本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置20を、図1〜14を用いて説明する。なお、電動パワーステアリング装置20は、一例として自動車10に搭載されている。図1は、自動車10の前部の構造を示す概略図である。
図1に示すように、自動車10は、一対の前輪11,12と、図示しない後輪とを備えている。前輪11,12は、本発明で言う操舵輪として機能しており、その位置を変化することによって、自動車10の進行方向を変更する。なお、前輪11は、左側に配置されている。前輪12は、右側に配置されている。
自動車10は、電動パワーステアリング装置20を備えている。電動パワーステアリング装置20は、前輪11,12に連結されており、運転者による操舵を前輪11,12に伝える。
電動パワーステアリング装置20は、ステアリングホイール21と、ステアリングシャフト22と、ステアリングギヤボックス23と、タイロッド24と、トルクセンサ25と、モータ26と、モータ回転角センサ27と、コントローラ28となどを備えている。
ステアリングシャフト22は、ステアリングホイール21に連結されている。運転者によって回転操作されたステアリングホイール21の回転変位は、ステアリングシャフト22に伝達される。ステアリングシャフト22は、ステアリングギヤボックス23に連結されている。
ステアリングギヤボックス23は、例えばラックピニオン型のギヤ機構を構成している。それゆえ、ステアリングシャフト22の先端部には、斜め方向に歯すじを有するピニオンが形成されている。当該ピニオンは、ステアリングギヤボックス23のハウジング内に収容されている。また、ハウジング内には、ピニオンに係合するラックが収容されている。
なお、ステアリングギヤボックス23の構造は、上記されたラックピニオン型に限定されない。例えば、ウォームギヤとセクタとを組み合わせてたウォームギヤウォームセクタ型や、ステアリングシャフト22に形成された螺旋状の円形の溝とボールナットとを組み合わせたボールナット型であってもよい。
運転者の操作によるステアリングホイール21の回転変位は、ステアリングシャフト22を介してステアリングギヤボックス23に伝達される。
タイロッド24は、ラックに連結されている。また、タイロッド24は、前輪11,12に連結されている。ステアリングホイール21の回転変位によってラックの位置が変化すると、当該変位がタイロッド24を介して前輪11,12に伝達される。
このように、ステアリングシャフト22と、ステアリングギヤボックス23と、タイロッド24とは、本発明で言う伝達機構を構成している。なお、ステアリングシャフト22とステアリングギヤボックス23とタイロッド24とによって構成される伝達機構は、一例であって、これに限定されるものではない。要するに、伝達機構は、運手者の操作によるステアリングホイール21の回転変位を操舵輪である前輪11,12に伝達できればよい。
トルクセンサ25は、例えばステアリングシャフト22に作用するトルクを検出する。つまり、トルクセンサ25は、運転者によって入力されるステアリングホイール21への回転トルクを検出する。トルクセンサ25は、例えばステアリングシャフト22とステアリングギヤボックス23との連結箇所に設置されている。トルクセンサ25は、本発明で言うトルク検出部である。
モータ26は、例えばステアリングギヤボックス23に連結されており、前輪11,12の操舵をアシストする。モータ26は、本発明で言うアシスト装置の一例である。
モータ回転角センサ27は、モータ26に電気的に接続されており、モータ26の回転角度を検出する。
コントローラ28は、トルクセンサ25とモータ26とモータ回転角センサ27とに電気的に接続されている。トルクセンサ25は、検出した操舵トルクTh(Nm)をコントローラ28へ送信する。モータ回転角センサ27は、検出したモータ26の回転角値をコントローラ28へ送信する。また、自動車10には、図示されていないが、自動車10の状態(例えば速度など)を検出するセンサを備えており、当該センサが検出した自動車10の情報がコントローラ28に送信される。
コントローラ28は、モータ回転角センサ27から送信されたモータ26の回転角情報に基づいて、前輪11,12の実舵角θs(deg)を検出する。実舵角θsとは、前輪11,12の初期位置に対する回転角度を示している。それゆえ、モータ回転角センサ27は、本発明で言う舵角検出部である。
なお、上記構造と異なり、ステアリングシャフト22に当該ステアリングシャフト22の回転角を検出する角度センサが別途に設けられ、この角度センサの検出結果に基づいて前輪11,12の実舵角θsを検出する構造が用いられてもよい。また、本実施形態では、初期位置は、自動車10が斜めではなく前後方に直進する位置である(図5に示す)。
コントローラ28は、上記された各情報(操舵トルクTh、実舵角θsなど)に基づいてモータ26の動作を制御する。具体的には、コントローラ28は、上記情報に基づいて、モータ26による操舵のアシスト力Itを決定し、この値に基づいてモータ26を制御する。コントローラ28は、本発明で言う制御部である。
モータ26のアシスト力Itは、後述される基本アシスト力Iaと付加アシスト力Ifとの合計である。アシスト力Itの大きさは、モータ26に供給される電流の大きさに比例する。本実施形態では、アシスト力Itは、モータ26へ供給される電流値(A)で示される。
