以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるバルブ装置は、図示するところでは、筒型でしかも両ロッド型に形成された油圧緩衝器に具現化されるもので、この油圧緩衝器は、たとえば、建築物の各階の床と天井との間に配設される制振ダンパとされる。
そして、この油圧緩衝器は、図1に示すところでは、シリンダ体1と、このシリンダ体1内に摺動可能に収装されながらシリンダ体1内に断面積を同一にする一対となる両方の油室、すなわち、図中で上方となる一方の油室R1と図中で下方となる他方の油室R2とを画成するピストン体2と、このピストン体2に一方端が連結されながら各油室R1,R2の軸芯部を挿通してそれぞれシリンダ体1の閉塞端から先端を外部に突出させるロッド体3、すなわち、断面積を同一にして図中で上方となる一方のロッド体31と図中で下方となる他方のロッド体32とを有してなる。
そして、この油圧緩衝器にあって、ピストン体2は、上記の両方の油室R1,R2の連通を許容する減衰バルブ21,22を有し、シリンダ体1は、後述する制御バルブ5,6の配設を可能にするバルブマウント4を一体的に連設させ、このバルブマウント4は、図示するところでは、ポート(符示せず)だけを有しながらシリンダ体1に連結されるプレート部41と、このプレート部41に連結されて制御バルブ5,6およびチェックバルブ7,8を有するハウジング部42とからなる。
ところで、シリンダ体1は、この油圧緩衝器が両ロッド型とされるから筒体からなり、図示するところでは、図中の下端側部にはシリンダ体1と同径となるサブシリンダ体11を同軸に連設させ、このサブシリンダ体11内に他方のロッド体32の図中で下端側となる先端側を導通させてこの他方のロッド体32の下端側がいわゆる他部に干渉することを回避させ、また、このサブシリンダ体11は、この油圧緩衝器のいわゆる取り付けを可能にするブラケット12を有している。
ピストン体2は、自身がシリンダ体1内に画成する両方の油室R1,R2の連通を許容する減衰バルブ、すなわち、言わば伸側用とされる減衰バルブ21と言わば圧側用とされる減衰バルブ22とを並列配置させている。
このとき、減衰バルブ21,22は、図示するところでは、上流側の圧力がクラッキング圧を超えると開放作動するように設定されて、このクラッキング圧については任意に設定される。
ロッド体3は、図中で上方となる一方のロッド体31の先端にブラケット33を有し、このブラケット33を利用してのこの油圧緩衝器の固定側Bへの連結を可能にしている。
それゆえ、この油圧緩衝器にあっては、上記したブラケット12,33を利用しての所望の場所への取り付けが、すなわち、設置が可能とされ、その設置場所での作動、すなわち、いわゆる伸縮作動が可能とされる。
そして、この油圧緩衝器にあっては、後述するバイパス路を無視すると、ピストン体2がシリンダ体1内を図中で上昇する場合を、たとえば、伸側作動時と仮定すると、一方の油室R1が減衰バルブ21を介して他方の油室R2に連通し、このとき、減衰バルブ21で所定の大きさの減衰力が発生される。
また、同じくこの油圧緩衝器にあって、ピストン体2がシリンダ体1内を図中で下降する場合を、たとえば、圧側作動時と仮定すると、他方の油室R2が減衰バルブ22を介して一方の油室R1に連通し、このとき、減衰バルブ22で所定の大きさの減衰力が発生される。
つぎに、この油圧緩衝器にあっては、ピストン体2に配設の減衰バルブ21,22を迂回して両方の油室R1,R2をシリンダ体1外で連通させるバイパス路(符示せず)を有している。
このとき、バイパス路は、いわゆる両端がシリンダ体1内の各油室R1,R2に対して、各油室R1,R2におけるいわゆるストロークエンド領域となる部位で連通している。
すなわち、ピストン体2がシリンダ体1内をいわゆる中立領域を超える大きいストロークで摺動するとしてシリンダ体1の端部に接近するストロークエンド近傍に至るときにも、シリンダ体1に開穿された開口が閉塞されずして各油室R1,R2のバイパス路への連通が妨げられない。
一方、この発明において、バルブ装置は、上記の両方の油室R1,R2のシリンダ体1外で連通を可能にするバイパス路と、このバイパス路中に配設されて外部からの推力の入力で移動してバイパス路を開放する制御バルブ5,6と、この制御バルブ5,6に対するバイパス路における作動油の流れを整流するチェックバルブ7,8と、制御バルブ5,6に推力を入力する入力手段9とを有してなる。
