JP2009096194A - 透湿防水性布帛 - Google Patents

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Abstract

【課題】使用時の揉みにて発生する不快な音鳴りを抑制した、スポーツウェア、雨衣等の衣料分野で好適に使用される透湿防水性布帛を提供する。
【解決手段】布帛の少なくとも片面に透湿防水性樹脂皮膜を接着した透湿防水性布帛において、前記布帛を構成する糸条が、単糸繊度0.1〜3.3dtexの合成繊維フィラメントからなるマルチフイラメント糸から成り、経糸のカバーファクターが800〜2100、緯糸のカバーファクターが700〜1200であり、該布帛の経方向及び緯方向の少なくとも一方向のJIS L1096 伸長率B法(定荷重法)に準ずる伸長率が3〜50%であり、前記透湿防水性布帛の使用時に発生する音鳴りが、1000〜4000Hzにおいて50dB以下であることを特徴とする透湿防水性布帛である。その曲げ剛性が0.005〜0.075gf・cm/cm、せん断剛性が0.08〜3gf/cm・degであることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、スポーツウェア、雨衣等の衣料分野で好適に使用される快適性を有する透湿防水性布帛に関し、特に衣料としての着用時等の布帛使用時の揉みにより発生する不快音を軽減できる透湿防水性布帛に関する。
布帛と透湿防水性樹脂皮膜からなる防水膜構造体は、防水性と透湿性を利用して、例えばスキー、登山、ウインドブレーカー等のスポーツ衣料や雨衣として広く使用されている。このような素材では防水性と透湿性の両立以外にも消費者ニーズは多様化し、更に風合がソフトで軽量のものが求められていると同時に、またゴルフ等の用途においてスイング時や風にあおられた時などに発生する布帛からの音は耳障りで不快なものであるため、着用時の音の発生を抑えた透湿防水性布帛が望まれている。
特許文献1においては、生地同士の擦れに対する音鳴りを抑制するために布帛を構成する繊維糸条にマルチフィラメント糸を使用した透湿防水布帛を提案しているが、これらのものは生地同士の擦れにより発生する音の抑制を目的としたものであり、揉みにより発生する音に対しての抑制効果は透湿性樹脂皮膜の加工において考慮されていない。また、明らかに風合が硬化し、着用感が良いとは言い難いものになると推定される。
特許文献2においても、綿ニットにフィルムをラミネートする手法にて着用感を改善するとともに音の発生を抑制することを提案しているが、やはり擦れ音にのみ言及し、揉みによる音は考慮されていない。
また、特許文献3においては、透湿防水性シートの風によるフラッタ音の抑制に関する記載があるが、その構成からは、耐水性が低く、また耐熱性が低いために衣料分野に応用できる可能性は低いと考えられる。
特開平5−338069号公報 特開2002−69718号公報 特開平10−166489号公報
本発明の目的は上記の従来の問題点を解決し、使用時の揉みにて発生する不快な音鳴りを抑制し、例えば、スポーツウェア、雨衣等の衣料分野や帽子等の衣料小物分野、又はスポーツバッグ等の袋物分野等で好適に使用される透湿防水性布帛を提供することにある。
本発明は、布帛の少なくとも片面に透湿防水性樹脂皮膜を被覆した透湿防水性布帛において、上記課題を解決するために、上記布帛を構成する糸条が、単糸繊度0.1〜3.3dtexの合成繊維フィラメントからなるマルチフイラメント糸から成り、経糸のカバーファクターが800〜2100であり、緯糸のカバーファクターが700〜1200であり、この布帛の経方向及び緯方向の少なくとも一方向のJIS L1096 伸長率B法(定荷重法)に準ずる伸長率が3〜50%であり、上記透湿防水性布帛の使用時に発生する音が、1000〜4000Hzにおいて50dB以下であるものとする。ここで、「使用時」とは、その布帛が例えば衣料や衣料小物に用いられる場合はその着用時を言い、袋物等に用いられる場合はその用途に沿って使用する時を言うものとする。
上記透湿防水性布帛においては、その曲げ剛性が0.005〜0.075gf・cm/cmであり、せん断剛性が0.08〜3gf/cm・degであることが好ましい。
また、上記透湿防水性樹脂皮膜は、上記透湿防水性布帛表面の10〜80%で接着していることが好ましく、上記透湿防水性布帛のJIS L1099(B−1法)に準ずる透湿度が8000g/m・24hr以上であり、JIS L1092(B法)に準ずる耐水圧が50kPa以上であることが望ましい。