図2は、コントローラ28の機能を示すブロック線図である。図2に示すように、コントローラ28の機能は、基本アシスト演算ブロックB1と、操舵輪位置補正演算ブロックB2と、これらの計算結果を加え合わせる第1の加え合わせ点B3とを備えている。これらの演算が所定の周期で行われて、アシスト力Itが求められる。
基本アシスト演算ブロックB1は、運転者によるステアリングホイール21の操作の際に生じる操舵トルクThに基づいて、モータ26が操舵をアシストする際の基本アシスト力Iaを求める。基本アシスト力Iaの単位は、アンペア(A)で示されている。なお、基本アシスト力Iaを求める式は、限定されない。各操舵トルクThに対する基本アシスト力Iaは、その値だけ一例として示す。
操舵輪位置補正演算ブロックB2では、舵角目標値θtが求められる。舵角目標値θtとは、前輪11,12が位置すべき回転角を示している。舵角目標値θtの単位は(deg)である。
また、操舵輪位置補正演算ブロックB2では、前輪11,12の位置を舵角目標値θtに寄せるべくモータ26が前輪11,12を付勢する際の付加アシスト力Ifが求められる。付加アシスト力Ifの単位は、アンペア(A)が用いられる。
操舵輪位置補正演算ブロックB2について具体的に説明する。操舵輪位置補正演算ブロックB2は、舵角差下限値演算ブロックB21と、舵角差上限値演算ブロックB22と、下限値ゲイン乗算ブロックB23と、上限値ゲイン乗算ブロックB24と、舵角目標値演算ブロックB25と、第2の加え合わせ点B26と、付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27とを備えている。
図3は、舵角差下限値補正前値θ1bを求める際に用いられる舵角差下限値演算用マップ31を示している。図3に示すように、舵角差下限値演算ブロックB21では、舵角差下限値演算用マップ31を用いて、操舵トルクThに対応する舵角差下限値補正前値θ1bを求める。
舵角差下限値補正前値θ1bとは、舵角目標値θtを求める際に用いられる値であって、実舵角θsと舵角目標値前回値θm(前回の舵角目標値)との差の閾値である舵角差下限値を求める際に用いられる。舵角差下限値補正前値θ1bの単位は、(deg)である。図3中では、横軸が操舵トルクThを示しており、縦軸が舵角差下限値補正前値θ1bを示している。
舵角差下限値補正前値θ1bの絶対値は、操舵トルクThが負であると、操舵トルクThが0または正である場合の値よりも絶対値が小さくなるように設定されている。また、舵角差下限値補正前値θ1bの絶対値は、操舵トルクThが0よりも小さくなるにつれて、次第に小さくなる。
具体的には、本実施形態では、舵角差下限値演算用マップ31に示すように、操舵トルクThが舵角差下限値演算用の第1の所定値Ta以下のときは、舵角差下限値補正前値θ1b=0である。舵角差下限値演算用の第1の所定値Taは、0よりも小さい値である。
操舵トルクTh≧0であると、舵角差下限値補正前値θ1bは、舵角差下限値演算用の第2の所定値θaとなる。舵角差下限値演算用の第2の所定値θaは、0よりも小さい値である。舵角差下限値演算用の第1の所定値Ta<操舵トルクTh<0では、舵角差下限値補正前値θ1bは、舵角差下限値演算用の第1の所定値Taと舵角差下限値演算用の第2の所定値θaとを直線で結んだ線上の値のうち、操舵トルクThに対応する値となる。なお、第1,2の所定値Ta,θaは、任意に設定することができる。
図4は、舵角差上限値補正前値θ2bを求める舵角差上限値演算用マップ32を示している。図4に示すように、舵角差上限値演算ブロックB22では、舵角差上限値演算用マップ32を用いて、操舵トルクThに対応する舵角差上限値補正前値θ2bを求める。
舵角差上限値補正前値θ2bとは、舵角目標値θtを求める際に用いられる値であって、実舵角θsと舵角目標値前回値θmとの差の閾値である舵角差上限値を求める際に用いられる。舵角差上限値補正前値θ2bの単位は、(deg)である。図4中では、横軸が操舵トルクThを示しており、縦軸が舵角差上限値補正前値θ2bを示している。
舵角差上限値補正前値θ2bの絶対値は、操舵トルクThが正であると、操舵トルクThが0または負である場合の値よりも小さくなるように設定されている。また、舵角差上限値補正前値θ2bの絶対値は、操舵トルクThが0よりも大きくなるにつれて、次第に小さくなる。
具体的には、本実施形態では、舵角差上限値演算用マップ32に示すように、操舵トルクThが舵角差上限値演算用の第1の所定値Tb以上のときは、舵角差下限値補正前値θ1b=0である。舵角差上限値演算用の第1の所定値Tbは、0よりも大きい値である。
操舵トルクTh≦0であると、舵角差上限値補正前値θ2bは、舵角差上限値演算用の第2の所定値θbとなる。舵角差上限値演算用の第2の所定値θbは、0よりも大きい値である。0<操舵トルクTh<舵角差上限値演算用の第1の所定値Tbでは、舵角差上限値補正前値θ2bは、舵角差上限値演算用の第1の所定値Tbと舵角差上限値演算用の第2の所定値θbとを直線で結んだ線上の値のうち、操舵トルクThに対応する値となる。なお、第1,2の所定値Tb,θbは、任意に設定することができる。
