JP2009110968A - 黒鉛質粒子、リチウムイオン二次電池、そのための負極材料および負極 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メソフェーズ小球体の黒鉛化物であって、X線回折におけるC軸方向の格子面間隔d002が0.337nm未満であり、かつメカノケミカル処理により、波長514.5nmのアルゴンレーザー光を用いたラマンスペクトルにおいて、1570〜1630cm−1の領域に存在するピークの強度をIGとし、1350〜1370cm−1の領域に存在するピークの強度をIDとするときのID/IG比が0.4超2以下の範囲にある黒鉛質粒子。
【選択図】なし
Description
負極は、負極材料と、負極材料同士および負極材料と集電材とを結着させるための結合剤(バインダー樹脂)との負極合剤ペーストを調製し、次いでこのペーストを銅箔などの集電体上に塗布し、プレスして作製される。
上記リチウムイオンの担持体である負極材料には、通常、炭素材が使用されるが、この炭素材のうちでも、充放電特性に優れ、高い放電容量と電位平坦性とを示す黒鉛(たとえば特許文献1参照)が主流となっている。
上記メソフェーズ系黒鉛質粒子としては、具体的にピッチ類の熱溶融温度を350〜500℃に保持した時に生成する炭素質メソフェーズ粒体を、炭素化し、次いで2500〜2900℃で黒鉛化して得られる黒鉛質粒体が知られている(たとえば特許文献2参照)。該特許文献2には、上記黒鉛質粒体の平均粒径が25μmであり、X線回折におけるC軸方向の格子面間隔d002 が0.3365〜0.3390nmであり、かつアルゴンレーザー・ラマン分光における1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.2ないし0.4の範囲にあることが開示されている。
近年、環境面、安全面などの観点から、水系溶媒すなわち水系結合剤の使用が望まれている状況に鑑み、水系結合剤を使用する場合であっても、黒鉛質粒子に負極材料としての性能を充分に発揮させうる方法の出現が望まれている。
具体的に、本発明では、メソフェーズ小球体の黒鉛化物であって、X線回折におけるC軸方向の格子面間隔d002 が0.337nm未満であり、かつメカノケミカル処理により、波長514.5nmのアルゴンレーザー光を用いたラマンスペクトルにおいて、1570〜1630cm-1の領域に存在するピークの強度をIGとし、1350〜1370cm-1の領域に存在するピークの強度をID とするときのID /IG比が0.4超2以下の範囲にある黒鉛質粒子を提供する。
本発明の黒鉛質粒子は親水性表面を有し、濡れ性が改善されており、水系結合剤とも均質に混合することが容易である。
このようにID /IG 比が0.4を超える黒鉛質粒子は、親水性基が表面に現われるなどして濡れ性などの表面改質されており、メソフェーズ小球体の黒鉛化物の利点を保有したまま、溶媒依存性が小さいという効果を奏する。
<黒鉛質粒子>
本発明に係る黒鉛質粒子は、メソフェーズ小球体の黒鉛化物である。黒鉛質粒子の形状は、球状あるいは球状に近い形状、粒状、粉砕による不定形の粒子であってもよいが、球状あるいは球状に近い形状であることが望ましい。
黒鉛質粒子の体積換算による平均粒子径は、3〜50μmが好ましい。このような平均粒子径であれば、リチウムイオン二次電池の負極材料と使用した時に、不可逆容量の増大や電池の安全性の低下を招くことなく、また負極の密着性のよいリチウムイオン二次電池を得ることができる。なお平均粒子径が3μmより小さいと、上記不可逆容量の増大や電池の安全性の低下を招くことがあり、50μmより大きいと負極の密着性が低下する傾向にある。
上記平均粒子径は、5〜30μmが特に好ましい。
また黒鉛質粒子の真比重は2.2以上が好ましい。
ここで、格子面間隔d002 は、X線としてCuKα線を用い、高純度シリコンを標準物質とするX線回折法〔大谷杉郎、炭素繊維、p.733−742(1986)近代編集社〕によって測定された値を意味する。
なおここでのピーク強度は、ピーク高さによる強度を意味する。
