自動車の前輪用駆動軸に多用される等速自在継手でホイール側に使用される固定式等速自在継手は、ステアリングの操作に連動しホイールが左右に運動するため大きな作動角を許容する必要がある。そのため、固定式等速自在継手は高作動角で大きな駆動力(トルク)が作用しても十分耐える静的捩り強度と保障期間中に長距離走行しても破損することのない十分な捩り疲労強度特性を必要とする。
固定式等速自在継手は、図13に示すように、外側継手部材としての外輪1と、外輪1の内側に配された内側継手部材としての内輪2と、外輪1と内輪2との間に介在してトルクを伝達する複数のボール3と、外輪1と内輪2との間に介在してボール3を保持するケージ4とを主要な部材として構成される。内輪2はその孔部内径2aにシャフト5の端部5aを圧入することによりスプライン嵌合してシャフト5とトルク伝達可能に結合されている。なお、シャフト5の端部5aには、シャフト抜け止め用の止め輪6が嵌合されている。
外輪1はマウス部7とステム部(軸部)8とからなり、マウス部7は一端にて開口した椀状で、その内径面10に、軸方向に延びた複数のトラック溝11が円周方向等間隔に形成されている。そのトラック溝11はマウス部7の開口端部まで延びている。内輪2は、その外径面12に、軸方向に延びた複数のトラック溝13が円周方向等間隔に形成されている。
外輪1のトラック溝11と内輪2のトラック溝13とは対をなし、各対のトラック溝11,13で構成されるボールトラックに1個ずつ、トルク伝達要素としてのボール3が転動可能に組み込んである。ボール3は外輪1のトラック溝11と内輪2のトラック溝13との間に介在してトルクを伝達する。ケージ4は外輪1と内輪2との間に摺動可能に介在し、外径面4aにて外輪1の内径面10と接し、内径面4bにて内輪2の外径面12と接する。
また、マウス部7の開口部はブーツ15にて塞がれている。ブーツ15は、大径部15aと、小径部15bと、大径部15aと小径部15bとを連結する蛇腹部15cとからなる。大径部15aがマウス部7の開口部に外嵌され、この状態でブーツバンド16にて締結され、小径部15bがシャフト5のブーツ装着部5bに外嵌され、この状態でブーツバンド17にて締結されている。
ところで、外輪1のトラック溝11は、奥側の円弧部11aと、開口側の直線部11bとからなり、内輪2のトラック溝13は、奥側の直線部13aと、開口側の円弧部13bとからなる。すなわち、この図13に示す固定式等速自在継手はアンダーフリー(UJ)型である。また、固定式等速自在継手にはトラック溝が直線部を有さないツェッパ(BJ)型がある。
UJ型は、トラック溝に直線部を有するため冷間鍛造加工し易く、トラック部は鍛造加工後熱処理まで研削仕上げ等を行わない状態で使用されることが多い。UJ型は、トラック開口端部でボールとトラックの接触点がBJ型に比べ外周側にある。このため、シャフトがより高作動角側で外輪と干渉し、高作動角が可能となる。更に、UJ型は、高作動角を許容するためには、BJ型より許容荷重を高める必要がある。そのため、通常、高作動角のUJ型は、BJ型より外径を増加し強度を確保している。また、UJ型のマウス部を小型化するためには、外輪マウス部の許容応力を高める必要がある。
このため、近年では、固定式等速自在継手の外輪のマウス部強度を改善する方法が種々提案されている。例えば、焼入れ後マウス部端部の余肉除去により開口端部で高周波焼入れを終結させるものがある(特許文献1)。この特許文献1に記載のものでは、マウス部の開口端部に余肉を有する粗材を成形することにより、設定長さよりも長くしたものをまず成形する。その後、トラック溝に高周波焼入れを施した後、設定長さよりも長くした分だけ端部の余肉を除去する。これにより、圧縮残留応力を付与して疲労強度を向上させている。
また、トラック開口端部の硬化深さが増加すると、非硬化部が浅くなり疲労強度が低下する。このため、吸熱体を開口端部に当接させることにより、開口端部の外周の熱を吸熱体に吸収させて、トラック開口端部で焼入れ深さを浅くする方法もある(特許文献2)。さらには、トラック開口端部の溝底部に面取りを施して、端面の面取り寸法を0.7mm以上として応力緩和して強度を向上させるとともに、必要部のみを局部的に高周波誘導加熱処理を行うものもある(特許文献3)。なお、特許文献4には、開口端部の面取り加工装置が開示されている。
また、高周波焼入れした硬化部にショットピーニングを処理し圧縮残留応力を付与し開口端部の疲労強度を向上させる方法がある(特許文献5)。なお、特許文献5に記載のものは、トラック開口端部を高周波焼入れ硬化させているが、この開口部の焼入れ硬化は、開口部端面の塑性変形を抑制するため静的強度を向上させるものである。
特開昭57−67128号公報
特開昭56−65924号公報
特公昭63−5614号公報