図2に示すように、下限値ゲイン乗算ブロックB23では、舵角差下限値演算ブロックB21で求められた舵角差下限値補正前値θ1bに補正演算が施されて舵角差下限値θ1が求められる。舵角差下限値θ1は、舵角差下限値補正前値θ1bを車速に対応するように補正した値である。舵角差下限値θ1は、後述される舵角目標値θtを求める際の、実舵角θsと舵角目標値前回値θmとの差の閾値を示している。θ1の単位は、(deg)である。
下限値ゲイン演算ブロックB23では、車速に応じて、設定された補正係数Gが乗算される。例えば、本実施形態では、車速が時速60キロメートル以内であれば、倍率G=1である。車速が時速60キロメートルより大きい場合は、倍率Gは、例えば2である。なお、この倍率Gの値は、限定されるものではなく、任意に設定される。
上限値ゲイン乗算ブロックB24では、舵角差上限値演算ブロックB22で求められた舵角差上限値補正前値θ2bに補正演算が施されて舵角差上限値θ2が求められる。舵角差上限値θ2は、後述される舵角目標値θtを求める際の、実舵角θsと舵角目標値前回値θmとの差の閾値を示している。上限値ゲイン乗算ブロックB24では、下限値ゲイン乗算ブロックB23と同様に、倍率Gが用いられる。舵角差上限値θ2の単位は、(deg)が用いられる。
なお、上限値ゲイン乗算ブロックB24で用いられる倍率は、Gに限定されるものでななく、G以外の値が用いられてもよい。
舵角目標値演算ブロックB25では、舵角差上・下限値θ1,θ2と、実舵角θsと、舵角目標値前回値θmとに基づいて、舵角目標値θtが求められる。
具体的には、実舵角θsから舵角目標値前回値θmを引いた値が舵角差下限値θ1以下のときは、舵角目標値θtは、実舵角θsから舵角差下限値θ1を引いた値となる。つまり、θs−θm≦θ1のときは、θt=θs−θ1となる。
実舵角θsから舵角目標値前回値θmを引いた値が舵角差上限値θ2以上のときは、舵角目標値θtは、実舵角θsから舵角差上限値θ2を引いた値となる。つまり、θs−θm≧θ2のときは、θt=θs−θ2となる。
実舵角θsから舵角目標値前回値θmを引いた値が、舵角差下限値θ1よりも大きく、かつ、舵角差上限値θ2よりも小さいときは、舵角目標値θtは、舵角目標値前回値θmと同じ値となる。つまり、θ1<θs−θm<θ2のときは、θt=θmとなる。上記のように求められる舵角目標値θtの単位は、(deg)が用いられる。
第2の加え合わせ点B26では、舵角目標値θtと実舵角θsとの差が求められる演算が施され、舵角差θdが求められる。具体的には、舵角目標値θtから実舵角θsが引かれる。つまり、θd=θt−θsとなる。なお、舵角差θdの単位は、本実施形態では(deg)である。
付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27では、舵角差θdに基づいて付加アシスト力Ifが求められる。具体的には、付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27では、車速に応じて、舵角差θdに対応する電流値が求められる。
付加アシスト力ゲイン演算ブロックB27で用いられる倍率Kは、例えば、車速が時速60キロメートル以内であれば、0.5(A/deg)であり、時速60キロメートルよりも大きいときは、1(A/deg)となる。なお、倍率Kの値は、上記に限定されるものではない。
第1の加え合わせ点B3では、基本アシスト力Iaと付加アシスト力Ifとが足し合わされる演算が施されて、アシスト力Itが求められる。つまり、It=Ia+Ifとなる。
つぎに、電動パワーステアリング装置20の動作の一例を説明する。まず、運転者が乗車し、イグニッションキーを差し込むなどしてエンジンを起動する。この状態になると、自動車10は、走行が可能な状態となる。
ついで、運転者がアクセルペダルを踏み込んで自動車を発進させる。なお、本実施形態では、自動車10(エンジン)の始動後において、コントローラ28が初めて演算を行う際には、例えば舵角目標値前回値θm=0に設定される。なお、実舵角θs、舵角目標値θt、舵角目標値前回値θmにおいて、0とは、自動車10が前後方向に直進する状態であって、斜め前後方向に移動する状態ではない。コントローラ28では、自動車10(エンジン)が始動してから所定の周期で、アシスト力Itを求める演算(図2に示される)が行われる。
発進後、コントローラ28がはじめて演算を行う状態を第1の状態C1とする。第1の状態C1では、自動車10は、水平な路面上を、時速60キロメートル以下の速度で直進しているとする。
図5は、第1の状態C1での自動車10の右側に配置される前輪12を示す概略図である。なお、左側に配置される前輪11の回転角度は、右側に配置される前輪12の回転角度と同じであるので、本実施形態では、右側の前輪12を代表して用いて説明する。また、本実施形態では一例として、前輪11,12の回転方向右側を正とし、回転方向左側を負とする。前輪11,12の回転方向右側を負とし、回転方向左側を正としてもよい。
図5に示すように、第1の状態C1では、自動車10は発進後水平な路面上を直進しているので、前輪12の実舵角θs=0である。上・下限値ゲイン乗算ブロックB23,24で用いられるG=1である。付加アシスト力ゲイン演算ブロックB27で用いられるK=0.5である。
