JP2009107086A - バルブシート加工工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】より実用的なバルブシート加工工具を得る。
【解決手段】リーマホルダ190はコレットチャック194によりリーマ198を保持する。ガイド孔加工部28の工具主軸32からの取外し時には、シート加工部26の工具主軸32からの取外し後、カラー274をスプリングの付勢力に抗して移動させ、リーマホルダ190を可動軸182に対して回転可能とした状態で回転させ、可動軸182に対する軸方向の係合を解除し、可動軸182から抜け出させる。ガイド孔加工部28の工具主軸32への取付け時には、嵌合軸部192を嵌合孔250に嵌合限度まで嵌合した状態で回転させ、カラー274の係合舌片278の第2嵌合切欠268への嵌入,係合突部258と内向きフランジ266との係合により、可動軸182に相対回転不能かつ軸方向に相対移動不能に取り付ける。その後、シート加工部26を工具主軸32に取り付ける。
【選択図】図1
【解決手段】リーマホルダ190はコレットチャック194によりリーマ198を保持する。ガイド孔加工部28の工具主軸32からの取外し時には、シート加工部26の工具主軸32からの取外し後、カラー274をスプリングの付勢力に抗して移動させ、リーマホルダ190を可動軸182に対して回転可能とした状態で回転させ、可動軸182に対する軸方向の係合を解除し、可動軸182から抜け出させる。ガイド孔加工部28の工具主軸32への取付け時には、嵌合軸部192を嵌合孔250に嵌合限度まで嵌合した状態で回転させ、カラー274の係合舌片278の第2嵌合切欠268への嵌入,係合突部258と内向きフランジ266との係合により、可動軸182に相対回転不能かつ軸方向に相対移動不能に取り付ける。その後、シート加工部26を工具主軸32に取り付ける。
【選択図】図1
Description
本発明は、エンジンのシリンダヘッドにおけるバルブシートとガイド孔とを加工するバルブシート加工工具の改良に関するものである。
この種のバルブシート加工工具の一例が下記特許文献1および2に記載されている。この加工工具は、テーパ内周面を備えたバルブシートを加工するシート加工部と、バルブステムを案内するガイド孔を加工するガイド孔加工部とを含んでいる。シート加工部は、回転する工具主軸に取り付けられる工具本体と、その工具本体の回転軸線に対して傾斜した方向に移動可能な刃具保持部材と、前記工具本体に保持され、工具主軸の中心孔に軸方向に相対移動可能に嵌合される可動軸によって工具本体に対して軸方向に相対移動させられ、刃具保持部材を傾斜方向に移動させる駆動部材とを含むものとされている。工具本体にはさらに、上記刃具保持部材により保持された刃具である可動刃具により形成されるバルブシートとはテーパを異にする別のテーパ内周面を加工するための1つ以上の固定刃具が、少なくとも加工中は工具本体に対して相対移動不能に取り付けられることが多い。一方、ガイド孔加工部は、工具本体の中心部に形成された保持穴に嵌合されて保持されたスリーブに、リーマが軸方向に移動可能に嵌合され、そのリーマのシャンクが、上記可動軸内の中心孔にその可動軸に対して軸方向に相対移動可能に嵌合される別の可動軸に設けられるリーマ保持部に保持される。
このバルブシート加工工具によれば、工具本体が工具主軸と共に回転させられつつ、上記工具主軸に嵌合される可動軸の工具主軸に対する相対的な前進に伴って刃具保持部材が駆動部材により傾斜方向に移動させられ、刃具保持部材に保持された可動刃具によってバルブシートが加工され、また、工具主軸に嵌合される可動軸の中心孔に嵌合される上記別の可動軸の、工具主軸に嵌合される可動軸に対する相対的な前進に伴うリーマのスリーブからの突出によって、ガイド孔の加工が行われるというように、同一工程で連続的にバルブシートとガイド孔とが加工されるため、両者の同心度を確保することが容易である。しかも、本バルブシート加工工具においては、シート加工部とリーマとが共に、工具主軸に対して迅速に着脱可能とされており、可動刃具,固定刃具,リーマ等の交換を迅速に行うことができる。
特開2003−181706公報
特開2003−181707公報
このバルブシート加工工具によれば、工具本体が工具主軸と共に回転させられつつ、上記工具主軸に嵌合される可動軸の工具主軸に対する相対的な前進に伴って刃具保持部材が駆動部材により傾斜方向に移動させられ、刃具保持部材に保持された可動刃具によってバルブシートが加工され、また、工具主軸に嵌合される可動軸の中心孔に嵌合される上記別の可動軸の、工具主軸に嵌合される可動軸に対する相対的な前進に伴うリーマのスリーブからの突出によって、ガイド孔の加工が行われるというように、同一工程で連続的にバルブシートとガイド孔とが加工されるため、両者の同心度を確保することが容易である。しかも、本バルブシート加工工具においては、シート加工部とリーマとが共に、工具主軸に対して迅速に着脱可能とされており、可動刃具,固定刃具,リーマ等の交換を迅速に行うことができる。
しかしながら、上記バルブシート加工工具にも未だ改良すべき点があることが判明した。リーマ保持部の保持能力が十分とは言い難い点がその一つである。リーマ保持部は、リーマのシャンクの後端部に形成された横断面形状が非円形である非円形断面部と相対回転不能に嵌合する回転防止部と、リーマの後端部に螺合された調節ねじの後端面に当接してリーマのリーマ保持部への挿入深さを規定する規定部と、リーマの横断面形状が円形である円柱部の外周面と複数のボールにより摩擦係合してリーマのリーマ保持部からの抜け出しを防止するボールクランプ機構とを含むものとされており、調節ねじを十分な耐荷重性を備えたものとすることが困難である点や、ボールクランプ機構を十分な信頼性を有するものとすることが困難である点等、改良を要する点があったのである。
本出願人は、これらの点を改良するために、リーマ保持部をコレットチャックによりリーマのシャンクを保持するものとすることを試みた。コレットチャックによれば、リーマ保持部のリーマ保持能力を高めることができるのであるが、別の問題が発生する。コレットチャックは締付,解放のために操作部材の回転操作が必要であり、着脱の迅速性に欠けるのである。
この問題は、シート加工部においてバルブシートを加工する刃具が着脱可能にかつ少なくとも加工中は移動不能に保持されるバルブシート加工工具において同様に生ずる。
本発明は、以上の事情を背景にしてなされたものであり、上記問題の少なくとも1つを解決して、より実用的なバルブシート加工工具を得ることを課題としてなされたものである。
この問題は、シート加工部においてバルブシートを加工する刃具が着脱可能にかつ少なくとも加工中は移動不能に保持されるバルブシート加工工具において同様に生ずる。
本発明は、以上の事情を背景にしてなされたものであり、上記問題の少なくとも1つを解決して、より実用的なバルブシート加工工具を得ることを課題としてなされたものである。
上記の課題は、テーパ内周面を備えたバルブシートを加工するシート加工部と、バルブステムを案内するガイド孔を加工するガイド孔加工部とを含むバルブシート加工工具において、シート加工部を、(A)中心孔を備えて回転する工具主軸の先端に着脱可能に取り付けられ、工具主軸により回転軸線のまわりに回転させられる工具本体と、(B)バルブシートを加工するシート加工刃具を工具本体の転軸線から偏心した位置に保持し、そのシート加工刃具を工具本体の回転に伴って回転軸線のまわりに旋回させる工具保持部とを含むものとし、ガイド孔加工部を、(a)工具主軸の中心孔内に同心にかつ回転軸線に平行な方向である軸方向に相対移動可能に保持される可動軸の中心に形成された嵌合孔に嵌合される嵌合軸部と、その嵌合軸部の先端部に設けられ、ガイド孔を加工するリーマを着脱可能に保持するチャックとを含むリーマホルダと、(b)そのリーマホルダに設けられ、嵌合軸部の嵌合孔への嵌合限度を規定する嵌合限度規定部と、(c)リーマホルダに設けられ、可動軸の嵌合孔の開口端部に設けられた第1係合部と第1相対回転位相においては互いに軸方向に嵌合、離脱可能であり、嵌合限度規定部により規定されるまで軸方向に嵌合された状態で第2相対回転位相に相対回転させられることにより軸方向に離脱不能に係合する第2係合部と、(d)リーマホルダに軸方向に相対移動可能に取り付けられ、第1係合部と第2係合部との係合状態において、リーマホルダと可動軸との両方に相対回転不能に係合することにより、それらリーマホルダと可動軸との相対回転を防止する相対回転防止部材と、(e)その相対回転防止部材を、リーマホルダの先端側から後端側に向かう向きに付勢する付勢装置とを含むものとすることにより解決される。