ラマン散乱光の分析において、このようなID /IG 比を有する黒鉛質粒子は、最表面が改質されており、表面に親水性基が表面に現われるなどして、表面親水性を示す。このためリチウムイオン二次電池の負極材料として使用時の溶媒依存性がなく、またたとえば負極の結合剤として水系結合剤を使用した場合にも、レート特性が低下しないという効果を奏する。なお上記ID/IG 比が0.4以下では、負極の結合剤として水系結合剤を使用した場合に、高速充電性が低下することがある。一方、ID/IG 比が2を超えると、放電容量が低下する傾向にある。
本発明の黒鉛質粒子は、上記ID /IG 比は、0.45〜1の範囲にあることが特に好ましい。
上記のように2000℃を超える温度でのメソフェーズ小球体の黒鉛化では、格子面間隔d002 が0.337nm未満の黒鉛質粒子が得られるが、この黒鉛質粒子のID/IG 比は、通常0.35以下である。本発明では、黒鉛質粒子に表面改質処理を施して、上記ID /IG比を増大させる。この表面改質処理方法として、以下にメカノケミカル処理方法を例示する。
具体的には、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、金属炭化物などが例示される。
これらのうちでも、親水性を有する硬質微粒子が望ましく、特に、気相法によって製造された無水シリカ(以下単に気相シリカと称すこともある)、酸化チタン、アルミナなどの金属酸化物微粒子が好適に用いられる。これら親水性硬質微粒子を用いることにより、黒鉛質粒子へのメカノケミカル処理による親水性付与に、さらに親水性を付与することができる。
また、上記硬質微粒子は、予め黒鉛質粒子とドライブレンドしてメカノケミカル処理に供してもよく、黒鉛質粒子のメカノケミカル処理中に添加してもよい。
このような装置として、たとえば加圧ニーダー、二本ロールなどの混練機、回転ボールミル、ハイブリダイゼーションシステム((株)奈良機械製作所製)、メカノマイクロス((株)奈良機械製作所製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン(株)製)などを使用することができる。
また固定ドラム(ステーター)と、高速回転する回転ローターの間に被処理物を通すことで固定ドラムと回転ローターとの速度差に起因する圧縮力と剪断力とを被処理物に付与する装置を用いてもよい(たとえば図2に模式的機構を示す(株)奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステム)。
たとえば回転ドラムと内部部材を備えた装置を用いる場合には、回転ドラムと内部部材との周速度差:5〜50m/秒、両者間の距離1〜100mm、処理時間3分〜90分の条件下で行なうことが好ましい。
また固定ドラム/高速回転ローターを備える装置の場合には、固定ドラムと回転ローターとの周速度差10〜100m/秒、処理時間30秒〜10分の条件下で行なうことが好ましい。
黒鉛質粒子表面への親水性付与を確認する手段としては、黒鉛質粒子と水との接触角測定、あるいは黒鉛質粒子への水の浸透速度、浸透量測定などによって評価することができる。
リチウムイオン二次電池は、通常、負極、正極および非水電解質を主たる電池構成要素とし、正・負極はそれぞれリチウムイオンの担持体からなり、充放電過程における非水溶媒の出入は層間で行われる。
本質的に、充電時にはリチウムイオンが負極中にドープされ、放電時には負極から脱ドープする電池機構である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極材料として上記黒鉛質粒子を用いること以外は特に限定されず、他の電池構成要素については一般的なリチウムイオン二次電池の要素に準じる。リチウムイオン二次電池は、通常、負極、正極および非水電解質を主たる電池構成要素とする。
上記負極材料(黒鉛質粒子)から負極の形成は、通常の成形方法に準じて行うことができるが、黒鉛質粒子の性能を充分に引き出し、かつ粉末に対する賦型性が高く、化学的、電気化学的に安定な負極を得ることができる方法であれば何ら制限されない。
他の黒鉛質材料を併用する場合には、形状および/または平均粒子径が互いに異なる親水化黒鉛質粒子と他の黒鉛質材料とを組合わせることが好ましい。負極材料として、親水化黒鉛質粒子と、これとは異なる形状および/または平均粒子径の他の黒鉛質材料とを組合わせて使用することにより、急速充電効率が向上するためである。
