10側に切り換えて磁極位置合わせを行う時の構成を示しており、回路構成上は実質的に図3と同一である。
この実施形態が第3実施形態と異なる点は、磁極位置合わせ時の速度指令値ωを、切換器40により、回転子の突極性を利用して演算した第1の回転子速度演算値としての初期速度演算値ω10に設定する点である。
これにより、電流ベクトルの速度ωと回転子速度との偏差を零にし、これらの速度偏差が積算されて電流ベクトルと磁極位置との角度差が増加するのを防止することができ、電動機80が回転している場合にも磁極位置合わせを安定して実施することができる。
磁極位置合わせが完了した後の電動機の運転方式は、任意の方式を適用可能であるが、ここでは、第3実施形態と同様に電流引き込み制御によって運転する場合の処理を図4に基づき説明する。
磁極位置合わせが完了したら、第3実施形態と同様に、切換器40によって速度指令値ωを変化量制限器41からの速度指令値ω**に制御する。なお、速度指令値ω**の初期値は初期速度演算値ω10とする。これにより、電動機80が回転している状態でも安定した始動が可能になる。
次に、請求項5に相当する本発明の第5実施形態を説明する。図6は、この実施形態の主要部の構成を示すブロック図である。
この実施形態は、第3実施形態における電流引き込み制御による磁極位置合わせを簡略化したものである。図6において、図3の第3実施形態と異なる部分は、電気角演算器26に常に始動速度ωstartが入力されている点であり、その他は同一である。なお、電流座標変換器14から出力されるγ,δ軸電流iγ,iδは、第2の磁極位置演算値としての初期磁極位置θ10の演算に用いられる。
図6において、γ軸電圧指令値vγ を零でない一定値Vγ とすると共に、δ軸電圧指令値vδ を零に制御する。また、速度指令値ωを始動速度ωstartに制御する。電気角演算器26は、初期磁極位置θ10を初期値とし、速度指令値ωを積分して電流ベクトルの位置θを演算する。
これらの制御により、第3実施形態と同様に、電流ベクトルがγ軸方向に発生し、磁極位置合わせを実現することができる。
磁極位置合わせが完了したら、磁極位置合わせ完了時の端子電圧ベクトルの位置から磁極位置を検出し、回転子の位置を特定して電動機80を運転することで、始動時の安定性が向上する。
次に、請求項6に相当する本発明の第6実施形態を説明する。図7は、この実施形態の主要部の構成を示すブロック図である。
この実施形態は、図6の第5実施形態において電動機80が回転している場合にも安定して始動できるようにしたものである。図7は磁極位置合わせ時の構成を示しており、以下では図6と異なる部分を中心に説明する。
図7において、42はf/V変換器であり、速度指令値ωをγ軸電圧指令値vγ に変換して電圧座標変換器15に出力する。なお、δ軸電圧指令値vδ は零に制御される。
本実施形態が第5実施形態と異なる点は、磁極位置合わせ時において、速度指令値ωを回転子の突極性を利用して演算した第1の回転子速度演算値である初期速度演算値ω10に制御する点である。
これにより、端子電圧ベクトルの速度ωと回転子速度との偏差を零にすることができ、これらの速度偏差が積算されて端子電圧ベクトルと磁極位置との角度差が増加するのを防止することができる。このため、電動機80が回転している場合にも磁極位置合わせを安定して実施することが可能である。また、f/V変換器42により、γ軸電圧指令値vγ の大きさを速度の増加関数として演算することにより、電流ベクトルの振幅をあらゆる速度で所望の値に制御することができる。
磁極位置合わせ完了後の電動機80の運転方式としては、任意の方式を適用可能である。上述したように、電動機80の始動時に初期速度演算値ω10を利用して制御装置各部を初期化することで、始動時の安定性が向上する。
次いで、請求項7に相当する本発明の第7実施形態を、図8のブロック図に基づいて説明する。
この実施形態は、回転子の突極性を利用して求めた初期磁極位置演算値θ10の誤差を、例えば非特許文献1に記載されている誘起電圧を利用した磁極位置演算及び速度演算によって零に制御するものである。図8のブロック図は、誘起電圧を利用して磁極位置演算及び速度演算を実施する時の構成であり、第1〜第6実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付して説明を省略し、以下では異なる部分を中心に説明する。
図8において、速度指令値ω及び速度演算値ωに基づいて変化量制限器41から速度指令値ω**が出力され、この速度指令値ω**と速度演算値ωとの偏差が減算器110により求められて速度調節器111に入力される。速度調節器111は、上記偏差を増幅してトルク指令値τを演算し、電流指令演算器112に出力する。
電流指令演算器112の出力側には切換器102a,102bが設けられており、磁極位置及び速度演算時には、これらの切換器102a,102bを図示のように操作してγ,δ軸電流指令値iγ ,iδ を零に制御する。