本発明によれば、軽量で、かつ風合に優れた快適な着用感が得られる、スポーツウェア、雨衣等に好適に使用される透湿防水性布帛を提供することができる。特に、本発明に係る透湿防水性布帛を用いた衣料を着用した場合、運動時に揉みにより発生する音鳴りなどの不快音を抑制することができる。
本発明の透湿防水性布帛の基材である布帛を構成するマルチフィラメント糸は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、カチオン可染ポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維、ポリアクリル等の合成繊維からなり、必要に応じて顔料、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、染色性及び接着性向上剤等が添加されていてもよい。又、単糸断面は丸型に限らず、Y型、L型、中空等の異型断面を用いてもよい。
また、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、木綿、羊毛、絹、麻等の天然繊維が含まれていてもよい。
本発明で使用されるマルチフィラメント糸は単糸繊度が0.1〜3.3dtexの極細フィラメントからなり、好ましくは単糸繊度0.7〜3.0dtexのものが用いられる。0.1dtex未満ではフィラメントの紡糸が困難であり、製織したものではスナッグが悪くなるなどの不都合が生じ、一方3.3dtexを超えると風合いが硬くなり、揉みにより音が発生しやすくなり、またレインウエアに用いた場合に、風合が硬く、着心地が悪くなる虞がある。
また、本発明の布帛は経糸のカバーファクターが800〜2100であり、緯糸のカバーファクターが700〜1200であるのが好ましい。
例えば、平織物の場合は、経糸/緯糸のカバーファクターがそれぞれ800〜1300/700〜1000、綾織物の場合は経糸/緯糸のカバーファクターがそれぞれ1000〜1800/800〜1200、朱子織物の場合は経糸/緯糸のカバーファクターがそれぞれ1200〜2100/900〜1100であることが好ましい。
カバーファクターが上記範囲未満になると、糸のよれやスナッグが発生しやすくなり、衣料素材として不適切なものになるおそれがあり、上記範囲より大きくなると曲げ剛性や剪断剛性が高くなり、音鳴りが大きくなるおそれがある。なお、本発明でいうカバーファクターとは、布帛の面積に対する経糸または緯糸の占める面積の割合をいい、次式(A)で算出される値であり、数値が大きいほど布帛の面積に対する経糸または緯糸の占める面積が大きいことを表す。
(経糸または緯糸の繊度(dtex))1/2×(織物密度(本/インチ)) …(A)
上記フィラメント糸は、その繊度は特に限定されないが、総繊度30〜80dtexが好ましく、より好ましくは35〜60dtexの範囲である。フィラメント糸が30dtex未満では布帛への打ち込み密度が高くなり、生産性の低下、コストアップが生じ、80dtexを超えると布帛が厚くなり、風合や軽さから好ましくなく、使用時の音鳴りも大きくなりやすい。
上記布帛へのフィラメント糸の打ち込み密度は、特に限定されないが、経が160〜240本/インチ、好ましくは170〜230本/インチ、緯が80〜180本/インチ、好ましくは100〜160本/インチである。
布帛を構成する基布は、平織、綾織などの織物、パイル編物などの編物など、特に制限されないが、朱子織(サテン)、綾織(ツイル)が好ましい形態である。また、片マット組織などのこれらの応用組織を用いることもできる。
本発明の透湿防水性布帛は、経または緯方向のいずれか一方向にストレッチ性を有していることが、曲げ剛性、せん断剛性を低くするために不可欠であり、曲げ剛性、せん断剛性を低減することで、着用時の音鳴りを抑制することができる。
ストレッチ性を発現するためにはコスト面からウーリー糸が好ましく、コンジュゲート糸による捲縮糸やPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の他、ウレタンなどの弾性糸を使用してもよい。