実開昭57−140949号公報
特開平4−194418号公報
特許文献1に記載のものでは、余肉部の熱処理後の追加工の増加と材料歩留まりが低下する課題がある。また、特許文献2及び特許文献3に記載のものは、いずれも開口端部を焼き入れ硬化させないもので、捩り疲労強度の多少の向上を期待することはできるが、静的捩り高角強度の向上は望めない。すなわち、これらの場合、いずれも圧縮残留応力の付与を目的としたものであり、静的強度のように塑性変形を伴うと圧縮残留応力は容易に開放され静的強度の向上は一切期待できないからである。また、トラック開口端部の溝底部の面取り加工を追加すると、有効トラック長さが減少して作動角の減少を伴い、不都合が生じるおそれがある。
さらに、特許文献3に記載されているような面取りを行う場合、特許文献4に記載されているような専用機を使用することになる。このような専用機を用いても、各トラックを加工する時間が大幅に増加し、高コストで作動角の減少という課題が残る。なお、自動車用には、6個や8個のトラックが多く用いられており、このため、6回又は8回の面取り加工が繰り返される。
また、特許文献5に記載のショットピーニングは、処理時間が長いためコストの増加を招くと共に静的強度の向上に全く寄与しない課題がある。また、特許文献5のものでは、トラック端部を硬化させる場合、ある条件でトラック開口端部を高周波焼入れすると極微細な焼き割れが発生するおそれがある。このような焼き割れが発生すれば、この極めて微細な亀裂が破壊の起点となり、著しくマウス部の強度が低下する場合がある。
本発明は、上記課題に鑑みて、トラック開口端部の硬化部に焼き割れを発生することなく、マウス部の静的強度と疲労強度の両特性の向上を図ることができ、しかも、低コストで作動角の減少を伴わない等速自在継手用外側継手部材及び固定式等速自在継手を提供する。
本発明の等速自在継手用外側継手部材は、奥側が円弧部とされるとともに開口側が直線部とされたトラック溝を内径面に形成したカップ状のマウス部を有し、少なくとも一回冷間鍛造加工されて、このマウス部の外周側の硬さがHv280以上Hv400以下とされ、かつ、内径面とトラック溝が同時に高周波焼入れされ、マウス部の内径面及びトラック溝の溝内面と開口端部に硬化層を形成した等速自在継手用外側継手部材において、前記硬化層の硬さをHv500以上Hv780以下とするとともに、マウス部の開口端部に開口側に向かって拡径する作動角許容用のチャンファを形成して、トラック溝の開口端縁から開口側に向かって外径側へ傾斜してマウス部の開口端部面に達する傾斜部を設け、トラック溝の開口端部の硬化層厚さをマウス部肉厚の1%〜25%とし、かつ、ブーツ装着部位に対応する部位における硬化層厚さをマウス部肉厚の20%〜55%としたものである。
マウス部を高強度化するためには、破損部に作用する応力と変形を緩和し亀裂の発生を抑制すること及び亀裂の伝播を遅延させることである。マウス部が破損する場合、トラック開口端部付近のトラック底から破損する。このため、この底の部分の変形を抑制するために、開口端部の応力集中を緩和することが重要である。また、亀裂の伝播する部分の強化が必要である。このためには、トラック開口端縁から外径部の強化が必要である。
また、外側継手部材において、マウス部の強度を向上させるためには、マウス部外周で特に破損起点外周の硬度を増加させる事とトラック開口端部とカップ端面の交差する部位の応力緩和させる事が必要である。そのため、少なくともトラック開口端部の底に位置するマウス部外周の部分を硬化させればよい。
そこで、本発明では、トラック溝の開口端部を高周波焼入れし、かつ、トラック溝の開口端縁から開口側に向かって外径側へ傾斜してマウス部の開口端部面に達する傾斜部を設けたので、トラック溝の開口端部における焼き割れ感受性を低下させることができる。また、冷間加工を用いて所定の加工率で成型することにより、加工硬化させることができる。この加工硬化率は、高ければ硬化代は大きいが、製品の割れや型寿命の低下を招き上限をHv400とした。加工率が低いと型の形状が製品に精度良く転写されない。また、下限の硬さが低い加工率では組織の微細化がなされないため、焼入れ加熱時オーステナイト化し難く大きなフェライトが存在し、短時間急速加熱の高周波焼入れで不完全焼入れ組織を生じやすく、低強度となるため下限の硬さをHv280とした。
トラック溝の開口端縁から開口側に向かって外径側へ傾斜してマウス部の開口端部面に達する傾斜部を設けることによって、焼き割れを生じ難くすることができる。特に、トラック溝の開口端部の硬化層厚さをマウス部肉厚の1%〜25%とすることによって、焼き割れ防止機能が向上する。肉厚比の25%を超えると表面の加熱温度が増加し開口端部の冷却速度が増加し、また引張り応力が作用し焼き割れが発生してしまう。また、硬化深さが浅いと焼き割れは発生し難くなるが、静的強度の増加が望めない。そこで下限の深さを肉厚比1%とした。