一方、拡張誘起電圧演算器100は、γ,δ軸電流検出値iδ,iγ、γ,δ軸電圧指令値vγ ,vδ 、速度演算値ω、及び、モータの電気定数を利用して、拡張誘起電圧のベクトル角であるd,q軸とγ,δ軸との角度差δEexを演算する。この角度差δEexは、例えば非特許文献1に記載された数式(6)〜(9)によって求めることができる。
次に、速度演算器101は、角度差θEexを比例積分演算して速度演算値ωを求める。この速度演算値ωは請求項7における第2の回転子速度演算値に相当するものであり、その初期値は、回転子の突極性を利用して求めた第1の回転子速度演算値である初期速度演算値ω10とする。
電気角演算器26は、速度演算値ωを積分して磁極位置演算値θを求める。この磁極位置演算値θは請求項7における第3の磁極位置演算値に相当するものであり、その初期値は、回転子の突極性を利用して求めた第2の磁極位置演算値としての初期磁極位置演算値θ10とする。
以上の処理により、磁極位置演算値θを真値に収束させることができる。所定の時間が経過して磁極位置演算値θと速度演算値ωとが収束したら、電動機80の運転を開始する。
電動機80の運転方式には任意の方式を適用することができ、ここでは、非特許文献1に記載された高速域の位置・速度推定方式を適用したセンサレス制御により運転する場合の処理について、図8を参照しつつ説明する。
前記変化量制限器41は、運転開始時に速度演算値ωで初期化すると共に、速度指令値ωの単位時間あたりの変化率を制限して速度指令値ω**を出力する。この速度指令値ω**と速度演算値ωとの偏差を減算器110にて演算し、この偏差を速度調節器111により増幅してトルク指令値τを演算する。
電流指令演算器112はトルク指令値τ通りのトルクを出力するためのγ,δ軸電流指令値iγ ,iδ を演算し、これらの電流指令値iγ ,iδ は、切換器102a,102bを切り換えて減算器19a,19bにそれぞれ入力される。
γ,δ軸電流調節器20a,20bは、γ,δ軸電流指令値iγ ,iδ とγ,δ軸電流iγ,iδとの偏差をそれぞれ零にするように動作する。これにより、γ,δ軸電流iγ,iδは各指令値iγ ,iδ に制御され、真値に等しく演算された磁極位置演算値θに基づいて電流を制御することから、トルクを指令値τに制御し、また、電動機速度を速度指令値ωに制御することができる。
本発明の第1実施形態を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態を示すブロック図である。 本発明の第3実施形態を示すブロック図である。 本発明の第3実施形態における磁極位置合わせの原理を示す図である。 本発明の第4実施形態を示すブロック図である。 本発明の第5実施形態を示すブロック図である。 本発明の第6実施形態を示すブロック図である。 本発明の第7実施形態を示すブロック図である。 γ,δ軸の定義を示す図である。 γ軸方向に高周波交番電圧を印加したときの、位置演算誤差と高周波電流振幅との関係を示す図である。
符号の説明
50 三相交流電源
60 整流回路
70 電力変換器
80 永久磁石形同期電動機(PMSM)
11u u相電流検出器
11w w相電流検出器
12 入力電圧検出器
13 PWM回路
14 電流座標変換器
15 電圧座標変換器
19a,19b 減算器
20a γ軸電流調節器
20b δ軸電流調節器
21 高周波電圧演算器
22 加算器
23 ノッチフィルタ
24 バンドパスフィルタ
25 速度演算器
26 電気角演算器
30 加算器
31a,31b サンプル・ホールド回路
40 切換器
41 変化量制限器
42 f/V変換器
100 拡張誘起電圧演算器
101 速度演算器
102a,102b 切換器
110 減算器
111 速度調節器
112 電流指令演算器

Claims (7)

  1. 磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置において、
    回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、
    前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、を備え、
    前記第2の磁極位置演算値を用いて電動機を運転することを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。
  2. 磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置において、
    回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、
    前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、
    回転子の突極性を利用して第1の回転子速度を演算する手段と、を備え、
    前記第2の磁極位置演算値及び前記第1の回転子速度演算値を用いて電動機を運転することを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。
  3. 磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置において、