まず、バイパス路は、シリンダ体1に一体的に連設されるバルブマウント4におけるプレート部41およびハウジング部42に形成され、ハウジング部42が一対とされながらそれぞれ両方の油室R1,R2間の相反する方向の連通を許容するように並列配置とされる制御バルブ5,6と、このバイパス路における作動油の流れ方向を制御する、すなわち、整流するチェックバルブ7,8とを有している。
このとき、バイパス路の本来的な機能を鑑みると、これがバルブマウント4に形成されるのはともかく、このバルブマウント4がシリンダ体1に保持されることは、この発明のバルブ装置にあって、言わば好ましい。
すなわち、後述するが、この発明のバルブ装置にあって、バイパス路に配設される制御バルブ5,6は、油圧緩衝器の伸縮位置に依存して開閉作動することを要件するから、少なくとも、この制御バルブ5,6を有するバルブマウント4にあっては、これがシリンダ体1の一部に擬制されて良く、したがって、この観点からして、バルブマウント4は、シリンダ体1に一体的に連設されてシリンダ体1に保持されるのが好ましい。
つぎに、制御バルブ5,6は、図示するところでは、ロッド体3のシリンダ体1に対する出没となる移動に追従する入力手段9からの入力によって開放作動して言わば一方の油室を他方の油室に連通させることを許容している。
すなわち、たとえば、一方の制御バルブ5にあっては、シリンダ体1内に一方のロッド体31が没入するようになる油圧緩衝器の言わば収縮時に入力手段9からの入力によって開放状態に切り換えられ、他方の油室R2がこの開放された一方の制御バルブ5を介して一方の油室R1に連通し、このとき、他方の制御バルブ6は、チェックバルブ7の作動するところもあって、自らの状態において遮断状態に維持され、その限りにおいてバイパス路を閉鎖する。
そして、他方の制御バルブ6にあっても、シリンダ体1内から一方のロッド体31が突出するようになる言わば伸側作動時に入力手段9からの入力によって開放状態に切り換えられ、一方の油室R1がこの開放された他方の制御バルブ6を介して他方の油室R2に連通し、このとき、一方の制御バルブ5は、上記したところと同様に、チェックバルブ8の作動もあって、自らの状態において遮断状態に維持され、その限りにおいてバイパス路を閉鎖する。
なお、チェックバルブ7,8についてだが、上記したように、たとえば、一方のロッド体31がシリンダ体1内に没入する油圧緩衝器の言わば収縮によって一方の制御バルブ5が開放作動するときにシリンダ体1内の油室R2の作動油が他方の制御バルブ6に流入することをチェックバルブ7が阻止し、一方の制御バルブ5がいわゆる戻るようになるとき、すなわち、シリンダ体1内から一方のロッド体31が突出する伸長に反転することでシリンダ体1内の油室R1から流出される作動油が未だ遮断状態になっていない一方の制御バルブ5に流入する状況になるときにチェックバルブ8がこれを阻止して、一方の制御バルブ5を所定の閉鎖状態に維持するように機能すると共に、油圧緩衝器におけるピストン体2が有する減衰バルブ21のみを作動させ、所定の大きさの減衰力を発生させる。
そして、一方のロッド体31がシリンダ体1内から突出する油圧緩衝器の言わば伸長によって他方の制御バルブ6が開放作動するときにシリンダ体1内の油室R1の作動油が一方の制御バルブ5に流入することをチェックバルブ8が阻止し、他方の制御バルブ6がいわゆる戻るようになるとき、すなわち、シリンダ体1内に一方のロッド体31が没入する収縮に反転することでシリンダ体1内の油室R2から流出される作動油が未だ遮断状態になっていない他方の制御バルブ6に流入する状況になるときにチェックバルブ7がこれを阻止して、他方の制御バルブ6を所定の閉鎖状態に維持するように機能すると共に、油圧緩衝器におけるピストン体2が有する減衰バルブ22のみを作動させ、所定の大きさの減衰力を発生させる。
以上のことからすると、この発明にあっては、制御バルブ5,6によってバイパス路を開閉することで、油圧緩衝器で発生される減衰力の高低調整が可能になるのはもちろんであるが、チェックバルブ7,8の協働もあって、図2に示すような減衰力の変位特性が得られることになる。