本バルブシート加工工具においては、着脱可能なリーマホルダが先端部にチャックを備えており、リーマホルダへのリーマの取付けを、リーマホルダを可動軸、つまり工具主軸から取り外した状態で行うことができ、予めリーマを取り付けておいたリーマホルダを可動軸に取り付けることにより、リーマを可動軸に取り付けることができる。
また、このように、リーマホルダを可動軸から取り外した状態でリーマの取付けを行い得るため、チャックとして強固にリーマを保持し得るものを採用することができ、リーマの保持能力を高めることが容易となる。
しかも、リーマホルダの可動軸への取付けを簡単かつ迅速に行うことができる。本バルブシート加工工具においては、ガイド孔加工部が、リーマホルダと、嵌合限度規定部と、第2係合部と、相対回転防止部材と、付勢装置とを含むものであり、第1,第2係合部が第1相対回転位相にある状態で、リーマホルダが可動軸に、嵌合限度規定部により規定される限度まで嵌合され、その状態で第1相対回転位相から第2相対回転位相へ回転させられれば、第1,第2係合部が軸方向に離脱不能に係合する。その状態では、相対回転防止部材がリーマホルダと可動軸との相対回転を防止する状態となり、付勢装置が相対回転防止部材をその相対回転防止状態に維持する。つまり、リーマホルダを可動軸に挿入し、一定角度回転させるのみで、可動軸に取り付け得るのである。また、取外し時には、相対回転防止部材を付勢装置の付勢力に抗してリーマホルダの先端側へ移動させた状態で、リーマホルダを一定角度回転させ、軸方向に引き抜けばよいのであり、リーマホルダの着脱を容易かつ迅速に行うことができる。
なお、工具本体を含むシート加工部が工具主軸から取り外し可能であるため、シート加工部を取り外した状態でガイド孔加工部の着脱を行えば、その着脱作業を特に容易に行い得る。しかし、不可欠ではなく、シート加工部を取り外すことなくガイド孔加工部が着脱されるようにしてもよい。
さらに付言すれば、上記可動軸は、工具主軸に着脱可能に取り付けられることが多く、その場合、可動軸をバルブシート加工工具の構成要素と考えることも、工具主軸を含む加工機械の構成要素と考えることもできる。
また、このように、リーマホルダを可動軸から取り外した状態でリーマの取付けを行い得るため、チャックとして強固にリーマを保持し得るものを採用することができ、リーマの保持能力を高めることが容易となる。
しかも、リーマホルダの可動軸への取付けを簡単かつ迅速に行うことができる。本バルブシート加工工具においては、ガイド孔加工部が、リーマホルダと、嵌合限度規定部と、第2係合部と、相対回転防止部材と、付勢装置とを含むものであり、第1,第2係合部が第1相対回転位相にある状態で、リーマホルダが可動軸に、嵌合限度規定部により規定される限度まで嵌合され、その状態で第1相対回転位相から第2相対回転位相へ回転させられれば、第1,第2係合部が軸方向に離脱不能に係合する。その状態では、相対回転防止部材がリーマホルダと可動軸との相対回転を防止する状態となり、付勢装置が相対回転防止部材をその相対回転防止状態に維持する。つまり、リーマホルダを可動軸に挿入し、一定角度回転させるのみで、可動軸に取り付け得るのである。また、取外し時には、相対回転防止部材を付勢装置の付勢力に抗してリーマホルダの先端側へ移動させた状態で、リーマホルダを一定角度回転させ、軸方向に引き抜けばよいのであり、リーマホルダの着脱を容易かつ迅速に行うことができる。
なお、工具本体を含むシート加工部が工具主軸から取り外し可能であるため、シート加工部を取り外した状態でガイド孔加工部の着脱を行えば、その着脱作業を特に容易に行い得る。しかし、不可欠ではなく、シート加工部を取り外すことなくガイド孔加工部が着脱されるようにしてもよい。
さらに付言すれば、上記可動軸は、工具主軸に着脱可能に取り付けられることが多く、その場合、可動軸をバルブシート加工工具の構成要素と考えることも、工具主軸を含む加工機械の構成要素と考えることもできる。
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(4)項が請求項4に、(5)項が請求項5に、(6)項が請求項6に、それぞれ相当する。
(1)テーパ内周面を備えたバルブシートを加工するシート加工部と、バルブステムを案内するガイド孔を加工するガイド孔加工部とを含み、
前記シート加工部が、
中心孔を備えて回転する工具主軸の先端に着脱可能に取り付けられ、工具主軸により回転軸線のまわりに回転させられる工具本体と、
前記バルブシートを加工するシート加工刃具を前記工具本体の前記回転軸線から偏心した位置に保持し、そのシート加工刃具を前記工具本体の回転に伴って前記回転軸線のまわりに旋回させる工具保持部と
を含み、前記ガイド孔加工部が、
前記工具主軸の前記中心孔内に同心にかつ前記回転軸線に平行な方向である軸方向に相対移動可能に保持される可動軸の中心に形成された嵌合孔に嵌合される嵌合軸部と、その嵌合軸部の先端部に設けられ、前記ガイド孔を加工するリーマを着脱可能に保持するチャックとを含むリーマホルダと、
そのリーマホルダに設けられ、前記嵌合軸部の前記嵌合孔への嵌合限度を規定する嵌合限度規定部と、
前記リーマホルダに設けられ、前記可動軸の前記嵌合孔の開口端部に設けられた第1係合部と第1相対回転位相においては互いに前記軸方向に嵌合、離脱可能であり、前記嵌合限度規定部により規定されるまで軸方向に嵌合された状態で第2相対回転位相に相対回転させられることにより前記軸方向に離脱不能に係合する第2係合部と、
前記リーマホルダに前記軸方向に相対移動可能に取り付けられ、前記第1係合部と前記第2係合部との係合状態において、前記リーマホルダと前記可動軸との両方に相対回転不能に係合することにより、それらリーマホルダと可動軸との相対回転を防止する相対回転防止部材と、
その相対回転防止部材を、前記リーマホルダの先端側から後端側に向かう向きに付勢する付勢装置と
を含むバルブシート加工工具。
(2)前記シート加工部の前記工具保持部が、前記シート加工刃具を着脱可能にかつ少なくとも加工中は移動不能に保持する固定型工具保持部である(1)項に記載のバルブシート加工工具。
シート加工刃具は、刃先位置の調整等のために移動させられることがあっても、加工中は移動させられず、移動不能に保持される。
(3)前記シート加工部の前記工具保持部が、
前記工具本体に、その工具本体の回転軸線に対して傾斜した傾斜方向に移動可能に保持され、前記シート加工刃具を保持する刃具保持部材と、
第1可動軸としての前記可動軸とは別の第2可動軸であって前記工具主軸の中心孔内において前記第1可動軸の外側に前記軸方向に相対移動可能に嵌合されるものに保持されるとともに、前記工具本体に前記軸方向に相対移動可能に保持され、その軸方向の相対移動に伴って前記刃具保持部材を前記傾斜方向に移動させる駆動部材と
を含む可動型工具保持部である(1)項に記載のバルブシート加工工具。
上記第1可動軸と第2可動軸とは、工具主軸に着脱可能に取り付けられることが多く、その場合、両可動軸をバルブシート加工工具の構成要素と考えることも、工具主軸を含む加工機械の構成要素と考えることもできる。
(4)前記リーマホルダが、前記チャックから前記嵌合軸部に到るリーマ挿入孔を有し、かつ、当該バルブシート加工工具が、そのリーマ挿入孔への前記リーマの挿入限度を規定する挿入限度規定部を含む(1)項ないし(3)項のいずれかに記載のバルブシート加工工具。
リーマのリーマホルダへの取付けに当たって、リーマをリーマ挿入孔に挿入限度まで挿入すればよく、リーマの取付作業が容易となる。
(5)前記挿入限度規定部が、前記リーマホルダの前記リーマ挿入孔の後端部に形成された雌ねじ穴に螺合され、前記リーマの後端に当接してそのリーマの前記リーマ挿入孔への挿入限度を規定する調節ねじを含む(4)項に記載のバルブシート加工工具。
挿入限度規定部を調節ねじを含むものとすれば、リーマホルダを工具主軸から取り外した状態で、リーマのリーマホルダに対する軸方向位置を調節することができ、工具主軸への取付け後にリーマの軸方向位置調節を行う場合に比較して、加工機械上においてのガイド孔加工部の着脱作業に要する時間を短縮し、加工機械の稼動率を高めることができる。