本発明において、上記布帛のストレッチ性については、JIS L1096 伸長率B法(定荷重法)に準ずる伸長率により規定することができ、その伸長率が3〜50%のものが使用されるが、生機設計の面からは5〜30%のものがより好ましい。伸長率が3%未満であるとストレッチ性に欠けるため、衣料とした場合に、体の動きに生地が追従出来なくなり、着用感が劣るとともに布帛のせん断剛性が大きくなり、音鳴りを抑制することができない。また、伸長率が50%を超えるとスナッグ性が著しく悪化する等の問題が発生する虞があり実用性に劣るものとなる。
本発明で使用される透湿防水性樹脂皮膜としては、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリフッ素系重合体、シリコーン系等を用いることができ、用途や目的に応じてこれらの中から選択した樹脂にて微多孔質膜や無孔質膜を形成する。無孔質膜の場合には高い透湿性を有するウレタン樹脂を主成分としたものが好ましく用いられる。
透湿防水性樹脂皮膜を形成する樹脂は所定の透湿防水性を有しつつ、せん断剛性、曲げ剛性を低く保つためには100%モジュラスが10〜200kg/cmであることが好ましく、更に好ましくは20〜100kg/cmである。10kg/cmよりもモジュラスが低いと樹脂皮膜表面のタックが強くなり、滑り性が低下することで、着用感が損なわれる虞がある。また、200kg/cmを超えると風合が硬くなり、着用感が損なわれる他、樹脂フィルム単体において音鳴りが生じ、本発明での目的を達成し得ない虞がある。
透湿防水性樹脂皮膜の厚みについては3〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることがさらに好ましい。透湿防水性樹脂皮膜の厚みが3μm未満であると均一な皮膜を形成することが困難であり、安定した耐水圧が得られない虞がある。また、50μmを超えると風合が硬くなり、着用感が損なわれる虞があり、発生する音鳴りも大きくなる。
これらの樹脂皮膜は布帛に部分的に接着していることが好ましい。樹脂皮膜と布帛とを部分的に接着させるにはフィルムラミネート法が好ましく用いられ、布帛と樹脂皮膜との接着面積の比率を10〜80%、更には20〜50%とすることが好ましい。接着面積が10%未満であると接着強度が不十分となり、透湿防水布で必要となる耐水圧が得られにくくなったり、接着強度が不足し、特に、洗濯時にフィルムが層間剥離したり、シワ入りする等の問題が生じ易くなる。一方、接着面積が80%を超えると透湿度の低下が顕著となり、また布帛組織の拘束力が強くなることから風合が硬くなり、着用感が損なわれる虞がある。また曲げ剛性、せん断剛性が大きくなるため、音鳴りの抑制を達成できない虞がある。
樹脂皮膜と布帛を部分的に接着させるためには、あらかじめフィルムを作成し、そのフィルム面にグラビアロールを用いて接着剤を点状に付与した後、布帛に圧着させる方法や、フィルム全面に接着剤を塗布して布帛に圧着させる方法等が用いられるが、後者の場合、フィルムの布帛表面への接着率を10〜80%にするために接着層の厚みを1〜20μmとすることが好ましく、3〜10μmとすることが更に好ましい。接着層の厚みを1μm未満とした場合、接着強度が十分に得られない虞がある。また、20μmを超えた場合には布帛に接着層が浸透してしまい、接着面積を80%以内とすることが困難となる虞がある。
接着剤としては、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニル系、ポリ酢酸ビニル系などの重合体が使用できるが、ポリウレタン系重合体が好ましい。
ここで布帛の音鳴りの発生原理について、述べる。
布帛の音鳴りは、衣料として着用した時等に生じた布帛の振動が空気中に伝搬することで発生すると考えられ、詳細を下記にて説明する。
ここでいう布帛の揉みとは、例えば着用時に身体が動く(運動する)ことによる関節周辺部での布帛の曲げ、体幹部の捻りによる布帛のせん断歪みなど、布帛の形態変化によって生じる様々な変位(動き)のことを示している。
音鳴りはこの変位(動き)がエネルギーとして布帛に蓄積されるが、そのエネルギーが一瞬に解放されると振動エネルギーに変化し、この振動エネルギーが空気中に伝搬し、音となり耳に伝わるものである。
従って、大きな変位(動き)が布帛に生じた場合、布帛に大きなエネルギーが蓄積し、このエネルギーが一瞬に解放されてエネルギー変化し、大きな音鳴りとして空気中で伝搬する。逆に変位(動き)が小さいと、蓄積するエネルギーが小さく、音鳴りが小さい。