さらに本発明の目的を損なわない範囲であれば、他の炭素材料(非晶質ハードカーボンなどを含む)、有機物、金属化合物との混合物、造粒物、被覆物、積層物であってもよい。また液相、気相、固相における各種化学的処理、熱処理、酸化処理などを施したものであってもよい。
たとえば親水化黒鉛質粒子が平均粒径20〜30μmのメソフェーズ小球体黒鉛化物の場合には、他の黒鉛質材料として、5〜40質量%のリン片状(平面部の寸法:3〜15μm)の天然黒鉛および/または人造黒鉛を他の黒鉛質材料として用いる。
上記のうちでも、本発明の目的を達成し、効果を最大限に活かす上で、カルボキシメチルセルロース(水溶性)、ポリビニルアルコール(水溶性)、スチレンブタジエンラバー(水分散性)などの水系結合剤を用いることが特に好ましい。
結合剤は、通常、負極合剤全量中0.5〜20質量%程度の量で用いるのが好ましい。
この際には通常の溶媒を用いることができ、負極合剤を溶媒中に分散させ、ペースト状とした後、集電体に塗布、乾燥すれば、負極合剤層が均一かつ強固に集電体に接着される。
より具体的には、たとえば黒鉛質粒子と、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂粉末とを、イソプロピルアルコール等の溶媒中で混合・混練した後、塗布することができる。また黒鉛質粒子と、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂粉末あるいはカルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバー等を、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、水、アルコール等の溶媒と混合してスラリーとした後、塗布することができる。
なかでも、前記したように溶媒乾燥除去における安全面、環境面への影響を配慮し、水あるいはアルコール等を溶媒として、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバー等を溶解、分散させてなる水系スラリーを用いることが望ましい。
ペーストは、公知の撹拌機、混合機、混練機、ニーダー等を用いて撹拌することにより調製することができる。
また黒鉛質粒子と、ポリエチレン、ポリビニルアルコールなどの樹脂粉末とを乾式混合し、金型内でホットプレス成型することもできる。
負極合剤層を形成した後、プレス加圧等の圧着を行うと、負極合剤層と集電体との接着強度をさらに高めることができる。
正極の材料(正極活物質)としては、充分量のリチウムをドープ/脱ドープし得るものを選択するのが好ましい。そのような正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物(V2 O5 、V6 O13、V2O4 、V3 O8 など)およびそのLi化合物などのリチウム含有化合物、一般式MXMo6 S8-Y (式中Xは0≦X≦4、Yは0≦Y≦1の範囲の数値であり、Mは遷移金属などの金属を表す)で表されるシェブレル相化合物、活性炭、活性炭素繊維などを用いることができる。
上記リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属との複合酸化物であり、リチウムと2種類以上の遷移金属を固溶したものであってもよい。リチウム含有遷移金属酸化物は、具体的には、LiM(1)1-X M(2)X O2 (式中Xは0≦X≦1の範囲の数値であり、M(1)、M(2)は少なくとも一種の遷移金属元素からなる。)あるいはLiM(1)2-Y M(2)Y O4 (式中Yは0≦Y≦1の範囲の数値であり、M(1)、M(2)は少なくとも一種の遷移金属元素からなる。)で示される。
上記において、Mで示される遷移金属元素としては、Co、Ni、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Zn、Al、In、Snなどが挙げられ、好ましくはCo、Fe、Mn、Ti、Cr、V、Alが挙げられる。
本発明では、正極活物質は、上記化合物を単独で使用しても2種類以上併用してもよい。たとえば正極中には、炭酸リチウム等の炭素塩を添加することもできる。