しかも、リーマホルダに調節ねじを設ける場合は、前記特許文献1に記載されているようにリーマのシャンクに調節ねじを設ける場合に比較して、有効径の大きい調節ねじを採用することができ、その分、ガイド孔加工部の耐荷重性を向上させることができる。
(6)前記チャックが、
前記リーマホルダの先端部により形成され、リーマホルダの先端側から後端側へ向かうに従って直径が漸減するテーパ孔を含むチャック本体と、
テーパ外周面を有し、前記テーパ孔に嵌合されたコレットと、
そのコレットをリーマホルダの先端側から後端側へ押すことにより縮径させる縮径装置と
を含むコレットチャックである(1)項ないし(5)項のいずれかに記載のバルブシート加工工具。
コレットチャックは、比較的細いリーマシャンクを強固に保持するのに適し、あるいは全体を小径に構成することが容易である利点を有している。
(7)前記嵌合限度規定部が、前記リーマホルダの前記嵌合軸部の先端部から半径方向外向きに突出し、前記第1可動軸の先端面に当接する当接突起を含む(1)項ないし(6)項のいずれかに記載のバルブシート加工工具。
リーマホルダの第1可動軸への取付作業が容易となる効果が得られる。
(8)前記当接突起が半径方向外向きに突出した外向きフランジであり、その外向きフランジにそれの一部を軸方向に貫通する状態で第1嵌合切欠が形成される一方、前記相対回転防止部材が、前記リーマホルダの前記外向きフランジより先端側の部分に摺動可能に嵌合される中空円筒部材であって、その中空円筒部材の後端面から後方へ突出し、前記第1嵌合切欠に嵌合するとともに、先端部が前記第1可動軸の先端面から軸方向に形成された第2嵌合切欠に嵌合する嵌合舌片を備えたものである(7)項に記載のバルブシート加工工具。
本項の特徴を採用すれば、ガイド孔加工部の構成を単純化することができ、あるいはリーマホルダの着脱作業を一層容易にすることができる。
前記シート加工部が、
中心孔を備えて回転する工具主軸の先端に着脱可能に取り付けられ、工具主軸により回転軸線のまわりに回転させられる工具本体と、
前記バルブシートを加工するシート加工刃具を前記工具本体の前記回転軸線から偏心した位置に保持し、そのシート加工刃具を前記工具本体の回転に伴って前記回転軸線のまわりに旋回させる工具保持部と
を含み、前記ガイド孔加工部が、
前記工具主軸の前記中心孔内に同心にかつ前記回転軸線に平行な方向である軸方向に相対移動可能に保持される可動軸の中心に形成された嵌合孔に嵌合される嵌合軸部と、その嵌合軸部の先端部に設けられ、前記ガイド孔を加工するリーマを着脱可能に保持するチャックとを含むリーマホルダと、
そのリーマホルダに設けられ、前記嵌合軸部の前記嵌合孔への嵌合限度を規定する嵌合限度規定部と、
前記リーマホルダに設けられ、前記可動軸の前記嵌合孔の開口端部に設けられた第1係合部と第1相対回転位相においては互いに前記軸方向に嵌合、離脱可能であり、前記嵌合限度規定部により規定されるまで軸方向に嵌合された状態で第2相対回転位相に相対回転させられることにより前記軸方向に離脱不能に係合する第2係合部と、
前記リーマホルダに前記軸方向に相対移動可能に取り付けられ、前記第1係合部と前記第2係合部との係合状態において、前記リーマホルダと前記可動軸との両方に相対回転不能に係合することにより、それらリーマホルダと可動軸との相対回転を防止する相対回転防止部材と、
その相対回転防止部材を、前記リーマホルダの先端側から後端側に向かう向きに付勢する付勢装置と
を含むバルブシート加工工具。
(2)前記シート加工部の前記工具保持部が、前記シート加工刃具を着脱可能にかつ少なくとも加工中は移動不能に保持する固定型工具保持部である(1)項に記載のバルブシート加工工具。
シート加工刃具は、刃先位置の調整等のために移動させられることがあっても、加工中は移動させられず、移動不能に保持される。
(3)前記シート加工部の前記工具保持部が、
前記工具本体に、その工具本体の回転軸線に対して傾斜した傾斜方向に移動可能に保持され、前記シート加工刃具を保持する刃具保持部材と、
第1可動軸としての前記可動軸とは別の第2可動軸であって前記工具主軸の中心孔内において前記第1可動軸の外側に前記軸方向に相対移動可能に嵌合されるものに保持されるとともに、前記工具本体に前記軸方向に相対移動可能に保持され、その軸方向の相対移動に伴って前記刃具保持部材を前記傾斜方向に移動させる駆動部材と
を含む可動型工具保持部である(1)項に記載のバルブシート加工工具。
上記第1可動軸と第2可動軸とは、工具主軸に着脱可能に取り付けられることが多く、その場合、両可動軸をバルブシート加工工具の構成要素と考えることも、工具主軸を含む加工機械の構成要素と考えることもできる。
(4)前記リーマホルダが、前記チャックから前記嵌合軸部に到るリーマ挿入孔を有し、かつ、当該バルブシート加工工具が、そのリーマ挿入孔への前記リーマの挿入限度を規定する挿入限度規定部を含む(1)項ないし(3)項のいずれかに記載のバルブシート加工工具。
リーマのリーマホルダへの取付けに当たって、リーマをリーマ挿入孔に挿入限度まで挿入すればよく、リーマの取付作業が容易となる。
(5)前記挿入限度規定部が、前記リーマホルダの前記リーマ挿入孔の後端部に形成された雌ねじ穴に螺合され、前記リーマの後端に当接してそのリーマの前記リーマ挿入孔への挿入限度を規定する調節ねじを含む(4)項に記載のバルブシート加工工具。
挿入限度規定部を調節ねじを含むものとすれば、リーマホルダを工具主軸から取り外した状態で、リーマのリーマホルダに対する軸方向位置を調節することができ、工具主軸への取付け後にリーマの軸方向位置調節を行う場合に比較して、加工機械上においてのガイド孔加工部の着脱作業に要する時間を短縮し、加工機械の稼動率を高めることができる。
しかも、リーマホルダに調節ねじを設ける場合は、前記特許文献1に記載されているようにリーマのシャンクに調節ねじを設ける場合に比較して、有効径の大きい調節ねじを採用することができ、その分、ガイド孔加工部の耐荷重性を向上させることができる。
(6)前記チャックが、
前記リーマホルダの先端部により形成され、リーマホルダの先端側から後端側へ向かうに従って直径が漸減するテーパ孔を含むチャック本体と、
テーパ外周面を有し、前記テーパ孔に嵌合されたコレットと、
そのコレットをリーマホルダの先端側から後端側へ押すことにより縮径させる縮径装置と
を含むコレットチャックである(1)項ないし(5)項のいずれかに記載のバルブシート加工工具。
コレットチャックは、比較的細いリーマシャンクを強固に保持するのに適し、あるいは全体を小径に構成することが容易である利点を有している。
(7)前記嵌合限度規定部が、前記リーマホルダの前記嵌合軸部の先端部から半径方向外向きに突出し、前記第1可動軸の先端面に当接する当接突起を含む(1)項ないし(6)項のいずれかに記載のバルブシート加工工具。
リーマホルダの第1可動軸への取付作業が容易となる効果が得られる。
(8)前記当接突起が半径方向外向きに突出した外向きフランジであり、その外向きフランジにそれの一部を軸方向に貫通する状態で第1嵌合切欠が形成される一方、前記相対回転防止部材が、前記リーマホルダの前記外向きフランジより先端側の部分に摺動可能に嵌合される中空円筒部材であって、その中空円筒部材の後端面から後方へ突出し、前記第1嵌合切欠に嵌合するとともに、先端部が前記第1可動軸の先端面から軸方向に形成された第2嵌合切欠に嵌合する嵌合舌片を備えたものである(7)項に記載のバルブシート加工工具。
本項の特徴を採用すれば、ガイド孔加工部の構成を単純化することができ、あるいはリーマホルダの着脱作業を一層容易にすることができる。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
図1に、請求可能発明の一実施例としてのバルブシート加工工具が図示されている。本バルブシート加工工具により、図2に示すように、エンジンのシリンダヘッドにおけるバルブシート10,テーパ内周面12,14およびガイド孔16が加工される。バルブシート10はテーパ内周面18を備え、このテーパ内周面18の前後にそれぞれ隣接してテーパ内周面12,14が形成される。これらテーパ内周面12,14,18はそれぞれ、テーパを異にする。バルブシート10の前方にバルブガイド20が形成されており、そのバルブガイド20内にガイド孔16が形成され、バルブステム(図示省略)を案内する。