上記の内容は、フックの法則を利用することで布帛の変位と布帛に蓄積するエネルギーをいわゆる布帛の変位と応力の関係を式(1)及び(2)にて表すことができる。
τ=Gγ ……式(1)
ここで、τは応力、Gは布帛の剛性、γは変位である。
w=∫τ・dγ=∫Gγ・dγ=G∫γ・dγ ……式(2)
ここで、wは「仕事」であり、仕事wは、布帛が変位によって蓄積したエネルギーを示す。
このことから布帛の変位γが大きければ布帛に蓄積するエネルギーwが大きくなることが分かる。
また、布帛の変位γが一定の場合は、布帛が変位によって蓄積するエネルギーwは、布帛の剛性Gに比例する。すなわち、異なる布帛が同じ変位γを受けた場合は、布帛の剛性Gが低い方が蓄積するエネルギーが小さいことになる。
ここで、着用時等使用時に生じる布帛の変位を考えると、音鳴りに関係するのは主に曲げとせん断であるため、使用時に生じる布帛の変位により蓄積するエネルギーの総和Wは式(2)より次式(3)のように示される。
W=G1∫γ1・dγ1+G2∫γ2・dγ2 ……(3)
ここで、G1は布帛のせん断剛性、G2は布帛の曲げ剛性、γ1は布帛のせん断方向の変位、γ2は布帛の曲げ方向の変位である。
布帛の音鳴りには、布帛が変位によって蓄積したエネルギーが関わっている。すなわち、布帛の変位で音鳴りを小さくするには、変位によって布帛が蓄積するエネルギーを小さくすること、すなわち、せん断方向の剛性、曲げ方向の剛性が低い布帛にすることが必要となる。
この透湿防水性布帛においては、曲げ剛性が0.005〜0.075gf・cm/cmであり、かつ、せん断剛性が0.08〜3gf/cm・degであることが好ましい。曲げ剛性を0.005gf・cm/cm未満である場合、布帛の糸密度が粗くなる場合が多く、スナッグ不良、滑脱抵抗不良が生じ易いばかりか、生地が薄くなり、仕立て映えが悪くなるため商品性に欠ける等の問題が生じ、実使用に耐えうる透湿防水性布帛とすることが困難となる。また、0.075gf・cm/cmを超える場合は風合いが硬くなり、着用感が劣る虞がある。また音鳴りの発生を抑制しにくい。
また、せん断剛性についても0.08gf/cm・deg未満の場合は曲げ剛性と同様な問題を生じる虞があり、3gf/cm・degを超える場合も、やはり音鳴りの発生を抑えることが出来ない虞があるので、曲げ剛性、せん断剛性共に上記範囲を満たすことが好ましい。
本発明による透湿防水性布帛は、使用時に発生する音鳴りが1000〜4000Hzにおいて50dB以下であり、更に45dB以下であることが好ましい。1000〜4000Hzにおける音の発生は人間の聴覚に対する感受性が高い領域と言われており、これらの周波数域において静かな室内の音量と言われる50dB以下であれば使用時に発生する音鳴りに対して不快に感じることが無い透湿防水性布帛とすることが出来る。
本発明による透湿防水性布帛の透湿度は8000g/m・24hr以上であることが好ましい。8000g/m・24hr以上を有していれば、ムレや結露の発生を抑制し、快適性に優れた透湿防水性布帛を得ることができる。
また、本発明による透湿防水性布帛の耐水圧は50kPa以上あることが好ましい。50kPa以上を有していれば、スキー、登山、ウインドブレーカー等のスポーツ衣料や雨衣として十分な防水性を有するためである。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものでない。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法により測定したものである。
(1)布帛の伸長率(ストレッチ性)
JIS L1096 伸長率B法(定荷重法)により評価した。
(2)曲げ剛性
KES―FB2(純曲げ試験機 カトーテック(株)製)を用いて曲げ剛性を測定した。
(3)せん断剛性
KES―FB1(せん断試験機 カトーテック(株)製)を用いてせん断剛性を測定した。
(4)揉み音の音量
透湿防水性布帛の揉み方法は、評価布を経20cm×緯20cmの大きさに裁断し、基布の両端を手で持って基布とマイクとの距離を20cmに保ち、手で保持している一方の生地の端に対して、もう一方の生地の端を1回/秒のスピードで基布を往復させる。音響振動計測システムに松下インターテクノ製 MIT3560D、マイクにブリュエル・ケア製自由音場型マイクロフォン「型番4189」を使用して、解析ソフトとしてブリュエル・ケア製「PULSE」を用いて周波数範囲1000〜4000Hzにおける音量(dB)を測定し、最小および最大音量を記録した。