また正極の場合も負極と同様に、正極合剤を溶剤中に分散させることでペースト状にし、このペースト状の正極合剤を集電体に塗布、乾燥することによって正極合剤層を形成しても良く、正極合剤層を形成した後、さらにプレス加圧等の圧着を行っても構わない。これにより正極合剤層が均一且つ強固に集電体に接着される。
本発明に用いられる電解質としては通常の非水電解液に使用されている電解質塩を用いることができ、たとえばLiPF6 、LiBF4 、LiAsF6、LiClO4 、LiB(C6 H5 )、LiCl、LiBr、LiCF3SO3 、LiCH3 SO3 、LiN(CF3 SO2)2 、LiC(CF3 SO2 )3 、LiN(CF3CH2 OSO2 )2 、LiN(CF3 CF2OSO2 )2 、LiN(HCF2 CF2 CH2OSO2 )2 、LiN((CF3 )2 CHOSO2)2 、LiB[C6 H3 (CF3 )2 ]4、LiAlCl4 、LiSiF6 などのリチウム塩などを用いることができる。特に、LiPF6、LiBF4 が酸化安定性の点から好ましく用いられる。
電解液中の電解質塩濃度は、0.1〜5モル/リットルが好ましく、0.5〜3.0モル/リットルがより好ましい。
これらの中で、酸化還元安定性の観点等から、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系高分子を用いることが望ましい。
このような固体電解質の作製方法としては特に制限はないが、例えば、マトリックスを形成する高分子化合物、リチウム塩および溶媒を混合し、加熱して溶融する方法、適当な混合用の有機溶剤に高分子化合物、リチウム塩および溶媒を溶解させた後、混合用の有機溶剤を蒸発させる方法、並びにモノマー、リチウム塩および溶媒を混合し、それに紫外線、電子線または分子線などを照射してポリマーを形成させる方法等を挙げることができる。
また、前記固体電解質中の溶媒の添加割合は、10〜90質量%が好ましく、さらに好ましくは、30〜80質量%である。上記10〜90質量%であると、導電率が高く、かつ機械的強度が高く、フィルム化しやすい。
セパレーターとしては、特に限定されるものではないが、例えば織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜等が挙げられる。特に合成樹脂製微多孔膜が好適に用いられるが、その中でもポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等である。
ゲル電解質二次電池は、黒鉛質粒子を含有する負極と、正極およびゲル電解質を、例えば負極、ゲル電解質、正極の順で積層し、電池外装材内に収容することで構成される。なお、これに加えてさらに負極と正極の外側にゲル電解質を配するようにしても良い。このような黒鉛質粒子を負極に用いるゲル電解質二次電池では、ゲル電解質にプロピレンカーボネートが含有され、また黒鉛質粒子粉末としてインピーダンスを十分に低くできる程度に小粒径のものを用いた場合でも、不可逆容量が小さく抑えられる。したがって、大きな放電容量が得られるとともに高い初期充放電効率が得られる。
平均粒子径はレーザー回折式粒度分布計により測定した。
格子面間隔はX線回折により求めた。
比表面積は窒素ガス吸着によるBET比表面積である。
硬さは、黒鉛質粒子を円筒状容器(内径20mm)に5g充填し、200回タンピングした後、円筒状容器の内径を有する鋼鉄製丸棒を試料充填面上部から押込み、定速で圧縮試験を行い、検出荷重の変曲点(粒子の破壊に基づき、検出荷重が低下した点)における荷重を相対値で表した。すなわち後述する実施例1で用いた黒鉛質粒子の変曲点荷重を1とし、各黒鉛質粒子および硬質微粒子の変曲点荷重の相対値を示した。
黒鉛質粒子のラマン分析は、日本分光社製NR−1800により、波長514.5nmのアルゴンレーザー光を用いて行った。
(1)負極材料の調製
コールタールピッチを熱処理してなるメソフェーズ小球体(川崎製鉄(株)製、平均粒子径:25μm)を3000℃で黒鉛化し、メソフェーズ小球体の黒鉛質粒子を得た。この黒鉛質粒子は球状を呈しており、格子面間隔d002 が0.3362nm、真比重が2.228(密度2.228g/cm3)であった。また比表面積は0.45m2 /gであった。硬さの相対値は1である。