表面硬さをHv500以上必要で、Hv500を切ると不完全焼入れ組織の未固溶フェライト量が増加し、静的強度が急激に低下するため下限をHv500とした。上限は、その炭素量に応じたマルテンサイトの硬さで決まる。
ブーツ装着部位に対応する部位における硬化層にはボールの荷重が作用する。このため、この部位における硬化層厚さをマウス部肉厚の20%〜55%とするのが好ましい。20%未満では、ボールの荷重により容易に圧痕が生じ著しい耐久性の低下を招く。また、55%を越えると、ブーツ溝底部の残留応力が引張応力となり、この部位より疲労亀裂が発生し著しく捩り疲労強度が低下する。
前記傾斜部の傾斜長さを0.5mm以上5mm以下とするのが好ましい。傾斜部の傾斜長さが0.5mm未満では、この傾斜部を設けたことによる効果を得ることができず、5mmを越えると端面が薄くなり加工搬送時に打痕が発生し、加工時に不都合が生じやすくなる。前記傾斜部の旧オーステナイト粒度を8番以上とするのが好ましい。
トラック溝の円弧部の奥端の硬化層厚さをマウス部肉厚の20%〜60%とするのが好ましい。20%未満では、圧痕が発生し易く、60%を越えると、効果が飽和し熱処理変形の増加を招く。
炭素量が0.46〜0.58mass%の炭素鋼でS量が0.005〜0.020mass%とした鋼を使用するのが好ましい。すなわち、炭素量の下限は、転動面の耐摩耗により決まる。上限は、焼入れ硬化部の靭性と加工性の観点で決定される。また、S量は、鋼中でMnSの化合物として存在し、冷間鍛造により長く引き伸ばされ、破壊の起点となるため減少することが望ましい。しかし、0.005mass%を切ると著しく切削加工性を阻害し、0.020mass%を超えると焼入れ硬化部の靭性を著しく低下させる。好ましくは、0.005〜0.01mass%の範囲である。
Bを0.0003〜0.006mass%、Tiを0.005〜0.10mass%添加するのが好ましい。Bが0.0003mass%未満では効果がなく、0.006mass%を超えると効果が飽和しコストの上昇を招く。好ましくは、0.0004〜0.004mass%の範囲である。Tiは、不可避的不純物として混入するとNと結合し、BがBNとなってBの添加の効果が消失するのを防止する。少なくとも0.005mass%の含有が必要であるが、0.10mass%を超えて含有すると硬いTiNが多量に形成され、破壊の起点となり捩り疲労強度の低下を招く。好ましくは、0.01〜0.07mass%の範囲である。
Siを0.30〜0.60mass%、Mnを0.10〜0.50mass%、Crを0.05mass%以下とするのが好ましい。Siは、ベイナイト組織の生成に有用で、旧オーステナイト粒の微細化にも効果がある重要な元素である。少なくとも0.30%の含有が必要であるが、0.60mass%を超えるとフェライトの固溶硬化により硬さが増加し、鍛造性、切削性の低下を招く。Mnは、焼入性を向上させるため、硬化深さを確保する上で不可欠な成分である。0.10mass%未満ではその効果がなく、0.50mass%を超えると母材の硬化を招き機械加工性に不利となる。Crは、母材の硬化を招き機械加工性に不利となることや、粒界に炭化物として偏析し粒界強度を低下するため、減少させることが望ましいが、0.05mass%までは許容できる。
前記チャンファの傾斜角度を、最大作動角より1°〜5°大きくするのが好ましい。最低1度以上必要で、5度を超えるとトラック有効範囲が減少するため不都合が生じる。
前記傾斜部の傾斜角度を前記チャンファの傾斜角度及び最大作動角より大きくすることも可能である。これによって、マウス部の開口端部に、傾斜角度が相違する2段の逃げ面を形成することができる。
前記傾斜部が凸アール状であっても、凹アール状であってもよい。これらの場合、焼き割れが発生し易い部位を滑らかな面とすることができる。特に、傾斜部が凹アール状であれば、組み込むケージのポケット(トルク伝達用ボールが保持されるボール)の窓幅を小さくでき、設計的な余裕が可能となる。すなわち、等速自在継手において、ボールを組み込む際には、ケージを外輪軸心に対して大きく傾斜させる必要があり、ケージのポケットの大きさはこの組み込み時の傾き角によって決定される。このため、窓幅を小さくできることになる。
チャンファを鍛造加工仕上げしたり、トラック開口部が鍛造加工仕上げにより湾曲面としたりすることができる。トラック開口部における破壊の起点となる部分にショットピーニング加工を施し、鋭角部を除去するようにしてもよい。
トラック溝の直線部を奥側から開口側に向かって外径側へ傾斜するテーパ状とすることができる。また、前記外側継手部材は、前記マウス部と、このマウス部に底部から突設されるステム部とを備え、ステム部の強度よりマウス部の強度を増加させたものであってもよい。