バルブシート加工工具は、図1に示すように、バルブシート10を加工するシート加工部26と、ガイド孔16を加工するガイド孔加工部28とを含む。シート加工部26は、特開2003−181706公報に記載のシート加工部とほぼ同様に構成されており、簡単に説明する。シート加工部26は、アダプタ30を介して加工機械の工具主軸32の先端に着脱可能に取り付けられる。アダプタ30は段付の円筒状を成し、軸方向の中間部から半径方向外向きに延び出させられた外向きフランジ部34を備え、外向きフランジ部34より後側の部分が取付部36とされ、前側の部分が嵌合突部38とされている。嵌合突部38の外周面は、前方ほど直径が減少するテーパ外周面40とされている。また、外向きフランジ部34の前端面42には、横断面形状が円形を成す係合部としての係合突部44が突設されている。アダプタ30は、取付部36において工具主軸32の中心孔46の嵌合穴48に嵌合されるとともに、外向きフランジ部34が工具主軸32の先端面に当接させられ、同軸にかつ軸方向に位置決めされた状態で、外向きフランジ部34を通って工具主軸32にボルト(図示省略)が螺合されることにより、工具主軸32に着脱可能に固定されている。
アダプタ30には、図1に示すように、シート加工部26の工具本体52が着脱可能に、かつ同心に取り付けられ、工具主軸32により、工具主軸32の軸線と同心な回転軸線まわりに回転させられる。工具本体52は、概して円筒状の基部54と、概して円錐状の先端部56とを有しており、基部54の後端面58には、係合部としての係合凹部62が、工具本体52の回転軸線を中心とする円弧に沿って一定の長さで形成されており、外向きフランジ部34の前端面42に突設された係合突部44に係合させられる。
工具本体52は、先端部56のテーパ外周面に沿って先端側ほど軸心に接近する向きに傾斜し、工具本体52の回転軸線に対して傾斜した傾斜方向に延びる傾斜T溝66およびその傾斜Т溝66から工具本体52の回転軸線に平行に延びる軸方向溝68を備えている。傾斜Т溝66は横断面形状が逆Т字形であり、軸方向溝は横断面形状が矩形である。傾斜Т溝66および軸方向溝68には、刃具保持部材としてのТ字形スライダ(以下、単にスライダと略称する)70が摺動可能に嵌合されている。スライダ70は、傾斜Т溝66に嵌合される傾斜部72と軸方向溝68に嵌合される軸方向部74とを備えている。傾斜部72は横断面形状が逆Т字形とされ、軸方向部74は横断面形状が矩形とされ、傾斜部72は傾斜Т溝66に、浮上がりを防止されるとともに、傾斜Т溝66の底面に沿った方向の移動のみが許容された状態で嵌合されている。
スライダ70には、軸方向部74の前部にシート加工刃具としてのバイト80が工具本体52の回転軸線に平行に嵌合され、固定されている。バイト80は、スライダ70の移動により、工具本体52の回転軸線に対して傾斜した傾斜方向に移動させられる。バイト80は可動工具であり、バルブシート10のテーパ内周面18を加工する。工具本体52にはまた、図2に示すように、スライダ70が設けられた部分とは位相を異にする2箇所にそれぞれ、バイト82,84が嵌合され、固定されている。バイト82,84は固定工具であり、前記テーパ内周面12,14を加工する。バイト82,84は、図示を省略する調整装置により、工具本体52に対して移動させられ、刃先位置が調整される。この調整は加工時以外のときに行われ、バイト82,84は加工中は工具本体52に移動不能に取り付けられる。
スライダ70は、駆動部材90により上記傾斜方向に移動させられる。駆動部材90は、移動部92および係合部94を含む。移動部92は概して円筒状を成し、工具本体52内に設けられた有底のガイド穴96に、工具本体52の回転軸線に平行な方向に相対移動可能に嵌合され、保持されている。駆動部材90はまた、工具本体52により相対回転不能に保持されている。係合部94は、横断面形状が円形を成し、移動部92に、工具本体52の回転軸線に対して傾斜し、傾斜T溝66に対して直角な向きに突設されるとともに、スライダ70の傾斜部72に、その頂面から底面へ貫通して設けられた嵌合穴98に、嵌合穴98の中心線に平行な方向に相対移動可能に嵌合されている。したがって、移動部92が移動させられれば、係合部94の傾斜により、スライダ70が傾斜T溝66の傾斜に沿って移動させられ、工具本体52の回転軸線に対して傾斜した傾斜方向に移動させられる。本実施例においては、スライダ70および駆動部材90が可動型工具保持部100を構成し、スライダ70に固定されたバイト80は、可動型工具保持部100により、工具本体52の回転軸線から偏心した位置に保持されている。
工具本体52にはまた、図1に示すように、ガイド穴96より直径が大きく、後端面58に開口する有底の嵌合穴102が形成され、ガイド穴96は嵌合穴102の底面に開口させられている。嵌合穴102の内周面は、前記アダプタ30の嵌合突部38のテーパ外周面40と対応する傾斜のテーパ内周面104とされ、両テーパ面40,104がしまり嵌合させられることにより、アダプタ30とシート加工部26との心出しが為され、工具本体52の後端面58が外向きフランジ部34の前端面42に当接することにより軸方向の位置が規定される。
シート加工部26とアダプタ30とは、図1に示すロック機構108により、軸方向に離脱することが防止される。ロック機構108は、アダプタ30を中心線方向に貫通して形成された嵌合穴110内に相対回転可能かつ軸方向に相対移動不能に嵌合されたクランプ部材112,クランプ部材112を回転させるクランプ部材回転駆動装置114および複数、例えば、3個の鋼球116を含む。クランプ部材112は、外周面が段付の円筒状を成し、その後部にはウォームホイール118が一体的に設けられるとともに、アダプタ30に、その中心線と直角に立体交差する軸線まわりに回転可能かつ軸方向に移動不能に嵌合されたウォーム120の一部と噛み合わされている。
また、複数の鋼球116は、図1および図3に示すように、アダプタ30の嵌合突部38の周壁を半径方向に貫通して形成された複数の保持穴122の各々に、ほぼ嵌合突部38の回転軸線に直交する方向のみに移動可能に嵌合されている。鋼球116は、嵌合突部38の内周面とテーパ外周面40との両方から突出する大きさを有する。また、クランプ部材112の外周面の複数の鋼球116にそれぞれ対応する部分には、図3に示すように、カム溝124が形成されている。カム溝124は、断面形状が鋼球116とほぼ等しい半径の弓形とされ、周方向に沿って溝の深さが漸減させられている。
工具本体52には、図1に示すように、そのテーパ内周面104に開口する円環状溝126が形成されるとともに、その円環状溝126の後側の溝側面は、嵌合穴102の中心線側ほど後方へ向かう向きに傾斜させられたテーパ内周面128とされている。工具本体52にはまた、テーパ内周面128に開口し、その後端面58から円環状溝126に至る切欠130が複数、本実施例では3個、等角度間隔に形成され、工具本体52をアダプタ30に嵌合する際の鋼球116と工具本体52との干渉が回避されるようにされている。
ウォーム120が回転操作され、ウォームホイール118が回転させられてクランプ部材112が回転させられれば、カム溝124の鋼球116に係合する部分の深さが変化し、鋼球116の嵌合突部38のテーパ外周面40からの突出量が変化させられる。それにより、鋼球116は、テーパ外周面40からの突出量が少なく、アダプタ30に嵌合された工具本体52のテーパ内周面128から離れ、工具本体52とアダプタ30との嵌合,離脱を許容する開放状態と、保持穴122からテーパ外周面40側への突出量が開放状態におけるより多く、テーパ内周面128に押し付けられ、斜面の作用により工具本体52をアダプタ30に押し付けて相対移動不能に固定するロック状態とに切り換えられる。
なお、図示は省略するが、クランプ部材112の先端面には、工具本体52の嵌合穴102の底面をけり上げるけり上げ凸部が軸方向に突出して設けられており、アダプタ30から工具本体52が抜け出すことが許容された状態で、さらにクランプ部材112が回転させられることにより、けり上げ凸部が嵌合穴102の底面に係合して工具本体52をアダプタ30から押し離し、両者が強制的に離間させられる。
さらに、工具本体52には、図1に示すように、前記ガイド穴96より径が小さく、工具本体52の先端面131からガイド穴96に至る保持孔132が形成されるとともに、スリーブ134が嵌合され、固定される。スリーブ134の前部には、半径方向外向きの外向きフランジ136が形成され、スリーブ134は外向きフランジ136が工具本体52の先端面131に当接するまで保持孔132に嵌合され、着脱可能に固定される。