すなわち回転ローターの周速40m/秒で処理時間6分の条件下で処理することにより、該装置内に投入された黒鉛質粒子を分散しながら主として衝撃力、分子間相互作用を含めた圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し付与した。
上記メカノケミカル処理後の黒鉛質粒子は球状を呈しており、平均粒子径は24μmであった。ラマン分析値(ID /IG 比)は、0.47であった。
上記で得られたメカノケミカル処理後の黒鉛質粒子を負極材料として、水系溶媒および有機溶媒系の負極合剤ペーストをそれぞれ調製した。
<水系負極合剤ペーストの調製>
負極材料97質量%と、結合剤としてカルボキシメチルセルロース1質量%、スチレンブタジエンラバー2質量%とを水を溶媒として混合し、ホモミキサーを用いて500rpmで5分間攪拌し、水系負極合剤ペーストを調製した。
<有機溶媒系負極合剤ペーストの調製>
負極材料90質量%と、結合剤としてポリフッ化ビニリデン10質量%とを、N−メチルピロリドンを溶媒として混合し、ホモミキサーを用いて500rpmで5分間攪拌し、有機溶媒系負極合剤ペーストを調製した。
上記負極合剤ペーストを、銅箔(集電体7b)上に均一な厚さで塗布し、さらに真空中で90℃で溶剤を揮発させて乾燥した。次に、この銅箔上に塗布された負極合剤をローラープレスによって加圧し、さらに直径15.5mmの円形状に打ち抜くことで、集電体に密着した負極合剤層からなる作用電極(負極)2を作製した。
対極4は、リチウム金属箔を、ニッケルネットに押付け、直径15.5mmの円形状に打ち抜いて、ニッケルネットからなる集電体(7a)と、該集電体に密着したリチウム金属箔からなる対極4を作製した。
エチレンカーボネート33 mol%、メチルエチルカーボネート67 mol%の割合で混合してなる溶媒に、LiPF6 を1 mol/dm3となる濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。得られた非水電解液をポリプロピレン多孔質体に含浸させ、電解質液が含浸されたセパレータ5を作製した。
評価電池として図1に示すボタン型二次電池を作製した。
外装カップ1と外装缶3とは、その周縁部において絶縁ガスケット6を介してかしめられた密閉構造を有し、その内部に、外装缶3の内面から順に、ニッケルネットからなる集電体7a、リチウム箔よりなる円盤状の対極4、電解質溶液が含浸されたセパレータ5、負極合剤からなる円盤状の作用電極(負極)2および銅箔からなる集電体7bが積層された電池系である。
この評価電池は、実電池において負極用活物質として使用可能な黒鉛質粒子を含有する作用電極(負極)2と、リチウム金属箔からなる対極4とから構成される電池である。
以上のようにして作製された評価電池について、25℃の温度下で下記のような充放電試験を行った。
<初期放電効率>
0.9mAの電流値で回路電圧が0mVに達するまで定電流充電を行い、回路電圧が0mVに達した時点で定電圧充電に切り替え、さらに電流値が20μAになるまで充電を続けた後、120分休止した。
次に0.9mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行った。このとき第1サイクルにおける通電量から充電容量と放電容量を求め、次式から初期放電効率を計算した。
初期充放電効率(%)=(放電容量/充電容量)×100
なおこの試験では、リチウムイオンを黒鉛質粒子中にドープする過程を充電、黒鉛質粒子から脱ドープする過程を放電とした。
上記に引き続き、第2サイクルにて高速充電を行なった。
電流値を5倍の4.5mAとして、回路電圧が0mVに達するまで定電流充電を行い、充電容量を求め、次式から急速充電効率を計算した。
得られた負極材料の親水性を次のように評価した。改質された黒鉛質粒子15gを、底部が金網およびろ紙からなる円筒容器に充填し、160回タッピングした後、該容器の底部を水面に接触させ、水の浸透量の経時変化を測定した。
実施例1の (1)工程を、以下のような気相シリカ(無水シリカ)の共存下で行い、負極材料を調製した以外は、実施例1と同様に行った。