本発明の第1の固定式等速自在継手は、前記請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の等速自在継手用外側継手部材に、Hv600での有効硬化深さが0.9mm以上で非研削表面に研削部表面の硬さより軟らかい軟化層を有さないケージを組み込んだものである。この場合、高強度なケージを組み込むことになる。
本発明の第2の固定式等速自在継手は、前記請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の等速自在継手用外側継手部材に、少なくとも球面部のHv600での硬化深さが1.0mm以上を有し、芯部硬さをHv350からHv450とした球面部を有する内側継手部材を組み込んだものである。この場合、耐荷重性を増加した内側継手部材(内輪)を組み込むことになる。
前記ケージや内側継手部材の熱処理において、少なくとも一回の最終熱処理として高周波焼入れを施すのが好ましい。焼入れ液として、油を用いるのが好ましい。
本発明の第3の固定式等速自在継手は、前記請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の等速自在継手用外側継手部材を備え、内側継手部材の少なくとも外球面とトラック溝の溝内面を研削又は焼入れ鋼切削仕上げしたものである。
本発明の第3の固定式等速自在継手によれば、内側継手部材の外球面とトラック溝の溝内面を研削又は焼入れ鋼切削することによって、より精度を向上させることができ、スムーズな作動が可能となる。
固定式等速自在継手がドライブシャフト用であって、異常荷重作用時にシャフトがヒューズとして機能するようにするのが好ましい。これによって、異常荷重が作用した場合、シャフトを優先的にせん断させ破損させることができる。
本発明では、トラック開口端部の硬化部に焼き割れを発生することなく、マウス部の静的捩り強度と捩り疲労強度の両特性の向上を図ることができる。また、トラック溝の円弧部の奥端の硬化層厚さをマウス部肉厚の20%〜60%とすることによって、マウス部の静的捩り高角強度をより向上させることが可能であり、ボールの荷重による圧痕が生じにくく、疲労亀裂も発生しにくくなる。
トラック開口端部の組織微細化(フェライトの微細化)により、焼入加熱時のオーステナイト化が容易となり、焼き割れ感受性を低下させることができる。また、高周波焼入れ時の加熱温度が低下でき、旧オーステナイト粒が微細化し更に焼き割れ感受性を低下させるとともに、トラック開口端部の強靭化が図られ静的捩り強度と捩り疲労強度の向上に寄与する。このため、特に、傾斜部の旧オーステナイト粒度を8番以上とするのが好ましい。
炭素量が0.46%から0.58%の炭素鋼でS量が0.005〜0.020mass%とした鋼を使用するのが好ましい。これによって、転動面の耐摩耗性に優れるとともに、焼入れ硬化部の靭性及び加工性に優れる。
Bを0.0003〜0.006mass%、Tiを0.005〜0.10mass%添加することによって、粒界に優先的に偏析し、粒界に偏析するP(粒界脆化元素)の濃度を低減し粒界強度を向上させ、焼入れ硬化部の靭性を向上させる。Tiは、不可避的不純物として混入することによって、Bの添加の効果が消失するのを防止する。
Siを0.30〜0.60mass%、Mnを0.10〜0.50mass%、Crを0.05mass%以下とすることによって、鍛造性、切削性に優れ、硬化深さを確保することができる。
チャンファの傾斜角度を、最大作動角より1°〜5°大きくすることによって、傾斜部の傾斜長さを長く設定でき、焼き割れ感受性を低下させることができる。
前記傾斜部の傾斜角度を前記チャンファの傾斜角度及び最大作動角より大きくすることによって、マウス部の開口端部に、傾斜角度が相違する2段の逃げ面を形成することができ、ボールと接触するトラックの有効長さを現象させることなく、焼き割れ防止ができる。
前記傾斜部を凸アール状や凹アール状とすることによって、焼き割れが発生し易い部位を滑らかな面とすることができ、過熱防止と応力集中の緩和が可能となる。特に、傾斜部が凹アール状であれば、組み込むケージのポケット(トルク伝達用ボールが保持されるボール)の窓幅を小さくでき、設計的な余裕が可能となる。
トラック開口部の逃げ面を鍛造加工により仕上げることによって、より低コストで製造可能となる。また、機械加工と異なり鋭角部が鈍化し応力集中を緩和できる。トラック開口部における破壊の起点となる部分にショットピーニング加工を施し、鋭角部を除去するようにしてもよい。これによって、応力集中を緩和することができる。
