JP5104219B2 - 永久磁石形同期電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
ところで、PMSMは、回転子の構造によって、表面磁石構造永久磁石形同期電動機(以下、SPMSMともいう)と埋込磁石構造永久磁石形同期電動機(以下、IPMSMともいう)との2種類に大別される。これらのうち、IPMSMについては、回転子の突極性(回転子の磁極方向であるd軸と、これに直交するq軸とでインダクタンスが異なる性質)を利用して磁極位置を演算する技術が実用化されている。
具体的には、推定のd軸と平行なベクトルである高周波交番電圧を電動機に印加し、このときに推定のq軸方向に流れる高周波電流が零になるように磁極位置を演算している。これにより、零速度を含む低速時における電動機のセンサレス制御を可能にしている。
このような背景から、重負荷時における磁極位置の演算誤差を低減する技術が提案されている。
具体的には、q軸方向に流れる高周波電流の変化率と、電流指令値から演算した磁極位置の補償値とを加算した評価関数を求め、この評価関数が零となるように比例積分制御を行って回転子の速度を演算し、その速度演算値を積分して磁極位置を演算している。
これにより、重負荷時に磁気飽和に起因して発生する位置演算誤差を補償し、磁極位置の高精度な演算を可能としている。
また、特許文献2に記載されている如く、推定のq軸方向に流れる高周波電流の変化率に補償値を加算した評価関数が零になるように磁極位置及び速度を演算する場合、補償値が大きいほど、位置演算誤差の安定領域がどちらかに偏る。この結果、重負荷時を含む負荷急変時や加減速時の安定性が低下するという問題がある。
前記電動機の端子電圧及び電流をベクトルとしてとらえ、
前記電動機のトルク指令値または前記電動機の推定磁極位置に直交する方向の電流指令値から、任意の方向を持つ高周波交番電圧を演算する高周波電圧演算手段と、
前記高周波電圧演算手段により演算した高周波交番電圧を基本波電圧指令値に重畳する手段と、
前記推定磁極位置と直交する方向の高周波電流から回転子の磁極位置を演算する手段と、を備えたものである。
すなわち、請求項1に係る発明は、電圧指令値に重畳する高周波交番電圧の方向をトルク指令値または推定磁極位置に直交する方向の電流指令値によって補正することにより、推定磁極位置と直交する方向の高周波電流から磁極位置を演算する。
この発明によれば、高周波交番電圧の方向を推定磁極位置から補正した分だけ磁極位置の演算誤差を補正することができ、従来技術のように、磁極位置演算の安定性を低下させることはない。
前記電動機のトルク指令値または前記推定磁極位置に直交する方向の電流指令値から、前記推定磁極位置と直交する方向の高周波交番電圧の振幅を演算する手段と、
前記振幅を用いて前記推定磁極位置と直交する方向の高周波交番電圧を演算する手段と、
前記推定磁極位置と平行な方向の高周波交番電圧を演算する手段と、
を備えたものである。
更に、請求項4に係る発明は、請求項2において、前記電動機のトルク指令値または前記推定磁極位置に直交する方向の電流指令値に比例ゲインを乗じて得た振幅係数を用いて、前記推定磁極位置と直交する方向の高周波交番電圧の振幅を演算すると共に、前記推定磁極位置に平行な方向の高周波交番電圧の振幅を一定値としたものである。
前記請求項2に係る発明によれば、請求項1の発明と同様に、高周波交番電圧の方向を、トルク指令値、または、推定磁極位置と直交する方向の電流指令値に基づいて、請求項3または請求項4による簡単な演算によって制御することができ、磁極位置の演算誤差を補正することができる。
周知のように、PMSMは、回転子の磁極方向に平行なd軸とd軸から90度進んだq軸とで電流制御を行うことにより、高精度な制御を実現することができる。しかしながら、電動機が磁極位置検出器を持たない場合、d,q軸を直接検出することができない。
なお、γ軸方向を便宜的に推定磁極位置に平行な方向といい、δ軸方向を推定磁極位置に直交する方向というものとする。
図1において、速度指令値ω*と速度演算器25から出力される速度演算値ω1との偏差を減算器16により演算し、この偏差を速度調節器17により増幅してトルク指令値τ*を演算する。電流指令演算器18は、トルク指令値τ*に従ったトルクを出力するためのγ,δ軸電流指令値iγ *,iδ *を演算する。
ノッチフィルタ23は、γ,δ軸電流検出値iγ,iδから、磁極位置演算のためにγ軸方向の電圧指令値に重畳される高周波交番電圧によって流れる高周波交番電流を除去し、γ,δ軸基本波電流iγf,iδfを検出する。
これらの高周波電圧指令値vγh *,vδh *は、加算器22a,22bにおいて基本波電圧指令値vγf *,vδf *にそれぞれ重畳され、γ,δ軸電圧指令値vγ *,vδ *として出力される。
これらの電圧指令値vγ *,vδ *は、電圧座標変換器15により、磁極位置演算値θ1に基づいて相電圧指令値vu *,vv *,vw *に変換される。
まず、γ軸方向に正弦波の高周波交番電圧Vhsinωhtを印加したときの高周波成分の状態方程式は、数式1によって表される。
以上の結果から、δ軸高周波電流振幅Iδhを入力とするPLL回路を構成すれば、磁極位置演算値を真値に収束させることができる。