ここで、制御バルブ5,6について説明すると、基本的には、図1に示すように、制御バルブ5,6は、入力軸51,61と、弁体52,62と、基軸53,63と、弁体附勢バネ54,64とを有してなる。
すなわち、まず、入力軸51,61は、対向する入力手段9からの推力を先端に入力させ、図示するところでは、前記したロッド体3と軸線方向を同じにしている。
そして、この入力軸51,61は、入力手段9に対向することになる先端部をバルブマウント4におけるハウジング部42から外部に突出させて大気中におき、図示するところでは、詳しくは図示しないが、先端部における軸長の長短調整を可能にし、入力手段9に対する間隔の調整を、すなわち、後述する不感帯ストロークL1,L2の長短調整を可能にしている。
なお、図示するところにあって、入力軸51,61には、後述する弁体52,62の前方部たるスプール部において変位に応じた流量制御を実現する油路としての切り溝51a,61aが一本または複数本形成されている。
つぎに、弁体52,62は、入力軸51,61の一方端に直列されながら、すなわち、図示するところでは、一体に連設されながら入力軸51,61の後退によるその後退時にバイパス路を開放し、また、図示するところでは、ポペットからなり、したがって、この弁体52,62がスプールのみからなる場合に比較して、バイパス路における作動油の漏れを効果的に阻止し得る。
そして、弁体52,62たるポペットの上流側に上記の切り溝51a,61aが形成されるから、この切り溝51a,61aを介しての作動油の流れが利用されることで、ストロークに応じた流量制御が可能になり、たとえば、図2の特性図における符号Xで示す領域における波形をコントロールでき、また、この波形のコントロールを要しない場合でも、弁体52,62が急激に開閉することがなくいわゆるショックを緩和できる。
なお、上記の弁体52,62については、これがスプールからなるとしても良く、また、スプールからなるとするとき、これにポペットを直列させても良い。
そして、基軸53,63は、弁体52,62に直列されながら、すなわち、図示するところでは、弁体52,62の後端に一体に連設されながら軸径を入力軸51,61と同一にして後端が大気中におかれ、この基軸53,63の後端が大気中におかれる一方で入力軸51,61の先端が同じく大気中におかれ、したがって、弁体52,62が後述する弁体附勢バネ54,64のバネ力によってのみ前進状態に維持され、すなわち、バイパス路を閉鎖する状態に維持する。
弁体附勢バネ54,64は、図示するところではコイルスプリングからなるが、このとき、各弁体附勢バネ54,64における附勢力は、極端に大小されない限りにおいて、いわゆる同一性が要求されない。
そして、この弁体附勢バネ54,64にあっては、入力手段9からの推力が入力されるときに、収縮して基軸53,63の後退、すなわち、弁体52,62の後退を許容して、この弁体52,62を介してのバイパス路における作動油の流れを許容する。
ところで、この弁体附勢バネ54,64におけるバネ力についてであるが、上記したように、この発明の制御バルブ5,6にあっては、弁体52,62たるポペットを挟むことになる入力軸51,61と基軸53,63との間におけるいわゆる軸力が同じになる。
それゆえ、この弁体52,62をいわゆるシート部に着座させてバイパス路を閉鎖状態に維持するについては、制御バルブ5,6が作動するときのフリクションに勝るバネ力を具有する弁体附勢バネ54,64とされて良く、したがって、弁体附勢バネ54,64についてはこれがコイルスプリングからなるとき、いわゆる軽微なコイルスプリングで足りる。
一方、入力手段9は、基本的には、前記したロッド体3の動きに追従するように形成され、図示するところでは、油圧緩衝器におけるピストン体2の摺動方向、すなわち、ロッド体3の移動方向に沿いながらバルブマウント4におけるハウジング部42を貫通して図中で上下方向に移動し得るとするガイドロッド91を有し、このガイドロッド91の図中で上端となる一方端を固定側Bに当接させている。
ちなみに、ガイドロッド91の一方端を図示するように固定側Bに当接させるのに代えて、図示しないが、ロッド体3から突設されるブラケットたる受台に当接させても良い。