トラック溝の直線部を奥側から開口側に向かって拡大するテーパ状とすることができ、これによって、より高作動角が可能となる。また、ステム部の強度よりマウス部の強度を増加させたものでは、マウス部の捩り静的強度と捩り疲労強度の両特性の向上をより一層図ることができる。すなわち、高強度のマウス部を使用することで、ステム部よりも高強度にすることが容易となり、異常荷重が作用してもステム部が破損することになって、ステアリング機能を低下させることがない。このため、安全性を向上させることが可能となる。(マウス部が破損するとケージや内輪が噛みこんだ状態が発生し、この等速自在継手が作動せずロック状態となり、ステアリング出来なくなる場合が発生する。これに対して、ステム部が破損したとしても等速自在継手がロックすることは無い。)
本発明の固定式等速自在継手は、高強度なケージや耐荷重性を増加した内側継手部材(内輪)を組み込むことができて、高強度化したものとなる。また、浸炭後・高周波焼入れや高周波焼入れのみとすることにより浸炭処理で発生する浸炭異常層の除去と結晶粒の粗大化を防止でき高強度となる。焼入れ液として、油を用いることにより、焼き割れの防止及びひずみ低減を図ることができて、高強度となるケージや内側継手部材(内輪)を安定して製作できる。
内側継手部材の少なくとも外球面とトラック溝の溝内面を研削又は焼入れ鋼切削仕上げすることによって、精度の向上と部品間の隙間ばらつきの減少により、スムーズな作動が可能となって、より高強度化を達成できる。
前記等速自在継手がドライブシャフト用であって、異常荷重作用時にシャフトがヒューズとして機能するようにすれば、異常荷重が作用した場合、シャフトを優先的にせん断させ破損させることができる。このため、ステアリング機能の妨げとならず、危険を回避でき安全性を向上させることが可能となる。
本発明に係る等速自在継手用外側継手部材及び固定式等速自在継手の実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。図1は外側継手部材を示し、図3はこの外側継手部材を使用した固定式等速自在継手を示している。
この固定式等速自在継手は、外側継手部材としての外輪21と、外輪21の内側に配された内側継手部材としての内輪22と、外輪21と内輪22との間に介在してトルクを伝達する複数のボール23と、外輪21と内輪22との間に介在してボール23を保持するケージ24とを主要な部材として構成される。内輪22はその孔部内径22aにシャフト25の端部25aを圧入することによりスプライン嵌合してシャフト25とトルク伝達可能に結合されている。なお、シャフト25の端部25aには、シャフト抜け止め用の止め輪26が嵌合されている。
外輪21はマウス部27とステム部(軸部)28とからなり、マウス部27は一端にて開口した椀状で、その内径面30に、軸方向に延びた複数のトラック溝31が円周方向等間隔に形成されている。そのトラック溝31はマウス部27の開口端部面まで延びている。内輪22は、その外径面32に、軸方向に延びた複数のトラック溝33が円周方向等間隔に形成されている。
外輪21のトラック溝31と内輪22のトラック溝33とは対をなし、各対のトラック溝31,33で構成されるボールトラックに1個ずつ、トルク伝達要素としてのボール23が転動可能に組み込んである。ボール23は外輪21のトラック溝31と内輪22のトラック溝33との間に介在してトルクを伝達する。ケージ24は外輪21と内輪22との間に摺動可能に介在し、外径面24aにて外輪21の内径面30と接し、内径面24bにて内輪12の外径面32と接する。
ところで、外輪21のトラック溝31は、奥側の円弧部31aと、開口側の直線部31bとからなり、内輪22のトラック溝33は、奥側の直線部33aと、開口側の円弧部33bとからなる。すなわち、この固定式等速自在継手はアンダーフリー(UJ)型である。この場合、トラック溝31を研削又は焼入れ鋼切削仕上げしても良い。
また、マウス部27の開口部はブーツ35にて塞がれている。ブーツ35は、大径部35aと、小径部35bと、大径部35aと小径部35bとを連結する蛇腹部35cとからなる。大径部35aがマウス部27の開口部側のブーツ装着部位40に外嵌され、この状態でブーツバンド36にて締結され、小径部35bがシャフト25のブーツ装着部25bに外嵌され、この状態でブーツバンド37にて締結されている。なお、ブーツ装着部位40の外径面には、ブーツ35の大径部35aの内径面の一部が嵌合する凹溝41が形成されている。
外輪21の軸部28は、外径面にトルク伝達用の雄スプライン43を有する本体部28aと、この本体部28aの端部から突設されるねじ部28bとを備える。また、本体部28aの外径面に硬化層Hが形成される。この硬化層Hは高周波焼入れにて形成することができる。ここで、高周波焼入れとは、高周波電流の流れているコイル中に焼入れに必要な部分を入れ、電磁誘導作用により、ジュール熱を発生させて、伝導性物体を加熱する原理を応用した焼入れ方法である。