すなわち実施例1の (1)工程と同じメソフェーズ小球体の黒鉛質粒子100質量部と、無水シリカ(日本アエロジル(株)製AEROSIL 300、平均粒子径7nm、硬さ相対値4.2)を0.2質量部とを混合し、処理時間を2分間とした以外は、実施例1と同様にしてメカノケミカル処理を加えた。
メカノケミカル処理後の黒鉛質粒子は球状を呈しており、平均粒子径は23μmであった。ラマン分析値(ID /IG 比)は、0.57であった。
この負極材料について、実施例1と同様に評価した電池特性を表1に、負極材料の親水性を図4に示す。
実施例1において、 (1)負極材料調製の際、メカノケミカル処理を行う装置を、図3(a) 〜(b) に示すような概略構造の処理装置(ホソカワミクロン(株)製メカノフュージョンシステム)に代え、以下の条件でメカノケミカル処理した以外は、実施例1と同様に行った。
すなわち、黒鉛質粒子を、回転ドラムの周速20m/秒、処理時間60分間、回転ドラムと内部部材との距離5mmの条件下で、圧縮力、剪断力を繰返し付与し、メカノケミカル処理した。メカノケミカル処理後の黒鉛質粒子は球状を呈しており、平均粒子径は25μmであった。
ラマン分析値(ID /IG 比)は、0.45であった。
次いで負極合剤ペースト、負極、リチウムイオン二次電池を作製した。
この負極材料について、実施例1と同様に評価した電池特性を表1に、負極材料の親水性を図4に示す。
実施例3において、メカノケミカル処理を酸化チタンの共存下で行い、処理時間を10分間として負極材料を調製した以外は、実施例3と同様にして、負極材料を調製した。すなわち実施例3と同じメソフェーズ小球体の黒鉛質粒子100質量部と、酸化チタン(日本アエロジル(株)製P25、平均粒子径21nm、硬さ相対値4.6)を0.5質量部とを混合し、実施例3と同じメカノケミカル処理装置を用い、処理時間10分間とした以外は実施例3と同様の条件でメカノケミカル処理を加えた。メカノケミカル処理後の黒鉛質粒子は球状を呈しており、平均粒子径は24μmであった。
ラマン分析値(ID /IG 比)は、0.63であった。
次いで負極合剤ペースト、負極、リチウムイオン二次電池を作製した。
この負極材料について、実施例1と同様に評価した電池特性を表1に、負極材料の親水性を図4に示す。
実施例1の黒鉛質粒子(ラマン分析値ID /IG 比=0.20)を、メカノケミカル処理を行わずにそのまま負極材料として用いた以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。この負極材料の親水性を図4に示す。電池特性の結果を表1に示す。
図4に示されるように、負極材料はほとんど親水性を示さない。
また表1に示されるように、メカノケミカル処理を施さない黒鉛質粒子を負極材料として用いたリチウムイオン二次電池では、有機溶媒系負極合剤ペーストから作製したものは、実施例1と同等に高い放電容量、初期充放電効率、急速充電効率を示すが、水系負極合剤ペーストから作製したものは、急速充電効率が低いことがわかる。
実施例2における黒鉛質粒子と無水シリカとの混合物を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)を用い、攪拌回転数700rpmで30分間混合し、メカノケミカル処理を加えなかった以外は、実施例2と同様にして負極材料を調製した。
撹拌混合後の黒鉛質粒子のラマン分析値(ID /IG 比)は、0.21であった。
上記で得られた負極材料を用いた以外は、実施例1と同様にして負極合剤ペーストを調製し、さらに負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。電池特性を表1に示す。
表1に示されるように、無水シリカ共存下で混合しても、メカノケミカル処理を施してない黒鉛質粒子を負極材料として用いたリチウムイオン二次電池は、水系負極合剤ペーストから作製した場合は、急速充電効率が低いことがわかる。
実施例4において、黒鉛質粒子として、メソフェーズ小球体を予め粉砕してから3000℃で黒鉛化してなるメソフェーズ小球体粉砕物の黒鉛質粒子(平均粒子径17μm)を用いた以外は、実施例4と同様にしてメカノケミカル処理を行った。