そして、図示するガイドロッド91は、固定側Bに対向することになる端部にアジャスタ構造に形成されたストローク調整手段(符示せず)を有し、このストローク調整手段は、ガイドロッド91の端部に螺装される袋ナット91aを有し、この袋ナット91aのガイドロッド91における端部での進退で固定側Bに対するストロークが調整される。
そして、この入力手段9にあって、ガイドロッド91は、図中で下端となる他方端に保持されて他方の制御バルブ6に対向して、図中での上昇となる前進時に推力を入力する他方入力部91cを一体的に有し、中間部に移動可能に介装されてバイパス路における一方の制御バルブ5に対向して、図中での下降となる前進時に推力を入力する一方入力部91bを有している。
このとき、一方入力部91bと他方入力部91cは、制御バルブ5,6における入力軸51,61の先端に対して間隔を有しながら対向するとし、この間隔を不感帯ストロークL1,L2にしている。
そしてまた、この入力手段9にあって、ガイドロッド91は、一方入力部91bと上記の固定側Bとの間に配在される副附勢バネ92を伸縮可能に介装させている。
その一方で、このガイドロッド91は、一方入力部91bを担持するバネ受91dを一体に連設させ、このバネ受91dとバルブマウント4たるハウジング部42との間に配設される主附勢バネ93を介装させている。
このとき、上記の主附勢バネ93のバネ力は、相応する制御バルブ6において弁体62を背後側から附勢する弁体附勢バネ64のバネ力に勝り、副附勢バネ92のバネ力は、相応する制御バルブ5において弁体52を背後側から附勢する弁体附勢バネ54のバネ力に勝る。
そして、副附勢バネ92は、一方入力部91bとガイドロッド91の一方端近傍にスナップリング94aの係止下にガイドロッド91に移動可能に介装されるバネ受94に係止されている。
このとき、一方入力部91bは、ガイドロッド91に移動可能に介装されて上記のバネ受91dに着座するようにして担持される筒状に形成のカラー部材95に図中で上下方向となる摺動を可能にするように保持されている。
なお、一方入力部91bのカラー部材95の外周への介装状態についてだが、後述する回り止め機構10(図4参照)と関連からすれば、一方入力部91bがカラー部材95の外周に上下方向の移動は許容されるが回動が阻止されるように介装されても良い。
それゆえ、入力手段9にあっては、副附勢バネ92の図中で上端たる一端が固定側Bに対向する、すなわち、言わば係止されるのと同様に主附勢バネ93の図中で上端たる一端が上記のバネ受91dを介して固定側Bに対向する。
そして、この入力手段9にあって、ガイドロッド91は、主附勢バネ93のバネ力で図中の上方に押し上げられる態勢になり、したがって、固定側Bに常に押し付けられる態勢になり、かつ、他方の制御バルブ6が有するストロークよりも主附勢バネ93の伸長ストローク、すなわち、ガイドロッド91を上方側に持ち上げるストロークの方が長くなる。
以上のように、この発明のバルブ装置にあっては、シリンダ体1に対してロッド体3が出没するいわゆる伸縮作動時にその伸縮量が上記した不感帯ストロークL1,L2を超えるとき、言わば対応する制御バルブ5,6が開放作動してバイパス路を連通状態に切り換える。
それゆえ、このことからすれば、この発明のバルブ装置にあって、上記の不感帯ストロークL1,L2を同一にするときには、油圧緩衝器をいわゆる中立状態にし得る。
すなわち、油圧緩衝器を任意の場所に設置するとき、その設置場所におけるいわゆる設置間隔が区々となり、したがって、油圧緩衝器にあって、シリンダ体1内でピストン体2を完全な中央部に位置決めることが、すなわち、中立状態にすることが事実上困難であるとしても、前記したアジャスタ構造に形成のストローク調整手段を利用することで、ガイドロッド91の先端部の長さ調整し、すなわち、上記の不感帯ストロークL1,L2を同一にするように調整作業をし、シリンダ体1に対するピストン体2のいわゆる中立状態を現出し得る。
そして、このとき、シリンダ体1内でピストン体2が完全な中立状態にないとしても、多くの場合に、そのズレは、いわゆる許容差よりは大きいがいたずらに大きくならないから、不感帯ストロークL1,L2を同一にするように調整することで、油圧緩衝器が中立状態にあると擬制しても問題はない。