バンドパスフィルタ24は、γ,δ軸電流検出値iγ,iδから高周波交番電圧と同じ周波数の高周波電流の振幅Iγh,Iδhをそれぞれ演算する。これらのIγh,Iδhは、フーリエ級数展開によって演算する。
速度演算器25は、δ軸高周波電流振幅Iδhを比例積分演算して速度演算値ω1を求める。磁極位置演算器26は、速度演算値ω1を積分して磁極位置演算値θ1を求める。
これらの演算によってδ軸高周波電流振幅Iδhを零に収束させるPLL回路が構成され、磁極位置θ1を演算することができる。
図2において、図1の速度調節器17から出力されたトルク指令値τ*は比例ゲイン121により増幅され、位置補正値θcompが演算される。高周波電圧振幅演算器122は、位置補正値θcompと高周波電圧振幅指令値Vh *とを用いて、γ,δ軸高周波電圧振幅指令値Vγh *,Vδh *を数式3により演算する。
従って、トルク指令値τ*に応じてベクトル方向が補正された高周波交番電圧に起因するδ軸高周波電流振幅Iδhに基づいて速度演算値ω1及び磁極位置演算値θ1を求めることができ、例えば重負荷時のように電動機鉄芯の磁気飽和に起因して発生する位置演算誤差を補償することができる。
この実施例では、γ軸高周波電圧振幅指令値Vγh *を一定値Vh *に設定する。
一方、δ軸高周波電圧振幅指令値Vδh *は、トルク指令値τ*に比例して制御する。具体的には、トルク指令値τ*を比例ゲイン131により増幅してδ軸高周波電圧振幅係数Kvδhを求め、乗算器132により、δ軸高周波電圧振幅係数Kvδhと高周波電圧振幅指令値Vh *とを乗算してδ軸高周波電圧振幅指令値Vδh *を演算する。
この第2実施例によれば、高周波電圧演算器21の演算内容を図2の第1実施例よりも簡略化することができる。
この実施形態は、図2または図3の各実施例における高周波電圧演算器21の入力を、トルク指令値τ*からδ軸電流指令値iδ *に置き換えたものである。高周波電圧演算器21の内部演算は、図2または図3のブロック図におけるトルク指令値τ*をδ軸電流指令値iδ *に置き換えればよい。
この実施形態の動作は図2または図3の実施例と同等であるので、重複を避けるために詳細な説明は省略する。
11w w相電流検出回路
12 入力電圧検出回路
13 PWM回路
14 電流座標変換器
15 電圧座標変換器
16 減算器
17 速度調節器
18 電流指令演算器
19a,19b 減算器
20a γ軸電流調節器
20b δ軸電流調節器
21 高周波電圧演算器
22a,22b 加算器
23 ノッチフィルタ
24 バンドパスフィルタ
25 速度演算器
26 磁極位置演算器
50 三相交流電源
60 整流回路
70 電力変換器
80 永久磁石形同期電動機
111 発振器
112a,112b,132 乗算器
121,131 比例ゲイン
122 高周波電圧振幅演算器
Claims (4)
- 磁極位置検出器を持たない永久磁石形同期電動機の制御装置において、
前記電動機の端子電圧及び電流をベクトルとしてとらえ、
前記電動機のトルク指令値または前記電動機の推定磁極位置に直交する方向の電流指令値から、任意の方向を持つ高周波交番電圧を演算する高周波電圧演算手段と、
前記高周波電圧演算手段により演算した高周波交番電圧を基本波電圧指令値に重畳する手段と、
前記推定磁極位置と直交する方向の高周波電流から回転子の磁極位置を演算する手段と、
を備えたことを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。 - 請求項1に記載した永久磁石形同期電動機の制御装置において、
前記高周波電圧演算手段は、
前記電動機のトルク指令値または前記推定磁極位置に直交する方向の電流指令値から、前記推定磁極位置と直交する方向の高周波交番電圧の振幅を演算する手段と、
前記振幅を用いて前記推定磁極位置と直交する方向の高周波交番電圧を演算する手段と、
前記推定磁極位置と平行な方向の高周波交番電圧を演算する手段と、
を備えたことを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。 - 請求項2に記載した永久磁石形同期電動機の制御装置において、
前記電動機のトルク指令値または前記推定磁極位置に直交する方向の電流指令値に比例ゲインを乗じて得た位置補正値を用いて、前記推定磁極位置と直交する方向及び平行な方向の高周波交番電圧の振幅を演算することを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。 - 請求項2に記載した永久磁石形同期電動機の制御装置において、
前記電動機のトルク指令値または前記推定磁極位置に直交する方向の電流指令値に比例ゲインを乗じて得た振幅係数を用いて、前記推定磁極位置と直交する方向の高周波交番電圧の振幅を演算すると共に、前記推定磁極位置に平行な方向の高周波交番電圧の振幅を一定値としたことを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。
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