前記駆動部材90は、可動軸140により移動させられる。可動軸140は円筒状を成し、図1に示すように、前記工具主軸32の中心孔46に軸方向に相対移動可能かつ相対回転不能に嵌合されており、工具主軸32に対して着脱可能である。可動軸140の周壁の直径方向に隔たった2箇所にそれぞれ、キー142が固定されている。これらキー142は、各大径の頭部144が可動軸140の外周面から突出させられ、各先端部146は可動軸140の内周面から突出させられており、頭部144が、中心孔46に設けられた軸方向に延びる一対のキー溝148にそれぞれ嵌合されることにより、可動軸140の工具主軸32に対する軸方向の移動が許容されるとともに、相対回転が防止されている。可動軸140は、図示を省略する第2可動軸駆動装置としてのアクチュエータにより軸方向に移動させられる。それぞれ係合部の一種である係合凸部および係合凹部を構成するキー142およびキー溝148が相対回転防止装置ないし回転伝達装置を構成している。
可動軸140は、図1および図2に示すように、その前部が前記クランプ部材112内に軸方向に相対移動可能に嵌合されており、前記駆動部材90の移動部92に軸方向に相対移動不能に係合させられる。移動部92は概して円筒状を成し、軸方向に貫通する貫通穴154が形成され、前記スリーブ134が嵌合される保持孔132は、前記ガイド穴96および貫通穴154に連通させられている。貫通穴154は、軸方向後方において比較的大径の係合穴部156を有する。係合穴部156の内周部に環状の係合溝158が形成され、係合溝158から移動部92の後端に連通する複数の切欠160が等角度間隔に形成されている。また、可動軸140の前端部には、駆動部材90の係合穴部156と係合可能な係合部164が形成されている。係合部164は、直径が係合穴部156と嵌合可能な大きさとされ、先端部において外向きに突出する複数(切欠160と同数)の係合片166が等角度間隔に形成されている。
移動部92と可動軸140とは、切欠160と係合片166との位相が一致する状態で係合穴部156に係合部164が嵌合され、係合片166が係合溝158内に位置する状態で相対回転させられることにより、係合片166が係合溝158の両側壁により挟まれて軸方向の相対移動が阻止され、スライダ70は駆動部材90を介して可動軸140により保持される。その状態で可動軸140が移動させられれば、駆動部材90が工具本体52に対して移動させられ、係合部94の外周面とスライダ70の嵌合穴98の内周面とが摺動しつつ、スライダ70が傾斜Т溝66に沿って工具本体52の回転軸線に対して傾斜した方向に移動させられる。係合部94および嵌合穴98が、可動軸140の軸方向の移動を、スライダ70の傾斜Т溝66に沿った方向の移動に変換する運動変換機構を構成している。
可動軸140は、図1に示すように、中心線方向に貫通する中心孔180を備え、その中心孔180には、可動軸182が軸方向に相対移動可能かつ相対回転不能に嵌合されており、可動軸140に対して着脱可能である。可動軸140は、工具主軸32の中心孔46において可動軸182の外側に軸方向に相対移動可能に嵌合され、可動軸182は可動軸140を介して、工具主軸32の中心孔46に同心にかつ工具本体52の回転軸線に平行な方向である軸方向に移動可能に保持され、工具主軸32に対して着脱可能に取り付けられている。本実施例では、可動軸182が第1可動軸を構成し、可動軸140が第2可動軸を構成している。可動軸182は、概して円筒状を成し、その直径方向に隔たった2箇所にそれぞれ、外周面および後端面に開口し、軸方向に延びるキー溝184が設けられ、可動軸140に設けられた前記一対のキー142の先端部146がそれぞれ、軸方向に相対移動可能に嵌合されている。それにより、可動軸182の可動軸140に対する相対回転が防止されるとともに、可動軸140に対する軸方向の移動が案内されている。可動軸182の後端部は図示を省略するリーマ移動装置に連結され、軸方向に移動させられる。リーマ移動装置は、第1可動軸駆動装置である。また、それぞれ係合部の一種である係合凸部および係合凹部を構成するキー142およびキー溝184が相対回転防止装置ないし回転伝達装置を構成している。
可動軸182にリーマホルダ190が嵌合される。リーマホルダ190は、図1に示すように、嵌合軸部192と、嵌合軸部192の先端部に設けられたコレットチャック194とを含み、リーマホルダ190を軸方向に貫通し、コレットチャック194から嵌合軸部192に至るリーマ挿入孔196を有し、リーマ198が挿入される。リーマ198は、前記ガイド孔16を加工する工具であり、そのシャンク200の後端部202は、周方向の一部が軸方向に平方に切り欠かれ、横断面形状がほぼD字形を成し、非円形断面部が設けられている。
リーマ挿入孔196は、横断面形状が円形を成すが、中心線方向の中間部の横断面形状は、シャンク200の後端部200の横断面形状に対応する形状であって、円の一部が切り欠かれた形状であり、ほぼD字形とされ、回転止め穴204が設けられており、リーマ挿入孔196に挿入されたリーマ198のシャンク200の後端部202が回転止め穴204に嵌合されることにより、リーマ198のリーマホルダ190に対する相対回転が防止される。回転止め穴204が回転防止部を構成している。リーマ挿入孔196にはまた、その後端部に雌ねじ穴208が形成されるとともに、調節ねじ210が螺合されており、リーマ挿入孔196に挿入されたリーマ198の後端に当接して、リーマ198のリーマ挿入孔196への挿入限度を規定する。調節ねじ210が挿入限度規定部を構成している。
前記コレットチャック194のチャック本体220は、リーマホルダ190の先端部により形成され、図4に示すように、前記リーマ挿入孔196の先端部は、リーマホルダ190の先端側から後端側へ向かうに従って直径が直線的に漸減するテーパ孔222とされ、コレット224が嵌合されている。コレット224は、テーパ孔222のテーパに対応する傾斜のテーパ外周面226と、テーパ外周面226より先端側に形成され、テーパ外周面226とは傾斜の向きが逆である別のテーパ外周面228とを備え、テーパ外周面226側においてテーパ孔222に嵌合され、テーパ外周面228はテーパ孔222から前方へ突出させられている。さらに、テーパ外周面226,228の間の部分に、外周面に開口する円環状溝230が形成されている。
チャック本体220の先端部には、図4に示すように、雄ねじ部232が設けられ、クランプナット234が螺合されている。クランプナット234は、上記テーパ外周面228に対応する傾斜のテーパ内周面236を備え、テーパ外周面228に係合させられる。クランプナット234はまた、半径方向内向きに突出する円環状の係合突部238を備え、コレット224の円環状溝230に嵌入させられている。クランプナット234が雄ねじ部232にねじ込まれれば、クランプナット234のテーパ内周面236がコレット224のテーパ外周面228に係合し、コレット224をリーマホルダ190の先端側から後端側へ押す。それによりコレット224がテーパ孔222内に押し込まれ、縮径させられてリーマ198を保持する。また、クランプナット234の螺合が緩められれば、クランプナット234の後退に伴って係合突部238が円環状溝230の前側の側面に係合し、コレット224をテーパ孔222から抜け出す方向へ移動させ、コレット224が拡径してリーマ198を解放する。本実施例においては、クランプナット234が縮径装置を構成している。
リーマホルダ190の嵌合軸部192は、図1に示すように、可動軸182の中心を貫通して形成された嵌合孔250に嵌合される。嵌合軸部192の嵌合孔250への嵌合限度は、嵌合軸部192の先端部から半径方向外向きに突出させられた外向きフランジ252が、可動軸182の先端面254に当接することにより規定される。外向きフランジ252が当接突起の一種であり、嵌合限度規定部を構成している。外向きフランジ252には、図5に示すように、直径方向に隔たった2箇所にそれぞれ、軸方向に貫通する状態で第1嵌合切欠256が形成されている。嵌合軸部192にはまた、図4および図5に示すように、その外周面の外向きフランジ252から後部側に離れた部分の直径方向に隔たった2箇所にそれぞれ、係合部の一種である係合突部258が突設されている。これら係合突部258はそれぞれ、図5に示すように、外向きフランジ252より低く、一対の第1嵌合切欠256に対して90度、位相を異にする位置に形成されている。