以上からすれば、この発明にあっては、油圧緩衝器を設置する際に、バルブ装置における中立状態を視認しながら確実に現出することが可能になり、従来凡そこの種の油圧緩衝器を設置するのにあって、いわゆる中立状態の現出が容易でなく、したがって、油圧緩衝器の設置に手間を要していたことに比較して、迅速な設置作業を実現し得る。
そして、この発明のバルブ装置にあって、入力手段9の作動で制御バルブ5,6が開放作動されるのはもちろんであるが、入力手段9の作動が重要視されるのがそれによって制御バルブ5,6の作動が要請される場面であって、その要請が無くなった後は、入力手段9の関与が停止される。
すなわち、図示する制御バルブ5,6にあって、たとえば、ポペット52,62が30m/mを後退することでバイパス路を全開放する設定の場合には、以降のポペット52,62後退は言わば無意味になる。
そこで、ポペット52,62が設定量を後退するまでは、入力手段9が関与するが、以降は入力手段9が関与せず、すなわち、入力手段9からの推力が制御バルブ5,6に入力されないとしている。
具体的には、図示するところでは、制御バルブ5,6において、ポペット52,62が一定量を後退したら、さらなる後退は、制御バルブ5,6において機械的にこれが阻止される。
すなわち、たとえば、制御バルブ5の後退が阻止されるから、制御バルブ5の動きに関係なく、一方入力部91bが副附勢バネ92のバネ力の抗して後退して油圧緩衝器の動きに追従する。
そして、入力手段9にあっては、同様の場面で、制御バルブ6の後退が阻止される場合には、相対的に看ると、他方入力部91cが主附勢バネ93のバネ力の抗して後退して油圧緩衝器の動きに追従する。
それゆえ、この発明のバルブ装置における入力手段9にあっては、機械的に作動が停止された制御バルブ5,6に対して必要以上の推力を入力しないから、制御バルブ5,6にいわゆる無理をかけなくなり、バルブ装置における作動性を恒久的に保障する。
また、この発明のバルブ装置にあって、制御バルブ5,6における開放作動ストローク、すなわち、言わば有効ストロークが保障されることで、制御バルブ5,6のコンパクト化、すなわち、バルブ装置のコンパクト化を可能にし得る。
なお、上記したところでは、入力手段9のいわゆる関与回避が、制御バルブ5,6におけるストロークエンドに基づくとするが、制御バルブ5,6における有効ストロークを保障する限りには、これに代えて、一方入力部91bおよび他方入力部91cがバルブマウント4たるハウジング部42に当接することに基づくとしても良い。
ここで、この発明におけるバルブ装置にあって、入力手段9の作動と制御バルブ5,6の作動の状況を概略図たる図3に基づいて説明する。
まず、図3中の(A)は、一方の制御バルブ5と一方入力部91bとの間に出現する不感帯ストロークL1と、他方の制御バルブ6と他方入力部91cとの間に出現する不感帯ストロークL2とが同じになり、かつ、図示しないが、油圧緩衝器においても、シリンダ体1内のピストン体2が中立位置にあり、入力手段9がいわゆる中立状態にある状態を示す。
そこで、たとえば、ガイドロッド91が図中で右行して、バルブマウント4におけるハウジング部42に没入する状況になり、したがって、一方入力部91bが一方の制御バルブ5における入力軸51の先端に近づくときには、不感帯ストロークL1以上にガイドロッド91がハウジング部42内に没入するまでは、一方入力部91bが制御バルブ5における入力軸51の先端に干渉せず、したがって、一方入力部91bが入力軸51の先端に当接されるまでは、一方の制御バルブ5は、これが開放作動しない。
そして、ガイドロッド91がバルブマウント4におけるハウジング部42に没入するストロークが上記の不感帯ストロークL1以上になると、図3中の(B)に示すように、主附勢バネ93が言わば強制的に収縮されて一方入力部91bが一方の制御バルブ5における入力軸51の先端に当接し、このとき、一方入力部91bを言わば附勢する副附勢バネ93のバネ力が入力軸51を附勢するバネ力に勝るから、この入力軸51をバルブマウント4におけるハウジング部42内に没入させ、したがって、一方の制御バルブ5は、これが開放作動する。
そしてまた、一方の制御バルブ5において開放作動が停止したいわゆるバルブのストロークエンド以降も油圧緩衝器において作動が続行される場合には、図3中の(C)に示すように、ガイドロッド91の右行が続行され、このとき、一方入力部91bが一方の制御バルブ5によって言わば移動を阻止された状況におかれ、副附勢バネ92が収縮すると共に、主附勢バネ93がさらに収縮されてガイドロッド91の右行が続行される。