本実施形態では、舵角差下限値演算用マップ31内で用いられる舵角差下限値演算用の第1の所定値Ta=-2(Nm)とする。舵角差上限値演算用マップ32内で用いられる舵角差上限値演算用の第1の所定値Tb=2(Nm)とする。舵角差下限値演算用マップ31内で用いられる舵角差下限値演算用の第2の所定値θa=−5(deg)とする。舵角差上限値演算用マップ32内で用いられる舵角差上限値演算用の第2の所定値θb=5(deg)とする。なお、各所定値Ta,θa,Tb,θbは、上記の値に限定されるものではなく、任意に設定できるものである。
第1の状態C1では、自動車10が直進しているので、実舵角θs=0である。また、路面が水平であるので、直進するのに特にステアリングホイール21を操作する必要がない。それゆえ、操舵トルクTh=0である。
上記の条件により、第1の状態C1では、舵角差下限値演算用マップ31より舵角差下限値補正前値θ1b=−5となる。舵角差上限値演算用マップ32より舵角差上限値補正前値θ2b=5となる。舵角差下限値θ1=−5となる。舵角差上限値θ2=5となる。舵角目標値前回値θm=0である。
図2に示すように、舵角目標値演算ブロックB25内での演算(θs-θm)を具体的に説明すると、実舵角θs=0であり、かつ、舵角目標値前回値θm=0であるから、θs−θm=0である。また、舵角差下限値θ1=−5であり、かつ、舵角差上限値θ2=5である。それゆえ、θ1<θs−θm<θ2であるので、舵角目標値θt=θmである。つまり、θt=0である。第2の加え合わせ点B26での演算(θd=θt-θs)の結果、舵角差θd=0となる。
このため、付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27での演算(If=θd×K)の結果、付加アシスト力If=0×0.5=0となる。基本アシスト演算ブロックB1では、操舵トルクTh=0であるので、基本アシスト力Ia=0となる。
上記2つの結果より、第1の加え合わせ点B3での演算の結果、It=Ia+If=0となる。図13は、第1の状態C1での各値を示すグラフである。
つぎに、第1の状態C1に続いてコントローラ28が演算を行う第2の状態C2を説明する。第2の状態C2は、自動車10が、右下がりに傾いた路面に進入した状態である。このときの車速は、時速60キロメートル以下とする。この場合、自動車10が右向きに偏向するように付勢されるので、前輪11,12は、初期位置に対して右側に回転しようとする付勢力を受ける。
このとき、運転者がとくにステアリングホイール21を操作しないと、前輪11,12は、図6に示すように右側に回転していく。図6は、前輪12が図5に示す初期位置(第1の状態C1)に対して右側に回転した状態を示す概略図である。
なお、前輪11,12に作用する付勢力が電動パワーステアリング装置20内に生じるフリクションよりも大きい場合に、前輪11,12が回転する。
第2の状態C2では、実舵角θs=3である。操舵トルクTh=0である。舵角目標値前回値θmは、第1の状態C1での舵角目標値θtであるので、θm=0となる。
上記条件より、舵角差下限値演算用マップ31より舵角差下限値補正前値θ1b=−5となる。舵角差上限値演算用マップ32より舵角差上限値補正前値θ2b=5となる。舵角差下限値θ1=−5となる。舵角差上限値θ2=5となる。
図2に示すように、舵角目標値演算ブロックB25内での演算(θs−θm)を具体的に説明すると、実舵角θs=3であり、かつ、舵角目標値前回値θm=0であるから、θs−θm=3である。また、舵角差下限値θ1=−5であり、かつ、舵角差上限値θ2=5である。それゆえ、θ1<θs−θm<θ2であるので、舵角目標値θt=θmとなる。つまり、θt=0である。なお、図6中、舵角目標値θtにある前輪12を2点鎖線で示している。
実舵角θs=3であるので、第2の加え合わせ点B26での演算(θd=θt−θs)の結果、舵角差θd=θt−θs=−3となる。それゆえ、付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27での演算(If=θd×K)の結果、付加アシスト力If=θd×0.5=−1.5となる。
基本アシスト演算ブロックB1では、操舵トルクTh=0であるので、基本アシスト力Ia=0となる。
上記の結果より、第1の加え合わせ点B3での演算(It=Ia+If)の結果、アシスト力Itは、−1.5となる。モータ26は、実舵角θs=3から舵角目標値θt=0に向かって前輪11,12が左側に回転するようにアシストする。
このように、舵角目標値θtが決定されることによって、前輪11,12が舵角目標値θtに近づくように、モータ26が前輪11,12をアシストする。それゆえ、電動パワーステアリング装置20内のフリクションを大きくすることなく、前輪11,12の偏向を抑制することができる。図13には、第2の状態C2での各種の値が示されている。
つぎに、第2の状態C2に続いてコントローラ28が各種演算を行う第3の状態C3を説明する。第3の状態C3は、自動車10が右下がりの路面上をさらに走行した状態である。このとき、前輪11,12は、第2の状態C2よりもさらに右側に回転する。第3の状態C3は、運転者がステアリングホイール21を操作することなく、前輪11,12が実舵角θs=5となる位置まで回転した状態である。なお、第3の状態C3では、自動車10は、時速60キロメートル以下ので走行している。