また、可動軸182には、図2に示すように、その先端面254から短い距離、離れた箇所に、嵌合孔250の内周面に開口する円環状の溝264が形成されている。それにより、可動軸182の開口端部には、溝264の前側の側壁により構成され、半径方向内向きの内向きフランジ266が形成されている。溝264は、前記リーマホルダ190の嵌合軸部192に突設された係合突部258の高さより深く、内向きフランジ266は、前記リーマホルダ190の嵌合軸部192の外向きフランジ部252と係合突部258との間にほぼ隙間なく嵌合可能な軸方向の厚さを有する。
可動軸182の開口端部にはまた、図2および図4に示すように、その直径方向に隔たった2箇所にそれぞれ、先端面254から軸方向に延び、溝264の途中に至る長さの第2嵌合切欠268が形成されている。これら第2嵌合切欠268はそれぞれ、前記係合突部258の通過を許容する幅を有し、可動軸182の周壁を半径方向に貫通して形成されている。
したがって、一対の係合突部258と内向きフランジ266とは、係合突部258と第2嵌合切欠268との位相が一致する第1相対回転位相においては、互いに軸方向に嵌合,離脱可能である。そして、第1相対回転位相において嵌合軸部198が嵌合孔250に、外向きフランジ252が可動軸182の先端面254に当接するまで嵌合されれば、内向きフランジ266が外向きフランジ252と係合突部258との間の部分に位置するとともに、係合突部258が溝264内に位置する状態となる。その状態からリーマホルダ190と可動軸182とが90度、相対回転させられれば、一対の係合突部258がそれぞれ、第2嵌合切欠268から外れ、内向きフランジ266の第2嵌合切欠268が形成されていない部分に対向する第2相対回転位相とされ、係合突部258と内向きフランジ266との係合により、リーマホルダ190と可動軸182とは、軸方向に離脱不能に係合させられる。本実施例においては、内向きフランジ266が第1係合部を構成し、一対の係合突部258が第2係合部を構成し、ガイド孔加工部28は、可動軸140,182を介して工具主軸32に着脱可能に取り付けられる。
上記リーマホルダ190の外向きフランジ252とクランプナット234との間の部分には、相対回転防止部材たる中空円筒部材としてのカラー274が軸方向に摺動可能に嵌合されるとともに、リーマホルダ190との間に配設された付勢装置の一種である弾性部材としての圧縮コイルスプリング276により、リーマホルダ190の先端側から後端側へ向かう向きに付勢されている。このスプリング276の付勢によるカラー274のリーマホルダ190に対する移動限度は、カラー274の後端面が外向きフランジ252に当接することにより規定される。カラー274の内径は、コレットチャック194のクランプナット234の外径より大きく、カラー274はクランプナット234と干渉することなく、軸方向に移動することができる。
カラー274には、その後端面の直径方向に隔たった2箇所からそれぞれ、嵌合舌片278が後方へ突出して設けられるとともに、外向きフランジ252の前記一対の第1嵌合切欠256の各々に軸方向に摺動可能に嵌合されている。したがって、図5に示すように、一対の係合舌片278はそれぞれ、一対の係合突部258とは90度位相を異にし、前記内向きフランジ266と一対の係合突部258とが前記第2相対回転位相にある状態では、一対の嵌合舌片278は一対の第2嵌合切欠268との位相が一致し、その先端部が第2嵌合切欠268に嵌合され、リーマホルダ190と可動軸182との両方に相対回転不能に係合し、リーマホルダ190と可動軸182との相対回転が防止される。
以上のように構成されたバルブシート加工工具においては、シート加工部26およびガイド孔加工部28をそれぞれ、工具主軸32から取り外すことができる。本シート加工部26は、工具本体52および可動型工具保持部100(スライダ70および駆動部材90)を含み、工具主軸32に取り付けられた状態では、工具本体52の嵌合穴102がアダプタ30の嵌合突部38にしまり嵌合され、クランプ部材112がロック状態にあり、鋼球116がテーパ内周面128に係合し、工具本体52を外向きフランジ部34に押し付けた状態にある。また、係合凹部62に係合突部44が嵌合されるとともに、係合凹部62の、工具主軸32の回転方向において下流側の端面に係合し、工具主軸32の回転をアダプタ30に伝達する状態にある。さらに、可動軸140と駆動部材90とは、軸方向に相対移動不能に係合させられた位相にある。
本ガイド孔加工部28は、リーマホルダ190,外向きフランジ252,係合突部258,カラー274およびスプリング276を含み、工具主軸32に取り付けられた状態では、コレットチャック194によりリーマ198を保持したリーマホルダ190は、嵌合軸部192が可動軸182の嵌合孔250に嵌合されるとともに、係合突部258と内向きフランジ266とが第2相対回転位相にあり、可動軸182と軸方向に離脱不能に係合させられるとともに、カラー274の係合舌片278の第1,第2嵌合切欠256,268への嵌合により、相対回転を防止された状態にある。シート加工部26およびガイド孔加工部28はそれぞれ、可動軸140,182に取付け,取外しされ、可動軸140,182は本バルブシート加工工具に含まれず、加工機械を構成する。
この状態でシート加工部26およびガイド孔加工部28のうち、まず、シート加工部26が工具主軸32および可動軸140から取り外される。シート加工部26の取外し時には、作業者はまず、図6(a)に示すように、スリーブ134を工具本体52から取り外す。工具本体52およびリーマホルダ190がまだ可動軸140,182に取り付けられた状態にあり、がたつきがないため、スリーブ134を工具本体52およびリーマ198に対してこじりなく、損傷を生じることなく、取り外すことができる。
次いで、図6(b)に示すように、作業者はウォーム120に工具300を係合させ、ウォーム120を、クランプ部材112を解放状態に切り換える方向に回転させる。それにより、鋼球116がテーパ内周面128から離れ、工具本体52のアダプタ30への押付けが解除され、作業者は工具本体52をアダプタ30に対して回転させる。この場合、作業者は工具本体52を、係合凹部62が、現に係合突部44に係合している端面が係合突部44から離れる方向に回転させ、係合凹部62の工具本体52の回転軸線まわりにおいて反対側の端面が係合突部44に係合するまで回転させる。このように工具本体52が回転させられた状態では、可動軸140の係合片166と、駆動部材90の切欠160との位相が一致するとともに、切欠130と鋼球116との位相も一致し、図6(c)に示すように、工具本体52をアダプタ30から離れる向きに移動させ、取り外すことができる。
次にガイド孔加工部28を取り外す。ガイド孔加工部28の取外し時には、可動軸182は前進端位置にあり、リーマホルダ190は、カラー274が可動軸140から前方へ突出した状態にある。そして、作業者はカラー274を持ち、スプリング276の付勢力に抗して後退させ、係合舌片278を第2嵌合切欠268から抜け出させ、可動軸182との係合を解除する。それにより、リーマホルダ190の可動軸182に対する回転が可能となり、作業者はリーマホルダ190を回転させ、嵌合軸部192に突設された係合突部258が第2嵌合切欠268内に位置する状態とし、リーマホルダ190を可動軸182から抜け出す方向に移動させ、図6(d)に示すように、可動軸182から取り外し、主軸32から取り外す。
シート加工部26およびガイド孔加工部28の工具主軸32への取付けを説明する。
取付けは、図7(a)に示すように、まず、ガイド孔加工部28から行われる。ガイド孔加工部28の取付け時には、可動軸182は前進端位置に位置させられており、作業者はリーマホルダ190を持ち、一対ずつの係合突部258と第2嵌合切欠268との位相を合わせた状態で嵌合軸部192を可動軸182の嵌合孔250に嵌合する。係合突部258は第2嵌合切欠268を通って溝264内に入るが、カラー274の係合舌片278は、可動軸182の先端面254に当接した後は移動を阻止され、スプリング276を圧縮しつつ、嵌合軸部192に対して相対的に後退し、嵌合軸部192の嵌合孔250への嵌合を許容する。