メカノケミカル処理前の黒鉛質粒子は、球状と不定形が混在した形状からなり、格子面間隔d002 が0.3362nm、真比重が2.228、比表面積が0.95m2/gであった。硬さの相対値は0.9であった。
メカノケミカル処理後の黒鉛質粒子は、球状と不定形が混在した形状からなり、平均粒子径は17μmと変化しなかった。比表面積は3.45m2 /g、ラマン分析値(ID /IG)は、0.75であった。
実施例4と同様にして負極合剤ペーストを調製し、さらに負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。実施例4と同様に評価した電池特性を表1に示す。
実施例5において、メカノケミカル処理を行わなかった以外は、実施例5と同様にして負極材料を調製した。
実施例5と同様にして負極合剤ペーストを調製し、さらに負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。実施例5と同様に評価した電池特性を表1に示す。
実施例1〜4のいずれかの方法で製造した親水化黒鉛質粒子(第1成分)と、表2に示す他の黒鉛質粒子(第2成分)との混合物をリチウムイオン二次電池用負極材料として用い、実施例1と同様にして負極合剤ペーストを調製し、さらに負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。実施例1と同様の評価を行なった。結果を表2に示す。
実施例1のメカノケミカル処理前のメソフェーズ小球体黒鉛化粒子と、天然黒鉛(エスイーシー社製SNO−10)との混合物をリチウムイオン二次電池用負極材料として用い、実施例1と同様にして負極合剤ペーストを調製し、さらに負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。実施例1と同様の評価を行なった。結果を表2に示す。
2 作用電極
3 外装缶
4 対極
5 電解質溶液含浸セパレータ
6 絶縁ガスケット
7a,7b 集電体
Claims (11)
- メソフェーズ小球体の黒鉛化物であって、X線回折におけるC軸方向の格子面間隔d002 が0.337nm未満であり、かつメカノケミカル処理により、波長514.5nmのアルゴンレーザー光を用いたラマンスペクトルにおいて、1570〜1630cm-1の領域に存在するピークの強度をIGとし、1350〜1370cm-1の領域に存在するピークの強度をID とするときのID /IG比が0.4超2以下の範囲にある黒鉛質粒子。
- 体積換算の平均粒子径が3〜50μmであり、比表面積が1〜20m2 /gである請求項1に記載の黒鉛質粒子。
- 親水性表面を有する請求項1または2に記載の黒鉛質粒子。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の黒鉛質粒子を含むリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記黒鉛質粒子と他の黒鉛質材料との混合物を含む、請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記黒鉛質粒子と前記他の黒鉛質材料との、形状および/または平均粒径が互いに異なる、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記黒鉛質粒子に、または前記黒鉛質粒子と前記他の黒鉛質材料との混合物に、水系結合剤を加えた負極合剤を用いて形成した、請求項4〜6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の黒鉛質粒子に、または当該黒鉛質粒子と他の黒鉛質材料との混合物に、結合剤を加えたリチウムイオン二次電池用負極合剤。
- 前記結合剤が水系結合剤である、請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用負極合剤。
- 請求項4〜7のいずれかに記載の負極材料を用いたリチウムイオン二次電池用負極。
- 請求項10に記載の負極を用いたリチウムイオン二次電池。
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