第3の状態C3では、実舵角θs=5となる。操舵トルクTh=0である。第3の状態での舵角目標値前回値θmは、第2の状態C2での舵角目標値θtであるので、θm=0である。
上記条件より、舵角差下限値演算用マップ31より舵角差下限値補正前値θ1b=−5となる。舵角差上限値演算用マップ32より、舵角差上限値補正前値θ2b=5となる。舵角差下限値θ1=−5となる。舵角差上限値θ2=5となる。
図2に示すように、舵角目標値演算ブロックB25内の演算(θs−θm)を具体的に説明すると、実舵角θs=5であり、舵角目標値前回値θm=0であるので、θs−θm=5なる。このため、θs−θm≧θ2となるので、舵角目標値θt=θs−θ2=0となる。
この結果、第2の加え合わせ点B26での演算(θd=θt−θs)の結果、舵角差θd=θt−θs=−5となる。付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27での演算(If=θd×K)の結果、付加アシスト力If=−2.5となる。
基本アシスト演算ブロックB1では、操舵トルクTh=0であるので、基本アシスト力Ia=0である。
上記の結果より、第1の加え合わせ点B3での演算の結果、アシスト力It=Ia+If=−2.5となる。それゆえ、前輪11,12は、モータ26によって、舵角目標値θtに向かって実舵角θsから左向きに、アシスト力It=−2.5の強さでアシストされる。第3の状態C3でも、前輪11,12は、モータ26のアシストにより舵角目標値θtに向かって付勢される。図13は、第3の状態C3での各値を示すグラフである。
第1〜3の状態C1〜C3で示すように、操舵トルクTh=0である場合において、舵角目標値θtから実舵角θsが離れるにしたがって、つまり舵角目標値θtと実舵角θsとの差の絶対値が大きくなるにしたがって、付加アシスト力Ifの絶対値は大きくなる。
つぎに、第3の状態C3に続いてコントローラ28が各種演算を行う第4の状態C4を説明する。第4の状態C4は、自動車10が右下がりの路面上をさらに走行した状態である。それゆえ、前輪11,12は、第3の状態C3からさらに右側に回転する。第4の状態C4は、前輪11,12が実舵角θs=8まで回転した状態である。図7は、第4の状態C4にある前輪12を示す概略図である。図中、前輪12が、回転角の基準となる初期位置にある状態での舵角方向を一点鎖線で示す。第4の状態C4では、自動車10は、時速60キロメートル以下で走行している。
図7に示すように、第4の状態C4では、実舵角θs=8である。操舵トルクTh=0である。第4の状態C4での舵角目標値前回値θmは、第3の状態C3での舵角目標値θtである。それゆえ、θm=0である。
上記条件より、舵角差下限値演算用マップ31より舵角差下限値補正前値θ1b=−5となる。舵角差上限値演算用マップ32より舵角差上限値補正前値θ2b=5となる。舵角差下限値θ1=−5となる。舵角差上限値θ2=5となる。
図2に示すように、舵角目標値演算ブロックB25内の演算(θs−θm)を具体的に説明すると、実舵角θs=8であり、舵角目標値前回値θm=0であるので、θs−θm=8となる。それゆえ、θ2≦θs−θmとなるので、舵角目標値θt=θs−θ2=3となる。図7中、舵角目標値θtにある前輪2を、2点鎖線で示している。
この結果、第2の加え合わせ点B26での演算の結果、舵角差θd=5となる。付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27での演算の結果、付加アシスト力If=−2.5となる。
基本アシスト演算ブロックB1では、操舵トルクTh=0であるので、Ia=0となる。
上記2つの結果より、第1の加え合わせ点B3での演算の結果、アシスト力It=−2.5となる。このため、モータ26は、アシスト力It=−2.5の力で前輪12を舵角目標値θt=3の方向にアシストする。図13は、第4の状態C4での各値を示すグラフである。
第4の状態C4で示すように、実舵角θsと舵角目標値前回値θmとが舵角差上限値θ2以上離れた場合、付加アシスト力Ifの値は、変化しない。
つぎに、第4の状態C4に続いてコントローラ28が各種演算を行う第5の状態C5を説明する。第5の状態C5は、運転者が、実舵角θs=3となる位置まで操舵トルクTh=−1.6でステアリングホイール21を操作した状態である。つまり、ステアリングホイール21を左側に回転する。図8は、第5の状態C5にある前輪11,12を示している。第5の状態Cでは、自動車10は時速60km以下で走行している。図8中、回転角の基準となる初期位置での舵角方向を1点鎖線で示す。
第5の状態では、実舵角θs=3である。操舵トルクTh=−1.6である。第5の状態C5での舵角目標値前回値θmは、第4の状態C4での舵角目標値θtである。それゆえ、舵角目標値前回値θm=3である。操舵トルクThが負であるので、舵角差下限値補正前値θ1bの絶対値(つまり舵角差下限値θ1の絶対値)は、操舵トルクThが0または正であるときよりも小さくなる。舵角差下限値演算用マップ31より舵角差下限値補正前値θ1b=−1となる。舵角差上限値演算用マップ32より舵角差上限値補正前値θ2b=5となる。舵角差下限値θ1=−1となる。舵角差上限値θ2=5となる。