取付けは、図7(a)に示すように、まず、ガイド孔加工部28から行われる。ガイド孔加工部28の取付け時には、可動軸182は前進端位置に位置させられており、作業者はリーマホルダ190を持ち、一対ずつの係合突部258と第2嵌合切欠268との位相を合わせた状態で嵌合軸部192を可動軸182の嵌合孔250に嵌合する。係合突部258は第2嵌合切欠268を通って溝264内に入るが、カラー274の係合舌片278は、可動軸182の先端面254に当接した後は移動を阻止され、スプリング276を圧縮しつつ、嵌合軸部192に対して相対的に後退し、嵌合軸部192の嵌合孔250への嵌合を許容する。
作業者は、嵌合軸部192を外向きフランジ252が先端面254に当接するまで、すなわち嵌合限度まで嵌合したならば、リーマホルダ190を90度回転させる。それにより、係合舌片278と第2嵌合切欠268との位相が一致し、カラー274はスプリング276の付勢により可動軸182側へ移動させられ、係合舌片278が第2嵌合切欠268に嵌入させられて、リーマホルダ190が可動軸182に相対回転不能に保持される。また、係合突部258と内向きフランジ266とが軸方向に離脱不能に係合させられ、リーマホルダ190が可動軸182により軸方向に離脱不能に保持される。
次いで作業者は、図7(b)に示すように、シート加工部26をアダプタ30および可動軸140に取り付ける。作業者は工具本体52を持ち、駆動部材90の切欠160と可動軸140の係合片166との位相を一致させた状態で、工具本体52をアダプタ30の嵌合突部38に嵌合する。この位相ではまた、3個ずつの鋼球116と切欠130との位相が一致するとともに、工具本体52の係合凹部62が、アダプタ30の係合突部44に対して、回転を伝達する側とは反対側の端面が係合突部44と係合する位相となる。
そのため、工具本体52の嵌合突部38への嵌合により、係合片166が切欠160を通って係合溝158内に進入し、円環状溝126に対応する箇所に鋼球116が位置し、係合凹部62に係合突部44が嵌入された状態となる。作業者は、この状態から工具本体52をアダプタ30に対して、係合凹部62の回転を伝達する側の端面が係合突部44に当接するまで回転させる。それにより、係合片166が切欠160から外れて係合溝158の側壁と係合する状態となって、駆動部材90と可動軸140とが軸方向に離脱不能に係合させられるとともに、鋼球116がテーパ内周面128の切欠130が形成されていない部分に対応する状態となる。そして、図7(c)に示すように、作業者は工具300によりウォーム120を回転させ、クランプ部材112をロック状態となる方向に回転させる。それにより、鋼球116がテーパ内周面128に押し付けられ、工具本体52を外向きフランジ部34に押し付け、シート加工部26が工具主軸32に軸方向に相対移動不能に取り付けられる。シート加工部26の取付け後、図7(d)に示すように、スリーブ134をリーマ198に嵌合するとともに、保持孔132に嵌合し、工具本体52に固定する。
このようにガイド孔加工部28の工具主軸32からの取外しは、カラー724をスプリング276の付勢力に抗して移動させた状態でリーマホルダ190を回転させ、可動軸182から引き抜くことにより行われ、取付けは、リーマホルダ190を可動軸182に嵌合限度まで嵌合した状態で回転させることにより行われ、いずれも簡単かつ迅速に行うことができる。また、リーマ198がリーマホルダ190により保持されたままの状態で工具主軸32から取り外されるため、リーマホルダ190へのリーマ198の取付けを、リーマホルダ190が可動軸182から取り外された状態で行うことができ、リーマ198の工具主軸32への取付けに備えて予め保持させておくことができる。さらに、調節ねじ210の雌ねじ穴208に対する螺合量を調節することにより、リーマ198のリーマホルダ190に対する軸方向の位置を調節することができるのであるが、この調節も、図示を省略するリーマセット治具を使用して、加工機械外において予め行っておくことができ、それによっても加工機械上においてのガイド孔加工部28の着脱作業に要する時間を短縮することができる。
シート加工部26およびガイド孔加工部28が工具主軸32に取り付けられた状態では、工具主軸32の回転は、係合突部44と係合凹部62の端面との係合により工具本体52に伝達され、バイト80,82,84に伝達される。工具主軸32の回転はまた、可動軸140,可動軸182およびカラー274を経てリーマホルダ190に伝達され、リーマ198が回転させられる。
バルブシート10およびガイド孔16の加工時には、工具主軸32が回転させられつつ送り装置(図示省略)により軸方向に前進させられる。それにより、アダプタ30を介して工具本体52が工具主軸32と共に回転させられ、また、可動軸140が工具主軸32と共に回転させられ、可動型工具保持部100が回転させられてバイト80,82,84が工具本体32の回転軸線のまわりに旋回させられる。そして、まず、バイト82によりテーパ内周面12の切削が行われるとともに、バイト84によりテーパ内周面14の切削が行われる。続いて、可動軸140が工具主軸32に対して前進させられ、駆動部材90の前進によりスライダ70が傾斜方向に移動させられ、バイト80によりバルブシート10のテーパ内周面18の切削が行われ、さらに、可動軸182が可動軸140に対して前進させられ、リーマ198が前進させられてスリーブ134から突出させられるとともに、工具主軸32の回転により回転させられて、バルブガイド20のガイド孔16の内周面を仕上げ加工する。このようにテーパ内周面12,14,18の切削加工と、バルブガイド20のガイド孔16の仕上げ加工とが工具主軸32を移動させることなく連続的にまたは並行して行われるため、バルブシート10とガイド孔16との同心度が確保される。
別の実施例であるバルブシート加工工具を図8および図9に基づいて説明する。
本実施例のバルブシート加工工具は、シート加工部400とガイド孔加工部402とを含み、シート加工部400の工具保持部が固定型工具保持部とされている。その他の構成は、前記実施例のバルブシート加工工具と同じであり、同じ作用を成す構成要素には同一の符号を付して対応関係を示し、説明を省略する。
本実施例のバルブシート加工工具は、シート加工部400とガイド孔加工部402とを含み、シート加工部400の工具保持部が固定型工具保持部とされている。その他の構成は、前記実施例のバルブシート加工工具と同じであり、同じ作用を成す構成要素には同一の符号を付して対応関係を示し、説明を省略する。
シート加工部400は、図8に示すように、前記実施例のシート加工部26と同様に、アダプタ30を介して加工機械の工具主軸32に着脱可能に取り付けられる。シート加工部400の工具本体410は、シート加工部26の工具本体52と同様に、概して円筒状の基部412と、概して円錐状の先端部414とを有しており、先端部414の先端部分にシート加工刃具としてのバイト416が、工具本体410の回転軸線から偏心した位置に着脱可能に固定されている。バイト416は、図示を省略する調整装置により、先端部414に対して移動させられて、刃先位置が調整される。この調整は加工時以外のときに行われ、バイト416は加工中は先端部414に移動不能に保持される。本バルブシート加工工具においては、工具本体410の先端部414のバイト416が固定される部分が固定型工具保持部418を構成している。図9に示すように、先端部414の先端部分にはまた、別の加工刃具であるバイト420,422が位相を異にする位置に固定され、これらバイト416,420,422によってそれぞれ、バルブシート10のテーパ内周面18,その前後に隣接するテーパ内周面12,14が加工される。
工具主軸32の中心孔46には、図8に示すように、可動軸430が同心に、かつ工具本体410の回転軸線に平行な方向である軸方向に相対移動可能に嵌合されている。可動軸430には、その直径方向に隔たった2箇所にそれぞれ、キー432が、可動軸430の外周面から突出する状態で設けられるとともに、中心孔46に設けられた一対のキー溝148にそれぞれ嵌合され、それにより、可動軸430の工具主軸32に対する軸方向の移動が許容されるとともに、相対回転が防止されている。それぞれ係合部の一種である係合凸部および係合凹部を構成するキー432およびキー溝148が相対回転防止装置ないし回転伝達装置を構成している。可動軸430の後端部は、図示を省略するリーマ移動装置に連結され、軸方向に移動させられる。可動軸430はまた、その前部がロック機構108のクランプ部材112に軸方向に相対移動可能に嵌合されている。