図1に示すように、外輪21のトラック溝31の溝内面には硬化層Hが形成されている。また、外輪21のマウス部27の開口端部には、作動角許容用のチャンファ44が設けられる。これによって、硬化層Hの開口端部に、図2に示すように、トラック溝31の開口端縁から開口側に向かって外径側へ傾斜して(拡径して)マウス部27の開口端部面に達する傾斜部45が形成される。この傾斜部45の傾斜長さAとしては、例えば、0.5mm以上5mm以下とする。また、この硬化層Hにおいては、高周波焼入処理にて形成することができる。
硬化層Hは、図4に示すように、トラック溝31の全長に渡って形成される。この場合、溝開口端部に硬化層厚さH1のマウス部肉厚Eの1%〜25%としている。また、円弧部31aの奥端の硬化層厚さH3をマウス部肉厚Cの20%〜60%とする。ブーツ装着部位40に対応する部位における硬化層厚さH2をマウス部肉厚Dの20%〜55%としている。
外輪21は、例えば、炭素量を0.46〜0.58mass%の炭素鋼でS量を0.005〜0.020mass%とした鋼を使用することができる。この場合、Bを0.0003〜0.006mass%、0.005〜0.10Timass%添加し、また、Siを0.30〜0.60mass%、Mnを0.10〜0.5mass%、Crを0.05mass%以下とする。
炭素量の下限は、転動面の耐摩耗性により決まる。条件は、焼入れ硬化部の靭性と加工性の観点で決定される。また、S量は、鋼中でMnSの化合物として存在し、冷間鍛造により長く引き伸ばされ、破壊の起点となるため減少することが望ましい。しかし、0.005mass%を切ると著しく切削加工性を阻害し、0.020mass%を超えると焼入れ硬化部の靭性を著しく低下させる。好ましくは、0.005〜0.01mass%の範囲である。
Bを0.0003〜0.006mass%、0.005〜0.10Timass%添加することにより、粒界に優先的に偏析し、粒界に偏析するP(粒界脆化元素)の濃度を低減し粒界強度を向上させ、焼入れ硬化部の靭性を向上させる。0.0003mass%未満では効果がなく、0.006mass%を超えると効果が飽和コストの上昇を招く。好ましくは、0.0004〜0.004mass%の範囲である。
Tiは、不可避的不純物として混入するとNと結合し、BがBNとなってBの添加の効果が消失するのを防止する。少なくとも0.005mass%の含有が必要であるが、0.1 mass%を超えて含有すると硬いTiNが多量に形成され、破壊の起点となり疲労強度の低下を招く。好ましくは、0.01〜0.07mass%の範囲である。
Siを0.30〜0.60mass%、Mnを0.10〜0.5mass%、Crを0.05mass%以下とした。Siは、ベイナイト組織の生成に有用で、旧γ粒の微細化にも効果がある重要な元素である。少なくとも0.30%の含有が必要であるが、0.60mass%を超えるとフェライトの固溶硬化により硬さが増加し、鍛造性、切削性の低下を招く。Mnは、焼入性を向上させるため、硬化深さを確保する上で不可欠な成分である。0.10mass%未満ではその効果がなく、0.50mass%を超えると母材の硬化を招き機械加工性に不利となる。Crは、母材の硬化を招き機械加工性に不利となることや、粒界に炭化物として偏析し粒界強度を低下するため、減少させることが望ましいが、0.05mass%までは許容できる。
少なくとも一回冷間鍛造加工されて、マウス部27の外周側の硬さ(硬化層以外の硬さ)をHv(ビッカース硬さ)280以上400以下とし、硬化層Hの硬さをHv500以上780以下としている。Hv500未満では、不完全焼入れ組織の未固溶フェライト量が増加し、静的捩り強度が急激に低下する。なお、上限は、その炭素量に応じたマルテンサイトの硬さで決まる。
硬化層Hを高周波焼入処理にて形成しているので、このマウス部27においては、トラック溝31の開口端部が高周波焼入れされていることになる。この場合、前記傾斜部45の旧オーステナイト粒度の粒度番号を8番以上とするのが好ましい。粒度番号が8未満では焼き割れが生じ易いからである。
ケージ24としては、Hv600での有効硬化深さが0.9mm以上で非研削表面に研削部表面の硬さより軟らかい軟化層を有さないものとする。また、内輪22としては、少なくとも球面部(外径部)のHv600での硬化深さが1.0mm以上を有し、芯部硬さをHv350からHv450としたものとする。なお、ケージ24は例えばS48Cを素材とし、硬化層を高周波焼入れにて成形することができる。また、内輪22は例えばSCr435を素材とし、硬化層を真空浸炭処理にて成形することができる。
ケージ24及び内輪22の熱処理においては、少なくとも1回の最終熱処理としての高周波焼入れを施すのが好ましい。また、焼入れの際に使用する焼入れ液として、油を用いるのが好ましい。