図2に示すように、舵角目標値演算ブロックB25内の演算(θs−θm)を具体的に説明すると、θs−θm=0となる。それゆえ、θ1<θs−θm<θ2となるので、舵角目標値θt=θm=3となる。
第2の加え合わせ点B26での演算(θt−θs)の結果、舵角差θd=0となる。付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27での演算の結果、付加アシスト力If=0となる。
基本アシスト演算ブロックB1では、操舵トルクThに対応する基本アシスト力Iaが決定される。具体的には、第5の状態C5では、Th=−1.6であるので、この値に対応するよう、Ia=Ia5となる。例えばIa5=−0.8。操舵トルクThは、負であるので、Ia5は、負である。
上記2つの結果より、第1の加え合わせ点B3では、アシスト力It=Ia5=−0.8となる。図14は、第5の状態C5での各値を示すグラフである。第5の状態C5で示すように、実舵角θsが舵角目標値θtと同じである場合では、付加アシスト力If=0となる。
つぎに、第5の状態C5に続いてコントローラ28が各種演算を行う第6の状態C6を説明する。図9は、第6の状態C6にある前輪12を示している。第6の状態C6では、自動車10は、時速60km以下で走行している。図9に示すように、第6の状態C6は、実舵角θs=2.5となる位置まで、運転者が操舵トルクTh=−1.8でステアリングホイール21を回転操作した状態である。
第6の状態C6では、実舵角θs=2.5である。操舵トルクTh=−1.8である。第6の状態C6での舵角目標値前回値θmは、第5の状態C5での舵角目標値θtであるので、θm=3である。
舵角差下限値演算用マップ31より、舵角差下限値補正前値θ1b=−0.5となる。舵角差上限値演算用マップ32より舵角差上限値補正前値θ2b=5となる。舵角差下限値θ1=−0.5となる。舵角差上限値θ2=5となる。
舵角目標値演算ブロックB25内での演算(θs-θm)を具体的に説明すると、θs−θm=−0.5となる。それゆえ、θ1≧θs−θmとなるので、θt=θs-θ1=3となる。図9中において、舵角目標値θt=3の位置にある前輪12を2点鎖線で示している。
この結果、第2の加え合わせ点B26での演算(θd=θt-θs)の結果、舵角差θd=0.5となる。付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27での演算(If=θd×K)の結果、付加アシスト力If=0.25となる。
基本アシスト演算ブロックB1では、操舵トルクThに対応する基本アシスト力Iaが求められる。具体的には、Th=−1.8に対応するIa6が求められる。例えばIa6=−1.0。操舵トルクThが負であるので、基本アシスト力Ia6は、負である。
上記2つの結果より、第1の加え合わせ点B3での演算(It=Ia+If)の結果、アシスト力It=Ia6+0.25=−0.75となる。図14は、第6の状態C6での各値を示すグラフである。
つぎに、第6の状態C6に続いてコントローラ28が各種演算を行う第7の状態C7を説明する。図10は、第7の状態C7での前輪12を示す概略図である。図10に示すように、第7の状態C7では、前輪12は、実舵角θs=−4となる位置まで、運転者が操舵トルクTh=−2.2でステアリングホイール21を回転操作した状態である。第7の状態C7では、自動車10は時速60km以下で走行している。
第7の状態C7では、実舵角θs=−4である。操舵トルクTh=−2.2である。舵角目標値前回値θmは、第6の状態C6での舵角目標値θtであるので、θm=3となる。
それゆえ、舵角差下限値演算用マップ31より舵角差下限値補正前値θ1b=0となる。舵角差上限値演算用マップ32より、舵角差上限値補正前値θ2b=5となる。舵角差下限値θ1=0となる。舵角差上限値θ2=5となる。
図2に示すように、舵角目標値演算ブロックB25内での演算(θs−θm)を具体的に説明する。θs−θm=−7となる。この結果、θs−θm≦θ1であるので、θt=θs−θ1=−4となる。
第2の加え合わせ点B26での演算(θd=θt-θs)の結果、舵角差θd=0となる。それゆえ、付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27での演算(If=θd×K)の結果、付加アシスト力If=0となる。
基本アシスト演算ブロックB1では、操舵トルクTh=−2.2に対応する基本アシスト力Ia=Ia7が求められる。例えばIa7=−2.0。操舵トルクThは負であるので、Ia7は、負である。
上記2つの結果より、第1の加え合わせ点B3での演算(It=Ia+If)の結果、アシスト力It=Ia7=−2.0が求められる。図14は、第7の状態C7での各値を示すグラフである。
このように、舵角目標値演算ブロックB25において、θs−θm≦θ1なので、舵角目標値θt=θs−θ1となる。このため、舵角目標値θtは、実舵角θsとの差が小さくなるように設定される。それゆえ、付加アシスト力Ifが小さくなる。この結果、付加アシスト力Ifによる操舵フィーリングの悪化が抑制される。
さらに、操舵トルクThが作用することによって、舵角差下限値補正前値θ1bが小さくなる。このことにより、舵角目標値θtは、実舵角θsとの差がよりいっそう小さくなるように設定される。この結果、付加アシスト力Ifがより一層小さくなるので、付加アシスト力Ifによる操舵フィーリングの悪化が抑制される。