一方、ガイドロッド91が図3中で左行して、バルブマウント4におけるハウジング部42から抜け出る状況になり、したがって、他方入力部91cが他方の制御バルブ6における入力軸61の先端に近づくときには、不感帯ストロークL2以上にガイドロッド91がハウジング部42内に没入するまでは、他方入力部91cが制御バルブ6における入力軸61の先端に干渉せず、したがって、他方入力部91cが入力軸61の先端に当接されるまでは、他方の制御バルブ6は、これが開放作動しない。
そして、ガイドロッド91がバルブマウント4におけるハウジング部42に没入するストロークが上記の不感帯ストロークL2以上になると、図3中の(D)に示すように、他方入力部91cが他方の制御バルブ6における入力軸61の先端に当接し、このとき、他方入力部91cを言わば附勢する主附勢バネ93のバネ力が入力軸61を附勢するバネ力に勝るから、この入力軸61をバルブマウント4におけるハウジング部42内に没入させ、したがって、他方の制御バルブ6は、これが開放作動する。
そしてまた、他方の制御バルブ6において開放作動が停止したいわゆるバルブのストロークエンド以降も油圧緩衝器において作動が続行される場合にはガイドロッド91の左行が続行されるが、このとき、他方入力部91cが他方の制御バルブ6によって言わば移動を阻止された状況におかれ、同じく図3中の(D)に示すように、固定側Bが油圧緩衝器の動きに追随するように、ガイドロッド91の一方端から離れて行く。
以上のように、この発明にあっては、入力手段9が機能するところで制御バルブ5,6における所定の作動が実現されるが、その作動を保障するものとして図4に示す回り止め機構10を有し、この回り止め機構10が一方入力部91bおよび他方入力部91cのガイドロッド91を回動軸にする回動を阻止する。
すなわち、図示するところにあって、回り止め機構10は、バルブマウント4におけるハウジング部42とガイドロッド91との間に配設されると共にガイドロッド91と一方入力部91bとの間にも配設されている。
まず、図4中で下方となる言わば一方の回り止め機構10は、ハウジング部42と他方入力部91cとの間に配設されるガイドピン101と、このガイドピン101を臨在させる溝102とからなる。
ガイドピン101は、いわゆるピンからなり、図中で左端部となる基端部がハウジング部42に、たとえば、図示しないがボルトを利用するなどで固定状態に保持され、この状態下に図中で右端部となる先端部が溝102内に臨在されるとしている。
一方、溝102は、ガイドロッド91の外周にあってこのガイドロッド91の軸線方向に延設されてなり、その長さは、前記した制御バルブ6についての不感帯ストロークL2と、爾後の制御バルブ6の開放のためのストロークとを包含する長さ、および、制御バルブ5についての不感帯ストロークL1と爾後の制御バルブ5の開放のためのストロークを包含する長さに設定される。
このように、溝102の軸線方向がガイドロッド91の軸線方向と同一とされるから、ガイドロッド91のハウジング部42に対するいわゆる出没となる作動を妨げない。
ちなみに、図示するところでは、ガイドピン101を溝102に連繋させた際に他方入力部91cが他方の制御バルブ6に対向する設定とされているが、この発明が意図するところからすれば、図示しないが、ガイドロッド91のハウジング部42に対する回動が阻止された後に、他方入力部91cのガイドロッド91に対する連結位置が選択されるとしても良い。
つぎに、図4中で上方となる言わば他方の回り止め機構10は、ガイドロッド91と一方入力部91bとの間に配設されるガイドピン103と、このガイドピン103を臨在させる溝104とからなる。
ガイドピン103は、上記したガイドピン101と同様にいわゆるピンからなり、図中で左端部となる基端部が一方入力部91bたるカラー部材95に保持されている。
すなわち、図示するところにあって、一方入力部91bは、前記したように、ガイドロッド91に移動可能に介装のカラー部材95の外周に保持されるとしている。