本発明では、トラック溝31の開口端部を高周波焼入れし、かつ、トラック溝31の開口端縁から開口側に向かって外径側へ傾斜してマウス部27の開口端部面に達する傾斜部45を設けているので、トラック溝の開口端部における焼き割れ感受性を低下させることができる。また、冷間加工を用いて所定の加工率で成型することにより、加工硬化させることができ、これによって、マウス部27の外周側の硬さをHv280以上Hv400以下としている。また、トラック溝31の硬化層H1の硬さをHv500以上Hv780以下とするとともに、トラック溝31の開口端部には傾斜部45を設けている。このため、トラック開口端部側に硬化部H1に焼き割れを発生することなく、マウス部27の静的強度と疲労強度の両特性の向上を図ることができる。また、トラック溝31の円弧部31aの奥端の硬化層厚さH3をマウス部肉厚Cの20%〜60%とすることによって、マウス部27の静的高角強度をより向上させることが可能であり、ボール23の荷重による圧痕が生じにくく、疲労亀裂も発生しにくくなる。
炭素量が0.46〜0.58mass%の炭素鋼でS量が0.005〜0.020mass%とした鋼を使用している。これによって、転動面の耐摩耗に優れるとともに、焼入れ硬化部の靭性及び加工性に優れる。
Bを0.0003〜0.006mass%、Tiを0.005〜0.10mass%添加するによって、粒界に優先的に偏析し、粒界に偏析するP(粒界脆化元素)の濃度を低減し粒界強度を向上させ、焼入れ硬化部の靭性を向上させる。Tiは、不可避的不純物として混入することによって、Bの添加の効果が消失するのを防止する。
Siを0.30〜0.60mass%、Mnを0.10〜0.50mass%、Crを0.05mass%以下とすることによって、鍛造性、切削性に優れ、硬化深さを確保することができる。
また、ケージ24として、Hv600での有効硬化深さが0.9mm以上で非研削表面に研削部表面の硬さより軟らかい軟化層を有さないものや、内輪22としては、少なくとも球面部(外径部)のHv600での硬化深さが1.0mm以上を有し、芯部硬さをHv350からHv450としたものを使用することによって、より高強度化したものとすることができる。
内輪22の外球面32とトラック溝33を研削又は焼入れ鋼切削仕上げしたことによって、より精度を向上させることができて、スムーズが作動(ロックの防止)を可能とし、外輪21をより高強度にすることが可能である。
ステム部28の強度よりマウス部27の強度を増加させたものでは、マウス部28の静的捩り強度と捩り疲労強度の両特性の向上をより一層図ることができる。すなわち、高強度のマウス部を使用することで、ステム部28よりも高強度にすることが容易となり、異常荷重が作用してもステム部28が破損することになって、ステアリング機能を低下させることがない。このため、安全性を向上させることが可能となる。(マウス部が破損するとケージや内輪が噛みこんだ状態が発生し、この等速自在継手が作動せずロック状態となり、ステアリング出来なくなる場合が発生する。これに対して、ステム部が破損したとしても等速自在継手がロックすることは無い。)
ところで、前記のように構成された等速自在継手は、図5に示すように、車輪用軸受装置を構成することができる。この車輪用軸受装置は、対向するアウタレース120、121とインナレース118、119との間に配置された複数列の転動体122を有する軸受105と、車輪(図示省略)に取り付けられるハブ輪102と、前記等速自在継手104とを備える。
ハブ輪102は、筒部113と前記フランジ101とを有し、フランジ101の外端面114(反継手側の端面)には、図示省略のホイールおよびブレーキロータが装着される短筒状のパイロット部115が突設されている。なお、パイロット部115は、大径の第1部115aと小径の第2部115bとからなり、第1部115aにブレーキロータが外嵌され、第2部115bにホイールが外嵌される。
そして、筒部113の椀形部107側端部の外周面に切欠部116が設けられ、この切欠部116に、軸受105のインボード側のインナレース119を有する内輪117が嵌合されている。ハブ輪102の筒部113の外周面のフランジ近傍には第1内側軌道面118が設けられ、内輪117の外周面に第2内側軌道面119が設けられている。また、ハブ輪102のフランジ101にはボルト装着孔112が設けられて、ホイールおよびブレーキロータをこのフランジ101に固定するためのハブボルトがこのボルト装着孔112に装着される。
アウタレース120、121は、ハブ輪101に外嵌される外方部材106に形成される。この外方部材106の外周にフランジ(車体取付フランジ)132が設けられている。そして、外方部材106の第1外側軌道面120とハブ輪102の第1内側軌道面118とが対向し、外方部材106の第2外側軌道面121と、内輪117の軌道面119とが対向し、これらの間に転動体122が介装される。