(5)音の官能評価(耳障り感)
(4)と同様な手法にて布帛を揉み、5名のパネラーによる聴覚により、以下のように評価した。
◎:音鳴りが無く耳障りを全く感じない。
○:音鳴り小さく耳障りに感じない。
△:音鳴りあるが耳障りには感じない。
×:音鳴り大きく非常に耳障りに感じる。
(6)耐水圧
JIS L1092 B法(高水圧法)により評価した。
(7)透湿度
JIS L1099 B−1法(酢酸カリウム法)により評価した。
[実施例1]
経糸にナイロン66マルチフィラメント44dtex/34フィラメント生糸(単糸繊度1.29dtex)を用い、緯糸にナイロン66マルチフィラメント44dtex/34フィラメントウーリー糸(単糸繊度1.29dtex)を用いて、5枚サテン組織を製織し、常法により精練、染色を行った後、アサヒガードAG7000(旭硝子(株)製、フッ素系撥水剤)3重量%にハイソフターKR59M(明成化学工業(株)製、シリコーン系柔軟剤)0.5重量%を混合した水溶液で絞り率60%にてパッディングし、120℃で60秒乾燥後、170℃で60秒間の熱処理を行い、フィルムラミネート用の基布を得た。製品の密度は経糸214本/インチ、緯糸144本/インチであった。
次に、下記処方1に示す組成のポリウレタン樹脂溶液を、離形紙EV130TPD(リンテック(株)製)上にナイフオーバーロールコータにて塗布した後、120℃にて乾燥して膜厚みが10μmの透湿防水性を有するフィルムを作成した。
〈処方1(フィルム用樹脂液)〉
・サンプレンHMP−17A(三洋化成(株)製、エーテル系ポリウレタン樹脂):100重量部
・N,N−ジメチルホルムアミド:40重量部
次に、下記処方2に示す組成の接着剤を、ドット径が500μm、開口率35%のグラビアロールコーターを用いて点状にフィルム樹脂膜上に付与した後、120℃にて乾燥した。次いで、先に作成したフィルムラミネート用基布に110℃、3kg/cmにて熱圧着し、離形紙を剥離して透湿防水性布帛を得た。得られた布帛の上記各種物性評価結果を表1に示す。
〈処方2(接着剤樹脂液)〉
・クリスボンTA−170(大日本インキ化学工業(株)製、エーテル系ポリウレタン樹脂):100重量部
・BURNOCK DN−950(大日本インキ化学工業(株)製、イソシアネート系架橋剤):8重量部
・クリスボン ACCEL T(大日本インキ化学工業(株)製、金属系架橋促進剤):1重量部
・N,N−ジメチルホルムアミド:30重量部
[実施例2]
経糸にナイロン66マルチフィラメント44dtex/34フィラメント生糸(単糸繊度1.29dtex)を用い、緯糸にナイロン66マルチフィラメント44dtex/34フィラメントウーリー糸(単糸繊度1.29dtex)を用いて、2/1ツイル組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。布帛の密度は経糸205本/インチ、緯糸密度126本/インチであった。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例3]
経糸にナイロン66マルチフィラメント44dtex/34フィラメント生糸(単糸繊度1.29dtex)を用い、緯糸にナイロン66マルチフィラメント44dtex/34フィラメントウーリー糸(単糸繊度1.29dtex)を用いて、経糸密度218本/インチ、緯糸密度106本/インチの片マット組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例4]
経糸にナイロン6マルチフィラメント44dtex/48フィラメント生糸(単糸繊度0.92dtex)を用い、緯糸にナイロン6マルチフィラメント44dtex/48フィラメントウーリー糸(単糸繊度0.92dtex)を用いて、5枚サテン組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。布帛の密度は経糸207本/インチ、緯糸152本/インチであった。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例5]