それゆえ、図示するところにあっては、上記のガイドピン103については、これが、カラー部材95に螺入や圧入などで固定状態に保持され、この状態下に図中で右端部となる先端部が溝104内に臨在されている。
一方、溝104は、前記した下方の溝102と同様に、ガイドロッド91の外周にあってこのガイドロッド91の軸線方向に延設されてなり、その長さが前記した制御バルブ5についての不感帯ストロークL1と、爾後の制御バルブ5の開放のためのストロークとを包含する長さに設定される。
そして、この溝104にあっても、軸線方向がガイドロッド91の軸線方向と同一とされるから、一方入力部91bのガイドロッド91に対するいわゆる上下方向となる移動が妨げられない。
ちなみに、図示するところでは、ガイドピン103を溝104に連繋させた際に一方入力部91bが一方の制御バルブ5に対向する設定とされているが、この発明が意図するところからすれば、図示しないが、カラー部材95のガイドロッド91に対する回動が阻止された後に、一方入力部91bのカラー部材95に対する連結位置が選択されても良い。
それゆえ、以上のように形成された回り止め機構10にあっては、バルブマウント4におけるハウジング部42に対するガイドロッド91の回動を阻止すると共に、一方入力部91bのガイドロッド91に対する回動を阻止し得るから、入力手段9にあって、各入力部91b,91cによる制御バルブ5,6に対する推力の入力作動が保障される。
そして、この回り止め機構10がガイドピン101,103と、このガイドピン101,103を臨在させる溝102,104とで構成されるから、その構成が簡単になり、バルブ装置におけるいたずらな構造の複雑化といたずらに製品コストを高騰化させない。
また、この回り止め機構10にあっては、その構成を殆ど外部に晒さないようにすることが可能になり、たとえば、ダストが付着することによる回り止め機構10の作動不良を危惧しなくて済む。
のみならず、この回り止め機構10が採用される場合には、この発明のバルブ装置を備えた油圧緩衝器を所定位置に設置する際に、入力手段9における各入力部91b,91cを確実に制御バルブ5,6に対向させ得ることになり、いわゆる設置性を向上させる。
前記したところは、この発明によるバルブ装置を装備する油圧緩衝器が建築物における制振ダンパとされる場合を例にしているが、この発明が意図するところからすれば、この油圧緩衝器が建築物以外の、たとえば、鉄道車両や機器類の制振用として利用されるとしても良い。
そして、前記したところでは、この発明が両ロッド型の油圧緩衝器に具現化されるとしたが、この発明が意図するところからすれば、この発明が片ロッド型の油圧緩衝器に具現化されるとしても良く、さらには、凡そ気体以外のいわゆる収縮しないとされる流体を利用する緩衝器であれば、その具現化が可能になる。
また、前記したところでは、図1に示すように、制御バルブ5,6が図中での左右方向に油圧緩衝器に並列する態勢に配設されて奥行き寸法を短くしているが、この発明が意図するところからすれば、図示しないが、並列する制御バルブ5,6が油圧緩衝器に重ねられるように配設されて幅寸法を狭くするとしても良い。
さらに、前記したところでは、この発明によるバルブ装置を装備する油圧緩衝器にあって、バルブマウント4がシリンダ体1に一体に保持されてなる場合を例にしたが、この発明にあっては、バルブマウント4がシリンダ体1と分離されていても、油圧緩衝器における中立状態の実現が可能になる。
すなわち、油圧緩衝器を所定の位置に設置するについて、先に、シリンダ体1を大まかに看て中立状態にあると言える状況で設置場所に設置し、爾後に、シリンダ体1から分離されているバルブマウント4を移動して、不感帯ストロークL1,L2を言わば左右で同一にすれば、この油圧緩衝器における中立状態を実現することが可能になる。
さらに、この発明によるバルブ装置では、制御バルブ5,6の具体化にあって、これが一軸に形成されるのではなく、二軸に形成されるとしているから、これがバルブマウント4に装備される場合や、あるいは、シリンダ体1内に装備される場合を考慮すると、バルブマウント4の小型化を妨げず、また、シリンダ体1内への装備性を有利にする利点がある。
もっとも、この発明が意図するところからすれば、図示しないが、制御バルブ5,6の具現化にあって、これがいわゆる一軸に直列配置されるとしても良い。