    回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、
    前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、
    電動機の電流をベクトルとしてとらえ、電流ベクトルの初期位置を前記第2の磁極位置演算値とすると共に、前記電流ベクトルの振幅を、所定期間、零でない任意の値に制御して磁極位置を前記電流ベクトルの位置に一致させる磁極位置合わせ手段と、を備え、
    前記磁極位置合わせ手段の動作により前記磁極位置に一致した後の前記電流ベクトルの位置を用いて電動機を運転することを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。
  4. 磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置において、
    回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、
    前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、
    回転子の突極性を利用して第1の回転子速度を演算する手段と、
    電動機の電流をベクトルとしてとらえ、電流ベクトルの初期位置を前記第2の磁極位置演算値とすると共に、前記電流ベクトルの振幅を、所定期間、零でない任意の値に制御し、かつ、前記電流ベクトルの速度を前記第1の回転子速度演算値に制御して磁極位置を電流ベクトルの位置に一致させる磁極位置合わせ手段と、を備え、
    前記磁極位置合わせ手段の動作により前記磁極位置に一致した後の前記電流ベクトルの位置及び速度を用いて電動機を運転することを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。
  5. 磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置において、
    回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、
    前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、
    前記電動機の端子電圧をベクトルとしてとらえ、端子電圧ベクトルの初期位置を前記第2の磁極位置演算値とすると共に、前記端子電圧ベクトルの振幅を、所定期間、零でない任意の値に制御して磁極位置を前記端子電圧ベクトルの位置に一致させる磁極位置合わせ手段と、を備え、
    前記磁極位置合わせ手段の動作により前記磁極位置に一致した後の端子電圧ベクトルの位置を用いて電動機を運転することを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。
  6. 磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置において、
    回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、
    前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、
    回転子の突極性を利用して第1の回転子速度を演算する手段と、
    前記電動機の端子電圧をベクトルとしてとらえ、端子電圧ベクトルの初期位置を前記第2の磁極位置演算値とすると共に、前記端子電圧ベクトルの振幅を、所定期間、零でない任意の値に制御し、かつ、前記端子電圧ベクトルの速度を前記第1の回転子速度演算値に制御して磁極位置を前記端子電圧ベクトルの位置に一致させる磁極位置合わせ手段と、を備え、
    前記磁極位置合わせ手段の動作により前記磁極位置に一致した後の前記端子電圧ベクトルの位置及び速度を用いて前記電動機を運転することを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。
  7. 磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置において、
    回転子の突極性を利用して第1の磁極位置を演算する手段と、
    前記第1の磁極位置に直交する位置を第2の磁極位置として演算する手段と、
    回転子の突極性を利用して第1の回転子速度を演算する手段と、
    前記第2の磁極位置演算値と前記第1の回転子速度演算値とを、それぞれ第3の磁極位置演算値の初期値と第2の回転子速度演算値の初期値とし、少なくとも電動機の電気定数、電流及び端子電圧を用いて第3の磁極位置演算値と第2の回転子速度演算値とを演算する手段と、を備え、
    前記第3の磁極位置演算値と第2の回転子速度演算値とを用いて電動機を運転することを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。
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