経糸にポリエステルマルチフィラメント56dtex/48フィラメント生糸(単糸繊度1.17dtex)を用い、緯糸にポリエステルマルチフィラメント56dtex/72フィラメントウーリー糸(単糸繊度0.78dtex)を用いて、5枚サテン組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。布帛の密度は経糸178本/インチ、緯糸128本/インチであった。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例6]
経糸にナイロン66マルチフィラメント44dtex/34フィラメント生糸(単糸繊度1.29dtex)を用い、緯糸にナイロン66マルチフィラメント44dtex/34フィラメント生糸(単糸繊度1.29dtex)を用いて、2/1ツイル組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。布帛の密度は経糸220本/インチ、緯糸162本/インチであった。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例7]
経糸にポリエステルマルチフィラメント44dtex/48フィラメント生糸(単糸繊度0.92dtex)を用い、緯糸にポリエステルマルチフィラメント56dtex/24フィラメントピン仮撚り(単糸繊度2.33dtex)を用いて、5枚サテン組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。布帛の密度は経糸235本/インチ、緯糸137本/インチであった。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例8]
フィルムラミネートの際、ドット径が500μm、開口率20%のグラビアロールコーターを用いた以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例9]
フィルムラミネートの際、40メッシュ格子柄で開口率70%のグラビアロールコーターを用いた以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例10]
経糸にポリエステル/ナイロン割繊糸44dtex/216フィラメント生糸(単糸繊度0.20dtex)を用い、緯糸にポリエステル/ナイロン割繊糸44dtex/216フィラメントウーリー糸(単糸繊度0.20dtex)を用いて、5枚サテン組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にて透湿防水性布帛を得た。布帛の密度は経糸214本/インチ、緯糸144本/インチであった。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例11]
フィルムラミネートの際、ドット径が500μm、開口率5%のグラビアロールコーターを用いた以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例12]
経糸にナイロン66マルチフィラメント78dtex/24フィラメント生糸(単糸繊度3.25dtex)を用い、緯糸にナイロン66マルチフィラメント78dtex/34フィラメントウーリー糸(単糸繊度2.29dtex)を用いて、5枚サテン組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。布帛の密度は経糸161本/インチ、緯糸108本/インチであった。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例13]
経糸にナイロン6マルチフィラメント44dtex/48フィラメント生糸(単糸繊度0.92dtex)を用い、緯糸にナイロン6マルチフィラメント56dtex/48フィラメントウーリー糸(単糸繊度1.17dtex)を用いて、5枚サテン組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。布帛の密度は経糸285本/インチ、緯糸128本/インチであった。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[実施例14]
経糸にナイロン6マルチフィラメント44dtex/34フィラメント生糸(単糸繊度1.29dtex)を用い、緯糸にナイロン6マルチフィラメント44dtex/34フィラメントウーリー糸(単糸繊度1.29dtex)を用いて、5枚サテン組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。布帛の密度は経糸150本/インチ、緯糸120本/インチであった。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[比較例1]