この結果、運転者によるステアリングホイール21の操作が、付加アシスト力Ifによって妨げられることを抑制される。
第7の状態C7の後、運転者によるステアリングホイール21への操舵トルクThの入力を徐々に少なくすると、右下がりの路面上を走行することによって、自動車10は、右側に偏向するように付勢される。
つぎに、第7の状態C7に続いてコントローラ28が各種演算を行う第8の状態C8を説明する。第8の状態C8は、実舵角θsが−1となる位置まで前輪11,12の位置が右側に回転した状態である。
第8の状態C8では、実舵角θs=−1である。操舵トルクTh=0である。舵角目標値前回値θmは、第7の状態C7での舵角目標値θtであるので、θm=−4となる。舵角差下限値演算用マップ31より、舵角差下限値補正前値θ1b=−5となる。舵角差上限値演算用マップ32より、舵角差上限値補正前値θ2b=5となる。舵角差下限値θ1=−5となる。舵角差上限値θ2=5となる。
舵角目標値演算ブロックB25内の演算(θs−θm)を具体的に説明すると、θs−θm=3となる。それゆえ、θ1<θs−θm<θ2となるので、舵角目標値θt=θm=−4となる。
この結果、第2の加え合わせ点B26での演算(θd=θt-θs)の結果、舵角差θd=−3となるので、付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27での演算(If=θd×K)の結果、付加アシスト力If=−1.5となる。
基本アシスト演算ブロックB1では、操舵トルクTh=0であるので、基本アシスト力Ia=0となる。上記2つの結果より、第1の加え合わせ点B3での演算(It=Ia+If)の結果、アシスト力It=−1.5が求められる。図14は、第8の状態C8での各値を示すグラフである。
このように、前輪11,12は、舵角目標値θtに近くづくように、付勢される。
つぎに、第8の状態C8に続いてコントローラ28が各種演算を行う第9の状態C9を説明する。図11は、第9の状態C9にある前輪12を示す概略図である。図11に示すように、第9の状態C9は、前輪11,12がさらに右側に回転することを防ぐために、運転者がステアリングホイール21を握るなどしてステアリングホイール21に操舵トルクTh=−0.8を加えた状態である。
第9の状態C9では、操舵トルクTh=−0.8である。実舵角θs=−1である。舵角目標値前回値θmは、第8の状態C8での舵角目標値θtであるので、θm=−4となる。
それゆえ、舵角差下限値演算用マップ31より、舵角差下限値補正前値θ1b=−3となる。舵角差上限値演算用マップ32より、舵角差上限値補正前値θ2b=5となる。舵角差下限値θ1=−3となる。舵角差上限値θ2=5となる。
図2に示すように、舵角目標値演算ブロックB25内の演算(θs−θm)を具体的に説明すると、θs−θm=3である。それゆえ、θ1<θs−θm<θ2であるので、θt=θm=−4となる。図中、舵角目標値θtにある前輪12を二点鎖線で示している。
この結果、第2の加え合わせ点B26での演算(θd=θt-θs)の結果、舵角差θd=3となり、付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27での演算(If=θd×K)の結果、付加アシスト力If=−1.5が求められる。
基本アシスト演算ブロックB1では、操舵トルクTh=−0.8に対応する基本アシスト力Ia=Ia9が求められる。例えばIa9=−0.1。操舵トルクThが負であるので、Ia9は、負である。
上記2つの結果により、第1の加え合わせ点B3での演算(It=Ia+If)の結果、アシスト力It=Ia9−1.5=−1.6となる。図14は、第9の状態C9での各値を示すグラフである。
このように、実舵角θsから舵角目標値θtへ向かう方向と操舵トルクThの作用する方向とが同じである場合、前輪12は、付加アシスト力Ifによってもアシストされるようになる。
つぎに、第9の状態C9に続いてコントローラ28が各種演算を行う第10の状態C10を説明する。図12は、第10の状態C10にある前輪12を示す概略図である。図12に示すように、第10の状態C10は、運転者が操舵トルクTh=0.8でステアリングホイール21を実舵角θs=1となる位置まで回転した状態である。第10の状態C10では、自動車10は時速60km以下で走行している。
第10の状態C10では、操舵トルクTh=0.8である。実舵角θs=1である。舵角目標値前回値θmは、第9の状態C9での舵角目標値θtであるので、θm=−4となる。
それゆえ、舵角差下限値演算用マップ31より、舵角差下限値補正前値θ1b=−5となる。舵角差上限値演算用マップ32より、舵角差上限値補正前値θ2b=3となる。舵角差下限値θ1=−5となる。舵角差上限値θ2=3となる。
図2に示すように、舵角目標値演算ブロックB25内の演算(θs−θm)を具体的に説明すると、θs−θm=5である。それゆえ、θ2≦θs−θmであるので、舵角目標値θt=θs−θ2=−2となる。図12中、舵角目標値θtにある前輪12は、二点鎖線で示されている。
この結果、第2の加え合わせ点B26での演算(θd=θt-θs)の結果、舵角差θd=−3となり、付加アシスト力ゲイン乗算ブロックB27での演算(If=θd×K)の結果、付加アシスト力If=−1.5が求められる。