可動軸430に、前記可動軸182と同様に、リーマホルダ190が嵌合され、着脱可能に保持される。そのため、可動軸430には、図8に示すように、その中心を貫通して嵌合孔433が形成されるとともに、可動軸430には、図8および図9に示すように、前記可動軸182の円環状の溝264,内向きフランジ266,第2嵌合切欠268と同様の円環状の溝434,内向きフランジ436,第2嵌合切欠438が形成されている。また、工具本体410内には穴が設けられ、リーマホルダ190の可動軸430から突出した部分の進入を許容する。ガイド孔加工部402は可動軸430に取付け,取外しされ、可動軸430は本バルブシート加工工具に含まれず、加工機械を構成する。
本バルブシート加工工具において、シート加工部400およびガイド孔加工部402をそれぞれ、工具主軸32から取り外すことができる。まず、スリーブ134が工具本体410から取り外され、シート加工部400がアダプタ30から取り外されて工具主軸32から取り外される。シート加工部400の取外し後、ガイド孔加工部402を可動軸430から取り外して工具主軸30から取り外す。また、シート加工部400およびガイド孔加工部402の工具主軸32への取付けは、まず、ガイド孔加工部402を可動軸430に取り付け、次にシート加工部400をアダプタ30に取り付けることにより行われ、その後、スリーブ134を工具本体410に取り付ける。これらシート加工部400およびガイド孔加工部402の取付け,取外しは、前記実施例のバルブシート加工工具におけるシート加工部26およびガイド孔加工部402のアダプタ30および可動軸182に対する取付け,取外しと同様に行われるため、説明を省略するが、簡単かつ迅速に行うことができる。なお、シート加工部400の工具保持部418は固定型であり、駆動部材を備えないため、シート加工部400をアダプタ30に対して着脱する際には、アダプタ30が保持する鋼球116およびアダプタ30に設けられた係合突部44と、工具本体410に設けられた切欠130および係合凹部62との位相を合わせるようにすればよい。
本バルブシート加工工具によるバルブシート10およびガイド孔16の加工時には、工具主軸32が回転させられつつ送り装置(図示省略)により軸方向に前進させられる。それにより、アダプタ30を介して工具本体410が工具主軸32と共に回転させられ、3つのバイト416,420,422によりそれぞれ、テーパ内周面18,12,14が切削される。そして、可動軸430は工具主軸32に対して前進させられ、リーマ198が前進させられてスリーブ134から突出させられ、バルブガイド20のガイド孔16の内周面を仕上げ加工する。
なお、スリーブ134は、工具本体52に嵌合されたままの状態で工具本体52と共に取り外してもよく、工具本体52に嵌合されたままの状態で工具本体52と共に取り付けてもよい。
また、図1〜図7に示す実施例においてバルブシート加工工具は第1,第2可動軸を含めないものとしたが、バルブシート加工工具に第1,第2可動軸を含めてもよく、第1可動軸と第2可動軸とのいずれか一方をバルブシート加工工具に含めてもよい。また、図8および図9に示す実施例において可動軸をバルブシート加工工具に含めてもよい。
10:バルブシート 16:ガイド孔 18:テーパ内周面 26:シート加工部 28:ガイド孔加工部 32:工具主軸 46:中心孔 52:工具本体 70:スライダ 80:バイト 90:駆動部材 100:可動型工具保持部 108:ロック機構 140:可動軸 180:中心孔 182:可動軸 190:リーマホルダ 192:嵌合軸部 194:コレットチャック 196:リーマ挿入孔 198:リーマ 210:調節ねじ 220:チャック本体 222:テーパ孔 224:コレット 234:クランプナット 250:嵌合孔 252:外向きフランジ 256:第1嵌合切欠 268:第2嵌合切欠 274:カラー 276:圧縮コイルスプリング 278:係合舌片 400:シート加工部 402:ガイド孔加工部 410:工具本体 416:バイト 418:固定型工具保持部 430:可動軸 433:嵌合孔 438:第2嵌合切欠
Claims (6)
- テーパ内周面を備えたバルブシートを加工するシート加工部と、バルブステムを案内するガイド孔を加工するガイド孔加工部とを含み、
前記シート加工部が、
中心孔を備えて回転する工具主軸の先端に着脱可能に取り付けられ、工具主軸により回転軸線のまわりに回転させられる工具本体と、
前記バルブシートを加工するシート加工刃具を前記工具本体の前記回転軸線から偏心した位置に保持し、そのシート加工刃具を前記工具本体の回転に伴って前記回転軸線のまわりに旋回させる工具保持部と
を含み、前記ガイド孔加工部が、
前記工具主軸の前記中心孔内に同心にかつ前記回転軸線に平行な方向である軸方向に相対移動可能に保持される可動軸の中心に形成された嵌合孔に嵌合される嵌合軸部と、その嵌合軸部の先端部に設けられ、前記ガイド孔を加工するリーマを着脱可能に保持するチャックとを含むリーマホルダと、
そのリーマホルダに設けられ、前記嵌合軸部の前記嵌合孔への嵌合限度を規定する嵌合限度規定部と、
前記リーマホルダに設けられ、前記可動軸の前記嵌合孔の開口端部に設けられた第1係合部と第1相対回転位相においては互いに前記軸方向に嵌合、離脱可能であり、前記嵌合限度規定部により規定されるまで軸方向に嵌合された状態で第2相対回転位相に相対回転させられることにより前記軸方向に離脱不能に係合する第2係合部と、
前記リーマホルダに前記軸方向に相対移動可能に取り付けられ、前記第1係合部と前記第2係合部との係合状態において、前記リーマホルダと前記可動軸との両方に相対回転不能に係合することにより、それらリーマホルダと可動軸との相対回転を防止する相対回転防止部材と、
その相対回転防止部材を、前記リーマホルダの先端側から後端側に向かう向きに付勢する付勢装置と
を含むバルブシート加工工具。 - 前記シート加工部の前記工具保持部が、前記シート加工刃具を着脱可能にかつ少なくとも加工中は移動不能に保持する固定型工具保持部である請求項1に記載のバルブシート加工工具。
- 前記シート加工部の前記工具保持部が、
前記工具本体に、その工具本体の回転軸線に対して傾斜した傾斜方向に移動可能に保持され、前記シート加工刃具を保持する刃具保持部材と、
第1可動軸としての前記可動軸とは別の第2可動軸であって前記工具主軸の中心孔内において前記第1可動軸の外側に前記軸方向に相対移動可能に嵌合されるものに保持されるとともに、前記工具本体に前記軸方向に相対移動可能に保持され、その軸方向の相対移動に伴って前記刃具保持部材を前記傾斜方向に移動させる駆動部材と
を含む可動型工具保持部である請求項1に記載のバルブシート加工工具。 - 前記リーマホルダが、前記チャックから前記嵌合軸部に到るリーマ挿入孔を有し、かつ、当該バルブシート加工工具が、そのリーマ挿入孔への前記リーマの挿入限度を規定する挿入限度規定部を含む請求項1ないし3のいずれかに記載のバルブシート加工工具。
- 前記挿入限度規定部が、前記リーマホルダの前記リーマ挿入孔の後端部に形成された雌ねじ穴に螺合され、前記リーマの後端に当接してそのリーマの前記リーマ挿入孔への挿入限度を規定する調節ねじを含む請求項4に記載のバルブシート加工工具。
- 前記チャックが、
前記リーマホルダの先端部により形成され、リーマホルダの先端側から後端側へ向かうに従って直径が漸減するテーパ孔を含むチャック本体と、
テーパ外周面を有し、前記テーパ孔に嵌合されたコレットと、
そのコレットをリーマホルダの先端側から後端側へ押すことにより縮径させる縮径装置と
を含むコレットチャックである請求項1ないし5のいずれかに記載のバルブシート加工工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007283296A JP2009107086A (ja) | 2007-10-31 | 2007-10-31 | バルブシート加工工具 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN117226145A (zh) * | 2023-11-16 | 2023-12-15 | 泰州市雄峰机械有限公司 | 一种具有防尘功能的模具加工用钻孔设备 |
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