経糸にポリエステルマルチフィラメント44dtex/12フィラメント生糸(単糸繊度3.67dtex)を用い、緯糸にポリエステルマルチフィラメント56dtex/20フィラメントウーリー糸(単糸繊度2.80dtex)を用いて、経糸密度212本/インチ、緯糸密度127本/インチの5枚サテン組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にて透湿防水性布帛を得た。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[比較例2]
経糸にナイロン66マルチフィラメント44dtex/34フィラメント生糸(単糸繊度1.29dtex)を用い、緯糸にナイロン66マルチフィラメント44dtex/34フィラメント生糸(単糸繊度1.29dtex)を用いて、経糸密度200本/インチ、緯糸密度131本/インチの2/1ツイル組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にて透湿防水性布帛を得た。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[比較例3]
経糸にポリエステルマルチフィラメント44dtex/48フィラメント生糸(単糸繊度0.92dtex)を用い、緯糸にポリエステルマルチフィラメント56dtex/24フィラメントピン仮撚り(単糸繊度2.33dtex)を用いて、経糸密度212本/インチ、緯糸密度125本/インチの5枚サテン組織を製織した以外は実施例1と同様な手法にて透湿防水性布帛を得た。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
[比較例4]
経糸にポリエステルマルチフィラメント44dtex/12フィラメント生糸(単糸繊度3.67dtex)を用い、緯糸にポリエステルマルチフィラメント56dtex/20フィラメントウーリー糸(単糸繊度2.80dtex)を用いて、経糸密度212本/インチ、緯糸密度127本/インチの5枚サテン組織を製織し、フィルムラミネートの際、40メッシュ格子柄で開口率90%のグラビアロールコーターを用いた以外は実施例1と同様な手法にして透湿防水性布帛を得た。得られた布帛の各種物性評価結果を表1に示す。
Figure 2009096194
本発明による透湿防水性布帛は、ゴルフウェアー、スキー、登山、ウインドブレーカー等のスポーツ衣料等として使用した場合に蒸れや不快音の発生がなく、また雨衣としての十分な防水性も有するものである。

Claims (4)

  1. 布帛の少なくとも片面に透湿防水性樹脂皮膜を被覆した透湿防水性布帛において、前記布帛を構成する糸条が、単糸繊度0.1〜3.3dtexの合成繊維フィラメントからなるマルチフィラメント糸から成り、経糸のカバーファクターが800〜2100であり、緯糸のカバーファクターが700〜1200であり、該布帛の経方向及び緯方向の少なくとも一方向のJIS L1096 伸長率B法(定荷重法)に準ずる伸長率が3〜50%であり、前記透湿防水性布帛の使用時に発生する音鳴りが1000〜4000Hzにおいて50dB以下であることを特徴とする透湿防水性布帛。
  2. 前記透湿防水性布帛の曲げ剛性が0.005〜0.075gf・cm/cmであり、せん断剛性が0.08〜3gf/cm・degであることを特徴とする、請求項1に記載の透湿防水性布帛。
  3. 前記透湿防水性樹脂皮膜は、前記透湿防水性布帛表面の10〜80%で接着していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の透湿防水性布帛。
  4. 前記透湿防水性布帛のJIS L1099(B−1法)に準ずる透湿度が8000g/m・24hr以上であり、JIS L1092(B法)に準ずる耐水圧が50kPa以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透湿防水性布帛。
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