ハブ輪102の筒部113に外輪21の軸部28が挿入される。そして、筒部113から突出した軸部28のねじ部28bにナット部材127が螺着され、ハブ輪102と外輪21とが連結される。この際、ナット部材127の内端面(裏面)128と筒部113の外端面129とが当接するとともに、マウス部27の軸部側の端面130と内輪117の外端面131とが当接する。すなわち、ナット部材127を締付けることによって、ハブ輪102が内輪117を介してナット部材127とマウス部27とで挟持される。
このように、等速自在継手を、ドライブシャフト用とすることができ、しかも、この場合、異常荷重作用時にシャフト25がヒューズとして機能するようにすることができる。ここで、ヒューズとして機能させるとは、異常荷重が作用した場合、シャフト25を優先的にせん断させ破損させるものである。すなわち、異常荷重が作用した場合に、シャフト25が犠牲になって等速自在継手側の損傷を防止するようにしている。
このように、シャフト25を優先的にせん断させ破損させることができることによって、ステアリング機能の妨げとならず、危険を回避でき安全性を向上させることが可能となる。
ところで、図6に示すように、外輪21のマウス部27の開口端部面27aを軸方向に延ばすことによって、傾斜部45の傾斜長さAを大きくしてもよい。すなわち、2点鎖線で示す開口端部面27aの位置よりも実線で示すように開口端部面27aの位置を延ばしている。傾斜部45を設けることによって、開口側の焼き割れを防止できるので、傾斜部45の傾斜長さを大きくすることによって、焼き割れをより有効に防止することができる。
また、図7に示すように、最大作動角θよりも傾斜部45の傾斜角度θ1を1°〜5°程度増加させるのも好ましい。これによって、傾斜部45の傾斜長さAを大きくすることができる。傾斜部45の傾斜角度θが5°を越えると、トラック有効範囲が減少して不都合である。また、1°未満であれば、傾斜部45の傾斜長さAを大きくすることができない。
図8に示すように、チャンファ44の傾斜角度αと傾斜部45の傾斜角度θ2を相違させてもよい。この場合、傾斜部45の傾斜角度θ2をチャンファ44の傾斜角度αよりも大きく設定している。図8の場合、2段の逃げ面を形成することができ、ボール23と接触するトラック溝31の有効長さを減少させることができる。
図9では傾斜部45を凸形状とし、図10では凹形状としている。すなわち、図9と図10では、焼き割れが発生し易い部位を滑らかな面とすることができ、過熱防止と応力集中の緩和が可能となる。特に、傾斜部45が凹アール状であれば、組み込むケージのポケット(トルク伝達用ボールが保持されるボール)の窓幅を小さくでき、設計的な余裕が可能となる。また、図11では、傾斜部45を凸形状とするとともに、チャンファ44よりも奥側に後退させている。この場合であっても、焼き割れが発生し易い部位を滑らかな面とすることができる。
なお、図7から図10に示す外輪21の傾斜部45としては、NC旋盤により容易に作製すすることができる。
ところで、チャンファ44や傾斜部45としては鍛造加工(冷間鍛造加工)にて仕上げるのが好ましい。これにより、より低コストで製造可能となる。鍛造加工にて仕上げれば、機械加工と異なり、鋭角部が鈍化し応力集中を緩和できる。鍛造加工する場合、冷間鍛造時にトラック開口端部の逃げ面を拘束できる、ポンチを作製して加工することができる。逃げ面を拘束するためパンチの寿命が低下する場合があるが、冷間鍛造後に軟化焼鈍を実施すれば可能である。又は、亜熱間鍛造の熱を利用し軟化焼鈍すれば、より望ましい。
また、トラック溝31の開口端部の破断起点となる部位にショットピーニング加工を施すようにしてもよい。このようにショットピーニング加工を施すことによって、鋭角部を除去できて応力集中を緩和できる。ここで、ショットピーニングとは小さな鋼球(ショット)を構造材や機械部品の表面に高速で投射する処理である。この場合、Hv700以上の高硬度の微粒子を高速で所定部位に拭きつけ、鋭角部を除去加工している。
図12では、トラック溝31の開口側の直線部31bを、奥側から開口側に向かって拡大するテーパ部としている。これによって、より高作動角が可能となる。一般には、外輪21を成形する場合、トラック溝成形用のパンチを使用する。このため、図12に示すようなトラック溝31を成形する場合にも、このパンチの形状を製品形状に合わせて製作すればよい。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、トラック溝31、33の数としては、6個や8個であっても、これらよりも多くても少なくてもよい。