基本アシスト演算ブロックB1では、操舵トルクTh=0.8に対応する基本アシスト力Ia=Ia10が求められる。例えばIa10=0.1。操舵トルクThが正であるので、Ia10は、正である。
上記2つの結果により、第1の加え合わせ点B3での演算(It=Ia+If)の結果、アシスト力It=Ia10−1.5=−1.4となる。このように、θs−θm≧θ2であることによって、舵角目標値θtが実舵角θsと大きく変わらない値に設定される。このため、実舵角θsと舵角目標値θtとの差が大きくなることが抑制される。それゆえ、付加アシスト力Ifが大きくなることが抑制される。この結果、付加アシスト力Ifによる操舵フィーリングの悪化が抑制される。また、操舵トルクThが正であるので、舵角差上限値θ2の絶対値は、操舵トルクThが零または負である場合での絶対値よりも小さくなる。
さらに、操舵トルクThが作用することによって、舵角差上限値補正前値θ2bが小さくなる。このため、付加アシスト力Ifによる操舵フィーリングの悪化がより一層抑制される。図14は、第10の状態C10での各値を示すグラフである。
このように構成される電動パワーステアリング装置20では、第1の状態C1に代表して示しているように、舵角目標値θtを設定するとともに前輪11,12が舵角目標値θtに向かってモータ26によってアシストされるので、電動パワーステアリング装置20内のフリクションを大きくすることなく、自動車10の偏向が抑制される。
このため、フリクションの増大に起因してステアリングホイール21の操舵のフィーリングが悪化することがないので、操舵フィーリングの悪化を抑制しつつ、路面の傾斜による進行方向の偏向を抑制することができる。
また、第1〜3の状態C1〜C3に代表して示すように、実舵角θsと舵角目標値θtとの差の絶対値が大きくなるにつれて、モータ26によるアシスト力の絶対値が大きくなる。このことによって、自動車10が偏向することを小さく抑えることができる。
また、第7,10の状態C7,C10に代表して示しているように、実舵角θsと舵角目標値前回値θmとの差が舵角差下限値θ1以下である場合、もしくは、舵角差上限値θ2以上である場合は、舵角目標値θtは、実舵角θsとの差が舵角差上・下限値θ1,θ2となるように設定される。
このため、舵角目標値θtは、実舵角θsとの差が大きくならない値に設定される。この結果、第7,10の状態C7,C10に代表して示しているように、操舵トルクThの作用する方向と実舵角θsに対する舵角目標値θtの方向とが互いに逆方向である場合であっても、付加アシスト力Ifが大きくなることが抑制されるので、アシスト力Itが付加アシスト力Ifによって小さくなることが抑制される。
さらに、第7,10の状態C7,C10に代表して示すように、操舵トルクThが作用する方向と、舵角目標値θtに対する実舵角θsの方向とが互いに同じである場合、舵角差上・下限値θ1b,θ2bの絶対値は、操舵トルクTh=0である状態の絶対値よりも小さくなるように変化する。または、操舵トルクThが作用する方向とは反対方向での値の絶対値よりも小さくなるように変化する。
言い換えると、舵角差下限値θ1の絶対値は、操舵トルクThが負の方向に作用している状態では、当該操舵トルクが零または正である状態の値の絶対値に比べて小さく(第7の状態)、舵角差上限値θ2の絶対値は、操舵トルクThが正の方向に作用している状態では、当該操舵トルクが零または負のである状態での値の絶対値に比べて小さい(第10の状態C10)。
このことによって、実舵角θsと舵角目標値θtとの差がより一層小さくなるので、付加アシスト力Ifが大きくなることが抑制され、それゆえ上記した第7,10の状態C7,C10のように、操舵トルクThの作用する方向と舵角目標値θtに対する実舵角θsの方向とが互いに同じであっても、アシスト力Itが付加アシスト力Ifによって小さくなることがより一層抑制される。
また、モータ26に設けられる既存のモータ回転角センサ27を、前輪11,12の舵角検出部として利用することによって、別途に舵角検出部を備えることがない。このことによって、電動パワーステアリング装置20の部品数の削減および当該削減によってコストの削減が可能となる。
なお、本実施形態では、図5〜12に示される、実舵角θsと舵角目標値θtとに対する前輪12の位置は、誇張して描かれている。また、本実施形態では、車速に応じて各値を適した値にするために、上・下限値ゲイン演算ブロックB23,B24を備えているが、なくてもよい。この場合は、舵角差上・下限値θ1b,θ2bが、それぞれ閾値として用いられる。
また、本実施形態では、コントローラ28の演算の説明として、第1〜10の状態C1〜C10を一例として用いて周期を長く誇張しているが、これに限定されるものではない。周期は、任意に設定されるものである。
11…前輪(操舵輪)、12…前輪(操舵輪)、20…電動パワーステアリング装置、21…ステアリングホイール、22…ステアリングシャフト(伝達機構)、23…ステアリングギヤボックス(伝達機構)、24…タイロッド(伝達機構)、25…トルクセンサ(トルク検出部)、26…モータ(アシスト装置)、27…モータ回転角センサ(舵角検出部)、28…コントローラ(制御部)、It…アシスト力、Ia…基本アシスト力、If…付加アシスト力、θ1…舵角差下限値、θ2…舵角差上限値。